説明

硬化性組成物

【課題】低屈折率かつ高硬度・高強度・高透明性である硬化物を与える有機無機ハイブリッド型組成物を提供する。
【解決手段】(A)SiH基との反応性を有する炭素―炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物
(B)SiO4/2(1)で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、
a1a2SiO1/2 (2)、Ra2SiO1/2 (3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、その主構造の末端が(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を持つ一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ持つ珪素含有化合物
(C)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤
(D)ヒドロシリル化触媒
からなる有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば液晶ディスプレイパネル中のガラス基板と接する樹脂層として使用した場合に、優れた光透過性を示す樹脂層を与える有機無機ハイブリッド型硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイを初めとする多くの表示デバイスにはガラス基板と高分子材料が接する部位が存在する(例えば特許文献1)。このような表示デバイスにおいて例えばガラス基板と高分子材料が接している部分を光源等からの光が透過する場合、界面での光の反射を抑制する観点から、当該高分子材料には屈折率が低いことが要求される。このような要求を満たす材料として、フェニル基を有さないシリコーン系材料が提案されているが当該シリコーン材料はエポキシ樹脂等に代表される有機高分子材料に比して樹脂強度が低く、基板に対する接着性にも劣ることが知られている。このような背景のなか、シリコーン系材料に有機高分子材料の特性を付与すべく有機無機ハイブリッド型樹脂が提案されているが、屈折率を下げようとすると有機高分子材料の特性が充分に発現されない問題が生じていた。一方で、有機高分子材料の中でもフッ素系樹脂などは屈折率が低いことが知られているが当該樹脂は凝集力が低く、基板に対する接着性や樹脂強度が低いことが問題となっていた。以上より、フェニル基を有さないシリコーン樹脂並みに低屈折率であり、かつ有機高分子材料並みの接着性・樹脂強度を有する材料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3983316号
【発明の概要】
【0004】
本発明は、低屈折率でありかつ高硬度・高強度・高透明性である硬化物を与えるような有機無機ハイブリッド型組成物に関する。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる実情を鑑みてなされたものであり、低屈折率でありかつ高硬度・高強度・高透明性である硬化物を与えるような有機無機ハイブリッド型組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の硬化性組成物が、ハイブリッド型樹脂の優れた特性を維持しつつ、低屈折率を示すことを見致し、本発明の完成に至った。即ち本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
1).(A)SiH基との反応性を有する炭素―炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物
(B)一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a2SiO1/2 (2)
a2SiO1/2 (3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有する珪素含有化合物
(C)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤
(D)ヒドロシリル化触媒
からなることを特徴とする有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0008】
2).前記有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物の波長588nmにおける屈折率が1.475以下であることを特徴とする1)に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0009】
3).前記有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物のショアD硬度が60以上であることを特徴とする1)または2)に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0010】
4).(B)成分の単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数が3.0mmol/g〜12mmol/gの範囲内であることを特徴とする1)〜3)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0011】
5).(A)成分が、(A)成分がジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする1)〜4)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0012】
6).(A)成分がトリアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノメチルイソシアヌレートであることを特徴とする1)〜5)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0013】
7).(C)成分が(C−1)アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物と(C−2)1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンシロキサンとをヒドロシリル化反応させることにより得られる(C−3)有機変性シリコーン化合物であることを特徴とする1)〜6)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物
【0014】
8).前記(C−1)成分が、ポリブタジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAジアリレート、及びトリビニルシクロヘキサン、及び下記一般式(4)
【0015】
【化1】

【0016】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする1)〜7)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0017】
9).前記(C−1)成分が、下記一般式(5)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表されることを特徴とする1)〜8)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0020】
10).前記(C−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする1)〜9)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【0021】
11).1)〜10)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【0022】
12).1)〜10)いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を石英ガラス上に塗膜・ベークしてなる積層体。
【0023】
13).前記積層体の波長400nmにおける光線透過率が95%以上であることを特徴とする12)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0024】
本発明の硬化性組成物を用いることにより、たとえば表示素子の光源からの光取り出し効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する
<SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物(A)>
本発明における(A)成分について説明する。(A)成分はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系骨格からなる有機化合物である。(A)成分において、その構造を骨格部分と、その骨格に共有結合によって(場合によっては2価以上の置換基を介して)結合していてかつSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基(アルケニル基)とに分けて表した場合、アルケニル基は分子内のどこに存在してもよい。有機化合物である(A)成分の骨格としては、特に限定はなく有機重合体骨格又は有機単量体骨格を用いればよい。有機重合体骨格の例としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の骨格を用いることができる。また単量体骨格としては例えばフェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、及びこれらの混合物が挙げられる。(A)成分のアルケニル基としてはSiH基との反応性を有するものであれば特に制限されない。(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシクロヘキサン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。上述の(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点から、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001モル以上含有するものであればよいが、更に、1gあたり0.005モル以上含有するものが好ましく、0.008モル以上含有するものが特に好ましい。具体的な例としては、ブタジエン、イソプレン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、デカジエン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、及びそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1,2比率10〜100%のもの、好ましくは1,2比率50〜100%のもの)、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシクロヘキサン、等が挙げられる。また、(A)成分としては、屈折率が低い、光弾性係数が低い等のように光学特性が良好であるという観点からは、芳香環の(A)成分中の成分重量比が50wt%以下であるものが好ましく、40wt%以下のものがより好ましく、30%以下のものが更に好ましい。最も好ましいのは芳香環を含まないものである。得られる硬化物の着色が少なく光学的透明性が高いという観点、及び耐光着色性が少ないという観点から、(A)成分としては、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシクロヘキサンが好ましく、中でもトリアリルイソシアヌレート、トリビニルシクロヘキサンがより好ましい。
【0026】
<(B)成分>
本発明における(B)成分について説明する。
(B)成分は、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a2SiO1/2 (2)
a2SiO1/2 (3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有する珪素含有化合物である。
【0027】
前記アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が好ましく、入手性、また、耐熱性・耐光性の観点からビニル基がさらに好ましい。
【0028】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される、同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からメチル基がさらに好ましい。
【0029】
さらに、(B)成分は単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数が3.0mmol/g〜12.0mmol/gの範囲内にあることが好ましく、4.0mmol/g〜10.0mmol/gの範囲内にあることが好ましく、5.0mmol/g〜9.0mmol/gの範囲内にあることがさらに好ましい。単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数が3.0mmol/g未満である場合、本発明における有機無機ハイブリッド型組成物を硬化して得られる硬化物の硬度が低くなる場合があり、また12.0mmol/gを超える場合、硬化物の靭性が低くなる場合がある。
【0030】
更に上記(B)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0031】
更に上記(B)成分は組成物中に20wt%〜70Wt%であることが好ましく、30wt%〜60wt%であることがより好ましく、40wt%〜50wt%であることがさらに好ましい。(B)成分が20wt%未満である場合、本発明における有機無機ハイブリッド型組成物を硬化して得られる硬化物の屈折率が効果的に下がらない可能性があり、70wt%を超える場合は硬化物の靭性が低下する可能性がある。
【0032】
(B)成分以外に、1分子中に2個以上のアルケニル基を含有する珪素含有化合物を一部添加することができる。1分子中に2個以上のアルケニル基を含有する珪素含有化合物の例として、直鎖状、環状の珪素含有化合物を挙げることができるが、これら珪素化合物も(B)成分と同様に、良好な透明性を有する硬化物を与える観点から単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数が3.0mmol/g〜12.0mmol/gの範囲内にあることが好ましく、4.0mmol/g〜10.0mmol/gの範囲内にあることが好ましく、5.0mmol/g〜9.0mmol/gの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0033】
1分子中に2個以上のアルケニル基を含有する直鎖状の珪素含有化合物の例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0034】
また1分子中に2個以上のアルケニル基を含有する環状の珪素含有化合物の例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0035】
これら直鎖状・環状の珪素含有化合物の添加量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分合計100重量部に対して、1〜20重量部の範囲内にあることが好ましく、1〜15重量部の範囲内にあることが好ましく、1〜10重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。添加量が20重量部を超える場合、硬化物の強度が低下する場合がある。
【0036】
<SiH基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤(C)>
本発明における(C)成分について説明する。本発明における(C)成分はSiH基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤である。
本発明における(C)成分は(A)成分、(B)成分との相溶性の観点から、アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物(C−1)を、一分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有するオルガノハイドロジェンシロキサン(C−2)とをヒドロシリル化反応させることによって得られる有機変性シリコーン(C−3)を使用することが好ましい。(C−1)成分は、アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物であれば特に限定はしないが、(C−1)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ビスフェノールAのジアリルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、また、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。また、(C−1)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。(C−1)成分としては複素環骨格を有する有機化合物であることが好ましい。複素環骨格を有する有機化合物とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に限定はなく、3以上であればよい。入手性からは10以下であることが好ましい。複素環の具体的な例としては、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピラロール系、オキサゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系がある。中でも、本発明の効果を高めることから、複素環としてはイソシアヌレートが好ましく、(C−1)成分の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルメタクリレートが好ましい例として挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる(C−2)成分は、一分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するもの等が使用できる。
【0038】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、シリコーン系硬化性組成物中における相溶性が良いという観点からは環状オルガノポリシロキサンが好ましい。ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0039】
(C−2)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は58であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0040】
また、(C−1)成分のアルケニル基は、その全てが(C−2)成分のヒドロシリル基と反応する必要はなく、(C−1)成分と(C−2)成分を反応させた後に、(C−1)成分由来の残アルケニル基と(C−2)成分由来の残ヒドロシリル基の数が合わせて3以上であればよいが、アルケニル基の数が多過ぎる場合、組成物の耐熱耐光性が低下する恐れがある。
また、本発明における(C)成分はシリコーン系硬化性組成物を硬化させた場合の応力を低減させるという観点から、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、(C)成分が0.5〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.5〜7重量部であることがより好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。0.5重量部未満である場合、硬化が不十分になる場合があり、また10重量部を超える場合、硬化したときの応力が大きくなり、たとえば本発明を表示デバイス内の基板貼り合わせ接着剤として用いた場合に、表示デバイスに不具合が発生する可能性がある。
【0041】
<ヒドロシリル化触媒(D)>
本発明におけるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0042】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。
【0043】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0044】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、アリル基1モルに対して、10−1〜10−8モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10−2〜10−6モルの範囲である。
【0045】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、触媒1モルに対して、10−2〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは10−1〜10モルの範囲である。
【0046】
<有機無機ハイブリッド型硬化性組成物>
本発明における有機無機ハイブリッド型組成物について説明する。本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物とは、有機化合物である(A)成分と、シリコーン系化合物である(B)及び(C)成分、白金触媒である(D)成分を含む硬化性組成物であれば特に限定はされず、これら各成分に加えて種々の成分を添加成分として加えることができる。これら添加成分の具体例としては高分子添加剤、接着付与剤、硬化遅延剤等が例示されうる。
高分子添加剤の具体例をとしては、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても構わない。これら高分子添加剤のうち、耐熱性の観点からはエポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂を用いることが好ましく、耐熱・耐光性の観点からはシリコーン樹脂を用いることがより好ましい。
【0047】
また接着付与剤の具体例としては、シランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を使用することが可能である。
【0048】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。
【0049】
具体的に例示すると、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0050】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
前記、ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sDE−ブチル、ほう酸トリ−tDrt−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0052】
前記、チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0053】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0054】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して5重量部以下であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。
【0055】
硬化遅延剤の具体例としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
【0056】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチンが好ましい。
【0057】
貯蔵安定性改良剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、下限10−1モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0058】
<有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物>
本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物について説明する。本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物とは有機無機ハイブリッド型硬化性組成物をベークすることによって得られる硬化性組成物である。当該硬化物はの硬度はタイプDデュロメーター硬度が60以上であり、70以上であることが好ましく、75以上であることがさらに好ましい。硬度が60未満である場合、例えば本発明における硬化物をダイシングする場合に樹脂欠けが生じる恐れがある。
また同様の観点からは本発明における硬化物は樹脂強度が高いことが好ましい。樹脂強度の測定方法としては任意のものが使用できるが、一例としてダイシェア試験法が挙げられる。具体的な測定方法について以下に説明する。配合後の液状組成物を、厚さ100μmのアプリケーターで膜状に伸ばし、ここに2mm角のガラス製ダイを接触させ、ダイの片面に該液状組成物を付着させた後、ガラスエポキシ製およびアルミニウム製平板それぞれにのせて、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間の条件で段階的に熱硬化(接着)させた試験片を作成した。この試験片を用いて、デイジ社製万能ボンドテスター2400を用い、ガラスエポキシ製平板とガラス製ダイ間の接着強度を評価した。10kgfのロードセルを用い、試験スピードは83μm/secで実施した。測定はn=5で行い、最大値と最小値を除いた3つの平均値を樹脂強度とする。本発明における硬化物の樹脂強度は、8kg・f以上であることが好ましく、12kg・f以上であることがより好ましく、15kg・f以上であることが更に好ましい。樹脂強度が8kg・f未満である場合、樹脂欠け等が起こる可能性がある。
また、本発明における硬化物は、波長588nm(D線)における屈折率が1.475以下であることが好ましく、1.472以下であることがより好ましく1.470以下であることがさらに好ましい。屈折率が1.475を超える場合、例えば本発明における有機無機ハイブリッド型組成物をガラス基板上に塗膜・ベークして得られる積層体の光線透過率が低くなる恐れがある。
【0059】
<有機無機ハイブリッド型硬化性組成物をガラス基板上に塗膜・ベークしてなる積層体>
本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物をガラス基板上に塗膜・ベークしてなる積層体について説明する。本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を石英ガラス上に塗膜・ベークしてなる積層体とは、ガラス基板上に任意の方法によって本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を塗膜・ベークして得られる積層体を示す。
ガラス基板は任意のものを使用してよく、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が例示されうるが、光学デバイス向けへの適用の観点からは石英ガラスを使用することが好ましい。また、ガラス基板と有機無機ハイブリッド型組成物はガラス基板表面の一部において接していればよく、ガラス基板上にフォトレジスト材料や金属配線等によって凹凸構造が存在していてもよい。
ガラス基板の厚みは同様に光学デバイス向けへの適用の観点から0.1mm〜1.5mmの範囲にあることが好ましく、0.5mm〜1.2mmの範囲にあることがより好ましく、0.7mm〜1.0mmの範囲にあることがさらに好ましい。厚みは0.1mm未満である場合、積層体に反りが生じる場合があり、また1.5mmを超える場合は例えば本発明の積層体を光学デバイスとして用いた場合に光線透過率が低下する場合がある。
【0060】
<積層体の光線透過率>
本発明における積層体の光線透過率とは、積層体のガラス基板方向から波長400nmの光を入射したときの光線透過率を示す。
積層体の光線透過率は光学デバイスへの応用の観点からは波長400nmにおける光線透過率が95%以上であることが好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。光線透過率が95%未満である場合、例えば当該積層体を光学デバイスに応用した場合に光の取り出し効率が低くなる可能性がある。光線透過率の測定には、例えば可視紫外分光光度計を用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0062】
(硬化物の作成)
本発明における有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を3mm厚みのシリコーンゴム製スペーサーを2枚のガラス基板ではさみ込んで作製した型に流し込み、60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間で段階的に加熱を行って測定用硬化物(3mm厚)を作成し、各種試験に使用した。
【0063】
(積層体の作成)
10cm×10cmサイズの石英ガラス基板(0.7mm厚)上に、本発明における有機無機ハイブリッド型組成物を1.5cc滴下し、スピンコーターを使用して次の回転条件にて塗膜物を作成した。
回転条件:5秒かけて500rpmに到達→500rpmで10秒間維持→5秒かけて1000rpmに到達→1000rpmで30秒間維持→5秒かけて停止。
このようにして得られた硬化物を160℃に加熱されたホットプレート上で5分間ベークすることにより積層体を得、各種試験に使用した。
【0064】
(屈折率測定)
上記にて得られた硬化物を、プリズムカプラを用いて波長588nmにおける屈折率を測定した。
【0065】
(硬度測定)
JIS K6253に記載の方法に準じて、(株)上島製作所製デュロメーター HD−1120を用いて測定した。測定5回の測定値の平均値を採用した。試験片は上記にて得られた硬化物を、あらかじめ試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%で24時間以上、状態調節したものを用いた。
【0066】
(光線透過率測定)
上記にて得られた積層体の光線透過率を可視紫外分光硬度計により測定し、波長400nmにおける光線透過率を評価した。なお、測定にあたってはガラス基板側から測定光が入射するようにした。
【0067】
(ダイシング試験)
上記にて得られた硬化物を、BUEHCER社製ISOMETダイヤモンドカッターを用いて刃厚0.3mmの刃でダイシング試験を行った。試験後の切片を目視観察し、樹脂欠けやクラック等が発生しなかった場合は○、樹脂欠けやクラック等が発生した場合は×と評価した。
【0068】
(樹脂強度試験:ダイシェア試験法)
有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を、厚さ100μmのアプリケーターで膜状に伸ばし、ここに2mm角のガラス製ダイを接触させ、ダイの片面に該液状組成物を付着させた後、ガラスエポキシ製およびアルミニウム製平板それぞれにのせて、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間の条件で段階的に熱硬化(接着)させた試験片を作成した。この試験片を用いて、デイジ社製万能ボンドテスター2400を用い、ガラスエポキシ製平板とガラス製ダイ間の接着強度を評価した。10kgfのロードセルを用い、試験スピードは83μm/secで実施した。測定はn=5で行い、最大値と最小値を除いた3つの平均値を採用した。
【0069】
(合成例1)
3Lの四口フラスコに、拡販装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン300g、1、3−ジビニル−1、1、3、3−テトラメチルジシロキサン300g、白金ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液(白金として0.03wt%含有)7.5mlを加え、100℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン50gをトルエン240gに溶解して得られる溶液を2時間かけて滴下した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物150gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部が1、3−ジビニル−1、1、3、3−トリメチルジシロキサンと反応したもの(以下変性体B1と称する)であることがわかった。このようにして得られた変性体B1を実施例2に使用した。
【0070】
(合成例2)
5Lの二口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート200g、及びトルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。1−エチニル−1−シクロヘキサノール2.95mgを加えた後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物724gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体C1と称する)であることがわかった。このようにして得られた変性体C1を実施例1〜3、比較例1、2における(C)成分として使用した。
【0071】
(合成例3)
1Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン190g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)48mg、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン236.2gを入れ、オイルバス中で70℃に加熱攪拌した。この溶液に1,2,4−トリビニルシクロヘキサン20.0gのトルエン10g溶液を1時間かけて滴下した。得られた溶液を70℃のオイルバス中で90分間加温、攪拌した。1−エチニル−1−シクロヘキサノール9.2mgを加えた。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部が1,2,4−トリビニルシクロヘキサンと反応したもの(以下変性体Aと称する)であることがわかった。このようにして得られた変性体C2を実施例4にける(C)成分として使用した。
【0072】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
表1に示す配合比にて各成分を配合することにより、硬化性シリコーン組成部物を得、各種評価用の硬化物を所定の硬化条件によって得、各評価を実施した。なお、表1中に示した(A)〜(C)成分のうち、上記合成例にて得られた成分以外のものについて詳細を下記に示した。
【0073】
(A)成分
・トリアリルイソシアヌレート(エボニックデグザジャパン社製)
(B)成分
・MQV7:三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数=3.5mmol/g)
・DMS−V03:両末端ビニルジメチルシリコーンポリマー(gelest社製、商品名DMS−V03、単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数=4mmol/g)
・DMS−V41:両末端ビニルジメチルシリコーンポリマー(gelest社製、商品名DMS−V03、単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数=0.05mmol/g)
(C)成分
・MQH5:三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、単位重量あたりのヒドロシリル基の数=2.3mmol/g)
・MQH8:三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、単位重量あたりのヒドロシリル基の数=7.5mmol/g)
【0074】
表2に各種評価結果を示す。表2より、実施例1〜3と比較例1、2を比較すると、いずれの硬化物も低屈折率ではあるが、比較例1は単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数の低い(B)成分を使用しているため硬度が低く、また(B)成分と他成分との相溶性が低く光線透過率が低くなっていることがわかる。実施例と比較例3を比較すると硬度は高いまま維持できているものの、有機無機ハイブリッド型組成物でない比較例3は脆く、樹脂強度が低いことがわかる。また、実施例と比較例2を比較すると、いずれも硬度、樹脂強度、光線透過率ともに高いものの、比較例2は有機骨格が多く、屈折率が高くなっていることがわかる。
以上より、特定の構造を有する(B)成分の存在によって、ハイブリッド樹脂の利点を損なわないままに屈折率を低下させることができることが分かった。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基との反応性を有する炭素―炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物
(B)一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a2SiO1/2 (2)
a2SiO1/2 (3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有する珪素含有化合物
(C)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤
(D)ヒドロシリル化触媒
からなることを特徴とする有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項2】
前記有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物の波長588nmにおける屈折率が1.475以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項3】
前記有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物のショアD硬度が60以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項4】
(B)成分の単位重量あたりの炭素−炭素二重結合の数が3.0mmol/g〜12mmol/gの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項5】
(A)成分が、(A)成分がジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項6】
(A)成分がトリアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノメチルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項7】
(C)成分が(C−1)アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物と(C−2)1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンシロキサンとをヒドロシリル化反応させることにより得られる(C−3)有機変性シリコーン化合物であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物
【請求項8】
前記(C−1)成分が、ポリブタジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAジアリレート、及びトリビニルシクロヘキサン、及び下記一般式(4)
【化1】


(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項9】
前記(C−1)成分が、下記一般式(5)
【化2】


(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表されることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項10】
前記(C−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項12】
請求項1〜10いずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド型硬化性組成物を石英ガラス上に塗膜・ベークしてなる積層体。
【請求項13】
前記積層体の波長400nmにおける光線透過率が95%以上であることを特徴とする請求項12に記載の積層体。

【公開番号】特開2013−82835(P2013−82835A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224955(P2011−224955)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】