説明

神経難病の画像診断薬

【課題】本発明は、アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患、特にアルツハイマー病の早期かつ正確な画像診断薬、並びにそれを含有する組成物の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、等価なフッ素原子を含む式(I):


(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC1〜6アルキルであり、XはO又はSであり、mは0又は1であり;A及びAのどちらか一方は水素原子である)で表されるアニリン誘導体又はその塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の画像診断薬、特に、アルツハイマー病のMR画像診断に有用な新規アニリン誘導体又はその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、初老期から老年期に起こる進行性の痴呆を特徴とする疾患であり、現在、国内の患者数は100万人以上と言われている。今後人口の高齢化に伴いその数は確実に増加すると予想される。
【0003】
アルツハイマー病の臨床症状は、記憶障害、高次脳機能障害(失語、失行、失認、構成失行)等である。その症状は他の痴呆疾患でも共通して見られることが多く、臨床症状だけでアルツハイマー病と確定診断することは極めて困難である。
【0004】
一方、アルツハイマー病の特徴的な病理組織所見としては、老人斑と神経原線維変化がある。前者の主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβ蛋白であり、後者のそれは過剰リン酸化されたタウ蛋白である。アルツハイマー病においては臨床症状が発症するかなり前から、脳内ではアミロイドβ蛋白の蓄積等の上記病理的組織変化が始まっていることが知られている。したがって、脳内のアミロイドβ蛋白をマーカーとして検出することが、アミロイドが蓄積する疾患、特にアルツハイマー病の早期診断方法の1つとなる。このような観点から、近年、脳内アミロイドβ蛋白に選択的に結合するポジトロン断層撮影法(PET)やシングルフォトン断層撮影法(SPECT)用の放射性造影剤の研究が進められている。アミロイドに親和性の高い古典的な化合物としては、アルツハイマー病の病理的確定診断に使用されているコンゴーレッド、チオフラビンSおよびチオフラビンTがある。その多くは、血液―脳関門を通過しがたく静脈内投与しても殆ど脳内へは移行しない。そこで、血液―脳関門の透過性を考慮した造影剤の研究が進められ、ISB、PIB、BF-168(特許文献1)等の造影剤が開発されており、そのいくつかは臨床試験で良好な成績が得られている。しかし、それらは、11C、13N、15O、18F等の放射性核種を用いるため放射線障害による副作用が懸念されるとともに、近くにサイクロトロン施設を併設する必要があり、放射性核種を用いない診断方法が望まれている。
【0005】
放射性核種を用いない診断方法の一つとして核磁気共鳴イメージング法(MRI)がある。近年、19F−MRIを用いて老人斑の画像化に成功したとの報告(特許文献2、非特許文献1)がなされ、MRI診断への期待が高まっている。しかしながら、MRIはPET等に比べ検出感度が低いことが知られており、安全なアルツハイマー病の診断法確立に向け、高感度のMRI造影剤の開発が切望されている。
【特許文献1】WO2003/106439
【特許文献2】WO2005/042461
【非特許文献1】M.Higuchi et al.,Nature Neuroscience 8(4),527(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アルツハイマー病のMRI診断用造影剤として好適なアミロイドβ蛋白に対する高い結合特異性と高い検出感度を併せ持つ物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、19F−MRIの感度向上に不可欠な等価なF原子を多く含む一定の化学構造の化合物が、アミロイドβ蛋白に対し高い結合特異性を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC1〜6アルキルであり、XはO又はSであり、mは0又は1であり;A及びAのどちらか一方は水素原子であり、もう一方は
【0011】
【化2】

【0012】
であり、Jは、
【0013】
【化3】

【0014】
であり、nは0〜5の整数であり、Qは、
【0015】
【化4】

【0016】
であり、Rは水素原子、フッ素原子、メチル又はトリフルオロメチルであり、Rはトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又は
【0017】
【化5】

【0018】
であり、Rは水素原子、フッ素原子、水酸基、メチル又はトリフルオロメチルであり、Yは、CH、CR又はNであり、pは1〜4の整数である。但し、Aが水素原子であり、Aが、
【0019】
【化6】

【0020】
であり、JがJ−1又はJ−2であり、QがQ−5であり、Rがトリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシであり、mが1である場合は除く)で表されるアニリン誘導体又はその塩。
【0021】
また、本発明は、式(I)の化合物又はその塩を有効成分とするアミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の画像診断薬に関する。
【0022】
さらに、本発明は、式(I)の化合物又はその塩を有効成分とする脳をはじめとする組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑の染色薬に関する。
【0023】
又はRのアルキル基としては、直鎖又は分枝状のC1-6アルキルであればよく、その具体例としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどが挙げられ、直鎖又は分枝状のC1-3アルキル基が好ましい。RとRの一方又は両方がアルキル基であるのが好ましい。
nは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数である。
pは1〜4の整数であり、好ましくは1〜2の整数である。
【0024】
式(I)の化合物の塩としては、医薬上許容される塩であればよく、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸塩;酒石酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、グリコール酸塩、琥珀酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、これらの塩の中で結晶水を持つものもある。
【発明の効果】
【0025】
本発明化合物は、アミロイドβ蛋白に対する高い親和性と高い血液―脳関門透過性を有し、アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の画像診断薬の有効成分として有用である。更に、本発明化合物は電子的に等価なF原子を多く含むため19F−MRI造影剤の有効成分として特に有用である。また、脳をはじめとする組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑染色薬の有効成分、例えば該蛋白の蛍光染色剤として有用である。従って、本発明化合物を用いれば、アルツハイマー病のようなアミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の早期診断が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
式(I)の化合物又はその塩は、下記製法〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の方法により製造することができる。
製法〔1〕
前記式(I)において、JがJ−1又はJ−2である式(I−a)の化合物は、通常、溶媒の存在下で式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、X、R、R、m及びnは前述の通りであり、JaはJ−1又はJ−2であり、Tsはトシル基である)
本反応の溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0029】
本反応を促進するために塩基を添加することが望ましく、その塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert−ブトキシドなどの金属アルコキシドなどを挙げることができる。塩基は、式(III)の化合物に対して1〜5倍モル、望ましくは1〜3倍モル使用することができる。
【0030】
本反応は、通常0〜150℃、望ましくは20〜100℃で行なうことができ、その反応時間は、通常1〜170時間程度である。
【0031】
式(III)の化合物は、式(II)の化合物に対して1〜10倍モル、望ましくは1〜5倍モル使用することができる。
【0032】
式(II)の化合物は、公知の類似化合物の製造方法又はそれらに準じた方法によって製造することができる。例えば、下記の製造方法に従い、通常、溶媒中トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジイソプロピルの存在下で式(IV)の化合物と式(V)の化合物とを反応させることにより式(II)の化合物を製造することができる。
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、X、R、R、m、n及びTsは前述の通りである)
本反応の溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0035】
本反応は、通常−20〜100℃、望ましくは0〜50℃で行うことができ、反応時間は通常1〜36時間程度である。
【0036】
式(V)の化合物は、式(IV)の化合物に対して1〜10倍モル、望ましくは1〜5倍モル使用することができる。
製法〔2〕
前記式(I)において、JがJ−3であり、nが0である式(I−b)の化合物は、式(IV)の化合物とトリエタノールアミンとを反応させて式(VI)の化合物を製造した後、得られた式(VI)の化合物と式(VII)の化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0037】
【化9】

【0038】
(式中、X、R、R、R及びmは前述の通りである)
式(IV)の化合物から式(VI)の化合物を製造する反応は、通常、溶媒中トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジイソプロピルの存在下で行うことができる。
【0039】
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0040】
反応は、通常−20〜100℃、望ましくは0〜50℃で行うことができ、反応時間は通常1〜36時間程度である。
【0041】
トリエタノールアミンは、式(IV)の化合物に対して1〜10倍モル、望ましくは1〜5倍モル使用することができる。
【0042】
式(VI)化合物と式(VII)の化合物とを反応させて式(I-b)の化合物を製造する反応は、通常、溶媒中トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジイソプロピルの存在下で行うことができる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0043】
反応は、通常−20〜100℃、望ましくは0〜50℃で行うことができ、反応時間は通常1〜36時間程度である。
【0044】
式(VII)の化合物は、式(VI)の化合物に対して1〜10倍モル、望ましくは1〜5倍モル使用することができる。
製法〔3〕
前記式(I)において、JがJ−2であり、QがQ−3である式(I−c)の化合物は、式(VIII)の化合物と式(IX)の化合物とを反応させて式(X)の化合物を製造した後、得られた式(X)の化合物のtert−ブトキシカルボニル基を脱保護することにより製造することができる。
【0045】
【化10】

【0046】
(式中、R、R、R、X、m及びnは前述の通りであり、Halはハロゲンであり、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である)
式(VIII)の化合物と式(IX)の化合物から式(X)の化合物を製造する反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行なうことができる。
【0047】
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert−ブトキシドなどの金属アルコキシドなどを挙げることができる。塩基の使用量は、特に限定されないが、式(VIII)の化合物に対して等モルから過剰量である。
【0048】
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0049】
反応は、通常0〜150℃、望ましくは0〜100℃の温度で行われ、反応時間は、通常1〜50時間程度である。
【0050】
式(IX)の化合物は、式(VIII)の化合物に対して0.8〜5倍モル、望ましくは1〜2倍モル使用することができる。
【0051】
式(X)の化合物のtert−ブトキシカルボニル基を脱保護する反応は、通常、酸及び溶媒の存在下で処理することにより行なうことができる。
【0052】
酸としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
【0053】
溶媒としては、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0054】
本反応は、通常0〜100℃、望ましくは30〜70℃で行なうことができ、反応時間は、通常0.5〜5時間程度である。
【0055】
前記式(VIII)の化合物は、公知の製造方法又はそれらに準じた製造方法により製造することができる。例えば、式(VIII)の化合物のうち、nが0の化合物(IV)はWO2005/016888等に記載の方法に準じて製造することができ、nが1〜5の化合物(XIII)は下記製法〔A〕又は〔B〕に記載の方法により製造することができる。
製法〔A〕
【0056】
【化11】

【0057】
(式中、R、R、X及びmは前述の定義通りであり、qは1〜5であり、Zは保護基である)
保護基Zとしては、例えばアセチル基、テトラヒドロピラニル基、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0058】
式(IV)の化合物から式(XII)の化合物を製造する反応は、通常、溶媒中トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジイソプロピルの存在下で式(IV)の化合物と、式(XI)の化合物とを反応することにより行なうことができる。
【0059】
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0060】
本反応は、通常−20〜100℃、望ましくは0〜50℃で行うことができ、反応時間は通常1〜36時間程度である。
【0061】
式(XI)の化合物は、式(IV)の化合物に対して1〜10倍モル、望ましくは1〜5倍モル使用することができる。
【0062】
式(XII)の化合物の保護基(Z)を脱保護して式(XIII)の化合物を得る反応は、通常、酸及び溶媒の存在下で行なうことができる。
【0063】
酸としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。溶媒としては、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0064】
本反応は、通常0〜100℃、望ましくは30〜70℃で行なうことができ、反応時間は、通常0.5〜5時間程度である。
製法〔B〕
【0065】
【化12】

【0066】
(式中、R、R、X、m及びqは前述の定義通りである。)
【0067】
本反応は、通常、溶媒中トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジイソプロピルの存在下で式(IV)の化合物と式(XIV)の化合物とを反応することにより行なうことができる。
【0068】
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホランなどのスルホン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのリン酸アミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0069】
本反応は、通常−20〜100℃、望ましくは0〜50℃で行うことができ、反応時間は通常1〜36時間程度である。
【0070】
式(XIV)の化合物は、式(IV)の化合物に対して1〜10倍モル、望ましくは1〜5倍モル使用することができる。
【0071】
上記した製法〔1〕〜〔3〕及びそれに付随した方法で得られる前記式(I)の化合物は、公知の手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、転溶、溶媒抽出、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどにより単離、精製することができる。
【0072】
前記式(I)の化合物がフリー体で得られる場合、通常の方法で塩を形成させることができる。
【0073】
式(I)の化合物のいくつかの例を第1表に示す。
【0074】
第1表
【表1】

【0075】
式(I)の化合物又はその塩は、アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の画像診断薬として使用することができる。また、式(I)の化合物又はその塩は、脳をはじめとする組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑染色薬として使用することができる。
【0076】
本発明の望ましい実施形態は、次のものである。
(1)式(I)の化合物又はその塩を有効成分とするアミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の画像診断薬。
(2)アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患がアルツハイマー病である(1)に記載の画像診断薬。
(3)脳内アミロイドのMRI造影剤である(1)又は(2)に記載の画像診断薬。
(4)式(I)の化合物又はその塩を有効成分とする脳をはじめとする組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑染色薬。
(5)アミロイドβ蛋白の蛍光染色薬である(4)に記載の染色薬。
(6)(1)に記載の画像診断薬を用いる、蛋白のβシート構造が病因又は病因の一部となる疾患の診断方法。
(7)(4)に記載の染色薬を用いて組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑を染色する方法。
【0077】
式(I)の化合物の多くは疎水性の化合物であり、水に対する溶解度は低い。生体に投与する化合物としては水溶解度が高いことが望ましく、式(I)の化合物の内、塩を持つ化合物がより望ましい。
【0078】
式(I)の化合物又はその塩を画像診断薬として使用する場合、本化合物により脳内の老人斑を特異的に検出することができる。特に、19F―MRIを用いて非侵襲的にアミロイドβ蛋白を検出する場合、その検出感度は、フッ素原子の数に依存しており、F原子の数は多いほうが望ましい。
【0079】
式(I)の化合物又はその塩を画像診断薬として使用する場合、その投与は、局所的であってもよく、全身的であってもよい。投与方法には特に制限はなく、経口的又は非経口的に投与される。非経口的投与経路としては、皮下、腹腔内、静脈、動脈又は脊髄液への注射又は点滴等が挙げられる。
【0080】
式(I)の化合物又はその塩を含む画像診断薬は、ヒトへの投与に適した医薬上許容される形態であって、生理学的に許容し得る添加剤を含む。かかる組成物は、適宜、医薬として許容し得る希釈剤、緩衝剤、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン、プルロニック、ポリエチレングリコール、Tween、クレモフォール又はリン脂質のような界面活性剤)、無痛化剤等を添加してもよく、更に必要に応じて、医薬として許容し得る溶剤、安定化剤又は酸化防止剤(例えばアスコルビン酸等)のような成分を含んでもよい。本発明化合物の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度により適宜選択される。
【0081】
アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患としては、アルツハイマー病の他、ダウン症候群が挙げられ、蛋白のβシート構造が病因又は病因の一部となる疾患しては、アルツハイマー病、ダウン症候群の他、前頭側頭型痴呆症、ピック病、進行核上性麻痺(PSP)、プリオン病等が挙げられる。
【実施例】
【0082】
次に本発明に係わる合成例及び試験例を記載するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0083】
〔合成例1〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−ノナフルオロ- tert -ブトキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール(化合物1)の合成
DMF1ml中に、ノナフルオロ- tert -ブタノール 53μL(0.380mmol)を滴下し60%水素化ナトリウム 19mg(0.475mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。攪拌後、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール 100mg(0.192mmol)を加え50℃で16時間攪拌した。放冷後、水を投入し、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:1)により精製した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:2)により精製し、黄色油状の2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−ノナフルオロ- tert -ブトキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール 57mg(cis:trans=2:3混合物)を得た。
1HNMR (CDCl3):δ3.04 (s, 6H), δ3.83 (m, 2H), δ3.94 (m, 2H), δ4.18 (m, 4H), δ6.25 (d, J=13.2Hz, 0.4H, cis), δ6.80 (d, J=16.4Hz, 0.6H, trans), δ6.85 (d, J=13.2Hz, 0.4H, cis), δ7.64 (d, J=16.0Hz, 0.6H, trans), δ6.7〜7.9 (arom.H, 7H).
【0084】
〔合成例2〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−〔2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ〕ベンゾオキサゾール塩酸塩(化合物2)の合成
(1)ビス(2−クロロエチル)アミン0.9gをテトラヒドロフラン5mLに溶解し、室温攪拌下にジ−tert−ブチルジカーボネート1.52gを滴下したあと、同温度で17時間攪拌した。反応液に水を加えたあと酢酸エチルで抽出し、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮により油状のN,N−ビス(2−クロロエチル)カルバミド酸 tert−ブチルエステル1.53gを得た。
1HNMR (CDCl3):δ1.47 (s, 9H), δ3.60 (m, 6H), δ3.66 (br.d, J=5.6Hz, 2H).
(2)ノナフルオロ−tert−ブタノール1.3gをヘキサメチルリン酸トリアミド 5mLに溶解し、氷水浴による冷却攪拌下、60%水素化ナトリウム 237mgを徐々に添加した。添加終了後、室温下に20分攪拌し、次いで前記工程(1)で得られたN,N−ビス(2−クロロエチル)カルバミド酸 tert−ブチルエステル0.53gをヘキサメチルリン酸トリアミド2mLに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、約50℃で約48時間攪拌し、反応液に水を加えたあと、酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(酢酸エチル:n-ヘキサン=1:20)により精製して油状のN−2−クロロエチル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルカルバミド酸 tert−ブチルエステル0.31gを得た。
1HNMR (CDCl3):δ1.47 (s, 9H), δ3.54〜3.67 (m, 6H), δ4.14 (m, 2H).
(3)前記工程(1)で得られたN−2−クロロエチル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルカルバミド酸 tert−ブチルエステル310mg、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−ヒドロキシベンゾオキサゾール 197mg、ヘキサメチルリン酸トリアミド 5mLを仕込み室温攪拌下60%水素化ナトリウム 34mgを徐々に添加した。添加終了後、約50℃で約22時間攪拌し、反応液に水を加えたあと、酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(酢酸エチル:n-ヘキサン=1:3)により精製して油状の2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾオキサゾール 239mg(cis:trans=1:1混合物)を得た。1HNMR (CDCl3):δ1.47 (s, 9H), δ3.10 (s, 6H), δ3.61〜3.69 (m, 4H), δ4.06〜4.25 (m, 4H), δ6.25 (d, J=12.4Hz, 0.5H, cis), δ6.80 (d, J=16.0Hz, 0.5H, trans ), δ7.64(d, J=16.0Hz, 0.5H, trans), δ6.70〜7.88 (arom.H, 7.5H).
(4)前記工程(3)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾオキサゾール110mg、1M塩酸エタノール溶液3mLを混合し、約70℃で1時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水50mL中に投入し室温で30分攪拌したあと、減圧ろ過、水洗浄、減圧乾燥により黄褐色の結晶として2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾオキサゾール78mg(cis:trans=1:1混合物)を得た。
1HNMR (CDCl3):δ3.03 (s, 6H), δ3.00〜3.08 (m, 4H), δ4.09〜4.20 (m, 4H), δ6.25 (d, J=12.8Hz, 0.5H, cis), δ6.80 (d, J=16.8Hz, 0.5H, trans), δ6.84 (d, J=13.2Hz, 0.5H, cis), δ7.64 (d, J=16.0Hz, 0.5H, trans), δ6.69〜7.88 (arom.H, 7H).
(5)前記工程(4)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾオキサゾール48mgをジエチルエーテル2mLに溶解し、室温攪拌下0.1M塩酸エタノール溶液 0.74mLを滴下した。同温度で30分攪拌後、減圧下に濃縮し、メタノールとジエチルエーテルによる再結晶により、橙色の結晶として2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾオキサゾール塩酸塩39mg(cis:trans=1:1混合物、融点:204〜208℃)を得た。
1HNMR (d6DMSO):δ2.99 (s, 6H), δ3.42 (m, 4H), δ4.36 (br.t, J=4.8Hz, 2H), δ4.45 (br.t, J=5.2Hz, 2H), δ6.25 (br.d, J=13.2Hz, 0.5H, cis), δ6.89 (d, J=13.2Hz, 0.5H, cis), δ6.95 (d, J=16.4Hz, 0.5H, trans), δ6.77〜8.05 (m, 7.5H), δ9.39 (br.s, 2H).
【0085】
〔合成例3〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−[N,N−ビス(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチル)アミノ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール塩酸塩(化合物3)の合成
(1)2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−ヒドロキシベンゾオキサゾール 100mg、N、N−ジメチルホルムアミド5mL、トリエタノールアミン160mg、トリフェニルホスフィン281mgを仕込み、攪拌下氷水浴にて冷却した。次いで、1.9Mジイソプロピルアゾジカルボキシレートトルエン溶液0.6mLを滴下し、室温下に約17時間攪拌したあと、水を加えて酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(クロロホルム:メタノール=15:1)により精製して油状の2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール60mg(cis:trans=1:1混合物)を得た。
1HNMR (CDCl3):δ2.83 (ddd, J=2.4Hz, 4H), δ3.03(s, 6H), δ3.03〜3.06 (m, 2H), δ3.67 (ddd, J=2.4Hz, 4H), δ4.10 (dd, J=2.4Hz, 2H), δ6.25 (d, J=12.4Hz, 0.5H, cis), δ6.85 (d, J=16.4Hz, 0.5H, trans), δ7.64 (d, J=16.0Hz, 0.5H, trans), δ6.70〜7.89 (arom.H, 7.5H).
(2)前記工程(1)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール60mg、N,N−ジメチルホルムアミド2mL、ノナフルオロ−tert−ブタノール138mg、トリフェニルホスフィン153mgを仕込み、攪拌下氷水浴にて冷却した。次いで、1.9Mジイソプロピルアゾジカルボキシレートトルエン溶液0.33mLを滴下し、室温下に約16時間攪拌したあと、水を加えて酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(酢酸エチル:n-ヘキサン=1:1〜4)により精製して油状の2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−〔N,N−ビス(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチル)アミノ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール64mg(cis:trans=1:1混合物)を得た。
1HNMR (CDCl3):δ3.03 (s, 6H), δ3.00〜3.09 (m, 6H), δ4.01〜4.09 (m, 6H), δ6.25 (d, J=12.8Hz, 0.5H, cis), δ6.79 (d, J=16.0Hz, 0.5H, trans), δ7.65 (d, J=16.0Hz, 0.5H, trans), δ6.70〜7.82 (m, 7.5H).
(3)前記工程(2)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−〔N,N−ビス(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチル)アミノ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール64mgをジエチルエーテル2mLに溶解し、室温攪拌下0.1M塩酸エタノール溶液 0.68mLを滴下した。同温度で30分攪拌後、減圧下に濃縮し、メタノールとジエチルエーテルによる再結晶により、橙色の結晶として2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−[N,N−ビス(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチル)アミノ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール塩酸塩36mg(cis:trans=1:4混合物、融点:114〜118℃)を得た。
1HNMR (CD3OD):δ3.19 (s, 6H), δ3.67 (br.s, 6H), δ4.14 (br.s, 2H), δ4.53(br.s, 4H), δ6.55 (br.d, J=13.2Hz, 0.2H, cis), δ7.02〜7.98 (m, 8.8H).
【0086】
〔合成例4〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−〔2−(4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール塩酸塩(化合物4)の合成
(1)4−ヘプタフルオロイソプロピル安息香酸エチルエステル0.46g(1.45mmol)、90%水素化ホウ素ナトリウム0.61g(14.4mmol)をTHF10mLに溶解し、50℃で攪拌下、メタノール2.3mLをゆっくり添加し、そのまま30分間攪拌した。放冷後、水を投入し酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)にて精製し、4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジルアルコール0.33gを得た。
1HNMR (CDCl3):δ1.78 (t, J=6.4Hz, 1H), δ4.78 (d, J=5.6Hz, 2H), δ7.51(d, J=8.8Hz, 2H), δ7.61 (d, J=8.4Hz, 2H).
(2)前記(1)で得られた4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジルアルコール0.33g(1.2mmol)および塩化チオニル157mg(1.32mmol)をジエチルエーテル5mLに添加し、室温で攪拌下、ピリジン104mgを添加した。1時間室温で攪拌後、還流下で4時間30分攪拌した。析出した結晶をろ過し、ろ液の溶媒をロータリーエバポレーターにて留去した。残渣をDMF3mLで溶解し、フタルイミドカリウムを170mg(0.92mmol)加え50℃で2時間攪拌した。放冷後、水を投入し氷冷下にて結晶を析出させた。結晶をろ過し、水でかけ洗浄した後に回収し、減圧乾燥して白色結晶のN−(4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジル)フタルイミド0.2gを得た。
1HNMR (CDCl3):δ4.90 (s, 2H),δ7.56 (s, 4H), δ7.61 (d, J=8.4Hz, 2H), δ7.61(d, J=8.4Hz, 2H).
(3)前記(2)で得られたN−(4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジル)フタルイミド50mgをTHF2mL中に溶解し、ヒドラジン一水和物6mgを添加後、50℃で75分間攪拌した。放冷後エーテルを投入してろ過し、ろ液を回収した。ろ液を水および飽和食塩水にて洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、減圧乾燥した。その中にDMF1mL添加して溶解し、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール62mg(0.12mmol)および炭酸カリウム33mg(0.24mmol)を加え、40℃で19時間攪拌した。放冷後ジエチルエーテルを投入し、水、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:1→3:1→1:0)により精製し、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−〔2−(4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール10mg(cis:trans=2:3混合物)を得た。
1HNMR (CDCl3):δ2.86 (m, 2H), δ3.03 (s, 6H), δ3.71 (m, 2H), δ3.85 (m, 4H), δ4.17 (m, 2H), δ6.24 (d, J=13.2Hz, 0.4H, cis), δ6.80 (d, J=16.8Hz, 0.6H, trans), δ6.83 (d, J=12.4Hz, 0.4H, cis), δ7.64 (d, J=16.4Hz, 0.6H, trans), δ6.7〜7.9 (arom.H, 11H).
(4) 前記(3)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−[2−(4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジルアミノ)エトキシ]エトキシ]ベンゾオキサゾール 6mgをジエチルエーテル1mL中に溶解し、1N−塩酸メタノール溶液を10μL添加し、室温で1時間攪拌した。析出した結晶をろ過し、ジエチルエーテルにてかけ洗浄後、結晶を回収して減圧乾燥した。黄色結晶の2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−〔2−(4−ヘプタフルオロイソプロピルベンジルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾオキサゾール塩酸塩4.2mg(融点:175−179℃)を得た。 .
1HNMR (CD3OD):δ3.02 (s, 6H), δ3.40 (m, 2H), δ3.89 (m, 2H), δ3.71 (m, 2H),δ3.96 (m, 2H), δ4.35 (m, 2H), δ6.80 (d, J=16.4Hz, 1H), δ7.65 (d, J=16.0Hz, 1H), δ6.7〜7.8 (arom.H, 11H).
【0087】
〔合成例5〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−[2−(2−[4−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキ−1−トリフルオロメチルエチル)アニリノ]エトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール(化合物5)の合成
ノナフルオロ- tert -ブタノールに代えて4−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキ−1−トリフルオロメチルエチル)アニリンを使用する以外は合成例5と同様にして、アモルファス状の標記化合物を得た。
1HNMR (CDCl3):δ3.03 (s, 6H), δ3.75 (m, 2H), δ3.82 (m, 2H), δ3.94 (m, 2H), δ4.22 (m, 2H), δ6.81 (d, J=16.4Hz, 1H), δ7.64 (d, J=16.4Hz, 1H), δ6.6-7.6 (arom.H, 11H).
【0088】
〔合成例6〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール(化合物6)の合成
(1)2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−ヒドロキシベンゾオキサゾール2.8g (10mmol)、トリフェニルホスフィン5.76g (22mmol)および2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシエタノール5.72g (22mmol)をDMF100mLに溶解し、氷浴中、撹拌しながらアゾジカルボン酸ジイソプロピル4.4mLを滴下した。滴下終了後、反応液を室温で30時間撹拌した後、反応液を水にあけて、ジエチルエーテル2000mLで抽出した。抽出液を十分に水洗した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。抽出液を約50mLまで濃縮すると結晶が析出するので、濾別して、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−〔2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ〕ベンゾオキサゾール3.02gを黄褐色結晶(融点:114〜115℃)として得た。
1HNMR (CDCl3):δ2.40 (3H, s), δ3.03 (6H, s), δ3.80 (4H, m), δ4.08 (2H, m), δ4.21 (2H, m), δ6.71 (2H, d, J=8.6Hz), δ6.81 (1H, d, J=16.2Hz), δ6.87 (1H, dd, J=2.4Hz, J=8.6Hz), δ7.12 (1H, d, J=2.4Hz), δ7.30 (2H, d, J=8.1Hz), δ7.35 (1H, d, J=8.6Hz), δ7.48 (2H, d, J=8.6Hz), δ7.69 (1H, d, J=16.2Hz), δ7.80 (2H, d, J=8.1Hz).
(2)氷冷したDMF 1.5ml中にノナフルオロ−tert−ブタノール0.08ml(0.57mmol)を加え、ついで60%水素化ナトリウム28mg(0.7mmol)を加えて、室温で30分間撹拌した後、前記前記工程(1)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール150mg(0.28mmol)を加えて、撹拌しながら約550℃に40時間加熱した。反応終了後、反応液を水20mLにあけて酢酸エチルで抽出した。抽出液を十分に水洗し、さらに飽和食塩水で洗った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-へキサン=1:3)で精製して得られた黄色結晶をn-へキサンで洗うことにより、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール111mgを結晶物(融点:113〜114℃)として得た。
1HNMR(CDCl3):δ3.03 (6H, s), δ3.83 (2H, m), δ3.91 (2H, m), δ4.18 (4H, m), δ6.71 (2H, d, J=8.6Hz), δ6.81 (1H, d, J=16.2Hz), δ6.90 (1H, dd, J=2.4Hz, J=8.9Hz), δ7.16 (1H, d, J=2.4Hz), δ7.36 (1H, d, J=8.9Hz), δ7.48 (2H, d, J=8.6Hz), δ7.69 (1H, d, J=16.2Hz).
【0089】
〔合成例7〕2−(4’−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−(N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ] ベンゾオキサゾール・塩酸塩(化合物7)の合成
合成例4(3)において、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−6−ヒドロキシベンゾオキサゾールに代えて、2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−ヒドロキシベンゾオキサゾールを使用し、得られた生成物を同(4)で使用した以外は合成例4と同様にして、標記化合物(7)を黄色結晶(融点:> 200℃)として得た。
1HNMR(d6DMSO):δ3.03 (6H, s), δ3.46 (4H, m), δ4.38 (2H, m), δ4.51 (2H, m), δ6.78 (2H, d, J=8.6Hz), δ6.99 (1H, d, J=16.2Hz), δ7.03 (1H, dd, J=2.4Hz, J=8.9Hz), δ7.34 (1H, d, J=2.4Hz), δ7.60〜7.80 (3H), δ7.70 (1H, d, J=16.2Hz), δ9.42 (2H, br.s).
【0090】
〔合成例8〕2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−[ [2−(3−トリフルオロメトキシ)ベンジルアミノエトキシ]エトキシ]ベンゾオキサゾール・塩酸塩(化合物8)の合成
前記合成例6の(1)で得られた2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ]ベンゾオキサゾール124mg(0.24mmol)と3−(トリフルオロメトキシ)ベンジルアミン153mg(0.80mmol)をDMF1.3mLに溶解した後、炭酸カリウム138mg(1.0mmol)を加え、撹拌しながら約95℃に3時間加熱した。反応終了後、反応液を水にあけてジエチルエーテルで抽出した。抽出液を十分に水洗した後、0.5M−HClを加えて振り、0.5M−HClに溶ける部分を集めた。水溶液をジエチルエーテルで洗った後、固体の炭酸水素カリウムを加えてアルカリ性にし、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン:メタノール=200:1)により精製して2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−[ 2−(3−トリフルオロメトキシ)ベンジルアミノエトキシ]エトキシ]ベンゾオキサゾールを得た。得られた精製物をジエチルエーテルに溶解し、1M−HCl/EtOHを加えて得られる沈殿をエタノールより再結晶し、目的物である2−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−[2−[ [2− (3−トリフルオロメトキシ)ベンジルアミノエトキシ]エトキシ]ベンゾオキサゾール・塩酸塩34mgを黄色結晶(融点:> 200℃)として得た。
1HNMR(d6DMSO):δ3.03 (6H, s), δ3.19 (2H, m), δ3.86 (4H, m), δ4.24 (2H, m), δ4.33 (2H, m), δ6.78 (2H, d, J=8.9Hz), δ6.95 (1H, dd, J=2.4Hz, J=8.6Hz), δ6.97 (1H, d, J=16.2Hz), δ7.27 (1H, d, J=2.4Hz), δ7.57 (1H, d, J=8.6Hz), δ7.60〜7.72 (4H), δ7.81 (1H, br.d, J=7.8Hz), δ7.90 (1H, br.d, J=7.8Hz), δ8.01 (1H, br.s).
【0091】
〔合成例9〕2-(4-ジメチルアミノスチリル)-5-[2-[ 2- (3-トリフルオロメチル)ベンジルアミノエトキシ]エトキシ]ベンゾオキサゾール・塩酸塩(化合物9)の合成
3-(トリフルオロメトキシ)ベンジルアミンに代えて、3-(トリフルオロメチル)ベンジルアミンを使用する以外は実施例8と同様にして、黄色結晶(融点:> 200℃)の標記化合物(9)を得た。
1HNMR(d6DMSO):δ3.03 (6H, s), δ3.18 (2H, m), δ3.85 (4H, m), δ4.25 (4H, m), δ6.78 (2H, d, J=8.6Hz), δ6.96 (1H, dd, J=2.4Hz, J=8.9Hz), δ6.98 (1H, d, J=16.2Hz), δ7.27 (1H, d, J=2.4Hz), δ7.46 (1H, m), δ7.50〜7.70 (6H), δ7.69 (1H, d, J=16.2Hz).
【0092】
〔合成例10〕2-(4-ジメチルアミノスチリル)-5-[2-[2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)エトキシ]エトキシ]ベンゾオキサゾール・塩酸塩(化合物10)の合成
3-(トリフルオロメトキシ)ベンジルアミンに代えて、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミンを使用する以外は実施例8と同様にして、黄色結晶(融点:175〜177℃)の標記化合物(10)を得た。
1HNMR(d6DMSO):δ3.03 (6H, s), δ3.22 (2H, m), δ3.88 (4H, m), δ4.24 (2H, m), δ4.43 (2H, m), δ6.84 (2H, d, J=8.6Hz), δ6.96 (1H, dd, J=2.4Hz, J=8.9Hz), δ7.00 (1H, d, J=16.2Hz), δ7.27 (1H, d, J=2.4Hz), δ7.57 (1H, d, J=8.9Hz), δ7.66 (2H, d, J=8.6Hz), δ7.69 (1H, d, J=16.2Hz), δ8.21 (1H, s), δ8.37 (2H, s), δ9.60 (2H, br.s).
【0093】
〔合成例11〕2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾチアゾール塩酸塩(化合物11)の合成
(1)2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ヒドロキシベンゾチアゾール 90mg、ヘキサメチルリン酸トリアミド 2mL、N−2−クロロエチル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルカルバミド酸 tert−ブチルエステル218mgを仕込み室温攪拌下60%水素化ナトリウム 22mgを徐々に添加した。添加終了後、室温で約18時間攪拌したあと、約40℃で約24時間攪拌し、さらに約60℃で5時間攪拌した。反応液に水を加えたあと、酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和炭酸水素ナトリウム水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(酢酸エチル:n-ヘキサン=1:2)により精製して油状の2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾチアゾール135mgを得た。
1HNMR (CDCl3):δ1.47 (d, J=6.0Hz, 9H), δ3.06 (s, 6H), δ3.64 (br.d, J=6.0Hz, 2H), δ3.67 (br.d, J=5.6Hz 2H), δ4.09〜4.25 (m, 4H), δ6.75 (d, J=8.8Hz, 2H), δ7.01 (dd, J=9.2, 2.4Hz, 1H), δ7.30 (br.s, 1H), δ7.88 (br.d, J=8.4Hz, 1H), δ7.92 (d, J=8.8Hz, 2H).
(2)前記(1)で得られた2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾチアゾール135mg、1M塩酸エタノール溶液3mLを混合し、約70℃で1時間攪拌した。反応液に水および飽和炭酸水素ナトリウム水を投入し室温で30分攪拌したあと、減圧ろ過、水洗浄、減圧乾燥により白色の結晶として2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾチアゾール97mgを得た。
1HNMR (CDCl3):δ3.02 (t, J=5.0Hz 2H) δ3.05 (s, 6H), δ3.09 (t, J=5.2Hz 4H), δ4.15 (t, J=5.2Hz, 2H) δ4.18 (t, J=5.0Hz, 2H) δ6.74 (d, J=8.8Hz, 2H), δ7.03 (dd, J=8.8, 2.0Hz, 1H), δ7.32(br.d, J=2.0Hz, 1H), δ7.86 (d, J=9.2Hz, 1H), δ7.91 (d, J=8.4Hz, 2H).
(3)前記(2)で得られた2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾチアゾール70mgをジエチルエーテル3mLに溶解し、室温攪拌下0.1M塩酸エタノール溶液 1.16mLを滴下した。ジエチルエーテル3mLを添加し室温で30分攪拌後、析出した結晶を減圧下にろ過して、ジエチルエーテル掛け洗浄、減圧乾燥し、白色結晶として2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(2−ノナフルオロ−tert−ブトキシエチルアミノ)エトキシ]ベンゾチアゾール塩酸塩68mg(融点218〜221℃)を得た。
1HNMR (CD3OD):δ3.06 (s, 6H), δ3.57 (m, 4H), δ4.40 (t, J=5.0Hz, 2H), δ4.50 (t, J=5.0Hz, 2H), δ6.82 (d, J=8.8Hz, 2H), δ7.17 (dd, J=9.0, 2.6Hz, 1H), δ7.58 (d, J=2.4Hz, 1H), δ7.82 (d, J=8.8Hz, 1H), δ7.86 (d, J=9.2Hz, 2H).
【0094】
〔合成例12〕2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−〔2−(3−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾチアゾール塩酸塩(化合物13)の合成
(1)2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ヒドロキシベンゾチアゾール300mg、N,N−ジメチルホルムアミド10mL、2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシエタノール636mg、トリフェニルホスフィン641mgを仕込み,攪拌下氷水浴にて冷却した。次いで、1.9Mジイソプロピルアゾジカルボキシレートトルエン溶液1.35mLを滴下し,室温下に約2時間攪拌したあと、水を加えて酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテル15mLを加え分散したあと、減圧ろ過、ジエチルエーテル掛け洗浄、減圧乾燥により2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ]ベンゾチアゾール429mgを得た。
1HNMR (CDCl3):δ2.40 (s, 3H), δ3.06 (s, 6H), δ3.79 (t, J=4.6Hz, 2H), δ3.82 (t, J=4.6Hz, 2H), δ4.11 (t, J=4.8Hz, 2H), δ4.22 (t, J=4.6Hz, 2H), δ6.75 (d, J=8.8Hz, 2H), δ7.02 (dd, J=8.8, 2.4Hz, 1H) δ7.29 (m, 3H), δ7.80 (d, J=8.4Hz, 2H), δ7.85 (d, J=8.8Hz, 1H), δ7.91 (d, J=8.0Hz, 2H).
(2)前記(1)で得られた2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−(2−p−トルエンスルホニルオキシエトキシ)エトキシ]ベンゾチアゾール116mg,N,N−ジメチルホルムアミド5mL、3−トリフルオロメトキシベンジルアミン87mg、炭酸カリウム125mgを仕込み約40℃で3時間攪拌後、室温に戻し165時間攪拌した。反応液に水を加えたあと、酢酸エチル抽出、水洗浄、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムによる乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(酢酸エチル)により精製して白色結晶の2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−[2−(3−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)エトキシ]エトキシ]ベンゾチアゾール33mgを得た。
1HNMR (CDCl3):δ2.84 (t, J=5.2Hz 2H), δ3.05 (s, 6H), δ3.70 (t, 5.0Hz, 2H), δ3.83 (s, 2H), δ3.86 (t, J=4.8Hz, 2H), δ4.19 (t, J=4.8Hz, 2H), δ6.74 (d, J=8.8Hz, 2H), δ7.04 (dd, J=9.0, 2.6Hz 1H) δ7.09 (d, J=8.0Hz, 1H), δ7.21 (d, J=8.0Hz, 1H), δ7.24(d, J=8.0Hz, 1H), δ7.33 (m, 2H) , δ7.84 (d, J=9.2Hz, 1H) , δ7.90 (d, J=8.8Hz, 2H).
(3) 前記(2)で得られた2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−〔2−(3−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾチアゾール30mgをジエチルエーテル3mLに溶解し、室温攪拌下0.1M塩酸エタノール溶液 0.51mLを滴下した.室温で30分攪拌後、析出した結晶を減圧下にろ過して,ジエチルエーテル掛け洗浄,減圧乾燥し,淡黄色結晶として2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−〔2−(3−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾチアゾール塩酸塩18mg(融点:206〜212℃)を得た。
1HNMR (d6DMSO):δ3.00 (s, 6H), δ3.14 (br.s, 2H), δ3.79 (t, J=5.2Hz, 2H), δ3.83 (t, J=4.4Hz, 2H), δ4.22 (m, 4H), δ6.80 (d, J=8.8Hz, 2H), δ7.05 (dd, J=9.0, 2.6Hz, 1H) δ7.40 (br.d, J=6.4Hz, 1H), δ7.55 (m, 3H), δ7.63 (d, J=3.2Hz, 1H), δ7.81 (m, 3H) , δ9.16 (br.s, 2H).
【0095】
〔合成例13〕2−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−[2−〔2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジルメチルアミノ)エトキシ〕エトキシ]ベンゾチアゾール塩酸塩(化合物14)の合成
前記合成例12(2)において、3−トリフルオロメトキシベンジルアミンの代わりに
2−(5−トリフルオロメチル)ピコリルアミンを使用し、得られた生成物を同(3)に使用した以外は前記合成例12と同様の方法で標記化合物(14)を黄色結晶(融点:182〜186℃)として得た。
【0096】
1HNMR (CD3OD):δ3.05 (s, 6H), δ3.40 (t, J=5.0Hz, 2H), δ3.94 (t, J=4.8Hz, 2H), δ3.96 (tt, J=8.4, 1.6Hz 2H), δ4.27 (tt, J=4.4, 1.6Hz, 2H), δ4.54 (s, 2H) δ6.82 (d, J=7.2Hz, 2H), δ7.08(dd, J=9.0, 2.6Hz, 1H) δ7.49 (d, J=2.4Hz, 1H), δ7.58 (d, J=8.0Hz, 1H), δ7.76 (d, J=8.8Hz, 1H), δ7.84 (d, J=7.6Hz, 2H), δ8.14 (dd, J=8.0, 1.6Hz, 1H), δ8.91 (s, 1H).
〔試験例1〕
化合物(1)、(4)、(7)、(10)及び(11)の各2mg/mlのDMSO溶液を調製した後、各々100μlを量りとり、0.3%-Triton X100含有100mM-ホスフェートバッファー(pH7.4)(以下PBS−T)を加えて4mlの試験溶液とした(薬液濃度:50μg/ml)。
アルツハイマー症例のヒト脳組織固定標本(20μm厚)を2%スキムミルク入りPBS−T液中に室温で1時間浸漬した後、マウス抗ヒトアミロイドβモノクローナル抗体(4G8,Signet社)と4℃で一晩反応させた。ついで本検体をPBS-Tで10分間3回洗浄した後、遮光のうえAlexa647抗マウスIgG抗体(MolecularProbes社)と室温で4時間反応させた。4時間後、切片を取り出し上記試験溶液中に移し、遮光下に室温で1時間浸漬した後、PBS−Tで5分間3回洗浄した。更に50mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)で5分間洗浄後、グリセロール封入を行なったものを検体とし倒立型蛍光顕微鏡(IX70、オリンパス)にてアミロイドβ蛋白への化合物の結合能を観察した。尚、化合物像はDAPIフィルターで、アミロイドβ蛋白像はCy5フィルターで測定した。又、陰性対照試験として0.1%−DMSO含有PBS-T溶液を用いて同染色処理を行なった。
図1及び図2にアルツハーマー病患者の死後脳側頭葉皮質切片における本発明化合物の蛍光染色像と抗アミロイドβ抗体による老人斑の染色像を示す。左列は化合物(DAPI)の染色像、右列はアミロイドβ抗体の染色像を示す。本発明化合物は老人斑を形成するアミロイドβ蛋白と親和性を有し、同一位置に染色を認めた。尚、陰性対照では老人斑特異的な蛍光染色像は認められなかった。
尚、他化合物も同様にアミロイドβ蛋白と高い親和性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の化合物は、アミロイドβ蛋白に対する親和性が高く、19F−MRIの検出に不可欠な等価なフッ素原子を多く含むためMRI造影剤として機能し、医療機関に広く普及しているMRI装置を用いてアルツハイマー病をはじめとするアミロイド蓄積性疾患の生前非侵襲的診断に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】アルツハイマー病患者の死後脳側頭葉皮質切片の染色像。
【図2】アルツハイマー病患者の死後脳側頭葉皮質切片の染色像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC1〜6アルキルであり、XはO又はSであり、mは0又は1であり;A及びAのどちらか一方は水素原子であり、もう一方は
【化2】

であり、Jは、
【化3】

であり、nは0〜5の整数であり、Qは、
【化4】

であり、Rは水素原子、フッ素原子、メチル又はトリフルオロメチルであり、Rはトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又は
【化5】

であり、Rは水素原子、フッ素原子、水酸基、メチル又はトリフルオロメチルであり、Yは、CH、CR又はNであり、pは1〜4の整数である。但し、Aが水素原子であり、Aが、
【化6】

であり、JがJ−1又はJ−2であり、QがQ−5であり、Rがトリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシであり、mが1である場合は除く)で表されるアニリン誘導体又はその塩。
【請求項2】
mが0である、請求項1に記載のアニリン誘導体又はその塩。
【請求項3】
mが1である、請求項1に記載のアニリン誘導体又はその塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアニリン誘導体又はその塩を有効成分とするアミロイドβ蛋白が蓄積する疾患の画像診断薬。
【請求項5】
アミロイドβ蛋白が蓄積する疾患がアルツハイマー病である請求項4に記載の画像診断薬。
【請求項6】
画像診断がMRIである請求項4又は5記載の画像診断薬。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の画像診断薬を用いる、蛋白のβシート構造が病因又は病因の一部となる疾患の診断方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアニリン誘導体又はその塩を有効成分とする脳をはじめとする組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑の染色薬。
【請求項9】
請求項8に記載の染色薬を用いて組織中のアミロイドβ蛋白又は老人斑を染色する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−67762(P2009−67762A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240901(P2007−240901)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】