説明

硫化第二銅粒子及びその製造方法

【課題】塗料や樹脂混練物に含有させた場合に、塗膜や樹脂成形体の導電性を高めつつ平滑性や赤外線遮蔽能を高めることができる硫化第二銅粒子を提供すること。
【解決手段】本発明の硫化第二銅粒子は、板状であることを特徴とする。この硫化第二銅粒子は、平面視して、略直線からなる辺で画定される多角形の形状を有することが好適である。特に、平面視して、略六角形の形状を有することが好適である。この硫化第二銅粒子は、水溶性硫化物の水溶液に、二価の銅イオンを含む水溶液を逐次的に添加することで、好適に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化第二銅粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非導電性の物質に導電性を付与するために用いられる物質として、無機導電性材料の一種である酸化スズが知られている。例えば、酸化スズ粒子を樹脂中に練り込むことで、静電気の発生を予防する帯電防止樹脂や帯電防止繊維を製造することができる。また酸化スズ粒子は、複写機の感光ドラムの製造や、複写機のトナーの製造のための外添材としても広く利用されてきた。
【0003】
しかし、酸化スズ単体の導電性は十分に高いとは言えず、マトリクス内に異種成分(ドーパント)をドープすることで導電性を高める必要がある。ドーパントとしては、例えば従来アンチモン等が用いられてきた。しかしアンチモンは、毒性及び環境負荷の問題が懸念される。アンチモンに代えて、環境負荷の少ない物質であるニオブやタンタル等をドーパントとした酸化スズも知られているが、アンチモンをドーパントとする場合に比べて導電性を高くすることが容易でなかった。
【0004】
そこで特許文献1では、ドーパントの不要な無機導電性物質である硫化第二銅を用いることが提案されている。同文献においては、硫化第二銅を、水溶性樹脂を含有する水溶液中に分散させて、帯電防止コーティング用水溶性樹脂組成物を調製している。そして、この組成物のコートフィルムの可視光透過率及び日射光透過率を測定している。
【0005】
硫酸銅水溶液に硫化ナトリウム水溶液を添加することで硫化第二銅を生成させる技術は、特許文献2にも記載されている。同文献に記載の硫化第二銅は、一次粒子径が0.5μm以下であり、レーザー回折散乱式測定法による平均粒径D50が0.1μm〜3.0μmのものである。この硫化第二銅は、熱的及び化学的安定性に優れ、良好な電気的導電性を有するので、酸化スズ等のこれまで用いられてきた無機導電性材料の代替物質として有用なものである。この硫化第二銅は、硫酸銅水溶液に硫化ナトリウム水溶液を逐次添加することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−19321号公報
【特許文献2】特開2008−162876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2に記載の硫化第二銅は、樹脂中への分散性を高めることが容易でないので、磁気フィルム等の平滑性が求められる製品に練り込んで用いることが容易でなかった。
【0008】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る硫化第二銅粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、板状であることを特徴とする硫化第二銅粒子を提供するものである。
【0010】
また本発明は、前記の硫化第二銅粒子の好適な製造方法として、
水溶性硫化物の水溶液に、二価の銅イオンを含む水溶液を逐次的に添加することを特徴とする硫化第二銅粒子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硫化第二銅粒子によれば、該粒子を含む塗布液から塗膜を形成した場合に、該塗膜の導電性を高めつつ平滑性や赤外線遮蔽能を高めることができる。また、該粒子を含む樹脂混練物を成形した場合に、樹脂成形体の導電性を高めつつ平滑性や赤外線遮蔽能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1で得られた硫化第二銅粒子のX線回折像である。
【図2】図2(a)ないし(c)は、実施例1ないし3で得られた硫化第二銅粒子の走査型電子顕微鏡像であり、図2(d)は、比較例1で得られた硫化第二銅粒子の走査型電子顕微鏡像である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1で得られた硫化第二銅粒子の赤外線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の硫化第二銅粒子はCuSで表される粒子状の物質である。本発明の硫化第二銅粒子は、板状である点に特徴を有するものである。これまで知られている導電性硫化第二銅粒子、例えば特許文献2に記載の導電性硫化第二銅粒子は、その形状が球状ないしそれに類似する粒状の形状のものであった。かかる形状に起因して、従来の導電性硫化第二銅粒子を含む塗布液から塗膜を形成した場合、該塗膜の平滑性を高めることが容易ではなかった。また従来の導電性硫化第二銅を含む樹脂混練物を成形した場合、成形体の平滑性を高めることが容易ではなかった。これに対して、本発明の硫化第二銅粒子は板状のものなので、該粒子を用いて前記の塗膜や成形体を製造すると、その表面平滑性が高くなるという利点がある。この理由は、板状の硫化第二銅粒子は、粒状の硫化第二銅粒子に比べて凝集力が弱く、そのことに起因して塗料中や樹脂中での分散性が良好になるからであると考えられる。板状の粒子とは、対向する略平行な2つの面を有する平たい形状の粒子を言う。
【0014】
また、意外なことに、板状の硫化第二銅粒子は、その他の形状の硫化第二銅粒子に比べて、赤外線遮蔽能に優れていることも判明した。この理由は、板状という形状に起因して、凝集が少なく粒子どうしのスタック性が良好なので、使用量を同量とした場合、他の形状の硫化第二銅粒子に比べて、赤外線を遮り易いからではないかと考えられる。
【0015】
本発明の硫化第二銅粒子は、これを平面視した場合、略直線からなる辺で画定される六角形等の多角形の形状を有することが好ましい。このような形状を有することで、平面視した場合、粒子を一層密に敷き詰めることができるので、赤外線遮蔽能が高くなるという有利な効果が奏される。本発明の硫化第二銅粒子が、かかる多角形の形状を有する場合、該多角形は略正多角形であることが、前記の効果が一層顕著なものとなることから好ましい。特に略正六角形の形状を有すると、前記の効果が更に一層顕著なものとなることから好ましい。本発明の硫化第二銅粒子の形状は、例えば該粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって判断できる。
【0016】
本発明の硫化第二銅粒子は、その一次粒子径が50〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることが更に好ましく、100〜300nmであることが一層好ましい。つまり、本発明の硫化第二銅粒子は微粒であることが好ましい。かかる微粒の硫化第二銅粒子を用いることで、より平滑性の高い塗膜を作製でき、また可視光透過率の高い赤外線吸収材を作製できるという有利な効果が奏される。硫化第二銅粒子の一次粒子径は、例えば該粒子のSEM像を、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて画像解析して求めることができる。
【0017】
一次粒子径に関連して、本発明の硫化第二銅粒子は、その平均粒径D50が0.15〜3μm、特に0.2〜2μm、とりわけ0.2〜1.5μmであることが好ましい。平均粒径D50がこのような範囲内であることで、本発明の硫化第二銅粒子は、塗料や樹脂への分散性が良好となる。平均粒径D50は、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定によって求められる。具体的には、0.1gの硫化第二銅粒子を、SNディスパーサント5468の0.1質量%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて求められる。
【0018】
粒径との関係で、本発明の硫化第二銅粒子は、板径/厚みで定義されるアスペクト比が3〜100であることが好ましく、3〜50であることが更に好ましく、5〜25であることが一層好ましい。本発明の硫化第二銅粒子がこのような範囲内のアスペクト比を有することで、硫化第二銅粒子はその板面方向に沿って堆積しやすくなる。その結果、該粒子を用いて前記の塗膜や成形体を製造すると、その表面平滑性が一層高くなるので好ましい。しかも、赤外線遮蔽能も一層高くなるので好ましい。ここで「板径」とは、板状である本発明の硫化第二銅粒子における一次粒子径のことであり、「厚み」とは、対向する2つの板面間の距離のことである。アスペクト比は、上述のようにして測定された一次粒子径と、電子顕微鏡観察によって測定された10個の粒子の平均厚みを用いて、一次粒子径/平均厚みによって算出される。
【0019】
先に述べたとおり、本発明の硫化第二銅粒子は、赤外線遮蔽能の高いものである。ここで赤外線とは、波長700〜2500nmの光のことを言う。後述する実施例1と比較例1との対比から明らかなように、本発明の本発明の硫化第二銅粒子は、特に近赤外線(波長:800〜2400nm)の遮蔽能に優れている。赤外線の遮蔽能の程度は、例えば波長1000nmにおける透過率が50%以下、特に30%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の硫化第二銅粒子は、先に述べたとおり導電性を有するものである。導電性の尺度の一つである粉体抵抗で表すと、本発明の硫化第二銅粒子は、1×10-1Ω・cm以下、特に6×10-2Ω・cm以下の粉体抵抗を有することが好ましい。この粉体抵抗であれば、導電性の付与のために従来用いられている無機導電性材料である酸化スズやカーボンブラックの代替物質として本発明の硫化第二銅粒子を用いることができる。粉体抵抗の測定には例えば、三菱化学株式会社製の粉体抵抗測定システムPD−41を用いる。詳細には、5gの硫化銅粒子を100kgf/cm2の圧力で加圧し圧縮体を成形する。そして該圧縮体を対象として、該システムに組み込まれた三菱化学株式会社製の四探針抵抗測定機であるロレスタGPによって抵抗の測定を行う。
【0021】
本発明の硫化第二銅粒子は、導電性の付与のために従来用いられている無機導電性材料である酸化スズ等と異なり、ドーパントが含まれていなくても満足すべき導電性を発現する。しかし、硫化第二銅の導電性を更に高めるためにドーパントを含有させることは本発明において妨げられない。尤も、ドーパントには環境負荷の大きいものや、高価格のものがあることから、本発明の硫化第二銅粒子は導電性を高めるためのドーパントは含有しないことが好ましい。
【0022】
次に、本発明の硫化第二銅粒子の好ましい製造方法について説明する。本発明の硫化第二銅粒子は、水溶性硫化物の水溶液に、二価の銅イオンを含む水溶液を逐次的に添加することで好適に製造される。先に述べたとおり、特許文献1に記載の硫化第二銅粒子は、硫酸銅水溶液に硫化ナトリウム水溶液を逐次添加することで製造されるので、本発明の製造方法は、特許文献1に記載の製造方法と比べると、添加する側の水溶液と、添加される側の水溶液とが逆転している。そこで以下の説明においては、特許文献1に記載されているような添加方法、すなわち硫酸銅水溶液に硫化ナトリウム水溶液を添加する方法を「正中和」と呼び、本発明のような製造方法、すなわち水溶性硫化物の水溶液に、二価の銅イオンを含む水溶液を添加する方法を「逆中和」と呼ぶこととする。
【0023】
本発明の逆中和で用いられる水溶性硫化物としては、例えば硫化ナトリウム、硫化アンモニウム、硫化水素ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、硫化水素、硫化バリウム、硫化水素バリウム、硫化マグネシウム、硫化水素マグネシウム、硫化カルシウム、硫化水素カルシウムなどを用いることができる。かかる水溶性硫化物を含む水溶液の濃度は、製造効率、粒子の凝集防止の点から、0.01〜4mol/リットルとすることが好ましく、0.1〜1mol/リットルとすることが更に好ましい。
【0024】
水溶性硫化物の水溶液に添加される水溶液である二価の銅イオンを含む水溶液を調製するためには、水溶性の銅(II)化合物が用いられる。水溶性の銅(II)化合物としては、例えば硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)などの二価の銅の水溶性塩を用いることができる。
【0025】
二価の銅イオンを含む水溶液における二価の銅イオンの濃度は、製造効率の向上及び粒子の凝集防止の点から、0.01〜4mol/リットルとすることが好ましく、0.1〜1mol/リットルとすることが更に好ましい。
【0026】
水溶性硫化物の水溶液と、二価の銅イオンを含む水溶液とを混ぜ合わせる割合は、銅1モルに対して、硫黄が1.1〜3モル、特に1.2〜3モルとなるような割合とすることが好ましい。この割合で両水溶液を混ぜ合わせることで、目的とする第二硫化銅粒子の粒径を均一にさせやすくなる。
【0027】
本製造方法においては、特許文献1に記載の方法と異なり逆中和を採用している。逆中和に代えて、特許文献1の記載に従い正中和を採用しても、板状の硫化第二銅粒子を得ることはできず、その代わりに粒状の硫化第二銅粒子が生成してしまう。また本製造方法において逆中和を採用する場合、水溶性硫化物の水溶液に、二価の銅イオンを含む水溶液を逐次的に添加することが、板状の硫化第二銅粒子を首尾良く得る点から重要である。逐次的な添加を行わない場合、つまり一括添加する場合には、板状の硫化第二銅粒子を得ることができない。
【0028】
二価の銅イオンを含む水溶液の逐次的な添加は、該水溶液の濃度及び水溶性硫化物の水溶液の濃度が上述した範囲内の場合には、1〜180分にわたり行うことが好ましく、30〜80分にわたり行うことが更に好ましく、30〜60分にわたり行うことが一層好ましい。このような時間にわたって二価の銅イオンを含む水溶液を逐次添加することで、粗粒の生成や粒子どうしの凝集の発生を効果的に抑制しつつ、板状の粒子を得ることができる。
【0029】
本製造方法で採用している逆中和において、水溶性硫化物の水溶液と、二価の銅イオンを含む水溶液との混合は、混合液の温度が好ましくは20〜80℃、更に好ましくは50〜70℃となるように行う。この温度範囲で混合を行うことで、経済的な反応速度で、目的とする板状の硫化第二銅粒子を得ることができる。
【0030】
このようにして製造された本発明の硫化第二銅粒子は、例えば赤外線遮蔽材として、自動車や電車などの各種車両のガラスの表面に施すことができる。また建物の窓ガラスの表面に施すこともできる。更に本発明の硫化第二銅粒子は、その導電性を利用して、帯電防止剤として、非導電性材料の表面に施されたり、非導電性材料と混合されたりして用いられる。例えば本発明の硫化第二銅粒子を合成樹脂に練り込んで、樹脂成形用のマスターバッチを製造したり、磁気テープ等の高平滑性が要求される樹脂成形体を製造したりすることができる。また、硫化第二銅粒子の塗料に含有させて帯電防止塗料を製造することもできる。更に該帯電防止塗料を対象物の表面に塗布することで、帯電防止膜を形成することもできる。この帯電防止膜は、高平滑性が要求される分野である、例えば複写機用の帯電防止感光ドラムに適用することができる。更にまた、本発明の硫化第二銅粒子を外添材として用い、該粒子を含む複写機用の帯電防止トナーを製造することもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0032】
〔実施例1〕
水溶性硫化物として硫化ナトリウム五水和物を用いた。0.7molの硫化ナトリウム五水和物を6リットルの純水に溶解して硫化ナトリウム水溶液を調製し、これを容積12リットルのステンレス製タンク中に入れた。水溶液の液温は60℃に保った。これとは別に、二価の銅イオンを含む水溶液として、硫酸銅(II)五水和物0.6molを4リットルの純水に溶解した硫酸銅(II)水溶液を調製した。この硫酸銅(II)水溶液を、先に調製した硫化ナトリウム水溶液中に1時間にわたって逐次添加して反応を起こさせた。つまり逐次的に逆中和を行った。両水溶液の混合液の温度は60℃に維持した。反応生成物をデカンで洗浄した後、メタノールで溶媒置換し、乾燥させて、目的とする硫化第二銅粒子を得た。得られた硫化第二銅のX線回折像(線源Cukα)を図1に示す。同図から明らかなように、生成物は硫化第二銅であることが確認された。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1で用いた硫化ナトリウム五水和物に代えて、0.7molの硫化アンモニウムを用いた。これ以外は実施例1と同様にして硫化第二銅粒子を得た。
【0034】
〔実施例3〕
実施例1で用いた硫酸銅(II)五水和物に代えて、0.6molの酢酸銅を用いた。これ以外は実施例1と同様にして硫化第二銅粒子を得た。
【0035】
〔比較例1〕
本比較例は、実施例1とは逆に、硫酸銅(II)水溶液に、硫化ナトリウム水溶液を逐次添加した例である。つまり正中和の例である。二価の銅イオンを含む水溶液として、硫酸銅(II)五水和物0.6molを4リットルの純水に溶解した硫酸銅(II)水溶液を調製し、これを容積12リットルのステンレス製タンク中に入れた。水溶液の液温は60℃に保った。これとは別に、0.7molの硫化ナトリウム五水和物を6リットルの純水に溶解して硫化ナトリウム水溶液を調製した。この硫化ナトリウム水溶液を、先に調製した硫酸銅(II)水溶液中に1時間にわたって逐次添加して反応を起こさせた。両水溶液の混合液の温度は60℃に維持した。反応生成物をデカンで洗浄した後、メタノールで溶媒置換し、乾燥させて、硫化第二銅粒子を得た。得られた硫化第二銅のX線回折像(線源Cukα)を図1に示す。同図から明らかなように、生成物は硫化第二銅であることが確認された。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた硫化第二銅粒子のTEM像を撮影した。その結果を図2(a)ないし(d)に示す。また、一次粒子径、平均粒径D50、厚み、アスペクト比及び粉体抵抗を上述の方法で測定した。それらの結果を以下の表1に示す。更に、以下の方法で塗膜を調製し、赤外線の透過率を測定した(実施例1と比較例1のみ)。その結果を図3に示す。また、以下の方法で塗膜を調製し、その表面粗さ(Ra及びRy)並びに表面抵抗を測定した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0036】
〔赤外線透過率測定用の塗膜の調製方法〕
硫化第二銅粒子0.4gと、三菱レーヨン製ダイヤナールLR167(アクリル)(樹脂)6.4gと、体積比でトルエン:1-ブタノール=7:3の混合液(溶媒)9.6gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が12%となるように容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェーカーを用いて3時間分散処理した。このようにして得られたペースト状塗料を、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」とも言う。)製のフィルム上にバーコータ#10を用いて塗布し、厚さ5μmの塗膜を形成した。得られた塗膜の赤外線透過率を、日本分光株式会社製Spectrophotometer V−670を用いて測定した。
【0037】
〔表面抵抗測定用の塗膜の調製方法〕
実施例及び比較例で得られた硫化第二銅粒子6.4gと、ダイヤナールL167(樹脂)6.4gと、体積比でトルエン:1-ブタノール=7:3の混合液(溶媒)13gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が68%となるように容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェーカーを用いて1時間分散処理した。このようにして得られたペースト状塗料を、PET製のフィルム上にバーコータ#10を用いて塗布し、厚さ10μmの塗膜を形成した。得られた塗膜の表面粗さRa及びRy(JIS B0601−2001に準拠)を、株式会社東京精密製 SURFCOM 130Aを用いて測定した。また、塗膜の表面電気抵抗を、四探針抵抗測定機(三菱化学株式会社製ロレスタGP)を用いて測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
図2(a)ないし(d)に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた硫化第二銅粒子はいずれも板状のものであり、平面視して略正六角形の輪郭を有するものであることが判る。これに対して比較例で得られた硫化第二銅粒子は粒状のものであることが判る。
【0040】
また図3に示す結果から明らかなように、実施例1の板状の硫化第二銅粒子は、比較例1の粒状の硫化第二銅粒子に比べて、赤外線遮蔽能が高いことが判る。この理由は、実施例1で得られた硫化第二銅粒子は板状のものであることから、比較例1で得られた粒状の硫化第二銅粒子に比べて凝集力が弱く、そのことに起因して塗料中での分散性が良好になり、スタック性が良好になったからであると考えられる。
【0041】
更に表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた硫化第二銅粒子を用いて形成された塗膜は、比較例で得られた硫化第二銅粒子を用いて形成された塗膜に比べて、表面粗さが低く、かつ電気抵抗も低いことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であることを特徴とする硫化第二銅粒子。
【請求項2】
平面視して、略直線からなる辺で画定される多角形の形状を有する請求項1に記載の硫化第二銅粒子。
【請求項3】
平面視して、略六角形の形状を有する請求項2に記載の硫化第二銅粒子。
【請求項4】
板径/厚みで定義されるアスペクト比が3〜100である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の硫化第二銅粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の硫化第二銅粒子の製造方法であって、
水溶性硫化物の水溶液に、二価の銅イオンを含む水溶液を逐次的に添加することを特徴とする硫化第二銅粒子の製造方法。
【請求項6】
水溶性硫化物が硫化ナトリウムである請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87035(P2013−87035A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231211(P2011−231211)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)