説明

硬化性鋳型用硬化剤組成物及び鋳型製造方法

【目的】 本発明は、自硬性及びガス硬化性鋳型造型法における硬化性鋳型用硬化剤組成物及び鋳物用砂型の製造方法を提供する。
【構成】 有機エステルに周期律表のIB〜VIII属の金属又は該金属化合物を含有することを特徴とする硬化性鋳型用硬化剤組成物及び該硬化剤組成物を用いて耐火性粒状材料を造型する鋳物用砂型の製造方法。
【効果】 耐火性粒状材料を造型する鋳物用砂型の製造方法において、本発明の硬化性鋳型用硬化剤組成物を用いることにより、再生砂から造型された鋳型の強度を大幅に向上させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自硬性及びガス硬化性鋳型造型法における硬化性鋳型用硬化剤組成物及び鋳物用砂型の製造方法に関するものであり、更に詳しくは水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、有機エステルを硬化剤として、耐火性粒状材料を造型する鋳物用砂型の製造方法に用いた場合、耐火性粒状材料の再使用性が著しく改良された硬化性鋳型用硬化剤組成物及びこの硬化剤組成物を使用した鋳物用砂型の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】有機粘結剤を用いて主型や中子のような鋳型を製造する造型法として、自硬性鋳型法、コールドボックス鋳型法、クローニング法(シェル法)は公知である。特に有機自硬性鋳型造型法は機械鋳物分野を中心に生産性、鋳物品質、安全衛生上の観点から無機系に代わって既に汎用的な造型法となっている。一方、従来、中、高速で鋳型を製造するにはフェノール樹脂を粒状耐火物に被覆した、所謂コーテッドサンド(CoatedSand) を加熱硬化して鋳型を製造するクローニング法が幅広く使用されている。しかし、鋳型製造時の省エネルギー、鋳型生産速度、更に鋳型、鋳物の品質を改善するために、ガス状又はエロゾル状物質で常温硬化させるコールドボックス鋳型法がクローニング法を代替する鋳型の製造法として鋳物業界で真剣に導入が試みられてきている。
【0003】最近鋳物品質及び作業環境を改善する粘結剤組成物として、水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、これを有機エステルで硬化せしめる有機自硬性鋳型造型法及びガス硬化性鋳型造型法に用いられる鋳物砂用粘結剤組成物が特開昭50−130627号公報、特開昭58−154433号公報、特開昭58−154434号公報等により知られるようになった。この粘結剤を用いた鋳型造型法では、従来の酸硬化型粘結剤と異なり粘結剤組成物中に硫黄元素や窒素元素を含まないため、注湯時の亜硫酸ガスの発生による作業環境の汚染が無い、或は鋳物に対して硫黄元素や窒素元素に起因する鋳物欠陥が少ないという特徴を有する反面、該粘結剤方式の鋳物砂の再生性が極端に悪く、その使用には制限があることはよく知られているところであり、その改善が強く要望されている。
【0004】かかる粘結剤組成物は、得られる鋳型の強度が低いため、造型に必要な鋳型強度を得るために樹脂の添加量が多くならざるを得なかった。又この粘結剤の特に大きな欠点として、一旦鋳造した後再使用を目的とする回収砂や複数回繰り返して使用した再生砂を用いるほど鋳型強度の確保が難しくなり、益々粘結剤の砂に対する使用量が多くなる等の悪循環に陥りやすい欠点があった。又このような鋳型中の粘結剤量の増大は、注湯時の熱分解ガス量の増大につながり、鋳物のガス欠陥及び作業環境の悪化につながる等の欠点も併せ持つことになる。かような欠点を少しでも軽減するために、一般的には砂表面の残留有機物やアルカリ分を除去するため、強度の機械的研磨再生処理を行うと同時に、新砂の補給割合を多くするか、若しくは砂の使い捨て等で対処しているのが現状であった。このため、鋳物砂を再生で使用する場合には砂の再生率はせいぜい85%程度が限界であった(FOUNDRY TRADE JOURNAL−8/22 DECEMBER 1989)。
【0005】この砂再生性について、一般的に普及している酸硬化型のフラン樹脂の場合と比較すると尚一層違いが明確になる。即ち、酸硬化型フラン樹脂の場合、一般的に新砂よりも再生砂を用いる方が鋳型の強度を高くとれるため、粘結剤の添加量は再生砂系では多少少なくする。且つ、強度の機械的研磨再生処理は必要としないため、再生砂の回収率も約95%以上である。
【0006】硬化可能な粘結剤によって結合した砂から鋳型と中子を製造する場合に、砂の再生は重要な経済的問題である。鋳型又は中子から砂を再生するには、鋳造物を取り出した後に、使用済み鋳型と中子を機械的な振動又は分解して砂をばらばらにし、塊又は凝集体を破壊し砂を回収する。回収した砂表面には粘結剤の焼け残り成分が存在するため、普通は次に再生処理する。再生砂の再生方法には一般的に認められた3方法(機械的、湿式、熱的)がある。湿式再生方法は、洗浄水に関連した廃棄問題と砂の乾燥に要するエネルギーコストのために、比較的好ましくない方法である。また熱的再生方法は、この方法のエネルギーコストが高いために、比較的好ましくない方法である。この反面、機械的再生方法は最も経済的であるために、鋳物工業で最も一般的に用いられており、普及している再生方法である。
【0007】かようにして得られた再生砂において、水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、有機エステルで硬化させるバインダープロセスでは、十分な鋳型強度が得られないという前述したごとき、本プロセス特有の欠点が存在し、広く普及している酸硬化性フラン樹脂の場合とは全く異なる現象であり、改良が強く望まれている。最近再生砂を用いた鋳型の強度向上を目的として、粘結剤中の樹脂固形分濃度を低くすることによる方法が特開平1−262042号公報に、また再生砂を予めシラン溶液で前処理する方法が特開平1−262043号公報に開示されている。しかし、これらの方法は再生砂の強度を多少向上させるものもあるが、満足な鋳型強度は得られない。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題点を解決すべく鋭意研究の結果、水溶性フェノール樹脂を粘結剤とし、有機エステルを硬化剤として、耐火性粒状材料を造型する鋳物用砂型の製造方法に用いられる硬化剤組成物において、特定の金属元素を特定量含有する硬化剤組成物を用いることにより、特に再生した耐火性粒状材料(以下再生砂という)から造型された鋳型の強度が大幅に向上することを見いだし、本発明を完成するに到ったものである。即ち本発明は、有機エステルに周期律表のIB〜VIII属の金属又は該金属化合物を含有することを特徴とする硬化性鋳型用硬化剤組成物及び該硬化剤組成物を使用することを特徴とする鋳型製造方法を提供するものである。
【0009】本発明を更に詳細に説明すると、本発明の硬化剤組成物は、IB〜VIII属のうち、IB属ではCu,Ag 、II族ではMg,Ca,Sr, Ba,Zn,Cd、 III属ではSc,Y,Al,Ga,In,Tl 、IV属ではTi,Zr,Hf,Sn,Pb、V属ではV,Nb,Ta,Bi、VI属ではCr,Mo,W,Po、VII 属ではMn,Tc,Re、VIII属ではFe,Co,Niから選ばれる一種又は二種以上の金属元素を含有する化合物を、有機エステルに、金属元素として5〜200000ppm を混合及び/又は溶解させることにより得られる。本発明に供される金属元素含有化合物の形態としては、金属粉、酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩、錯化合物等種々の形態があるが、いずれの形態でも使用可能である。金属元素が硬化剤である有機エステルの粘結剤組成物中に含んでいれば良いのであって、なんら金属元素を含む化合物の形態にとらわれるものではない。以下金属元素及びそれらを含有する化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0010】金属粉としては、IB属ではCu,Ag 、II族ではMg,Ca,Sr, Ba,Zn,Cd等、III 属ではAl,Sc,Ga等、IV属ではTi,Zr,Sn等、 V属ではSb,Bi 等、VI属ではCr,Mo 等、VII族ではMn, Tc等、VIII族ではFe, Co, Ni等が挙げられるが、通常半金属と呼ばれるB,Si,As,Te等は好ましくない。また合金粉としては、ジュラルミン、マグナリウム、フェロマンガン等が挙げられる。また、周期律表IB〜VIII属の金属元素を含む化合物の代表的なものとしては、塩類及び複塩、水酸化物、酸化物、アルキル基、アリール基等の炭化水素基と金属原子との結合した有機金属化合物、窒化物、アルコキシド、水素化物、炭化物、金属イミド、過酸化物、硫化物、リン化物、ニトロ化物、アニリド、フェノラート、六アンモニア化物、フェロセン及びその類似化合物、ジベンゼンクロム及びその類似化合物、無機ヘテロポリマー、金属カルボニル、金属含有酵素、包接化合物、金属錯体、キレート化合物、配位高分子等が挙げられる。
【0011】周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む塩類や水酸化物や酸化物の代表的な構造は下記一般式で表わされる。
【0012】MaXb(式中、MはIB〜VIII族の該金属元素、Xは酸素原子または水酸基または無機酸の陰イオン原子団若しくは有機酸の陰イオン原子団又は金属イオン封鎖性を示す酸の陰イオン原子団。また、aおよびbは1以上の整数を示す。)Mとしては、上記と同様に、IB族ではCu, Ag, II族ではMg, Ca, Sr, Ba, Zn, Cd等、III 族ではAl, Sc, Ga等、IV族ではTi, Zr, Sn等、 V族ではSb, Bi等、VI族ではCr, Mo等、VII 族ではMn, Tc等、VIII族ではFe, Co, Ni等が挙げられるが、通常半金属と呼ばれるB, Si, As, Te等は好ましくない。
【0013】Xの具体例としては、酸素原子、水酸基、無機酸の陰イオン原子団としてハロゲン類(F, Cl, Br等) 、SO4 、SO3 、S2O3、S2O6、SiF6、MoO4、MnO4、NO3 、NO2 、ClO3、ClO、CO3、HCO3、CrO4、IO3 、PO3 、PO4、HPO3、HPO4、H2PO4、 P2O7、H2PO2 、SiO3、BO2 、BO3 、B4O7、Fe(CN)6 等が挙げられる。また有機酸の陰イオン原子団としてはギ酸、酢酸、しゅう酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸の陰イオン原子団等が挙げられ、スルファミン酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸の陰イオン原子団が挙げられる。更にメチルリン酸、エチルリン酸等の有機リン酸の陰イオン原子団等が挙げられる。複塩としては、M23+ (SO4)3・M21+ SO4 ・24H2O なる一般式で表わすことのできるミョウバン等が挙げられ、M3+に相当する3価金属にはAl,V,Mn,Fe等が、M1+としてはNa,K等が挙げれる。
【0014】かかる塩類、複塩、水酸化物として本発明に使用される代表的な化合物としては、次の様なものが挙げられる。
【0015】塩類として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化銅、塩化亜鉛、臭化カルシウム、フッ化アルミニウム、塩化バナジウム、塩化モリブデン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化ニッケル、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、塩化アルミニウム、塩化錫、蟻酸カルシウム、シュウ酸マグネシウム、トルエンスルホン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム等がある。複塩として、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン等がある。水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等がある。酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられるが、更にこれらの酸化物の二種以上の組み合わせからなる複化合物及び上記酸化物とその他の元素の酸化物若しくは塩類との組み合わせからなる複化合物が好ましく使用される。
【0016】かかる複化合物として本発明に使用される代表的なものとしては次の様なものが挙げられる。
【0017】セメント類として、水硬性石灰、ローマンセメント、天然セメント、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、メーソンリーセメント、膨脹性セメント、特殊セメント等や高炉スラグ類である高炉かす、マグネ精錬かす、フェロクロムかす、ベントナイト等があり、その主たる代表的な化学構造はmCaO ・nSiO2,mCaO ・nAl2O3 ,mBaO ・nAl2O3 ,CaO ・mAl2O3 ・nSiO2,CaO ・mMgO ・nSiO2,mCaCO3 ・nMgCO3 ,mCaO・nFe2O3 ・lCaO ・mAl2O3 ・nFe2O3 (l、m、nは0又は1以上の整数からなる組合わせで示される。)である。酸化物又は複化合物としてはその他粘土質原料、酸化鉄原料及びその他の鉱物原料がある。該酸化物を用いる場合、その粒径は出来るだけ細かいものが良く、通常平均粒径が 200μm以下、好ましくは50μm以下が良い。
【0018】周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むアルキル基、アリール基等の炭化水素基と金属原子との結合した有機金属化合物としては、次の様なものが挙げられる。Al(CH3)3,Al(C2H5)3 ,Al(C6H5)3 ,(C2H5)2AlI,(C2H5)2AlH,(C2H5)2AlCN,Al(i-C4H9)3 ,(CH2=CH)3Al ,Zn(C6H5)2 ,(CH2=CH)2Zn ,Ca(C2H5)2 や、R-Mg-X(R;アルキル基またはアリール基、X;ハロゲン)等のグリニャール試薬である。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む金属アルコキシドとしては、Al〔OCH(CH3)2 3,Zn(OCH3)2 等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む水素化物としては、AlH3,CaH2,BaH2等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む炭化物としては、Al4C3 ,CaC2等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む金属イミドとしては、Ca(NH2)2等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む過酸化物としては、CaO2,BaO2,BaO4等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む硫化物としては、ZnS ,Cu2S,CuS等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むリン化物としては、AlP 等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むニトロ化物としては、CuNO2 等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むアニリドとしては、Al(NHPh)3等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むフェノラートとしては、Al−フェノラート,Zn−フェノラート,Ca−フェノラート等が挙げられる。
【0019】周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む六アンモニア化物としては、Ca(NH3)6等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むフェロセンおよびその類似化合物としては、フェロセン(Fe(C5H5)2) ,Zn(C5H5)2 ,Ni(C5H5)2 ,Mn(C5H5)2 ,V(C5H5)2等が挙げられる。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含むジベンゼンクロム及びその類似化合物としては、Cr(C6H6)2 ,Mo(C6H6)2 ,V(C6H6)2等が挙げられる。
【0020】周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む無機ヘテロポリマーとしては、次の様なものが挙げられる。水素化ベリリウムポリマー,水素化マグネシウムポリマー,水素化アルミニウムポリマー等の水素化無機ヘテロポリマー。Al-N結合を含む窒化アルミニウム等の無機高分子。ゼオライト,方フッ石,曹フッ石のようなアルミノ・ケイ酸塩。雲母等の層状ケイ酸塩。その他、リン酸アルミ,ハイドロタルサイト等である。
【0021】周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む包接化合物としては、環状ポリエーテル(クラウンエーテル),環状ポリアミン(アザクラウン化合物),環状ポリチアエーテル(チアクラウン化合物),複合ドナークラウン化合物,複環式クラウン化合物(クリプタンド),高分子クラウン化合物,環状フェノール(カクスアレーン),シクロデキストリン誘導体等との錯体。例えばジベンゾ−18−クラウン−6とCa2+との錯体,クリプタド[2 ・2 ・2 ]のCa2+との錯体等である。周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む金属錯体としては、Cl- ,CN- ,NCS - , SO42- ,NO2-,ONO - NO3-,CH3COO- ,C2O42-,CO32- ,OH- ,H2N CH2 ・COO- , F- , Br-,ONO- ,I- ,NH2-,SCN- 等の陰イオン性及び/ 又は、H2N CH2 CH2 NH2 ,C6H5N ,NH3 ,H2O 等の中性配位子および/またはH2N NH3+,H2N CH2 CH2 NH3+等の陽イオン性配位子を有する、配位数2から8より選ばれるものであり、一例を挙げれば、〔Al(C2O4)3 〕Cl3 ,〔Zn(NH3)6〕Cl2 等である。その他、周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含む化合物としては、Ni(CO)4,Mn2(CO)10 などの金属カルボニルや、カルボキシペプチターゼA、サーモリシン等の金属含有酵素や、ジルコアルミニウム系化合物等が挙げられる。
【0022】また、周期律表IB〜VIII族の該金属元素を含有する金属イオン封鎖性化合物を用いてもよい。かような金属イオン封鎖性化合物として、以下のものがあげられる。酢酸系アミノカルボン酸型の代表的なものは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩類、ニトリロ三酢酸(NTA)又はその塩類、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)又はその塩類、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩類、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)又はその塩類、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)又はその塩類、イミノ二酢酸(IDA)又はその塩類、ポリアルキレンジアミン四酢酸又はその塩類、およびN−ヒドロキシアルキレンイミノ二酢酸又はその塩類が、フェニル系アミノカルボン酸型の代表的なものは、2−オキシフェニルイミノ二酢酸又はその塩類、フェニルイミノ二酢酸又はその塩類、2−オキシベンジルイミノ二酢酸又はその塩類、ベンジルイミノ二酢酸又はその塩類、およびN,N'−エエチレンビス−〔2 −(O −ヒドロキシフェニル)〕グリシン又はその塩類が、メルカプタン基を有するアミノカルボン酸型の代表的なものは、β−メルカプトエチルイミノ二酢酸又はその塩類が、エーテル結合を有するアミノカルボン酸型の代表的なものは、エチルエーテルジアミン四酢酸又はその塩類が、チオエーテル結合を有するアミノカルボン酸型の代表的なものは、エチルチオエーテルジアミン四酢酸又はその塩類が、スルホン酸基を有するアミノカルボン酸型の代表的なものは、β−アミノエチルスルホン酸−N,N−二酢酸又はその塩類が、ホスホン酸基を有するアミノカルボン酸型の代表的なものは、ニトリロ二酢酸−メチレンホスホン酸又はその塩類が、ペプチド結合を有するアミノカルボン酸型の代表的なものは、N,N'−ジグリシルエチレンジアミン−N',N'',N''',N'''' −四酢酸又はその塩類等が、オキシカルボン酸型の代表的なものは、グルコン酸又はその塩類、クエン酸又はその塩類、及び酒石酸又はその塩類等が、さらにリン酸型の代表的なものは、トリポリリン酸又はその塩類、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)又はその塩類、及びニトリロトリスチレンホスホン酸(NTP)又はその塩類、及びアセチルアセトン等が挙げられる。
【0023】また、かかる金属イオン封鎖能を有する配位高分子としては、分子内にアミン基、及び/又は窒素複素環、及び/又はSchiff塩基、及び/又はアルコール、カルボン酸、及び/又はケトン、エステル、アミド、及び/又はアミノカルボン酸、及び/又はホスホン酸、及び/又はホスフィン、及び/又はチオールを有する高分子等が挙げられる。これら具体例で説明してきたIB〜VIII族の該金属含有化合物のうち、好ましい金属元素はII〜VIII族の該金属元素であり、更に好ましくはII、III 、IV族の該金属元素であり、その中でも特にZn,Ca,Mg,Al,Zrが好ましい。
【0024】本発明に用いられる有機エステルとしてはラクトン類或いは炭素数1〜10の一価又は多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸より導かれる有機エステルの単独若しくは混合物が用いられるが、自硬性鋳型造型法ではγ−ブチロラクトン、プロピオンラクトン、ε−カプロラクトン、ギ酸エチル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、トリアセチン等を用いるのが好ましく、ガス硬化性鋳型造型法ではギ酸メチルを用いるのが好ましいが、自硬性鋳型造型法で用いられる有機エステルと併用しても差し支えない。このような硬化剤である有機エステルに該金属元素を含有する化合物を溶解若しくは混合させることにより、繰り返し使用した回収砂や再生砂で造型した鋳物用砂型の強度が著しく回復する。該金属化合物の金属元素としての含有量としては、上記硬化剤に対し5〜200000ppm が好ましく、更に好ましくは20〜100000ppm である。5ppm 未満では、本発明の効果としては充分でなく、一方200000ppmを超えると効果は飽和領域に達してしまうので、好ましくない。かかる金属元素を含有する本発明の硬化剤組成物を使用することにより、再生砂の強度が著しく回復することは全く知られていなかった。
【0025】本発明で用いられる水溶性フェノール樹脂は、有機エステルで硬化可能な樹脂であり、例えばフェノール、クレゾール、レゾルシノール、3,5 −キシレノール、ビスフェノールA、その他の置換フェノールを含めたフェノール類を、大量のアルカリ性物質の水溶液の中でホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フリルアルデヒド等のアルデヒド類又はこれらの混合物との反応によって得られるものである。また、これらに尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のホルマリン縮合が可能なモノマーを重量比で主たる構成単位とならない程度に共縮合させてもよい。これらの水溶性フェノール樹脂の製造の際に用いられる適当なアルカリ性触媒は、アルカリ金属の水酸化物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びこれらの混合物であるが、水酸化カリウムが最も好ましい。樹脂の構造としては、メチレン結合型、ベンジルエーテル型等いずれでも良い。
【0026】耐火性粒状材料としては石英質を主成分とする珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナサンド等が挙げられる。本発明においてはこれらの耐火性粒状材料は新砂、再生砂のいずれを用いることもできるが、特に再生砂を用いた場合の鋳型強度向上効果が顕著である。再生砂を使用する場合、再生砂は通常の磨耗式或いは焙焼式で得られるものが使用されるが、再生砂を得る方法は特に限定されるものではない。
【0027】粘結剤組成物中には、その他添加剤として従来より公知であるシランカップリング剤を使用することができる。その具体例としては、好ましいものとしてγ−アミノプロピルトリエトキシシランやγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。本発明においてはこのシランカップリング剤を硬化剤組成物と併用するのが好ましい。
【0028】本発明の硬化剤組成物を用いて鋳物用砂型を自硬性鋳型造型法によって製造するにあたっては周知の方法が採用される。例えば、再生砂 100重量部に、本発明に係わる硬化剤である金属元素含有有機エステルを0.05〜9重量部、好ましくは0.1〜5重量部及び水溶性フェノール樹脂水溶液 0.4〜15重量部、好ましくは 0.6〜5重量部を周知の方法で混練し、従来の自硬性鋳型製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。
【0029】
【実施例】以下実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜20砂の種類がフリーマントル珪砂である再生砂 100重量部に対し、表1で示す各種硬化剤及び金属化合物を添加した硬化剤を 0.375重量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5%を含有する水溶性フェノール樹脂(固形分49%、重量平均分子量2300)を 1.5重量部添加混練した混合物を、50mmφ×50mmh のテストピース用模型に充填し、混練後の抗圧力の24時間経過迄の経時変化を測定した。
【0030】比較例1〜6砂の種類がフリーマントル珪砂である再生砂 100重量部に対し、表1で示す各種硬化剤を 0.375重量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5%を含有する水溶性フェノール樹脂(固形分49%、重量平均分子量2300)を 1.5重量部添加混練した混合物を、50mmφ×50mmhのテストピース用模型に充填し、混練後の抗圧力の24時間経過迄の経時変化を測定した。
【0031】再生砂の調製方法フリーマントル硅砂の新砂 100重量部に対し、硬化剤であるトリアセチン0.375 重量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5 重量%(対フェノール樹脂)を含有する水溶性フェノール樹脂(固形分49%、重量平均分子量2300)を 1.5重量部添加混練した混合物より造型した鋳型を用い、FC−25(S/M=3.5)を鋳造し、回収した砂をクラッシャーにかけ、日本鋳造製M 型ロータリークレーマーを用いて再生(A再生、2パス)した。以上の工程を5回繰り返して得られた再生砂を上記の鋳型強度試験用の調製に用いた。
【0032】尚、硬化剤中の該金属元素の定量については、一般に以下のように行う。
〔硬化剤中の該金属元素の定量〕硬化剤を、充分混合攪拌し、100 ml用白金皿に0.5 〜0.8g秤量する。これに、濃硝酸10mlを添加し酸分解後、弱熱分解する。濃過塩素酸を10ml添加し、白煙処理し濃過塩素酸の残量を3mlとする。放冷後、HCl(1+1)10ml+H2O10mlを加え、加熱溶解する。これを、濾過(No5C濾紙)し、希塩酸+温水にて洗浄する。濾紙上に残った残渣は、30mlの白金るつぼ中、900 〜1000℃にて灰化後放冷し、ピロ硫酸カリウム2gを加え800 ℃にて融解する。融解物を抽出したものを、先の濾液と合わせ、メスフラスコにて100 mlの溶液とした後、ICP(誘導結合プラズマ発光分析)法により該金属元素を定量する。実施例1〜20及び比較例1〜6での24時間経過後の抗圧力の測定結果を、表1に示す。
【0033】
【表1】


【0034】
【発明の効果】耐火性粒状材料を造型する鋳物用砂型の製造方法において、本発明の硬化性鋳型用硬化剤組成物を用いることにより、再生砂から造型された鋳型の強度を大幅に向上させることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機エステルに周期律表のIB〜VIII属の金属又は該金属化合物を含有することを特徴とする硬化性鋳型用硬化剤組成物。
【請求項2】 金属元素が周期律表のII、III 、IV属から選ばれる請求項1記載の硬化性鋳型用硬化剤組成物。
【請求項3】 金属元素として5〜200000ppm を含有する請求項1又は請求項2記載の硬化性鋳型用硬化剤組成物。
【請求項4】 請求項1から請求項3の何れか1項記載の硬化性鋳型用硬化剤組成物を用いて耐火性粒状材料を造型する鋳型製造方法。
【請求項5】 耐火性粒状材料が、再使用を目的とする回収砂又は再生砂である請求項4記載の鋳型製造方法。