説明

硬化性樹脂組成物

【課題】耐汚染性に優れ、取扱容易な自動車内装材コーティング用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリシロキサン基と加水分解性シリル基と水酸基を有するシリコーン変性ビニル系重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)とを含有してなることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物であって、シリコーン変性ビニル系重合体(A)が、水酸基を含有するビニル化合物(c)を全単量体の10〜40重量%含有する単量体を共重合して得られたものであり、ガラス転移温度が30〜70℃であることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材コーティング用途おいて、優れた耐汚染性を付与する硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装材を保護したり、意匠性を付与する目的で使用される塗料は、アクリルラッカー塗料や2液性硬化型ウレタン樹脂塗料、紫外線硬化樹脂塗料等が使用されている。アクリルラッカー塗料は、樹脂の架橋反応を伴わない1液型塗料であり、硬化剤の配合等の手間がなく扱い易い反面、得られる塗膜は耐溶剤性、耐汚染性などに劣る。また、2液性硬化型ウレタン樹脂塗料は、ポリイソシアネート化合物と架橋反応を伴うことで緻密な塗膜を形成し、耐溶剤性、耐汚染性を得ることができるが、その性能は架橋密度に依存しており、架橋密度を高くすることでこれらの性能が向上する反面、付着性、加工性などといった他の膜物性が劣ってくる。従って、2液性硬化型ウレタン樹脂塗料のポリイソシアネート化合物との架橋に依存した耐溶剤性、耐汚染性には、実用上においてその限界がある。一方、紫外線硬化型樹脂塗料においては、非常に高緻密、高硬度で耐溶剤性、耐汚染性に優れた塗膜を得ることが出来る(例えば特許文献1参照)ものの、塗料配合において、顔料やフィラー等を配合した場合、それらにより紫外線が遮蔽され、塗膜内部で硬化不良を起こし、十分な塗膜性能を発現出来なくなるなどの不具合を生じることがあり、意匠性の点において制約を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−48934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐汚染性に優れ、取扱容易な自動車内装材コーティング用硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、主鎖がビニル系共重合体で側鎖にポリシロキサン基と加水分解性シリル基と水酸基を有するシリコーン変性ビニル系重合体とポリイソシアネート化合物とを含有してなる硬化性樹脂組成物の硬化塗膜が、自動車内装材コーティング用途において、優れた耐汚染性を発現することを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1).
ポリシロキサン基と加水分解性シリル基と水酸基を有するシリコーン変性ビニル系重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)とを含有してなることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物であって、シリコーン変性ビニル系重合体(A)が、水酸基を含有するビニル化合物(c)を全単量体の10〜40重量%含有する単量体を共重合して得られたものであり、ガラス転移温度が30〜70℃であることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物、
(2).
(A)成分が、(a)ビニル基含有ポリシロキサン、(b)加水分解性シリル基を含有するビニル化合物、(c)水酸基を有するビニル化合物、(d)その他の重合性ビニル化合物を共重合してなるシリコーン変性ビニル系重合体である(1)記載の塗料用硬化性樹脂組成物、
(3).
ビニル基含有ポリシロキサン(a)が、片方末端にのみビニル基を有するポリシロキサンであることを特徴とする(1)または(2)に記載の塗料用硬化性樹脂組成物、
(4).
(1)〜(3)のいずれかに記載の塗料用硬化性樹脂組成物を含む自動車内装材用コーティング剤、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物により耐汚染性に優れた自動車内装材コーティング物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物の特徴は、主鎖がビニル系重合体で側鎖にポリシロキサン基、加水分解性シリル基、水酸基を有するシリコーン変性ビニル系重合体を、ポリイソシアネート化合物を用いて硬化させることにある。
【0009】
ポリシロキサン基、加水分解性シリル基、水酸基を有するシリコーン変性ビニル重合体は、(a)ビニル基含有ポリシロキサン、(b)加水分解性シリル基を含有するビニル化合物、(c)水酸基を有するビニル化合物、(d)その他の重合性ビニル化合物の4種類の単量体を重合させることなどにより得られる。
【0010】
(a)ビニル基含有ポリシロキサンとしては、ビニル基を有するポリシロキサン化合物であればよく、例えば、下記一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
で表される片末端ビニル基含有ジメチルポリシロキサン、または側鎖のメチル基がフェニル基に一部置換された片末端ビニル基含有ポリシロキサン、または下記一般式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
で表される両末端ビニル基含有ジメチルポリシロキサン、またはメチル基がフェニル基に一部置換された両末端ビニル基含有ポリシロキサンが挙げられる。ここでR1は重合性二重結合を有する1価有機基であり、具体的な例としては、
【0015】
【化3】

【0016】
等が挙げられ、R2は炭素数1〜6のアルキル基、mは1〜3の整数、nは0〜1500の整数である。ビニル基含有ポリシロキサンの具体例としては片末端もしくは両末端ビニルジメチルポリシロキサン、片末端もしくは両末端メタクリロキシプロピルジメチルポリシロキサン、メタクリル酸トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル等が挙げられる。これらのビニル基含有ポリシロキサンの粘度範囲は3〜1000(10-3Pa・s)程度が好ましい。重量平均分子量は200〜100,000の範囲にあることが好ましい。ビニル基含有ポリシロキサンの使用割合は重合に使用する全単量体の0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、またビニル基含有ポリシロキサンを2種類以上併用して使用しても良い。ビニル系共重合体の側鎖にポリシロキサン鎖を組み込むことにより、すべり性、撥水性、離型性、耐薬品性等を付与することができる。
【0017】
(b)の加水分解性シリル基を含有するビニル化合物としては、下記一般式(3)で示される有機ケイ素化合物で、アルコキシ基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。
【0018】
12(3-a)Si(OR3a (3)
(式中、R1は重合性二重結合を有する1価有機基、R2は炭素数1〜6のアルキル基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、aは1〜3)
上記加水分解性シリル基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどを挙げることができ、これらの中では、特にアルコキシシリル基含有単量体、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが安定性の点で好ましい。上記(メタ)アクリロキシとは、本明細書中ではメタアクリロキシおよび/またはアクリロキシを表すこととする。
【0019】
これらの加水分解性シリル基を含有するビニル化合物は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。加水分解性シリル基を含有するビニル化合物は、重合に使用する全単量体の1〜90重量%、さらには3〜70重量%、特には3〜50重量%、さらに特に好ましくは3〜20重量%含有されるように使用するのが、十分な硬化性を与え、また、内部応力を緩和するという観点から好ましい。
【0020】
(c)の水酸基を含有するビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシスチレンなど水酸基含有ビニル系単量体;PlaccelFA−1、PlaccelFA−4、PlaccelFM−1、PlaccelFM−4(以上ダイセル化学(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリラクトンまたはポリエステル;ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ(以上日油(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンなどが挙げられ、ポリイソシアナート化合物(B)との反応性に優れる点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
これらの水酸基含有ビニル化合物は、少なくとも1種類以上が使用され、使用割合は全単量体の10〜40重量%であり、さらには20〜30重量%が耐汚染性、加工性の観点から好ましい。通常のアクリル系塗料に用いられている水酸基含有ビニル化合物の使用量は5〜20重量%であるが、本発明ではその値を20〜30重量%にすることによって、高い耐汚染性が得られることを見出している。
【0022】
(d)その他の重合性ビニル化合物としては、炭素炭素二重結合を有していれば特に限定がなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜20のアラルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、オキシシクロヘキシニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα、β−エチレン性不飽和カルボン酸あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);無水マレイン酸などの酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステルあるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルホスフェートなどの重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸、あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニル単量体、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などの4級アミノ基を有するビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなどの含窒素ビニル単量体;α、β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのリン酸エステル;ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどのビニル化合物;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエンなどのその他のビニル系単量体などを挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0023】
上記(a)〜(d)の単量体を重合して得られるシリコーン変性ビニル系重合体を含有する液状組成物に用いる溶媒としては特に限定はなく、公知の芳香族系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アルコール系、水等の溶媒を用いることができる。トルエン、キシレン、酢酸ブチル、脂肪族炭化水素含有溶剤を用いるのがビニル系共重合体の溶解性の点から好ましい。
【0024】
シリコーン変性ビニル系重合体の製造方法としては、前記単量体より共重合体液状組成物を得る方法であれば特に限定されない。重合方法としては、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられ、溶液重合法が合成の容易さなどの点で好ましい。
【0025】
前記重合に用いる開始剤としては、公知のものを挙げることができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系、アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ化合物系、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物系、過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系などの開始剤を挙げることができる。
【0026】
得られるシリコーン変性ビニル系重合体の重合度は、重量平均分子量で5,000ないし150,000とする事が好ましい。重合度は、ラジカル発生剤の種類及び使用量、重合温度、及び連鎖移動剤の使用によって調節することができる。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、及びγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用できる。重量平均分子量が5,000未満の場合は、未重合の単量体が残存し易く、好ましくない。一方、重合平均分子量が150,000を超える場合には、得られる硬化性樹脂組成物は、その塗装時に糸引き等の欠陥を生じることが多い。
【0027】
更に、得られるシリコーン変性ビニル系重合体のガラス転移温度は、30〜70℃が好ましく、さらには45〜60℃が耐汚染性、耐衝撃性、加工性の点から好ましい。ここでガラス転移温度とは、下記に示したFOX式から計算された数値である。
1/Tg=Σ(mi/Tgi)
Tg:共重合体のガラス転移温度
mi:モノマーi成分の重量分率
Tgi:モノマーi成分のホモポリマーのガラス転移温度(K)
【0028】
本発明では、以下のホモポリマーのTgの値を用いガラス転移温度を計算することとする:メチルメタクリレート 378K、ブチルメタクリレート 293K、ブチルアクリレート 219K、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 328K、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 316K、片末端メタクリロキシプロピルジメチルポリシロキサン 316K、メタクリル酸 438K。
【0029】
以上のようにして本硬化性樹脂組成物に使用するシリコーン変性ビニル系重合体を得ることができる。
【0030】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物に使用される硬化剤成分であるポリイソシアネート化合物について説明する。
【0031】
ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができ、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族、芳香族および脂環族系のジイソシアネート化合物;イソシアヌレート変性HDIなどのジイソシアネート化合物のイソシアヌレート結合またはビユレット結合変性品;ポリメリックMDIなどの特殊ポリイソシアネートがあげられる。
【0032】
シリコーン変性ビニル系重合体とポリイソシアネート化合物の使用割合は、シリコーン変性ビニル系重合体中の水酸基に対してイソシアネート基が好ましくは0.3〜2当量、さらに好ましくは0.5〜1.5当量である。ポリイソシアネート化合物が少なすぎる場合には、得られる硬化物の耐汚染性、耐溶剤性が劣っており、また多すぎる場合には耐衝撃性等の加工性が劣ることになり、また、塗り重ね時にちぢみを生じたりする。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物に硬化を促進するために硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒の具体例としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズラウレート、ジオクチルスズジマレエート、オクチル酸スズ、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等の有機スズ化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等の有機アルミ化合物;有機チタネート化合物;有機亜鉛化合物等の有機金属化合物が挙げられる。これらの中で、有機スズ化合物が硬化性、付着性の点で好ましい。これらは単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。硬化触媒の具体例として更に、酸触媒が挙げられる。酸触媒としては、リン酸エステル系、スルホン酸触媒、リン酸に有機アミン配合した系、スルホン酸と有機アミンを配合した系、有機カルボン酸に有機アミンを配合した系がある。これらの使用量は、シリコーン変性ビニル系重合の固形分に対して0.001〜5重量部が好ましい。硬化触媒が少なすぎる場合には、硬化促進効果が少なく、多すぎる場合には、硬化時に発生する硬化歪が大きくなって付着性、加工性が低下する傾向にある。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては可塑剤、溶剤、分散剤、脱水剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等があげられる。
【0035】
さらに必要に応じて顔料を添加しても良く、顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシルム、炭酸バリウム、カオリン等の白色顔料、カーボンブラック、ベンガラ、シアニンブルー等の有色系顔料が挙げられる。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物、またはその構成成分であるシリコーン変性ビニル系重合体の安定性を保持する目的で、脱水剤を添加することができる。脱水剤としては、加水分解性エステル化合物などが挙げられる。その具体例としては、たとえばオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチルなどの加水分解性エステル化合物、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシブタン;メチルシリケート、エチルシリケート、メチルトリメトキシシランなどである。この中では、脱水効果の点からオルト酢酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記脱水剤の配合量に特に限定はないが、シリコーン変性ビニル系重合体の固形分100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜10重量部である。
【0037】
以上のようにして、本発明に係わる硬化性樹脂組成物が得られる。本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する際には、ロールコーター法、ブレードコーター法、グラビアコーター法、ビートコーター法、カーテンフローコーター法、浸漬塗布法、及びスプレー塗布法のいづれも可能である。また、硬化性樹脂組成物の硬化に際しては、常温〜300℃の任意の温度で硬化できるが、65〜250℃の温度で5秒〜60分加熱硬化することが好ましい。加熱硬化の場合は、加熱温度が高いほど加熱時間は短くでき、硬化触媒を併用することでさらに短縮でき得る。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物の塗膜の厚みとしては、0.5〜50μmが好ましい。薄すぎる場合には、物理的な磨耗により塗膜が欠損し易くなり、耐久性の面で好ましくなく、厚すぎる場合には、塗材を加工する際に、塗膜に割れ及び剥がれが発生し易くなり、好ましくない。
【0039】
本発明に係わる硬化性樹脂組成物の被塗物としては、金属、無機物、有機物、および複合材料が挙げられる。金属としては、ステンレス、アルミニウム、ブリキ、トタン、軟鋼板、銅、真鍮、各種メッキ鋼板およびチタン等が挙げられる。化成処理、アルマイト処理などの表面処理を施した基材でも好適に使用できる。無機物としてはガラス、モルタル、スレート、コンクリート及び瓦等が挙げられる。有機物としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、PET、ナイロン、ポリエステル、ゴム、及びエラストマーのようなプラスチック成形品およびこれらをフィルム状に加工した製品などが挙げられる(尚、これらは、付着性の点から必要に応じて表面処理されたものであっても良い)。複合材料としてはFRP、FRTP、積層板および金属と有機物を圧着したサンドイッチ材などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0041】
(シリコーン変性ビニル系重合体の合成:合成例1〜12)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた容器に表1に示す成分を(イ)成分を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、表1の(ア)成分の混合物を滴下ロートから5時間かけて等速滴下した。次に(ウ)成分の混合液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き110℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却した。最後に表1の(エ)成分を加えて攪拌した。
【0042】
【表1】

【0043】
V−59:和光純薬工業株式会社製、(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))
【0044】
(硬化性樹脂組成物の作製:実施例1〜4および比較例1〜8)
表2および表3に示す配合に従い、硬化性樹脂組成物を作製した。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
D−110N:ポリイソシアネート化合物(三井化学ポリウレタン(株)製)
ネオスタンU−360:S基含有有機錫化合物(日東化成(株)製)
【0048】
実施例1〜4および比較例1〜8の硬化性樹脂組成物を、厚さ1mmのABS板にエアスプレー塗装にて乾燥膜厚が15μmになるように塗布し、80℃で30分乾燥した後、下記の評価を実施した。
【0049】
(耐汚染性)
試験片の表面に、牛脂(試薬:和光純薬工業(株)製)を均一に塗り広げ、80℃の密閉容器中に7日間放置した。取り出し、中性洗剤水で洗浄後、水をよく拭きさり、30分後にJIS K 5600−5−6に準拠して付着性試験を行い、評価した。
剥離が生じているクロスカット部分の表面状態の分類が0〜1:○、2:△、3〜5:×とした。
【0050】
同様の試験を牛脂に代わり、ブラバスヘアリッキド(資生堂コスメティー社製)でも行った。
【0051】
(耐衝撃性)
テスター産業(株)製のデュポン式試験機を用いて1/4Rの撃ち型と受け台を取り付け、高さ30cmより300gのおもりを塗膜面に落として変形させた。変形部にセロハンテープを貼り付け素早く剥がし、塗膜剥離の有無を観察した。
○:剥離なし ×:剥離あり
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
表4、表5に示されるように、本発明に相当する実施例1〜4の硬化性樹脂組成物を用いた場合には、比較例1〜8を用いた場合と比較して耐汚染性が著しく優れており、耐衝撃性においても良好であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン基と加水分解性シリル基と水酸基を有するシリコーン変性ビニル系重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)とを含有してなることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物であって、シリコーン変性ビニル系重合体(A)が、水酸基を含有するビニル化合物(c)を全単量体の10〜40重量%含有する単量体を共重合して得られたものであり、ガラス転移温度が30〜70℃であることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、(a)ビニル基含有ポリシロキサン、(b)加水分解性シリル基を含有するビニル化合物、(c)水酸基を有するビニル化合物、(d)その他の重合性ビニル化合物を共重合してなるシリコーン変性ビニル系重合体である請求項1記載の塗料用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ビニル基含有ポリシロキサン(a)が、片方末端にのみビニル基を有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の塗料用硬化性樹脂組成物を含む自動車内装材用コーティング剤。

【公開番号】特開2011−16966(P2011−16966A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164072(P2009−164072)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】