移動体通信端末の試験システム及び試験方法

【課題】時間のかかるステップアッテネータの減衰量の切替をすることなく、レベルが変化するRFの試験信号を試験対象の移動体通信端末に入力する試験を行うようにした試験システム及び試験方法を提供する。
【解決手段】レベル制御部が制御可能なレベル範囲及びステップアッテネータの減衰量に基づいて導出される試験信号のレベル可変範囲が、ステップアッテネータのそれぞれの減衰量毎に対応付けられたレベル対応情報を記憶し、このレベル対応情報を参照して、試験における試験信号のレベルの最大値及び最小値を含むレベル可変範囲に対応した減衰量を選択し、この選択された減衰量のみをステップアッテネータの減衰量として設定し、レベル制御部を制御して試験信号のレベルを変化させて、試験を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の移動体通信端末に、RFの試験信号をレベルを変化させて入力することにより、この移動体通信端末の試験を行う試験システム及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)やLTE(Long Term Evolution)といった通信方式で通信を行う移動体通信端末に対して、通信が正常に行えることを試験するための試験システムが知られている。(例えば、特許文献1)
図5に、従来の試験システムの一例を示す。試験システム100は、移動体通信端末2のアンテナ端子と同軸ケーブル90で接続され、この同軸ケーブル90を介して、RFの試験信号を移動体通信端末2に入力するとともに、移動体通信端末2からのRF信号を受けて、このRF信号を解析したり、このRF信号を復調及び復号して得られる通信データを解析したりして、移動体通信端末2の試験を行う。この試験システム100は、全体制御装置110、擬似基地局装置120、信号解析装置40、信号発生装置50、結合器60、分配器70を含んで構成されている。
【0003】
全体制御装置110は、擬似基地局装置120、信号解析装置40、信号発生装置50とGP−IBまたはイーサネット(登録商標)により接続されており、これらの装置をリモート制御し、各装置に対して、試験に必要な設定を行い、動作の開始や終了を指示する。また、信号や通信データの解析結果を各装置から収集して表示する。
【0004】
擬似基地局装置120は、実際の基地局の動作を模擬し、所定の通信方式で移動体通信端末2と通信を行う。以下、擬似基地局装置120を構成する各部について説明する。送信部22は、移動体通信端末2に送信するためのRF信号を出力する。受信部28は、移動体通信端末2からのRF信号を受信し、ベースバンド信号に周波数変換して復調する。方向性結合器27は、送信部22からのRF信号を受けて、試験システム100内のRF信号経路80に出力するとともに、移動体通信端末2が出力したRF信号をこのRF信号経路80から受けて、受信部28に出力する。通信データ処理部29は、受信部28が復調した受信データを受けて処理するとともに、移動体通信端末2に送信すべき送信データを送信部22に出力する。疑似基地局制御部121は、全体制御装置110からの指示に基づき、擬似基地局装置120内の各部を制御するとともに、移動体通信端末2との通信結果を通信データ処理部29から受けて、全体制御装置110に送出する。
【0005】
さらに、送信部22の構成について説明する。BB信号生成部23は、通信データ処理部29から出力される送信データに基づいて、デジタルのIQのベースバンド信号を生成する。レベル制御部24は、このベースバンド信号のレベルを制御する。レベル制御部24は、−10dBmから−40dBmの範囲で、0.1dBステップでデジタルのIQのベースバンド信号のレベルを制御可能である。レベル制御部24は、デジタルのIQのベースバンド信号のデータに、所望のレベルに対応した定数を乗算することにより、このレベルの制御を実現している。周波数変換部25は、レベル制御されたデジタルのIQのベースバンド信号をD/A変換して直交変調するとともに、RF信号に周波数変換する。ATT26は、0dBから100dBの範囲で5dBステップで減衰量を可変するステップアッテネータであり、設定された減衰量分、RF信号を減衰して出力する。ATT26は、例えば、5dB、10dB、20B、40dBといった減衰量の異なる複数の固定抵抗を、個別に切り替えて組み合わせることにより、所望の減衰量が得られるようになっている。
【0006】
ここで、レベル制御部24は、細かなステップで高速にレベル制御が可能であるが、レベル可変範囲が狭い特性となっている。対して、ATT26は、減衰量のステップが粗く、減衰量の切替に時間がかかるが、減衰量の可変範囲が広い特性となっている。送信部22は、レベル制御部24とATT26とを組み合わせて制御することにより、RF信号のレベルを制御している。なお、擬似基地局制御部121は、全体制御装置110からRF信号の送信レベルや周波数の指示を受けて、レベル制御部24に対するレベルの設定、周波数変換部25に対する周波数の設定、ATT26に対する減衰量の設定を行っている。
【0007】
信号解析装置40は、分配器70を介して移動体通信端末2からのRF信号を受けて、このRF信号のレベルや周波数特性を解析する。信号解析装置40を用いて行う試験としては、例えば隣接チャネル漏洩電力比測定(Adjacent Channel Leakage Ratio : ACLR)がある。
【0008】
信号発生装置50は、例えば、妨害波を含むRF信号を移動体通信端末2に入力し、移動体通信端末2が正常に受信可能か否かの試験を行う場合に用いられる。この場合、信号発生装置50は、所定のレベル及び所定の周波数の妨害波の信号を出力する。
【0009】
結合器60は、擬似基地局装置120からのRF信号と信号発生器50からの信号とを結合して、移動体通信端末2に向けて出力するとともに、移動体通信端末2からのRF信号を擬似基地局装置120に向けて出力する。また、分配器70は、擬似基地局装置120からのRF信号を移動体通信端末2に向けて出力するとともに、移動体通信端末2からのRF信号を擬似基地局装置120と信号解析装置40とに分配して出力する。
【0010】
擬似基地局装置120から同軸ケーブル90までのRF信号経路80には、不図示のフィルタや経路切替スイッチが備えられている。フィルタは、精度の高い試験を行うために、RF信号から試験に関係のない不要な周波数成分を除去するのに用いられ、複数種類のフィルタが選択可能にされている。また、経路切替スイッチは、このフィルタの選択を行ったり、擬似基地局装置120や移動体通信端末2からのRF信号が、結合器60、分配器70を経由するかしないかを切り替えている。経路切替スイッチは、試験項目や試験条件に適合したRF信号経路80を構成するように、全体制御装置110から制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−61749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
試験項目の1つとして、擬似基地局装置120から移動体通信端末2に入力するRFの試験信号のレベルを、所定のステップ(例えば1dB)ずつ変化させ、移動体通信端末2が正常に受信を継続できるか否かを試験するものがある。図6(A)は、このような移動体通信端末2の受信特性試験における試験信号レベルの時間変化をグラフに示したものである。擬似基地局装置120から出力される試験信号は、グラフに実線で示すように、最大値Aから最小値Bまで、レベルを所定ステップずつ下げていくようになっている。あるいは逆に、グラフに点線で示すように、最小値Bから最大値Aまで、レベルを所定ステップずつ上げていくようになっている。
【0013】
しかしながら、このようにレベルを変化させている途中で、擬似基地局装置120のATT26の減衰量の切替が発生すると、図6(B)に示すように、ATT26の切替時間の分だけ、試験時間が余分にかかってしまう。これは、前述のように、レベル制御部24によるレベル制御が高速であるのに対し、ATT26の減衰量の切替は時間がかかるためである。
【0014】
本発明は、以上のような課題に対し、移動体通信端末の試験を短時間で行うために、時間のかかるステップアッテネータの減衰量の切替をすることなく、レベルが変化するRFの試験信号を試験対象の移動体通信端末に入力する試験を行うようにした試験システム及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明の試験システムは、デジタルのベースバンド信号を生成するBB信号生成部(23)と、このベースバンド信号のレベルを所定のレベル範囲で制御するレベル制御部(24)と、このレベル制御されたベースバンド信号をD/A変換するとともにRF信号に周波数変換する周波数変換部(25)と、複数の減衰量を設定可能にされ、前記RF信号を設定の減衰量分減衰して試験信号として出力するステップアッテネータ(26)とを備え、前記レベル制御部及び前記ステップアッテネータによりレベルが制御された前記試験信号を試験対象の移動体通信端末(2)に送出する疑似基地局装置(20)と、前記試験信号のレベルを変化させて前記移動体通信端末に送出する試験を行うために、前記疑似基地局装置を制御する全体制御装置(10)とを有する試験システムであって、前記全体制御装置は、前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、当該レベル範囲及び当該減衰量に基づいて導出される前記試験信号のレベル可変範囲とが、前記ステップアッテネータのそれぞれの減衰量毎に対応付けられたレベル対応情報を予め記憶するレベル対応情報記憶部(13)と、前記レベル対応情報を参照して、前記試験における試験信号のレベルの最大値及び最小値を含む前記レベル可変範囲に対応した減衰量を選択するレベル設定部(14)とを備え、前記選択された減衰量のみを前記ステップアッテネータの減衰量として設定したのち、前記レベル制御部を制御して前記試験信号のレベルを変化させて、前記試験を行うことを特徴とする。
また、本発明の試験システムは、前記レベル対応情報記憶部は、前記疑似基地局装置から前記移動体通信端末に至る経路の損失である経路ロスを記憶し、前記レベル可変範囲は、前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、前記経路ロスとに基づいて導出される構成であってもよい。
また、本発明の試験システムは、前記全体制御装置は、前記試験を行うために、前記試験信号のレベルに関する情報を含む前記擬似基地局装置の制御情報と前記擬似基地局装置が前記移動体通信端末と通信する通信メッセージとが時系列のシーケンスとして記憶されたシナリオを記憶するシナリオ記憶部(11)と、前記シナリオ記憶部から読み出した前記シナリオに従って、前記疑似基地局装置を制御するシナリオ処理部(12)とを備え、前記レベル設定部は、前記シナリオ処理部が読み出したシナリオから前記試験信号のレベルに関する情報を抽出して試験信号レベルの最大値及び最小値を検出し、この検出した試験信号レベルの最大値及び最小値に基づいて前記1つの減衰量を選択し、この選択した減衰量における、前記抽出した試験信号のレベルに関する情報に対応して前記レベル制御部を制御するための定数を決定し、この定数と前記選択した減衰量との組合せの情報を前記シナリオ処理部に送出し、前記シナリオ処理部は、前記読み出したシナリオの前記試験信号のレベルに関する情報を前記レベル設定部から受けた前記組合せの情報に置き換えて、前記疑似基地局装置を制御する構成であってもよい。
また、本発明の試験方法は、デジタルのベースバンド信号を生成するBB信号生成部(23)と、このベースバンド信号のレベルを所定のレベル範囲で制御するレベル制御部(24)と、このレベル制御されたベースバンド信号をD/A変換するとともにRF信号に周波数変換する周波数変換部(25)と、複数の減衰量を設定可能にされ、前記RF信号を設定の減衰量分減衰して試験信号として出力するステップアッテネータ(26)とを備え、前記レベル制御部及び前記ステップアッテネータによりレベルが制御された前記試験信号を試験対象の移動体通信端末(2)に送出する疑似基地局装置(20)と、前記疑似基地局装置を制御する全体制御装置(10)とを用いて、前記試験信号のレベルを変化させて前記移動体通信端末に送出する試験を行う試験方法であって、前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、当該レベル範囲及び当該減衰量に基づいて導出される前記試験信号のレベル可変範囲とが、前記ステップアッテネータのそれぞれの減衰量毎に対応付けられたレベル対応情報を記憶するレベル対応情報記憶段階と、前記レベル対応情報を参照して、前記試験における試験信号のレベルの最大値及び最小値を含む前記レベル可変範囲に対応した減衰量を選択する減衰量選択段階と、前記選択された減衰量のみを前記ステップアッテネータの減衰量として設定した場合に、前記レベル制御部を制御するための定数を決定する定数決定段階と、前記決定された定数及び前記選択された減衰量によってレベルが制御された前記試験信号を前記移動体通信端末に送出して前記試験を行う試験実行段階とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の試験方法は、前記レベル対応情報記憶段階は、前記疑似基地局装置から前記移動体通信端末に至る経路の損失である経路ロスを記憶し、前記レベル可変範囲は、前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、前記経路ロスとに基づいて導出されるようになっていてもよい。
また、本発明の試験方法は、前記試験を行うために、前記試験信号のレベルに関する情報を含む前記擬似基地局装置の制御情報と前記擬似基地局装置が前記移動体通信端末と通信する通信メッセージとが時系列のシーケンスとして記憶されたシナリオを記憶するシナリオ記憶段階と、前記記憶したシナリオを読み出すシナリオ読出段階と、前記減衰量選択段階を行うために、前記読み出したシナリオから前記試験信号のレベルに関する情報を抽出して試験信号レベルの最大値及び最小値を検出する検出段階と、前記読み出したシナリオの前記試験信号のレベルに関する情報を、前記決定された定数及び前記選択された減衰量の情報に置き換える置換段階とを備え、前記試験実行段階は、前記置換段階で情報が置き換えられたシナリオに従って前記試験を行うようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の試験システム及び試験方法は、試験における試験信号のレベルの最大値及び最小値を含むレベル可変範囲に対応した減衰量のみをステップアッテネータの減衰量として設定し、レベル制御部を制御して試験信号のレベルを変化させて、試験を行う構成としている。このため、レベルが変化するRFの試験信号を移動体通信端末に入力する試験を行う際に、時間のかかるステップアッテネータの減衰量の切替をすることがなくなり、移動体通信端末の試験を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のブロック図
【図2】所定の試験項目におけるシナリオの例
【図3】所定の試験項目におけるレベル対応情報の例
【図4】本発明の実施形態のフローチャート
【図5】従来の試験システムのブロック図
【図6】試験信号のレベルの時間変化を示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の試験システム1の構成を示している。試験システム1は、全体制御装置10、擬似基地局装置20、信号解析装置40、信号発生装置50、結合器60、分配器70を含んで構成されている。なお、図5に示した従来の試験システム100と同一の構成のものには同一の付番を付し、適宜、説明を省略する。
【0019】
全体制御装置10は、試験システム1内の各装置とGP−IBまたはイーサネット(登録商標)により接続されており、これらの装置をリモート制御し、各装置に対して、試験に必要な設定を行い、動作の開始や終了を指示する。また、信号や通信データの解析結果を各装置から収集して表示する。全体制御装置10は、シナリオ記憶部11、シナリオ処理部12、レベル対応情報記憶部13、レベル設定部14を含んで構成されている。
【0020】
シナリオ記憶部11は、試験項目毎に異なるシナリオを記憶している。試験項目は、移動体通信端末が採用する通信方式の試験規格として定められていたり、移動体通信端末のメーカが独自に定めていたりするものである。シナリオとは、試験システム1が、対応する試験項目を実施する際、必要な設定や動作のシーケンスを記述したものである。図2に、所定の試験項目におけるシナリオの一例を示す。図2において、シナリオには、「試験項目名」、「各装置の設定」、「各装置の制御及び通信のシーケンス」の情報が記述されている。
【0021】
「試験項目名」は、試験項目を識別するための情報である。「各装置の設定」は、この試験項目に対応した試験システム1内の各装置及び各部への設定情報であり、全体制御装置10は、この設定情報に従ってリモート制御先の装置を設定する。例えば、全体制御装置10は、この設定情報に従って、擬似基地局装置20に、通信方式(W−CDMAまたはLTE)やRF信号の中心周波数(周波数変換部25に用いる)を指示し、信号解析装置40に測定項目、測定周波数範囲を指示し、信号発生装置50に発生する信号の種別、レベル、周波数を指示し、RF信号経路80の切替スイッチ(不図示)を切り替える。
【0022】
「各装置の制御及び通信のシーケンス」は、この試験項目の試験を実行する際の、各装置の制御の情報と、移動体通信端末2と通信するための擬似基地局装置20の送信メッセージとが、時系列に記述されている。全体制御装置10は、これに従い、擬似基地局装置20に移動体通信端末2と通信させ、信号解析装置40に測定を行わせ、信号発生装置50に信号を出力させ、各装置から解析結果を収集する。
【0023】
シナリオ処理部12は、試験者が指定した試験項目に対応するシナリオを、シナリオ記憶部11から読み出す。そして、読み出したシナリオに記述された設定やシーケンスを順次実行する。また、シナリオ処理部12は、レベル設定部14からレベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報を受けて、シナリオの元の試験信号レベルの制御情報と置き換える。この置き換えられたレベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報は、シナリオに記述されたシーケンスに従ったタイミングで、全体制御装置10から擬似基地局装置20に送出される。
【0024】
レベル対応情報記憶部13には、レベル対応情報が試験項目別にテーブル形式で記憶されている。図3に、所定の試験項目におけるレベル対応情報の一例を示す。レベル対応情報とは、擬似基地局装置20内のレベル制御部24のレベル制御範囲の最大値と最小値、擬似基地局装置20内のATT26の各ステップの減衰量、RF信号経路80及び同軸ケーブル90により生じるRF信号の損失を表わす経路ロス、これらの値から導出される試験信号レベル可変範囲の最大値と最小値、各対応情報を追番で識別するための設定番号Nの各項目が対応付けられた情報である。
【0025】
レベル制御部24のレベル制御範囲は、擬似基地局装置20の性能として予め決まっており、−10dBmから−40dBmまでの30dBの制御範囲を有している。ATT26の減衰量は、擬似基地局装置20の性能として予め決まっており、0dBから100dBまで5dBステップでの設定範囲を有し、レベル対応情報には、このステップ毎の減衰量が記憶されている。
【0026】
経路ロスは、試験項目毎に値が異なる。これについて説明すると、結合器60、分配器70、前述のフィルタ(不図示)にはそれぞれ損失があり、前述の切替スイッチ(不図示)によって、これらがRF信号経路80に含まれるか否かが変わる。この切替は、所定の試験項目に適した構成となるように、全体制御装置からの指示により行われる。従って、試験項目毎にRF信号経路80の構成及び損失が異なり、そのため、試験項目毎に経路ロスの値が異なる。従って、レベル対応情報記憶部13は、試験項目毎にレベル対応情報を記憶している。なお、経路ロスには、同軸ケーブル90の損失も含まれている。経路ロスは、試験システムの設計段階で算出された設計値、もしくは試験システムの製造検査時に実測された実測値が記憶される。
【0027】
試験信号レベル可変範囲は、ATT26の各減衰量毎に、試験対象の移動体通信端末2の入力端において供給可能な試験信号レベルの最大値と最小値を示している。例えば、図2の設定番号N=2において、レベル制御部24の出力レベルの最大値は−10dBm、それがATT26により5dB減衰され、経路ロスによりさらに10dB減衰されて、移動体通信端末2の入力端における試験信号レベルは−25dBmとなる。つまり、「移動体通信端末2の入力端における試験信号レベル」=「レベル制御部24の出力レベル」−「ATT26の減衰量」−「経路ロス」の式によって算出される。これに従い、各設定番号Nそれぞれについて、移動体通信端末2の入力端において供給可能な試験信号レベルの最大値と最小値が決定されて記憶されている。。
【0028】
レベル設定部14は、シナリオ処理部12がシナリオ記憶部11から読み出したシナリオから、試験信号レベルに関する情報を抽出し、その抽出した試験信号レベルの最大値及び最小値を検出し、レベル対応情報記憶部13を参照して、この試験信号レベルの最大値に対応したATT26の減衰量を決定する。また、レベル設定部14は、シナリオから抽出した試験信号レベルのそれぞれについて、その試験信号レベルに対応したレベル制御部24の定数及びATT26の減衰量を決定して、シナリオ処理部12に送出する。
【0029】
レベル設定部14の動作について、図2及び図3を元に、具体的に説明する。シナリオ処理部12がシナリオ記憶部11から読み出した図2のシナリオには、試験信号レベルの設定を示す3つのシーケンス、「試験信号レベル=−27dBm」、「試験信号レベル=−32dBm」、「試験信号レベル=−47dBm」が記述されている(図2は途中のシーケンスを省略しているので、実際にはもっと多くのシーケンスがある)。レベル設定部14は、これらの情報を抽出し、この中で、試験信号のレベルの最大値=−27dBmと、最小値=−47dBmを検出する。
【0030】
レベル設定部14は、レベル対応情報記憶部13を参照して、この試験項目に対応した図3のレベル対応情報の試験信号レベル可変範囲を確認する。このシナリオの試験信号レベルの最大値=−27dBmをレベル可変範囲に含む設定は、設定番号N=1及び2である。N=3の場合は、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値=−30dBmであるから、シナリオの試験信号レベルの最大値よりも小さいので、適合しない。ここで、試験信号のSN比を考慮すると、レベル制御部24から大きなレベルで出力して、ATT26で減衰させるようにするのが好ましい。従って、設定番号N=1及び2のうち、設定番号N=2を選択する。そして、図3のレベル対応情報では、N=2におけるATT減衰量=5dBであるから、ATT26の第1の減衰量=5dBと決定する。
【0031】
また、レベル設定部14は、N=2におけるレベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最小値を確認する。この場合、シナリオの試験信号のレベルの最小値=−47dBmは、N=2におけるレベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最小値=−55dBmよりも大きい。従って、ATT26の第1の減衰量=5dBと決定することで、このシナリオにおける試験信号のレベル制御は、ATT26の減衰量を切り替えずに、レベル制御部24の制御のみで行えることになる。
【0032】
なお、シナリオの試験信号のレベルの最小値が、その設定番号Nにおけるレベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最小値よりも小さい場合は、ATT26の減衰量の切替が必要となる。このため、シナリオから検出した試験信号の最大値から最小値までのレベルを、第1の減衰量における試験信号レベル可変範囲との組合せでカバーするように、異なる設定番号Nを決定し、この設定番号NにおけるATT減衰量をレベル対応情報から読み取り、このATT減衰量をATT26に設定する第2の減衰量として決定する。つまり、シナリオから検出した試験信号の最大値から最小値までのレベルのうち、レベルの大きい範囲は、ATT26を第1の減衰量に設定してレベル制御部24でレベルを可変させ、レベルの小さい範囲は、ATT26を第2の減衰量に設定してレベル制御部24でレベルを可変させる。なお、シナリオから検出した試験信号のレベルを、2つのATT減衰量を用いてもカバーできない場合は、3つ以上のATT減衰量を用いてカバーする。
【0033】
また、レベル設定部14は、シナリオから抽出した試験信号レベルのそれぞれについて、その試験信号レベルに対応したレベル制御部24の定数を決定する。すなわち、[レベル制御部24の出力レベル]=[シナリオに記述された試験信号レベル]+[経路ロス]+[決定したATT減衰量]の演算式により、レベル制御部24が制御して出力すべきレベルを求め、それに対応した定数を決定する。そして、レベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報を、シナリオ処理部12に送出する。
【0034】
擬似基地局装置20の疑似基地局制御部21は、全体制御装置10からの指示に基づき、擬似基地局装置20内の各部を制御するとともに、移動体通信端末2との通信結果を通信データ処理部29から受けて、全体制御装置10に送出する。ここで、疑似基地局制御部21は、レベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報を全体制御装置10から受けると、それに従ってレベル制御部24とATT26とを設定する。
【0035】
次に、本発明の試験システム1の動作について、図4のフローチャートにより説明する。試験者が全体制御装置10に所望の試験項目を指定すると、シナリオ処理部12は、シナリオ記憶部11から指定された試験項目に対応するシナリオを読み出す(S1)。レベル設定部14は、シナリオ処理部12が読み出したシナリオから、試験信号レベルに関する情報を抽出し、その抽出した試験信号レベルの最大値及び最小値を検出する(S2)。
【0036】
レベル設定部14は、レベル対応情報記憶部13を参照して、所望の試験項目に対応したレベル対応情報の、設定番号N=1における試験信号レベル可変範囲の最大値を確認する(S3)。そして、レベル設定部14は、シナリオから検出した試験信号レベルの最大値と、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値とを比較する(S4)。比較の結果、シナリオから検出した試験信号レベルの最大値が、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値よりも小さい場合は、設定番号Nの値を1増加させて(S5)、その増加させた設定番号Nにおけるレベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値を用いて、再度比較を行う。
【0037】
比較の結果、シナリオから検出した試験信号レベルの最大値が、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値よりも大きい場合は、このときの設定番号Nよりも1だけ小さい設定番号NaにおけるATT減衰量をレベル対応情報から読み取り、このATT減衰量をATT26に設定する第1の減衰量として決定する(S6)。つまり、シナリオから検出した試験信号レベルの最大値と、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値との比較を、設定番号N=1から順次行い、シナリオから検出した試験信号レベルの最大値が、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最大値を超過したら、直前の設定番号NにおけるATT減衰量を用いるようにしている。
【0038】
また、レベル設定部14は、シナリオから検出した試験信号レベルの最小値と、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最小値とを比較する(S7)。この比較の結果、シナリオから検出した試験信号レベルの最小値が、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最小値よりも大きい場合は、ATT26の切替が不要となる。
【0039】
また、比較の結果、シナリオから検出した試験信号レベルの最小値が、レベル対応情報の試験信号レベル可変範囲の最小値よりも小さい場合は、ATT26の切替が必要となる。この場合、レベル設定部14は、シナリオから検出した試験信号の最大値から最小値までのレベルを、設定番号Naにおける試験信号レベル可変範囲との組合せでカバーするような設定番号Nbを決定し、この設定番号NbにおけるATT減衰量をレベル対応情報から読み取り、このATT減衰量をATT26に設定する第2の減衰量として決定する(S8)。
【0040】
このようにして、ATT26に設定する減衰量を決定したら、レベル設定部14は、レベル制御部24に設定する定数を決定する(S9)。レベル設定部14は、決定したレベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報をシナリオ処理部12に送出する。シナリオ処理部12は、読み込んだシナリオの試験信号レベルに関する情報を、この組合せの情報に置き換える(S10)。
【0041】
そして、シナリオ処理部12は、シナリオのシーケンスを実行する(S11)。ここで、例えば図2のシーケンスにおける「試験信号レベル=−27dBm」の試験信号レベルに関する情報は、レベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報に置き換わっているので、全体制御装置10から擬似基地局装置20には、レベル制御部24の定数とATT26の減衰量との組合せの情報が送られる。この情報を受けた擬似基地局装置20の疑似基地局制御部21は、ATT26にこの減衰量を設定してレベル制御部24にこの定数を設定し、試験信号を出力する。擬似基地局装置20から出力された試験信号は、RF信号経路80及び同軸ケーブル90を通過して、移動体通信端末2に入力される。この際、RF信号経路80及び同軸ケーブル90により、レベル対応情報の経路ロス分、試験信号は減衰される。図2のシーケンスにおける、「試験信号レベル=−32dBm」、「試験信号レベル=−47dBm」についても、それぞれ対応する減衰量と定数との組合せの情報に置き換えられており、それらの情報が擬似基地局装置20に送られて設定される。なお、ATT26に減衰量を設定する際、直前の減衰量と同じ設定であれば、ATT26の減衰量の切替は行われない。
【0042】
このように、試験信号のレベルについて、シナリオに試験対象の移動体通信端末2に入力すべきレベルを記述しておけば、全体制御装置10が、そのレベルに対応し且つATT26の切替が極力発生しないようなレベル設定を決定する。このため、移動体通信端末2の試験を短時間で行うことができる。それとともに、シナリオ作成者は、経路ロスを考慮して疑似基地局装置20の信号出力レベルを決定してシナリオに記載する必要がなくなり、シナリオの作成が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の試験システム及び試験方法は、不要なステップアッテネータ切替を無くし、短時間で試験を行うことができるので、移動体通信端末の試験に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1…試験システム、10…全体制御装置、11…レベル対応情報記憶部、12…レベル設定部、13…シナリオ記憶部、14…シナリオ処理部、20…疑似基地局装置、21…疑似基地局制御部、22…送信部、23…BB信号生成部、24…レベル制御部、25…周波数変換部、26…ATT(ステップアッテネータ)、27…方向性結合器、28…受信部、29…通信データ処理部、40…信号解析装置、50…信号発生装置、60…結合器、70…分配器、80…RF信号経路、90…同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルのベースバンド信号を生成するBB信号生成部(23)と、このベースバンド信号のレベルを所定のレベル範囲で制御するレベル制御部(24)と、このレベル制御されたベースバンド信号をD/A変換するとともにRF信号に周波数変換する周波数変換部(25)と、複数の減衰量を設定可能にされ、前記RF信号を設定の減衰量分減衰して試験信号として出力するステップアッテネータ(26)とを備え、前記レベル制御部及び前記ステップアッテネータによりレベルが制御された前記試験信号を試験対象の移動体通信端末(2)に送出する疑似基地局装置(20)と、
前記試験信号のレベルを変化させて前記移動体通信端末に送出する試験を行うために、前記疑似基地局装置を制御する全体制御装置(10)とを有する試験システムであって、
前記全体制御装置は、
前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、当該レベル範囲及び当該減衰量に基づいて導出される前記試験信号のレベル可変範囲とが、前記ステップアッテネータのそれぞれの減衰量毎に対応付けられたレベル対応情報を予め記憶するレベル対応情報記憶部(13)と、
前記レベル対応情報を参照して、前記試験における試験信号のレベルの最大値及び最小値を含む前記レベル可変範囲に対応した減衰量を選択するレベル設定部(14)とを備え、
前記選択された減衰量のみを前記ステップアッテネータの減衰量として設定したのち、前記レベル制御部を制御して前記試験信号のレベルを変化させて、前記試験を行うことを特徴とする試験システム。
【請求項2】
前記レベル対応情報記憶部は、前記疑似基地局装置から前記移動体通信端末に至る経路の損失である経路ロスを記憶し、
前記レベル可変範囲は、前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、前記経路ロスとに基づいて導出されることを特徴とする請求項1の試験システム。
【請求項3】
前記全体制御装置は、
前記試験を行うために、前記試験信号のレベルに関する情報を含む前記擬似基地局装置の制御情報と前記擬似基地局装置が前記移動体通信端末と通信する通信メッセージとが時系列のシーケンスとして記憶されたシナリオを記憶するシナリオ記憶部(11)と、
前記シナリオ記憶部から読み出した前記シナリオに従って、前記疑似基地局装置を制御するシナリオ処理部(12)とを備え、
前記レベル設定部は、前記シナリオ処理部が読み出したシナリオから前記試験信号のレベルに関する情報を抽出して試験信号レベルの最大値及び最小値を検出し、この検出した試験信号レベルの最大値及び最小値に基づいて前記1つの減衰量を選択し、この選択した減衰量における、前記抽出した試験信号のレベルに関する情報に対応して前記レベル制御部を制御するための定数を決定し、この定数と前記選択した減衰量との組合せの情報を前記シナリオ処理部に送出し、
前記シナリオ処理部は、前記読み出したシナリオの前記試験信号のレベルに関する情報を前記レベル設定部から受けた前記組合せの情報に置き換えて、前記疑似基地局装置を制御することを特徴とする請求項1乃至2の試験システム。
【請求項4】
デジタルのベースバンド信号を生成するBB信号生成部(23)と、このベースバンド信号のレベルを所定のレベル範囲で制御するレベル制御部(24)と、このレベル制御されたベースバンド信号をD/A変換するとともにRF信号に周波数変換する周波数変換部(25)と、複数の減衰量を設定可能にされ、前記RF信号を設定の減衰量分減衰して試験信号として出力するステップアッテネータ(26)とを備え、前記レベル制御部及び前記ステップアッテネータによりレベルが制御された前記試験信号を試験対象の移動体通信端末(2)に送出する疑似基地局装置(20)と、
前記疑似基地局装置を制御する全体制御装置(10)とを用いて、前記試験信号のレベルを変化させて前記移動体通信端末に送出する試験を行う試験方法であって、
前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、当該レベル範囲及び当該減衰量に基づいて導出される前記試験信号のレベル可変範囲とが、前記ステップアッテネータのそれぞれの減衰量毎に対応付けられたレベル対応情報を記憶するレベル対応情報記憶段階と、
前記レベル対応情報を参照して、前記試験における試験信号のレベルの最大値及び最小値を含む前記レベル可変範囲に対応した減衰量を選択する減衰量選択段階と、
前記選択された減衰量のみを前記ステップアッテネータの減衰量として設定した場合に、前記レベル制御部を制御するための定数を決定する定数決定段階と、
前記決定された定数及び前記選択された減衰量によってレベルが制御された前記試験信号を前記移動体通信端末に送出して前記試験を行う試験実行段階とを備えたことを特徴とする試験方法。
【請求項5】
前記レベル対応情報記憶段階は、前記疑似基地局装置から前記移動体通信端末に至る経路の損失である経路ロスを記憶し、
前記レベル可変範囲は、前記レベル制御部が制御可能なレベル範囲と、前記ステップアッテネータの減衰量と、前記経路ロスとに基づいて導出されることを特徴とする請求項3の試験方法。
【請求項6】
前記試験を行うために、前記試験信号のレベルに関する情報を含む前記擬似基地局装置の制御情報と前記擬似基地局装置が前記移動体通信端末と通信する通信メッセージとが時系列のシーケンスとして記憶されたシナリオを記憶するシナリオ記憶段階と、
前記記憶したシナリオを読み出すシナリオ読出段階と、
前記減衰量選択段階を行うために、前記読み出したシナリオから前記試験信号のレベルに関する情報を抽出して試験信号レベルの最大値及び最小値を検出する検出段階と、
前記読み出したシナリオの前記試験信号のレベルに関する情報を、前記決定された定数及び前記選択された減衰量の情報に置き換える置換段階とを備え、
前記試験実行段階は、前記置換段階で情報が置き換えられたシナリオに従って前記試験を行うことを特徴とする請求項4乃至5の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106139(P2013−106139A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247678(P2011−247678)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】