説明

移動体通信端末の試験装置及び試験方法

【課題】異なる通信規格の擬似基地局間で行われる通信処理の負担を軽減すること。
【解決手段】通信規格としてLTE方式を用いたLTE擬似基地局部3は、少なくともLTE擬似基地局部3と異なる多元接続方式であるC2Kを通信規格として用いるC2K擬似基地局部4の基地局情報を含む報知情報を試験対象である移動体通信端末10に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力するLTEメッセージ処理部3bと、LTEメッセージ処理部3bから位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する応答メッセージ情報を出力する特定C2Kメッセージ処理部3cとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種通信方式(例えば、CDMA2000、LTE等)の任意の通信方式を採用した移動体通信端末(携帯電話等)の動作試験を行う移動体通信端末の試験装置及び試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの通信方式であるW−CDMA、CDMA2000(CDMA2000 1X、CDMA2000EV−DOを含む、以下、これらを総称して「C2K」という)、GSMを利用した移動体通信端末(携帯電話等)の動作試験を行う疑似基地局装置として、下記特許文献1に開示されるものが知られている。以下、従来の通信方式として、C2Kを例にして説明する。
【0003】
ところで、近年、上述した従来の通信方式であるC2Kに対し、更なる高速データ通信を実現するための次世代の通信方式として、LTE(Long Term Evolution )の開発が進められている。
【0004】
このLTEは、下りにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access :直交周波数分割多元接続) 、上りにSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access :シングルキャリア周波数分割多元接続)を採用し、ピークデータレートが下り方向100Mbps以上、上り方向50Mbps以上(何れも周波数帯域幅が20MHzにおいて)の通信速度を要求条件としており、C2K通信事業者の多くは、将来的にLTEの採用を予定している。
【0005】
しかしながら、通信設備の整備の問題や技術的問題(現状、データ通信にはパケット交換ネットワークを有するLTEが適する一方、電話やSMSは回線交換ネットワークを有する既存のC2Kが適する)があるため、当面はLTEとC2Kを共存させ、徐々にLTEの通信エリアを拡大しながら、最終的にC2Kのサービスを終了させてLTEに移行する方向である。
【0006】
ところで、携帯電話には、LTEとC2Kの通信を同時に行えないものがある。このような、携帯電話の利用に際し、最寄りのLTE基地局とC2K基地局との双方の間で位置登録を行う必要があり、このように異なる通信方式の基地局間の位置登録を行ってスムーズなハンドオーバを行う仕組みが通信規格で規定されている。
【0007】
すなわち、LTE基地局は、C2K基地局の基地局情報を内部的に保持し、携帯電話に対して自身の基地局情報とC2Kの基地局情報とを報知情報として報知できるようになっている。また、LTE基地局は、通信していた携帯電話の位置登録情報を、有線ネットワークを介してC2K基地局に通知できるようになっている。よって、携帯電話は、本来、C2K基地局と行わなければならない位置登録処理をLTE基地局と行うことができ、C2K基地局と携帯電話との間は、呼接続処理を行うだけでよい。
【0008】
このように、LTEとC2Kとが共存期間中に、パケット交換ネットワークにおいて音声通信等の回線交換通信を行いたい場合には、回線交換ネットワークを有する移動通信システムに在圏を移し、回線交換通信を行う方法の一つであるCSFallback(CSFB)を用いることで、LTE基地局とC2K基地局との間でハンドオーバを適宜行ってサービスに応じた基地局と通信することが可能となる。
【0009】
なお、このような異なる通信方式の基地局間における移動体通信端末のハンドオーバ試験を行うための装置としては、例えば下記特許文献2に開示されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−50567号公報
【特許文献2】特開2010−136341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、通信方式の異なる基地局間において、位置登録を含めた強制ハンドオーバ試験を行う場合、実際のLTE基地局とC2K基地局との間で通信が発生する。そのため、実際の通信状態と同じように試験装置内でLTE擬似基地局とC2K擬似基地局との間のハンドオーバ動作を実現しようとした場合、LTE擬似基地局とC2K擬似基地局との間の通信処理の負荷により処理速度が低下するという問題があった。
【0012】
また、実際の基地局装置では、予め決められた通信方式や機能に最適な設計がなされているため、そのような不具合は生じないが、試験装置の擬似基地局では、ユーザが所望する多様な通信方式や機能に対応する必要があり、さらに通信異常時における端末の動作確認のため、実際の基地局装置では通常ありえないような動作ができなければならない場合もある。このため、基地局としての処理能力は、実際の基地局装置よりも擬似基地局の方が劣っており、さらに処理能力を高めるには多大なコストが掛かってしまうという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、位置登録試験やハンドオーバ試験等の異なる通信規格の擬似基地局間で行われる通信処理の負担を軽減することができる移動体通信端末の試験装置及び試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された移動体通信端末の試験装置は、多元接続方式である第1の通信規格と、前記第1の通信規格と異なる多元接続方式である第2の通信規格とを用いて通信可能な移動体通信端末10を試験対象とし、
少なくとも前記第1の通信規格の基地局を模擬する第1の擬似基地局部3を備え、予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って前記移動体通信端末の動作試験を行う移動体通信端末の試験装置1であって、
前記第1の擬似基地局部は、
少なくとも前記第2の通信規格の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力する第1メッセージ処理部3bと、
前記第1メッセージ処理部から前記位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する応答メッセージ情報を出力する特定メッセージ処理部3cと、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載された移動体通信端末の試験装置は、多元接続方式である第1の通信規格を用いた第1の擬似基地局部3と、前記第1の擬似基地局部と異なる多元接続方式である第2の通信規格を用いた第2の擬似基地局部4とを備え、
前記第1の通信規格及び前記第2の通信規格を用いて通信可能な移動体通信端末10を予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って動作試験を行う移動体通信端末の試験装置1であって、
前記第1の擬似基地局部は、
少なくとも前記第2の擬似基地局部の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力する第1メッセージ処理部3bと、
前記第1メッセージ処理部から前記位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力するとともに、前記第2擬似基地局部に対して前記位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力したことを示すステート情報を出力する特定メッセージ処理部3cと、
を備え、
前記第2擬似基地局部は、
前記移動体通信端末と前記第2の擬似基地局部との間でやり取りされるメッセージ情報のメッセージ処理を行う第2メッセージ処理部4bと、
前記特定メッセージ処理部からの前記ステート情報に基づき、前記移動体通信端末の位置登録が完了した状態にステート変更するステートパラメータ管理部4cと、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載された移動体通信端末の試験方法は、多元接続方式である第1の通信規格と、前記第1の通信規格と異なる多元接続方式である第2の通信規格とを用いて通信可能な移動体通信端末10を試験対象とし、
少なくとも前記第1の通信規格の基地局を模擬する第1の擬似基地局部3を備え、予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って前記移動体通信端末の動作試験を行う移動体通信端末の試験装置1であって、
前記第1の擬似基地局部は、
少なくとも前記第2の通信規格の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力するステップと、
前記出力された前記位置登録要求のメッセージ情報に対する応答メッセージ情報を出力するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載に記載された移動体通信端末の試験方法は、多元接続方式である第1の通信規格を用いた第1の擬似基地局部3と、前記第1の擬似基地局部と異なる多元接続方式である第2の通信規格を用いた第2の擬似基地局部4とを備え、
前記第1の通信規格及び前記第2の通信規格を用いて通信可能な移動体通信端末10を予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って動作試験を行う移動体通信端末の試験装置1を用い、
少なくとも前記第2の擬似基地局部の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力するステップと、
前記位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力するとともに、前記第2擬似基地局部に対して前記位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力したことを示すステート情報を出力するステップと、
前記移動体通信端末と前記第2の擬似基地局部との間でやり取りされるメッセージ情報のメッセージ処理を行うステップと、
前記ステート情報に基づき、前記移動体通信端末の位置登録が完了した状態にステート変更するステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動体通信端末の試験装置によれば、位置登録試験のような第1の擬似基地局部であるLTE擬似基地局部と第2の擬似基地局部であるC2K擬似基地局部との間で行われるメッセージ情報のやり取りを極力省略することでトラフィックの軽減が図れ、被試験端末や各擬似基地局部との間のデータ通信速度を速めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第1形態の移動体通信端末の試験装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】同装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】同装置における位置登録試験の処理例を示すシーケンス図である。
【図4】同装置におけるハンドオーバ試験の処理例を示すシーケンス図である。
【図5】本発明に係る第2形態の移動体通信端末の試験装置の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0021】
また、以下に説明する各形態では、本発明の特徴要件が明確となるように、試験対象となる移動体通信端末の位置登録試験やハンドオーバ試験のような異なる通信規格の擬似基地局部間で行われる通信処理の軽減を図るための構成要件についてのみ説明するが、例えば上述した特許文献1,2に記載されるような移動体通信端末における各通信規格に準ずる一般的な動作試験(試験項目の一例としては、CellSelection試験、CellReselection試験等)も実施可能である。
【0022】
[第1形態]
<装置構成>
まず、図1又は図2を参照しながら、第1形態の移動体通信端末の試験装置に関する構成について説明する。
【0023】
図示のように、第1形態の移動体通信端末の試験装置1は、試験対象となる移動体通信端末10(以下、「被試験端末10」ともいう)の各種動作試験を行う試験装置(以下、「移動端末試験装置1」ともいう)であり、被試験端末10との間でそれぞれ送受信される信号(RF信号)を結合及び分配する結合部2と、通信規格としてLTE(Long Term Evolution )方式を用いる基地局として擬似する第1の擬似基地局であるLTE擬似基地局部3と、通信規格としてLTE方式と異なる多元接続方式のCDMA2000(CDMA2000 1X、CDMA2000EV−DOを含む、以下、これらを総称して「C2K」という)を通信方式として用いる基地局として擬似する第2の擬似基地局であるC2K擬似基地局部4と、LTE擬似基地局部3又はC2K擬似基地局部4と被試験端末10との間で実際の接続環境をシュミレーションするための接続先(電話、サーバ、TV電話等)の機能を仮想的に果たすネットワーク仮想部5と、装置を構成する各部の制御を行う統括制御部6と、ユーザによる各種設定が行われる操作部7と、試験結果等を表示する表示部8とを備えて構成されている。
【0024】
なお、移動端末試験装置1と被試験端末10とは、相互間でRF信号により通信しているが、この伝送方式としては、同軸ケーブル等を介して有線で信号を送受信するようにしてもよく、また移動端末試験装置1にアンテナを設け、無線で信号を送受信するようにしてもよい。また、動作試験中は、被試験端末10とLTE擬似基地局部3又はC2K擬似基地局部4の何れかの擬似基地局部とが1対1の関係で通信される。
【0025】
(LTE擬似基地局部)
第1の擬似基地局部であるLTE擬似基地局部3は、LTE側送受信部3aと、LTEメッセージ処理部3bと、特定C2Kメッセージ処理部3cとを備えて構成され、被試験端末10との間でLTEを通信規格として通信を行う擬似基地局として機能している。
【0026】
LTE側送受信部3aは、被試験端末10から結合部2を介して受信したRF入力信号(実行されるシナリオに記述されるシーケンスに従ったメッセージ情報を含む信号)をRF受信処理してLTEメッセージ処理部3bにメッセージ情報を含むデータとして出力している。
【0027】
また、LTE側送受信部3aは、LTEメッセージ処理部3bからメッセージ情報を含むデータを入力すると、このデータをRF送信処理したRF出力信号を被試験端末10に向けて送信している。
【0028】
LTEメッセージ処理部3bは、第1の擬似基地局部における第1メッセージ処理部として機能し、LTEのシナリオに基づき被試験端末10の所定の動作試験を行うべく、後述するシナリオ記憶手段3dに記憶されたシナリオに従って予め選択される仮想接続先と被試験端末10との間のメッセージ処理を行う。
【0029】
具体的には、LTE側送受信部3aで受信した被試験端末10からのメッセージ情報を仮想接続先(仮想電話、仮想サーバ、仮想TV電話等)に送り、試験内容に応じたLTEのシナリオに基づいてメッセージ処理を行い、処理結果に応じたメッセージ情報を含むデータをLTE側送受信部3aに出力している。
【0030】
また、LTEメッセージ処理部3bは、所定の動作試験を実施するためのシーケンスが記述されたシナリオを記憶するシナリオ記憶手段3dと、被試験端末10に対して送信されるLTE擬似基地局部3の基地局情報及びC2K擬似基地局部4の基地局情報を報知情報として記憶する報知情報記憶手段3eを有するLTE側記憶部3fを備えている。
【0031】
さらに、LTEメッセージ処理部3bは、本来被試験端末10とC2K擬似基地局部4との間でやり取りされるメッセージ情報(以下、「C2Kメッセージ情報」という)がカプセル化されたデータを受信すると、このデータのカプセル化を解除してC2Kメッセージ情報を抽出し、特定C2Kメッセージ処理部3cに出力している。また、LTEメッセージ処理部3bは、特定C2Kメッセージ処理部3cから出力された特定C2Kメッセージ情報を入力すると、このメッセージをカプセル化したデータをLTE側送受信部3aに出力している。
【0032】
特定C2Kメッセージ処理部3cは、第1の擬似基地局部における特定メッセージ処理部として機能し、動作試験としてLTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間でメッセージのやり取りが行われる動作試験(例えば、位置登録試験、着信・発呼等の通話試験)において、被試験端末10から送信されたC2Kメッセージ情報(例えば、位置登録要求メッセージ(Registration Message)等)に対して本来C2K擬似基地局部4から送信される応答メッセージ情報(例えば、位置登録試験に関する動作試験時のC2K位置登録許可通知のメッセージ(Registration Accepted Order )、ネットワークからの音声着信に関する動作試験時の着信通知(General Page Message)等)を特定C2Kメッセージ情報として記憶する特定C2Kメッセージ記憶部3gを備えている。
【0033】
また、特定C2Kメッセージ処理部3cは、上記のような動作試験に伴い、C2K擬似基地局部4のステート変更等が生じた場合は、その変更内容を示すステート情報(例えば、位置登録試験に関する動作試験の場合は、位置登録完了通知)をC2K擬似基地局部4に出力している。
【0034】
このように、特定C2Kメッセージ処理部3cが特定C2Kメッセージ情報を記憶することで、LTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間でメッセージ情報のやり取りが行われるような動作試験を行った際に、本来であればC2K擬似基地局部4との間で行われるC2Kメッセージ情報のやり取りを特定C2Kメッセージ処理部3c内で処理するため、LTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間で恰も通信しているかのように振る舞うことができる。
【0035】
これにより、必要な情報(ステート情報)のみを通信して各擬似基地局部の間のメッセージのやり取りを極力減らすことでトラフィックの軽減を図り、被試験端末10や各擬似基地局部との間のデータ通信速度を速めている。
【0036】
(C2K擬似基地局部)
第2の擬似基地局部であるC2K擬似基地局部4は、C2K側送受信部4aと、C2Kメッセージ処理部4bと、ステートパラメータ管理部4cとを備え、被試験端末10との間でLTE方式と異なる多元接続方式の通信規格であるC2K(CDMA2000、CDMA2000 1X、CDMA2000EV−DOを含む)を用いて被試験端末10との間で通信を行う擬似基地局として機能している。
【0037】
C2K側送受信部4aは、LTE側送受信部3aと同様に、被試験端末10から結合部2を介して受信したRF入力信号(実行されるシナリオに記述されるシーケンスに従ったメッセージ情報を含む信号)をRF受信処理してC2Kメッセージ処理部4bにメッセージ情報をデータ出力している。
【0038】
また、C2K側送受信部4aは、実行中のシナリオのシーケンスに応じたメッセージ情報を含むデータをC2Kメッセージ処理部4bから入力すると、このデータをRF送信処理したRF出力信号を被試験端末10に向けて送信している。
【0039】
C2Kメッセージ処理部4bは、第2の擬似基地局における第2メッセージ処理部として機能し、LTEとは異なるC2Kの通信規格のシナリオに基づき被試験端末10の所定の動作試験を行うべく、後述するC2K側記憶部4dに記憶されたシナリオに従って予め選択される仮想接続先と被試験端末10との間のメッセージ処理を行う。
【0040】
具体的には、C2K側送受信部4aで受信した被試験端末10からのメッセージ情報を仮想接続先(仮想電話、仮想サーバ、仮想TV電話等)に送り、試験内容に応じたC2Kのシナリオに基づいてメッセージ処理を行い、処理結果に応じたメッセージ情報を含むデータをC2K側送受信部4aに出力している。
【0041】
また、C2Kメッセージ処理部4bは、被試験端末10との間で動作試験(例えば、音声着信試験)が行われ、行われている動作に応じてステート変更されると、この変更されたステート情報(例えば、音声着信試験における通話シーケンス完了通知)をステートパラメータ管理部4cに出力している。さらに、C2Kメッセージ処理部4bは、所定の動作試験を実施するためのシーケンスが記述されたシナリオを記憶するC2K側記憶部4dを備えている。
【0042】
ステートパラメータ管理部4cは、C2K擬似基地局部4に対しLTE擬似基地局部3から送信されるステート情報(例えば、位置登録試験における位置登録完了通知)又はC2Kメッセージ処理部4bからのステート情報(例えば、音声着信試験における通話シーケンス完了通知)を入力すると、そのステート情報に従って現在の試験状態を示すパラメータの変更を行っている。
【0043】
ステート変更処理の一例を挙げると、特定C2Kメッセージ処理部3cから、ハンドオーバ試験におけるC2K基地局情報の登録完了通知をステート情報として入力すると、被試験端末10との間でC2K擬似基地局部4の位置登録処理が完了した状態であるため、位置登録の処理が完了したときと同様にステート変更を行っている。これにより、C2Kメッセージ処理部4bは、ハンドオーバ試験のシナリオに従って被試験端末10との間で通話動作等に関するメッセージ処理が行える状態となる。
【0044】
ネットワーク仮想部5は、LTE擬似基地局部3又はC2K擬似基地局部4と被試験端末10との間で実際の接続環境をシュミレーションするための接続先(電話、サーバ、TV電話等)の機能を仮想的に実現している。
【0045】
統括制御部6は、選択された動作試験に基づくシナリオが実行されるように各擬似基地局部に対するパラメータの設定や動作タイミングに関する制御、ネットワーク仮想部5において実行されるシナリオに応じた仮想接続先の処理動作制御等の、移動端末試験装置1を構成する各部の制御を行っている。
【0046】
操作部7は、キーボード装置やポインティングデバイス等の入力装置によって構成され、被試験端末10の試験項目、又はこれら試験項目の組み合わせが入力されるようになっている。
【0047】
表示部8は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置で構成され、移動端末試験装置1を駆動する際に必要な各種表示内容(試験項目の選択表示画面や試験結果等)を表示している。
【0048】
<処理動作>
次に、図3、4を参照しながら、上述した移動端末試験装置1における動作試験時の処理動作について説明する。ここでは、動作試験として被試験端末10とLTE擬似基地局部3との間における位置登録試験時の処理動作例(図3)、LTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間のハンドオーバ試験時の処理動作例(図4)についてそれぞれ説明する。
【0049】
なお、位置登録動作における「LTE位置登録動作」、ハンドオーバ試験における「音声着信動作」、「着信シーケンス動作」、「通話状態動作」及び「通話終了・切断処理動作」のメッセージ処理についてはその詳細を省略し、本発明の要部となるメッセージ情報のやり取りに関する部分について詳述する。
【0050】
(位置登録試験)
図3に示すように、被試験端末10とLTE擬似基地局部3との間における位置登録試験としては、まず、表示部8の表示内容に従って操作部7を所定操作して位置登録試験のシナリオを実行すると、LTE擬似基地局部3から被試験端末10に対し、LTE基地局情報とC2K基地局情報とを含む報知情報を被試験端末10に送信する(ST1)。そして、LTE擬似基地局部3から送信される報知情報に基づき、LTE擬似基地局部3と被試験端末10との間で被試験端末10の位置登録動作である「LTE位置登録動作」を行う(ST2)。
【0051】
次に、被試験端末10は、被試験端末10の位置を示す位置情報をC2K擬似基地局部4に登録するため、LTE擬似基地局部3にC2K位置登録要求メッセージ(Registration Message)を含むメッセージ情報を送信する(ST3)。LTE擬似基地局部3は、被試験端末10からC2K位置登録要求メッセージを含むデータを受信すると、このデータのカプセル化を解除してC2K位置登録要求メッセージを抽出し、特定C2Kメッセージ処理部3cに出力する(ST4)。
【0052】
特定C2Kメッセージ処理部3cは、位置登録試験のシナリオに従って入力したC2K位置登録要求メッセージに対する応答メッセージ情報としてC2K位置登録許可通知メッセージ(Registration Accepted Order )を選択し、LTEメッセージ処理部3bに出力する(ST5)。
【0053】
そして、LTEメッセージ処理部3bは、このC2K位置登録許可通知メッセージをカプセル化し、LTE側送受信部3aを介して被試験端末10に送信する(ST6)。また、特定C2Kメッセージ処理部3cは、被試験端末10の位置登録が完了したことを示すステート情報をC2K擬似基地局部4に出力し(ST7)、ステートパラメータ管理部4cにおいて、入力したステート情報に従って現在の試験状態を示すパラメータの変更を行い(ST8)、位置登録試験を終了する。
【0054】
(ハンドオーバ試験)
図4に示すように、LTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間のハンドオーバ試験としては、上述した被試験端末10の位置登録が完了したことを前提とする。まず、表示部8の表示内容に従って操作部7を所定操作してハンドオーバ試験のシナリオを実行すると、LTEメッセージ処理部3bと特定C2Kメッセージ処理部3cとの間で、予め選択される仮想接続先から被試験端末10に対する「音声着信動作」を行う(ST11)。
【0055】
次に、被試験端末10に対する着信通知をLTE擬似基地局部3から行うため、特定C2Kメッセージ処理部3cは、特定C2Kメッセージ情報である着信通知メッセージ(General Page Message)を選択してLTEメッセージ処理部3bに出力する(ST12)。そして、LTEメッセージ処理部3bは、この特定C2Kメッセージ情報をカプセル化し、LTE側送受信部3aを介して被試験端末10に送信する(ST13)。
【0056】
被試験端末10は、LTE擬似基地局部3からの着信通知メッセージを受け、これに対する応答として着信通知返答メッセージ(Page Response Message )をC2K擬似基地局部4に送信する(ST14)。
【0057】
次に、C2K擬似基地局部4は、被試験端末10からの着信通知返答メッセージを受信すると、C2K擬似基地局部4の特定C2Kメッセージ処理部3cと被試験端末10との間で「着信シーケンス動作」を行う(ST15)。C2K擬似基地局部4と被試験端末10との間で通話が行える状態になると、通話シーケンス完了通知をC2Kメッセージ処理部4bからステートパラメータ管理部4cに出力し(ST16)、ステートパラメータ管理部4cで通話状態にステート変更する(ST17)。
【0058】
そして、C2K擬似基地局部4と被試験端末10との間で通話状態とする「通話状態動作」を行い(ST18)、所定の動作試験が終了すると「通話終了・切断処理動作」を行い(ST19)、ステートパラメータ管理部4cで通話試験の完了に伴うステート変更を行って(ST20)、ハンドオーバ試験を終了する。
【0059】
以上説明したように、上述した第1形態の移動端末試験装置1は、LTEメッセージ処理部3bで被試験端末10から入力したC2Kメッセージ情報を含むデータを入力すると、このデータのカプセル化を解除してC2Kメッセージ情報を抽出し、特定C2Kメッセージ処理部3cに出力する。特定C2Kメッセージ処理部3cは、入力したC2Kメッセージ情報に対する応答メッセージ情報をLTEメッセージ処理部3bに出力し、このメッセージ情報がカプセル化されて被試験端末10に送信される。
【0060】
これにより、位置登録試験のようなLTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間で行われるメッセージ情報のやり取りを極力省略して、恰もLTE擬似基地局部3とC2K擬似基地局部4との間でメッセージ情報をやり取りしているかのように振る舞うことができるため、試験装置1内部のトラフィックの軽減を図ることができる。
【0061】
[第2形態]
次に、図5を参照しながら、本発明に係る移動体通信端末の試験装置1の第2形態について説明する。なお、図5において、上述した第1形態の同一構成については同符号を付してその説明を省略し、本形態の要部となる構成要件のみを説明する。
【0062】
図5に示すように、第2形態では、第1形態の移動端末試験装置1からC2K擬似基地局部4を外し、被試験端末10との間でLTEを通信規格として通信を行うLTE擬似基地局部3として機能するとともに、C2K擬似基地局部4が存在せずとも特定C2Kメッセージ記憶部3gに記憶された特定C2Kメッセージを用いて実行可能な動作試験(例えば、位置登録試験)が行える構成である。なお、LTE擬似基地局部3の詳細な構成要件は、図2に示す通りである。
【0063】
すなわち、本形態では、C2K擬似基地局部4が外れた構成となるため、LTE擬似基地局部3からC2K擬似基地局部4へのステート情報の出力は行われず、被試験端末10との間でLTEに関する動作試験及びC2Kメッセージを用いた動作試験のみ実行可能な構成となる。
【0064】
そして、処理動作としては、図3に示すように第1形態における位置登録試験のST1〜ST6までは同様の処理であり、C2K擬似基地局部4が存在しないためST7及びST8の処理が省略され、被試験端末10の位置登録処理までの試験が実行可能となる。
【0065】
このように、第2形態の移動体通信端末の試験装置1では、C2K擬似基地局部4を構成要件から外した構成としたため、LTEを通信規格とした際の動作試験に加えて位置登録試験等のC2K擬似基地局部4を直接必要とせずC2Kメッセージのみで実行可能な簡易的な動作試験が行える装置となり、第1形態に比べて装置構成を簡略化することができる。
【0066】
ところで、上述した各形態において、第1の擬似基地局部3として通信規格をLTE方式とし、第2の擬似基地局部4としてLTEと異なるC2K方式である構成で説明したが、これに限定されることはなく、少なくとも第1の擬似基地局部3と第2の擬似基地局部4との通信規格が異なる多元接続方式とし、また上述した位置登録試験の処理のように各擬似基地局部間でメッセージ情報のやり取りが行われるような構成であれば、通信規格の組み合わせは特に規定されない。
【符号の説明】
【0067】
1…移動体通信端末の試験装置(移動端末試験装置)
2…結合部
3…LTE擬似基地局部(第1の擬似基地局部)
3a…LTE側送受信部
3b…LTEメッセージ処理部(第1メッセージ処理部)
3c…特定C2Kメッセージ処理部(特定メッセージ処理部)
3d…シナリオ記憶手段
3e…報知情報記憶手段
3f…LTE側記憶部
3g…特定C2Kメッセージ記憶部
4…C2K擬似基地局部(第2の擬似基地局部)
4a…C2K側送受信部
4b…C2Kメッセージ処理部(第2メッセージ処理部)
4c…ステートパラメータ管理部
4d…C2K側記憶部
5…ネットワーク仮想部
6…統括制御部
7…操作部
8…表示部
10…移動体通信端末(被試験端末)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多元接続方式である第1の通信規格と、前記第1の通信規格と異なる多元接続方式である第2の通信規格とを用いて通信可能な移動体通信端末(10)を試験対象とし、
少なくとも前記第1の通信規格の基地局を模擬する第1の擬似基地局部(3)を備え、予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って前記移動体通信端末の動作試験を行う移動体通信端末の試験装置(1)であって、
前記第1の擬似基地局部は、
少なくとも前記第2の通信規格の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力する第1メッセージ処理部(3b)と、
前記第1メッセージ処理部から前記位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する応答メッセージ情報を出力する特定メッセージ処理部(3c)と、
を備えたことを特徴とする移動体通信端末の試験装置。
【請求項2】
多元接続方式である第1の通信規格を用いた第1の擬似基地局部(3)と、前記第1の擬似基地局部と異なる多元接続方式である第2の通信規格を用いた第2の擬似基地局部(4)とを備え、
前記第1の通信規格及び前記第2の通信規格を用いて通信可能な移動体通信端末(10)を予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って動作試験を行う移動体通信端末の試験装置(1)であって、
前記第1の擬似基地局部は、
少なくとも前記第2の擬似基地局部の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力する第1メッセージ処理部(3b)と、
前記第1メッセージ処理部から前記位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力するとともに、前記第2擬似基地局部に対して前記位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力したことを示すステート情報を出力する特定メッセージ処理部(3c)と、
を備え、
前記第2擬似基地局部は、
前記移動体通信端末と前記第2の擬似基地局部との間でやり取りされるメッセージ情報のメッセージ処理を行う第2メッセージ処理部(4b)と、
前記特定メッセージ処理部からの前記ステート情報に基づき、前記移動体通信端末の位置登録が完了した状態にステート変更するステートパラメータ管理部(4c)と、
を備えたことを特徴とする移動体通信端末の試験装置。
【請求項3】
多元接続方式である第1の通信規格と、前記第1の通信規格と異なる多元接続方式である第2の通信規格とを用いて通信可能な移動体通信端末(10)を試験対象とし、
少なくとも前記第1の通信規格の基地局を模擬する第1の擬似基地局部(3)を備え、予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って前記移動体通信端末の動作試験を行う移動体通信端末の試験装置(1)であって、
前記第1の擬似基地局部は、
少なくとも前記第2の通信規格の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力するステップと、
前記出力された前記位置登録要求のメッセージ情報に対する応答メッセージ情報を出力するステップと、
を含むことを特徴とする移動体通信端末の試験方法。
【請求項4】
多元接続方式である第1の通信規格を用いた第1の擬似基地局部(3)と、前記第1の擬似基地局部と異なる多元接続方式である第2の通信規格を用いた第2の擬似基地局部(4)とを備え、
前記第1の通信規格及び前記第2の通信規格を用いて通信可能な移動体通信端末(10)を予め設定されたメッセージ情報のシーケンスが記述されたシナリオに従って動作試験を行う移動体通信端末の試験装置(1)を用い、
少なくとも前記第2の擬似基地局部の基地局情報を含む報知情報を前記移動体通信端末に対して送信し、その送信に伴う応答メッセージ情報として位置登録要求のメッセージ情報を含むデータを受信すると、このデータから前記位置登録要求のメッセージ情報を抽出して出力するステップと、
前記位置登録要求のメッセージ情報を入力すると、このメッセージ情報に対する位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力するとともに、前記第2擬似基地局部に対して前記位置登録許可を示す応答メッセージ情報を出力したことを示すステート情報を出力するステップと、
前記移動体通信端末と前記第2の擬似基地局部との間でやり取りされるメッセージ情報のメッセージ処理を行うステップと、
前記ステート情報に基づき、前記移動体通信端末の位置登録が完了した状態にステート変更するステップと、
を含むことを特徴とする移動体通信端末の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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