説明

砥石車装置及びこれを備えた研削盤

【課題】 精度の高い研削加工を行うことができるとともに、研削能率を向上させることができる砥石車装置及びこれを備えた研削盤を提供する。
【解決手段】 砥石車装置3における砥石車32及び砥石軸31を同一の軸線上に保持するための補助軸4を備えたことを特徴とする。このため、ワークの研削時には補助軸4によって砥石車32及び砥石軸31が同一の軸線a上に保持された状態で回転駆動される。これにより、砥石軸31の剛性・負荷容量を十分に確保することができるため、研削時において安定した砥石車32の回転動作を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、円筒状のワークを研削する砥石車装置及びこれを備えた研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機械としての研削盤は、ワークテーブル及び砥石台を搭載するベッドと、回転駆動装置によって回転駆動可能な砥石軸及びワークを研削する砥石車を有する砥石車装置とを備え、全体の駆動がコンピュータ数値制御(CNC)装置によって制御される。
【0003】
従来、この種の研削盤においては、砥石車の取り付け・取り外し(交換)や保守・点検の作業性が容易であることから、砥石軸を砥石台に対して回転可能に片持ち支持してなるものが採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような研削盤においては、砥石軸の剛性を高くし、精度の高い研削加工を実現することが要求される。
【0005】
ところで、研削盤においては、近年における砥石車の小型化(小径化)に伴い、砥石車(砥粒層)の加工量(加工時間)を十分に確保する面から、またワークテーブル上の心押し台等との干渉を回避するために、砥石軸を支持する軸受の外径をできるだけ縮小することが行われる。
【特許文献1】特開平7−40237号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示す研削盤においては、軸受の外径を縮小すると、砥石軸の軸径が縮小され、その剛性・負荷容量が低下するため、研削時の砥石車が不安定な回転動作となり、精度の高い研削加工が行われないばかりか、研削能率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、研削時において安定した砥石車の回転動作を得ることができ、もって精度の高い研削加工を行うことができるとともに、研削能率を向上させることができる砥石車装置及びこれを備えた研削盤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明(第1の発明)の砥石車装置は、砥石台に対して回転可能に片持ち支持され、回転駆動装置によって回転駆動可能な砥石軸と、前記砥石軸の自由端部に取り付けられ、ワークを研削する砥石車とを備えた砥石車装置であって、前記砥石車及び前記砥石軸を同一の軸線上に保持するための補助軸をさらに備えたことを特徴とする。
第1の発明の砥石車装置によれば、ワークの研削時には補助軸によって砥石車及び砥石軸が同一の軸線上に保持された状態で回転駆動される。これにより、砥石軸の剛性・負荷容量を十分に確保することができるため、研削時の砥石車が安定した回転動作となり、精度の高い研削加工を行うことができるとともに、研削能率を向上させることができる。
【0009】
(2)上記(1)に記載の砥石車装置において、前記補助軸は前記砥石台に軸受を介して回転可能に支承されていることが好ましい。
このように構成されているため、補助軸が砥石軸から受ける回転接触抵抗によって回転することになる。これにより、研削時に砥石車の良好な回転動作を得ることができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の砥石車装置において、前記砥石軸の補助軸側端面と前記補助軸の砥石軸側端面との間には、テーパ状の内周面を有する凹部及びこの凹部の内周面に適合するテーパ状の外周面を有する凸部が設けられていることが好ましい。
このように構成されているため、ワークの研削時には凹部と凸部との嵌合によって砥石車及び砥石軸が同一の軸線上に確実に保持される。
【0011】
(4)上記(3)に記載の砥石車装置において、前記凹部の開口縁には、前記内周面に連接する面取り部が設けられていることが好ましい。
このように構成されているため、凹部の内周面が面取り部によって保護される。これにより、凹・凸部の嵌合時における凹部の内周面の損傷発生を防止することができる。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の砥石車装置において、前記補助軸は、前記軸線に沿って進退可能に前記砥石台に対し配設されていることが好ましい。
このように構成されているため、砥石軸に対して補助軸を接近させるには、補助軸を軸線に沿って砥石軸側に進行させることになる。また、砥石軸から補助軸を離間させるには、補助軸を軸線に沿って砥石軸側から退避させることになる。これにより、砥石車の交換時には、補助軸を砥石軸から離間する方向に移動させると、砥石車を交換するための十分なスペースを補助軸と砥石軸との間に確保することができる。
【0013】
(6)本発明(第2の発明)の研削盤は、砥石台に対して回転可能に片持ち支持され、回転駆動装置によって回転駆動可能な砥石軸と、前記砥石軸の自由端部に取り付けられ、ワークを研削する砥石車とを有する砥石車装置を備えた研削盤であって、前記砥石車装置は、上記(1)から(5)のいずれかに記載の砥石車装置であることを特徴とする。
第2の発明の研削盤によれば、ワークの研削時には補助軸によって砥石車及び砥石軸が同一の軸線上に保持された状態で回転駆動される。これにより、砥石軸の剛性・負荷容量を十分に確保することができるため、研削時の砥石車が安定した回転動作となり、精度の高い研削加工を行うことができるとともに、研削能率を向上させることができる研削盤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る砥石車装置を備えた研削盤(円筒研削盤)を示す平面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る砥石車装置を示す断面図である。図3は、図2における砥石軸と補助軸との嵌合部を分解して示す断面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る砥石車装置における補助軸の進退動作を説明するために示す断面図であり、図4(a)は、非研削位置における補助軸を示す断面図、図4(b)は、研削位置における補助軸を示す断面図である。
【0015】
(各部の構成)
図1において、円筒研削盤1は、基台部としてのベッド2と、ワークWを研削加工するための砥石車装置3と、砥石車装置3の砥石軸31及び砥石車32を同一の軸線a(非研削前における砥石軸31の軸線)上に保持するための補助軸4と、ワークWを支持して回転駆動するためのワーク支持・回転駆動装置5と、ワーク支持・回転駆動装置5及び砥石車装置3等を駆動制御するNC(数値制御)装置(図示せず)とによって大略構成されている。
【0016】
ベッド2上には、図1に示すように、第1移動装置(図示せず)によって±X軸方向に進退可能な砥石台21及び第2移動装置(図示せず)によって±Z軸方向に進退可能なワークテーブル22が搭載されている。
【0017】
砥石車装置3は、図1に示すように、砥石軸31及び砥石車32を有し、砥石台21上に配設されている。そして、回転駆動モータ(図示せず)によって駆動されるように構成されている。
【0018】
砥石軸31は、図2に示すように、砥石台21に軸受33を介して回転可能に片持ち支持され、各外径が互いに異なる複数の軸部31A,31B等を有する段付きシャフトによって形成されている。そして、回転駆動装置(砥石車装置3の回転駆動モータ)によって回転駆動されるように構成されている。
【0019】
軸部31Aは、軸部31Bの外径より大きい外径をもち、流体軸受等の軸受33に回転可能に支承されている。軸部31Aの反砥石車側端部にはプーリ506が固着されている。これにより、回転駆動装置(砥石車装置3の回転駆動モータ)からの回転駆動力が伝達ベルト507を介してプーリ506に伝達され、このプーリ506の回転によって砥石軸31が回転駆動される。軸部31Aの反プーリ側端面の周縁部には、砥石車32のプーリ側への移動を規制するホイールストッパ34が設けられている。また、軸部31Aの反プーリ側端面部(ホイールストッパ側端面部)には、円周方向に等間隔をもって並列する複数(図2では2個)のボルト取付孔34A,34A,…が設けられている。
【0020】
軸部31Bは、軸部31Aの反プーリ側端面の中央部に連設されている。軸部31Bには、図3に示すように、軸部31Aと反対側の端面(補助軸側端面)に開口する凹部35が設けられている。凹部35は、その開口端面に向かって漸次広がるようなテーパ状の内周面35Aを有する受孔によって形成されている。凹部35の開口縁には、内周面35Aに連接する面取り部35Bが設けられている。これにより、凹部35の内周面35Aが保護され、凹部35と補助軸4の凸部(後述)との嵌合時における内周面35Aの損傷発生が防止することができる。
【0021】
砥石車32は、図2に示すように、ホイール32A及び砥粒層32Bを有し、砥石軸31の自由端部(軸部31B)にボルト36によって取り付けられている。そして、砥石軸31と共に回転駆動されるように構成されている。
【0022】
ホイール32Aは、全体が環状板からなり、そのホイール片側端面をホイールストッパ34に圧接して砥石軸31の軸部31Bに保持されている。ホイール32Aには、複数のボルト取付孔34A,34A,…にそれぞれ対応する複数のボルト挿通孔32a,32a,…が設けられている。
【0023】
砥粒層32Bは、ホイール32Aの外周面に配設され、砥石車32(砥石軸31)の回転によってワークWを研削するように構成されている。
【0024】
補助軸4は、図2に示すように、砥石台21に流体軸受等の軸受41を介して回転可能に支承されている。このため、補助軸4が砥石軸31から受ける回転接触抵抗によって回転することになる。これにより、研削時に砥石車32の良好な回転動作を得ることができる。
【0025】
また、補助軸4は、軸受41と共に軸線aに沿って進退するように構成されている。このため、図4(a)に示す状態において砥石軸31に対して補助軸4を接近させるには、砥石軸31(軸部31B)に砥石車32を取り付けた後に、補助軸4を軸線aに沿って図4(b)に示す進行位置に移動させることになる。一方、図4(b)に示す状態において砥石軸31から補助軸4を離間させるには、砥石軸31から砥石車32を取り外した後に、補助軸4を軸線aに沿って図4(a)に示す退避位置に移動させることになる。これにより、砥石車32の交換時には、補助軸4を砥石軸31から離間する方向に移動させると、砥石車32を交換するためのスペースSを補助軸4と砥石軸31との間に確保することができる。
【0026】
補助軸4の砥石軸側端面の中央部には、図3に示すように、凹部35に対応する凸部42が設けられている。凸部42は、凹部42の内周面35Aに適合する外周面42Aを有する截頭円錐形状の突出部によって形成されている。これにより、ワークWの研削時には凹部42と凸部35との嵌合によって砥石車32及び砥石軸31が同一の軸線上に確実に保持される。
【0027】
ワーク支持・回転駆動装置5は、図1に示すように、主軸台5A及び心押し台5Bを有し、ワークテーブル22上に搭載されている。そして、ワークWを支持して回転駆動するように構成されている。
【0028】
主軸台5Aは、心押し台側に突出する主軸51及び主軸51を回転駆動する回転モータ(図示せず)を有し、心押し台5Bと共にワークWを支持して回転駆動するように構成されている。
【0029】
心押し台5Bは、主軸側に突出するセンタ52を有し、主軸台5Aと反対側からワークWを回転可能に支持するように構成されている。
【0030】
NC装置(図示せず)は、ワークWの研削加工に際して実行される加工プログラムを格納するハードディスクを内蔵するコンピュータ数値制御(CNC)装置からなり、砥石台21の第1移動装置及びワークテーブル22の第2移動装置(共に図示せず)や、砥石車装置3及びワーク支持・回転駆動装置5等を駆動制御するように構成されている。
【0031】
(本実施の形態におけるワークWの研削)
以上の構成により、本実施の形態の研削盤1において、図4(a)に示す状態の砥石車装置3によってワークWを研削するには、補助軸4を軸線aに沿って図4(b)に示す進行位置に軸受41と共に移動させ、補助軸4の凸部42を砥石軸31(軸部31B)の凹部35に嵌合してから行う。この場合、凹部35と凸部42とは、テーパ状の内周面35Aと同じくテーパ状の外周面42Aとを互いに密接させた状態で嵌合されているため、ワークの研削時には砥石車32及び砥石軸31が同一の軸線a上に確実に保持された状態で回転駆動される。
【0032】
(本実施の形態の効果)
上記した本実施の形態によると、砥石軸32の剛性・負荷容量を十分に確保することができるので、砥石車32が安定した回転動作となり、精度の高い研削加工を行うことができるとともに、研削能率を向上させることができる。
【0033】
また、本実施の形態の研削盤1において、図4(b)に示す状態の砥石車装置3の砥石車32を交換するには、補助軸4を軸線aに沿って図4(a)に示す退避位置に軸受41と共に移動させ、補助軸4の凸部42と砥石軸31(軸部31B)の凹部35との嵌合状態を解除してから行う。この場合、凹部35と凸部42との嵌合状態が互いに解除される(補助軸4が退避位置に移動する)と、砥石車32を交換するための十分なスペースSを補助軸4と砥石軸31との間に確保することができる。
【0034】
なお、本発明の円筒研削盤1(砥石車装置3)を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次に示すような変形も可能である。
【0035】
(1)上記実施の形態の砥石車装置3は、テーパ状の内周面35Aを有する凹部35を砥石軸31(軸部31B)の補助軸側端面部に、また同じくテーパ状の外周面42Aを有する凸部42を補助軸4の砥石軸側端面部にそれぞれ設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、テーパ状の外周面を有する凸部を砥石軸31の補助軸端面部に、また同じくテーパ状の内周面を有する凹部を補助軸4の砥石軸側端面部にそれぞれ設けてもよい。すなわち、テーパ状の内周面を有する凹部、及びこの凹部の内周面に適合するテーパ状の外周面を有する凸部が砥石軸31の補助軸側端面と補助軸4の砥石軸側端面との間に設けられていればよい。
【0036】
(2)上記実施の形態の砥石車装置3は、砥石台21に補助軸4を回転可能に支承する軸受41として流体軸受(すべり軸受)である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、転がり軸受(ラジアル軸受)であってもよく、研削時に補助軸4によって砥石軸31の回転動作を妨げるものでないなら、他の軸受であっても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る砥石車装置を備えた研削盤を示す平面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る砥石車装置を示す断面図。
【図3】図2における砥石軸と補助軸との嵌合部を分解して示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る砥石車装置における補助軸の進退動作を説明するために示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1…円筒研削盤、2…ベッド、3…砥石車装置、4…補助軸、5…ワーク支持・回転駆動装置、5A…主軸台、5B…心押し台、21…砥石台、22…ワークテーブル、31…砥石軸、31A,31B…軸部、32…砥石車、32A…ホイール、32B…砥粒層、32a…ボルト挿通孔、33軸受、34…ホイールストッパ、34A…ボルト取付孔、35…凹部、35A…内周面、35B…面取り部、41…軸受、42…凸部、42A…外周面、51…主軸、52…センタ、506…プーリ、507…伝達ベルト、a…軸線、S…スペース、W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石台に対して回転可能に片持ち支持され、回転駆動装置によって回転駆動可能な砥石軸と、
前記砥石軸の自由端部に取り付けられ、ワークを研削する砥石車とを備えた砥石車装置であって、
前記砥石車及び前記砥石軸を同一の軸線上に保持するための補助軸をさらに備えたことを特徴とする砥石車装置。
【請求項2】
前記補助軸は、前記砥石台に軸受を介して回転可能に支承されている請求項1に記載の砥石車装置。
【請求項3】
前記砥石軸の補助軸側端面と前記補助軸の砥石軸側端面との間には、テーパ状の内周面を有する凹部及びこの凹部の内周面に適合するテーパ状の外周面を有する凸部が設けられている請求項1又は2に記載の砥石車装置。
【請求項4】
前記凹部の開口縁には、前記内周面に連接する面取り部が設けられている請求項3に記載の砥石車装置。
【請求項5】
前記補助軸は、前記軸線に沿って進退可能に前記砥石台に対し配設されている請求項1から4のいずれか1項に記載の砥石車装置。
【請求項6】
砥石台に対して回転可能に片持ち支持され、回転駆動装置によって回転駆動可能な砥石軸と、
前記砥石軸の自由端部に取り付けられ、ワークを研削する砥石車とを有する砥石車装置を備えた研削盤であって、
前記砥石車装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の砥石車装置であることを特徴とする研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150485(P2006−150485A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343129(P2004−343129)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】