説明

移動体通信端末試験システム、解析方法、及び解析プログラム

【課題】移動体通信端末試験システムにおいて、通信規格の変更に伴う機能の追加及び変更を可能とする。
【解決手段】取得された波形データに入力情報を付加する制御部を含んで構成された送受信装置と、解析プログラムを実行する信号解析部を含み、送受信装置とは独立して構成された信号解析装置と、を備え、解析プログラムは、波形データに対する演算処理の種類ごとに設けられた処理プログラムと、通信方式ごとに設けられ、試験項目ごとに1以上の処理プログラムを選択し、一連の処理として関連付けて実行させる制御プログラムと、波形データに付加された入力情報を基に通信方式と試験項目とを特定し、特定された通信方式に応じて制御プログラムを選択して実行させる切替えプログラムと、を有し、当該制御プログラムが実行されることで、特定された試験項目に応じて処理プログラムが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末試験システムに関する技術であって、携帯電話機などの移動体通信端末から送信される被試験信号を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代の移動通信システムにおける無線通信方式の一つとして、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access 広帯域符号分割多重接続)が規格化されている。さらに、このW−CDMAを基礎として、ダウンリンクのデータ通信速度を向上させた第3.5世代の移動通信システム(3.5G)のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の規格化がなされている。また、このHSDPAに対して、アップリンクのデータ通信速度を向上させたHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)の通信方式が規格化されている。携帯電話のような移動体通信端末は、これらの規格へ準拠する必要があり、このような規格への準拠性を検証するために、移動体通信端末試験システムが提供されている。
【0003】
また、W−CDMAの次世代の通信規格として、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれる移動体通信規格が策定されている。このように移動体通信に関する技術の進歩に伴い、様々な通信方式が新たに規格化されており、移動体通信端末試験システムには、このような新たな通信方式への対応が望まれている。
【0004】
一方で、移動体通信端末試験システムは、移動体通信端末へ信号を送信する信号送信部と、移動体通信端末からの信号を受信する信号受信部とを有し、疑似基地局として動作する基地局模擬装置を有している。このような基地局模擬装置は、移動体通信端末と信号を送受信し、移動体通信端末から受信した信号の波形データを解析することで試験を行っている。この試験の種類は多岐におよび、その項目数も数百にわたる。また、通信方式の規格ごとに試験の種類や項目が定められているため、試験項目の数は規格の追加や変更に伴い増大していく。そのため、試験時間の増大はコストアップにつながり、試験時間の短縮は基地局模擬装置における従来からの課題ともなっている。
【0005】
従来の移動体通信端末試験システムでは、波形データの解析を基地局模擬装置内の信号解析部で行っている。そのため、新たな通信規格に対応する場合には、信号解析部内に組込まれたプログラムを新たな通信規格に対応したプログラムに置き換える必要があった。
【0006】
また、近年ではPC(Personal Computer)の性能向上が目覚ましく、基地局模擬装置よりも高性能なPCにより構成された信号解析装置の導入を、新たな基地局模擬装置を導入するよりも安価に行うことが可能な場合がある。そのため、このような信号解析装置により波形データの解析を行うことで、試験時間を短縮することが見込まれている。しかしながら、従来の移動体通信端末試験システムでは、信号解析部が基地局模擬装置内に組込まれているため、装置の外部に設けられた信号解析装置により波形データの解析を行うことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−221387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、移動体通信端末試験システムにおいて、通信規格の変更に伴う機能の追加や変更を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被試験端末(2)との間で信号を送受信し、受信された信号の波形データを取得する測定部(12)と、指定された通信方式及び試験項目に応じて前記測定部を制御するとともに、前記波形データに前記通信方式及び前記試験項目のそれぞれを識別するための入力情報を付加する制御部(11)と、を含んで構成された送受信装置(1)と、解析プログラム(P1)と、前記解析プログラムを実行する信号解析部(32)とを含み、前記送受信装置とは独立して構成された信号解析装置(3)と、を備え、前記解析プログラムは、前記波形データに対して複数種類の演算処理を行うために、当該演算処理の種類ごとに設けられた処理プログラム(P31〜P34)と、通信方式ごとに設けられ、試験項目ごとに所望の解析データを出力するために1以上の前記演算処理を行う前記処理プログラムを選択し、所定の順序に従い一連の処理として関連付けて実行させる制御プログラム(P21〜P24)と、前記波形データに付加された入力情報を基に前記通信方式と前記試験項目とを特定し、特定された前記通信方式に応じて前記制御プログラムを選択して実行させる切替えプログラム(P10)と、を有し、当該制御プログラムが実行されることで、特定された前記試験項目に応じて前記処理プログラムが実行されることを特徴とする移動体通信端末試験システムである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記解析プログラムは、前記処理プログラム及び制御プログラムのいずれかまたは双方を、追加または削除可能に構成されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、被試験端末(2)との間で信号を送受信し、受信された信号の波形データを取得する測定部(12)と、指定された通信方式及び試験項目に応じて前記測定部を制御するとともに、前記波形データに前記通信方式及び前記試験項目のそれぞれを識別するための入力情報を付加する制御部(11)と、を含んで構成された送受信装置(1)と、解析プログラム(P1)を実行可能な信号解析部(32)とを含んで構成された信号解析装置(3)による前記波形データの解析方法であって、前記解析プログラムとして、前記波形データに対して複数種類の演算処理を行うために、当該演算処理の種類ごとに設けられた処理プログラム(P31〜P34)と、通信方式ごとに設けられ、試験項目ごとに所望の解析データを出力するために1以上の前記演算処理を行う前記処理プログラムを選択し、所定の順序に従い一連の処理として関連付けて実行させる制御プログラム(P21〜P24)と、前記波形データに付加された入力情報を基に前記通信方式と前記試験項目とを特定する切替えプログラム(P10)と、をあらかじめ備えておく準備ステップと、前記波形データに付加された前記入力情報を基に前記通信方式及び前記試験項目を特定する条件特定ステップと、特定された前記通信方式に応じて、当該通信方式に対応する前記制御プログラムが実行される処理切替えステップと、特定された前記試験項目に関連付けられた各演算処理の実行段階ごとに、前記処理プログラムが選択されて当該演算処理が実行される演算実行ステップと、を備えたことを特徴とする解析方法である。
また、請求項4に記載の発明は、被試験端末(2)との間で信号を送受信することで測定され、指定された通信方式及び試験項目のそれぞれを識別するための入力情報が付加された波形データをコンピュータに解析させる解析プログラム(P1)であって、前記解析プログラムは、前記波形データに対して複数種類の演算処理を行うための、当該演算処理の種類ごとの処理機能(P31〜P34)と、通信方式ごとに設けられ、特定された前記通信方式に応じて前記特定機能により実行されることで、試験項目ごとに所望の解析データを出力するために1以上の前記処理機能を所定の順序に従い一連の処理として関連付けて実行させる制御機能(P21〜P24)と、前記波形データに付加された入力情報を基に前記通信方式と前記試験項目とを特定する特定機能(P10)と、を備え、前記特定機能により特定された前記通信方式に応じて前記制御機能が実行され、特定された前記試験項目に応じて前記処理機能が当該制御機能の一部として実行されることを特徴とする解析プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る移動体通信端末試験システムは、波形データの解析に係る処理を、送受信装置とは独立して構成された信号解析装置により実行可能とした。したがって、新たな試験項目が追加されても、送受信装置を置き換えることなく、信号解析装置のプログラムを置き換えることが可能となる。また通信方式ごとに制御プログラムが設けられて解析プログラムが構成されている。そのため、この制御プログラムを追加もしくは変更することで、通信規格の変更に伴う機能の追加や変更を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る移動体通信端末試験システムのブロック図である。
【図2】シーケンステーブルのデータ構造の一例である。
【図3】解析プログラムの構成を示した図である。
【図4】被試験端末と信号を送受信して受信波形データを出力する一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【図5】受信波形データの解析に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る移動体通信端末試験システムについて図1を参照しながら説明する。図1に示すように、移動体通信端末試験システムは、送受信装置1と、信号解析装置3と、入出力I/F4とを含んで構成されている。また、送受信装置1は、シーケンス制御部(制御部)11と、測定部12と、合成器13とを含んで構成される。測定部12は、送信制御部121と、送信手段122と、方向性結合器123と、受信手段124と、受信制御部125とを含んで構成される。また、信号解析装置3は、入出力I/F4とともにコンピュータ(PC等)で構成されており、機能的には、入力制御部31と、信号解析部32とを含んで構成される。
【0013】
本発明に係る移動体通信端末試験システムでは、送受信装置1から被試験端末2に試験信号を送信し、被試験端末2から送受信装置1に返送されてくる被試験信号の波形データを、あらかじめ決められた試験項目に従い信号解析装置3で解析する。なお、送受信装置1は、基地局模擬装置として動作する構成と、基地局模擬装置として動作しない構成との、いずれでもよい。送受信装置1が基地局模擬装置として動作しない構成の場合には、図1に点線で示すように、被試験端末2は、USB等のI/Fを介して信号解析装置3と接続される。そして入力制御部31は、送受信装置1と被試験端末2とを同期させて制御し、試験を行う。この場合、送受信装置1と被試験端末2とは、呼接続されない状態で試験が行われる。一方、送受信装置1が基地局模擬装置として動作する構成の場合には、送受信装置1と被試験端末2とが呼接続された状態で試験が行われる。以降では、本実施形態に係る移動体通信端末試験システムの構成について、送受信装置1が基地局模擬装置として動作する場合の構成を例に、「送信時の構成」、「受信時の構成」、及び「解析時の構成」に分けて説明する。なお、「送信時の構成」は、送受信装置1から被試験端末2に試験信号を送信するときに動作する構成を示している。また、「受信時の構成」は、被試験端末2から返送される被試験信号を送受信装置1が受信するときに動作する構成を示している。また、「解析時の構成」は、送受信装置1で受信された被試験信号の波形データを、信号解析装置3で解析するときに動作する構成を示している。
【0014】
(送信時の構成)
まず、操作者により指定された条件に基づき、送受信装置1から被試験端末2に試験信号を送信するときに動作する構成について説明する。
【0015】
入出力I/F4は、入力情報を指定するためのインタフェースである。入力情報には、使用する通信方式及び実施対象の試験項目と、各試験を実施する際のパラメタとが含まれる。このパラメタには、測定部12から被試験端末2に試験信号を送信する際の条件や、被試験端末2から送信された被試験信号を測定部12で受信する際の条件が含まれる。具体例としては、送受信される信号(UL:Uplink、DL:Downlink)の周波数や、この信号の入出力レベル等が含まれる。入出力I/F4は、操作者により指定された入力情報を入力制御部31に送信する。入出力I/F4は、例えば入力端末や、操作者により作成されたユーザプログラム等が該当する。
【0016】
入力制御部31は、入出力I/F4から受けた入力情報に基づきシーケンステーブルD1を作成する。図2は、シーケンステーブルD1のデータ構造の一例を示している。図2に示すように、シーケンステーブルD1は、モード情報D11と、1以上の設定情報D12とを含んで構成される。モード情報D11には、入力情報として指定された通信方式を示す情報が入力される。また、設定情報D12は、実施対象の試験項目ごとに生成される。即ち、n個の試験項目を実施する場合には、n個(#1〜#n)の設定情報D12が生成される。設定情報D12には、試験項目を示す情報と、その試験項目が示す試験の条件として指定されたパラメタを示す情報が入力される。
【0017】
なお、所定の試験の条件に基づき、その条件に応じたパラメタが入力された設定情報D12のプリセットをあらかじめ生成して記憶しておいてもよい。このような構成とすることで、細かい試験の条件の入力を簡略化することが可能となる。また、複数のプリセットをあらかじめ関連付けておいてもよい。例えば、試験の分類ごとに複数のプリセットを関連付けておくことで、試験の分類を選択することで、その分類に関連付けられた複数の試験項目を同時に選択させることが可能となる。また、このような設定情報D12のプリセットを所定のモード情報D11と関連付けて、シーケンステーブルD1のプリセットをあらかじめ生成して記憶しておいてもよい。このような構成とすることで、通信方式に応じてあらかじめ決められた一連の試験項目を、簡便な操作のみで同時に選択させることが可能となる。
【0018】
また、入力制御部31は、波形データ記憶部31aを備え、試験の条件に応じてベースバンド信号を生成するための波形データ(以降では、「送信波形データ」と呼ぶ)をこの波形データ記憶部31aに記憶させている。なお、被試験端末2に出力される試験信号(即ち、DL側のRF信号)は、この送信波形データに基づき生成されたベースバンド信号が変調されて生成される。入力制御部31は、入力情報として試験項目ごとに指定された試験信号の条件に基づき、対応する送信波形データを特定し、この送信波形データを波形データ記憶部31aから読み出す。入力制御部31は、読み出された送信波形データを特定するための識別情報を、その波形データに関連する試験項目の設定情報D12に入力する。なお、入力制御部31は、入力情報として指定された試験信号の条件に基づき、送信波形データを生成する構成としてもよい。
【0019】
入力制御部31は、生成されたシーケンステーブルD1と、指定された試験項目に対応して読み出された1以上の送信波形データとを関連付けてシーケンス制御部11に送信する。その後、入力制御部31は、入出力I/F4から試験の開始が指示されると、この指示をシーケンス制御部11に通知する。この通知を受けて、シーケンス制御部11は、試験を開始する。
【0020】
シーケンス制御部11は、記憶部11aを備え、入力制御部31からシーケンステーブルD1と、1以上の送信波形データを受けると、これらのデータを記憶部11aに記憶させる。その後、シーケンス制御部11は、入力制御部31から試験の開始が通知される。このように、試験を開始する前に、シーケンステーブルD1と送信波形データとをあらかじめシーケンス制御部11に送信しておくことで、データの送受信に伴う試験時間の増加を防止することが可能となる。
【0021】
試験の開始の指示が通知されると、シーケンス制御部11は、記憶部11aに記憶されたシーケンステーブルD1からモード情報D11を読み出し、読み出されたモード情報D11を送信制御部121及び受信制御部125に出力する。送信制御部121及び受信制御部125については後述する。これにより、測定部12は、入力情報として指定された通信方式を認識し、この通信方式に基づき被試験端末2と信号の送受信を行うことが可能となる。
【0022】
次に、シーケンス制御部11は、記憶部11aに記憶されたシーケンステーブルD1から設定情報D12を読み出し、読み出された設定情報D12から送信波形データの識別情報を取り出す。シーケンス制御部11は、取り出された識別情報を基に、記憶部11aに記憶された1以上の送信波形データの中から、その設定情報D12が示す試験項目に対応した送信波形データを特定する。シーケンス制御部11は、特定された送信波形データを送信制御部121に出力する。
【0023】
また、シーケンス制御部11は、設定情報D12から試験の条件として指定されたパラメタを取り出し、このパラメタのうち、試験信号(DL側のRF信号)の送信に係るパラメタを送信制御部121に出力する。また、シーケンス制御部11は、取り出されたパラメタのうち、被試験信号(UL側のRF信号)の受信に係るパラメタを受信制御部125に出力する。送信制御部121及び受信制御部125へのパラメタの出力が完了すると、シーケンス制御部11は、送信制御部121及び受信制御部125に試験の開始を指示する。これにより、読み出された設定情報D12に対応する試験が実行される。言い換えると、試験項目に対応した条件に基づき、送信手段122から被試験端末2に試験信号が送信され、被試験端末2から返送された被試験信号が受信手段124で受信される。このときの動作、即ち、送信手段122及び受信手段124の動作については後述する。
【0024】
シーケンス制御部11は、シーケンステーブルD1からの設定情報D12の読み出しから、その設定情報D12に対応する試験の実行に係る一連の処理を、シーケンステーブルD1に含まれる設定情報D12(#1〜#n)ごとに遂次実行する。
【0025】
送信制御部121は、送信手段122の動作を制御する。送信手段122は、被試験端末2に試験信号を送信するための構成である。送信手段122の詳細については後述する。送信制御部121は、シーケンス制御部11からモード情報D11を受けると、以降は、このモード情報D11に基づき送信手段122の動作を制御する。これにより、送信手段122が、モード情報D11で指定された通信方式に基づき動作する。
【0026】
送信制御部121は、記憶部121aを備え、シーケンス制御部11から送信波形データを受けると、この送信波形データを記憶部121aに記憶させる。また、送信制御部121は、シーケンス制御部11から試験信号(DL)の送信に係るパラメタを受けて、このパラメタに基づき送信手段122の動作を制御するための制御情報を生成する。この制御情報には、例えば、試験信号の周波数や出力レベルを示す情報が含まれる。
【0027】
送信制御部121は、シーケンス制御部11から試験の開始が指示されると、生成された制御情報と記憶部121aに記憶された送信波形データとを送信手段122に出力し、送信手段122に試験信号を生成させる。
【0028】
受信制御部125は、受信手段124の動作を制御する。受信手段124は、被試験端末2から返送される被試験信号を受信するための構成である。受信手段124の詳細については「受信時の構成」で説明する。受信制御部125は、シーケンス制御部11からモード情報D11を受けると、以降は、このモード情報D11に基づき受信手段124の動作を制御する。これにより、受信手段124が、モード情報D11で指定された通信方式に基づき動作する。
【0029】
受信制御部125は、シーケンス制御部11から被試験信号(UL側のRF信号)の受信に係るパラメタを受けて、このパラメタに基づき受信手段124の動作を制御するための制御情報を生成する。この制御情報には、例えば、被試験信号の周波数や入力レベルを示す情報が含まれる。
【0030】
受信制御部125は、シーケンス制御部11から試験の開始が指示されると、生成された制御情報を受信手段124に出力する。これにより、受信手段124は、この制御情報に基づき、被試験端末2から被試験信号を受信することが可能となる。
【0031】
送信手段122は、送信制御部121からモード情報D11を受けると、以降はこのモード情報D11で指定された通信方式に基づき動作する。また、送信手段122は、送信制御部121から制御情報と送信波形データとを受ける。送信手段122は、送信波形データに基づきベースバンド信号を生成し、生成されたベースバンド信号を、制御情報とモード情報D11で指定された通信方式とに基づき変調して試験信号(DL側のRF信号)を生成する。送信手段122は、生成された試験信号を、方向性結合器123を介して被試験端末2に送信する。
【0032】
方向性結合器123は、送信手段122からの試験信号を被試験端末2に送出する。また、方向性結合器123は、被試験端末2から送信された被試験信号を受信手段124に送出する。
【0033】
なお、上記では、入力制御部31がシーケンステーブルD1を生成する構成について説明したが、入力制御部31に替わりシーケンス制御部11がシーケンステーブルD1を生成してもよい。なお、この場合には、波形データ記憶部31aをシーケンス制御部11に設けるとよい。
【0034】
(受信時の構成)
次に、被試験端末2から返送される被試験信号を送受信装置1で受信するときに動作する構成について説明する。
【0035】
受信手段124は、受信制御部125からモード情報D11を受けると、以降はこのモード情報D11で指定された通信方式に基づき動作する。また、受信手段124は、受信制御部125から制御情報を受け、その後、方向性結合器123を介して被試験端末2から被試験信号を受信する。受信手段124は、受信した被試験信号を、制御情報とモード情報D11で指定された通信方式とに基づきベースバンド信号に復調する。受信手段124は、復調されたベースバンド信号を受信制御部125に出力する。
【0036】
受信制御部125は、被試験信号から復調されたベースバンド信号を受信手段124から受ける。受信制御部125は、記憶部125aを備え、受信手段124から受けたベースバンド信号の波形データ(以降は「受信波形データ」と呼ぶ)を生成し、生成された受信波形データを記憶部125aに記憶させる。この受信波形データは、ベースバンド信号をA/D変換して生成されるものである。
【0037】
その後、受信制御部125は、シーケンス制御部11から受信波形データの指示を受ける。この指示を受けると、受信制御部125は、記憶部125aに記憶された受信波形データを読み出し、読み出された受信波形データを合成器13に出力する。
【0038】
シーケンス制御部11は、送信制御部121及び受信制御部125に試験の開始を指示した後、受信制御部125に受信波形データの出力を指示する。これにより、開始が指示された試験において、被試験端末2から返送された被試験信号を基に生成された受信波形データが、受信制御部125から合成器13に出力される。また、シーケンス制御部11は、モード情報D11と、開始を指示した試験に対応する設定情報D12とを合成器13に出力する。
【0039】
合成器13は、受信制御部125から受信波形データを受ける。また、合成器13は、シーケンス制御部11からモード情報D11と設定情報D12とを受ける。合成器13は、受信波形データにモード情報D11と設定情報D12とを付帯し、信号解析部32に出力する。
【0040】
信号解析部32は、試験データ記憶部32aを備えており、合成器13(即ち、送受信装置1)から受信波形データを受けると、この受信波形データを試験データ記憶部32aに記憶させる。
【0041】
なお、信号解析部32は、受信波形データに付帯されたモード情報D11及び設定情報D12に基づき、通信方式や試験項目、及び試験の条件として指定されたパラメタを特定する。そして、信号解析部32は、この通信方式や試験項目に基づき受信波形データを解析し、操作者が所望する出力を生成する。このときの信号解析部32の詳細な動作については、「解析時の構成」で説明する。
【0042】
なお、シーケンス制御部11は、送信手段122及び受信手段124の制御情報(具体的には、これらを構成するハードウェアの制御パラメタ)を設定情報D12に追加したうえで、合成器13に出力するように動作させてもよい。これにより、信号解析部32は、設定情報D12を基にこれらの制御パラメタを特定することが可能となり、より詳細な情報に基づき解析を行うことが可能となる。
【0043】
また、図1では、合成器13から信号解析部32に受信波形データを送信する構成を示しているが、合成器13から出力された受信波形データを信号解析部32に入力可能であれば、その構成は限定されない。例えば、合成器13から出力された受信波形データを外部記憶装置に記憶させ、その外部記憶装置を信号解析部32に装着する構成としてもよい。この場合には、信号解析部32は、装着された外部記憶装置から受信波形データを読み出して解析を実行してもよい。また、信号解析部32は、外部記憶装置に記憶された受信波形データを試験データ記憶部32aに記憶させたうえで、試験データ記憶部32aから受信波形データを読み出して解析を実行する構成としてもよい。
【0044】
(解析時の構成)
次に、送受信装置1で受信された被試験信号の波形データ、即ち受信波形データを、信号解析装置3で解析するときに動作する構成について説明する。
【0045】
信号解析部32は、入出力I/F4からの指示を受けて、あわせて指定された受信波形データの解析を行う。具体的には、信号解析部32は、入出力I/F4から受信波形データの解析の指示を受けると、まず解析が指示された受信波形データを試験データ記憶部32aから読み出す。
【0046】
信号解析部32には、受信波形データ解析するための解析プログラムP1が組み込まれている。信号解析部32は、特定された受信波形データを入力として解析プログラムP1を実行することで受信波形データの解析を行う。ここで、解析プログラムP1の「構成」と「処理の流れ」について図3を参照しながら説明する。図3は、解析プログラムP1の構成を示した図である。まず解析プログラムP1の「構成」について説明する。
【0047】
解析プログラムP1は、切替えプログラムP10と、制御プログラムP21〜P24と、処理プログラムP31〜P34とを含んで構成されている。
【0048】
制御プログラム(P21〜P24)は、通信方式ごとに設けられている。例えば、制御プログラムP21は、通信方式C1に対応しており、通信方式C1の各試験項目で定義された試験を実行するための1以上の演算処理が所定の順序に従い一連の処理として記述されている。なお、この一連の処理の単位は、試験項目ごととしてもよいし、試験項目をあらかじめ分類分けして、この分類ごととしてよい。この分類分けの例としては、実行される演算処理とその演算処理の実行順序が同じで、演算処理のパラメタのみが異なる複数の試験項目を、同じ分類に割り振るとよい。なお、以降では、この1以上の演算処理で構成された一連の処理を「解析処理」と呼ぶ場合がある。解析処理の具体例としては、「隣接チャネル漏洩電力比(ACLR:Adjacent Channel Leakage power Ratio)」、「EVM(Error Vector Magnitude)」、「占有帯域幅(OBW:Occupied Band Width)」等の測定や、周波数エラー、変調解析等があげられる。制御プログラム(P21〜P24)は、切替えプログラムP10からの呼び出しに応じて実行される。
【0049】
上述した解析処理には、「フィルタ処理」や「FFT」等の、複数の解析処理間で共通の演算処理が含まれる。そのため、このような演算処理ごとに処理プログラム(P31〜P34)が設けられている。例えば、処理プログラムP31は、演算処理T1を実行するためのプログラムである。同様にして、処理プログラムP32は演算処理T2に対応し、処理プログラムP33は演算処理T3に対応し、処理プログラムP34は演算処理T4に対応している。処理プログラム(P31〜P34)は、制御プログラム(P21〜P24)からの呼び出しに応じて実行される。
【0050】
次に、解析プログラムP1の「処理の流れ」、即ち、切替えプログラムP10、制御プログラムP21〜P24、及び処理プログラムP31〜P34が実行される一連の流れについて説明する。
【0051】
解析プログラムP1が実行されると、まず切替えプログラムP10が処理を開始する。切替えプログラムP10は、入力された受信波形データに付帯されたモード情報D11を読み出し、モード情報D11を基に通信方式を特定する。以降は、通信方式C1が特定されたものとして説明する。切替えプログラムP10は、特定された通信方式C1に対応する制御プログラムP21を特定し、受信波形データを入力として制御プログラムP21を実行する。
【0052】
制御プログラムP21は、入力された受信波形データに付帯された設定情報D12を読み出し、設定情報D12に含まれる試験項目を示す情報を基に、その試験項目に対応する解析処理を特定する。また、制御プログラムP21は、設定情報D12から試験の条件として指定されたパラメタを示す情報を取り出し、取り出された情報を入力として特定された解析処理を実行する。
【0053】
試験項目に応じた解析処理は、1以上の演算処理が所定の順序に従い並べられてあらかじめ構成されている。即ち、解析処理を構成する各演算処理が所定の順序に従い実行される。これらの演算処理の一部は、処理プログラム(P31〜P34)としてあらかじめ構成されており、制御プログラムP21は、該当する演算処理が実行されるタイミングで、その演算処理に対応する処理プログラムを呼び出す。例えば、試験項目に対応する解析処理は、演算処理T1、T2、及びT3がこの順番で並べられて試成されているとする。この場合、制御プログラムP21は、処理プログラムP31、P32、及びP33を、この順番で呼び出して各演算処理を実行させる。なお、各演算処理を実行するためのパラメタには、設定情報D12から取り出された情報、即ち「試験の条件として指定されたパラメタ」が使用される。
【0054】
制御プログラムP21は、実行された解析処理の結果を切替えプログラムP10に出力する。このとき、制御プログラムP21は、実行された解析処理の種別や試験項目を示す情報に応じて、解析処理の結果の出力形式をグラフや表等に変換して切替えプログラムP10に出力してもよい。切替えプログラムP10は、この結果を入出力I/F4に出力する。
【0055】
入出力I/F4は、解析プログラムP1による解析処理の実行結果を信号解析部32から受けて、この実行結果を所望の表示態様に基づき表示部に表示させる。なお、解析処理の実行結果を所望の表示フォーマットで表示させる表示制御部を設けてもよい。
【0056】
このように、解析プログラムP1は、切替えプログラムP10と、制御プログラムP21〜P24と、処理プログラムP31〜P34との3つの層に分かれて構成されている。切替えプログラムP10、制御プログラムP21〜P24、及び処理プログラムP31〜P34は、それぞれを区別できる形式(例えば、関数)で実装すればよく、これらを別々のライブラリ(ファイル)として実装してもよい。また、各層ごとに所定の数のプログラムを1つの組として、この組ごとにライブラリを構成することも可能である。このようなライブラリを、例えばDLL(Dynamic Link Library)のように動的に組込み可能なライブラリとして構成することで、仕様の変更や追加に伴う作業の負担を軽減することが可能となる。具体的には、規格の変更等により一部の解析処理の内容に変更があった場合においても、影響のあるライブラリのみを置き換えることで対応することが可能となる。また、新たな通信方式に対応したプログラムを追加する場合においても、新たな通信方式に対応した制御プログラムと、新たに追加された演算処理を実行するための処理プログラムとを追加すればよく、他の制御プログラム(P21〜P24)を変更することなく対応することが可能となる。
【0057】
また処理プログラムP31〜P34を、制御プログラムP21〜P24の間で共有しているため、通信方式ごとに各演算処理をプログラムとして組み込む必要が無くなる。そのため、解析プログラムP1全体の容量を抑えることが可能となる。また、一部の演算処理のロジックに問題が検出された場合においても、その演算処理に対応する処理プログラムを修正すればよいため、プログラムのメンテナンスが容易となる。
【0058】
(送信及び受信時の一連の動作)
次に、被試験端末2と信号を送受信して受信波形データを出力する一連の動作について図4を参照しながら説明する。図4は、移動体通信端末試験システムにおいて、被試験端末と信号を送受信して受信波形データを出力する一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【0059】
(ステップS11)
操作者により指定された通信方式、及び実施対象の試験項目と、各試験を実施する際のパラメタとを含む入力情報が、入出力I/F4を介して入力制御部31に入力される。
【0060】
(ステップS12)
入力制御部31は、入出力I/F4から受けた入力情報に基づきシーケンステーブルD1を作成する。シーケンステーブルD1は、モード情報D11と、1以上の設定情報D12とを含んで構成される。モード情報D11には、入力情報として指定された通信方式を示す情報が入力される。また、設定情報D12は、実施対象の試験項目ごとに生成される。即ち、n個の試験項目を実施する場合には、n個(設定情報#1〜#n)の設定情報D12が生成される。各設定情報D12には、試験項目を示す情報と、その試験項目が示す試験の条件として指定されたパラメタを示す情報が入力される。
【0061】
また、入力制御部31は、入力情報として試験項目ごとに指定された試験信号(即ち、DL)の条件に基づき、対応する送信波形データを特定し、この送信波形データを波形データ記憶部31aから読み出す。入力制御部31は、読み出された送信波形データを特定するための識別情報を、その波形データに関連する試験項目の設定情報D12に入力する。
【0062】
入力制御部31は、生成されたシーケンステーブルD1と、指定された試験項目に対応して読み出された1以上の送信波形データとを関連付けてシーケンス制御部11に送信する。シーケンス制御部11は、入力制御部31からシーケンステーブルD1と、1以上の送信波形データを入力制御部31とを受けると、これらのデータを入力制御部31とを記憶部11aに記憶させる。
【0063】
(ステップS13)
その後、入力制御部31は、入出力I/F4から試験の開始が指示されると、この指示をシーケンス制御部11に通知する。この指示が通知されると、シーケンス制御部11は、記憶部11aに記憶されたシーケンステーブルD1からモード情報D11を読み出し、読み出されたモード情報D11を送信制御部121及び受信制御部125に出力する。これにより、測定部12は、入力情報として指定された通信方式を認識し、この通信方式に基づき被試験端末2と信号の送受信を行うことが可能となる。
【0064】
(ステップS14)
次に、シーケンス制御部11は、記憶部11aに記憶されたシーケンステーブルD1から設定情報D12を読み出し、読み出された設定情報D12から送信波形データの識別情報を取り出す。シーケンス制御部11は、取り出された識別情報を基に、記憶部11aに記憶された1以上の送信波形データの中から、その設定情報D12が示す試験項目に対応した送信波形データを特定する。シーケンス制御部11は、特定された送信波形データを送信制御部121に出力する。送信制御部121は、記憶部121aを備え、シーケンス制御部11から送信波形データを受けると、この送信波形データを記憶部121aに記憶させる。
【0065】
また、シーケンス制御部11は、設定情報D12から試験の条件として指定されたパラメタを取り出し、このパラメタのうち、試験信号(DL)の送信に係るパラメタを送信制御部121に出力する。送信制御部121は、シーケンス制御部11から試験信号(DL)の送信に係るパラメタを受けて、このパラメタに基づき送信手段122の動作を制御するための制御情報を生成する。この制御情報には、例えば、試験信号の周波数や出力レベルを示す情報が含まれる。
【0066】
また、シーケンス制御部11は、取り出されたパラメタのうち、被試験信号(UL)の受信に係るパラメタを受信制御部125に出力する。受信制御部125は、シーケンス制御部11から被試験信号(UL)の受信に係るパラメタを受けて、このパラメタに基づき受信手段124の動作を制御するための制御情報を生成する。この制御情報には、例えば、被試験信号の周波数や入力レベルを示す情報が含まれる。
【0067】
(ステップS15)
送信制御部121及び受信制御部125へのパラメタの出力が完了すると、シーケンス制御部11は、送信制御部121及び受信制御部125に試験の開始を指示する。送信制御部121は、シーケンス制御部11から試験の開始が指示されると、生成された制御情報と記憶部121aに記憶された送信波形データとを送信手段122に出力し、送信手段122に試験信号を生成させる。
【0068】
送信手段122は、送信制御部121から制御情報と送信波形データとを受ける。送信手段122は、送信波形データに基づきベースバンド信号を生成し、生成されたベースバンド信号を、制御情報とモード情報D11で指定された通信方式とに基づき変調して試験信号(RF信号)を生成する。送信手段122は、生成された試験信号を、方向性結合器123を介して被試験端末2に送信する。
【0069】
(ステップS16)
受信手段124は、受信制御部125から制御情報を受け、その後、方向性結合器123を介して被試験端末2から被試験信号を受信する。受信手段124は、受信した被試験信号を、制御情報とモード情報D11で指定された通信方式とに基づきベースバンド信号に復調する。受信手段124は、復調されたベースバンド信号を受信制御部125に出力する。
【0070】
(ステップS17)
受信制御部125は、被試験信号から復調されたベースバンド信号を受信手段124から受ける。受信制御部125は、受信手段124から受けたベースバンド信号の波形データ(即ち、受信波形データ)を生成し、生成された受信波形データを記憶部125aに記憶させる。
【0071】
シーケンス制御部11は、送信制御部121及び受信制御部125に試験の開始を指示した後、受信制御部125に受信波形データの出力を指示する。これにより、開始が指示された試験において、被試験端末2から返送された被試験信号を基に生成された受信波形データが、受信制御部125から合成器13に出力される。また、シーケンス制御部11は、モード情報D11と、開始を指示した試験に対応する設定情報D12とを合成器13に出力する。
【0072】
合成器13は、受信制御部125から受信波形データを受ける。また、合成器13は、シーケンス制御部11からモード情報D11と設定情報D12とを受ける。合成器13は、受信波形データにモード情報D11と設定情報D12とを付帯し、信号解析部32に出力する。
【0073】
(ステップS18)
シーケンス制御部11は、シーケンステーブルD1に含まれる全ての設定情報D12(#1〜#n)について処理が実行されたか否かを確認する。未処理の設定情報D12が残っている場合(ステップS18、N)には、シーケンス制御部11は、次の設定情報D12を読み出し、その設定情報D12に対応する試験の実行に係る一連の処理を実行する。全ての設定情報D12(#1〜#n)について処理が実行された場合(ステップS18、Y)には、シーケンス制御部11は、受信波形データの取得に係る一連の処理を終了する。
【0074】
(解析時の一連の動作)
次に、受信波形データの解析に係る一連の動作について図5を参照しながら説明する。図5は、移動体通信端末試験システムにおける受信波形データの解析に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【0075】
(ステップS21)
信号解析部32は、入出力I/F4から受信波形データの解析の指示を受けると、まず解析が指示された受信波形データを試験データ記憶部32aから読み出す。
【0076】
(ステップS22)
信号解析部32は、特定された受信波形データを入力として解析プログラムP1を実行する。解析プログラムP1が実行されると、まず切替えプログラムP10が処理を開始する。切替えプログラムP10は、入力された受信波形データに付帯されたモード情報D11を読み出し、モード情報D11を基に通信方式を特定する。以降は、通信方式C1が特定されたものとして説明する。切替えプログラムP10は、特定された通信方式C1に対応する制御プログラムP21を特定し、受信波形データを入力として制御プログラムP21を実行する。
【0077】
(ステップS23)
制御プログラムP21は、入力された受信波形データに付帯された設定情報D12を読み出し、設定情報D12に含まれる試験項目を示す情報を基に、その試験項目に対応する解析処理を特定する。また、制御プログラムP21は、設定情報D12から試験の条件として指定されたパラメタを示す情報を取り出し、取り出された情報を入力として特定された解析処理を実行する。
【0078】
(ステップS24)
試験項目に応じた解析処理は、1以上の演算処理が所定の順序に従い並べられてあらかじめ構成されている。即ち、解析処理を構成する各演算処理が所定の順序に従い実行される。これらの演算処理の一部は、処理プログラム(P31〜P34)としてあらかじめ構成されており、制御プログラムP21は、該当する演算処理が実行されるタイミングで、その演算処理に対応する処理プログラムを呼び出す。
【0079】
(ステップS25)
制御プログラムP21は、実行された解析処理の結果を切替えプログラムP10に出力する。このとき、制御プログラムP21は、実行された解析処理の種別や試験項目を示す情報に応じて、解析処理の結果の出力形式をグラフや表等に変換して切替えプログラムP10に出力してもよい。切替えプログラムP10は、この結果を入出力I/F4に出力する。
【0080】
入出力I/F4は、解析プログラムP1による解析処理の実行結果を信号解析部32から受けて、この実行結果を所望の表示態様に基づき表示部に表示させる。
【0081】
以上、本発明に係る移動体通信端末試験システムは、波形データの解析に係る処理を、送受信装置1とは独立して構成された信号解析装置3により実行可能とした。したがって、新たな試験項目が追加されても、送受信装置1を置き換えることなく、信号解析装置3のプログラム(即ち、解析プログラムP1)を置き換えることが可能となる。
【0082】
また、解析プログラムP1は、切替えプログラムP10と、制御プログラムP21〜P24と、処理プログラムP31〜P34との3つの層に分けて構成されている。そのため、各層ごとに所定の数のプログラムを1つの組として、この組ごとにライブラリを構成することで、規格の変更等により一部の解析処理の内容に変更があった場合においても、影響のあるライブラリのみを置き換えることで対応することが可能となる。また、新たな通信方式に対応したプログラムを追加する場合においても、新たな通信方式に対応した制御プログラムと、新たに追加された演算処理を実行するための処理プログラムとを追加すればよく、他の制御プログラム(P21〜P24)を変更することなく対応することが可能となる。
【0083】
また、受信波形データは、「通信方式を示す情報」、「試験項目を示す情報」、及び「試験の条件として指定されたパラメタを示す情報」とが付帯されたうえで、試験データ記憶部32aに記憶される。そのため、信号解析部32は、この付帯情報に基づき、通信方式や試験項目、指定された試験の条件を特定し、解析処理を実行することが可能となる。これにより、信号解析部32は、送受信装置1による受信波形データの取得に係る処理とは独立して解析処理を実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 送受信装置
11 シーケンス制御部
12 測定部
121 送信制御部
122 送信手段
123 方向性結合器
124 受信手段
125 受信制御部
13 合成器
2 被試験端末
3 信号解析装置
31 入力制御部
32 信号解析部
4 入出力I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験端末(2)との間で信号を送受信し、受信された信号の波形データを取得する測定部(12)と、指定された通信方式及び試験項目に応じて前記測定部を制御するとともに、前記波形データに前記通信方式及び前記試験項目のそれぞれを識別するための入力情報を付加する制御部(11)と、を含んで構成された送受信装置(1)と、
解析プログラム(P1)と、前記解析プログラムを実行する信号解析部(32)とを含み、前記送受信装置とは独立して構成された信号解析装置(3)と、
を備え、
前記解析プログラムは、
前記波形データに対して複数種類の演算処理を行うために、当該演算処理の種類ごとに設けられた処理プログラム(P31〜P34)と、
通信方式ごとに設けられ、試験項目ごとに所望の解析データを出力するために1以上の前記演算処理を行う前記処理プログラムを選択し、所定の順序に従い一連の処理として関連付けて実行させる制御プログラム(P21〜P24)と、
前記波形データに付加された入力情報を基に前記通信方式と前記試験項目とを特定し、特定された前記通信方式に応じて前記制御プログラムを選択して実行させる切替えプログラム(P10)と、
を有し、当該制御プログラムが実行されることで、特定された前記試験項目に応じて前記処理プログラムが実行されることを特徴とする移動体通信端末試験システム。
【請求項2】
前記解析プログラムは、前記処理プログラム及び制御プログラムのいずれか一方または双方を、追加または削除可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項3】
被試験端末(2)との間で信号を送受信し、受信された信号の波形データを取得する測定部(12)と、指定された通信方式及び試験項目に応じて前記測定部を制御するとともに、前記波形データに前記通信方式及び前記試験項目のそれぞれを識別するための入力情報を付加する制御部(11)と、を含んで構成された送受信装置(1)と、
解析プログラム(P1)を実行可能な信号解析部(32)とを含んで構成された信号解析装置(3)による前記波形データの解析方法であって、
前記解析プログラムとして、
前記波形データに対して複数種類の演算処理を行うために、当該演算処理の種類ごとに設けられた処理プログラム(P31〜P34)と、
通信方式ごとに設けられ、試験項目ごとに所望の解析データを出力するために1以上の前記演算処理を行う前記処理プログラムを選択し、所定の順序に従い一連の処理として関連付けて実行させる制御プログラム(P21〜P24)と、
前記波形データに付加された入力情報を基に前記通信方式と前記試験項目とを特定する切替えプログラム(P10)と、
をあらかじめ備えておく準備ステップと、
前記波形データに付加された前記入力情報を基に前記通信方式及び前記試験項目を特定する条件特定ステップと、
特定された前記通信方式に応じて、当該通信方式に対応する前記制御プログラムが実行される処理切替えステップと、
特定された前記試験項目に関連付けられた各演算処理の実行段階ごとに、前記処理プログラムが選択されて当該演算処理が実行される演算実行ステップと、
を備えたことを特徴とする解析方法。
【請求項4】
被試験端末(2)との間で信号を送受信することで測定され、指定された通信方式及び試験項目のそれぞれを識別するための入力情報が付加された波形データをコンピュータに解析させる解析プログラム(P1)であって、
前記解析プログラムは、
前記波形データに対して複数種類の演算処理を行うための、当該演算処理の種類ごとの処理機能(P31〜P34)と、
通信方式ごとに設けられ、試験項目ごとに所望の解析データを出力するために1以上の前記処理機能を所定の順序に従い一連の処理として関連付けて実行させる制御機能(P21〜P24)と、
前記波形データに付加された入力情報を基に前記通信方式と前記試験項目とを特定し、特定された前記通信方式に応じて前記制御機能を実行させる特定機能(P10)と、
を備え、当該制御機能が実行されることで、特定された前記試験項目に応じて前記処理機能が実行されることを特徴とする解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−209793(P2012−209793A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74312(P2011−74312)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】