説明

磁気近接スイッチシステム

【課題】一つの有線型磁気近接スイッチで、引き違い戸の何れの引き戸が開けられた場合にもそれを検出できるようにする。
【解決手段】両引き戸2、3が閉じられている時、マグネット取付体20は支持部材40に支持され、マグネット22とリードスイッチ33は対向している。屋外引き戸2を開け、支持部材40の長さを超えて引くと、マグネット取付体20は、支持部材40の支持を失って自重でピン25を回転中心として下方向に回動し、マグネット22はリードスイッチ33との対向位置からずれる。このように、屋外引き戸2と屋内引き戸3とが相対的に所定の距離以上走行すると、マグネット22とリードスイッチ33との位置関係が相対的に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓や戸が開けられたことを検出する磁気近接スイッチシステムに係り、特に、一つの錠を解錠することで左右の戸の両方を開閉することができる引き違い戸に用いる磁気近接スイッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気近接スイッチは、マグネットとリードスイッチで構成され、警備の分野ではドアや窓、引き戸(ここでは便宜的にこれらを総称して引き戸という)が開けられたことを検出するためのセンサとして広く用いられている。また、周知の通り、そして、磁気近接スイッチには、引き戸が開かれてマグネットとリードスイッチが対向位置から外れ、リードスイッチが開いたことを検出すると、無線によって引き戸が開かれたことを警備装置に送信する、いわゆるワイヤレス型のものと、リードスイッチから警備装置まで配線を敷設し、警備装置側でリードスイッチの状態を監視することにより、引き戸が開けられたか否かを検出する、いわゆる有線型のものが知られている。
【0003】
なお、磁気近接スイッチはマグネットスイッチと称されることもあるが、本明細書では磁気近接スイッチと称することにする。
【0004】
そして、引き違い戸に対して磁気近接スイッチシステムを構築する場合には、特許文献1の図9や、特許文献2の図10に見られるように、それぞれの引き戸に対して磁気近接スイッチを配置していた。
【特許文献1】特開2004−326609号公報
【特許文献2】特開2003−296827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構成では、有線型の磁気近接スイッチを用いる場合、片開きの引き戸であれば磁気近接スイッチは一つで済むが、引き違い戸の場合は両方の引き戸に対してそれぞれ磁気近接スイッチを取り付けなければならないので、都合2つの磁気近接スイッチが必要となる。クレセント錠等の一つの錠によって施錠、解錠される引き違い戸は、それぞれの引き戸が独立して施錠、解錠できないのであるから、本来は一つの引き違い戸に対して一つの磁気近接スイッチがあればよく、2つの磁気近接スイッチを取り付けることは無駄である。
【0006】
また、従来の構成では、有線型の磁気近接スイッチを用いる場合、各磁気近接スイッチから警備装置まで配線を敷設しなければならないので、工事は煩わしいものとなる。この問題は、引き違い戸の数が多くなる程顕著である。
【0007】
これに対して、ワイヤレス型のものを用いれば、配線も不要であり、しかも、マグネット側だけでなくリードスイッチ側についても、引き戸の開閉に伴って引き違い戸の枠体との位置関係が変化するように取り付けることができるので、一つの引き違い戸に対して一つのワイヤレス型磁気近接スイッチを取り付けるだけでよいのであるが、ワイヤレス型のものはコストが高いという問題がある。
【0008】
このように、それぞれの引き戸に磁気近接スイッチを配置するのに対して、特許文献1の図5,図6に示されるような構成とすれば、一対のマグネットとリードスイッチで何れの引き戸が開けられた場合にもそれを検出することができるが、特許文献1に示されるものはクレセント錠と一体であるので全体の構成が複雑であり、また上述した通りワイヤレス型であるので高価なものとなる。更に、特許文献1に示されるものを既存の引き違い戸に適用する場合には、クレセント錠の取り替えの手間が掛かるという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、一つの有線型磁気近接スイッチによって、引き違い戸の何れの引き戸が開けられた場合にもそれを検出することができる磁気近接スイッチシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の磁気近接スイッチシステムは、引き違い戸に用いる有線型磁気近接スイッチを用いた磁気近接スイッチシステムであって、引き違い戸の枠体との位置関係が変化しないように取り付けられた有線型のリードスイッチと、屋外引き戸と屋内引き戸とが相対的に所定の距離以上走行した場合、有線型リードスイッチとの位置関係が相対的に変化するようにマグネットを動かす手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気近接スイッチシステムによれば、一つの有線型磁気近接スイッチで、引き違い戸の何れの引き戸が開けられた場合にもそれを検出することができるので、安価に構成することができる。また、リードスイッチ33から警備装置まで配線を敷設しなければならないが、用いるリードスイッチは一つだけであるので、配線の敷設の工事も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る磁気近接スイッチシステムの一実施の形態の構成例を示す斜視図であり、図中、1は鴨居に設置したサッシの枠体、2は屋外引き戸、2Aは屋外引き戸の上部横桟、3は屋内引き戸、3Aは屋内引き戸の縦桟、4は鴨居、20はマグネット取付体、23はマグネット取付体の取付部材、24は支持ブラケット、30はリードスイッチ収容体、31は配線、40はマグネット取付体を支持するための支持部材を示す。
【0013】
ここで、屋外引き戸2と屋内引き戸3とは、枠体1に互いに引き違い状となるように走行自在に嵌め込まれている。ここでは、便宜的に、図示しない錠が施錠されているとき、室内から見て向かって左が屋外引き戸2、向かって右が屋内引き戸3とする。なお、錠は図示しないが、クレセント錠でもよく、差し込み錠でもよく、その他の錠であってもよい。
【0014】
次に、この磁気近接スイッチシステムにおける主要な構成要素であるマグネット取付体20、リードスイッチ収容体30、及び支持部材40について説明する。図2は、マグネット取付体20の構造、及びその取付部材23への取付構造の例を示す斜視図であり、マグネット取付体20は、直方体形状の箱部材21の所定の一面の所定の位置にマグネット22が取り付けられたものである。マグネット22の箱部材21への取付は接着で行えばよい。
【0015】
そして、このマグネット取付体20は、屋内引き戸3の縦桟3Aの側面に取り付けられる取付部材23の上端部に形成された支持ブラケット24に、ピン25によりピン結合され、ピン25を回転中心として回動可能となされている。このマグネット取付体20の回動方向は図2の矢印aで示す方向となる。即ち、図1と図2とを併せてみると、マグネット取付体20は、屋内引き戸3の縦桟3Aの側面側で、屋外引き戸2のガラス面に平行な面で回動可能なことがわかる。
【0016】
なお、図2では、マグネット取付体20は、支持ブラケット24にピン結合するものとしたが、要するに、屋内引き戸3の縦桟3Aの側面側で、一つの回転軸を中心として、屋外引き戸2のガラス面に平行な面で回動可能となされるのであれば、どのような取付構造であってもよい。
【0017】
マグネット22が取り付けられる位置は、マグネット取付体20を取付部材23に取り付けたときに屋内側となる面であって、マグネット取付体20が後述する支持部材40に支持されている状態において、リードスイッチ収容体30に収容されているリードスイッチと対向する位置である。
【0018】
マグネット取付体20の箱部材21の材料としては、リードスイッチに対して磁気的な影響を及ぼさないように、非磁性体を用いるのがよい。非磁性体の金属であってよいことは勿論であるが、プラスチックや硬質の紙を用いてもよい。ただし、箱部材21は、マグネット取付体20が図2の矢印aの下方向に回動しきって取付部材23に当たるときの衝撃に耐えられるものである必要があることはいうまでもない。なお、取付部材23に当たったときの衝撃を緩和するために、箱部材21の取付部材23と当たる面にスポンジ等の衝撃緩和部材を設けることもできる。
【0019】
なお、図1,図2では、取付部材23は、屋内引き戸3の縦桟3Aの側面の上端部にねじ止めしているが、接着剤で貼り付けてもよいことは当業者に明らかである。
【0020】
図3は、リードスイッチ収容体30の構造例を示す斜視図であり、リードスイッチ収容体30の内部を透視した斜視図である。図3に示すように、リードスイッチ収容体30は、両端が支持体32に支持されたリードスイッチ33を、プラスチック等の非磁性体の容器34に収容したものである。そして、リードスイッチ33からの配線31は容器34から引き出され、警備装置(図示せず)まで敷設される。このような構成のリードスイッチ収容体は広く一般に使用されているものである。
【0021】
図1では、このリードスイッチ収容体30は、当該引き違い戸が設置される鴨居4に取り付けられている。即ち、図1では、リードスイッチ収容体30は鴨居4に固定されている。このリードスイッチ収容体30の取り付けは、リードスイッチ33がマグネット取付体20の側に向くように、具体的には、マグネット取付体20が後述する支持部材40に支持されている状態において、リードスイッチ33がマグネット取付体20のマグネット22と対向する位置となるように行う。
【0022】
なお、図1では、リードスイッチ収容体30は鴨居4に直接取り付けるようにしているが、これはあくまでも一例に過ぎないものであって、サッシの構造、マグネット取付体20が後述する支持部材40で支持される高さ、あるいはリードスイッチ収容体30の取り付け位置の周囲の状況等によって、必要に応じて適宜な取り付け具を用いて取り付けてもよいことは当然である。また、鴨居4ではなく、天井に取り付けてもよい。要するに、リードスイッチ収容体30は、枠体1との位置関係が変化しないように取り付ければよいのである。
【0023】
次に、支持部材40について図4を参照して説明する。図4(a)は支持部材40を説明するための斜視図であり、図では、支持部材40は1枚の板材で構成され、その左右の上端部にはアール状に面取りされ、丸みが付されている。即ち、支持部材40は全体として蒲鉾状となっている。このようにすることの意味は後述するところから明らかになるであろう。なお、支持部材40の材料としては、金属板、プラスチック板あるいは硬質の厚紙等を用いることができる。
【0024】
この実施の形態では、支持部材40は取付基板41に接着剤によって貼り付けて用いている。支持部材40を取付基板41に取り付けた状態の側面図を図4(b)に示す。取付基板41の高さは支持部材40の高さより高くなされている。そして、図1に示すように、この取付基板41を屋外引き戸2の上部の横桟2Aの屋内引き戸3側の端部近傍に取り付けて用いるようにしている。取付基板41の横桟2Aへの取り付けは接着剤を用いればよい。
【0025】
そして、図1に示す構成の場合には、支持部材40と取付基板41を貼り合わせたときの厚さT(図4(b))は、錠を解錠したときの屋外引き戸2の横桟2Aと屋内引き戸3の縦桟3Aとの間の間隙よりも小さくなるようにする必要がある。そうしないと、何れの引き戸であっても引き戸を開けようとした時、屋内引き戸3の縦桟3Aが支持部材40に当たってしまい、それ以上開かなくなるからである。また、支持部材40の長さLは任意である。
【0026】
なお、この実施の形態では、上記のように、支持部材40を取付基板41に貼り付けて用いるものとしているが、その厚さTが、錠を解錠したときの屋外引き戸2の横桟2Aと屋内引き戸3の縦桟3Aとの間の間隙より大きくなってしまう場合、あるいはその他の条件によっては、支持部材40自体を屋外引き戸2の横桟2Aに取り付けてもよい。更に、サッシの構造やその他の種々の要因によって、支持部材40自体を屋外引き戸2の横桟2Aに取り付けられない場合には、屋外引き戸2のガラス面に取り付けるようにしてもよい。
【0027】
以上、マグネット取付体20、リードスイッチ収容体30、及び支持部材40について説明したが、次に、これらの相対的な配置関係について、図5を参照して説明する。図5は、引き違い戸に磁気近接スイッチシステムを構築した場合の、マグネット取付体20、リードスイッチ収容体30、及び支持部材40の両引き戸が閉じられている状態における配置の相対的な位置関係を説明する図であり、図1の矢印Xで示す方向から見た側面図である。なお、図5では、図が煩雑になるのを避けるために、枠体1、両引き戸2、3、及び鴨居4等は図示を省略している。
【0028】
両引き戸2、3が閉じられている状態では、マグネット取付体20の下面の屋外側端部は支持部材40の上側エッジに載っている。即ち、マグネット取付体20は支持部材40によって支持されている。また、この状態において、リードスイッチ収容体30のリードスイッチ33は、マグネット取付体20のマグネット22と対向している。マグネット取付体20、リードスイッチ収容体30、及び支持部材40は、このような位置関係になるように配設されるのである。そして、両引き戸2、3が閉じている状態では、リードスイッチ33は短絡状態にあり、このことによって警備装置は両引き戸2、3が閉じられていることを検出する。
【0029】
次に、両引き戸2、3が閉じられている状態から屋外引き戸2を、図1の右側方向に開けるとすると、マグネット取付体20が支持部材40に支持されている間はマグネット22とリードスイッチ33は対向した状態を保つが、支持部材40の長さを超えて開くと、マグネット取付体20は、支持部材40の支持を失って自重でピン25を回転中心として下方向に回動し始め、最終的には図6に示すように、屋内引き戸3の縦桟3Aの側面に当たる。
【0030】
図6に示す状態では、マグネット22とリードスイッチ33は対向していないので、リードスイッチ33は開いた状態となり、このことによって警備装置は引き戸が開けられたことを検出する。
【0031】
次に、屋外引き戸2を開いた状態から閉める場合を考えると、屋外引き戸2を図6の状態から左側に引いてくるとマグネット取付体20の下面の屋外側端部が支持部材40の上側エッジの面取りされた部分に当たるが、そのまま引き続けると、マグネット取付体20は支持部材40の面取りされた部分に沿って持ち上げられ、最終的には図1に示すように、支持部材40によって支持された状態となる。これが支持部材40の左右の上端部をアール状に面取りしている理由である。
【0032】
以上は屋外引き戸2を開いた場合について説明したが、屋内引き戸3を開いた場合、開いた状態から閉める場合も同様である。
【0033】
このように、この磁気近接スイッチシステムでは、屋外引き戸2と屋内引き戸3とが相対的に所定の距離以上走行すると、マグネット22とリードスイッチ33との位置関係が相対的に変化するのである。そして、両引き戸2、3を閉めるとマグネット取付体20は自然と支持部材40に支持される状態となるのである。
【0034】
具体的には、屋外引き戸2と屋内引き戸3を相対的に支持部材40の長さ以上走行させると、マグネット取付体20は支持部材40の支持を失って下方向に回動し、最終的には図6に示すように、屋内引き戸3の縦桟3Aの側面に当たることになるのである。これがマグネット22とリードスイッチ33の位置関係が相対的に変化するということである。そして、このことによって警備装置は引き戸が開けられたことを検出することができるのである。
【0035】
以上のように、この磁気近接スイッチシステムによれば、一つの有線型磁気近接スイッチで、引き違い戸の何れの引き戸が開けられた場合にもそれを検出することができるので、安価に構成することができる。また、リードスイッチ33から警備装置まで配線を敷設しなければならないが、用いるリードスイッチは一つだけであるので、配線の敷設の工事も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る磁気近接スイッチシステムの一実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図2】マグネット取付体20の構造、及びその取付部材23への取付構造の例を示す斜視図である。
【図3】リードスイッチ収容体30の構造例を示す斜視図であり、リードスイッチ収容体30の内部を透視した斜視図である。
【図4】支持部材40を説明する図であり、図4(a)は支持部材40を説明するための斜視図、図4(b)は支持部材40を取付基板41に取り付けた状態の側面図である。
【図5】マグネット取付体20が支持部材40に支持されている状態におけるマグネット取付体20、リードスイッチ収容体30、及び支持部材40の相対的な配置関係を説明するための図である。
【図6】両引き戸2、3が閉じられている状態から屋外引き戸2を開けたときのマグネット取付体20の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1…サッシの枠体、2…屋外引き戸、2A…屋外引き戸2の横桟、3…屋内引き戸、3A…屋内引き戸3の縦桟、4…鴨居、20…マグネット取付体、21…マグネット取付体20の箱部材、22…マグネット、23…取り付け部材、24…支持ブラケット、25…ピン、30…リードスイッチ収容体、31…配線、33…リードスイッチ、34…リードスイッチ収容体30の容器、40…支持部材、41…取付基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き違い戸に用いる有線型磁気近接スイッチを用いた磁気近接スイッチシステムであって、
引き違い戸の枠体との位置関係が変化しないように取り付けられた有線型のリードスイッチと、
屋外引き戸と屋内引き戸とが相対的に所定の距離以上走行した場合、有線型リードスイッチとの位置関係が相対的に変化するようにマグネットを動かす手段と
を備えることを特徴とする磁気近接スイッチシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−249707(P2006−249707A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64800(P2005−64800)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000101400)アツミ電氣株式会社 (69)
【Fターム(参考)】