説明

磁気センサ

【目的】 所定の周波数を有する電流を流す送信側コイルと、この送信側コイルと対向ししかもその送信側コイルと所定の間隔を空けて設けられた受信側コイルとを具備し、受信側コイルが受信した信号を増幅器で増幅し、この増幅された信号に基づいて、上記間隙を通過する被測定物を検出する磁気センサにおいて、高周波成分の利得を容易かつ安価に上げることができる磁気センサを提供することを目的とするものである。
【構成】 受信側コイルが受信した信号を増幅する増幅器の入力抵抗、受信側コイルのうちの少なくとも一方と並列に、共振用コンデンサを接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コイン選別等に使用される磁気センサに関するものである。
【0002】
【背景技術】コイン選別に使用される従来の磁気センサは、コイン通路の壁にコイルを設置し、このコイルにコインが近接すると、そのコイルのインダクタンスが変化することを利用したものであり、上記コイルには正弦波電流を流し、その周波数は数kHz程度である。しかし、このようにしてコインを選別しようとすると、アルミニウム系1円、黄銅系5円、銅系10円、白銅系50円、100円、500円のコイン系列間ではその系列の選別が可能であるが、たとえば白銅系50円、100円、500円のコインと500ウォンの白銅系コインとの間では選別ができないという欠点がある。
【0003】この欠点を解決するには、本出願人は、互いに周波数が異なる2つの信号を使用するコイン選別方法を提案している。つまり、送信側のコイルと受信側のコイルとを、コイン通路を挟んで対向させ、送信側のコイルに、低周波電流(たとえば10kHz)と高周波電流(たとえば160kHz)とを交互に流し、受信側のコイルで両信号を受信し、低周波電圧成分の最低値と、高周波電圧成分の最低値とに基づいて、コインを選別する。すなわち、送信側のコイルと受信側のコイルとの間にコインが存在すると、コインに渦電流が流れ、これによって、送信側で発生した電磁界成分が受信側コイルに伝達されるまでにその電磁界成分が減衰するが、この減衰量がコインによって異なり、また、ある2つのコインについて低周波電磁界では減衰量が同じであっても、高周波電磁界では減衰量が異なる。したがって、互いに周波数が異なる2つの信号を使用すると、白銅系の500円のコインと500ウォンのコインとのようにほぼ同一形状のコインも確実に選別することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のように受信側コイルが検出した信号に基づいてコイン選別する場合、受信側コイルが検出した信号のレベルが非常に小さいので、増幅器を使用して利得を上げる必要がある。一般に、増幅器は、低周波における利得は大きいが高周波における利得が小さく、高周波における利得が大きい増幅器は高価である。上記のように、互いに周波数が異なる2つの信号を使用してコインの選別を行う場合、高周波成分の利得を大きく取るためには、増幅器のコストが高くなり、ひいては装置全体のコストが高くなるという問題がある。
【0005】本発明は、所定の周波数を有する電流を流す送信側コイルと、この送信側コイルと対向ししかもその送信側コイルと所定の間隔を空けて設けられた受信側コイルとを具備し、受信側コイルが受信した信号を増幅器で増幅し、この増幅された信号に基づいて、上記間隙を通過する被測定物を検出する磁気センサにおいて、高周波成分の利得を容易かつ安価に上げることができる磁気センサを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、受信側コイルが受信した信号を増幅する増幅器の入力抵抗の片側、受信側コイルのうちの少なくとも一方と並列に、共振用コンデンサを接続したものである。
【0007】
【作用】本発明は、受信側コイルが受信した信号を増幅する増幅器の入力抵抗、受信側コイルのうちの少なくとも一方と並列に、共振用コンデンサを接続したので、受信側コイルが受信した信号の高周波成分の利得を容易かつ安価に上げることができる。
【0008】
【実施例】図1は、本発明の一実施例の説明図である。
【0009】この図において、信号発生回路10は、10kHzと160kHzとの正弦波を出力する回路であり、CPU60によってその周波数の切換が制御されている。送信コイル20は、所定の周波数を有する電流を流すコイルであり、上記実施例においては10kHzと160kHzとの正弦波電流を流すコイルである。受信コイル30は、送信コイル20と対向し、送信コイル20からの信号を受信するコイルである。送信コイル20、受信コイル30は、図示しないボビンを介して、それぞれ、フェライトコア21、31に巻かれている。送信コイル20と受信コイル30との間には、コイン通路71が設けられ、このコイン通路71をコイン70が転動する。なお、コイン通路71のうち、送信コイル20と受信コイル30との間に位置する部分は、導電体以外の材料、たとえばプラスチックで構成されている。つまり、受信コイル30は、送信側コイルと対向ししかも送信側コイルと所定の間隔を空けて設けられた受信側コイルの一例である。
【0010】また、差動増幅回路40は、受信側コイル30が受信した信号を増幅するものであり、ダイオード51は、差動増幅回路40の出力信号を整流し、コンデンサ52は、その整流信号を平滑し、データのピーク値をホールドするものである。コンデンサ52に充電された電荷は、抵抗53を介して常時放電されるが、スイッチ53は、コンデンサ52に充電されている電荷を、周波数切換時に全て放電させるものであり、そのオン、オフ制御は、CPU60によって行われ、10kHzと160kHzとの周波数の切換と同期している。A/D変換回路55は、コンデンサ52の両端電圧を示すアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。
【0011】なお、上記実施例において、CPU60が信号発生回路10に対して10kHzの信号を出力することを指令し、送信回路20がその信号の電流を流し、受信回路30が10kHzの信号を受信し、増幅回路40が増幅し、ダイオード51がその正の半波成分のみを通過させ、コンデンサ52が正のピーク値をホールドする。なお、図では省略してあるが、増幅回路40の出力端子に接続されたダイオードであってダイオード51と逆向きに接続されたダイオードと、負のピーク値をホールドするコンデンサと、抵抗53と同様の抵抗と、スイッチ54と同様のスイッチと、この負のピーク値と上記正のピーク値との差(つまりピーク−ピーク値)を求める減算器とが設けられている。そして、このピーク−ピーク値がA/D変換回路55によってデジタル値に変換され、そのデジタル値をCPU60が取り込む。次に、CPU60が信号発生回路10に対して160kHzの信号を出力することを指令するとともにスイッチ54(および同様のスイッチ)をオンさせ、それまでにコンデンサ52(および同様のコンデンサ)に充電されていた電荷を放電し(つまり10kHzのピークデータをリセットし)、送信回路20が160kHzの電流を流し、受信回路30が160kHzの信号を受信し、その後、増幅、正、負の半波成分の通過、160kHz成分のピーク−ピーク値のデジタル値への変換、その取り込みが行われる。
【0012】そして、再び、10kHzの信号成分について上記動作を行い、160kHzの信号成分について上記動作を行い、これら一連の動作を繰り返し、その途中で、10kHz成分の各ピーク値のうちで最小値を選択し、160kHz成分の各ピーク値のうちで最小値を選択する。これらの最小値に基づいて、投入コインが何であるかを判定し、その選別を行う。
【0013】図2は、上記実施例の要部を示す回路図である。
【0014】差動増幅回路40は、受信コイル30の両端に発生する信号を増幅するものであり、差動増幅器DAのー入力端子への入力抵抗R1と、+入力端子への入力抵抗R2と、+入力端子とアースとの間に設けられた抵抗R3と、帰還抵抗R4と、入力抵抗R1と直列に接続されたコンデンサC1とを有する。なお、抵抗R1、R2、R3、R4の抵抗値は、それぞれ、1kΩ、1kΩ、12kΩ、12kΩであり、コンデンサC1の容量は、1000pFである。
【0015】上記実施例において、抵抗R1とコンデンサC1とによって共振回路が構成され、その共振周波数fは、f=1/(2π・R・C) …… (1)式から導き出され、上記実施例の場合、その共振周波数は約160kHzである。なお、上記式におけるR、Cは、共振回路における抵抗の値、コンデンサの容量値である。したがって、上記実施例においては、160kHzにおいて、差動増幅回路40の利得が向上する。
【0016】すなわち、差動増幅回路40においてコンデンサC1を付加しない場合には、10kHzにおける差動増幅回路40の利得は約21.6デシベルであり、160kHzにおける利得は約19.3デシベルになり、10kHzにおける利得よりも低下するが、コンデンサC1を上記のように付加すると、10kHzにおける利得は21デシベルで変化がないが、160kHzにおける利得は約24.9デシベルになる。つまり、160kHzにおける利得は、コンデンサC1の付加によってその付加前よりも約5.6デシベルも利得が向上する。なお、上記デシベル表示は、差動増幅回路40の入力レベルをV1とし、その出力レベルをV2とすると、20log10(V2/V1)で示されるものである。
【0017】図3は、本発明の他の実施例を示す回路図であり、差動増幅回路41以外の点は、図1に示す実施例と同様である。
【0018】差動増幅回路41は、基本的には、差動増幅回路40と同じであり、コンデンサC1の代わりにコンデンサC2を設けたものである。コンデンサC2は、受信コイル30の両端に接続され、その容量は1000pFである。
【0019】図3に示す実施例において、受信コイル30とコンデンサC2とによって共振回路が構成され、その共振周波数fは、f=1/(2π・(L・C)1/2 ) …… (2)式から導き出され、図3に示す実施例の場合、受信コイル30のインダクタンスが約1mHであるので、その共振周波数は約160kHzである。なお、上記式におけるL、Cは、共振回路におけるコイルのインダクタンスの値、コンデンサの容量値である。したがって、上記実施例においては、160kHzにおいて、差動増幅回路40の利得が向上する。
【0020】すなわち、差動増幅回路41においてコンデンサC2を付加しない場合には、10kHzにおける差動増幅回路40の利得は21.6デシベルであり、160kHzにおける利得は約19.3デシベルになり、10kHzにおける利得よりも低下するが、コンデンサC2を上記のように付加すると、10kHzにおける利得は約21.6デシベルで変化がないが、160kHzにおける利得は約29.6デシベルになる。つまり、160kHzにおける利得は、コンデンサC2の付加によってその付加前よりも約10.3デシベルも利得が向上する。
【0021】図4は、本発明のさらに他の実施例を示す回路図であり、差動増幅回路42以外の点は、図1に示す実施例と同様である。
【0022】差動増幅回路42は、基本的には、差動増幅回路40と同じであり、コンデンサC1の他にコンデンサC2をも付加したものである。コンデンサC2は、図3に示す実施例におけるコンデンサC2と同じものである。
【0023】図4に示す実施例において、抵抗R1とコンデンサC1とによって共振回路が構成され、また、受信コイル30とコンデンサC2とによって共振回路が構成され、その共振周波数fは、抵抗R1とコンデンサC1とによる共振回路においては(1)式で求め、また、受信コイル30とコンデンサC2とによる共振回路においては(2)式で求める。
【0024】図4に示す実施例においては、160kHzにおける利得は約40.0デシベルになり、160kHzにおける利得は、コンデンサC1、C2の付加によってその付加前よりも約20.7デシベルも利得が向上する。
【0025】なお、上記抵抗、コンデンサ、コイルの定数は一例であって、上記定数以外の定数を採用してもよく、利得を向上させたい周波数に応じて、(1)式、(2)式に従って上記各定数が決定される。
【0026】上記実施例において、信号発生回路10は、10kHzの正弦波信号と160kHzの正弦波信号とを出力する回路であるが、上記周波数以外の周波数の信号を出力するようにしてもよく、3つ以上の互いに異なる周波数の信号を出力するようにしてもよい。また、フェライトコア21、31を省略してもよい。
【0027】さらに、上記実施例は、コインを選別するコインセンサの例であるが、コイン以外の被測定物を検出する磁気センサとしても使用できる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、所定の周波数を有する電流を流す送信側コイルと、この送信側コイルと対向ししかもその送信側コイルと所定の間隔を空けて設けられた受信側コイルとを具備し、受信側コイルが受信した信号を増幅器で増幅し、この増幅された信号に基づいて、上記間隙を通過する被測定物を検出する磁気センサにおいて、高周波成分の利得を容易かつ安価に上げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】上記実施例の要部を示す回路図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す回路図である。
【図4】本発明のさらに他の実施例を示す回路図である。
【符号の説明】
20…送信コイル、
30…受信コイル、
40…差動増幅回路、
C1、C2…コンデンサ、
DA…差動増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の周波数を有する電流を流す送信側コイルと、この送信側コイルと対向ししかも上記送信側コイルと所定の間隔を空けて設けられた受信側コイルとを具備し、上記受信側コイルが受信した信号を増幅器で増幅し、この増幅された信号に基づいて、上記間隙を通過する被測定物を検出する磁気センサにおいて、上記増幅器の入力抵抗、上記受信側コイルのうちの少なくとも一方と並列に、共振用コンデンサを接続したことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】 請求項1において、上記送信側コイルには、互いに周波数が異なる2つ以上の周波数の電流が流れ、上記共振用コンデンサによる共振周波数は、上記2つ以上の周波数のうちのいずれかの周波数とほぼ同じ周波数であることを特徴とする磁気センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−87943
【公開日】平成5年(1993)4月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−273182
【出願日】平成3年(1991)9月25日
【出願人】(000003067)テイーデイーケイ株式会社 (7,238)