研磨方法及びブラスト加工装置のノズル構造
【課題】圧縮気体流によって研磨材に運動エネルギーを与えて行う研磨において,被加工物表面に対し垂直な切削力の発生を抑制すると共に水平方向の切削力を得る。
【解決手段】被加工物Wの表面に向けて加速流発生ノズル10より研磨材を含まない圧縮気体を噴射して,被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させると共に,この加速流Sの発生位置で被加工物Wの表面に向かって開口する研磨材導入路20に研磨材30を導入,好ましくは圧縮気体と共に導入し,加速流Sに研磨材30を合流させて,研磨材30を被加工物Wの表面に沿って滑走させることで,表面に対し水平方向の切削力を発生させる。
【解決手段】被加工物Wの表面に向けて加速流発生ノズル10より研磨材を含まない圧縮気体を噴射して,被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させると共に,この加速流Sの発生位置で被加工物Wの表面に向かって開口する研磨材導入路20に研磨材30を導入,好ましくは圧縮気体と共に導入し,加速流Sに研磨材30を合流させて,研磨材30を被加工物Wの表面に沿って滑走させることで,表面に対し水平方向の切削力を発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨方法,及び前記研磨方法を実現するためのブラスト加工装置のノズル構造に関し,より詳細には圧縮気体流によって研磨材に運動エネルギーを与えることにより行う被加工物の研磨方法,及び前記研磨方法をブラスト加工装置によって実現するための,ブラスト加工装置のノズル部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物表面の平坦度を改善し,鏡面等の平滑面に加工する既知の研磨方法としては,例えば,研磨紙や研磨布による研磨,バフによる研磨,ラッピング,回転する砥粒との接触による研磨,超音波振動を与えられた砥粒との接触により被加工物を研磨する超仕上げ加工等がある。
【0003】
これに対し,同様に研磨材を用いた加工技術に関するものでありながら,研磨材を被加工物の表面に圧縮流体,例えば圧縮空気と共に噴射して切削を行うブラスト加工は,一般的には被加工物の表面における平坦度を改善するための研磨加工には使用されていない。
【0004】
これは,ブラスト加工が圧縮気体等と共に噴射した研磨材を被加工物の表面に衝突させてこの衝突時のエネルギーによって被加工物の表面を加工するものであるために,研磨材は被加工物Wの表面に対し垂直(深さ)方向の切削力を発揮し,その結果,図18に示すように被加工物の表面に元々生じていた凹凸の形態的な特徴を引き継ぎつつ切削が進むために,切削量が多い割に表面の平坦化が得難いことによる。
【0005】
またブラスト加工では,前述のように研磨材の衝突エネルギーによって切削を行うものであることから,砥粒の衝突に伴う切削や変形によって被加工物の表面に新たな凹凸を形成して梨地とすることも平坦化を困難なものとしている。
【0006】
このように,従来の一般的なブラスト加工方法では,被加工物表面の平坦化,特に,鏡面のように高精度で平坦化を行うことは困難であるが,このようなブラスト加工における欠点を解消し,ブラスト加工によっても被加工物の表面に対する梨地の発生を抑制して,表面を例えば鏡面のような平坦面に加工できるようにすることも提案されている。
【0007】
このようなブラスト加工方法の一例として,出願人は,弾性体である母材内に砥粒を分散させた構造を有する研磨材(本明細書において,このような構造の研磨材を「弾性研磨材」という。)を,被加工物の表面に対して所定の入射角度で噴射あるいは投射することにより,衝突時のエネルギーを弾性体の塑性変形によって吸収させることで梨地の発生を抑制すると共に弾性研磨材を被加工面に沿って滑走させるようにすることで,ブラスト加工を平坦度の改善に使用できるようにすることを提案している(特許文献1)。
【0008】
また,被加工物の加工表面に対して圧縮流体と共に研磨材を,0<V・sinθ≦1/2・V(V=噴射方向における研磨材の速度,θ=被加工物の加工表面に対する研磨材の入射角)という条件で噴射して,既存の研磨材(砥粒)を使用した場合であっても,被加工物の表面に沿った研磨材の噴流を生じさせることで平坦度の改善を行うことができるようにすることも提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−159402号公報
【特許文献2】特開2005−022015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の研磨方法のうち,研磨布や研磨紙による研磨,ラッピング,砥石による研磨等にあっては,粒度の小さい研磨材は研磨力が弱いため,研磨材の粒度を段階的に小さくする多段の研磨工程が必要であり作業が煩雑である。
【0011】
また,研磨量は加工圧力に依存するが,過度に加工歪が生じることを避けるために加工圧力を低く設定すれば,加工速度が低下し,生産性が低いものとなる。
【0012】
これとは逆に,高い加工圧力を加える場合には,研削,研磨割れを起こすおそれがある。
【0013】
また,加工圧力がかかった状態で研磨される被加工物の表面層には,前述のように加工歪が生じるため,被加工物が例えばシリコンウエハーである場合には,ウエハー表面近傍での完全結晶層を確保するために研磨加工の際に生じた加工歪の除去が必要となる場合があり,そのため,研磨加工後に研磨されたウエハーを熱処理したり,酸やアルカリ等を使って表面層を除去する等の工程が必要となる。また,酸やアルカリ等を使って表面層を除去する場合には,この際に使用した酸やアルカリ等の廃液を適切に処理する必要がある等,その作業は極めて煩雑となっている。
【0014】
これに対し,前掲の特許文献1,2として紹介した方法では,従来一般的に行われていた研磨方法であるラッピング等に比較して,研磨後の被加工物に余分な応力が入り難く,また,加工後に歪み等が生じ難いものとすることができる。
【0015】
しかし,特許文献1として紹介したブラスト加工方法では,被加工物の表面における梨地の発生を防止すると共に,被加工物表面に沿って研磨材を滑走させるために,前述した弾性研磨材を使用することで,この弾性研磨材の塑性変形によって衝突時のエネルギーを吸収させており,特殊な構造の研磨材の使用が必須となる。
【0016】
特許文献2として紹介したブラスト加工方法では,研磨材の噴射条件を適切に設定することで,特殊な研磨材を使用することなく,通常の研磨材(砥粒)を使用した場合であっても研磨材を被加工物の表面に沿って滑走させることができ,ブラスト加工によって比較的容易に被加工物の研磨を行うことができる。
【0017】
しかし,この方法では,研磨材の衝突時,被加工物表面に作用する力の垂直成分に対し,水平成分を十分に大きくすることで,衝突した砥粒による被加工物面表面の梨地の発生防止を図ったものであり,入射角θを0(ゼロ)としなければ,垂直成分を除去できない。
【0018】
また,前述した垂直成分を減少させるために入射角θを0(ゼロ)に近付けようとすれば,被加工物の表面に対し噴射ノズルを傾斜させて噴射するか,又は,噴射ノズルより噴射された噴流を被加工物の表面に沿った流れに誘導するための補助機器等が必要となり(特許文献1の図3〜13参照),被加工物の形状等によっては適用が困難な場合も想定される。
【0019】
なお,以上の説明では,被加工物の「研磨」の一例として,平坦度の改善(平滑化)という点を主として説明したが,平坦度の改善(平滑化)の他,例えば元の表面に対し平滑度を低下させる(粗くする)作業や,表面に設けた被膜の除去等といったその他の研磨作業に際しても,ブラスト加工と同様の比較的簡単な作業によって,被加工物の表面に対する垂直方向の切削力を抑制した研磨を行うことができれば,被加工物に対するダメージの軽減と必要以上に切削量が増えることを抑制できる等といったメリットがある。
【0020】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,既知のブラスト加工方法と同様に,圧縮気体流によって研磨材に運動エネルギーを与えることにより研磨を行うものでありながら,弾性研磨材のような特殊な構造の研磨材を使用することなく,通常の研磨材(砥粒)を使用した場合であっても,被加工物の表面に対する垂直方向の切削力の発生を抑制すると共に,水平方向の切削力を発揮させることで,被加工物の表面の平坦度の改善,その他の表面粗さの調整,表面被膜の除去等といった表面部分の切削除去,その他各種研磨を行うことのできる研磨方法,及び前記研磨方法に使用するブラスト加工装置のノズル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために,本発明の研磨方法は,被加工物Wの表面に向けて配置した加速流発生ノズル10に噴射流体P1である研磨材を含まない圧縮気体を導入すると共に噴射して,前記被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させ,
前記加速流Sの発生位置で前記被加工物Wの表面に向かって開口する研磨材導入路20に研磨材30を導入することにより,前記加速流Sに研磨材30を合流させて,前記研磨材30を被加工物Wの表面に沿って滑走させることを特徴とする(請求項1)。
【0022】
上記の研磨方法において,前記研磨材30を,前記加速流発生ノズル10に導入する前記噴射流体P1に比較して低圧の圧縮気体である搬送流体P2と混合して前記研磨材導入路20に導入するものとしても良い(請求項2)。
【0023】
この場合,前記噴射流体P1に対し,前記搬送流体P2を3分の2以下の圧力とすることが好ましい(請求項3)。
【0024】
更に,前述した研磨方法は,前記加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対し,前記研磨材導入路20の開口21と被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)を広くして行うことが好ましい(請求項4:図3参照)。
【0025】
より好ましくは,前記加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1を0.5〜3.0mmとすると共に,前記研磨材導入路20の開口21と前記被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)を,前記加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対して1.0〜3.0mm広く形成する(請求項5)。
【0026】
また,前記研磨方法を実現するための,本発明のブラスト加工装置のノズル構造(ブラストノズル1)は,圧縮気体供給源(図示せず)より噴射流体P1として供給された研磨材を含まない圧縮気体を被加工物Wの表面に向かって噴射して,前記被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させる加速流発生ノズル10と,
前記加速流Sの発生位置で前記被加工物Wの表面に向かって開口すると共に,研磨材供給源(図示せず)からの研磨材30が導入される研磨材導入路20を備えたことを特徴とする(請求項6)。
【0027】
上記のノズル構造において,前記研磨材導入路20を,圧縮気体である搬送流体P2との混合流体として前記研磨材30を供給する研磨材供給源(例えば直圧式のブラスト加工装置の研磨材タンク:図示せず)に連通するものとしても良い(請求項7)。
【0028】
上記ノズル構造における加速流発生ノズル10と研磨材導入路20の配置は,前記加速流発生ノズル10の噴射口11側の端部を,前記研磨材導入路20内に配置することによって実現することができる(請求項8:図1〜3参照)。
【0029】
また,上記の構成に代え,前記加速流発生ノズル10の噴射口11をスリット状に形成すると共に,前記研磨材導入路20の開口21を前記噴射口11と平行に配置するものとしても良く(請求項9:図4参照),この場合,更に前記加速流発生ノズル10の噴射口11の両側に,前記研磨材導入路20の開口21を配置するものとしても良い(請求項10:図5参照)。
【0030】
なお,前記ノズル構造において,前記加速流発生ノズル10の噴射口11を,前記研磨材導入路20の開口21に対し1.0〜3.0mm(図3のδ2に対応)噴射方向に突出させることが好ましい(請求項11)。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した本発明の構成により,本発明の研磨方法によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0032】
被加工物Wの表面に対する噴射流体P1の噴射と,研磨材30の導入とを,加速流発生ノズル10,研磨材導入路20という別個に設けた経路を介して行うことで,被加工物Wの加工面に沿った加速流Sを発生させた後,この加速流Sに対して研磨材30を合流させる構成としたことにより,研磨材30を被加工物の表面に対して垂直方向に衝突させることなく,加速流Sと共に被加工物Wの表面に沿って滑動させることができた。
【0033】
その結果,被加工物Wの表面に対して垂直方向に作用する切削力の発生を抑制し,研磨材30の滑動による水平方向の切削力を生じさせることで,研磨に際して被加工物Wに加わるダメージを大幅に減少することが可能であると共に,従来の一般的なブラスト加工では困難であった平坦度の改善(平滑化)等を目的とした研磨に対しても適用可能な研磨方法を提供することができた。
【0034】
特に,前記研磨材30の搬送を噴射流体P1に対して低圧の搬送流体P2,好ましくは噴射流体P1に対して3分の2以下の圧力の搬送流体P2との混合流体として行うことで,被加工物Wの表面に対して研磨材30が垂直方向の切削力を発揮することを大幅に抑制しつつ,研磨材30の導入を円滑に行うことが可能となり,しかも,研磨材導入路20の開口21から加速流Sに向けて放出される搬送流体P2が,加速流Sを被加工物Wの表面に向けて押し付けるように作用することとなるために,加速流Sが被加工物Wの表面から離れることを防止でき,加速流Sの被加工物W表面に対する追従性を向上させることができた。
【0035】
更に,加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対し,研磨材導入路20の開口21と被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)を広くすること,好ましくは,間隔δ1を0.5〜3.0mm,間隔δ2を1.0〜3.0mmとすることで,加速流発生ノズル10より噴射された噴射流体P1は,間隔δ1を通過する際に好適に被加工物Wの表面に沿った流れである加速流Sになると共に,間隔δ1に対して広く形成された研磨材導入路20と被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)に導入されることで,研磨材導入路20の存在によって加速流Sの流れが遮られることが無く,この位置において好適に加速流Sと研磨材30を合流させることができた。
【0036】
なお,前述した方法は,圧縮気体供給源(図示せず)より噴射流体P1として供給された圧縮気体を被加工物Wの表面に向かって噴射して,前記被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させる加速流発生ノズル10と,前記加速流Sの発生位置で前記被加工物Wの表面に向かって開口すると共に,研磨材供給源(図示せず)からの研磨材30が導入される研磨材導入路20を備えたブラスト加工装置のノズル構造(ブラストノズル1)によって実現することができた。
【0037】
このノズル構造において,前記研磨材導入路20を,圧縮気体である搬送流体P2との混合流体として前記研磨材30を供給する研磨材供給源(図示せず)に連通した構成では,研磨材30の搬送及び合流を円滑に行うことができると共に,前述したように搬送流体によって加速流Sを被加工物の表面に向けて押し付けることで,加速流Sが表面より離れることを好適に防止することができた。
【0038】
更に,前記加速流発生ノズル10の噴射口11側の端部を,前記研磨材導入路20内に配置した構成(図1〜3参照)では,加速流発生ノズル10の噴射口11の全周に亘り,被加工物Wの表面に沿って研磨材30を滑動させることができ,加工範囲を広くすることができた。
【0039】
また,前記加速流発生ノズル10の噴射口11をスリット状とした構成(図4,図5参照)にあっては,スリットの長さに対応して広範囲に亘って同時に研磨加工を施すことができ,特に,前記加速流発生ノズル10の噴射口11の両側に研磨材導入路20の開口21を設けた構成(図5参照)では,加速流発生ノズル10を中心として,該ノズル10の開口幅方向の二方向に対して同時に研磨処理を行うことができ,効率的な加工を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の研磨方法に使用するノズル構造(ブラストノズル)の構成例を示す概略断面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】ブラストノズル先端部分の拡大断面図。
【図4】ブラストノズルの先端部分の変形例を示す説明図であり,(A)は側面断面図,(B)は(A)のB−B線断面図。
【図5】ブラストノズルの先端部分の変形例を示す説明図であり,(A)は側面断面図,(B)は(A)のB−B線断面図。
【図6】本発明の方法による被加工物表面の切削過程を模式的に示した説明図。
【図7】RMS(二乗平均粗さ)の説明図。
【図8】未処理のテストピース(ソーダガラス:鏡面)の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図9】本発明の方法(実施例1)による処理後のソーダガラスの表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図10】既知のブラスト加工(比較例1)による処理後のソーダガラスの表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図11】本発明の方法(実施例2)による処理後のソーダガラスの表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図12】未処理のテストピース(アルミ合金:ヘアライン加工品)の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図13】本発明の方法(実施例3)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図14】既知のブラスト加工(比較例2:噴射圧力0.2MPa)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図15】既知のブラスト加工(比較例3:噴射圧力0.4MPa)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図16】本発明の方法(実施例4)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図17】本発明の方法(実施例5)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図18】既知のブラスト加工における切削の様子を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0042】
〔ブラストノズル〕
図1中の符号1は,本発明の研磨方法に使用するブラストノズルであり,このブラストノズル1は,圧縮気体供給源及び研磨材供給源を備えた既知のブラスト加工装置(図示せず)に取り付けて使用することで,本発明の研磨方法を実現可能とするものである。
【0043】
このブラストノズル1は,図示せざるブラスト加工装置に設けられた圧縮気体供給源に連通されて,圧縮気体供給源より噴射流体P1として導入された圧縮気体を被加工物Wの表面に向かって噴射して,被加工物Wの表面に沿って流れる加速流Sを生じさせる加速流発生ノズル10と,図示せざる研磨材供給源(例えば研磨材タンク)からの研磨材30を導入して前記加速流Sに合流させる研磨材導入路20を備えており,研磨材導入路20の開口21を前述の加速流Sの発生位置において被加工物Wの表面に向けて配置することにより,研磨材導入路20内に導入した研磨材を,加速流Sと合流させて,被加工物Wの表面を滑動させることができるようにしている。
【0044】
図示の実施形態にあっては,加速流発生ノズル10を円筒状のノズルとして形成すると共に,研磨材導入路20を加速流発生ノズル10の外径に対して大径の内径を有する略円筒形状に形成して,この加速流発生ノズル10の先端側の一部を研磨材導入路20内に同心状に配置することで,噴射口11を中心に,その外周方向における全周を囲むように研磨材導入路20の開口21を形成している(図2参照)。
【0045】
もっとも,加速流発生ノズル10や研磨材導入路20の形状及び配置は,図1〜3に示す実施形態に限定されず,図示の例では円筒状に形成した研磨材導入路20を,例えば角筒状に形成する等しても良く,また,図4(A),(B)に示すように,加速流発生ノズル10の噴射口11をスリット状に形成し,このスリット状に形成された加速流発生ノズル10の噴射口11と平行に,研磨材導入路20の開口21を設ける構成としても良く,更には,図5(A),(B)に示すように,この研磨材導入路20の開口21を,加速流発生ノズル10の噴射口11を中心に両側に配置するものとしても良く〔図5(B)参照〕,加速流発生ノズル10で発生させた加速流Sに向けて研磨材導入路20の開口21が設けられることにより加速流Sに対して研磨材を合流させることができるものであれば,各種の設計変更が可能である。
【0046】
前述の加速流発生ノズル10の噴射口11は,研磨材導入路20の開口21より僅かな突出長さ(図3のδ2)で噴射方向に飛び出した配置となるように加速流発生ノズル10と研磨材導入路20の配置が決定されている。
【0047】
この加速流発生ノズル10の先端部における突出長さδ2は,好ましくは1.0〜3.0mmであり,図示の実施形態にあっては,この突出長さδ2を1.0mmとすることで,加速流発生ノズル10の噴射口11を被加工物の表面に向けて配置した際に,加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対し,研磨剤導入路20の開口21と被加工物Wの表面間の間隔が大きくなるように構成している。
【0048】
前述した研磨材導入路20に対する研磨材30の導入は,例えば研磨材導入路20に対して高所に配置された研磨材タンク(図示せず)から研磨材を重力によって落下させることにより行うものとしても良いが,本実施形態にあっては,前述の研磨材導入路20の内部空間を,例えば直圧式のブラスト加工装置の研磨材タンクのように圧縮気体である搬送流体P2によって加圧された研磨材タンク(図示せず)に連通することで,前記搬送流体P2との混合流体として搬送された研磨材30を,研磨材導入路20の内部空間に導入すると共に,前述した開口21を介して加速流Sと合流させることができるようにしている。
【0049】
このような研磨材30の搬送を可能とするために,図1に示す実施形態にあっては,図示せざる研磨材タンクに連通した研磨材ホース25の先端に研磨材ノズル24を取り付けて研磨材の搬送量を制御すると共に,この研磨材ノズル24の先端を,研磨材導入路20の内部空間と連通した連結管23内に挿入することで,研磨材導入路20内に搬送流体P2と共に研磨材30を導入することができるようにしている。
【0050】
〔研磨方法〕
以上のように構成されたブラストノズル1の前記加速流発生ノズル10に対しては,前述したように図示せざるブラスト加工装置の圧縮気体供給源を連通し,前述した噴射流体P1として0.1〜0.7MPaの圧縮気体を導入する。
【0051】
また,研磨材導入路20に対しても,図示せざるブラスト加工装置の研磨材供給源を連通して,研磨材30を導入可能できるようにする。このとき,研磨材30の搬送を前述した搬送流体P2と混合して行う場合には,搬送流体P2の圧力を,噴射流体P1の圧力よりも低圧,好ましくは3分の2以下の圧力として行う。
【0052】
加速流発生ノズル10に導入する噴射流体,及び研磨材30の搬送に使用する搬送流体の種類は,圧縮気体であれば特に限定されず,本実施形態にあってはブラスト加工に際して一般的に使用されている圧縮空気を使用した。
【0053】
もっとも,使用する研磨材が粉塵火災の虞のある粒径や材質である場合には,不活性ガスの圧縮気体を使用する等,加工条件に応じて種々の圧縮気体を使用可能である。
【0054】
以上のように,ブラストノズル1をブラスト加工装置の圧縮気体供給源及び研磨材供給源のそれぞれに連通し,図3に示すように,加速流発生ノズル10の噴射口11より噴射流体を噴射する。
【0055】
噴射流体の噴射は,噴射口11より噴射された噴射流体が被加工物Wの表面に衝突して,ノズル先端と被加工物Wの表面間の間隔δ1を通過する際に向きを変えて被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させることができるよう,比較的狭い間隔δ1,好ましくは0.5〜3.0mm程度の間隔δ1に調整する(本実施形態にあっては間隔δ1は1.0mm)。
【0056】
また,このような加速流Sが安定して生じるようにするために,噴射口11の直径に対し,加速流発生ノズル10の先端部分の直径φ(図3参照)を,1.4〜2倍程度の寸法に形成することが好ましく,本実施形態にあっては,一例として噴射口11の直径を3mm,加速流発生ノズル10の先端部分の直径φを5mmとした。
【0057】
このようにして,加速流発生ノズル10に対する噴射流体P1の導入を開始すると共に,研磨材導入路20に対し研磨材30を単独又は搬送流体P2との混合流体として導入すると,加速流発生ノズル10の噴射口11より噴射された噴射流体P1は,加速流発生ノズル10と被加工物Wの表面間の間隔δ1に導入されてその向きを変えて加速流発生ノズル10の全周方向に拡散されて,被加工物Wの表面に沿って流れる加速流Sとなる。
【0058】
そして,研磨材導入路20の開口21と被加工物表面間の間隔を通過する際にこの加速流Sに対して研磨材導入路20からの研磨材30が合流され,加速流Sに乗って研磨材30が被加工物の表面を滑動する。
【0059】
前述したように,加速流発生ノズル10に導入された,0.1〜0.7MPa(実施形態において0.3MPa)という比較的高圧の噴射流体P1は,加速流発生ノズル10の先端と被加工物W間に形成された,0.5〜3mm(実施形態において1.0mm)という比較的狭い間隔δ1を通過することで,被加工物の表面に沿って比較的高速の加速流Sが生じ,この加速流Sが,被加工物Wの表面を覆うエアカーテンの如く作用する。
【0060】
そのため,研磨材導入路20に対する研磨材の導入を,圧縮気体である搬送流体P2によって行う場合であっても,研磨材30が被加工物Wの表面に対して垂直方向に衝突すること,従って,研磨材30が被加工物Wの表面に対して垂直方向の切削力を発揮することを防止することが可能となる。
【0061】
特に,搬送流体P2の圧力を,噴射流体P1の圧力に対して低圧とし,好ましくは,搬送流体P2の圧力を噴射流体P1の圧力に対して3分の2以下の圧力とする場合には,研磨材30が被加工物Wの表面に対して垂直方向の切削力を発揮することを大幅に抑制することができる。
【0062】
また,このようにして研磨材の導入を圧縮気体である搬送流体P2によって行うことで,研磨材導入路20の開口21より搬送気体が加速流Sを被加工物Wの表面に押しつけるように吐出されることから,加速流Sが被加工物Wの表面より離れることを防止でき,より長距離に亘って被加工物Wの表面に沿って移動させることが可能である。
【0063】
その結果,研磨材は被加工物Wの表面に対して直交方向の切削力を発揮していた従来の一般的なブラスト加工方法とは異なり,本発明の研磨方法では,研磨材30を被加工物Wの表面に沿って滑動させることにより,被加工物Wの表面に対し水平方向の切削力を発揮させることができるものとなっており,これにより,図6に示すように被加工物の表面に生じていた凹凸における山頂部分から徐々に研磨除去することが可能となっている。
【0064】
このような切削作用から,本発明の研磨方法では,被加工物の表面を深さ方向に必要以上に削り取ることがなく,また,圧縮気体のエネルギーのみでソフトな研磨を行うものであるため,研磨工程において新たに深い研磨傷をつけることが防止できるものとなっている。
【0065】
また,本発明の研磨方法では,ラッピング研磨,ポリッシング研磨等とは異なり研磨材以外は被加工物に触れることがないため,研磨時,研磨後に余計な応力が入り難く,歪み等の発生を防止できるという効果を有するだけでなく,従来の一般的なブラスト加工方法と比較した場合であっても,垂直方向に研磨材が衝突することが抑制されるため,同様に応力の発生や歪みの発生が少ないものとすることができる。
【実施例】
【0066】
次に,本発明の研磨方法による各種テストピースに対する加工試験例を,実施例として以下に紹介する。
【0067】
なお,以下で説明する実施例で使用したブラストノズルは,図1を参照して説明したものと同様の構造のもので,加速流発生ノズル10の噴射口11の直径3mm,ノズル先端部の直径(φ)が5mm,研磨材導入路20の開口21の直径が20mm,加速流発生ノズル10の先端部における突出長さδ2が1.0mmのものを使用した。
【0068】
また,いずれの実施例共に加速流発生ノズルの先端と被加工物Wの表面間の間隔δ1を1.0mmとし,各実施例及び比較例共に,テストピースとして幅90mm,長さ90mmの板体を使用し,このうちの半分(45mm×90mm)を観察した。
【0069】
A.ガラス板に対する加工例
A−1.一般的なブラスト加工との対比試験
(1)試験の目的
凹凸の無いテストピースの表面(鏡面)に対し,本発明の研磨方法(実施例1)と,圧縮気体と共に研磨材を噴射する従来の一般的なブラスト加工(比較例1)をそれぞれ行い,加工後のテストピース表面がどのように変化しているかを観察することで,両加工方法でテストピースの表面における研磨材の挙動の相違を確認する。
【0070】
(2)試験条件
〔実施例1〕
テストピース:ソーダガラス(鏡面)
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯220」(平均粒径53〜45μm)
供給圧力:加速流発生ノズル;0.3MPa(圧縮空気)
研磨材供給ノズル;0.1MPa(圧縮空気)+研磨材
処理時間:13分(観察した45mm×90mm範囲に対する処理時間:以下同じ)
〔比較例1〕
テストピース:ソーダガラス(鏡面)
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯600」(平均粒径20.0±1.5μm)
噴射方法:0.4MPaの圧縮空気と共に研磨材をテストピース表面に対し垂直に噴射
処理時間:1分
【0071】
(3)試験結果
未処理のテストピース(実施例1に使用したもの)の表面状態を図8(A),(B)に,実施例1の処理後のテストピースの表面状態を図9(A),(B)に,比較例1の処理後のテストピースの表面状態を図10(A),(B)にそれぞれ示す。
【0072】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
ここで,上記粗さのパラメータのうち,Ra(算術平均粗さ),Ry(最大高さ),Rz(十点平均粗さ),tp(付加長さ率)は,いずれもJIS(JISB0601-1994)に従う(以下同じ)。
【0075】
また,RMSとは「二乗平均粗さ」であり,この値は,粗さ曲線に基づいて平均線から測定曲線までの偏差を二乗した値の平方根として求められる(図7参照:以下同じ)。
【0076】
(4)試験結果に基づく考察
図8と図10との比較から判るように,処理前には鏡面であったテストピースの表面〔図8(A),(B)〕は,比較例1の処理後,鋭利な形状の山頂,谷底を有する凹凸面に変化していた〔図10(B)参照〕。
【0077】
また,比較例1の加工方法では,実施例1の加工方法に比較して,粒径の小さい(従って,一般に表面を粗くする作用の小さい)研磨材を使用するものでありながら,加工後の表面粗さは,いずれのパラメータにおいても実施例1の加工方法に比較して大きく増大していることが確認された。
【0078】
このことから,比較例1のように,圧縮気体と共に研磨材をテストピースの表面に衝突させる既知のブラスト加工方法では,衝突した研磨材は,テストピースの表面を垂直(深さ)方向に切削する作用を発揮していることが判る。
【0079】
これに対し,実施例1の処理を行った場合には,鏡面であった未処理のテストピース表面が削られて凹凸が形成されてはいるものの,この凹凸の山頂及び谷底は比較例1の場合のような鋭利なものではなく比較的なだらかな形状となっていることが確認できる〔図9(B)参照〕。
【0080】
また,実施例1では,比較例1に比較して粒径の大きな研磨材,従って表面を粗くする効果の大きな研磨材を使用したが,実施例1における処理後のテストピース表面は,何れのパラメータにおいても比較例1に比較して粗さの増加が小さい(形成された凹凸の高低差が小さい)ことを示しており,テストピースの表面に対して直交方向の切削力が発揮されることを大幅に抑制できていることが判る。
【0081】
以上の結果から,実施例1及び比較例1の2つの処理において,テストピースの表面における研磨材の挙動には明らかな相違があることが判り,図18を参照して説明したように,従来の一般的なブラスト加工方法では,衝突時のエネルギーによって研磨材が被加工物の表面を深さ方向に切削するものであるのに対し,本発明の研磨方法(実施例1)が,研磨材を被加工物の表面に沿って滑動させることで,図6を参照して説明したようにテストピースの表面に対して水平方向の切削力を発揮するものであることが判る。
【0082】
また,上記のような本発明の方法(実施例1)における切削原理より,既知のブラスト加工のように被加工物の表面に対し研磨材(砥粒)が衝突することによるダメージを生じさせることなく,かつ,従来のブラスト加工では困難であった,被加工物の表面部分を薄く削り取るといった作業が可能であることが判る。
【0083】
A−2.表面粗さの改善試験(実施例2)
(1)試験の目的
表面に凹凸が生じているガラスのテストピースに対して本発明の研磨方法を適用することで,テストピースの表面粗さの改善(平坦化)が可能であることを確認する。
【0084】
(2)試験条件
テストピース:ソーダガラス(比較例1による加工後のもの)
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
供給圧力:加速流発生ノズル;0.3MPa(圧縮空気)
研磨材供給ノズル;0.1MPa(圧縮空気)+研磨材
処理時間:13分
【0085】
(3)試験結果
実施例2による処理後のテストピースの表面状態を図11(A),(B)に示す〔処理前の表面状態については図10(A),(B)を参照〕。
【0086】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
(4)試験結果に基づく考察
以上の結果から,本発明の方法(実施例2)により,テストピースの表面粗さが改善(平坦化)されていることが確認できた。
【0089】
また,図10(B)と図11(B)の比較から判るように,未処理の状態では,鋭利な山頂及び谷底を有していたテストピースの表面凹凸〔図10(B)参照〕が,本発明の方法(実施例2)による処理後には,角が除去されたなだらかな凹凸形状に変化していることが判る〔図11(B)参照〕。
【0090】
また,表面粗さを示すRa,Ry,Rz,RMSのいずれのパラメータの数値においても,本発明の加工後におけるテストピースの表面にあっては,表面粗さの改善が得られていること,従って,凹凸における高低差が減少していることを示している。
【0091】
しかも,粗さのパラメータ中,tpの数値増大は,50%の切断レベルが元の凹凸における谷底側に移動したこと,従って,元の凹凸に対し山の高さが減少していることを示しており,本発明の方法による研磨が,図6を参照して説明したように,研磨材がテストピースの表面に沿って滑動することにより水平方向の切削力を発揮し,凹凸における山の部分を水平方向に切削することにより行われていることが判る。
【0092】
このように,本発明の研磨方法では,従来の一般的なブラスト加工では困難であった,被加工物表面の平坦度の改善(平滑化)に対しても適用可能であることが確認できた。
【0093】
B.アルミ合金に対する加工例
B−1.表面粗さの改善試験(実施例3,比較例2,3)
(1)試験の目的
表面に凹凸(ヘアライン)が生じているテストピースに対して本発明の研磨方法を適用することで,テストピースの表面粗さを改善することができることを確認すると共に,同様の凹凸(ヘアライン)が形成されたテストピースに対し既知のブラスト加工を行った場合の加工状態と比較し,両加工方法のテストピース表面において研磨材が示す挙動の相違を確認する。
【0094】
(2)試験条件
〔実施例3〕
テストピース:アルミ合金(A5052P)のヘアライン加工品
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
供給圧力:加速流発生ノズル;0.3MPa(圧縮空気)
研磨材供給ノズル;0.1MPa(圧縮空気)+研磨材
処理時間:13分
〔比較例2〕
テストピース:アルミ合金(A5052P)のヘアライン加工品
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
噴射方法:0.2MPaの圧縮空気と共に研磨材をテストピース表面に対し垂直に噴射(ノズルとテストピース間の距離150mm)
処理時間:30秒
〔比較例3〕
テストピース:アルミ合金(A5052P)のヘアライン加工品
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
噴射方法:0.4MPaの圧縮空気と共に研磨材をテストピース表面に対し垂直に噴射(ノズルとテストピース間の距離150mm)
処理時間:30秒
【0095】
(3)試験結果
未処理のテストピース(実施例3で使用したもの)の表面状態を図12(A),(B)に,本発明の方法(実施例3)による処理後のテストピースの表面状態を図13(A),(B)に,噴射圧力を0.2MPaとした従来の一般的なブラスト加工(比較例2)で処理した後のテストピースを図14(A),(B)に,噴射圧力を0.4MPaとした従来の一般的なブラスト加工(比較例3)で処理した後のテストピースを図15(A),(B)に,それぞれ示す。
【0096】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
(4)試験結果に基づく考察
上記の結果より,本発明の研磨方法(実施例3)では,未処理のテストピースに対して表面粗さが改善されており,アルミのように研磨材の衝突により塑性変形を生じ得る材質に対しても,本発明の方法によれば梨地等を発生させることなく好適に研磨を行えることが確認された。
【0099】
また,図12と図13との比較より判るように,未処理のテストピース表面に明確に現れていたヘアライン〔テストピースを幅方向に横断する凹溝及び凸条:図12(A),(B)参照〕が,本発明の処理(実施例3)を行った後には,完全に消失していた〔図13(A),(B)〕。
【0100】
これに対し,従来の一般的なブラスト加工では,噴射圧力を0.2MPaとして,テストピースの表面粗さ(一例としてRa)が大幅に変化(悪化)しない程度に加工を行った場合(比較例2)では,ヘアラインの痕跡を明確に確認することができ〔図14(A),(B)参照〕,しかも,表面粗さが改善されることなく悪化していた(表3参照)。
【0101】
また,従来の一般的なブラスト加工において,噴射圧力を0.4MPaとして更に加工度を上げた場合(比較例3)では,図15(A),(B)に示すように比較例2の場合に比較してヘアラインの存在は不鮮明とはなっているものの,図15(B)に示した立体像の長さ方向の両側辺の形状を観察すると,凹凸の現れ方に一致が見られ,依然として元のヘアラインにおける山頂乃至は谷底に対応する凹凸形状が維持されていることが判る。
【0102】
しかも,このようにして加工度を上げることで,未処理のテストピースはもとより,比較例2のテストピースとの比較でも,粗さの数値が大幅に上昇しており,表面粗さが改善されることなく,更に悪化していることが確認された。
【0103】
以上の試験結果からも,従来の一般的なブラスト加工では,図18を参照して説明したように,元の表面凹凸が持つ形態的な特徴を維持しつつ,テストピースの表面全体に対し深さ方向の切削が行われていることが判り,その結果,ヘアラインが形成されているテストピースを加工した場合,切削量を増加させても,ヘアライン乃至はその痕跡を完全に除去することができなかったものと考えられる。
【0104】
これに対し,本発明の加工方法(実施例3)にあっては,未処理のテストピースの表面に生じていたヘアラインが完全に消失していることからも明らかなように,研磨材を被加工物の表面に沿って滑動させることにより,図6を参照して説明したように凹凸の山の部分を切削除去することにより,深さ方向への切削量を増やすことなく必要最小限の切削で効率的に元の凹凸が持っていた形態的な特徴を消失させているものと考えられる。
【0105】
このような特徴から,本発明の研磨方法は,従来の一般的なブラスト加工方法では行うことができなかった,平坦度の改善や,各種機械部品等のツールマークの除去,表面粗れを生じることなく表面に形成された被膜を除去する等といった作業に好適に適用できるものと考えられる。
【0106】
なお,実施例3における加工後の表面粗さであるRa0.133μmという数値は,従来の一般的なブラスト加工において,番手で3倍程度(♯3000程度)の細かい研磨材を使用して加工を行ったと同程度の表面粗さの状態である。
【0107】
一般に研磨材は粒径が小さい微粉となる程高価であると共に,粒子同士の結合による凝集,飛散や浮遊による作業環境の汚染,更に材質によっては粉塵火災の危険がある等,取り扱いが難しくなることから,本発明の方法によれば,従来の一般的なブラスト加工に比較して粒径の大きな研磨材,従って安価で取り扱いが容易な研磨材を使用して,同等以上の効果が得られることが判る。
【0108】
B−2.加工条件の変化に伴う影響の確認試験(実施例3〜5)
(1)試験の目的
使用する研磨材の粒径及び研磨材供給圧力(図1における搬送流体P2の圧力)の変化が加工状態に及ぼす影響を確認する。
【0109】
(2)試験方法
ヘアライン加工されたアルミ合金板(A5052P)から成る3枚のテストピースに対し,本発明の方法によりそれぞれ下記の表4に示す条件で加工を行った。
【0110】
【表4】
【0111】
(3)試験結果
実施例4による処理後のテストピースの表面状態を図16(A),(B)に,実施例5による処理後のテストピースの表面状態を図17(A),(B)にそれぞれ示す。
【0112】
なお,未処理のテストピース(実施例3で使用したもの)の表面状態は,図12(A),(B)を,実施例3による処理後のテストピースの表面状態は図13(A),(B)を参照。
【0113】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表5に示す。
【0114】
【表5】
【0115】
(4)試験結果に基づく考察
以上の結果から,実施例3〜5のいずれの条件で加工したものについてもヘアラインの除去が行われていることが確認できた(図13,16,17参照)。
【0116】
従来の一般的なブラスト加工(比較例2,3)のように,研磨材がテストピースの表面に対し深さ方向の切削力を発揮している場合には,ヘアラインを完全に除去することができないことに鑑みれば,ヘアラインが消失している実施例3〜5の加工では,使用する研磨材の粒径の相違に拘わらず,いずれも研磨材を被加工物の表面に沿って滑動させることにより,テストピースの表面に対し水平方向の切削力を発揮させることができているものと考えられる。
【0117】
また,実施例3及び5では,研磨材の搬送に使用している搬送流体P2の圧力を0.1MPaとしているのに対し,実施例3では2倍の0.2MPaとし,噴射流体P1の圧力に対して3分の2の圧力に上昇させているが,このような圧力上昇によっても,被加工物の表面に対する垂直方向の切削を抑制できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上で説明した本発明の研磨方法は,従来の一般的なブラスト加工や,既知の研磨方法,例えば研磨紙や研磨布による研磨やラッピング,バフがけ,超音波研磨等に代えて,これらが行われていた各種分野において利用可能である。
【0119】
特に,本発明の研磨方法は,研磨材を被加工物の表面で滑動させることにより,被加工物の表面に対する垂直方向の切削力の発生を抑制する一方で,水平方向の切削力を発揮させて行うものであるから,被加工物の対するダメージを可及的に減少させ,且つ,深さ方向の切削量を減少して表面部分を薄くはぎ取るような研磨を行うことが可能であるから,特に以下のような分野における利用が期待される。
【0120】
(1)ラップ前処理
ラップ処理を行う前処理として,被加工物の表面粗さの改善に利用することができ,特に,本発明の方法では,前述したように被加工物に対して与えるダメージが少ないことから,例えばウェハ(シリコン,石英,サファイア等)の研磨の前処理に使用するに適している。しかも,本発明の方法では,高い表面粗さの改善効果が得られることから,その後のラッピングの労力も大幅に軽減可能となることが期待できる。
【0121】
(2)薄膜除去等
本発明の方法では,研磨材が被加工物表面を滑動することにより,深さ方向の切削量を増加させることなく表面付近の切削が可能であるため,シリコンウエハー表面に形成された薄膜除去等に対しても必要以上の深さで母材を切削することなく薄膜を除去することが可能である。
【0122】
特に,薄膜上に材質の異なる薄膜を形成している場合であっても,本発明の方法による一工程で除去することが可能であり,化学的にエッチングにより除去する場合のように被膜の材質に応じた薬液の交換等の煩雑な作業が不要となる。
【0123】
(3)積層膜の形成前処理(表面活性化)
更に,本発明の方法では,被加工物の表面を滑動する研磨材によって被加工物の表面を極僅かに薄くはぎ取ることが可能であることから,例えばスパッタリングや各種蒸着等による積層膜の形成に先立ち母材の表面に対し本発明の表面処理を施すことで,表面に生じている酸化被膜等を除去して活性表面を露出させる作業を,母材の平坦さを大きく低下させることなく行うことができるものと考える。
【0124】
従って,本発明の研磨方法を,スパッタリングや各種蒸着による積層膜の形成の前処理として行うことで,母材と積層膜の密着強度の向上が得られることが期待される。
【0125】
(4)傷消し,ツールマークの除去
なお,前述したように本発明の方法によれば,テストピース上に形成されたヘアラインの除去が可能であることから,金型や各種機械加工部品の表面に生じた傷や,バイトとの接触痕として生じるツールマークの除去等に際しても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0126】
1 ブラストノズル
10 加速流発生ノズル
11 噴射口
20 研磨材導入路
21 開口
23 連結管
24 研磨材ノズル
25 研磨材ホース
30 研磨材
P1 噴射流体
P2 搬送流体
S 加速流
W 被加工物
δ1 間隔(加速流発生ノズルの先端と被加工物の表面間の)
δ2 突出長さ(研磨材導入路の開口に対する加速流発生ノズル先端の)
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨方法,及び前記研磨方法を実現するためのブラスト加工装置のノズル構造に関し,より詳細には圧縮気体流によって研磨材に運動エネルギーを与えることにより行う被加工物の研磨方法,及び前記研磨方法をブラスト加工装置によって実現するための,ブラスト加工装置のノズル部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物表面の平坦度を改善し,鏡面等の平滑面に加工する既知の研磨方法としては,例えば,研磨紙や研磨布による研磨,バフによる研磨,ラッピング,回転する砥粒との接触による研磨,超音波振動を与えられた砥粒との接触により被加工物を研磨する超仕上げ加工等がある。
【0003】
これに対し,同様に研磨材を用いた加工技術に関するものでありながら,研磨材を被加工物の表面に圧縮流体,例えば圧縮空気と共に噴射して切削を行うブラスト加工は,一般的には被加工物の表面における平坦度を改善するための研磨加工には使用されていない。
【0004】
これは,ブラスト加工が圧縮気体等と共に噴射した研磨材を被加工物の表面に衝突させてこの衝突時のエネルギーによって被加工物の表面を加工するものであるために,研磨材は被加工物Wの表面に対し垂直(深さ)方向の切削力を発揮し,その結果,図18に示すように被加工物の表面に元々生じていた凹凸の形態的な特徴を引き継ぎつつ切削が進むために,切削量が多い割に表面の平坦化が得難いことによる。
【0005】
またブラスト加工では,前述のように研磨材の衝突エネルギーによって切削を行うものであることから,砥粒の衝突に伴う切削や変形によって被加工物の表面に新たな凹凸を形成して梨地とすることも平坦化を困難なものとしている。
【0006】
このように,従来の一般的なブラスト加工方法では,被加工物表面の平坦化,特に,鏡面のように高精度で平坦化を行うことは困難であるが,このようなブラスト加工における欠点を解消し,ブラスト加工によっても被加工物の表面に対する梨地の発生を抑制して,表面を例えば鏡面のような平坦面に加工できるようにすることも提案されている。
【0007】
このようなブラスト加工方法の一例として,出願人は,弾性体である母材内に砥粒を分散させた構造を有する研磨材(本明細書において,このような構造の研磨材を「弾性研磨材」という。)を,被加工物の表面に対して所定の入射角度で噴射あるいは投射することにより,衝突時のエネルギーを弾性体の塑性変形によって吸収させることで梨地の発生を抑制すると共に弾性研磨材を被加工面に沿って滑走させるようにすることで,ブラスト加工を平坦度の改善に使用できるようにすることを提案している(特許文献1)。
【0008】
また,被加工物の加工表面に対して圧縮流体と共に研磨材を,0<V・sinθ≦1/2・V(V=噴射方向における研磨材の速度,θ=被加工物の加工表面に対する研磨材の入射角)という条件で噴射して,既存の研磨材(砥粒)を使用した場合であっても,被加工物の表面に沿った研磨材の噴流を生じさせることで平坦度の改善を行うことができるようにすることも提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−159402号公報
【特許文献2】特開2005−022015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の研磨方法のうち,研磨布や研磨紙による研磨,ラッピング,砥石による研磨等にあっては,粒度の小さい研磨材は研磨力が弱いため,研磨材の粒度を段階的に小さくする多段の研磨工程が必要であり作業が煩雑である。
【0011】
また,研磨量は加工圧力に依存するが,過度に加工歪が生じることを避けるために加工圧力を低く設定すれば,加工速度が低下し,生産性が低いものとなる。
【0012】
これとは逆に,高い加工圧力を加える場合には,研削,研磨割れを起こすおそれがある。
【0013】
また,加工圧力がかかった状態で研磨される被加工物の表面層には,前述のように加工歪が生じるため,被加工物が例えばシリコンウエハーである場合には,ウエハー表面近傍での完全結晶層を確保するために研磨加工の際に生じた加工歪の除去が必要となる場合があり,そのため,研磨加工後に研磨されたウエハーを熱処理したり,酸やアルカリ等を使って表面層を除去する等の工程が必要となる。また,酸やアルカリ等を使って表面層を除去する場合には,この際に使用した酸やアルカリ等の廃液を適切に処理する必要がある等,その作業は極めて煩雑となっている。
【0014】
これに対し,前掲の特許文献1,2として紹介した方法では,従来一般的に行われていた研磨方法であるラッピング等に比較して,研磨後の被加工物に余分な応力が入り難く,また,加工後に歪み等が生じ難いものとすることができる。
【0015】
しかし,特許文献1として紹介したブラスト加工方法では,被加工物の表面における梨地の発生を防止すると共に,被加工物表面に沿って研磨材を滑走させるために,前述した弾性研磨材を使用することで,この弾性研磨材の塑性変形によって衝突時のエネルギーを吸収させており,特殊な構造の研磨材の使用が必須となる。
【0016】
特許文献2として紹介したブラスト加工方法では,研磨材の噴射条件を適切に設定することで,特殊な研磨材を使用することなく,通常の研磨材(砥粒)を使用した場合であっても研磨材を被加工物の表面に沿って滑走させることができ,ブラスト加工によって比較的容易に被加工物の研磨を行うことができる。
【0017】
しかし,この方法では,研磨材の衝突時,被加工物表面に作用する力の垂直成分に対し,水平成分を十分に大きくすることで,衝突した砥粒による被加工物面表面の梨地の発生防止を図ったものであり,入射角θを0(ゼロ)としなければ,垂直成分を除去できない。
【0018】
また,前述した垂直成分を減少させるために入射角θを0(ゼロ)に近付けようとすれば,被加工物の表面に対し噴射ノズルを傾斜させて噴射するか,又は,噴射ノズルより噴射された噴流を被加工物の表面に沿った流れに誘導するための補助機器等が必要となり(特許文献1の図3〜13参照),被加工物の形状等によっては適用が困難な場合も想定される。
【0019】
なお,以上の説明では,被加工物の「研磨」の一例として,平坦度の改善(平滑化)という点を主として説明したが,平坦度の改善(平滑化)の他,例えば元の表面に対し平滑度を低下させる(粗くする)作業や,表面に設けた被膜の除去等といったその他の研磨作業に際しても,ブラスト加工と同様の比較的簡単な作業によって,被加工物の表面に対する垂直方向の切削力を抑制した研磨を行うことができれば,被加工物に対するダメージの軽減と必要以上に切削量が増えることを抑制できる等といったメリットがある。
【0020】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,既知のブラスト加工方法と同様に,圧縮気体流によって研磨材に運動エネルギーを与えることにより研磨を行うものでありながら,弾性研磨材のような特殊な構造の研磨材を使用することなく,通常の研磨材(砥粒)を使用した場合であっても,被加工物の表面に対する垂直方向の切削力の発生を抑制すると共に,水平方向の切削力を発揮させることで,被加工物の表面の平坦度の改善,その他の表面粗さの調整,表面被膜の除去等といった表面部分の切削除去,その他各種研磨を行うことのできる研磨方法,及び前記研磨方法に使用するブラスト加工装置のノズル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために,本発明の研磨方法は,被加工物Wの表面に向けて配置した加速流発生ノズル10に噴射流体P1である研磨材を含まない圧縮気体を導入すると共に噴射して,前記被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させ,
前記加速流Sの発生位置で前記被加工物Wの表面に向かって開口する研磨材導入路20に研磨材30を導入することにより,前記加速流Sに研磨材30を合流させて,前記研磨材30を被加工物Wの表面に沿って滑走させることを特徴とする(請求項1)。
【0022】
上記の研磨方法において,前記研磨材30を,前記加速流発生ノズル10に導入する前記噴射流体P1に比較して低圧の圧縮気体である搬送流体P2と混合して前記研磨材導入路20に導入するものとしても良い(請求項2)。
【0023】
この場合,前記噴射流体P1に対し,前記搬送流体P2を3分の2以下の圧力とすることが好ましい(請求項3)。
【0024】
更に,前述した研磨方法は,前記加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対し,前記研磨材導入路20の開口21と被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)を広くして行うことが好ましい(請求項4:図3参照)。
【0025】
より好ましくは,前記加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1を0.5〜3.0mmとすると共に,前記研磨材導入路20の開口21と前記被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)を,前記加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対して1.0〜3.0mm広く形成する(請求項5)。
【0026】
また,前記研磨方法を実現するための,本発明のブラスト加工装置のノズル構造(ブラストノズル1)は,圧縮気体供給源(図示せず)より噴射流体P1として供給された研磨材を含まない圧縮気体を被加工物Wの表面に向かって噴射して,前記被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させる加速流発生ノズル10と,
前記加速流Sの発生位置で前記被加工物Wの表面に向かって開口すると共に,研磨材供給源(図示せず)からの研磨材30が導入される研磨材導入路20を備えたことを特徴とする(請求項6)。
【0027】
上記のノズル構造において,前記研磨材導入路20を,圧縮気体である搬送流体P2との混合流体として前記研磨材30を供給する研磨材供給源(例えば直圧式のブラスト加工装置の研磨材タンク:図示せず)に連通するものとしても良い(請求項7)。
【0028】
上記ノズル構造における加速流発生ノズル10と研磨材導入路20の配置は,前記加速流発生ノズル10の噴射口11側の端部を,前記研磨材導入路20内に配置することによって実現することができる(請求項8:図1〜3参照)。
【0029】
また,上記の構成に代え,前記加速流発生ノズル10の噴射口11をスリット状に形成すると共に,前記研磨材導入路20の開口21を前記噴射口11と平行に配置するものとしても良く(請求項9:図4参照),この場合,更に前記加速流発生ノズル10の噴射口11の両側に,前記研磨材導入路20の開口21を配置するものとしても良い(請求項10:図5参照)。
【0030】
なお,前記ノズル構造において,前記加速流発生ノズル10の噴射口11を,前記研磨材導入路20の開口21に対し1.0〜3.0mm(図3のδ2に対応)噴射方向に突出させることが好ましい(請求項11)。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した本発明の構成により,本発明の研磨方法によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0032】
被加工物Wの表面に対する噴射流体P1の噴射と,研磨材30の導入とを,加速流発生ノズル10,研磨材導入路20という別個に設けた経路を介して行うことで,被加工物Wの加工面に沿った加速流Sを発生させた後,この加速流Sに対して研磨材30を合流させる構成としたことにより,研磨材30を被加工物の表面に対して垂直方向に衝突させることなく,加速流Sと共に被加工物Wの表面に沿って滑動させることができた。
【0033】
その結果,被加工物Wの表面に対して垂直方向に作用する切削力の発生を抑制し,研磨材30の滑動による水平方向の切削力を生じさせることで,研磨に際して被加工物Wに加わるダメージを大幅に減少することが可能であると共に,従来の一般的なブラスト加工では困難であった平坦度の改善(平滑化)等を目的とした研磨に対しても適用可能な研磨方法を提供することができた。
【0034】
特に,前記研磨材30の搬送を噴射流体P1に対して低圧の搬送流体P2,好ましくは噴射流体P1に対して3分の2以下の圧力の搬送流体P2との混合流体として行うことで,被加工物Wの表面に対して研磨材30が垂直方向の切削力を発揮することを大幅に抑制しつつ,研磨材30の導入を円滑に行うことが可能となり,しかも,研磨材導入路20の開口21から加速流Sに向けて放出される搬送流体P2が,加速流Sを被加工物Wの表面に向けて押し付けるように作用することとなるために,加速流Sが被加工物Wの表面から離れることを防止でき,加速流Sの被加工物W表面に対する追従性を向上させることができた。
【0035】
更に,加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対し,研磨材導入路20の開口21と被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)を広くすること,好ましくは,間隔δ1を0.5〜3.0mm,間隔δ2を1.0〜3.0mmとすることで,加速流発生ノズル10より噴射された噴射流体P1は,間隔δ1を通過する際に好適に被加工物Wの表面に沿った流れである加速流Sになると共に,間隔δ1に対して広く形成された研磨材導入路20と被加工物Wの表面間の間隔(δ1+δ2)に導入されることで,研磨材導入路20の存在によって加速流Sの流れが遮られることが無く,この位置において好適に加速流Sと研磨材30を合流させることができた。
【0036】
なお,前述した方法は,圧縮気体供給源(図示せず)より噴射流体P1として供給された圧縮気体を被加工物Wの表面に向かって噴射して,前記被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させる加速流発生ノズル10と,前記加速流Sの発生位置で前記被加工物Wの表面に向かって開口すると共に,研磨材供給源(図示せず)からの研磨材30が導入される研磨材導入路20を備えたブラスト加工装置のノズル構造(ブラストノズル1)によって実現することができた。
【0037】
このノズル構造において,前記研磨材導入路20を,圧縮気体である搬送流体P2との混合流体として前記研磨材30を供給する研磨材供給源(図示せず)に連通した構成では,研磨材30の搬送及び合流を円滑に行うことができると共に,前述したように搬送流体によって加速流Sを被加工物の表面に向けて押し付けることで,加速流Sが表面より離れることを好適に防止することができた。
【0038】
更に,前記加速流発生ノズル10の噴射口11側の端部を,前記研磨材導入路20内に配置した構成(図1〜3参照)では,加速流発生ノズル10の噴射口11の全周に亘り,被加工物Wの表面に沿って研磨材30を滑動させることができ,加工範囲を広くすることができた。
【0039】
また,前記加速流発生ノズル10の噴射口11をスリット状とした構成(図4,図5参照)にあっては,スリットの長さに対応して広範囲に亘って同時に研磨加工を施すことができ,特に,前記加速流発生ノズル10の噴射口11の両側に研磨材導入路20の開口21を設けた構成(図5参照)では,加速流発生ノズル10を中心として,該ノズル10の開口幅方向の二方向に対して同時に研磨処理を行うことができ,効率的な加工を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の研磨方法に使用するノズル構造(ブラストノズル)の構成例を示す概略断面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】ブラストノズル先端部分の拡大断面図。
【図4】ブラストノズルの先端部分の変形例を示す説明図であり,(A)は側面断面図,(B)は(A)のB−B線断面図。
【図5】ブラストノズルの先端部分の変形例を示す説明図であり,(A)は側面断面図,(B)は(A)のB−B線断面図。
【図6】本発明の方法による被加工物表面の切削過程を模式的に示した説明図。
【図7】RMS(二乗平均粗さ)の説明図。
【図8】未処理のテストピース(ソーダガラス:鏡面)の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図9】本発明の方法(実施例1)による処理後のソーダガラスの表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図10】既知のブラスト加工(比較例1)による処理後のソーダガラスの表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図11】本発明の方法(実施例2)による処理後のソーダガラスの表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図12】未処理のテストピース(アルミ合金:ヘアライン加工品)の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図13】本発明の方法(実施例3)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図14】既知のブラスト加工(比較例2:噴射圧力0.2MPa)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図15】既知のブラスト加工(比較例3:噴射圧力0.4MPa)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図16】本発明の方法(実施例4)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図17】本発明の方法(実施例5)による処理後のアルミ合金の表面電子顕微鏡写真であり,(A)は平面像,(B)は立体像。
【図18】既知のブラスト加工における切削の様子を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0042】
〔ブラストノズル〕
図1中の符号1は,本発明の研磨方法に使用するブラストノズルであり,このブラストノズル1は,圧縮気体供給源及び研磨材供給源を備えた既知のブラスト加工装置(図示せず)に取り付けて使用することで,本発明の研磨方法を実現可能とするものである。
【0043】
このブラストノズル1は,図示せざるブラスト加工装置に設けられた圧縮気体供給源に連通されて,圧縮気体供給源より噴射流体P1として導入された圧縮気体を被加工物Wの表面に向かって噴射して,被加工物Wの表面に沿って流れる加速流Sを生じさせる加速流発生ノズル10と,図示せざる研磨材供給源(例えば研磨材タンク)からの研磨材30を導入して前記加速流Sに合流させる研磨材導入路20を備えており,研磨材導入路20の開口21を前述の加速流Sの発生位置において被加工物Wの表面に向けて配置することにより,研磨材導入路20内に導入した研磨材を,加速流Sと合流させて,被加工物Wの表面を滑動させることができるようにしている。
【0044】
図示の実施形態にあっては,加速流発生ノズル10を円筒状のノズルとして形成すると共に,研磨材導入路20を加速流発生ノズル10の外径に対して大径の内径を有する略円筒形状に形成して,この加速流発生ノズル10の先端側の一部を研磨材導入路20内に同心状に配置することで,噴射口11を中心に,その外周方向における全周を囲むように研磨材導入路20の開口21を形成している(図2参照)。
【0045】
もっとも,加速流発生ノズル10や研磨材導入路20の形状及び配置は,図1〜3に示す実施形態に限定されず,図示の例では円筒状に形成した研磨材導入路20を,例えば角筒状に形成する等しても良く,また,図4(A),(B)に示すように,加速流発生ノズル10の噴射口11をスリット状に形成し,このスリット状に形成された加速流発生ノズル10の噴射口11と平行に,研磨材導入路20の開口21を設ける構成としても良く,更には,図5(A),(B)に示すように,この研磨材導入路20の開口21を,加速流発生ノズル10の噴射口11を中心に両側に配置するものとしても良く〔図5(B)参照〕,加速流発生ノズル10で発生させた加速流Sに向けて研磨材導入路20の開口21が設けられることにより加速流Sに対して研磨材を合流させることができるものであれば,各種の設計変更が可能である。
【0046】
前述の加速流発生ノズル10の噴射口11は,研磨材導入路20の開口21より僅かな突出長さ(図3のδ2)で噴射方向に飛び出した配置となるように加速流発生ノズル10と研磨材導入路20の配置が決定されている。
【0047】
この加速流発生ノズル10の先端部における突出長さδ2は,好ましくは1.0〜3.0mmであり,図示の実施形態にあっては,この突出長さδ2を1.0mmとすることで,加速流発生ノズル10の噴射口11を被加工物の表面に向けて配置した際に,加速流発生ノズル10の噴射口11と被加工物Wの表面間の間隔δ1に対し,研磨剤導入路20の開口21と被加工物Wの表面間の間隔が大きくなるように構成している。
【0048】
前述した研磨材導入路20に対する研磨材30の導入は,例えば研磨材導入路20に対して高所に配置された研磨材タンク(図示せず)から研磨材を重力によって落下させることにより行うものとしても良いが,本実施形態にあっては,前述の研磨材導入路20の内部空間を,例えば直圧式のブラスト加工装置の研磨材タンクのように圧縮気体である搬送流体P2によって加圧された研磨材タンク(図示せず)に連通することで,前記搬送流体P2との混合流体として搬送された研磨材30を,研磨材導入路20の内部空間に導入すると共に,前述した開口21を介して加速流Sと合流させることができるようにしている。
【0049】
このような研磨材30の搬送を可能とするために,図1に示す実施形態にあっては,図示せざる研磨材タンクに連通した研磨材ホース25の先端に研磨材ノズル24を取り付けて研磨材の搬送量を制御すると共に,この研磨材ノズル24の先端を,研磨材導入路20の内部空間と連通した連結管23内に挿入することで,研磨材導入路20内に搬送流体P2と共に研磨材30を導入することができるようにしている。
【0050】
〔研磨方法〕
以上のように構成されたブラストノズル1の前記加速流発生ノズル10に対しては,前述したように図示せざるブラスト加工装置の圧縮気体供給源を連通し,前述した噴射流体P1として0.1〜0.7MPaの圧縮気体を導入する。
【0051】
また,研磨材導入路20に対しても,図示せざるブラスト加工装置の研磨材供給源を連通して,研磨材30を導入可能できるようにする。このとき,研磨材30の搬送を前述した搬送流体P2と混合して行う場合には,搬送流体P2の圧力を,噴射流体P1の圧力よりも低圧,好ましくは3分の2以下の圧力として行う。
【0052】
加速流発生ノズル10に導入する噴射流体,及び研磨材30の搬送に使用する搬送流体の種類は,圧縮気体であれば特に限定されず,本実施形態にあってはブラスト加工に際して一般的に使用されている圧縮空気を使用した。
【0053】
もっとも,使用する研磨材が粉塵火災の虞のある粒径や材質である場合には,不活性ガスの圧縮気体を使用する等,加工条件に応じて種々の圧縮気体を使用可能である。
【0054】
以上のように,ブラストノズル1をブラスト加工装置の圧縮気体供給源及び研磨材供給源のそれぞれに連通し,図3に示すように,加速流発生ノズル10の噴射口11より噴射流体を噴射する。
【0055】
噴射流体の噴射は,噴射口11より噴射された噴射流体が被加工物Wの表面に衝突して,ノズル先端と被加工物Wの表面間の間隔δ1を通過する際に向きを変えて被加工物Wの表面に沿った加速流Sを発生させることができるよう,比較的狭い間隔δ1,好ましくは0.5〜3.0mm程度の間隔δ1に調整する(本実施形態にあっては間隔δ1は1.0mm)。
【0056】
また,このような加速流Sが安定して生じるようにするために,噴射口11の直径に対し,加速流発生ノズル10の先端部分の直径φ(図3参照)を,1.4〜2倍程度の寸法に形成することが好ましく,本実施形態にあっては,一例として噴射口11の直径を3mm,加速流発生ノズル10の先端部分の直径φを5mmとした。
【0057】
このようにして,加速流発生ノズル10に対する噴射流体P1の導入を開始すると共に,研磨材導入路20に対し研磨材30を単独又は搬送流体P2との混合流体として導入すると,加速流発生ノズル10の噴射口11より噴射された噴射流体P1は,加速流発生ノズル10と被加工物Wの表面間の間隔δ1に導入されてその向きを変えて加速流発生ノズル10の全周方向に拡散されて,被加工物Wの表面に沿って流れる加速流Sとなる。
【0058】
そして,研磨材導入路20の開口21と被加工物表面間の間隔を通過する際にこの加速流Sに対して研磨材導入路20からの研磨材30が合流され,加速流Sに乗って研磨材30が被加工物の表面を滑動する。
【0059】
前述したように,加速流発生ノズル10に導入された,0.1〜0.7MPa(実施形態において0.3MPa)という比較的高圧の噴射流体P1は,加速流発生ノズル10の先端と被加工物W間に形成された,0.5〜3mm(実施形態において1.0mm)という比較的狭い間隔δ1を通過することで,被加工物の表面に沿って比較的高速の加速流Sが生じ,この加速流Sが,被加工物Wの表面を覆うエアカーテンの如く作用する。
【0060】
そのため,研磨材導入路20に対する研磨材の導入を,圧縮気体である搬送流体P2によって行う場合であっても,研磨材30が被加工物Wの表面に対して垂直方向に衝突すること,従って,研磨材30が被加工物Wの表面に対して垂直方向の切削力を発揮することを防止することが可能となる。
【0061】
特に,搬送流体P2の圧力を,噴射流体P1の圧力に対して低圧とし,好ましくは,搬送流体P2の圧力を噴射流体P1の圧力に対して3分の2以下の圧力とする場合には,研磨材30が被加工物Wの表面に対して垂直方向の切削力を発揮することを大幅に抑制することができる。
【0062】
また,このようにして研磨材の導入を圧縮気体である搬送流体P2によって行うことで,研磨材導入路20の開口21より搬送気体が加速流Sを被加工物Wの表面に押しつけるように吐出されることから,加速流Sが被加工物Wの表面より離れることを防止でき,より長距離に亘って被加工物Wの表面に沿って移動させることが可能である。
【0063】
その結果,研磨材は被加工物Wの表面に対して直交方向の切削力を発揮していた従来の一般的なブラスト加工方法とは異なり,本発明の研磨方法では,研磨材30を被加工物Wの表面に沿って滑動させることにより,被加工物Wの表面に対し水平方向の切削力を発揮させることができるものとなっており,これにより,図6に示すように被加工物の表面に生じていた凹凸における山頂部分から徐々に研磨除去することが可能となっている。
【0064】
このような切削作用から,本発明の研磨方法では,被加工物の表面を深さ方向に必要以上に削り取ることがなく,また,圧縮気体のエネルギーのみでソフトな研磨を行うものであるため,研磨工程において新たに深い研磨傷をつけることが防止できるものとなっている。
【0065】
また,本発明の研磨方法では,ラッピング研磨,ポリッシング研磨等とは異なり研磨材以外は被加工物に触れることがないため,研磨時,研磨後に余計な応力が入り難く,歪み等の発生を防止できるという効果を有するだけでなく,従来の一般的なブラスト加工方法と比較した場合であっても,垂直方向に研磨材が衝突することが抑制されるため,同様に応力の発生や歪みの発生が少ないものとすることができる。
【実施例】
【0066】
次に,本発明の研磨方法による各種テストピースに対する加工試験例を,実施例として以下に紹介する。
【0067】
なお,以下で説明する実施例で使用したブラストノズルは,図1を参照して説明したものと同様の構造のもので,加速流発生ノズル10の噴射口11の直径3mm,ノズル先端部の直径(φ)が5mm,研磨材導入路20の開口21の直径が20mm,加速流発生ノズル10の先端部における突出長さδ2が1.0mmのものを使用した。
【0068】
また,いずれの実施例共に加速流発生ノズルの先端と被加工物Wの表面間の間隔δ1を1.0mmとし,各実施例及び比較例共に,テストピースとして幅90mm,長さ90mmの板体を使用し,このうちの半分(45mm×90mm)を観察した。
【0069】
A.ガラス板に対する加工例
A−1.一般的なブラスト加工との対比試験
(1)試験の目的
凹凸の無いテストピースの表面(鏡面)に対し,本発明の研磨方法(実施例1)と,圧縮気体と共に研磨材を噴射する従来の一般的なブラスト加工(比較例1)をそれぞれ行い,加工後のテストピース表面がどのように変化しているかを観察することで,両加工方法でテストピースの表面における研磨材の挙動の相違を確認する。
【0070】
(2)試験条件
〔実施例1〕
テストピース:ソーダガラス(鏡面)
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯220」(平均粒径53〜45μm)
供給圧力:加速流発生ノズル;0.3MPa(圧縮空気)
研磨材供給ノズル;0.1MPa(圧縮空気)+研磨材
処理時間:13分(観察した45mm×90mm範囲に対する処理時間:以下同じ)
〔比較例1〕
テストピース:ソーダガラス(鏡面)
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯600」(平均粒径20.0±1.5μm)
噴射方法:0.4MPaの圧縮空気と共に研磨材をテストピース表面に対し垂直に噴射
処理時間:1分
【0071】
(3)試験結果
未処理のテストピース(実施例1に使用したもの)の表面状態を図8(A),(B)に,実施例1の処理後のテストピースの表面状態を図9(A),(B)に,比較例1の処理後のテストピースの表面状態を図10(A),(B)にそれぞれ示す。
【0072】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
ここで,上記粗さのパラメータのうち,Ra(算術平均粗さ),Ry(最大高さ),Rz(十点平均粗さ),tp(付加長さ率)は,いずれもJIS(JISB0601-1994)に従う(以下同じ)。
【0075】
また,RMSとは「二乗平均粗さ」であり,この値は,粗さ曲線に基づいて平均線から測定曲線までの偏差を二乗した値の平方根として求められる(図7参照:以下同じ)。
【0076】
(4)試験結果に基づく考察
図8と図10との比較から判るように,処理前には鏡面であったテストピースの表面〔図8(A),(B)〕は,比較例1の処理後,鋭利な形状の山頂,谷底を有する凹凸面に変化していた〔図10(B)参照〕。
【0077】
また,比較例1の加工方法では,実施例1の加工方法に比較して,粒径の小さい(従って,一般に表面を粗くする作用の小さい)研磨材を使用するものでありながら,加工後の表面粗さは,いずれのパラメータにおいても実施例1の加工方法に比較して大きく増大していることが確認された。
【0078】
このことから,比較例1のように,圧縮気体と共に研磨材をテストピースの表面に衝突させる既知のブラスト加工方法では,衝突した研磨材は,テストピースの表面を垂直(深さ)方向に切削する作用を発揮していることが判る。
【0079】
これに対し,実施例1の処理を行った場合には,鏡面であった未処理のテストピース表面が削られて凹凸が形成されてはいるものの,この凹凸の山頂及び谷底は比較例1の場合のような鋭利なものではなく比較的なだらかな形状となっていることが確認できる〔図9(B)参照〕。
【0080】
また,実施例1では,比較例1に比較して粒径の大きな研磨材,従って表面を粗くする効果の大きな研磨材を使用したが,実施例1における処理後のテストピース表面は,何れのパラメータにおいても比較例1に比較して粗さの増加が小さい(形成された凹凸の高低差が小さい)ことを示しており,テストピースの表面に対して直交方向の切削力が発揮されることを大幅に抑制できていることが判る。
【0081】
以上の結果から,実施例1及び比較例1の2つの処理において,テストピースの表面における研磨材の挙動には明らかな相違があることが判り,図18を参照して説明したように,従来の一般的なブラスト加工方法では,衝突時のエネルギーによって研磨材が被加工物の表面を深さ方向に切削するものであるのに対し,本発明の研磨方法(実施例1)が,研磨材を被加工物の表面に沿って滑動させることで,図6を参照して説明したようにテストピースの表面に対して水平方向の切削力を発揮するものであることが判る。
【0082】
また,上記のような本発明の方法(実施例1)における切削原理より,既知のブラスト加工のように被加工物の表面に対し研磨材(砥粒)が衝突することによるダメージを生じさせることなく,かつ,従来のブラスト加工では困難であった,被加工物の表面部分を薄く削り取るといった作業が可能であることが判る。
【0083】
A−2.表面粗さの改善試験(実施例2)
(1)試験の目的
表面に凹凸が生じているガラスのテストピースに対して本発明の研磨方法を適用することで,テストピースの表面粗さの改善(平坦化)が可能であることを確認する。
【0084】
(2)試験条件
テストピース:ソーダガラス(比較例1による加工後のもの)
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
供給圧力:加速流発生ノズル;0.3MPa(圧縮空気)
研磨材供給ノズル;0.1MPa(圧縮空気)+研磨材
処理時間:13分
【0085】
(3)試験結果
実施例2による処理後のテストピースの表面状態を図11(A),(B)に示す〔処理前の表面状態については図10(A),(B)を参照〕。
【0086】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
(4)試験結果に基づく考察
以上の結果から,本発明の方法(実施例2)により,テストピースの表面粗さが改善(平坦化)されていることが確認できた。
【0089】
また,図10(B)と図11(B)の比較から判るように,未処理の状態では,鋭利な山頂及び谷底を有していたテストピースの表面凹凸〔図10(B)参照〕が,本発明の方法(実施例2)による処理後には,角が除去されたなだらかな凹凸形状に変化していることが判る〔図11(B)参照〕。
【0090】
また,表面粗さを示すRa,Ry,Rz,RMSのいずれのパラメータの数値においても,本発明の加工後におけるテストピースの表面にあっては,表面粗さの改善が得られていること,従って,凹凸における高低差が減少していることを示している。
【0091】
しかも,粗さのパラメータ中,tpの数値増大は,50%の切断レベルが元の凹凸における谷底側に移動したこと,従って,元の凹凸に対し山の高さが減少していることを示しており,本発明の方法による研磨が,図6を参照して説明したように,研磨材がテストピースの表面に沿って滑動することにより水平方向の切削力を発揮し,凹凸における山の部分を水平方向に切削することにより行われていることが判る。
【0092】
このように,本発明の研磨方法では,従来の一般的なブラスト加工では困難であった,被加工物表面の平坦度の改善(平滑化)に対しても適用可能であることが確認できた。
【0093】
B.アルミ合金に対する加工例
B−1.表面粗さの改善試験(実施例3,比較例2,3)
(1)試験の目的
表面に凹凸(ヘアライン)が生じているテストピースに対して本発明の研磨方法を適用することで,テストピースの表面粗さを改善することができることを確認すると共に,同様の凹凸(ヘアライン)が形成されたテストピースに対し既知のブラスト加工を行った場合の加工状態と比較し,両加工方法のテストピース表面において研磨材が示す挙動の相違を確認する。
【0094】
(2)試験条件
〔実施例3〕
テストピース:アルミ合金(A5052P)のヘアライン加工品
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
供給圧力:加速流発生ノズル;0.3MPa(圧縮空気)
研磨材供給ノズル;0.1MPa(圧縮空気)+研磨材
処理時間:13分
〔比較例2〕
テストピース:アルミ合金(A5052P)のヘアライン加工品
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
噴射方法:0.2MPaの圧縮空気と共に研磨材をテストピース表面に対し垂直に噴射(ノズルとテストピース間の距離150mm)
処理時間:30秒
〔比較例3〕
テストピース:アルミ合金(A5052P)のヘアライン加工品
研磨材:不二製作所製の高純度アルミナ研磨材「フジランダムWA♯1000」(平均粒径11.5±1.0μm)
噴射方法:0.4MPaの圧縮空気と共に研磨材をテストピース表面に対し垂直に噴射(ノズルとテストピース間の距離150mm)
処理時間:30秒
【0095】
(3)試験結果
未処理のテストピース(実施例3で使用したもの)の表面状態を図12(A),(B)に,本発明の方法(実施例3)による処理後のテストピースの表面状態を図13(A),(B)に,噴射圧力を0.2MPaとした従来の一般的なブラスト加工(比較例2)で処理した後のテストピースを図14(A),(B)に,噴射圧力を0.4MPaとした従来の一般的なブラスト加工(比較例3)で処理した後のテストピースを図15(A),(B)に,それぞれ示す。
【0096】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
(4)試験結果に基づく考察
上記の結果より,本発明の研磨方法(実施例3)では,未処理のテストピースに対して表面粗さが改善されており,アルミのように研磨材の衝突により塑性変形を生じ得る材質に対しても,本発明の方法によれば梨地等を発生させることなく好適に研磨を行えることが確認された。
【0099】
また,図12と図13との比較より判るように,未処理のテストピース表面に明確に現れていたヘアライン〔テストピースを幅方向に横断する凹溝及び凸条:図12(A),(B)参照〕が,本発明の処理(実施例3)を行った後には,完全に消失していた〔図13(A),(B)〕。
【0100】
これに対し,従来の一般的なブラスト加工では,噴射圧力を0.2MPaとして,テストピースの表面粗さ(一例としてRa)が大幅に変化(悪化)しない程度に加工を行った場合(比較例2)では,ヘアラインの痕跡を明確に確認することができ〔図14(A),(B)参照〕,しかも,表面粗さが改善されることなく悪化していた(表3参照)。
【0101】
また,従来の一般的なブラスト加工において,噴射圧力を0.4MPaとして更に加工度を上げた場合(比較例3)では,図15(A),(B)に示すように比較例2の場合に比較してヘアラインの存在は不鮮明とはなっているものの,図15(B)に示した立体像の長さ方向の両側辺の形状を観察すると,凹凸の現れ方に一致が見られ,依然として元のヘアラインにおける山頂乃至は谷底に対応する凹凸形状が維持されていることが判る。
【0102】
しかも,このようにして加工度を上げることで,未処理のテストピースはもとより,比較例2のテストピースとの比較でも,粗さの数値が大幅に上昇しており,表面粗さが改善されることなく,更に悪化していることが確認された。
【0103】
以上の試験結果からも,従来の一般的なブラスト加工では,図18を参照して説明したように,元の表面凹凸が持つ形態的な特徴を維持しつつ,テストピースの表面全体に対し深さ方向の切削が行われていることが判り,その結果,ヘアラインが形成されているテストピースを加工した場合,切削量を増加させても,ヘアライン乃至はその痕跡を完全に除去することができなかったものと考えられる。
【0104】
これに対し,本発明の加工方法(実施例3)にあっては,未処理のテストピースの表面に生じていたヘアラインが完全に消失していることからも明らかなように,研磨材を被加工物の表面に沿って滑動させることにより,図6を参照して説明したように凹凸の山の部分を切削除去することにより,深さ方向への切削量を増やすことなく必要最小限の切削で効率的に元の凹凸が持っていた形態的な特徴を消失させているものと考えられる。
【0105】
このような特徴から,本発明の研磨方法は,従来の一般的なブラスト加工方法では行うことができなかった,平坦度の改善や,各種機械部品等のツールマークの除去,表面粗れを生じることなく表面に形成された被膜を除去する等といった作業に好適に適用できるものと考えられる。
【0106】
なお,実施例3における加工後の表面粗さであるRa0.133μmという数値は,従来の一般的なブラスト加工において,番手で3倍程度(♯3000程度)の細かい研磨材を使用して加工を行ったと同程度の表面粗さの状態である。
【0107】
一般に研磨材は粒径が小さい微粉となる程高価であると共に,粒子同士の結合による凝集,飛散や浮遊による作業環境の汚染,更に材質によっては粉塵火災の危険がある等,取り扱いが難しくなることから,本発明の方法によれば,従来の一般的なブラスト加工に比較して粒径の大きな研磨材,従って安価で取り扱いが容易な研磨材を使用して,同等以上の効果が得られることが判る。
【0108】
B−2.加工条件の変化に伴う影響の確認試験(実施例3〜5)
(1)試験の目的
使用する研磨材の粒径及び研磨材供給圧力(図1における搬送流体P2の圧力)の変化が加工状態に及ぼす影響を確認する。
【0109】
(2)試験方法
ヘアライン加工されたアルミ合金板(A5052P)から成る3枚のテストピースに対し,本発明の方法によりそれぞれ下記の表4に示す条件で加工を行った。
【0110】
【表4】
【0111】
(3)試験結果
実施例4による処理後のテストピースの表面状態を図16(A),(B)に,実施例5による処理後のテストピースの表面状態を図17(A),(B)にそれぞれ示す。
【0112】
なお,未処理のテストピース(実施例3で使用したもの)の表面状態は,図12(A),(B)を,実施例3による処理後のテストピースの表面状態は図13(A),(B)を参照。
【0113】
また,各テストピースの表面粗さを下記の表5に示す。
【0114】
【表5】
【0115】
(4)試験結果に基づく考察
以上の結果から,実施例3〜5のいずれの条件で加工したものについてもヘアラインの除去が行われていることが確認できた(図13,16,17参照)。
【0116】
従来の一般的なブラスト加工(比較例2,3)のように,研磨材がテストピースの表面に対し深さ方向の切削力を発揮している場合には,ヘアラインを完全に除去することができないことに鑑みれば,ヘアラインが消失している実施例3〜5の加工では,使用する研磨材の粒径の相違に拘わらず,いずれも研磨材を被加工物の表面に沿って滑動させることにより,テストピースの表面に対し水平方向の切削力を発揮させることができているものと考えられる。
【0117】
また,実施例3及び5では,研磨材の搬送に使用している搬送流体P2の圧力を0.1MPaとしているのに対し,実施例3では2倍の0.2MPaとし,噴射流体P1の圧力に対して3分の2の圧力に上昇させているが,このような圧力上昇によっても,被加工物の表面に対する垂直方向の切削を抑制できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上で説明した本発明の研磨方法は,従来の一般的なブラスト加工や,既知の研磨方法,例えば研磨紙や研磨布による研磨やラッピング,バフがけ,超音波研磨等に代えて,これらが行われていた各種分野において利用可能である。
【0119】
特に,本発明の研磨方法は,研磨材を被加工物の表面で滑動させることにより,被加工物の表面に対する垂直方向の切削力の発生を抑制する一方で,水平方向の切削力を発揮させて行うものであるから,被加工物の対するダメージを可及的に減少させ,且つ,深さ方向の切削量を減少して表面部分を薄くはぎ取るような研磨を行うことが可能であるから,特に以下のような分野における利用が期待される。
【0120】
(1)ラップ前処理
ラップ処理を行う前処理として,被加工物の表面粗さの改善に利用することができ,特に,本発明の方法では,前述したように被加工物に対して与えるダメージが少ないことから,例えばウェハ(シリコン,石英,サファイア等)の研磨の前処理に使用するに適している。しかも,本発明の方法では,高い表面粗さの改善効果が得られることから,その後のラッピングの労力も大幅に軽減可能となることが期待できる。
【0121】
(2)薄膜除去等
本発明の方法では,研磨材が被加工物表面を滑動することにより,深さ方向の切削量を増加させることなく表面付近の切削が可能であるため,シリコンウエハー表面に形成された薄膜除去等に対しても必要以上の深さで母材を切削することなく薄膜を除去することが可能である。
【0122】
特に,薄膜上に材質の異なる薄膜を形成している場合であっても,本発明の方法による一工程で除去することが可能であり,化学的にエッチングにより除去する場合のように被膜の材質に応じた薬液の交換等の煩雑な作業が不要となる。
【0123】
(3)積層膜の形成前処理(表面活性化)
更に,本発明の方法では,被加工物の表面を滑動する研磨材によって被加工物の表面を極僅かに薄くはぎ取ることが可能であることから,例えばスパッタリングや各種蒸着等による積層膜の形成に先立ち母材の表面に対し本発明の表面処理を施すことで,表面に生じている酸化被膜等を除去して活性表面を露出させる作業を,母材の平坦さを大きく低下させることなく行うことができるものと考える。
【0124】
従って,本発明の研磨方法を,スパッタリングや各種蒸着による積層膜の形成の前処理として行うことで,母材と積層膜の密着強度の向上が得られることが期待される。
【0125】
(4)傷消し,ツールマークの除去
なお,前述したように本発明の方法によれば,テストピース上に形成されたヘアラインの除去が可能であることから,金型や各種機械加工部品の表面に生じた傷や,バイトとの接触痕として生じるツールマークの除去等に際しても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0126】
1 ブラストノズル
10 加速流発生ノズル
11 噴射口
20 研磨材導入路
21 開口
23 連結管
24 研磨材ノズル
25 研磨材ホース
30 研磨材
P1 噴射流体
P2 搬送流体
S 加速流
W 被加工物
δ1 間隔(加速流発生ノズルの先端と被加工物の表面間の)
δ2 突出長さ(研磨材導入路の開口に対する加速流発生ノズル先端の)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の表面に向けて配置した加速流発生ノズルに噴射流体として研磨材を含まない圧縮気体を導入すると共に噴射して,前記被加工物の表面に沿った加速流を発生させ,
前記加速流の発生位置で前記被加工物の表面に向かって開口する研磨材導入路に研磨材を導入することにより,前記加速流に研磨材を合流させて,前記研磨材を被加工物の表面に沿って滑走させることを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
前記研磨材を,前記加速流発生ノズルに導入する前記噴射流体に比較して低圧の圧縮気体である搬送流体と混合して前記研磨材導入路に導入することを特徴とする請求項1記載の研磨方法。
【請求項3】
前記噴射流体に対し,前記搬送流体を3分の2以下の圧力としたことを特徴とする請求項2記載の研磨方法。
【請求項4】
前記加速流発生ノズルの噴射口と被加工物の表面間の間隔に対し,前記研磨材導入路の開口と被加工物の表面間の間隔を広くしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の研磨方法。
【請求項5】
前記加速流発生ノズルの噴射口と被加工物の表面間の間隔を0.5〜3.0mmとすると共に,前記研磨材導入路の開口と前記被加工物の表面間の間隔を,前記加速流発生ノズルの噴射口と被加工物の表面間の間隔に対して1.0〜3.0mm広く形成したことを特徴とする請求項4記載の研磨方法。
【請求項6】
圧縮気体供給源より噴射流体として供給された研磨材を含まない圧縮気体を被加工物の表面に向かって噴射して,前記被加工物の表面に沿った加速流を発生させる加速流発生ノズルと,
前記加速流の発生位置で前記被加工物の表面に向かって開口すると共に,研磨材供給源からの研磨材が導入される研磨材導入路を備えたことを特徴とするブラスト加工装置のノズル構造。
【請求項7】
前記研磨材導入路を,圧縮気体である搬送流体との混合流体として前記研磨材を供給する研磨材供給源に連通することを特徴とする請求項6記載のブラスト加工装置におけるノズル構造。
【請求項8】
前記加速流発生ノズルの噴射口側の端部を,前記研磨材導入路内に配置したことを特徴とする請求項6又は7記載のブラスト加工装置のノズル構造。
【請求項9】
前記加速流発生ノズルの噴射口をスリット状に形成すると共に,前記研磨材導入路の開口を前記噴射口と平行に配置したことを特徴とする請求項6又は7記載のブラストノズル。
【請求項10】
前記加速流発生ノズルの噴射口の両側に,前記研磨材導入路の開口を配置したことを特徴とする請求項9記載のブラストノズル。
【請求項11】
前記加速流発生ノズルの噴射口を,前記研磨材導入路の開口に対し1.0〜3.0mm噴射方向に突出させたことを特徴とする請求項6〜10いずれか1項記載のブラストノズル。
【請求項1】
被加工物の表面に向けて配置した加速流発生ノズルに噴射流体として研磨材を含まない圧縮気体を導入すると共に噴射して,前記被加工物の表面に沿った加速流を発生させ,
前記加速流の発生位置で前記被加工物の表面に向かって開口する研磨材導入路に研磨材を導入することにより,前記加速流に研磨材を合流させて,前記研磨材を被加工物の表面に沿って滑走させることを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
前記研磨材を,前記加速流発生ノズルに導入する前記噴射流体に比較して低圧の圧縮気体である搬送流体と混合して前記研磨材導入路に導入することを特徴とする請求項1記載の研磨方法。
【請求項3】
前記噴射流体に対し,前記搬送流体を3分の2以下の圧力としたことを特徴とする請求項2記載の研磨方法。
【請求項4】
前記加速流発生ノズルの噴射口と被加工物の表面間の間隔に対し,前記研磨材導入路の開口と被加工物の表面間の間隔を広くしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の研磨方法。
【請求項5】
前記加速流発生ノズルの噴射口と被加工物の表面間の間隔を0.5〜3.0mmとすると共に,前記研磨材導入路の開口と前記被加工物の表面間の間隔を,前記加速流発生ノズルの噴射口と被加工物の表面間の間隔に対して1.0〜3.0mm広く形成したことを特徴とする請求項4記載の研磨方法。
【請求項6】
圧縮気体供給源より噴射流体として供給された研磨材を含まない圧縮気体を被加工物の表面に向かって噴射して,前記被加工物の表面に沿った加速流を発生させる加速流発生ノズルと,
前記加速流の発生位置で前記被加工物の表面に向かって開口すると共に,研磨材供給源からの研磨材が導入される研磨材導入路を備えたことを特徴とするブラスト加工装置のノズル構造。
【請求項7】
前記研磨材導入路を,圧縮気体である搬送流体との混合流体として前記研磨材を供給する研磨材供給源に連通することを特徴とする請求項6記載のブラスト加工装置におけるノズル構造。
【請求項8】
前記加速流発生ノズルの噴射口側の端部を,前記研磨材導入路内に配置したことを特徴とする請求項6又は7記載のブラスト加工装置のノズル構造。
【請求項9】
前記加速流発生ノズルの噴射口をスリット状に形成すると共に,前記研磨材導入路の開口を前記噴射口と平行に配置したことを特徴とする請求項6又は7記載のブラストノズル。
【請求項10】
前記加速流発生ノズルの噴射口の両側に,前記研磨材導入路の開口を配置したことを特徴とする請求項9記載のブラストノズル。
【請求項11】
前記加速流発生ノズルの噴射口を,前記研磨材導入路の開口に対し1.0〜3.0mm噴射方向に突出させたことを特徴とする請求項6〜10いずれか1項記載のブラストノズル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図18】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図18】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−223823(P2012−223823A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90365(P2011−90365)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000154129)株式会社不二製作所 (46)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000154129)株式会社不二製作所 (46)
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