説明

硬化性組成物及びその架橋ゴム

【課題】 難燃性低硬度衝撃吸収架橋ゴムおよび、その製法を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン重合体、(B)1分子中にすくなくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)平均粒径1.0〜50μmのカップリング剤、脂肪酸もしくは樹脂酸で表面処理されていない金属水酸化物を必須成分とし、硬化物の架橋密度及び、可塑剤添加による難燃性と硬度のバランスを制御した硬化性組成物を使用することで、難燃性低硬度衝撃吸収架橋ゴムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応用いた難燃性衝撃吸収架橋ゴムに関する。さらに詳しくは、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有する重合体と1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒を必須成分として含有し、硬化反応により作成される難燃性衝撃吸収架橋ゴムの成形体及び、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電機器、自動車搭載機器等に使用される部材への難燃性要求が強まって来ている。また、環境対応の観点から使用できる難燃材料の規制も強まってきている。
【0003】
従来、家電機器等に用いられる難燃性衝撃吸収ゴムは、難燃性を付与するために難燃性物質を多量に配合するので粘度及び硬度が高くなってしまい、成形性が悪くなったり使用用途が限定されてしまっている。一方、低硬度が必要な部材では、粘度や硬度の上がりにくいハロゲン系難燃剤を用いることで低硬度材料を達成しているが、上記のようにハロゲン系難燃剤は環境対応面から使用の制限が厳しくなってきている。
非ハロゲン系での難燃性低硬度架橋ゴムは特許文献1に示すような材料があるが、衝撃吸収性、制振性を示すtanδが良好な材料は知られていない。また、特許文献2に示すようなゲル材料も知られているが衝撃吸収特性の温度依存性が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−056986号公報
【特許文献2】特開2007−277390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、難燃性、衝撃吸収性を有する低硬度架橋ゴム及びその製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は種々の検討を行った結果、以下の方法で難燃性、衝撃吸収性を有する低硬度架橋ゴムを作成することができた。
(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するオキシアルキレン系重合体、(B)1分子中にすくなくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)平均粒径1.0〜50μmの水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムを必須成分としてなる硬化性組成物を加熱し架橋ゴムを得る。
本発明はすなわち、
(I).(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有する数平均分子量が3,000〜50,000のポリオキシアルキレン系重合体、(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、及び(D)平均粒径1.0〜50μmの水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウム、を必須成分として含有し、全組成物に対して、前記金属水酸化物(D)を40体積%以上配合した硬化性組成物、
(II).硬化性組成物を硬化した架橋ゴムの難燃性が、UL94試験でV−0であり、23℃でのDuroA硬度が25°未満であることを特徴とする(I)記載の硬化性組成物、
(III).硬化した架橋ゴムの30Hzでの振動数で、−30℃から60℃の温度域におけるtanδの最大値と最小値の差が0.25以下である(I)〜(II)のいずれかに記載の硬化性組成物、
(IV).前記金属水酸化物(D)の50重量%以上がカップリング剤、脂肪酸もしくは樹脂酸で表面処理されていない水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする(I)〜(III)のいずれかに記載の硬化性組成物、
(V).
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、可塑剤を0重量部以上50重量部未満配合した(I)〜(IV)のいずれかに記載の硬化性組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の難燃性低硬度衝撃吸収架橋ゴムはハロゲン系難燃剤及び、非環境対応難燃剤を用いていないため、大気汚染への影響や毒性の問題がない。
本発明の難燃性低硬度衝撃吸収架橋ゴムは、他の非ハロゲン系難燃剤使用衝撃吸収架橋ゴムでは達し得ない低硬度であるため良好な衝撃吸収性が得られる。
また、一般的な架橋ゴムでは得られない感温特性を有しているため幅広い温度域で衝撃吸収性が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の(A)成分である、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するオキシアルキレン系重合体としては、特に制限はなく、公知のものがあげられる。具体的には、特開2008−150403号公報に載っているものが挙げられ、重合体の主鎖が、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものがあげられる。一般式(1):
−R−O− (1)
(式中、Rは2価のアルキレン基)。
【0009】
一般式(1)におけるRは、炭素数1から14の、さらには2から4の、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましい。一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CHO−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、入手性、作業性の点から、−CHCH(CH)O−を主な繰り返し単位とする重合体が好ましい。また、重合体の主鎖にはオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中のオキシアルキレン単位の総和は、80重量%以上、特には90重量%以上が好ましい。
【0010】
(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体の構造は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、また、その混合物でもよいが、良好な粘着性を得るため、直鎖状の重合体を50重量%以上含有することが好ましい。
【0011】
(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体の分子量は、数平均分子量で3,000 〜50,000であり、5,000〜30,000が特に好ましい。数平均分子量が3,000未満のものでは、得られる架橋ゴムの振動、衝撃吸収性能は乏しくなるとともに、硬く脆い傾向にあり良好なゴムとしての弾性に欠ける。逆に数平均分子量が50,000を超えると高粘度になりすぎて組成物の取り扱いが著しく低下するため好ましくない。数平均分子量は、各種の方法で測定可能であるが、通常、ポリオキシアルキレン系重合体の末端基分析からの換算や、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法での測定が一般的である。
【0012】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)成分中のアルケニル基としては特に制限はないが、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好適に用いられる。一般式(2):
C =C(R )− (2)
(式中、Rは水素又はメチル基である)。
【0013】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)成分は、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するものであり、硬化物の機械物性の点から、ポリオキシアルキレン系重合体1分子当たり平均して1.2個〜3.0個有するものが好ましい。特に限定するわけではないが、具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体1分子当たりに導入されたアルケニル基の数をH−NMR分析により求めた平均値が1.2個〜3.0個であることが好ましく、1.5個〜2.5個であることがより好ましい。
【0014】
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式としては特に制限はないが、たとえば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0015】
(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては一般式(3):
[HC =C(R)−R−O] (3)
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1 〜20の2価の炭化水素基であって、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい、Rはポリオキシアルキレン系重合体残基であり、aは正の整数である。)で示される重合体が挙げられる。Rは具体的には、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCHCH−,−CHCHOCHCH−、または−CHCHOCHCHCH−などを挙げることができる。合成上の容易さからは−CH−が好ましい。
【0016】
(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体の他の具体例としては一般式(4):
[HC=C(R)−R−OC(=O)] (4)
(式中、R ,R ,R 及びa は上記と同じ)で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0017】
また、次の一般式(5):
[HC =C(R)] (5)
(式中、R、R 及びa は上記と同じ)で示される重合体も挙げられる。さらに、次の一般式(6):
[HC =C(R)−R−OC(=O)O] (6)
(式中、R、R、R及びaは上記と同じ)で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0018】
本発明における(B)成分である1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物としては、ヒドロシリル基を有するものであれば特に限定されず、このなかでも原材料の入手が容易なこと、(A)成分への相溶性が良好なことなどから、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0019】
前記のヒドロシリル基を有する化合物(B)の数平均分子量としては、400〜3,000が好ましく、500〜1,000がより好ましい。数平均分子量が400未満の(B)成分の化合物を使用した硬化性組成物は、加熱硬化時に(B)成分が揮発して十分な硬化物が得られなくなる傾向があり、数平均分子量が3,000を超える(B)成分の化合物を使用した硬化性組成物は、十分な硬化速度が得られなくなる傾向がある。
【0020】
また、これら(B)成分の化合物は、(A)成分の重合体との相溶性が良好なものが好ましい。特に硬化性組成物の粘度が低い場合には、(B)成分に相溶性の低いものを使用すると、貯蔵中などに相分離が起こり硬化不良を引き起こす傾向がある。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては特に限定されず、たとえば、下記の構造式等で示される鎖状又は環状の化合物があげられる。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、2<b+c≦40、2<b≦20、0<c≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有していてもよい。)、
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、0≦d+e≦40、0≦d≦20、0<e≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を有してもよい。)、又は、
【0025】
【化3】

【0026】
(式中、3≦f+g≦20、2<f≦20、0<g≦18である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基である。なお、Rは炭化水素基中に1個以上のフェニル基を含有してもよい。)
【0027】
(A)成分および、(C)成分との相溶性、又は、分散安定性および硬化速度が比較的良好な(B)成分としては、とくに限定されず、たとえば、下記の構造式で示される化合物があげられる。
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、2<k+l≦20、2<k≦19、0<l≦18であり、Rは炭素数8以上の炭化水素基である。)
【0030】
好ましい(B)成分の化合物の具体的例としては、(A)成分との相溶性確保と、SiH量の調整を目的に、メチルハイドロジェンポリシロキサンを、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物があげられ、例示され、一例として、以下の構造式で示される化合物があげられる。
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、2<p+q≦20、2<p≦19、0<q≦18である。)。
【0033】
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基を有する化合物の使用量は、(A)成分の重合体中に存在するアルケニル基の量と、(B)成分中の化合物中に存在するヒドロシリル基の量の関係において、適宜選択され、このなかでも、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることが好ましく、0.7以上がより好ましい。[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5を下回る硬化性組成物は、得られる硬化物が、架橋密度が低い軟質ゴム部分を有するため、粘着性が高くなり、複合成形体を作製するさいの取り扱いが難しくなる傾向がある。また、[(A)成分中のアルケニル基の総量]に対する [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]が大過剰の硬化性組成物は、得られる硬化物が三次元の網目骨格を形成するのが困難となり、複合成形体を作製する際の取り扱いが難しくなる傾向がある。このように(B)成分の使用量については、下限、上限の両方に注意する必要がある。
【0034】
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、特に限定されず、公知のものがあげられ、たとえば塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、PtX(ViMeSiOSiMeVi)y 、Pt〔(MeViSiO)z};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh 、Pt(PBu };白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh) 、Pt〔P(OBu) (式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、x、y、zは整数を表す)、Pt(acac) (ただし、acacは、アセチルアセトナトを表す)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に開示されている白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号に開示されている白金アルコラート触媒等も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh 、RhCl、Rh/Al 、RuCl 、IrCl 、FeCl 、AlCl 、PdCl・2HO、NiCl 、TiCl 等が挙げられる。
【0035】
これらの触媒は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。前記の触媒のなかでも、触媒活性が高いことなどから塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。
【0036】
触媒(C)の使用量としては、特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−8〜10−1molが好ましく、10−6〜10−2molがより好ましい。10−8mol未満の量を使用した硬化性組成物は、硬化速度が遅く、また硬化が不安定となる傾向がある。逆に10−1molを越える量を使用した硬化性組成物は、ポットライフの確保が困難となる傾向がある。
【0037】
前記金属水酸化物(D)としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好適に用いられる。金属水酸化物は表面処理していないものが良く、カップリング剤、脂肪酸及び樹脂酸等の処理剤で表面処理したものは高充填下単独で用いると硬化性に悪影響を及ぼすので単独では用いないほうが良い。
【0038】
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム又はその混合物は約1 8 0 〜 3 2 0 ℃ で構造水を放出するため、炎の着火、延焼を防ぐことが出来、優れた難燃性を発揮することができる。
【0039】
また、上記金属水酸化物がカップリング剤、脂肪酸または樹脂酸で表面処理されたものを使用した場合、多少難燃効果は薄れるが、粘度安定性及び電気特性が向上する。
上記金属水酸化物の粒径は0.1μm〜200μmが用いられるが、0.3μm〜100μmが更に好ましく、1.0μm〜30μmが最も好ましい。
【0040】
該金属水酸化物の粒径が、0.1μmより小さいと、組成物粘度が著しい高くなり作業性が悪くなる問題があり、一方200μmより大きいと、微量定量吐出の場合に針先や装置嵌合部で詰まる問題がある。
【0041】
金属水酸化物の量は、全液状組成物に対して体積比で45〜55%配合されることが好ましい。この金属水酸化物の量が、体積比40より少ないと、充分な難燃性が得られず、例えば着火すると延焼し続けたりポリマーが解重合し液状化することがあり、一方55%重量部より多いと、組成物粘度が高くなり作業性が悪くなる他、低硬度化が困難となる。また金属水酸化物の粒径によっても難燃効果は多少異なる。
【0042】
上記のハロゲン系、リン系、酸化アンチモン等の難燃剤は通常の使用において上述したような問題があるが、本発明においては、これらの難燃剤を金属水酸化物と併用することも可能である。この他に、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛等も発煙量の低減効果が有るため、添加することができる。
【0043】
また、本発明の(A)〜(D)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて保存安定性改良剤を添加することができる。保存安定性改良剤とは、硬化性組成物の貯蔵中の硬化、劣化等物性の低下を防止する働きを担う。保存安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている公知の安定剤であって所期の目的を達成するものであれば特に限定されず、たとえば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等があげられる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の(A)〜(D)成分からなる硬化性組成物には、必要に応じて、各種充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、可塑剤、シリコーン化合物を適宜添加してもよい。上記充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0045】
本発明に可塑剤が添加される場合、特に種類は限定されず、本発明の硬化性組成物との相溶性がよく、可塑化効果が高ければよい。具体例を挙げれば、PPG系可塑剤が好ましい。配合量に関しては、前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、可塑剤を0重量部以上50重量部以下が好ましく、更に好ましくは10重量部以上30重量部以下が好ましい。50重量部以上となると難燃性及び、機械強度の低下や、ブリードが発生する可能性がある。
【0046】
本発明の硬化性組成物を得る方法としては、特に限定されず、たとえば、(A)〜(D)成分、さらに必要に応じて使用する各種添加剤や充填剤をプラネタリーミキサーや2軸ディスパなどの回転式ミキサーや、ニーダー、バンパリーミキサー、ロールなどの装置を使用し、混合する方法が挙げられる。ここで、(A)成分中に(B)、(D)成分を均一に分散、安定化させること、及び硬化性組成物中に含まれる水分をなるべく除去することが望ましい。(A)成分中への(B)、(D)成分の分散が不均一、不安定であれば、貯蔵中に硬化性組成物の性状が経時で大きく変化する傾向がある。また、硬化性組成物中に水分が多い場合には、硬化反応時に(B)成分と水分が反応することにより発泡し、架橋ゴム中にボイドを生じる傾向がある。
【0047】
また、本発明の硬化性組成物から架橋ゴムを得る方法としては、特に限定されず、たとえば、該硬化性組成物を何らかの基材上に塗布し、熱風乾燥機などで加熱硬化させるなどの接着剤を扱うのと同様の方法や、プレス金型に硬化性組成物を充填し、加熱プレスする方法、射出成形機により硬化性組成物を射出成形金型に充填し、加熱硬化させる方法などが挙げられる。
【0048】
また、これら各種の成形方法において、本発明の硬化性組成物は、全ての成分を含む1液形態として扱うことも、(B)成分と(C)成分とが混合しないように全成分を2液に配分した2液形態として扱うことも可能である。1液形態として扱う場合、室温下でも反応は徐々に進行し得るため、低温下での保管が必要となるが、成形時に2液を混合するなどの手間が省略できる。また、2液形態として扱う場合には、成形時に2液を混合し、泡を含まない状態で塗布、充填、射出できるように工夫が必要となるが、液状組成物の長期保管には有利である。このような2液形態の液状組成物の取り扱いには、液状シリコーン向けに開発された液状射出成形システムに使用されている2液混合吐出装置や、2液形態のウレタン樹脂、エポキシ樹脂に使用されている2液混合吐出装置が使用できる。これらのうち液状射出成形システムは、2液組成物の供給から射出成形までの一連の操作を自動的に行える成形システムであり、本発明の硬化性組成物から架橋ゴムを得るには好適な成形方法である。
【0049】
本発明の硬化性組成物より得られる表面性の良好なポリオキシアルキレン系架橋ゴムは、機械特性も良好であり、その透明性、低温ゴム弾性などから、電子機器、OA機器、医療機器、自動車、建築等の各分野で使用されるガスケット、Oリング、キャップ、コネクタ、シール材、キースイッチ、コンタクトラバー、各種ロール、防振ゴム、衝撃吸収材、ダイヤフラム、メガネやゴーグルなど、幅広い用途に有用である。
【実施例】
【0050】
次に実施例により本発明の硬化性組成物、及びその架橋ゴムを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
(製造例1)
数平均分子量3,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤として、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて、プロピレンオキシドを重合することにより数平均分子量が約20,000(末端の水酸基とアリル基の分析による計算)のポリオキシプロピレンジオールを得た。該ポリオキシプロピレンジオールの水酸基に対して1.2当量のナトリウムメチラートの28%メタノール溶液を加えた後、130℃でメタノールが回収されなくなるまで減圧脱揮を行った。ついで、アリルクロライドを加え反応させた後、未反応のアリルクロライドを減圧脱揮により除去した。その後、ヘキサンと水により精製し、1分子中に概ね2個のアリル末端を有するポリオキシアルキレン系重合体(a−1)を得た。この重合体(a−1)は、粘度が50Pa・sの淡黄色液体であり、ヨウ素価数より求めたアリル含有量は、0.12mmol/gであった。
【0052】
(製造例2)
(−Si−O−)で示される繰り返し単位を平均して10個もつメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下全ヒドロシリル基量の0.5当量のα―メチルスチレンを添加し、1分子中に平均5個のヒドロシリル基を有する化合物(b−1)を得た。水素発生量から換算したこの化合物のSi−H基含有量は3.8mmol/gであった。
【0053】
(実施例1)
表1に示す配合量に従い、(A)成分として製造例1で得たアリル基末端ポリオキシアルキレン系重合体(a−1)と(D)成分として平均粒径1μm(d−1)と29μm(d−2)の水酸化アルミニウム混合フィラーを全組成物に対して50体積%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(f−1)および、その他添加剤をロールにて混練した。続いて、得られた混合物をプラネタリーミキサーにて、減圧下、加熱攪拌することにより水分を除去した。さらに冷却した後、(B)成分としてヒドロシリル化合物(b−1)、(C)成分として白金ビニルシロキサン(3%白金キシレン溶液)、保存安定性改良剤であるアセチレンアルコール(e−1)を混合した。このようにして(A)、(B)、(C)、(D)およびその他配合剤の液状組成物(1)を得た。
【0054】
このようにして得られた液状組成物(1)を脱泡した後、厚さ2mmのスペーサと2枚の鏡面仕上げしたプレス板を使用し、150℃、180秒の加熱プレス成形し冷却することにより2mm厚の硬化物シートを得た。得られたシートをさらに150℃熱風乾燥機にて1時間の加熱処理を行った。得られた硬化物シートの難燃性をUL−94規格に準じて表1のように評価した。
【0055】
また、JIS K 6262に規定される圧縮永久歪試験サンプル用の金型を使用し、150℃、10分の加熱プレス成形することにより直径29mm×厚さ12.5mmの試験片を成形した。得られた成形体をさらに150℃熱風乾燥器にて1時間の加熱処理を行い硬度測定に使用した。さらに前記で得られた2mm厚の硬化物シートを5mm角のサイズに切り出し、動的粘弾性測定の測定に使用した。
硬度 : JIS K 6253に規定されるタイプAデュロメーターにて測定
動的粘弾性測定による損失正接(tanδ) :アイティー計測制御株式会社製 動的粘弾性測定装置DVA−200にて、周波数30Hzのせん断モードにて−30℃〜60℃下の損失正接(tanδ)を測定し、その最大値と最小値を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例2)
d−1、d−2の部数を81重量部、189重量部に変更し、アクトコールP−23K 20重量部の代わりに、ユニセーフPKA−5014 10重量部を用いた以外は、実施例1と同様に硬化物シートを作製し評価を行った。評価結果を表1に記す。
【0058】
(実施例3)
d−1、d−2の代わりにハイジライトH−34(d−3)293重量部を用いた以外は、実施例1と同様に硬化物シートを作製し評価を行った。評価結果を表1に記す。
【0059】
(比較例1〜3)
表1に示す配合量に従い、(A)成分として製造例1で得たアリル基末端ポリオキシアルキレン系重合体(a−1)と、比較例1,2では(D)成分として平均粒径1μm(d−1)と29μm(d−2)の水酸化アルミニウム混合フィラーを全組成物に対して45体積%、比較例3では(d−1)とニップシールLPを30重量部ずつ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(f−1)および、その他添加剤をロールにて混練した。続いて、得られた混合物をプラネタリーミキサーにて、減圧下、加熱攪拌することにより水分を除去した。さらに冷却した後、(B)成分としてヒドロシリル化合物(b−1)、(C)成分として白金ビニルシロキサン(3%白金キシレン溶液)、保存安定性改良剤であるアセチレンアルコール(e−1)を混合した。このようにして(A)、(B)、(C)、(D)およびその他配合剤の液状組成物(1)を得た。
【0060】
このようにして得られた液状組成物(1)を脱泡した後、厚さ2mmのスペーサと2枚の鏡面仕上げしたプレス板を使用し、150℃、180秒の加熱プレス成形し冷却することにより2mm厚の硬化物シートを得た。得られたシートをさらに150℃熱風乾燥機にて1時間の加熱処理を行った。得られた硬化物シートの難燃性をUL−94規格に準じて表1のように評価した。
【0061】
表1に示されるように、(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン重合体、(B)1分子中に平均2個を超えるヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)平均粒径1.0〜50μmの水酸化アルミニウムを使用する本発明の硬化性組成物を用いることで、良好な密着性を持つ複合ゴム難燃性低硬度衝撃吸収架橋ゴムが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に1個を超えるアルケニル基を有する数平均分子量が3,000〜50,000のポリオキシアルキレン系重合体、
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒、及び
(D)平均粒径1.0〜50μmの水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウム、
を必須成分として含有し、全組成物に対して、前記金属水酸化物(D)を40体積%以上配合した硬化性組成物。
【請求項2】
硬化性組成物を硬化した架橋ゴムの難燃性が、UL94試験でV−0であり、23℃でのDuroA硬度が25°未満であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化した架橋ゴムの30Hzでの振動数で、−30℃から60℃の温度域におけるtanδの最大値と最小値の差が0.25以下である請求項1〜2のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記金属水酸化物(D)50重量%以上がカップリング剤、脂肪酸もしくは樹脂酸で表面処理されていない水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、可塑剤を0重量部以上50重量部未満配合した請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2013−87231(P2013−87231A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230379(P2011−230379)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】