説明

磁気治療器

【課題】カプセル部の内部に収容した磁石が磁極の変化を伴いながら移動させることにより、患部に対して十分な磁場の変動を提供することが可能であり、かつ、カプセル部の強度を向上させ、破損のおそれを大幅に低減させた磁気治療器を提供する。
【解決手段】少なくとも一面が粘着面である粘着シート10と、粘着シート10の粘着面12と反対側の面14に固定されたカプセル部20と、カプセル部20の内部空間に収容された磁石30と、を具備する磁気治療器50であって、カプセル部20の内部空間には、カプセル部20の天井部分22から底面26に向かって突出部28が延伸し、磁石30はカプセル部20の内部空間内を突出部28周りに周回可能な回転体に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気治療器に関し、より詳細には身体に貼り付けて用いる磁気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから粘着テープの粘着面に磁石を配設し、肩こりや腰痛のある部位に貼り付けて用いることができる磁気治療器が広く知られている。このような磁気治療器を身体に装着することにより、いわゆる患部に磁気が作用することにより、肩こりや腰痛が緩和するものといわれている。
【0003】
このような磁気治療器においては、患部に一定の磁力・磁極が与えられるいわゆる静磁場よりも、磁力や磁極が適宜変化する変動する磁場の方が患部の状態が良好になるということが知られ、近年においては身体に装着した磁気治療器の磁石を動かすことができるものも提案されている。このような磁気治療器としては例えば、特許文献1に開示されているような磁気治療器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−144558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に示されている磁気治療器においては、粘着層を有する貼着体に設けた小室体の内部空間に磁石を移動自在に封入しているから、このような時期治療器を装着した状態で日常生活をすれば、小室体の内部空間内で磁石が移動し、大きな磁場の変動量が期待されたが、実際には小室体内に封止された磁石はスライド移動することが多く、磁極の変化に対はほとんど期待することができず、十分な磁場の変動を患部に付与することができなかったという問題がある。
また、このような小室体は、日常生活において与えられる衝撃により破損してしまうといった問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、カプセル部の内部に収容した磁石が磁極の変化を伴いながら移動させることにより、患部に対して十分な磁場の変動を提供することが可能であり、カプセル部の強度を向上させ、破損のおそれを大幅に低減させた磁気治療器の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも一面が粘着面である粘着シートと、前記粘着シートの粘着面と反対側の面に固定されたカプセル部と、前記カプセル部の内部空間に収容された磁石と、を具備する磁気治療器であって、前記カプセル部の内部空間は、前記カプセル部の天井部分から底面に向かって突出部が延伸し、前記磁石は、前記カプセル部の内部空間内を前記突出部周りに周回可能な回転体に形成されていることを特徴とする磁気治療器である。
【0008】
また、他の発明としては、少なくとも一面が粘着面である粘着シートと、前記粘着シートの粘着面と反対側の面に固定されたカプセル部と、前記カプセル部の内部空間に収容された磁石と、を具備する磁気治療器であって、前記カプセル部がリング状空間に形成されていて、前記磁石は、前記カプセル部のリング状空間内を周回可能な回転体に形成されていることを特徴とする磁気治療器とすることもできる。
【0009】
また、前記回転体に形成された磁石は、回転面の周方向において磁極が交互に設けられていることを特徴とする。これにより、カプセル内を周回する磁石により与えられる磁場の変動を大きくすることができる。
【0010】
また、前記回転体に形成された磁石は、複数の磁石片を複数連結させることにより形成されていることを特徴とする。さらに、これら磁石片は、板状に形成されていることが好適である。以上により、回転面の周方向において交互に配設された磁極状態を簡単に提供することができる。
【0011】
また、前記板状の磁石片は、板厚方向に磁極が着磁されていることを特徴とする。これにより、カプセル部内空間の内径側と外径側の全域にわたって同じ強さの磁力を作用させることができる。
【0012】
また、前記回転体に形成された磁石は、前記カプセル部の、前記突出部側における高さ寸法に対して、外径側における高さ寸法が高く形成されていることを特徴とする。これにより、磁石はさらに突出部を中心としてカプセル内空間で周回しやすくなるため、患部に与えられる磁場の変動量を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による磁気治療器によれば、カプセル部の内部空間における天井部分から底面部へ向かって延伸する突出部が配設されていることで、磁石がカプセル部の内部空間において突出部を中心として周回可能な空間形状に形成されることになるため、回転体に形成された磁石は、突出部を中心とした周回運動をなし、患部に与える磁場の変動を大幅に増加することができる。また、カプセル部に突出部を設けることで、カプセル部の機械的強度を向上させることができ、日常生活におけるカプセル部の破損のおそれを大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における磁気治療器の平面図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図である。
【図3】第1実施形態における磁石の斜視図である。
【図4】第2実施形態における磁石の斜視図である。
【図5】第3実施形態における磁石の斜視図である。
【図6】第4実施形態におけるカプセル部の平面図および断面図である。
【図7】第5実施形態におけるカプセル部の平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、添付図面に基づいて本発明の最良の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における磁気治療器の平面図である。図2は、図1中のA−A線における断面図である。図3は、本実施形態における磁石の斜視図である。
本実施形態における磁気治療器50は、図1および図2に示すように、表面12および裏面14が粘着面のいわゆる両面テープ10の裏面14に磁石30を収容したカプセル部20を貼着により固定したものである。患部に貼着される側の面となる表面12には医療用粘着テープに用いられている粘着剤を用いることが好ましい。
【0016】
本実施形態におけるカプセル部20は、中央部が外方に向けて突出する天井部分22と、天井部分22に連続する側壁部分24と、底板26とによりドーム状の内部空間に形成されている。カプセル部20の内部空間において天井部分22の中央部内壁面の天井部分22から底板26に向けて延伸する突出部28が配設されている。ここでは、図2に示すように、突出部28は天井部分22と底板26とを連通させるように配設されている。このような突出部28はカプセル部20の機械的強度を向上させるための支柱として機能させることができる。このような支柱状の突出部28により、カプセル部20の内部空間をドーナツ状空間に構成することもできる。
【0017】
カプセル部20は、天井部分22と側壁部分24および突出部28を合成樹脂等により一体成形し、磁石30を突出部28と側壁部分24との間に収容した後に、同じ合成樹脂により予め別体に形成しておいた底板26と当接させ、超音波接合等によって側壁部24および突出部28の端縁部と底板26とを接合させることにより形成することができる。カプセル部20の材料としては、アクリル等の透明で機械的強度に優れた合成樹脂材料を用いるのが好適であるが、必要な機械的強度を有してさえいれば、必ずしも透明であったり、合成樹脂材料である必要はない。
【0018】
以上のようにしてドーナツ状空間に形成されたカプセル部20の内部空間には、磁石30が配設されている。本実施形態における磁石30は図3に示すように回転体である円筒状に形成されている。本実施形態における円筒状の磁石30は、断面形状が円弧状の帯形に形成された磁石片である複数の板状磁石32の側壁部どうしを連結し、回転体である円筒状の磁石30に形成されている。本実施形態における板状磁石32は、いわゆる棒磁石と同様に、長手方向に磁極が着磁されたものを用いているから、低コストで回転体の磁石30を得ることができる。
板状磁石32どうしを連結する際には、板状磁石32の両端部における磁極が回転面の周方向に交互にあらわれるように連結される。また、板状磁石32どうしを連結する際には、セパレータ(図示せず)を介して連結することが好ましい。
【0019】
このようにして形成された円筒状の磁石30は、支柱状の突出部28によりドーナツ状に形成されたカプセル部20の内部空間内を、支柱状の突出部28を回転の中心として周回することになる。また、筒状体の磁石30の長さ寸法は、カプセル部20の支柱状の突出部28とカプセル部20の側壁部分24の内壁面との離間距離(カプセル部20のドーナツ状空間の通路幅寸法)よりわずかに短い寸法に形成されているので、筒状体の磁石30は図1に示す矢印Z方向のいずれかの方向のみに周回することになる。また、磁石30の高さ寸法は、カプセル部20の側壁部24の高さ寸法よりわずかに低く形成されている。
【0020】
また、カプセル部20の底板26と磁石30の回転表面のうちの少なくとも一方に滑り止め加工(コーティング処理や表面に対する凹凸加工処理)をすれば、磁石30がカプセル部20の内部空間を周回する際においてスライドしてしまうことがなく好適である。
【0021】
(第2実施形態)
図4は、本実施形態における磁石の斜視図である。
本実施形態における磁石30は、支柱状の突出部28側(カプセル部20の内径側)における周長に対して側壁部分24側(カプセル部20の外径側)における周長が長くなるように、磁石30を円錐台状の筒体に形成していることを特徴としている。磁石30の外周部側における高さ寸法は、側壁部分24の高さ寸法よりもわずかに低く形成されている点は、先の実施形態と同様である。
このような形状の磁石30を採用することにより、支柱状の突出部28側における磁石30のすべりがなくなり、確実に磁石30を回転させることができるため、磁石30の回転による磁極の変化をはっきりと生じさせることができる点において好適である。
【0022】
(第3実施形態)
図5は、本実施形態における磁石の斜視図である。
本実施形態における磁石30は、断面形状が円弧状の帯形に形成された磁石片である複数の板状磁石32の側壁部どうしを連結することで形成されている点においては、第1および第2実施形態と同様であるが、板状磁石32の磁極が板厚方向に着磁されている点が特徴である。本実施形態においては、図5に示されているように、外周側がN極で内周側がS極である第1の板状磁石32aと、外周側がS極で内周側がN極である第2の板状磁石32bとを交互に連結することで円筒状の磁石30を構成している。本実施形態における磁石30の高さ寸法は、第1実施形態と同様である。
【0023】
このような板厚方向に着磁された板状磁石32a,32bを用いて円筒状の磁石30を形成することにより、磁石30と底板26との接触部における磁極が、カプセル部20のドーナツ状空間の通路幅(支柱状の突出部28側から側壁部分24)の全域において一致させることができる点で好都合である。また、カプセル部20のドーナツ状空間の通路幅(支柱状の突出部28側から側壁部分24)の中間位置において磁力が弱くなることがない点においても好都合である。
【0024】
(第4実施形態)
図6は、本実施形態におけるカプセル部の平面図および断面図である。
磁気治療器50は、身体に貼り付けした際に違和感のない程度の大きさ(直径の平面寸法が10mm程度、厚さ寸法が5mm程度)に形成されていることが好ましい。このような大きさであればカプセル部20の機械的強度を補強する必要がないこともある。このような場合においては、カプセル部20の内部空間で磁石30が所定方向のみに周回することができればよい。すなわち、図6に示すように、突出部28を天井部分22と底板26とに連通させる必要はなく、カプセル部20の内部空間の中途高さ位置までの長さで、天井部分22に片持ち状態で配設した形態を採用してもよい。突出部28の天井部分22からの突出長さは、カプセル部20の内部空間において、カプセル部20の径方向における磁石30の移動を規制し、カプセル部20の内部空間において底板26上を図中の矢印Z方向への周回動作を基本にすることができる長さとする。ここでの磁石30は図6に示すように球状体とした。なお、図からも明らかなように、カプセル部20の天井部分22は、底板26と平行面となるように形成されている。
【0025】
(第5実施形態)
図7は、本実施形態におけるカプセル部の平面図および断面図である。
本実施形態においては、図7に示すように、予めカプセル部20の内部空間がリング状空間になるように形成されている点が特徴的である。このようなカプセル部20の形状を採用することで、突出部28の配設が省略可能であり、簡略な構成にすることができる点で好適である。
また、リング状のカプセル部20は、支柱状の突出部28を配設したカプセル部20と同程度の機械的強度を得ることができ、機械的強度に関しても何ら問題はない。さらには、リング状のカプセル部20の内部空間に収容した磁石30は、必然的に内部空間の形状に沿って図中の矢印Z方向に周回することになるため、上述の各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
このようなリング状のカプセル部20は、樹脂成形金型を用いれば容易に製造することができる。ここで用いる磁石30も図7に示すように球状体とした。
【0026】
以上に本願発明にかかる磁気治療器50の実施形態について説明してきたが、いずれの実施形態における磁気治療器50であっても、患部に装着した状態で日常生活をすることができる。しかも、回転体に形成された磁石30がカプセル部20のドーナツ状の内部空間を周回することにより、磁極の切り替わり作用を確実に得ることができるため、肩こりや腰痛を緩和する作用の向上が期待できる。
【0027】
また、本願発明は、以上に示した実施形態に限定されるものではないのはもちろんである。例えば、図示しないが、第3実施形態における円筒状の磁石30を、第2実施形態で示した円錐台状の筒状体に形成することももちろん可能である。また、いずれの実施形態においても回転体をなす磁石30を形成する際にはセパレータを用いて連結することやカプセル部20の底板26と回転体の磁石30のうちの少なくとも一方に滑り止め加工を施すことができるのももちろん可能である。
また、以上の実施形態においては、断面形状が円弧状の帯形に形成された板状磁石32を磁石片として用いているが、断面形状が長方形状や製法形状をなす通常の板状磁石であっても回転体である筒状の磁石30を形成することももちろん可能である。このような通常の板状磁石を用いれば筒状や円錐台状の磁石30を低コストで提供することができる。
【0028】
また、以上の実施形態においては、回転体である磁石30の形状として筒状体や球状体を示しているが、柱状体を採用することももちろん可能である。
さらには、カプセル部20の組み立て方法としては実施形態で説明した超音波接合の他にも接着剤を用いた接合方法を採用することもできる。また、カプセル部20の形状については、カプセル部20の天井部分22の中央部分が他の部位よりも低い形態であってもよい。さらに、第2実施形態においては、突出部28と天井部分22とのすりつけ部分における部材厚さを増加し、突出部28を補強すると共に、円錐台状に形成された磁石30の小径部分の底板26からの浮き上がり防止部として用いてもよい。
【0029】
そして、以上に示した各実施形態においては、粘着シートとしていわゆる両面テープ10を用いているが、カプセル部20(底板26)は粘着シートに対して接着材等により貼着することができるため、身体に装着される側の面のみに粘着面を有する粘着シートを採用してもよい。
また、図示していないが、以上の実施形態で説明した各構成について適宜組み合わせた実施形態においても、本願発明の技術的範囲に属することはもちろんである。
【符号の説明】
【0030】
10 両面テープ
12 表面
14 裏面
20 カプセル部
22 天井部分
24 側壁部分
26 底板
28 突出部
30 磁石
32 板状磁石
32a 第1の板状磁石
32b 第2の板状磁石
50 磁気治療器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面が粘着面である粘着シートと、
前記粘着シートの粘着面と反対側の面に固定されたカプセル部と、
前記カプセル部の内部空間に収容された磁石と、を具備する磁気治療器であって、
前記カプセル部の内部空間には、前記カプセル部の天井部分から底面に向かって突出部が延伸し、
前記磁石は、前記カプセル部の内部空間内を前記突出部周りに周回可能な回転体に形成されていることを特徴とする磁気治療器。
【請求項2】
少なくとも一面が粘着面である粘着シートと、
前記粘着シートの粘着面と反対側の面に固定されたカプセル部と、
前記カプセル部の内部空間に収容された磁石と、を具備する磁気治療器であって、
前記カプセル部がリング状空間に形成されていて、
前記磁石は、前記カプセル部のリング状空間内を周回可能な回転体に形成されていることを特徴とする磁気治療器。
【請求項3】
前記回転体に形成された磁石は、回転面の周方向において磁極が交互に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の磁気治療器。
【請求項4】
前記回転体に形成された磁石は、複数の磁石片を複数連結させることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の磁気治療器。
【請求項5】
前記複数の磁石片は、板状に形成されていることを特徴とする請求項4記載の磁気治療器。
【請求項6】
前記板状の磁石片は、板厚方向に磁極が着磁されていることを特徴とする請求項5記載の磁気治療器。
【請求項7】
前記回転体に形成された磁石は、前記カプセル部の、前記突出部側における高さ寸法に対して、外径側における高さ寸法が高く形成されていることを特徴とする請求項1,3,4,5,6のうちのいずれか一項に記載の磁気治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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