説明

研磨材定量供給装置

【課題】ドライアイスの粒体や氷粒等を研磨材とする場合であっても定量供給を行うことのできる研磨材の定量供給装置を提供する。
【解決手段】回転ディスク20の計量孔21に充填された研磨材を取り出すために,前記計量孔21内に圧縮気体を吹き込む研磨材混合部40に,第1のシリンダ41と,第2のシリンダ42を設け回転ディスク20を介して対向配置する。両シリンダ41,42内にはそれぞれピストン43,44を挿入すると共に,前記計量孔21の形成位置に対応してピストン43,44に貫通孔43a,44aを設けている。その結果,第1のシリンダ41に圧縮気体供給源を,第2のシリンダ42にブラストガンを連通して圧縮気体の導入によりシリンダ41,42内の圧力を高めると,ピストン43,44が回転ディスク20に押圧され,計量孔21の両端に,貫通孔43a,44aを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨材定量供給装置に関し,より詳細には,研磨材を圧縮気体と共にブラストガンより被加工物に噴射,衝突させて加工を行うブラスト加工において,前記ブラストガンに対し圧縮気体と共に研磨材を定量供給する際に使用するに適した研磨材定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラストガンより圧縮空気と共に研磨材を噴射して切削加工やバリ取り,クリーニング等を行うブラスト加工において,被加工物に対して噴射する研磨材の量にばらつきが生じると,被加工物に対する加工量が変化するために加工むらが生じる等,加工精度を一定に保つことができない。
【0003】
そのため,ブラスト加工装置に設けたブラストガンより噴射される研磨材が常に一定量となるように,ブラストガンに導入する圧縮気体に対して研磨材を定量ずつ合流させた混合流体を得,この混合流体をブラストガンに導入することで,ブラストガンより定量の研磨材を継続的に噴射することができるようにした研磨材の定量供給装置が提案されている。
【0004】
このような研磨材定量供給装置の一例として,本願の出願人は既に図7に示す定量供給装置100を提案している。
【0005】
この図7に示す研磨材の定量供給装置100は,圧力容器として構成された研磨材タンク110内に水平回転する回転ディスク120を設け,この回転ディスク120の片面に研磨材搬送路111の一端111aにおける開口部を近接又は接触させて配置すると共に,他面に前記研磨材搬送路111の一端開口部に対向して空気導入路112の一端112aにおける開口部を近接又は接触させて配置し,前記研磨材搬送路111の開口部と空気導入路112の開口部間を通る回転軌道上において回転ディスク120の肉厚を貫通する計量孔121を等間隔に設けた構成を備えている。
【0006】
そして,計量孔121が形成された前述の回転ディスク120を一定速で回転させることにより,研磨材タンク110内の研磨材が回転ディスク120に設けた計量孔121内に充填されて空気導入路112と研磨材搬送路111間の間隙に至り,計量孔121内の研磨材が空気導入路112から研磨材搬送路111に至る圧縮空気流によって取り出されると共に,この圧縮空気流と混合されて固気二相流体としてブラストガンに供給することができるように構成されている。
【0007】
このようにしてブラストガンに供給される研磨材は,回転ディスク120に設けた計量孔121に対する充填によって定量毎に計量されていることから,回転ディスク120の回転速度を調整することでブラストガンに対する研磨材の供給量を変化させることができると共に,回転ディスク120の回転速度を一定に維持した場合には,一定量の研磨材をブラストガンに対して定量供給することができるものとなっている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−264912号公報
【特許文献2】特開2009−208185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7を参照して説明した研磨材定量供給装置100にあっては,研磨材の供給量変化を回転ディスク120の回転速度の制御により容易に行うことができると共に,研磨材の定量供給を高精度で行える点で優れたものとなっている。
【0010】
しかし,図7を参照して説明した研磨材定量供給装置100にあっては,圧力容器として構成された研磨材タンク110内に予め投入しておいた研磨材を,研磨材タンク110内の圧力によって噴射する構造であることから,ブラスト作業中に研磨材タンク110内に研磨材を補充することができず,研磨材タンク110内には,ブラスト作業を開始するに先立ち,予め所定量の研磨材を充填しておく必要がある。
【0011】
そのため,例えばドライアイスの粒体や氷粒のように,積み重ねた状態で放置しておくと空気中の水分等によって粒体同士が凝着して塊となってしまい計量孔121に対して充填することができなくなる研磨材を定量供給することができるものとはなっていなかった。
【0012】
このようなドライアイスの粒体や氷粒を研磨材として使用する場合を想定すると,一例として図8に示すように回転ディスク220の計量孔221に対する研磨材の充填を非加圧下における落下によって行う研磨材充填部230を設け,研磨材を長時間積み重ねた状態とすることなしに,適宜必要量の研磨材を継続的に研磨材充填部230に導入して,回転ディスク220の計量孔221に充填できるように構成することが考えられる。
【0013】
しかし,研磨材充填部230の構造をこのように改変した場合において,図8に示すように回転ディスク220を挟んで配置された空気導入路212の一端212aと研磨材搬送路211の一端211a部分を,圧力容器外に配置した構成とした場合には,回転ディスク220の表面と空気導入路212の一端212a間,回転ディスク220の裏面と研磨材搬送路211の一端211a間に生じた回転許容間隔δより圧縮空気や研磨材の漏出が生じ,研磨材の定量供給を行うことができなくなる。
【0014】
すなわち,図7を参照して説明した研磨材定量供給装置100では,回転ディスク120の円滑な回転を確保するために空気導入路112の一端112aと回転ディスク120の表面間,及び研磨材搬送路111の一端111aと回転ディスク120の裏面間に回転許容間隔δを設けた場合であっても,この部分は加圧された研磨材タンク110内に収容されているために,空気導入路112内の圧縮空気や研磨材搬送路111内の混合流体が,回転許容間隔δを介して機外に漏出することはない。
【0015】
しかし,図8に示すように回転ディスク220を挟む空気導入路212の一端212aと研磨材搬送路211の一端211aを圧力容器外に配置した構成では,圧縮気体供給源より導入された高圧の圧縮気体は,回転ディスク220の表面と空気導入路212や研磨材搬送路211との間に設けた回転許容間隔δを介して外部に漏出してしまい,ブラストガンに対して供給される圧縮気体の圧力が大幅に低下してしまうだけでなく,この圧縮気体の放出と共に研磨材が漏出してしまい,作業環境を汚染し,ブラストガンに供給される研磨材量が減少して定量供給を行うことができないものとなる。
【0016】
そこで本発明は上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,研磨材を圧縮気体と混合して固気二相流体として供給する研磨材定量供給装置において,回転ディスクを研磨材タンク外に配置した構成とした場合であっても圧縮気体を漏出させることなく研磨材を定量供給することの出来る研磨材定量供給装置を提供することにより,一般的な研磨材の他,ドライアイスの粒体や氷粒等を研磨材とする場合であっても定量供給を行うことのできる研磨材の定量供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0018】
上記目的を達成するために,本発明の研磨材定量供給装置1は,圧縮気体中に研磨材を混合した混合流体として研磨材を供給する研磨材定量供給装置1において,
肉厚を貫通する同一径の計量孔21が複数円周方向に等間隔に設けられた,水平回転する回転ディスク20と,
前記回転ディスク20の前記計量孔21内に非加圧下で研磨材を落下させて充填する研磨材充填部30と,
前記計量孔21の形成位置において前記回転ディスク20の両面に跨って配置され,圧縮気体供給源からの圧縮気体と前記計量孔21内の研磨材とを混合して研磨材搬出路51に搬出する研磨材混合部40を備え,
前記研磨材混合部40が,
前記計量孔21の形成位置における前記回転ディスク20の一方の面に向かって開口するシリンダ(第1のシリンダ41),前記回転ディスク20を介して前記シリンダ(第1のシリンダ41)に対向すると共に,前記回転ディスク20の他方の面に向かって開口するシリンダ(第2のシリンダ42),及び前記各シリンダ41,42内にそれぞれ挿入されたピストン43,44を備え,
前記いずれか一方のシリンダ(図1においては第1のシリンダ41)に圧縮気体導入路52を介して圧縮気体の供給源を連通すると共に,他方のシリンダ(図1においては第2のシリンダ42)に前記研磨材搬出路51を連通し,更に,前記計量孔21の形成位置に対応して前記ピストン43,44をそれぞれ貫通する貫通孔43a,44aを設けたことを特徴とする(請求項1,図1,6参照)。
【0019】
また,本発明の別の研磨材定量供給装置1は,圧縮気体中に研磨材を混合した混合流体として研磨材を供給する研磨材定量供給装置1において,
肉厚を貫通する同一径の計量孔21が複数円周方向に等間隔に設けられた,水平回転する回転ディスク20と,
前記回転ディスク20の前記計量孔21内に非加圧下で研磨材を落下させて充填する研磨材充填部30と,
前記計量孔21の形成位置において前記回転ディスク20の両面に跨って配置され,圧縮気体供給源からの圧縮気体と前記計量孔21内の研磨材とを混合して研磨材搬出路51に搬出する研磨材混合部40を備え,
前記研磨材混合部40が,
前記計量孔21の形成位置における前記回転ディスク20の一方の面に向かって開口するシリンダ41’と,前記シリンダ41’内に挿入されたピストン43’,及び前記回転ディスク20を介して前記シリンダ41’に向かって開口すると共に開口縁45aを前記回転ディスク20の他方の面に摺接する流体流路45を備え,
前記シリンダ41’又は前記流体流路45のいずれか一方を,圧縮気体導入路52を介して圧縮気体の供給源に連通すると共に,他方を前記研磨材搬出路51に連通し,更に,前記計量孔21の形成位置に対応して前記ピストン43’を貫通する貫通孔43aを設けたことを特徴とする(請求項2,図4,5参照)。
【0020】
上記いずれの研磨材定量供給装置1の構成においても,前記圧縮気体導入路52の断面積に対し,前記ピストン43,44,43’の断面積を5〜25倍とすることが好ましい(請求項3)。
【0021】
更に,前記ピストン43,44,43’の少なくとも前記回転ディスク20との接触面,好ましくは前記ピストン43,44,43’の全体を高分子ポリエチレンにより形成する(請求項4)。
【0022】
前記回転ディスク20全体を収容すると共に,前記研磨材充填部30及び研磨材混合部40と連結されたディスク収納部60を設けるものとしてもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明の構成により,本発明の研磨材定量供給装置1によれば,計量孔21を有する回転ディスク20を一定速で回転させて研磨材混合部40に搬送することで,計量孔21内に充填した研磨材を連続的に搬送し,これにより研磨材搬出路51を介して研磨材の被供給部(例えばブラストガン)に対して定量的に研磨材を噴射することができるという,従来技術として説明した研磨材供給装置の長所はそのままに,更に以下の効果を得ることができた。
【0024】
非加圧下で研磨材を回転ディスク20に形成した計量孔21に落下,導入する研磨材充填部30を設けたことにより,研磨材を一定量溜めおくことなく,適宜研磨材充填部30に導入できることから,研磨材としてドライアイスの粒体や氷粒等を使用した場合であっても,粒子間に凝着を生じさせることなく研磨材の定量供給を行うことができた。
【0025】
その一方で,前述した研磨材混合部40の構成により,圧縮気体の供給源から圧縮気体導入路52を介してシリンダ41,42,41’に圧縮気体が導入されると,この圧縮気体の導入によりシリンダ41,42,41’内の圧力が上昇してピストン43,44,43’がシリンダ41,42,41’より押し出されて回転ディスク20に押圧されることから,圧縮気体供給源からの圧縮気体の導入が行われている間,ピストン43,44,43’は,回転ディスク20に対して押しつけられた状態となる。
【0026】
その結果,回転ディスク20の表面と,ピストン43,44,43’間には圧縮気体や研磨材の漏出原因となる隙間が生じることがなく,ピストン43,44,43’に形成した貫通孔43a,44aを介して圧縮気体導入路52,計量孔21及び研磨材搬出路51を隙間無く連通することにより,圧縮気体や研磨材の漏出を防止して正確に研磨材の定量供給を行うことができた。
【0027】
しかも,ピストン43,44,43’は,圧縮気体の導入によって回転ディスク20に押し当てられていることから,回転ディスクの加工精度,乃至は取付け精度上の問題により,例えば図9に示すように回転ディスク20が回転に伴って上下に振れることにより空気導入路212の一端212aと回転ディスク220の上面間の間隔がδ1,δ2間で変化したとしても,ピストン43,44,43’は回転ディスク20の表面に追従して接触状態を維持することができ,両者間の接触部分に間隔が生じることを防止できた。
【0028】
また,このようにピストン43,44,43’は回転ディスク20の表面に押し当てられた状態にあることから,回転ディスク20との接触によってピストン43,44,43’が摩耗した場合であっても,回転ディスク20表面との間に隙間が生じない。
【0029】
特に,前記ピストン43,44,43’の断面積を,前記圧縮気体導入路52の断面積に対し,5〜25倍,一例として15倍に形成した場合には,圧縮気体の圧力をブラスト加工で一般的に使用する範囲である0.1〜0.5MPaの圧力範囲とした場合に,ピストン43,44,43’に302〜1508N(15倍時)程度の推力を与えることができ,圧縮気体や研磨材の漏出を防止するに十分な力でありながら,回転ディスク20を駆動するモータMに対する負荷を最小限とした接触状態を得ることができた。
【0030】
更に,ピストン43,44,43’の少なくとも前記回転ディスク20との接触面,好ましくは前記ピストン43,44,43’の全体を高分子ポリエチレンにより形成した場合には,回転ディスク20の表面に対する接触性が良好でありながら,接触面における摩擦抵抗を軽減してモータMの負荷を更に軽減することができた。
【0031】
特に,ピストン43,44,43’全体を前述の高分子ポリエチレンによって形成した場合には,ピストン43,44,43’の軽量化が図れる結果,圧縮気体の導入によって容易に作動させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の研磨材定量供給装置の概略断面図。
【図2】回転ディスクの平面図。
【図3】回転ディスクの変形例を示す平面図。
【図4】本発明の研磨材定量供給装置の変形例を示す概略断面図。
【図5】本発明の研磨材定量供給装置の変形例を示す概略断面図。
【図6】本発明の研磨材定量供給装置の変形例を示す概略断面図。
【図7】従来の研磨材定量供給装置を示す概略断面図。
【図8】試作過程の研磨材定量供給装置示す概略断面図。
【図9】回転許容間隔δ(δ1,δ2)の変化の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0034】
全体構成
図1中の符号1は,本発明の研磨材定量供給装置であり,この研磨材定量供給装置1は,定量の研磨材を計量する計量孔21が形成された回転ディスク20と,前記回転ディスク20に形成した前述の計量孔21に対して研磨材を導入すると共に充填する研磨材充填管31を備えた研磨材充填部30,及び,計量孔21の形成位置において前記回転ディスク20の表裏面に跨って配置され,圧縮気体供給源からの圧縮気体と前記計量孔21内の研磨材とを混合して研磨材搬出路51に搬出する研磨材混合部40を備えている。
【0035】
回転ディスク
前述の回転ディスク20は,一定の厚みを有する円盤状の例えば金属板等によって形成されたものであり,この回転ディスク20には,図1〜3に示すように回転ディスク20の肉厚を貫通する計量孔21が多数形成されている。
【0036】
個々の計量孔21は,いずれも同一径に形成されていることで,各計量孔21の容積が一定となっており,各計量孔21内に研磨材を充填すると,研磨材を定量,計量することができるようになっている。
【0037】
この計量孔21は,図2及び図3に示すように一定の間隔で,同一の円周上に並べて配置されており,このような計量孔21の配置によって,回転ディスク20の回転速度を変化させることで,回転速度の変化に対応して研磨材の供給量を変化させることができるようになっている。
【0038】
このように形成された回転ディスク20の中心には,回転軸23が取り付けられており,この回転軸23に対して駆動モータMを取り付けて,回転ディスク20を水平回転させることができるように構成している。
【0039】
このモータMとしては,例えばステップモータを使用することができ,このようなステップモータを使用する場合には入力するパルス数等に応じて回転速度を高精度に制御することで,所定時間内に後述する研磨材混合部40を通過させる計量孔21の数を変化させることで,研磨材の供給量を高精度に制御することも可能である。
【0040】
なお,図1〜3を参照した説明では,回転ディスク20に計量孔21を一列のみ設ける例を示したが,計量孔は図7を参照して説明した研磨材定量供給装置の回転ディスクのように2列設けても良く,更にはそれ以上の列で設けても良い。
【0041】
また,図1,2を参照して説明した例では,回転ディスク20を一例として一枚の金属板によって一体的に形成するものとして示したが,例えば,図3に示すように前述した回転軸23が取り付けられる中心部20aと,計量孔21が取り付けられる周縁部20bとを別個に形成しておき,両者を連結して回転ディスク20を形成するものとしても良い。
【0042】
この場合には,回転ディスク20の中心部20aと周縁部20bとを例えば図3中のIII−III拡大断面に示すようにピン22止め等の方法で連結し,中心部20aに対して周縁部20bが隙間Δに対応して高さ方向に位置ズレできるようにすることで,例えば図9を参照して説明したように一体的に形成した回転ディスク20では加工上の誤差や回転軸に対する取付誤差により回転ディスク20の周縁部が上下に振動したとしても,この位置ずれを吸収することができるようになっている。
【0043】
研磨材充填部
以上で説明した回転ディスク20に設けた計量孔21に研磨材を充填するために,本発明の研磨材定量供給装置1には,前述した研磨材充填部30が設けられている。
【0044】
この研磨材充填部30は,非加圧下において図示せざる研磨材供給源より落下させた研磨材を前述した計量孔21内に導入して充填し得るものであれば如何なる構造のものであっても良く,図示の実施形態にあっては底部に計量孔21に対応した形状の孔が開けられた蓋板32を取り付けた研磨材充填管31を回転ディスク20の上面上に立設し,この研磨材充填管31内に研磨材を投入することで,回転ディスク20の回転に伴って研磨材を,順次,隣接する計量孔21内に落下,充填することができるように構成されている。
【0045】
このような研磨材充填部30は,非加圧下において研磨材を落下させて計量孔21に導入するものであり,その結果,図7を参照して説明した従来の研磨材定量供給装置のように,研磨材の定量供給を行っている間であっても随時,研磨材を研磨材充填部30に対して補充することができるものとなっている。
【0046】
その結果,前述したドライアイスの粒体や,氷粒等を研磨材として使用する場合であっても,長時間,容器内に研磨材を充填しておく必要がなく,空気中の水分によって粒子同士が凝着等を起こすことを防止でき,図7を参照して説明した従来の研磨材定量供給装置では扱うことができなかった前述したドライアイスの粒体や氷粒等についても研磨材として定量供給の対象とすることができるものとなっている。
【0047】
なお,本発明の研磨材定量供給装置1は,このようなドライアイスの粒体や氷粒等についても研磨材として使用できるものであるが,このことは,本願の研磨材定量供給装置による定量供給の対象がドライアイスの粒体や氷粒に限定されることを意味するものではなく,既知の各種の研磨材を定量供給の対象とできることは勿論である。
【0048】
研磨材混合部
前述した研磨材充填部30において研磨材が充填された計量孔21は,回転ディスク20の回転によって研磨材混合部40に移動され,計量孔21内に充填された研磨材は研磨材混合部40で圧縮気体と混合されて混合流体として取り出されて図示せざるブラストガン等に供給される。
【0049】
この研磨材混合部は,図1,図4〜図6に示すように計量孔21の形成位置において回転ディスク20の表裏面に跨って形成されており,圧縮気体供給源からの圧縮気体を,前述した計量孔21を介してブラストガン等に連通された研磨材搬出路51に導入することで,圧縮気体との混合流体として研磨材を定量供給することができるように構成されている。
【0050】
図1に示す例においてこの研磨材混合部40は,回転ディスク20の上面に向かって開口する第1のシリンダ41と,回転ディスク20を介して前記第1のシリンダ41と対向すると共に,前記回転ディスク20の下面に向かって開口する第2のシリンダ42,及び前記第1,第2のシリンダ41,42にそれぞれ挿入された第1,第2のピストン43,44をそれぞれ備えている。
【0051】
そして,第1のシリンダ41に圧縮気体導入路52を介して圧縮気体の供給源を連通すると共に,第2のシリンダ42に前述の研磨材搬出路51を連通し,更に,前記計量孔21の形成位置に対応して第1,第2の各ピストン43,44にそれぞれ貫通孔43a,44aを設け,圧縮気体供給源より圧縮気体導入路52を介して第1のシリンダ41内に導入された圧縮気体が,第1のピストン43に形成された貫通孔43aを介して回転ディスク20の計量孔21を通る際に研磨材と混合され,その後,第2のピストン44に形成した貫通孔44aを介して第2のシリンダ42内に至り,研磨材搬出路51を介して圧縮気体と研磨材の混合流体が,図示せざるブラストガンに供給されるものとなっている。
【0052】
前述の第1,第2ピストン43,44は,これらが挿入されている第1,第2シリンダ41,42内を進退移動できるように構成されていると共に,図示の例ではピストンリング43b,44bを取り付ける等して,シリンダ41,42の内壁との間に必要な気密性が与えられている。
【0053】
その結果,圧縮気体導入路52を介して圧縮気体供給源からの圧縮気体が導入されると,図1中に矢印A,Bで示すシリンダ41,42内部の空間内の圧力が上昇して,第1,第2のピストン43,44には,それぞれ図1中に矢印A’,B’で示す推力が発生する。
【0054】
その結果,回転ディスク20は,第1,第2のピストン43,44間に挟持されると共に,流路の一部を構成する貫通孔43a,44aの開口縁を含むピストン43,44の端面が回転ディスク20の表,裏面にそれぞれ密着され,圧縮気体や研磨材が流路外に漏出することが防止される。
【0055】
このような回転ディスク20との接触を生じる第1,第2のピストン43,44の材質としては,金属,樹脂,その他各種材質のものを使用することができその材質は限定されるものではないが,少なくとも回転ディスクとの接触部分についてはこれを高分子ポリエチレンによって形成することが好ましい。
【0056】
高分子ポリエチレンは低摩擦抵抗の物質として知られており,例えばこれをシート状にしたものを摺接部材間に挟持してベアリング乃至は潤滑剤代わりに使用される場合がある。
【0057】
従って,このような材質で回転ディスク20との接触部分を形成することで,ピストン43,44によって挟持することにより生じる回転ディスク20の回転規制を緩和することができ,駆動モータMに対する負荷を軽減することができる。
【0058】
特に,第1,第2ピストン43,44の全体を前述した高分子ポリエチレンで形成する場合には,ピストン43,44を金属等で形成する場合に比較して軽量化することができ,圧縮気体供給源から導入された圧縮気体によって容易に作動させることが可能となる。
【0059】
前述の圧縮気体導入路52や研磨材搬出路51,第1,第2ピストン43,44に形成した貫通孔43a,44a,及び回転ディスク20に形成した計量孔21は,いずれも幅方向の断面形状を同一形状とすることが好ましく,これによりこれらの各流路が連続することによって形成される一続きの流路内に圧縮気体を円滑に導入することができると共に,圧縮気体と混合された研磨材を円滑に搬出することができるようになっている。
【0060】
なお,前述した第1,第2ピストン43,44に作用する推力は,回転ディスク20の回転に対して過度に大きな抵抗とならない一方,回転ディスク20とピストン43,44の接触界面を介した圧縮気体や研磨材が漏出することを防止できる程度の力で接触されている必要があり,このような接触状態を得るために,好ましくは,前述の圧縮気体導入路52や研磨材搬出路51,第1,第2ピストン43,44に形成した貫通孔43a,44a,及び回転ディスク20に形成した計量孔21の断面積に対し,第1,第2ピストン43,44の断面積を5〜25倍程度にすることが好ましく,本実施形態では,第1,第2シリンダ41,42のボアを64mm,圧縮気体導入路52や研磨材搬出路51,第1,第2ピストン43,44に形成した貫通孔43a,44a,及び回転ディスク20に形成した計量孔21のボアを16mmとすることで,シリンダ41,42内の断面積を圧縮気体導入路52等の断面積に対して約16倍,ピストン43,44の断面積(貫通孔43a,44aの形成部分を除いた断面積)を圧縮気体導入路52等の断面積に対して約15倍に形成した。
【0061】
これにより,圧縮機気体供給源より0.1〜0.5MPaの圧縮気体の導入があった場合,前述したピストン43,44に作用する推力A’,B’として約302〜1508Nの力を得ることができ,回転ディスク20を回転させるモータMに過度の負荷が発生しない一方,回転ディスク20とピストン43,44との接触面から圧縮気体や研磨材が漏出することを好適に防止し得る接触状態を得ることができた。
【0062】
なお,図1を参照して説明した実施形態にあっては,研磨材混合部40に回転ディスク20の表面側,及び裏面側のそれぞれに向かって開口する第1,第2シリンダ41,42をそれぞれ設けると共に,第1,第2シリンダ41,42のそれぞれにピストン43,44を挿入するものとして説明したが,この構成に代え,一例として図4又は図5に示すように,回転ディスク20の表面又は裏面のいずれか一方に向かって開口するシリンダ41’と,このシリンダ41’内に挿入されたピストン43’を設ける一方,回転ディスク20を介して前記シリンダに向かって開口すると共に開口縁45aを前記回転ディスク20の他方の面に摺接する流体流路45を設け,前記シリンダ41’又は前記流体流路45のいずれか一方を,圧縮気体導入路52を介して圧縮気体供給源に連通すると共に,他方を前記研磨材搬出路51に連通し,更に,前記計量孔21の延長上に前記ピストン43’を貫通する貫通孔43aを設けた構成とすることもできる。
【0063】
なお,図4に示す例では,この流体流路45を研磨材搬出路51の端部に連続して設け,また図5に示す例では流体流路45を圧縮気体導入路52の端部に連続して形成している。
【0064】
以上のように構成された研磨材混合部40を備えた研磨材定量供給装置1においても,圧縮気体供給源からの圧縮気体がシリンダ41’内に導入されると,シリンダ41’内に挿入されたピストン43’に推力A’又はB’が作用して回転ディスク20に押し当てられ,流体流路45の開口縁45aとピストン43’間で回転ディスク20を挟持する結果,図1を参照して説明した研磨材定量供給装置1と同様,圧縮気体の漏出等に伴う圧力損失や,研磨材の損失が生じることを防止でき,その結果,高精度に研磨材の定量供給を行うことができるものとなっている。
【0065】
なお,図4及び図5に示す構成において,回転ディスク20の表面と摺接する流体流路45の開口縁45aには,前述したピストン43,44と同様,高分子ポリエチレンを貼着等することが好ましい。
【0066】
また,図4及び図5に示すように回転ディスク20の一方面側にのみシリンダ41’及びピストン43’を設けた構成にあっては,回転ディスク20の表面と流体流路45の開口縁45aとが常に良好な接触状態を維持することができるように,図3を参照して説明したように,別個に形成した中心部20aと周縁部20bとをピン22等で連結した回転ディスクを使用することが好ましい。
【0067】
その他
図1,図4及び図5を参照して説明した研磨材定量供給装置1にあっては,ディスク収容部60を設けることにより回転ディスク20の全体がこのディスク収容部によって覆われるように形成しているが,回転ディスク20は必ずしもその全体が覆われている必要はなく,計量孔21内に充填された研磨材が研磨材混合部40に到達する迄の間,計量孔21内に止まることができるように構成されたものであれば,一例として図6に示すように,研磨材が充填された状態にある計量孔21の底面側においてのみ,回転ディスク20を覆うように構成し,その他の部分は機外に露出させても良い。
【0068】
作用等
以上のように構成された研磨材定量供給装置1において,研磨材充填部30の研磨材充填管31内に研磨材を継続的に導入し,且つ,図示せざる圧縮気体供給源,例えば圧縮気体の供給源であるエアコンプレッサからの圧縮気体を,圧縮気体導入路52を介して研磨材混合部40に導入しながら駆動モータMによって回転ディスク20を回転させると,研磨材混合部40で圧縮気体と混合された混合流体としての研磨材が,研磨材搬出路51を介してこの研磨材搬出路51の先端に設けられた,例えばブラストガン等の供給先に定量供給される。
【0069】
図7を参照して説明した従来の研磨材定量供給装置にあっては,回転ディスクを研磨材と共に圧力容器内に収容して,加圧下で回転ディスクの計量孔に対して研磨材を充填するものとしていたため,ドライアイスの粒体や氷粒を研磨材として使用する場合には圧力容器内に充填した研磨材が凝着してしまい,噴射することができないものとなっていた。
【0070】
しかし,本願の研磨材定量供給装置1では,研磨材充填部30における回転ディスク20の計量孔に対する研磨材の充填を,非加圧下で研磨材の落下によって行うものとしたことから,前述したドライアイスの粒体や氷粒を研磨材として使用する場合には,細かい粒状に破砕したドライアイスや氷が凝着しないように,これらを必要量ずつ継続的に円筒体内に導入することが可能である。
【0071】
このようにして,研磨材充填部30を構成する研磨材充填管31内に導入された研磨材は,研磨材充填管31の底面を覆う蓋板32に設けた孔33を介して回転ディスク20に設けた計量孔21内に充填され,駆動モータMによって回転ディスク20が回転することにより,研磨材が未充填の計量孔21が順次,研磨材充填部30に搬送されて研磨材の充填が行われると共に,研磨材の充填された計量孔20は,順次,研磨材混合部40に導入される。
【0072】
圧縮気体供給源から圧縮気体導入路52を介して圧縮気体の導入が行われた研磨材混合部40のシリンダ41,42(41’)内では,図1に示す例では,シリンダ41,42内のA,Bとして示した部分の圧力が上昇して,シリンダ41,42内に挿入されているピストン43,44に対し,それぞれ図中矢印A’,B’で示す方向に推力が働き,2つのピストン43,44によって回転ディスク20が挟持される。
【0073】
このように,ピストン43,44によって挟持されることにより,回転ディスク20に貫通孔として形成された計量孔21の両端が,ピストン43,44に形成された貫通孔43a,44aと連結されて一連の流路が形成されると共に,計量孔21と貫通孔43a,44aの連結部分は,ピストン43,44が回転ディスク20の表裏面と接触することにより隙間無く連結されている。
【0074】
その結果,ピストン43,44と回転ディスク20との接触界面を介して,前述した流路外に圧縮気体や研磨材が漏出することがなく,高精度に研磨材の定量供給を行うことができるものとなっている。
【0075】
このようにして,ピストン43,44に設けた貫通孔43a,44aと,回転ディスク20に設けた計量孔21が連通することにより,圧縮気体供給源から圧縮気体導入路52を介してシリンダ41,42内に導入された圧縮気体は,ピストン43,44に設けた貫通孔43aを介して計量孔21内に吹き込まれ,計量孔21内に充填された研磨材が第2のピストン44に形成した貫通孔44aに圧縮気体と共に吹き出され,研磨材と圧縮気体とが混合して得られた混合流体が,第2シリンダ42及びこれに連通された研磨材搬出路51を介して,図示せざるブラストガン等の研磨材の供給部に供給できるようになっている。
【0076】
なお,以上の説明では,図1に示すように,圧縮気体を研磨材混合部40の上方より導入するものとして説明したが,図1に記載の構成において,圧縮気体導入路52と研磨材搬出路51の位置を入れ換えて,回転ディスク20の底面側より圧縮気体を導入すると共に,回転ディスク20の上面側より,研磨材をブラストガン等の供給対象に導入するように構成しても良く,また,このような構成は,図4,5,6を参照して説明した研磨材定量供給装置においても同様に採用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 研磨材定量供給装置
20 回転ディスク
20a 中心部(回転ディスク20の)
20b 周縁部(回転ディスク20の)
21 計量孔
22 ピン
23 回転軸
30 研磨材充填部
31 研磨材充填管
32 蓋板
33 孔
40 研磨材混合部
41 シリンダ(第1の)
41’ シリンダ
42 シリンダ(第2の)
43 ピストン(第1の)
43’ ピストン
43a 貫通孔
43b ピストンリング
44 ピストン(第2の)
44a 貫通孔
44b ピストンリング
45 流体流路
45a 開口縁
51 研磨材搬出路
52 圧縮気体導入路
60 ディスク収容部
M 駆動モータ
100 研磨材定量供給装置
110,210 研磨材タンク
111,211 研磨材搬送路
111a,211a 一端(研磨材搬送路111,211の)
112,212 空気導入路
112a ,212a 一端(空気導入路112,212の)
120,220 回転ディスク
121,221 計量孔
230 研磨材充填部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気体中に研磨材を混合した混合流体として研磨材を供給する研磨材定量供給装置において,
肉厚を貫通する同一径の計量孔が複数円周方向に等間隔に設けられた,水平回転する回転ディスクと,
前記回転ディスクの前記計量孔内に非加圧下で研磨材を落下させて充填する研磨材充填部と,
前記計量孔の形成位置において前記回転ディスクの両面に跨って配置され,圧縮気体供給源からの圧縮気体と前記計量孔内の研磨材とを混合して研磨材搬出路に搬出する研磨材混合部を備え,
前記研磨材混合部が,
前記計量孔の形成位置における前記回転ディスクの一方の面に向かって開口するシリンダ,前記回転ディスクを介して前記シリンダに対向すると共に,前記回転ディスクの他方の面に向かって開口するシリンダ,及び前記各シリンダ内にそれぞれ挿入されたピストンを備え,
前記いずれか一方のシリンダに圧縮気体導入路を介して圧縮気体の供給源を連通すると共に,他方のシリンダに前記研磨材搬出路を連通し,更に,前記計量孔の形成位置に対応して前記ピストンをそれぞれ貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする研磨材定量供給装置。
【請求項2】
圧縮気体中に研磨材を混合した混合流体として研磨材を供給する研磨材定量供給装置において,
肉厚を貫通する同一径の計量孔が複数円周方向に等間隔に設けられた,水平回転する回転ディスクと,
前記回転ディスクの前記計量孔内に非加圧下で研磨材を落下させて充填する研磨材充填部と,
前記計量孔の形成位置において前記回転ディスクの両面に跨って配置され,圧縮気体供給源からの圧縮気体と前記計量孔内の研磨材とを混合して研磨材搬出路に搬出する研磨材混合部を備え,
前記研磨材混合部が,
前記計量孔の形成位置における前記回転ディスクの一方の面に向かって開口するシリンダと,前記シリンダ内に挿入されたピストン,及び前記回転ディスクを介して前記シリンダに向かって開口すると共に開口縁を前記回転ディスクの他方の面に摺接する流体流路を備え,
前記シリンダ又は前記流体流路のいずれか一方を,圧縮気体導入路を介して圧縮気体の供給源に連通すると共に,他方を前記研磨材搬出路に連通し,更に,前記計量孔の形成位置に対応して前記ピストンを貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする研磨材定量供給装置。
【請求項3】
前記圧縮気体導入路の断面積に対し,前記ピストンの断面積を5〜25倍としたことを特徴とする請求項1又は2記載の研磨材定量供給装置。
【請求項4】
前記ピストンの少なくとも前記回転ディスクとの接触面を高分子ポリエチレンにより形成したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の研磨材定量供給装置。
【請求項5】
前記回転ディスク全体を収容すると共に,前記研磨材充填部及び研磨材混合部と連結されたディスク収納部を設けたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の研磨材定量供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20362(P2012−20362A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159085(P2010−159085)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000154129)株式会社不二製作所 (46)