説明

硬化物の製造方法

【目的】オキセタン環を有する化合物からなる組成物の硬化物を製造する方法において、硬度、引張強度、伸び、耐熱性及び耐薬品性等の物性を損なうことなく、硬化物をより速く製造することができる方法を提供する。
【構成】分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物及びカチオン重合開始剤からなる活性エネルギー線硬化型組成物に、窒素雰囲気下で活性エネルギー線を照射する硬化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オキセタン環を有する化合物からなる組成物に、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、該組成物の硬化物を速やかに製造する方法に関するものであり、得られる硬化物は塗装や印刷その他多くの分野において利用される。
【0002】
【従来の技術】活性エネルギー線硬化技術は、その速い硬化速度、一般に無溶剤であることによる良好な作業性、極めて低いエネルギー必要量等の種々の特性から、木材のコーティング、金属塗装及び印刷等の種々の産業において、極めて重要になっている。この分野における初期の開発においては、多官能性アクリレート及び不飽和ポリエステル等を対象とした、活性エネルギー線開始ラジカル重合に研究が集中しており、今日でも、これら多官能性アクリレート及び不飽和ポリエステル等からなる材料は依然として大量に使用されている。現在においても、これらの研究の大部分は活性エネルギー線開始ラジカル重合に向けられているが、光開始イオン重合も多くの応用分野でかなり有望であることが十分に認められており、多種多様なモノマーの重合によって、様々な化学的および物理的特性を実現させる可能性に富むため、魅力あるものである。今日まで、光開始カチオン重合技術の開発は、3員環環状エーテルであるオキシラン環を有するエポキシ樹脂及びビニルエーテル化合物という2種類のモノマーに集中していた。特に、光硬化型エポキシ樹脂は、接着性に優れ、その硬化膜が硬度、引張強度及び伸びに優れ、耐熱性が高く、耐薬品性が良好である等の諸物性に優れることが知られている。しかしながら、従来の光硬化型エポキシ樹脂には、光硬化速度が比較的遅いという欠陥があり、このため、速やかな光硬化が必要な紙又はプラスチックのコーティングのような用途には使用することが出来なかった。従って、エポキシ樹脂の特性を生かしながら、硬化速度を向上させることが熱望されてきていた。近年、4員環環状エーテルであるオキセタン環を重合性官能基として複数個有する多官能オキセタンモノマーは、対応する多官能エポキシドと同等、或いはそれ以上の光硬化性を有することが報告されており(ジャーナル オブ マクロモレキュラー サイエンス.A29巻,10号,915頁,1992年、同A30巻,2&3号,173頁,1993年、同A30巻,2&3号,189頁,1993年)、多官能オキセタンモノマーを主成分とする光硬化型組成物が速い硬化性を有するものとして提案されている(特願平5−49907号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の多官能オキセタンモノマーを用いた場合の硬化速度は、エポキシ樹脂と比較して速いものの、アクリル系の活性エネルギー線ラジカル重合との比較では、依然として遥かに遅いものである。このため、オキシラン環やオキセタン環の様な環状エーテルを重合性基とする光硬化型樹脂は、良好な耐熱性、接着性および耐薬品性を有しているが、速やかな光硬化が必要な用途には応用することが困難であった。
【0004】本発明の目的は、上記課題を解決する活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の製造方法、即ち硬度、引張強度、伸び、耐熱性及び耐薬品性等の物性を損なうことなく、硬化物をより速く製造することができる方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、こうした現状に鑑み鋭意検討した結果、分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物からなる活性エネルギー線硬化型組成物に、窒素雰囲気下で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が、該組成物を空気中で同様に硬化させた場合に比較して、より速く硬化物を製造することができることを見い出し本発明を完成した。
【0006】即ち、本発明は、分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物及びカチオン重合開始剤からなる活性エネルギー線硬化型組成物に、窒素雰囲気下で活性エネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造方法である。
【0007】従来、エポキシ樹脂の光硬化においては、空気雰囲気下の光照射と窒素雰囲気下の光照射とでは、硬化速度に差がないとの報告がなされたにもかかわらず(ジャーナル オブ ポリマー サイエンス、パートA、28巻、3429頁、1990年)、本発明の様に、オキセンタン環を有する化合物では、窒素雰囲気下においてこれほどの卓越した硬化速度をもたらし得ることは誠に意外である。以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】○分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物本発明で使用する分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物(以下化合物Aという)は、下記分子中に1個のオキセタン環を有する化合物及び分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
【0009】・分子中に1個のオキセタン環を有する化合物本発明において、分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、種々のものが使用でき、好ましい化合物としては、下記式(1)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0010】
【化1】


【0011】ここで、式(1)において、Zは酸素原子又は硫黄原子である。R1 は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基である。R2 は、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基又は3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基又はフェノキシエチル基等のアリール基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基又はペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基又はブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基又はブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基等が挙げられる。
【0012】本発明では、上記式(1)において、R1 が低級アルキル基のものが好ましく、エチル基のものがより好ましい。又、R2 は、好ましくはブチル基、フェニル基、ベンジル基である。Zは好ましくは酸素である。
【0013】・分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物本発明において、分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、種々のものが使用でき、好ましい化合物としては、下記式(2)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0014】
【化2】


【0015】ここで、式(2)において、mは2、3又は4であり、Zは酸素原子又は硫黄原子である。R3 は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基又はフリル基である。R4 は、例えば下式(3)で示される炭素数1〜12の線形又は分枝アルキレン基、線形或いは分枝ポリ(アルキレンオキシ)基がある。
【0016】
【化3】


【0017】上記式(3)において、R5 はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基である。
【0018】又R4 は、下記式(4),(5)及び(6)からなる群から選択される多価基でもあり得る。
【0019】
【化4】


【0020】式(4)において、nは0又は1〜2000の整数である。R6 はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基及び下記式(7)から成る群から選択される基である。
【0021】
【化5】


【0022】式(7)において、jは0又は1〜100の整数であり、R8 は1〜10個の炭素原子を有するアルキルである。R7 はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0023】
【化6】


【0024】式(5)において、R9 は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシレート基又はカルボキシル基である。
【0025】
【化7】


【0026】式(6)において、R10は酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2 、CH2、C(CH3 2 又はC(CF3 2 である。
【0027】本発明では、上記式(2)において、R3 が低級アルキル基のものが好ましく、エチル基のものがより好ましい。R4 としては、式(5)においてR9 が水素原子である基、ヘキサメチレン基、式(3)においてR5 がエチル基のものが好ましい。又、R7 及びR8 は好ましくはメチルである。Zは好ましくは酸素原子である。
【0028】分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物の他の好ましい具体例としては、式(8)及び式(9)の化合物を挙げることができる。
【0029】
【化8】


【0030】
【化9】


【0031】式(8)において、rは25〜200の整数であり、R11は炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基である。
【0032】本発明では、組成物として、上記化合物Aの2種類以上が併用されたものであってもよい。
【0033】○カチオン重合開始剤本発明において使用されるカチオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物(以下化合物Bという)であり、その代表例は従来公知の多種多様なカチオン性光重合開始剤である。これらの開始剤のうちで好ましいものとしては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が挙げられる。典型的な光重合開始剤を下に示す。
【0034】
【化10】


【0035】
【化11】


【0036】
【化12】


【0037】
【化13】


【0038】式中、R12は水素原子、炭素数1〜18の様々な長さのアルキル基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基等であり、Mは金属好ましくはアンチモンであり、Xはハロゲン原子好ましくはフッ素原子であり、nは金属の価数であり、例えばアンチモンの場合は5である。R13は、水素原子、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基であり、好ましくはヒドロキシエトキシ基である。
【0039】○活性エネルギー線硬化型組成物本発明における活性エネルギー線硬化型組成物としては、化合物Aの100重量部に対して、化合物Bが0.01〜20重量部配合されたものであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部である。配合量が0.01重量部に満たないものは、組成物が十分に硬化しないことがあり、又20重量部を越える場合には、光透過性が不良となり、均一な硬化ができなくなる場合がある。
【0040】本発明で使用する組成物は、化合物A及び化合物Bに加えて、エポキシ樹脂が配合されたものであってもよい。エポキシ樹脂としては、従来エポキシ樹脂として使用されているものであれば、モノマー、オリゴマー又はポリマーいずれも使用可能である。エポキシ樹脂の具体例としては、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。尚、以下エポキシ樹脂とは、モノマー、オリゴマー又はポリマーを意味する。
【0041】芳香族エポキシ樹脂として好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフエノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフエノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0042】脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによつて得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0043】脂肪族エポキシ樹脂の好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の他に、分子内に1個のオキシラン環を有するモノマーである脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール又はこれらのアルキレンオキサイド付加体のモノグリシジルエーテル等も用いることができる。
【0044】エポキシ樹脂の配合割合は、組成物中の化合物Aとの合計量100重量部に対して5〜80重量部であることが好ましい。
【0045】又、本発明で使用する組成物には、上記のエポキシ樹脂の他に、無機充填剤、染料、顔料、粘度調節剤、処理剤および紫外線遮断剤のような不活性成分が配合されていても良い。
【0046】又、紫外線により硬化させる場合、硬化性をより一層改良する目的で、化合物Bに加えて光増感剤を配合することもできる。使用できる典型的な増感剤は、クリベロがアドバンスド イン ポリマーサイエンス〔Adv. in Plymer Sci.,62,1(1984)〕で開示している化合物を用いることが可能である。例としては、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン及びペンゾフラビンがある。
【0047】○硬化物の製造方法本発明における硬化物の製造は、前記活性エネルギー線硬化型組成物に、窒素雰囲気下で紫外線、X線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより行われれる。この場合、通常は、金属、ゴム、プラスチック、成形部品、フィルム、紙、木、ガラス布、コンクリート又はセラミック等の基材に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布して、これに活性エネルギー線を照射する。紫外線を照射する場合には、様々な光源を使用することができ、例えば水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ及び周囲の日光からの照射光により硬化させることができる。紫外線の照射強度は、少なくとも0.01ワット平方センチである。硬化を例えば紙または金属コーティングラインで連続的に行う場合には、1〜20秒以内に組成物を硬化を行うことができるように照射速度を設定することが好ましい。電子線により硬化させる場合には、通常300eV以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1Mrad〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。本発明の製造方法は、上記組成物を使用して、例えば、保護、装飾および絶縁用コーテイング、封止剤、印刷インキ、シーラント、接着剤、フォトレジスト、ワイヤー絶縁材料、織物コーティング、ラミネート、含浸テープ及び印刷プレート等の製造に使用することができる。
【0048】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1化合物Aとして下記式の化合物(14)を100部(重量部、以下同じ)、化合物Bとしてジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートを2部添加混合して、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0049】
【化14】


【0050】該組成物をアルミ板に約10ミクロンになるように塗布した基材に、窒素雰囲気下で、250Wの高圧水銀灯を用いたファイバー式の紫外線照射装置〔ウシオ(株)製、スポットキュア UIS−25102〕を備えたFT-IR 装置〔ニコレ(株)製、MAGNA−IR 550〕を用い、照射強度:27mW/cm2 で紫外線を照射した。リアルタイムFT-IR 法により、980cm-1におけるオキセタン環の特性吸収の特定時間における減少割合を測定するこにより、組成物の反応性を評価した。その結果を図1に示す。図1において、縦軸は化合物Aの転化率、横軸は照射量〔照射強度×時間(sec)〕を意味する。又、窒素雰囲気下で、組成物に反応が終了するのに充分な照射量(1000mj/cm2 )の紫外線を照射して硬化を行い、得られた硬化物の分子量をGPCにより測定した。
【0051】実施例2化合物Aとして下記化合物(15)を用い、実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0052】
【化15】


【0053】得られた組成物について、実施例1と同様にリアルタイムFT-IR 法により組成物の反応性の評価を行った。その結果を図1に示す。又、窒素雰囲気下で、1000mj/cm2 の照射量で実施例1と同様に組成物の硬化を行い、硬化物の分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】実施例3及び同4化合物Aとして、下記化合物(16)及び(17)を用い、実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0055】
【化16】


【0056】
【化17】


【0057】得られた組成物について、実施例1と同様にリアルタイムFT-IR 法により反応性の評価を行った。その結果を図1に示す。実施例3及び4では、表面から粘りのなくなる最小の照射量(タックフリーエネルギー)を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】


【0059】比較例1〜4化合物Aとして、化合物(14)〜(17)を用い、実施例1と同様にして組成物を調製した。空気中で、照射強度;275mW/cm2 で紫外線照射を行った以外は実施例1と同様にして、組成物の反応性を評価した。その結果を図2に示す。比較例1及び同2においては、10000mj/cm2 の照射量でそれぞれの組成物の硬化を行い、実施例1と同様にして分子量を測定した。又、比較例3及び同4においては実施例3及び4と同様にタックフリーエネルギーを測定した。
【0060】
【表2】


【0061】図1(実施例1〜4)と図2(比較例1〜4)を比較した場合、明らかに実施例1〜4の窒素雰囲気下での硬化の方が、空気雰囲気下での硬化と比較して硬化速度が速くなっていることが分かる。又、実施例1及び同2と比較例1及び同2の分子量の比較により、窒素雰囲気下の硬化(実施例1及び同2)は、連鎖移動等により見かけ上硬化速度が速くなったわけではなく、重合成長反応が進行していることが分かる。さらに、実施例3及び同4と比較例3及び同4のタックフリーエネルギーの比較においても、窒素雰囲気下の硬化(実施例3及び同4)の方が、空気雰囲気下での硬化と比較して硬化速度が速くなっていることが分かる。
【0062】
【発明の効果】本発明の硬化物の製造方法は、活性エネルギー線硬化型組成物を紫外線又は電子線等の活性エネルギー線照射により速やかに硬化物を製造することができ、さらに得られる硬化物の諸物性が損なわれることがないため、保護、装飾或いは絶縁用コーテイング、注封化合物、印刷インキ、シーラント、接着剤、フォトレジスト、ワイヤー絶縁材料、織物コーティング、ラミネート、含浸テープ又は印刷プレート等の製造に使用することができ、産業界に与える影響は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1〜4における、各々の組成物の反応性を示す図である。
【図2】図2は、比較例1〜4における、各々の組成物の反応性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物及びカチオン重合開始剤からなる活性エネルギー線硬化型組成物に、窒素雰囲気下で活性エネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平7−173279
【公開日】平成7年(1995)7月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−343840
【出願日】平成5年(1993)12月17日
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)