移動体通信端末試験装置及び移動体通信端末試験方法
【課題】パワーブーストにより信号全体の電力に対するDPCCHの電力の比率が低下した場合においても、受信信号を精度よく同期させる。
【解決手段】受信部は、受信信号を所定周期でサンプリングし、少なくとも第1、第2、及び第3のサンプリング信号を出力するA/D変換部と、第1及び第2の物理チャネルにおける第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、第1及び第2の物理チャネルにおける第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、第1及び第2の物理チャネルにおける第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、第1の電力値、第2の電力値、及び第3の電力値を基に補正係数を算出する補正係数算出部と、第1の補正係数に応じて、受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正部と、第1の逆拡散部と、を備える。
【解決手段】受信部は、受信信号を所定周期でサンプリングし、少なくとも第1、第2、及び第3のサンプリング信号を出力するA/D変換部と、第1及び第2の物理チャネルにおける第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、第1及び第2の物理チャネルにおける第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、第1及び第2の物理チャネルにおける第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、第1の電力値、第2の電力値、及び第3の電力値を基に補正係数を算出する補正係数算出部と、第1の補正係数に応じて、受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正部と、第1の逆拡散部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と同様の機能を有する試験装置であって、携帯電話機などの移動体通信端末から送信される被試験信号を解析する技術に関し、特に被試験信号の同期に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代の移動通信システムにおける無線通信方式の一つとして、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access 広帯域符号分割多重接続)が規格化されている。
【0003】
さらに、このW−CDMAを基礎として、ダウンリンクのデータ通信速度を向上させた第3.5世代の移動通信システム(3.5G)のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の規格化がなされている。
【0004】
また、このHSDPAに対して、アップリンクのデータ通信速度を向上させたHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)の通信方式が規格化されている。
【0005】
このHSUPAの通信方式においては、基地局U1と各利用者が所持する移動体通信端末U2との間で通信を行い、送受される信号内には送受信されるデータや制御情報が多重化されて組込まれている。
【0006】
すなわち、移動体通信端末U2から基地局U1へ送信される信号が上り信号(Uplink)であり、基地局U1から移動体通信端末U2へ送信される信号が下り信号(Downlink)である。
【0007】
W−CDMA通信方式における上り信号は、送信すべきデータを含むデータチャネルDPDCH(Dedicated Physical Data Channel)及び、制御情報を含む制御チャネルDPCCH(Dedicated Physical Control Channel)を含む。これらはそれぞれ、指定された拡散符号でスペクトラム拡散されたのち加算される。加算された出力は高周波に変換された後、アンテナから無線電波としてオンエアされる。
【0008】
HSDPAとHSUPAとの各通信方式の上り信号には、前述したW−CDMAのデータチャネルDPDCH、制御チャネルDPCCHに加えて、拡張されたHSDPAによる制御チャネルHS−DPCCH(High speed Dedicated Physical Control Channel)、HSUPAのデータチャネルE−DPDCH(Enhanced Dedicated Physical Data Channel)、制御チャネルE−DPCCH(Enhanced Dedicated Physical Control Channel)の合計5個の物理チャネルが組込まれている。これらはそれぞれ、指定された拡散符号でスペクトラム拡散されたのち加算される。
【0009】
なお、データチャネルと制御チャネルとは物理チャネルを構成する。
【0010】
そして、これらの5個の物理チャネルは、図11に示すように、上り信号(uplink)と、下り信号(downlink)毎に、個別に設けられ、上り信号(uplink)の各物理チャネルと下り信号(downlink)の各物理チャネルとは、異なる周波数帯域に設定されている。
【0011】
ここで、上り信号(uplink)には5個の物理チャネルがあり、それぞれ、符号多重化されているので、各物理チャネルは、図11に示すように電力方向に積み重ねられている。
【0012】
一方で、移動体通信端末U2から受信した信号と移動体通信端末試験装置の内部のタイミングとを同期させる方法としてEarly−late gate法という技術が知られている。この技術はDPCCHの信号を用いてシンボルタイミングを同期させる。図12は、Early−late gate法による補正の内容を説明するために、サンプリング信号と相関電力の関係を示したグラフである。Early−late gate法では、チップ(Chip)レートの信号を5倍の周波数(即ち、1/5の周期)でオーバーサンプリングしサンプリング信号とする。例えば図12のL1は、オーバーサンプリングされる前の1チップ分の信号を示している。そのうえで、5つのサンプリング信号中でパワーが最大となるサンプリング信号、即ち、図12のサンプリング信号5nをセンター(Center)として特定する。しかしながら図12に示すように、サンプリング信号5nは、必ずしも同期点であるチップ中心L3を示しているとは限らない。そのためEarly−late gate法では、センターの両側のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれの電力から、図12のL2で示されたサンプリング信号5n−1及び5n+1の電力差を算出し、この電力差から同期点とのずれt0を検出する。なお以降では、「受信信号を同期させる」と記載した場合、特に同期の対象が記載されていない場合は、受信し信号と移動体通信端末試験装置の内部のタイミングとを同期させることを意味するものとする。移動体通信端末試験装置は、この同期したタイミングを基準として、受信信号の復号や解析を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2008/053845
【特許文献2】特開2003−163613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
3GPP(3rd. Generation Partnership Project)により、変調方式が16QAMまで拡張されたHSPA Evolutionが規格化された。このHSPA Evolutionでは、パワーブースト(PowerBoost)と呼ばれる、HSPAのアップリンクであるHSUPAのチャネルパワーを上げることが規格化されている。このPowerBoostにより、例えばE−DPDCHやE−DPCCHのチャネルパワーを必要に応じて上げることが可能となる。
【0015】
しかしながら、PowerBoostにより信号全体の電力値が高くなり、信号全体の電力に対するDPCCHの電力の比率が低下する。そのため、DPCCHに他のチャネルのノイズが回り込み、シンボルタイミングの同期の精度が低下するという問題が発生する。
【0016】
本発明は上記問題を解決するものであり、パワーブーストにより信号全体の電力に対するDPCCHの電力の比率が低下した場合においても、受信信号を精度よく同期させることが可能な移動体通信端末試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ここでは、DPCCHを含む物理チャネルを第1の物理チャネルと呼び、E−DPCCHを含む物理チャネルを第2の物理チャネルと呼ぶ。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとを含んで構成された受信信号を、移動体通信端末(U2)から受信する受信部(U11)と、前記受信信号を解析する解析部(U12)と、を備えた移動体通信端末試験装置であって、前記受信部は、前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するA/D変換部(11)と、前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正量算出部(15)と、前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正部(14)と、前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号から、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力する第1の逆拡散部(5)と、を備え、前記解析部は、前記第1の逆拡散部からの出力に基づいて前記受信信号を解析することを特徴とする移動体通信端末試験装置である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記補正量算出部は、前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力する第2の逆拡散部(152)と、前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれを個別に、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて複数のチップ分加算する第1の加算部(153)と、前記第1の加算部で加算された前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの電力値を、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて算出するパワー算出部(154)と、を備えていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記受信部は、あらかじめ決められた試験の条件に基づき前記所定のタイミングを生成するタイミング生成部(3)と、当該所定のタイミングに基づき拡散コードを生成するコード生成部(4)と、を備え、前記A/D変換部は、前記タイミング生成部が特定した前記所定のタイミングに基づき前記所定周期を特定し、前記受信信号に含まれる1チップを当該所定周期でサンプリングし、前記第1の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号を逆拡散することで、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力し、前記第2の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記複数のチップ分の前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの位相を、前記複数のチップの先頭に位置する前記第1の出力の位相にあわせて加算することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記第1の加算部は、前記複数のチップのうち先頭に位置するチップに対応する前記第1の出力の電力値を基準電力値として、前記複数のチップのうち2番目以降のチップに対応する前記第1の出力ごとに、当該第1の出力の電力値及び位相を反転させた当該第1の出力の電力値それぞれに前記基準電力値を加算したうえで比較し、電力値の高い方の出力に対応する位相を特定する比較部(1533)と、前記チップごとに、前記第1の出力及び位相を反転させた前記第1の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第1のセレクタ(1534a)と、前記チップごとに、前記第2の出力及び位相を反転させた前記第2の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第2のセレクタ(1534b)と、前記チップごとに、前記第3の出力及び位相を反転させた前記第3の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第3のセレクタ(1534c)と、を備え、前記第1のセレクタ、前記第2のセレクタ、及び前記第3のセレクタそれぞれからの出力それぞれを個別に前記複数のチップ分加算することを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験装置であって、前記受信信号は、所定数のチップで構成される複数のシンボルを含み、前記受信部は、位相同期処理部(6)を備え、前記位相同期処理部は、前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を所定数のシンボル分加算することで第1の信号を算出する第2の加算部(611a)と、前記第1の逆拡散部から出力された前記第2の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を前記所定数のシンボル分加算することで第2の信号を算出する第3の加算部(611b)と、前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号のうち、前記所定数のシンボルに含まれる既知のシンボルを加算することで第3の信号を算出するパイロットデータ加算部(612)と、前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第1の位相特定部(614a)と、前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第2の位相特定部(614b)と、前記第1の位相特定部からの出力、及び前記第2の位相特定部からの出力それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い方の出力を第2の補正係数とする位相補正係数特定部(615)と、前記第2の補正係数に基づき、所定の位相に対する前記受信信号の位相のずれを補正する位相補正部(62)と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記第2の加算部及び第3の加算部はそれぞれ、前記所定数のシンボル分の信号それぞれの位相を、前記所定数のシンボル先頭に位置する信号の位相にあわせて加算することを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとで構成された受信信号を、移動体通信端末から受信する受信部と、前記受信信号を解析する解析部と、を備えた移動体通信端末試験装置を用いた移動体通信端末試験方法であって、前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するサンプリング段階と、前記受信信号に含まれる複数のチップについてそれぞれ前記サンプリング段階を行い、当該複数のチップそれぞれの前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号を抽出する抽出段階と、前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正係数算出段階と、前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正段階と、を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る移動体通信端末試験装置は、第1の物理チャネルの信号及び第2の物理チャネルの信号の電力を反映して受信信号の時間軸に沿ったずれを補正する。これにより、パワーブーストを使用し信号全体の電力が増加した場合においても、増加したパワーに応じた補正が可能となる。つまり、パワーブーストの使用の有無に拘らず、受信信号を精度よく同期させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フレームのデータ構造を説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る移動体通信端末試験装置のブロック図である。
【図3】本実施形態に係る受信部のブロック図である。
【図4】時間同期処理部のブロック図である。
【図5】補正量算出部のブロック図である。
【図6】シンボル加算部のブロック図である。
【図7】位相差検出部のブロック図である。
【図8】信号加算部のブロック図である。
【図9】シンボルタイミングの補正に係る処理のフローチャートである。
【図10】位相の補正に係る処理のフローチャートである。
【図11】HSUPA及びHSDPAに組込まれた各物理チャネルに関する電力と周波数帯域との関係を示した図である。
【図12】Early−late gate法による補正の内容を説明するために、サンプリング信号と相関電力の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1は、W−CDMAのアップリンクまたはHSUPAの物理チャネルのうち、制御チャネルDPCCH及びE−DPCCHの信号に基づき、移動体通信端末U2からの受信信号に対してシンボルタイミングのずれを補正する。そこで、本発明の実施形態に係る移動体通信端末試験装置について説明するにあたり、まず、「フレームのデータ構造」について特にDPCCH及びE−DPCCHに着目して説明し、その後、本実施形態に係る移動体通信端末試験装置の構成及び動作について説明する。
【0021】
(フレームのデータ構造)
まずフレームのデータ構造について図1を参照しながら説明する。図1に示す通り、1つのフレームFr1は、15個のスロットSt0〜St14を含んで構成される。また、DPCCH及びE−DPCCHの場合、1つのスロットは、10個のシンボルSb0〜Sb9を含んで構成される。また、1つのシンボルは、256個のチップ#0〜#255で構成されている。即ち、1スロットは2560チップで構成される。また詳細については後述するが、本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1は、移動体通信端末U2からの受信信号に対し、チップレートの5倍でオーバーサンプリングしサンプリング信号とする。即ち1チップから、5つのサンプリング信号Smp0〜Smp4が出力される。
【0022】
(移動体通信端末試験装置U1の構成)
次に図2〜図6を参照しながら本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1の構成について説明する。まず図2を参照する。図2は、本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1のブロック図である。
【0023】
本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1は、被試験端末U2に試験の条件に基づき生成された基地局信号を送信し、被試験端末U2から送信される被試験信号を受けて、この被試験信号を解析する。移動体通信端末試験装置U1は、送信部U10と、受信部U11と、解析部U12とで構成されている。
【0024】
解析部U12は、実行する試験の規格で定められた試験の条件に基づき、送信部U10及び受信部U11を制御する。送信部U10及び受信部U11については後述する。解析部U12は、試験の条件に基づき送信部U10を制御して被試験端末U2へ向けて基地局信号を送信させるとともに、被試験端末U2からの被試験信号を受信部U11に受信させる。解析部U12は、被試験端末U2からの被試験信号を受信部U11から受けて、この被試験信号に対して電力の測定等の解析に係る処理を実行する。
【0025】
送信部U10は、試験の規格に定義された範囲の周波数帯域に含まれる周波数の指定を解析部U12から受け、指定された周波数の搬送波を所定の変調方式により変調し、基地局信号として被試験端末U2に送信する。
【0026】
受信部U11は、被試験端末U2から被試験信号を受信する。受信部U11は、この被試験信号に対して、解析部U12から指定された周波数の搬送波を所定の復調方式により復調する。この際に受信部U11は、受信信号におけるシンボルタイミングのずれ及び位相のずれの同期を行い、同期がとられ復調された受信信号を解析部U12に出力する。以降では、受信部U11の構成について、シンボルタイミングのずれ及び位相のずれの同期に着目して説明する。
【0027】
(受信部U11の構成)
ここで図3を参照する。図3は、本実施形態に係る受信部U11のブロック図である。図3に示すように、受信部U11は、RF部2と、時間同期処理部1と、タイミング生成部3と、コード生成部4と、逆拡散部5と、位相同期処理部6とを含んで構成される。
【0028】
RF部2は、被試験端末U2から被試験信号を受信し、この被試験信号をベースバンド信号に変調して時間同期処理部1に出力する。
【0029】
時間同期処理部1は、RF部2でベースバンド信号に変調された受信信号を、タイミング生成部3で特定された移動体通信端末試験装置の内部のタイミングに基づきA/D変換したうえで直交復調する。これにより受信信号は、IとQの互い直交するデータに分離され復調される。また時間同期処理部1は、コード生成部4で生成されたコードに基づき、直交復調された受信信号のシンボルタイミングのずれ(時間軸に沿ったずれ)を補正して逆拡散部5に出力する。なお時間同期処理部1の詳細な構成については以降で説明する。また逆拡散部5については後述する。
【0030】
タイミング生成部3は、受信信号の時間軸に沿った移動体通信端末試験装置の内部のタイミング、即ちタイミング信号を生成する。タイミング生成部3は、特定したタイミング信号を、時間同期処理部1(具体的には、後述するA/D変換部11)及びコード生成部4に出力する。
【0031】
コード生成部4は、タイミング生成部3からタイミング信号を受け、このタイミング信号に同期させたスクランブルコードや、各物理チャネルに対応する拡散コードを生成する。コード生成部4は、生成したスクランブルコードを、時間同期処理部1(具体的には、後述するマッチドフィルタ13)に出力する。スクランブルコードとは、フレーム内の既知のシンボルに基づき生成されたコードである。時間同期処理部1は、このスクランブルコードに基づき、フレームの先頭位置をタイミング信号にあわせて補正する。またコード生成部4は、生成した拡散コードのうち、DPCCH及びE−DPCCHの拡散コードを、時間同期処理部1(具体的には、後述する補正量算出部15)に出力する。またコード生成部4は、各物理チャネルに対応する拡散コードを逆拡散部5に出力する。
【0032】
逆拡散部5は、直交復調された受信信号(I、Qデータ)を受ける。また逆拡散部5は、各チャネルに対応する拡散コードをコード生成部4から受ける。逆拡散部5は、直交復調された受信信号を逆拡散することで、受信信号から各チャネルの信号(I、Qデータ)を得る。逆拡散部5は、逆拡散により得られた各チャネルの信号を位相同期処理部6に出力する。
【0033】
位相同期処理部6は、DPCCHのパイロットデータに基づき、逆拡散部5から受信した各チャネルの信号(I、Qデータ)の位相を補正して解析部U12に出力する。なお位相同期処理部6の詳細な構成については以降で説明する。
【0034】
(時間同期処理部1の構成)
次に図4を参照しながら時間同期処理部1の詳細な構成について説明する。図4は、時間同期処理部1のブロック図である。図4に示すように、時間同期処理部1は、A/D変換部11と、直交復調部12と、マッチドフィルタ13と、タイミング補正部14と、補正量算出部15と、間引き部16とで構成される。
【0035】
A/D変換部11は、RF部2でベースバンド信号に変調された受信信号を、タイミング生成部3で生成されたタイミング信号に同期し、チップレートの5倍の周波数(1/5の周期)を有するサンプリングクロックでA/D変換する。このときA/D変換部11は、チップレートの受信信号を5倍でオーバーサンプリングする。即ち、A/D変換部11は、1チップあたり5つのサンプリング信号Smp0〜Smp4を得る。A/D変換部11は、オーバーサンプリングされた受信信号を直交復調部12に出力する。
【0036】
直交復調部12は、オーバーサンプリングされた受信信号をA/D変換部11から受ける。直交復調部12は、この受信信号を、IとQの互い直交するデータに分離して復調する。直交復調部12は、直交復調された受信信号をマッチドフィルタ13及びタイミング補正部14に出力する。
【0037】
マッチドフィルタ13は、直交復調された受信信号を直交復調部12から受ける。またマッチドフィルタ13は、コード生成部4からスクランブルコードを受ける。マッチドフィルタ13は、直交復調された受信信号とスクランブルコードとをパターン比較し、この受信信号におけるフレームの先頭位置のずれ(時間軸に沿ったずれ)を検出する。マッチドフィルタ13は、検出されたフレームの先頭位置のずれを示す情報をタイミング補正部14に出力する。
【0038】
タイミング補正部14は、直交復調された受信信号を直交復調部12から受ける。またタイミング補正部14は、フレームの先頭位置のずれを示す情報をマッチドフィルタ13から受ける。タイミング補正部14は、このフレームの先頭位置のずれを示す情報に基づき、直交復調された受信信号の時間軸に沿ったずれを補正する。この補正により、フレームの先頭位置が補正されるため、1チップを構成する5つのサンプリング信号のうち特定の位置のサンプリング信号(例えばサンプリング信号Smp2)の相関電圧が最も高くなる。即ち、その特定の位置のサンプリング信号が、チップ中心に近いセンターのサンプリング信号となる。なお以降では、センターのサンプリング信号(即ちサンプリング信号Smp2)をサンプリング信号5nと呼ぶ場合がある。またセンターの直前のサンプリング信号(即ちサンプリング信号Smp1)をサンプリング信号5n−1、センターの直後のサンプリング信号(即ちサンプリング信号Smp3)をサンプリング信号5n+1と呼ぶ場合がある。
【0039】
タイミング補正部14は、フレームの先頭位置が補正された受信信号を一時的にバッファリングするとともに、この受信信号を補正量算出部15に出力する。この受信信号を受けて補正量算出部15は、シンボルタイミングのずれ(時間時に沿ったずれ)を算出する。補正量算出部15については後述する。
【0040】
次にタイミング補正部14は、補正量算出部15から、シンボルタイミングのずれを示す情報(即ち、補正係数)を受ける。タイミング補正部14は、このシンボルタイミングのずれを示す情報に基づき、バッファリングされた受信信号を時間軸に沿ってさらに補正する。これにより、受信信号が、タイミング生成部3により生成されたタイミング信号に同期する。タイミング補正部14は、シンボルタイミングのずれが補正された受信信号を間引き部16に出力する。
【0041】
間引き部16は、シンボルタイミングのずれが補正された受信信号をタイミング補正部14から受ける。間引き部16は、5倍にオーバーサンプリングされたサンプリング信号Smp0〜Smp4のうち、センター以外のサンプリング信号Smp0、Smp1、Smp3、及びSmp4を間引き、サンプリング信号Smp2のみを逆拡散部5に出力する。
【0042】
(補正量算出部15の構成)
次に図5を参照しながら補正量算出部15の詳細な構成について説明する。図5は、補正量算出部15のブロック図である。図5に示すように、補正量算出部15は、DPCCH処理部150aと、E−DPCCH処理部150bと、加算器155と、補正係数算出部156とを含んで構成される。またDPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bはそれぞれ、セレクタ151と、逆拡散部152と、シンボル加算部153と、パワー算出部154とを含んで構成される。
【0043】
フレームの先頭位置が補正されてタイミング補正部14から出力された受信信号は、DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれに入力される。DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bは、この受信信号からサンプリング信号5n、5n−1、5n+1を取出し、それぞれに対応する拡散コードで逆拡散したうえで、各サンプリング信号の1フレーム分の電力を算出する。この一連の動作の詳細を、セレクタ151、逆拡散部152、シンボル加算部153、及びパワー算出部154の動作として以降で説明する。
【0044】
セレクタ151は、フレームの先頭位置が補正された受信信号をタイミング補正部14から受ける。セレクタ151は、この受信信号に対し、チップごとにサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を取出し、それぞれ区別して逆拡散部152に出力する。なお、前述したとおり、受信信号はフレームの先頭位置のずれが補正されているため、セレクタ151を、特定の位置のサンプリング信号を取出すように動作させることで、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を選択的に取出せる。なお、このときセレクタ151は、マッチドフィルタ13からフレームの先頭位置のずれを示す情報を受けて、この情報に基づきサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1の位置を特定するようにしてもよい。
【0045】
逆拡散部152は、コード生成部4から拡散コードを受ける。このとき、DPCCH処理部150aの逆拡散部152は、DPCCHに対応する拡散コードをコード生成部4から受ける。またE−DPCCH処理部150bの逆拡散部152は、E−DPCCHに対応する拡散コードをコード生成部4から受ける。
【0046】
逆拡散部152は、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を個々に受け、それぞれをコード生成部4から受けた拡散コードで逆拡散する。逆拡散部152は、逆拡散したサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1をシンボル加算部153に出力する。
【0047】
シンボル加算部153は、逆拡散部152からサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を受け、それぞれを10シンボル分(即ち1スロット分)加算する。このときシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5nそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。またシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれを、サンプリング信号5nの位相にあわせて加算する。このシンボル加算部153の詳細な構成については後述する。
【0048】
シンボル加算部153は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を、それぞれ区別してパワー算出部154に出力する。
【0049】
パワー算出部154は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1をシンボル加算部153から受ける。パワー算出部154は、このサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1それぞれについて、Iデータの二乗とQデータの二乗とを加算することで、各サンプリング信号の1スロット(10シンボル分)分の電力を算出する。パワー算出部154は、算出した1スロット分の電力を15スロット分加算することで、1フレーム分の電力をサンプリング信号ごとに算出する。パワー算出部154は、サンプリング信号ごとに算出した1フレーム分の電力を、それぞれ区別して加算器155に出力する。
【0050】
加算器155は、DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれのパワー算出部154から、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1それぞれの1フレーム分の電力を受ける。加算器155は、受信した各電力を、サンプリング信号ごとに加算し、それぞれを区別して補正係数算出部156に出力する。即ち、加算器155は、DPCCH処理部150aから出力されたサンプリング信号5nの電力と、E−DPCCH処理部150bから出力されたサンプリング信号5nの電力とを加算し、サンプリング信号5nの電力値PCを算出する。同様にして加算器155は、DPCCH処理部150aから出力されたサンプリング信号5n−1の電力と、E−DPCCH処理部150bから出力されたサンプリング信号5n−1の電力とを加算し、サンプリング信号5n−1の電力値PEを算出する。また加算器155は、DPCCH処理部150aから出力されたサンプリング信号5n+1の電力と、E−DPCCH処理部150bから出力されたサンプリング信号5n+1の電力とを加算し、サンプリング信号5n+1の電力値PLを算出する。加算器155は、算出された電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して補正係数算出部156に出力する。
【0051】
補正係数算出部156は、電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して加算器155から受ける。補正係数算出部156は、この電力値PC、PE、及びPLを、計算式(PL−PE)/(PC+PE+PL)に適用し、シンボルタイミングのずれを示す情報を算出する。なお計算式(PL−PE)/(PC+PE+PL)を適用することで、同一の時間軸に沿ったずれであれば、パワーの大きさに関係なく同一の補正係数を得ることが可能である。補正係数算出部156は、算出したシンボルタイミングのずれを示す情報(即ち、補正係数)をタイミング補正部14に出力する。タイミング補正部14は、この情報に基づきシンボルタイミングのずれを補正する。
【0052】
なお従来は、DPCCHのサンプリング信号のみを用いて補正を行っていた。これに対し、本実施形態に係る補正量算出部15は、DPCCH及びE−DPCCH双方のサンプリング信号を用いて補正を行う。これにより、受信信号全体のパワー増加を考慮した補正を行うことが可能である。即ち、パワーブーストを使用することで、DPCCHの信号にノイズが回り込んだ場合においても、出力の大きいE−DPCCHの信号も含めて補正係数を算出する。これにより、パワーブーストを使用し信号全体の電力が増加した場合においても、増加したパワーに応じた補正が可能となる。つまり、パワーブーストの使用の有無に拘らず、受信信号を精度よく同期させることが可能となる。
【0053】
(シンボル加算部153の構成)
次に図6を参照しながらシンボル加算部153が10シンボル分のサンプリング信号を加算するときの詳細な動作について説明する。図6は、シンボル加算部153のブロック図である。図6に示すように、シンボル加算部153は、位相調整部1531a及び1531bと、加算器1532a及び1532bと、比較部1533と、セレクタ1534a〜1534cと、累積加算器1535とを含んで構成される。
【0054】
逆拡散部152で逆拡散されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1はそれぞれ区別され、位相調整部1531a及び1531bに入力される。位相調整部1531aは、入力されたサンプリング信号を、位相を変更せずに(0°)出力する。また位相調整部1531bは、入力されたサンプリング信号を、位相を反転させたうえで(180°)出力する。なお位相が反転されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を、それぞれサンプリング信号5n’、5n−1’、及び5n+1’とする。
【0055】
サンプリング信号5n、5n’、5n−1、5n−1’、5n+1、及び5n+1’は、それぞれ個別にセレクタ1534a〜1534cに入力される。またサンプリング信号5nは加算器1532aに入力され、サンプリング信号5n’は加算器1532bに入力される。
【0056】
セレクタ1534a〜1534cは、入力されたサンプリング信号が10シンボル中の先頭シンボルに相当するサンプリング信号の場合、そのサンプリング信号のうち予め決められた位相のサンプリング信号(例えばサンプリング信号5n、5n−1、5n+1)を累積加算器1535に出力する。
【0057】
またセレクタ1534a〜1534cは、入力されたサンプリング信号が10シンボル中の先頭シンボルではない場合(即ち2番目〜10番目のシンボルのいずれかの場合)、比較部1533に通知された位相に対応するサンプリング信号を累積加算器1535に出力する。比較部1533の動作については後述する。例えば、比較部1533から位相として0°が通知されたとする。この場合、セレクタ1534aは、サンプリング信号5n及び5n’のうち、0°に対応するサンプリング信号5nを出力する。同様にしてセレクタ1534bはサンプリング信号5n−1を、セレクタ1534cはサンプリング信号5n+1をそれぞれ出力する。また比較部1533から位相として180°が通知された場合は、セレクタ1534aはサンプリング信号5n’を、セレクタ1534bはサンプリング信号5n−1’を、セレクタ1534cはサンプリング信号5n+1’をそれぞれ出力する。
【0058】
セレクタ1534a〜1534cから出力されたサンプリング信号は、それぞれ個別に累積加算器1535a〜1535cに入力される。累積加算器1535a〜1535cは、入力されたサンプリング信号をバッファリングしながら10シンボル分加算する。なお、累積加算器1535a〜1535cにバッファリングされたサンプリング信号を、それぞれサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1とする。累積加算器1535a〜1535cは、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1を、パワー算出部154にそれぞれ出力する。累積加算器1535a〜1535cは、パワー算出部154にサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1を出力後、バッファリングしていたサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1をそれぞれクリアする。
【0059】
加算器1532aは、サンプリング信号5nが入力されると、累積加算器1535aにバッファリングされたサンプリング信号5n0を読み出す。加算器1532aは、サンプリング信号5nにサンプリング信号5n0を加算する。加算後のサンプリング信号をサンプリング信号5n+5n0とする。加算器1532aは、サンプリング信号5n+5n0を比較部1533に出力する。
【0060】
また加算器1532bは、サンプリング信号5n’が入力されると、累積加算器1535aにバッファリングされたサンプリング信号5n0を読み出す。加算器1532bは、サンプリング信号5n’にサンプリング信号5n0を加算する。加算後のサンプリング信号をサンプリング信号5n’+5n0とする。加算器1532bは、サンプリング信号5n’+5n0を比較部1533に出力する。
【0061】
比較部1533は、サンプリング信号5n+5n0及び5n’+5n0の電力値を算出したうえで比較し、電力値の高いサンプリング信号に対応する位相を特定する。即ち、サンプリング信号5n+5n0の電力値が高い場合には位相は0°となり、サンプリング信号5n’+5n0の電力値が高い場合には位相は180°となる。またサンプリング信号5n+5n0の電力値とサンプリング信号5n+’5n0の電力値とが等しい場合、比較部1533は位相を0°とする。なお、電力値が低くなる場合は、加算されたサンプリング信号それぞれが互い打ち消し合って電力が低くなる。即ちこの場合は、加算されたサンプリング信号それぞれの位相が異なることを意味する。比較部1533は、特定された位相をセレクタ1534a〜1534cに通知する。
【0062】
以上のようにシンボル加算部153の各構成を動作させることで、10シンボル分のサンプリング信号5nそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。また10シンボル分のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれを、サンプリング信号5nの位相にあわせて加算する。このように動作することで、シンボル加算部153は、受信信号を精度よく平均化することが可能となる。
【0063】
(位相同期処理部6の構成)
次に図3を参照しながら位相同期処理部6の構成について説明する。図3に示すように、位相同期処理部6は、位相差検出部61と、位相補正部62とを含んで構成される。
【0064】
位相差検出部61は、逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、DPCCH及びE−DPCCHに対応する信号(I、Qデータ)を受ける。位相差検出部61は、DPCCH及びE−DPCCHに対応する信号と、DPCCHのパイロットデータとに基づき、逆拡散後の各チャネルに対応する信号間の位相のずれ(以降では単に「位相のずれ」と呼ぶ場合がある)を示す情報(I、Qデータ)を算出する。この位相差検出部61の詳細な構成については後述する。位相差検出部61は、算出した位相のずれを示す情報を位相補正部62に出力する。
【0065】
位相補正部62は、逆拡散部5から各チャネルに対応する信号(I、Qデータ)を受ける。また位相補正部62は、位相差検出部61から、位相のずれを示す情報(I、Qデータ)を受ける。位相補正部62は、各チャネルに対応する信号それぞれに、この位相のずれを示す情報を乗算することで、各チャネルに対応する信号の位相のずれを補正する。位相補正部62は、位相のずれを補正した各チャネルの信号を解析部U12に出力する。
【0066】
(位相差検出部61の構成)
次に図7を参照しながら位相差検出部61の詳細な構成について説明する。図7は、位相差検出部61のブロック図である。図7に示すように、位相差検出部61は、信号加算部611a及び611bと、パイロットデータ加算部612と、パイロットデータ定義部613と、DPCCH位相特定部614aと、E−DPCCH位相特定部614bと、位相補正係数特定部615とを含んで構成される。
【0067】
信号加算部611aは、逆拡散部5で逆拡散された信号のうち、DPCCHに対応する信号を受ける。また信号加算部611bは、逆拡散部5で逆拡散された信号のうち、E−DPCCHに対応する信号を受ける。信号加算部611a及び611bはそれぞれ、受信した信号を10シンボル分加算する。このとき信号加算部611a及び611bは、10シンボル分の信号の位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。この信号加算部611a及び611bの詳細な動作については後述する。信号加算部611aは、10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号をDPCCH位相特定部614aに出力する。また信号加算部611bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号をE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0068】
パイロットデータ定義部613は、DPCCHに対応する信号のうち、既知のシンボルに関する情報を含む。この情報には、既知のシンボルそれぞれの位相を示す情報も含まれる。
【0069】
パイロットデータ加算部612は、逆拡散部5で逆拡散された信号のうち、DPCCHに対応する信号を受ける。またパイロットデータ加算部612は、パイロットデータ定義部613から既知のシンボルに関する情報を読み出す。パイロットデータ加算部612は、既知のシンボルに関する情報に基づき、DPCCHに対応する信号に含まれる既知のシンボルの位相をそろえて加算する。この加算された既知のシンボルを信号F0とする。パイロットデータ加算部612は、加算された既知のシンボル、即ち信号F0を、DPCCH位相特定部614a及びE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0070】
DPCCH位相特定部614aは、10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号を信号加算部611aから受ける。DPCCH位相特定部614aは、このDPCCHに対応する信号を分波し、同相(0°)の信号F1と、位相を反転させた(180°)信号F1’とを生成しそれぞれをバッファリングする。またDPCCH位相特定部614aは、パイロットデータ加算部612から信号F0を受ける。DPCCH位相特定部614aは、信号F1及びF1’をそれぞれ信号F0と加算する。加算後の信号をそれぞれ信号F1+F0及びF1’+F0とする。DPCCH位相特定部614aは、信号F1+F0の電力値及び信号F1’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。即ち、信号F1+F0の電力値が高い場合には位相は0°となり、信号F1’+F0の電力値が高い場合には位相は180°となる。DPCCH位相特定部614aは、バッファリングされた信号F1及びF1’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。これにより、信号F1及びF1’のうち、信号F0と同相の信号が位相補正係数特定部615に出力される。その後、バッファリングされた信号F1及びF1’はクリアされる。
【0071】
この動作は、E−DPCCH位相特定部614bについても同様である。即ち、E−DPCCH位相特定部614bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号を信号加算部611bから受け、同相(0°)の信号F2と、位相を反転させた(180°)信号F2’とを生成しそれぞれをバッファリングする。E−DPCCH位相特定部614bは、パイロットデータ加算部612から信号F0を受け、信号F2及びF2’とそれぞれ加算し、信号F2+F0及びF2’+F0を求める。E−DPCCH位相特定部614bは、信号F2+F0の電力値及び信号F2’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。E−DPCCH位相特定部614bは、バッファリングされた信号F2及びF2’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。その後、バッファリングされた信号F2及びF2’はクリアされる。
【0072】
位相補正係数特定部615は、DPCCH位相特定部614aから10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。また位相補正係数特定部615は、E−DPCCH位相特定部614bから10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。位相補正係数特定部615は、DPCCHに対応する信号の電力値及びE−DPCCHに対応する信号の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号を、位相のずれを示す情報として位相補正部62に出力する。
【0073】
なお従来は、既知のシンボルに基づき位相の補正を行っていた。しかしながら、DPCCHに関しては、既知のシンボルは、1スロットあたり3〜8のシンボルしか含まれない。またE−DPCCHに関しては、既知のシンボルが存在しない。これに対し、本実施形態に係る位相差検出部61は、先頭シンボルの位相にあわせて10シンボル分を加算し、これらを既知のシンボルを加算した信号の位相にあわせている。これにより位相差検出部61は、DPCCH及びE−DPCCHそれぞれについて、10シンボル分の信号を用いて位相のずれを示す情報(I、Qデータ)を算出することが可能となる。また位相差検出部61は、DPCCH及びE−DPCCHそれぞれで算出した位相のずれを示す情報のうち、電力値の高い方を位相のずれを示す情報として採用する。このように動作することで、例えばパワーブーストを使用することで、DPCCHの信号にノイズが回り込んだ場合においても、出力の大きいE−DPCCHの信号に基づき算出された情報により逆拡散後の各物理チャネルにおける信号間の位相のずれを補正することが可能となる。これにより、パワーブーストの使用の有無に拘らず、精度よく位相のずれを補正することが可能となる。
【0074】
(信号加算部611a及び611bの構成)
次に図8を参照しながら信号加算部611a及び611bが10シンボル分の信号を加算するときの詳細な動作について説明する。図8は、信号加算部611a及び611bのブロック図である。図8に示すように、信号加算部611a及び611bは、位相調整部6111a及び6111bと、加算器6112a及び6112bと、比較部6113と、セレクタ6114と、累積加算器6115とを含んで構成される。
【0075】
逆拡散部5で逆拡散された信号は、位相調整部6111a及び6111bに入力される。位相調整部6111aは、入力された信号を、位相を変更せずに(0°)出力する。また位相調整部6111bは、入力された信号を、位相を反転させたうえで(180°)出力する。なお位相調整部6111aが出力する信号を信号Fa、位相調整部6111bが出力する信号を信号Fa’とする。
【0076】
信号Fa及びFa’は、セレクタ6114に入力される。また信号Faは加算器6112aに入力され、信号Fa’は加算器6112bに入力される。
【0077】
セレクタ6114は、受信した信号が10シンボル中の先頭シンボルに相当する信号の場合、その信号のうち予め決められた位相の信号(例えば信号Fa)を累積加算器6115に出力する。
【0078】
またセレクタ6114は、入力された信号が10シンボル中の先頭シンボルではない場合(即ち2番目〜10番目のシンボルのいずれかの場合)、比較部6113に通知された位相に対応する信号を累積加算器6115に出力する。比較部6113の動作については後述する。例えば、比較部6113から位相として0°が通知されたとする。この場合、セレクタ6114は、信号Fa及びFa’のうち、0°に対応する信号Faを出力する。また比較部6113から位相として180°が通知された場合は、セレクタ6114は信号Fa’を出力する。
【0079】
セレクタ6114から出力された信号は、累積加算器6115に入力される。累積加算器6115は、入力された信号をバッファリングしながら10シンボル分加算する。なお、累積加算器6115にバッファリングされた信号を、信号Fa0とする。累積加算器6115は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号Fa0を、対応する位相特定部(DPCCH位相特定部614aまたはE−DPCCH位相特定部614b)に出力する。累積加算器6115は、対応する位相特定部に信号Fa0を出力後、バッファリングしていた信号Fa0をクリアする。
【0080】
加算器6112aは、信号Faが入力されると、累積加算器6115にバッファリングされた信号Fa0を読み出す。加算器6112aは、信号Faに信号Fa0を加算する。加算後の信号を信号Fa+Fa0とする。加算器6112aは、信号Fa+Fa0を比較部6113に出力する。
【0081】
また加算器6112bは、信号Fa’が入力されると、累積加算器6115にバッファリングされた信号Fa0を読み出す。加算器6112bは、信号Fa’に信号Fa0を加算する。加算後の信号を信号Fa’+Fa0とする。加算器6112bは、信号Fa’+Fa0を比較部6113に出力する。
【0082】
比較部6113は、信号Fa+Fa0及びFa’+Fa0の電力値を算出したうえで比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。即ち、信号Fa+Fa0の電力値が高い場合には位相は0°となり、信号Fa’+Fa0の電力値が高い場合には位相は180°となる。また信号Fa+Fa0の電力値と信号Fa+’ Fa0の電力値とが等しい場合、比較部1533は位相を0°とする。比較部6113は、特定した位相をセレクタ6114に通知する。
【0083】
以上のように信号加算部611a及び611bの各構成を動作させることで、10シンボル分の信号Faそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算することが可能となる。
【0084】
(シンボルタイミング補正の処理)
次に時間同期処理部1によるシンボルタイミングの補正に係る一連の処理について図9を参照しながら説明する。図9は、シンボルタイミングの補正に係る処理のフローチャートである。
【0085】
(ステップS01)
被試験端末U2から送信された被試験信号は、RF部2で受信される。RF部2は、この被試験信号をベースバンド信号に変調してA/D変換部11に出力する。
【0086】
(ステップS02)
A/D変換部11は、RF部2でベースバンド信号に変調された受信信号を、タイミング生成部3で生成されたタイミング信号に同期し、チップレートの5倍の周波数(1/5の周期)を有するサンプリングクロックでA/D変換する。このときA/D変換部11は、チップレートの受信信号を5倍でオーバーサンプリングする。A/D変換部11は、オーバーサンプリングされた受信信号を直交復調部12に出力する。
【0087】
直交復調部12は、オーバーサンプリングされた受信信号をA/D変換部11から受け、この受信信号を、IとQの互い直交するデータに分離して復調する。直交復調部12は、直交復調された受信信号をマッチドフィルタ13及びタイミング補正部14に出力する。
【0088】
(ステップS03)
マッチドフィルタ13は、コード生成部4からスクランブルコードを受け、直交復調された受信信号とスクランブルコードとをパターン比較し、受信信号におけるフレームの先頭位置のずれ(時間軸に沿ったずれ)を検出する。マッチドフィルタ13は、検出されたフレームの先頭位置のずれを示す情報をタイミング補正部14に出力する。
【0089】
(ステップS04)
タイミング補正部14は、マッチドフィルタ13から受信したフレームの先頭位置のずれを示す情報に基づき、直交復調部12から受信した直交復調された受信信号の時間軸に沿ったずれを補正する。タイミング補正部14は、フレームの先頭位置が補正された受信信号を一時的にバッファリングするとともに、この受信信号をDPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれのセレクタ151に出力する。
【0090】
(ステップS05)
DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれのセレクタ151は、この受信信号に対し、チップごとにサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を取出し、それぞれ区別して逆拡散部152に出力する。
【0091】
(ステップS06)
逆拡散部152は、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を個々に受け、それぞれをコード生成部4から受けた拡散コードで逆拡散する。このときDPCCH処理部150aの逆拡散部152は、DPCCHに対応する拡散コードに基づき受信信号を逆拡散する。またE−DPCCH処理部150bの逆拡散部152は、E−DPCCHに対応する拡散コードに基づき受信信号を逆拡散する。逆拡散部152は、逆拡散したサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1をシンボル加算部153に出力する。
【0092】
シンボル加算部153は、逆拡散部152からサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を受け、それぞれを10シンボル分(即ち1スロット分)加算する。このときシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5nそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。またシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれを、サンプリング信号5nの位相にあわせて加算する。
【0093】
シンボル加算部153は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を、それぞれ区別してパワー算出部154に出力する。
【0094】
パワー算出部154は、このサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1それぞれについて、Iデータの二乗とQデータの二乗とを加算することで、各サンプリング信号の1スロット(10シンボル分)分の電力を算出する。パワー算出部154は、算出した1スロット分の電力を15スロット分加算することで、1フレーム分の電力をサンプリング信号ごとに算出する。パワー算出部154は、サンプリング信号ごとに算出した1フレーム分の電力を、それぞれ区別して加算器155に出力する。
【0095】
加算器155は、受信した各電力を、サンプリング信号ごとに加算し、サンプリング信号5nに対応する電力値PC、サンプリング信号5n−1に対応する電力値PE、及びサンプリング信号5n+1に対応する電力値PLを算出する。加算器155は、算出された電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して補正係数算出部156に出力する。
【0096】
補正係数算出部156は、電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して加算器155から受ける。補正係数算出部156は、この電力値PC、PE、及びPLを、計算式(PL−PE)/(PC+PE+PL)に適用し、シンボルタイミングのずれを示す情報を算出する。補正係数算出部156は、算出したシンボルタイミングのずれを示す情報をタイミング補正部14に出力する。
【0097】
(ステップS07)
タイミング補正部14は、補正量算出部15から、シンボルタイミングのずれを示す情報を受ける。タイミング補正部14は、このシンボルタイミングのずれを示す情報に基づき、バッファリングされた受信信号を時間軸に沿ってさらに補正する。タイミング補正部14は、シンボルタイミングのずれが補正された受信信号を間引き部16に出力する。
【0098】
間引き部16は、5倍にオーバーサンプリングされたサンプリング信号Smp0〜Smp4のうち、センター以外のサンプリング信号Smp0、Smp1、Smp3、及びSmp4を間引き、サンプリング信号Smp2のみを逆拡散部5に出力する。以降、逆拡散部5により逆拡散された受信信号は、位相同期処理部6により位相が補正され、解析部U12で解析される。
【0099】
(位相補正の処理)
次に位相同期処理部6による位相の補正に係る一連の処理について図10を参照しながら説明する。図10は、位相の補正に係る処理のフローチャートである。
【0100】
(ステップS11)
逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、DPCCHに対応する信号は、位相差検出部61の信号加算部611aに入力される。信号加算部611aは、受信した信号を10シンボル分加算する。このとき信号加算部611aは、10シンボル分の信号の位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。信号加算部611aは、10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号をDPCCH位相特定部614aに出力する。
【0101】
(ステップS12)
また逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、E−DPCCHに対応する信号は、位相差検出部61の信号加算部611bに入力される。信号加算部611bは、受信した信号を10シンボル分加算する。このとき信号加算部611bは、10シンボル分の信号の位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。信号加算部611bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号をE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0102】
(ステップS13)
また、逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、DPCCHに対応する信号は、パイロットデータ加算部612にも入力される。パイロットデータ加算部612は、パイロットデータ定義部613から既知のシンボルに関する情報を読み出し、この情報に基づき、DPCCHに対応する信号に含まれる既知のシンボルの位相をそろえて加算する。この加算された既知のシンボルを信号F0とする。パイロットデータ加算部612は、加算された既知のシンボル、即ち信号F0を、DPCCH位相特定部614a及びE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0103】
(ステップS14)
DPCCH位相特定部614aは、このDPCCHに対応する信号を分波し、同相(0°)の信号F1と、位相を反転させた(180°)信号F1’とを生成しそれぞれをバッファリングする。DPCCH位相特定部614aは、信号F1及びF1’をそれぞれパイロットデータ加算部612から受信した信号F0と加算する。加算後の信号をそれぞれ信号F1+F0及びF1’+F0とする。DPCCH位相特定部614aは、信号F1+F0の電力値及び信号F1’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。DPCCH位相特定部614aは、バッファリングされた信号F1及びF1’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。その後、バッファリングされた信号F1及びF1’はクリアされる。
【0104】
この動作は、E−DPCCH位相特定部614bについても同様である。即ち、E−DPCCH位相特定部614bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号を信号加算部611bから受け、同相(0°)の信号F2と、位相を反転させた(180°)信号F2’とを生成しそれぞれをバッファリングする。E−DPCCH位相特定部614bは、パイロットデータ加算部612から信号F0を受け、信号F2及びF2’とそれぞれ加算し、信号F2+F0及びF2’+F0を求める。E−DPCCH位相特定部614bは、信号F2+F0の電力値及び信号F2’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。E−DPCCH位相特定部614bは、バッファリングされた信号F2及びF2’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。その後、バッファリングされた信号F2及びF2’はクリアされる。
【0105】
(ステップS15)
位相補正係数特定部615は、DPCCH位相特定部614aから10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。また位相補正係数特定部615は、E−DPCCH位相特定部614bから10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。位相補正係数特定部615は、DPCCHに対応する信号の電力値及びE−DPCCHに対応する信号の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号を、位相のずれを示す情報として位相補正部62に出力する。
【0106】
(ステップS16)
位相補正部62は、逆拡散部5から各チャネルに対応する信号(I、Qデータ)を受ける。位相補正部62は、これらの信号それぞれに、位相補正係数特定部615から受けた位相のずれを示す情報(I、Qデータ)を乗算することで、これらの信号の位相のずれを補正する。位相補正部62は、位相のずれを補正した各チャネルの信号を解析部U12に出力する。
【0107】
以上、本発明に係る移動体通信端末試験装置U1に依れば、パワーブーストを使用した場合においても、第1の物理チャネルの信号及び第2の物理チャネルの信号のうち、パワーブーストされたチャネルの信号に基づき補正を行う。これにより、パワーブーストを使用し信号全体の電力が増加した場合においても、増加したパワーに応じた補正が可能となる。つまり、パワーブーストの使用の有無に拘らず、受信信号を精度よく同期させることが可能となる。
【符号の説明】
【0108】
U1 移動体通信端末試験装置
U10 送信部
U11 受信部
U12 解析部
U2 被試験端末
1 時間同期処理部
11 A/D変換部
12 直交復調部
13 マッチドフィルタ
14 タイミング補正部
15 補正量算出部
150a DPCCH処理部
150b E−DPCCH処理部
151 セレクタ
152 逆拡散部
153 シンボル加算部
1531a、1531b 位相調整部
1532a、1532b 加算器
1533 比較部
1534a、1534b、1534c セレクタ
1535a、1535b、1535c 累積加算器
154 パワー算出部
155 加算器
156 補正係数算出部
16 間引き部
2 RF部
3 タイミング生成部
4 コード生成部
5 逆拡散部
6 位相同期処理部
61 位相差検出部
611a、611b 信号加算部
6111a、6111b 位相調整部
6112a、6112b 加算器
6113 比較部
6114 セレクタ
6115 累積加算器
612 パイロットデータ加算部
613 パイロットデータ定義部
614a DPCCH位相特定部
614b E−DPCCH位相特定部
615 位相補正係数特定部
62 位相補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と同様の機能を有する試験装置であって、携帯電話機などの移動体通信端末から送信される被試験信号を解析する技術に関し、特に被試験信号の同期に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代の移動通信システムにおける無線通信方式の一つとして、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access 広帯域符号分割多重接続)が規格化されている。
【0003】
さらに、このW−CDMAを基礎として、ダウンリンクのデータ通信速度を向上させた第3.5世代の移動通信システム(3.5G)のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の規格化がなされている。
【0004】
また、このHSDPAに対して、アップリンクのデータ通信速度を向上させたHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)の通信方式が規格化されている。
【0005】
このHSUPAの通信方式においては、基地局U1と各利用者が所持する移動体通信端末U2との間で通信を行い、送受される信号内には送受信されるデータや制御情報が多重化されて組込まれている。
【0006】
すなわち、移動体通信端末U2から基地局U1へ送信される信号が上り信号(Uplink)であり、基地局U1から移動体通信端末U2へ送信される信号が下り信号(Downlink)である。
【0007】
W−CDMA通信方式における上り信号は、送信すべきデータを含むデータチャネルDPDCH(Dedicated Physical Data Channel)及び、制御情報を含む制御チャネルDPCCH(Dedicated Physical Control Channel)を含む。これらはそれぞれ、指定された拡散符号でスペクトラム拡散されたのち加算される。加算された出力は高周波に変換された後、アンテナから無線電波としてオンエアされる。
【0008】
HSDPAとHSUPAとの各通信方式の上り信号には、前述したW−CDMAのデータチャネルDPDCH、制御チャネルDPCCHに加えて、拡張されたHSDPAによる制御チャネルHS−DPCCH(High speed Dedicated Physical Control Channel)、HSUPAのデータチャネルE−DPDCH(Enhanced Dedicated Physical Data Channel)、制御チャネルE−DPCCH(Enhanced Dedicated Physical Control Channel)の合計5個の物理チャネルが組込まれている。これらはそれぞれ、指定された拡散符号でスペクトラム拡散されたのち加算される。
【0009】
なお、データチャネルと制御チャネルとは物理チャネルを構成する。
【0010】
そして、これらの5個の物理チャネルは、図11に示すように、上り信号(uplink)と、下り信号(downlink)毎に、個別に設けられ、上り信号(uplink)の各物理チャネルと下り信号(downlink)の各物理チャネルとは、異なる周波数帯域に設定されている。
【0011】
ここで、上り信号(uplink)には5個の物理チャネルがあり、それぞれ、符号多重化されているので、各物理チャネルは、図11に示すように電力方向に積み重ねられている。
【0012】
一方で、移動体通信端末U2から受信した信号と移動体通信端末試験装置の内部のタイミングとを同期させる方法としてEarly−late gate法という技術が知られている。この技術はDPCCHの信号を用いてシンボルタイミングを同期させる。図12は、Early−late gate法による補正の内容を説明するために、サンプリング信号と相関電力の関係を示したグラフである。Early−late gate法では、チップ(Chip)レートの信号を5倍の周波数(即ち、1/5の周期)でオーバーサンプリングしサンプリング信号とする。例えば図12のL1は、オーバーサンプリングされる前の1チップ分の信号を示している。そのうえで、5つのサンプリング信号中でパワーが最大となるサンプリング信号、即ち、図12のサンプリング信号5nをセンター(Center)として特定する。しかしながら図12に示すように、サンプリング信号5nは、必ずしも同期点であるチップ中心L3を示しているとは限らない。そのためEarly−late gate法では、センターの両側のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれの電力から、図12のL2で示されたサンプリング信号5n−1及び5n+1の電力差を算出し、この電力差から同期点とのずれt0を検出する。なお以降では、「受信信号を同期させる」と記載した場合、特に同期の対象が記載されていない場合は、受信し信号と移動体通信端末試験装置の内部のタイミングとを同期させることを意味するものとする。移動体通信端末試験装置は、この同期したタイミングを基準として、受信信号の復号や解析を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2008/053845
【特許文献2】特開2003−163613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
3GPP(3rd. Generation Partnership Project)により、変調方式が16QAMまで拡張されたHSPA Evolutionが規格化された。このHSPA Evolutionでは、パワーブースト(PowerBoost)と呼ばれる、HSPAのアップリンクであるHSUPAのチャネルパワーを上げることが規格化されている。このPowerBoostにより、例えばE−DPDCHやE−DPCCHのチャネルパワーを必要に応じて上げることが可能となる。
【0015】
しかしながら、PowerBoostにより信号全体の電力値が高くなり、信号全体の電力に対するDPCCHの電力の比率が低下する。そのため、DPCCHに他のチャネルのノイズが回り込み、シンボルタイミングの同期の精度が低下するという問題が発生する。
【0016】
本発明は上記問題を解決するものであり、パワーブーストにより信号全体の電力に対するDPCCHの電力の比率が低下した場合においても、受信信号を精度よく同期させることが可能な移動体通信端末試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ここでは、DPCCHを含む物理チャネルを第1の物理チャネルと呼び、E−DPCCHを含む物理チャネルを第2の物理チャネルと呼ぶ。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとを含んで構成された受信信号を、移動体通信端末(U2)から受信する受信部(U11)と、前記受信信号を解析する解析部(U12)と、を備えた移動体通信端末試験装置であって、前記受信部は、前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するA/D変換部(11)と、前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正量算出部(15)と、前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正部(14)と、前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号から、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力する第1の逆拡散部(5)と、を備え、前記解析部は、前記第1の逆拡散部からの出力に基づいて前記受信信号を解析することを特徴とする移動体通信端末試験装置である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記補正量算出部は、前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力する第2の逆拡散部(152)と、前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれを個別に、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて複数のチップ分加算する第1の加算部(153)と、前記第1の加算部で加算された前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの電力値を、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて算出するパワー算出部(154)と、を備えていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記受信部は、あらかじめ決められた試験の条件に基づき前記所定のタイミングを生成するタイミング生成部(3)と、当該所定のタイミングに基づき拡散コードを生成するコード生成部(4)と、を備え、前記A/D変換部は、前記タイミング生成部が特定した前記所定のタイミングに基づき前記所定周期を特定し、前記受信信号に含まれる1チップを当該所定周期でサンプリングし、前記第1の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号を逆拡散することで、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力し、前記第2の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記複数のチップ分の前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの位相を、前記複数のチップの先頭に位置する前記第1の出力の位相にあわせて加算することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記第1の加算部は、前記複数のチップのうち先頭に位置するチップに対応する前記第1の出力の電力値を基準電力値として、前記複数のチップのうち2番目以降のチップに対応する前記第1の出力ごとに、当該第1の出力の電力値及び位相を反転させた当該第1の出力の電力値それぞれに前記基準電力値を加算したうえで比較し、電力値の高い方の出力に対応する位相を特定する比較部(1533)と、前記チップごとに、前記第1の出力及び位相を反転させた前記第1の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第1のセレクタ(1534a)と、前記チップごとに、前記第2の出力及び位相を反転させた前記第2の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第2のセレクタ(1534b)と、前記チップごとに、前記第3の出力及び位相を反転させた前記第3の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第3のセレクタ(1534c)と、を備え、前記第1のセレクタ、前記第2のセレクタ、及び前記第3のセレクタそれぞれからの出力それぞれを個別に前記複数のチップ分加算することを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験装置であって、前記受信信号は、所定数のチップで構成される複数のシンボルを含み、前記受信部は、位相同期処理部(6)を備え、前記位相同期処理部は、前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を所定数のシンボル分加算することで第1の信号を算出する第2の加算部(611a)と、前記第1の逆拡散部から出力された前記第2の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を前記所定数のシンボル分加算することで第2の信号を算出する第3の加算部(611b)と、前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号のうち、前記所定数のシンボルに含まれる既知のシンボルを加算することで第3の信号を算出するパイロットデータ加算部(612)と、前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第1の位相特定部(614a)と、前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第2の位相特定部(614b)と、前記第1の位相特定部からの出力、及び前記第2の位相特定部からの出力それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い方の出力を第2の補正係数とする位相補正係数特定部(615)と、前記第2の補正係数に基づき、所定の位相に対する前記受信信号の位相のずれを補正する位相補正部(62)と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の移動体通信端末試験装置であって、前記第2の加算部及び第3の加算部はそれぞれ、前記所定数のシンボル分の信号それぞれの位相を、前記所定数のシンボル先頭に位置する信号の位相にあわせて加算することを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとで構成された受信信号を、移動体通信端末から受信する受信部と、前記受信信号を解析する解析部と、を備えた移動体通信端末試験装置を用いた移動体通信端末試験方法であって、前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するサンプリング段階と、前記受信信号に含まれる複数のチップについてそれぞれ前記サンプリング段階を行い、当該複数のチップそれぞれの前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号を抽出する抽出段階と、前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正係数算出段階と、前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正段階と、を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る移動体通信端末試験装置は、第1の物理チャネルの信号及び第2の物理チャネルの信号の電力を反映して受信信号の時間軸に沿ったずれを補正する。これにより、パワーブーストを使用し信号全体の電力が増加した場合においても、増加したパワーに応じた補正が可能となる。つまり、パワーブーストの使用の有無に拘らず、受信信号を精度よく同期させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フレームのデータ構造を説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る移動体通信端末試験装置のブロック図である。
【図3】本実施形態に係る受信部のブロック図である。
【図4】時間同期処理部のブロック図である。
【図5】補正量算出部のブロック図である。
【図6】シンボル加算部のブロック図である。
【図7】位相差検出部のブロック図である。
【図8】信号加算部のブロック図である。
【図9】シンボルタイミングの補正に係る処理のフローチャートである。
【図10】位相の補正に係る処理のフローチャートである。
【図11】HSUPA及びHSDPAに組込まれた各物理チャネルに関する電力と周波数帯域との関係を示した図である。
【図12】Early−late gate法による補正の内容を説明するために、サンプリング信号と相関電力の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1は、W−CDMAのアップリンクまたはHSUPAの物理チャネルのうち、制御チャネルDPCCH及びE−DPCCHの信号に基づき、移動体通信端末U2からの受信信号に対してシンボルタイミングのずれを補正する。そこで、本発明の実施形態に係る移動体通信端末試験装置について説明するにあたり、まず、「フレームのデータ構造」について特にDPCCH及びE−DPCCHに着目して説明し、その後、本実施形態に係る移動体通信端末試験装置の構成及び動作について説明する。
【0021】
(フレームのデータ構造)
まずフレームのデータ構造について図1を参照しながら説明する。図1に示す通り、1つのフレームFr1は、15個のスロットSt0〜St14を含んで構成される。また、DPCCH及びE−DPCCHの場合、1つのスロットは、10個のシンボルSb0〜Sb9を含んで構成される。また、1つのシンボルは、256個のチップ#0〜#255で構成されている。即ち、1スロットは2560チップで構成される。また詳細については後述するが、本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1は、移動体通信端末U2からの受信信号に対し、チップレートの5倍でオーバーサンプリングしサンプリング信号とする。即ち1チップから、5つのサンプリング信号Smp0〜Smp4が出力される。
【0022】
(移動体通信端末試験装置U1の構成)
次に図2〜図6を参照しながら本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1の構成について説明する。まず図2を参照する。図2は、本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1のブロック図である。
【0023】
本実施形態に係る移動体通信端末試験装置U1は、被試験端末U2に試験の条件に基づき生成された基地局信号を送信し、被試験端末U2から送信される被試験信号を受けて、この被試験信号を解析する。移動体通信端末試験装置U1は、送信部U10と、受信部U11と、解析部U12とで構成されている。
【0024】
解析部U12は、実行する試験の規格で定められた試験の条件に基づき、送信部U10及び受信部U11を制御する。送信部U10及び受信部U11については後述する。解析部U12は、試験の条件に基づき送信部U10を制御して被試験端末U2へ向けて基地局信号を送信させるとともに、被試験端末U2からの被試験信号を受信部U11に受信させる。解析部U12は、被試験端末U2からの被試験信号を受信部U11から受けて、この被試験信号に対して電力の測定等の解析に係る処理を実行する。
【0025】
送信部U10は、試験の規格に定義された範囲の周波数帯域に含まれる周波数の指定を解析部U12から受け、指定された周波数の搬送波を所定の変調方式により変調し、基地局信号として被試験端末U2に送信する。
【0026】
受信部U11は、被試験端末U2から被試験信号を受信する。受信部U11は、この被試験信号に対して、解析部U12から指定された周波数の搬送波を所定の復調方式により復調する。この際に受信部U11は、受信信号におけるシンボルタイミングのずれ及び位相のずれの同期を行い、同期がとられ復調された受信信号を解析部U12に出力する。以降では、受信部U11の構成について、シンボルタイミングのずれ及び位相のずれの同期に着目して説明する。
【0027】
(受信部U11の構成)
ここで図3を参照する。図3は、本実施形態に係る受信部U11のブロック図である。図3に示すように、受信部U11は、RF部2と、時間同期処理部1と、タイミング生成部3と、コード生成部4と、逆拡散部5と、位相同期処理部6とを含んで構成される。
【0028】
RF部2は、被試験端末U2から被試験信号を受信し、この被試験信号をベースバンド信号に変調して時間同期処理部1に出力する。
【0029】
時間同期処理部1は、RF部2でベースバンド信号に変調された受信信号を、タイミング生成部3で特定された移動体通信端末試験装置の内部のタイミングに基づきA/D変換したうえで直交復調する。これにより受信信号は、IとQの互い直交するデータに分離され復調される。また時間同期処理部1は、コード生成部4で生成されたコードに基づき、直交復調された受信信号のシンボルタイミングのずれ(時間軸に沿ったずれ)を補正して逆拡散部5に出力する。なお時間同期処理部1の詳細な構成については以降で説明する。また逆拡散部5については後述する。
【0030】
タイミング生成部3は、受信信号の時間軸に沿った移動体通信端末試験装置の内部のタイミング、即ちタイミング信号を生成する。タイミング生成部3は、特定したタイミング信号を、時間同期処理部1(具体的には、後述するA/D変換部11)及びコード生成部4に出力する。
【0031】
コード生成部4は、タイミング生成部3からタイミング信号を受け、このタイミング信号に同期させたスクランブルコードや、各物理チャネルに対応する拡散コードを生成する。コード生成部4は、生成したスクランブルコードを、時間同期処理部1(具体的には、後述するマッチドフィルタ13)に出力する。スクランブルコードとは、フレーム内の既知のシンボルに基づき生成されたコードである。時間同期処理部1は、このスクランブルコードに基づき、フレームの先頭位置をタイミング信号にあわせて補正する。またコード生成部4は、生成した拡散コードのうち、DPCCH及びE−DPCCHの拡散コードを、時間同期処理部1(具体的には、後述する補正量算出部15)に出力する。またコード生成部4は、各物理チャネルに対応する拡散コードを逆拡散部5に出力する。
【0032】
逆拡散部5は、直交復調された受信信号(I、Qデータ)を受ける。また逆拡散部5は、各チャネルに対応する拡散コードをコード生成部4から受ける。逆拡散部5は、直交復調された受信信号を逆拡散することで、受信信号から各チャネルの信号(I、Qデータ)を得る。逆拡散部5は、逆拡散により得られた各チャネルの信号を位相同期処理部6に出力する。
【0033】
位相同期処理部6は、DPCCHのパイロットデータに基づき、逆拡散部5から受信した各チャネルの信号(I、Qデータ)の位相を補正して解析部U12に出力する。なお位相同期処理部6の詳細な構成については以降で説明する。
【0034】
(時間同期処理部1の構成)
次に図4を参照しながら時間同期処理部1の詳細な構成について説明する。図4は、時間同期処理部1のブロック図である。図4に示すように、時間同期処理部1は、A/D変換部11と、直交復調部12と、マッチドフィルタ13と、タイミング補正部14と、補正量算出部15と、間引き部16とで構成される。
【0035】
A/D変換部11は、RF部2でベースバンド信号に変調された受信信号を、タイミング生成部3で生成されたタイミング信号に同期し、チップレートの5倍の周波数(1/5の周期)を有するサンプリングクロックでA/D変換する。このときA/D変換部11は、チップレートの受信信号を5倍でオーバーサンプリングする。即ち、A/D変換部11は、1チップあたり5つのサンプリング信号Smp0〜Smp4を得る。A/D変換部11は、オーバーサンプリングされた受信信号を直交復調部12に出力する。
【0036】
直交復調部12は、オーバーサンプリングされた受信信号をA/D変換部11から受ける。直交復調部12は、この受信信号を、IとQの互い直交するデータに分離して復調する。直交復調部12は、直交復調された受信信号をマッチドフィルタ13及びタイミング補正部14に出力する。
【0037】
マッチドフィルタ13は、直交復調された受信信号を直交復調部12から受ける。またマッチドフィルタ13は、コード生成部4からスクランブルコードを受ける。マッチドフィルタ13は、直交復調された受信信号とスクランブルコードとをパターン比較し、この受信信号におけるフレームの先頭位置のずれ(時間軸に沿ったずれ)を検出する。マッチドフィルタ13は、検出されたフレームの先頭位置のずれを示す情報をタイミング補正部14に出力する。
【0038】
タイミング補正部14は、直交復調された受信信号を直交復調部12から受ける。またタイミング補正部14は、フレームの先頭位置のずれを示す情報をマッチドフィルタ13から受ける。タイミング補正部14は、このフレームの先頭位置のずれを示す情報に基づき、直交復調された受信信号の時間軸に沿ったずれを補正する。この補正により、フレームの先頭位置が補正されるため、1チップを構成する5つのサンプリング信号のうち特定の位置のサンプリング信号(例えばサンプリング信号Smp2)の相関電圧が最も高くなる。即ち、その特定の位置のサンプリング信号が、チップ中心に近いセンターのサンプリング信号となる。なお以降では、センターのサンプリング信号(即ちサンプリング信号Smp2)をサンプリング信号5nと呼ぶ場合がある。またセンターの直前のサンプリング信号(即ちサンプリング信号Smp1)をサンプリング信号5n−1、センターの直後のサンプリング信号(即ちサンプリング信号Smp3)をサンプリング信号5n+1と呼ぶ場合がある。
【0039】
タイミング補正部14は、フレームの先頭位置が補正された受信信号を一時的にバッファリングするとともに、この受信信号を補正量算出部15に出力する。この受信信号を受けて補正量算出部15は、シンボルタイミングのずれ(時間時に沿ったずれ)を算出する。補正量算出部15については後述する。
【0040】
次にタイミング補正部14は、補正量算出部15から、シンボルタイミングのずれを示す情報(即ち、補正係数)を受ける。タイミング補正部14は、このシンボルタイミングのずれを示す情報に基づき、バッファリングされた受信信号を時間軸に沿ってさらに補正する。これにより、受信信号が、タイミング生成部3により生成されたタイミング信号に同期する。タイミング補正部14は、シンボルタイミングのずれが補正された受信信号を間引き部16に出力する。
【0041】
間引き部16は、シンボルタイミングのずれが補正された受信信号をタイミング補正部14から受ける。間引き部16は、5倍にオーバーサンプリングされたサンプリング信号Smp0〜Smp4のうち、センター以外のサンプリング信号Smp0、Smp1、Smp3、及びSmp4を間引き、サンプリング信号Smp2のみを逆拡散部5に出力する。
【0042】
(補正量算出部15の構成)
次に図5を参照しながら補正量算出部15の詳細な構成について説明する。図5は、補正量算出部15のブロック図である。図5に示すように、補正量算出部15は、DPCCH処理部150aと、E−DPCCH処理部150bと、加算器155と、補正係数算出部156とを含んで構成される。またDPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bはそれぞれ、セレクタ151と、逆拡散部152と、シンボル加算部153と、パワー算出部154とを含んで構成される。
【0043】
フレームの先頭位置が補正されてタイミング補正部14から出力された受信信号は、DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれに入力される。DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bは、この受信信号からサンプリング信号5n、5n−1、5n+1を取出し、それぞれに対応する拡散コードで逆拡散したうえで、各サンプリング信号の1フレーム分の電力を算出する。この一連の動作の詳細を、セレクタ151、逆拡散部152、シンボル加算部153、及びパワー算出部154の動作として以降で説明する。
【0044】
セレクタ151は、フレームの先頭位置が補正された受信信号をタイミング補正部14から受ける。セレクタ151は、この受信信号に対し、チップごとにサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を取出し、それぞれ区別して逆拡散部152に出力する。なお、前述したとおり、受信信号はフレームの先頭位置のずれが補正されているため、セレクタ151を、特定の位置のサンプリング信号を取出すように動作させることで、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を選択的に取出せる。なお、このときセレクタ151は、マッチドフィルタ13からフレームの先頭位置のずれを示す情報を受けて、この情報に基づきサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1の位置を特定するようにしてもよい。
【0045】
逆拡散部152は、コード生成部4から拡散コードを受ける。このとき、DPCCH処理部150aの逆拡散部152は、DPCCHに対応する拡散コードをコード生成部4から受ける。またE−DPCCH処理部150bの逆拡散部152は、E−DPCCHに対応する拡散コードをコード生成部4から受ける。
【0046】
逆拡散部152は、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を個々に受け、それぞれをコード生成部4から受けた拡散コードで逆拡散する。逆拡散部152は、逆拡散したサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1をシンボル加算部153に出力する。
【0047】
シンボル加算部153は、逆拡散部152からサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を受け、それぞれを10シンボル分(即ち1スロット分)加算する。このときシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5nそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。またシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれを、サンプリング信号5nの位相にあわせて加算する。このシンボル加算部153の詳細な構成については後述する。
【0048】
シンボル加算部153は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を、それぞれ区別してパワー算出部154に出力する。
【0049】
パワー算出部154は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1をシンボル加算部153から受ける。パワー算出部154は、このサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1それぞれについて、Iデータの二乗とQデータの二乗とを加算することで、各サンプリング信号の1スロット(10シンボル分)分の電力を算出する。パワー算出部154は、算出した1スロット分の電力を15スロット分加算することで、1フレーム分の電力をサンプリング信号ごとに算出する。パワー算出部154は、サンプリング信号ごとに算出した1フレーム分の電力を、それぞれ区別して加算器155に出力する。
【0050】
加算器155は、DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれのパワー算出部154から、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1それぞれの1フレーム分の電力を受ける。加算器155は、受信した各電力を、サンプリング信号ごとに加算し、それぞれを区別して補正係数算出部156に出力する。即ち、加算器155は、DPCCH処理部150aから出力されたサンプリング信号5nの電力と、E−DPCCH処理部150bから出力されたサンプリング信号5nの電力とを加算し、サンプリング信号5nの電力値PCを算出する。同様にして加算器155は、DPCCH処理部150aから出力されたサンプリング信号5n−1の電力と、E−DPCCH処理部150bから出力されたサンプリング信号5n−1の電力とを加算し、サンプリング信号5n−1の電力値PEを算出する。また加算器155は、DPCCH処理部150aから出力されたサンプリング信号5n+1の電力と、E−DPCCH処理部150bから出力されたサンプリング信号5n+1の電力とを加算し、サンプリング信号5n+1の電力値PLを算出する。加算器155は、算出された電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して補正係数算出部156に出力する。
【0051】
補正係数算出部156は、電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して加算器155から受ける。補正係数算出部156は、この電力値PC、PE、及びPLを、計算式(PL−PE)/(PC+PE+PL)に適用し、シンボルタイミングのずれを示す情報を算出する。なお計算式(PL−PE)/(PC+PE+PL)を適用することで、同一の時間軸に沿ったずれであれば、パワーの大きさに関係なく同一の補正係数を得ることが可能である。補正係数算出部156は、算出したシンボルタイミングのずれを示す情報(即ち、補正係数)をタイミング補正部14に出力する。タイミング補正部14は、この情報に基づきシンボルタイミングのずれを補正する。
【0052】
なお従来は、DPCCHのサンプリング信号のみを用いて補正を行っていた。これに対し、本実施形態に係る補正量算出部15は、DPCCH及びE−DPCCH双方のサンプリング信号を用いて補正を行う。これにより、受信信号全体のパワー増加を考慮した補正を行うことが可能である。即ち、パワーブーストを使用することで、DPCCHの信号にノイズが回り込んだ場合においても、出力の大きいE−DPCCHの信号も含めて補正係数を算出する。これにより、パワーブーストを使用し信号全体の電力が増加した場合においても、増加したパワーに応じた補正が可能となる。つまり、パワーブーストの使用の有無に拘らず、受信信号を精度よく同期させることが可能となる。
【0053】
(シンボル加算部153の構成)
次に図6を参照しながらシンボル加算部153が10シンボル分のサンプリング信号を加算するときの詳細な動作について説明する。図6は、シンボル加算部153のブロック図である。図6に示すように、シンボル加算部153は、位相調整部1531a及び1531bと、加算器1532a及び1532bと、比較部1533と、セレクタ1534a〜1534cと、累積加算器1535とを含んで構成される。
【0054】
逆拡散部152で逆拡散されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1はそれぞれ区別され、位相調整部1531a及び1531bに入力される。位相調整部1531aは、入力されたサンプリング信号を、位相を変更せずに(0°)出力する。また位相調整部1531bは、入力されたサンプリング信号を、位相を反転させたうえで(180°)出力する。なお位相が反転されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を、それぞれサンプリング信号5n’、5n−1’、及び5n+1’とする。
【0055】
サンプリング信号5n、5n’、5n−1、5n−1’、5n+1、及び5n+1’は、それぞれ個別にセレクタ1534a〜1534cに入力される。またサンプリング信号5nは加算器1532aに入力され、サンプリング信号5n’は加算器1532bに入力される。
【0056】
セレクタ1534a〜1534cは、入力されたサンプリング信号が10シンボル中の先頭シンボルに相当するサンプリング信号の場合、そのサンプリング信号のうち予め決められた位相のサンプリング信号(例えばサンプリング信号5n、5n−1、5n+1)を累積加算器1535に出力する。
【0057】
またセレクタ1534a〜1534cは、入力されたサンプリング信号が10シンボル中の先頭シンボルではない場合(即ち2番目〜10番目のシンボルのいずれかの場合)、比較部1533に通知された位相に対応するサンプリング信号を累積加算器1535に出力する。比較部1533の動作については後述する。例えば、比較部1533から位相として0°が通知されたとする。この場合、セレクタ1534aは、サンプリング信号5n及び5n’のうち、0°に対応するサンプリング信号5nを出力する。同様にしてセレクタ1534bはサンプリング信号5n−1を、セレクタ1534cはサンプリング信号5n+1をそれぞれ出力する。また比較部1533から位相として180°が通知された場合は、セレクタ1534aはサンプリング信号5n’を、セレクタ1534bはサンプリング信号5n−1’を、セレクタ1534cはサンプリング信号5n+1’をそれぞれ出力する。
【0058】
セレクタ1534a〜1534cから出力されたサンプリング信号は、それぞれ個別に累積加算器1535a〜1535cに入力される。累積加算器1535a〜1535cは、入力されたサンプリング信号をバッファリングしながら10シンボル分加算する。なお、累積加算器1535a〜1535cにバッファリングされたサンプリング信号を、それぞれサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1とする。累積加算器1535a〜1535cは、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1を、パワー算出部154にそれぞれ出力する。累積加算器1535a〜1535cは、パワー算出部154にサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1を出力後、バッファリングしていたサンプリング信号5n0、5n0−1、5n0+1をそれぞれクリアする。
【0059】
加算器1532aは、サンプリング信号5nが入力されると、累積加算器1535aにバッファリングされたサンプリング信号5n0を読み出す。加算器1532aは、サンプリング信号5nにサンプリング信号5n0を加算する。加算後のサンプリング信号をサンプリング信号5n+5n0とする。加算器1532aは、サンプリング信号5n+5n0を比較部1533に出力する。
【0060】
また加算器1532bは、サンプリング信号5n’が入力されると、累積加算器1535aにバッファリングされたサンプリング信号5n0を読み出す。加算器1532bは、サンプリング信号5n’にサンプリング信号5n0を加算する。加算後のサンプリング信号をサンプリング信号5n’+5n0とする。加算器1532bは、サンプリング信号5n’+5n0を比較部1533に出力する。
【0061】
比較部1533は、サンプリング信号5n+5n0及び5n’+5n0の電力値を算出したうえで比較し、電力値の高いサンプリング信号に対応する位相を特定する。即ち、サンプリング信号5n+5n0の電力値が高い場合には位相は0°となり、サンプリング信号5n’+5n0の電力値が高い場合には位相は180°となる。またサンプリング信号5n+5n0の電力値とサンプリング信号5n+’5n0の電力値とが等しい場合、比較部1533は位相を0°とする。なお、電力値が低くなる場合は、加算されたサンプリング信号それぞれが互い打ち消し合って電力が低くなる。即ちこの場合は、加算されたサンプリング信号それぞれの位相が異なることを意味する。比較部1533は、特定された位相をセレクタ1534a〜1534cに通知する。
【0062】
以上のようにシンボル加算部153の各構成を動作させることで、10シンボル分のサンプリング信号5nそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。また10シンボル分のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれを、サンプリング信号5nの位相にあわせて加算する。このように動作することで、シンボル加算部153は、受信信号を精度よく平均化することが可能となる。
【0063】
(位相同期処理部6の構成)
次に図3を参照しながら位相同期処理部6の構成について説明する。図3に示すように、位相同期処理部6は、位相差検出部61と、位相補正部62とを含んで構成される。
【0064】
位相差検出部61は、逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、DPCCH及びE−DPCCHに対応する信号(I、Qデータ)を受ける。位相差検出部61は、DPCCH及びE−DPCCHに対応する信号と、DPCCHのパイロットデータとに基づき、逆拡散後の各チャネルに対応する信号間の位相のずれ(以降では単に「位相のずれ」と呼ぶ場合がある)を示す情報(I、Qデータ)を算出する。この位相差検出部61の詳細な構成については後述する。位相差検出部61は、算出した位相のずれを示す情報を位相補正部62に出力する。
【0065】
位相補正部62は、逆拡散部5から各チャネルに対応する信号(I、Qデータ)を受ける。また位相補正部62は、位相差検出部61から、位相のずれを示す情報(I、Qデータ)を受ける。位相補正部62は、各チャネルに対応する信号それぞれに、この位相のずれを示す情報を乗算することで、各チャネルに対応する信号の位相のずれを補正する。位相補正部62は、位相のずれを補正した各チャネルの信号を解析部U12に出力する。
【0066】
(位相差検出部61の構成)
次に図7を参照しながら位相差検出部61の詳細な構成について説明する。図7は、位相差検出部61のブロック図である。図7に示すように、位相差検出部61は、信号加算部611a及び611bと、パイロットデータ加算部612と、パイロットデータ定義部613と、DPCCH位相特定部614aと、E−DPCCH位相特定部614bと、位相補正係数特定部615とを含んで構成される。
【0067】
信号加算部611aは、逆拡散部5で逆拡散された信号のうち、DPCCHに対応する信号を受ける。また信号加算部611bは、逆拡散部5で逆拡散された信号のうち、E−DPCCHに対応する信号を受ける。信号加算部611a及び611bはそれぞれ、受信した信号を10シンボル分加算する。このとき信号加算部611a及び611bは、10シンボル分の信号の位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。この信号加算部611a及び611bの詳細な動作については後述する。信号加算部611aは、10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号をDPCCH位相特定部614aに出力する。また信号加算部611bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号をE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0068】
パイロットデータ定義部613は、DPCCHに対応する信号のうち、既知のシンボルに関する情報を含む。この情報には、既知のシンボルそれぞれの位相を示す情報も含まれる。
【0069】
パイロットデータ加算部612は、逆拡散部5で逆拡散された信号のうち、DPCCHに対応する信号を受ける。またパイロットデータ加算部612は、パイロットデータ定義部613から既知のシンボルに関する情報を読み出す。パイロットデータ加算部612は、既知のシンボルに関する情報に基づき、DPCCHに対応する信号に含まれる既知のシンボルの位相をそろえて加算する。この加算された既知のシンボルを信号F0とする。パイロットデータ加算部612は、加算された既知のシンボル、即ち信号F0を、DPCCH位相特定部614a及びE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0070】
DPCCH位相特定部614aは、10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号を信号加算部611aから受ける。DPCCH位相特定部614aは、このDPCCHに対応する信号を分波し、同相(0°)の信号F1と、位相を反転させた(180°)信号F1’とを生成しそれぞれをバッファリングする。またDPCCH位相特定部614aは、パイロットデータ加算部612から信号F0を受ける。DPCCH位相特定部614aは、信号F1及びF1’をそれぞれ信号F0と加算する。加算後の信号をそれぞれ信号F1+F0及びF1’+F0とする。DPCCH位相特定部614aは、信号F1+F0の電力値及び信号F1’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。即ち、信号F1+F0の電力値が高い場合には位相は0°となり、信号F1’+F0の電力値が高い場合には位相は180°となる。DPCCH位相特定部614aは、バッファリングされた信号F1及びF1’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。これにより、信号F1及びF1’のうち、信号F0と同相の信号が位相補正係数特定部615に出力される。その後、バッファリングされた信号F1及びF1’はクリアされる。
【0071】
この動作は、E−DPCCH位相特定部614bについても同様である。即ち、E−DPCCH位相特定部614bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号を信号加算部611bから受け、同相(0°)の信号F2と、位相を反転させた(180°)信号F2’とを生成しそれぞれをバッファリングする。E−DPCCH位相特定部614bは、パイロットデータ加算部612から信号F0を受け、信号F2及びF2’とそれぞれ加算し、信号F2+F0及びF2’+F0を求める。E−DPCCH位相特定部614bは、信号F2+F0の電力値及び信号F2’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。E−DPCCH位相特定部614bは、バッファリングされた信号F2及びF2’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。その後、バッファリングされた信号F2及びF2’はクリアされる。
【0072】
位相補正係数特定部615は、DPCCH位相特定部614aから10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。また位相補正係数特定部615は、E−DPCCH位相特定部614bから10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。位相補正係数特定部615は、DPCCHに対応する信号の電力値及びE−DPCCHに対応する信号の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号を、位相のずれを示す情報として位相補正部62に出力する。
【0073】
なお従来は、既知のシンボルに基づき位相の補正を行っていた。しかしながら、DPCCHに関しては、既知のシンボルは、1スロットあたり3〜8のシンボルしか含まれない。またE−DPCCHに関しては、既知のシンボルが存在しない。これに対し、本実施形態に係る位相差検出部61は、先頭シンボルの位相にあわせて10シンボル分を加算し、これらを既知のシンボルを加算した信号の位相にあわせている。これにより位相差検出部61は、DPCCH及びE−DPCCHそれぞれについて、10シンボル分の信号を用いて位相のずれを示す情報(I、Qデータ)を算出することが可能となる。また位相差検出部61は、DPCCH及びE−DPCCHそれぞれで算出した位相のずれを示す情報のうち、電力値の高い方を位相のずれを示す情報として採用する。このように動作することで、例えばパワーブーストを使用することで、DPCCHの信号にノイズが回り込んだ場合においても、出力の大きいE−DPCCHの信号に基づき算出された情報により逆拡散後の各物理チャネルにおける信号間の位相のずれを補正することが可能となる。これにより、パワーブーストの使用の有無に拘らず、精度よく位相のずれを補正することが可能となる。
【0074】
(信号加算部611a及び611bの構成)
次に図8を参照しながら信号加算部611a及び611bが10シンボル分の信号を加算するときの詳細な動作について説明する。図8は、信号加算部611a及び611bのブロック図である。図8に示すように、信号加算部611a及び611bは、位相調整部6111a及び6111bと、加算器6112a及び6112bと、比較部6113と、セレクタ6114と、累積加算器6115とを含んで構成される。
【0075】
逆拡散部5で逆拡散された信号は、位相調整部6111a及び6111bに入力される。位相調整部6111aは、入力された信号を、位相を変更せずに(0°)出力する。また位相調整部6111bは、入力された信号を、位相を反転させたうえで(180°)出力する。なお位相調整部6111aが出力する信号を信号Fa、位相調整部6111bが出力する信号を信号Fa’とする。
【0076】
信号Fa及びFa’は、セレクタ6114に入力される。また信号Faは加算器6112aに入力され、信号Fa’は加算器6112bに入力される。
【0077】
セレクタ6114は、受信した信号が10シンボル中の先頭シンボルに相当する信号の場合、その信号のうち予め決められた位相の信号(例えば信号Fa)を累積加算器6115に出力する。
【0078】
またセレクタ6114は、入力された信号が10シンボル中の先頭シンボルではない場合(即ち2番目〜10番目のシンボルのいずれかの場合)、比較部6113に通知された位相に対応する信号を累積加算器6115に出力する。比較部6113の動作については後述する。例えば、比較部6113から位相として0°が通知されたとする。この場合、セレクタ6114は、信号Fa及びFa’のうち、0°に対応する信号Faを出力する。また比較部6113から位相として180°が通知された場合は、セレクタ6114は信号Fa’を出力する。
【0079】
セレクタ6114から出力された信号は、累積加算器6115に入力される。累積加算器6115は、入力された信号をバッファリングしながら10シンボル分加算する。なお、累積加算器6115にバッファリングされた信号を、信号Fa0とする。累積加算器6115は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号Fa0を、対応する位相特定部(DPCCH位相特定部614aまたはE−DPCCH位相特定部614b)に出力する。累積加算器6115は、対応する位相特定部に信号Fa0を出力後、バッファリングしていた信号Fa0をクリアする。
【0080】
加算器6112aは、信号Faが入力されると、累積加算器6115にバッファリングされた信号Fa0を読み出す。加算器6112aは、信号Faに信号Fa0を加算する。加算後の信号を信号Fa+Fa0とする。加算器6112aは、信号Fa+Fa0を比較部6113に出力する。
【0081】
また加算器6112bは、信号Fa’が入力されると、累積加算器6115にバッファリングされた信号Fa0を読み出す。加算器6112bは、信号Fa’に信号Fa0を加算する。加算後の信号を信号Fa’+Fa0とする。加算器6112bは、信号Fa’+Fa0を比較部6113に出力する。
【0082】
比較部6113は、信号Fa+Fa0及びFa’+Fa0の電力値を算出したうえで比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。即ち、信号Fa+Fa0の電力値が高い場合には位相は0°となり、信号Fa’+Fa0の電力値が高い場合には位相は180°となる。また信号Fa+Fa0の電力値と信号Fa+’ Fa0の電力値とが等しい場合、比較部1533は位相を0°とする。比較部6113は、特定した位相をセレクタ6114に通知する。
【0083】
以上のように信号加算部611a及び611bの各構成を動作させることで、10シンボル分の信号Faそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算することが可能となる。
【0084】
(シンボルタイミング補正の処理)
次に時間同期処理部1によるシンボルタイミングの補正に係る一連の処理について図9を参照しながら説明する。図9は、シンボルタイミングの補正に係る処理のフローチャートである。
【0085】
(ステップS01)
被試験端末U2から送信された被試験信号は、RF部2で受信される。RF部2は、この被試験信号をベースバンド信号に変調してA/D変換部11に出力する。
【0086】
(ステップS02)
A/D変換部11は、RF部2でベースバンド信号に変調された受信信号を、タイミング生成部3で生成されたタイミング信号に同期し、チップレートの5倍の周波数(1/5の周期)を有するサンプリングクロックでA/D変換する。このときA/D変換部11は、チップレートの受信信号を5倍でオーバーサンプリングする。A/D変換部11は、オーバーサンプリングされた受信信号を直交復調部12に出力する。
【0087】
直交復調部12は、オーバーサンプリングされた受信信号をA/D変換部11から受け、この受信信号を、IとQの互い直交するデータに分離して復調する。直交復調部12は、直交復調された受信信号をマッチドフィルタ13及びタイミング補正部14に出力する。
【0088】
(ステップS03)
マッチドフィルタ13は、コード生成部4からスクランブルコードを受け、直交復調された受信信号とスクランブルコードとをパターン比較し、受信信号におけるフレームの先頭位置のずれ(時間軸に沿ったずれ)を検出する。マッチドフィルタ13は、検出されたフレームの先頭位置のずれを示す情報をタイミング補正部14に出力する。
【0089】
(ステップS04)
タイミング補正部14は、マッチドフィルタ13から受信したフレームの先頭位置のずれを示す情報に基づき、直交復調部12から受信した直交復調された受信信号の時間軸に沿ったずれを補正する。タイミング補正部14は、フレームの先頭位置が補正された受信信号を一時的にバッファリングするとともに、この受信信号をDPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれのセレクタ151に出力する。
【0090】
(ステップS05)
DPCCH処理部150a及びE−DPCCH処理部150bそれぞれのセレクタ151は、この受信信号に対し、チップごとにサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を取出し、それぞれ区別して逆拡散部152に出力する。
【0091】
(ステップS06)
逆拡散部152は、サンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を個々に受け、それぞれをコード生成部4から受けた拡散コードで逆拡散する。このときDPCCH処理部150aの逆拡散部152は、DPCCHに対応する拡散コードに基づき受信信号を逆拡散する。またE−DPCCH処理部150bの逆拡散部152は、E−DPCCHに対応する拡散コードに基づき受信信号を逆拡散する。逆拡散部152は、逆拡散したサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1をシンボル加算部153に出力する。
【0092】
シンボル加算部153は、逆拡散部152からサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を受け、それぞれを10シンボル分(即ち1スロット分)加算する。このときシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5nそれぞれの位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。またシンボル加算部153は、10シンボル分のサンプリング信号5n−1及び5n+1それぞれを、サンプリング信号5nの位相にあわせて加算する。
【0093】
シンボル加算部153は、10シンボル分が加算されたサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1を、それぞれ区別してパワー算出部154に出力する。
【0094】
パワー算出部154は、このサンプリング信号5n、5n−1、及び5n+1それぞれについて、Iデータの二乗とQデータの二乗とを加算することで、各サンプリング信号の1スロット(10シンボル分)分の電力を算出する。パワー算出部154は、算出した1スロット分の電力を15スロット分加算することで、1フレーム分の電力をサンプリング信号ごとに算出する。パワー算出部154は、サンプリング信号ごとに算出した1フレーム分の電力を、それぞれ区別して加算器155に出力する。
【0095】
加算器155は、受信した各電力を、サンプリング信号ごとに加算し、サンプリング信号5nに対応する電力値PC、サンプリング信号5n−1に対応する電力値PE、及びサンプリング信号5n+1に対応する電力値PLを算出する。加算器155は、算出された電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して補正係数算出部156に出力する。
【0096】
補正係数算出部156は、電力値PC、PE、及びPLをそれぞれ区別して加算器155から受ける。補正係数算出部156は、この電力値PC、PE、及びPLを、計算式(PL−PE)/(PC+PE+PL)に適用し、シンボルタイミングのずれを示す情報を算出する。補正係数算出部156は、算出したシンボルタイミングのずれを示す情報をタイミング補正部14に出力する。
【0097】
(ステップS07)
タイミング補正部14は、補正量算出部15から、シンボルタイミングのずれを示す情報を受ける。タイミング補正部14は、このシンボルタイミングのずれを示す情報に基づき、バッファリングされた受信信号を時間軸に沿ってさらに補正する。タイミング補正部14は、シンボルタイミングのずれが補正された受信信号を間引き部16に出力する。
【0098】
間引き部16は、5倍にオーバーサンプリングされたサンプリング信号Smp0〜Smp4のうち、センター以外のサンプリング信号Smp0、Smp1、Smp3、及びSmp4を間引き、サンプリング信号Smp2のみを逆拡散部5に出力する。以降、逆拡散部5により逆拡散された受信信号は、位相同期処理部6により位相が補正され、解析部U12で解析される。
【0099】
(位相補正の処理)
次に位相同期処理部6による位相の補正に係る一連の処理について図10を参照しながら説明する。図10は、位相の補正に係る処理のフローチャートである。
【0100】
(ステップS11)
逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、DPCCHに対応する信号は、位相差検出部61の信号加算部611aに入力される。信号加算部611aは、受信した信号を10シンボル分加算する。このとき信号加算部611aは、10シンボル分の信号の位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。信号加算部611aは、10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号をDPCCH位相特定部614aに出力する。
【0101】
(ステップS12)
また逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、E−DPCCHに対応する信号は、位相差検出部61の信号加算部611bに入力される。信号加算部611bは、受信した信号を10シンボル分加算する。このとき信号加算部611bは、10シンボル分の信号の位相を、10シンボル中の先頭シンボルの位相にあわせて加算する。信号加算部611bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号をE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0102】
(ステップS13)
また、逆拡散部5で逆拡散された受信信号のうち、DPCCHに対応する信号は、パイロットデータ加算部612にも入力される。パイロットデータ加算部612は、パイロットデータ定義部613から既知のシンボルに関する情報を読み出し、この情報に基づき、DPCCHに対応する信号に含まれる既知のシンボルの位相をそろえて加算する。この加算された既知のシンボルを信号F0とする。パイロットデータ加算部612は、加算された既知のシンボル、即ち信号F0を、DPCCH位相特定部614a及びE−DPCCH位相特定部614bに出力する。
【0103】
(ステップS14)
DPCCH位相特定部614aは、このDPCCHに対応する信号を分波し、同相(0°)の信号F1と、位相を反転させた(180°)信号F1’とを生成しそれぞれをバッファリングする。DPCCH位相特定部614aは、信号F1及びF1’をそれぞれパイロットデータ加算部612から受信した信号F0と加算する。加算後の信号をそれぞれ信号F1+F0及びF1’+F0とする。DPCCH位相特定部614aは、信号F1+F0の電力値及び信号F1’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。DPCCH位相特定部614aは、バッファリングされた信号F1及びF1’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。その後、バッファリングされた信号F1及びF1’はクリアされる。
【0104】
この動作は、E−DPCCH位相特定部614bについても同様である。即ち、E−DPCCH位相特定部614bは、10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号を信号加算部611bから受け、同相(0°)の信号F2と、位相を反転させた(180°)信号F2’とを生成しそれぞれをバッファリングする。E−DPCCH位相特定部614bは、パイロットデータ加算部612から信号F0を受け、信号F2及びF2’とそれぞれ加算し、信号F2+F0及びF2’+F0を求める。E−DPCCH位相特定部614bは、信号F2+F0の電力値及び信号F2’+F0の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号に対応する位相を特定する。E−DPCCH位相特定部614bは、バッファリングされた信号F2及びF2’のうち、特定された位相に対応する信号を読み出し、位相補正係数特定部615に出力する。その後、バッファリングされた信号F2及びF2’はクリアされる。
【0105】
(ステップS15)
位相補正係数特定部615は、DPCCH位相特定部614aから10シンボル分加算されたDPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。また位相補正係数特定部615は、E−DPCCH位相特定部614bから10シンボル分加算されたE−DPCCHに対応する信号(信号F0と同相の信号)を受ける。位相補正係数特定部615は、DPCCHに対応する信号の電力値及びE−DPCCHに対応する信号の電力値をそれぞれ算出して比較し、電力値の高い信号を、位相のずれを示す情報として位相補正部62に出力する。
【0106】
(ステップS16)
位相補正部62は、逆拡散部5から各チャネルに対応する信号(I、Qデータ)を受ける。位相補正部62は、これらの信号それぞれに、位相補正係数特定部615から受けた位相のずれを示す情報(I、Qデータ)を乗算することで、これらの信号の位相のずれを補正する。位相補正部62は、位相のずれを補正した各チャネルの信号を解析部U12に出力する。
【0107】
以上、本発明に係る移動体通信端末試験装置U1に依れば、パワーブーストを使用した場合においても、第1の物理チャネルの信号及び第2の物理チャネルの信号のうち、パワーブーストされたチャネルの信号に基づき補正を行う。これにより、パワーブーストを使用し信号全体の電力が増加した場合においても、増加したパワーに応じた補正が可能となる。つまり、パワーブーストの使用の有無に拘らず、受信信号を精度よく同期させることが可能となる。
【符号の説明】
【0108】
U1 移動体通信端末試験装置
U10 送信部
U11 受信部
U12 解析部
U2 被試験端末
1 時間同期処理部
11 A/D変換部
12 直交復調部
13 マッチドフィルタ
14 タイミング補正部
15 補正量算出部
150a DPCCH処理部
150b E−DPCCH処理部
151 セレクタ
152 逆拡散部
153 シンボル加算部
1531a、1531b 位相調整部
1532a、1532b 加算器
1533 比較部
1534a、1534b、1534c セレクタ
1535a、1535b、1535c 累積加算器
154 パワー算出部
155 加算器
156 補正係数算出部
16 間引き部
2 RF部
3 タイミング生成部
4 コード生成部
5 逆拡散部
6 位相同期処理部
61 位相差検出部
611a、611b 信号加算部
6111a、6111b 位相調整部
6112a、6112b 加算器
6113 比較部
6114 セレクタ
6115 累積加算器
612 パイロットデータ加算部
613 パイロットデータ定義部
614a DPCCH位相特定部
614b E−DPCCH位相特定部
615 位相補正係数特定部
62 位相補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとを含んで構成された受信信号を、移動体通信端末(U2)から受信する受信部(U11)と、前記受信信号を解析する解析部(U12)と、を備えた移動体通信端末試験装置であって、
前記受信部は、
前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するA/D変換部(11)と、
前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正量算出部(15)と、
前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正部(14)と、
前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号から、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力する第1の逆拡散部(5)と、
を備え、
前記解析部は、前記第1の逆拡散部からの出力に基づいて前記受信信号を解析することを特徴とする移動体通信端末試験装置。
【請求項2】
前記補正量算出部は、
前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力する第2の逆拡散部(152)と、
前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれを個別に、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて複数のチップ分加算する第1の加算部(153)と、
前記第1の加算部で加算された前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの電力値を、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて算出するパワー算出部(154)と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項3】
前記受信部は、
あらかじめ決められた試験の条件に基づき前記所定のタイミングを生成するタイミング生成部(3)と、
当該所定のタイミングに基づき拡散コードを生成するコード生成部(4)と、
を備え、
前記A/D変換部は、前記タイミング生成部が特定した前記所定のタイミングに基づき前記所定周期を特定し、前記受信信号に含まれる1チップを当該所定周期でサンプリングし、
前記第1の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号を逆拡散することで、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力し、
前記第2の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力することを特徴とする請求項2に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項4】
前記第1の加算部は、前記複数のチップ分の前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの位相を、前記複数のチップの先頭に位置する前記第1の出力の位相にあわせて加算することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項5】
前記第1の加算部は、
前記複数のチップのうち先頭に位置するチップに対応する前記第1の出力の電力値を基準電力値として、前記複数のチップのうち2番目以降のチップに対応する前記第1の出力ごとに、当該第1の出力の電力値及び位相を反転させた当該第1の出力の電力値それぞれに前記基準電力値を加算したうえで比較し、電力値の高い方の出力に対応する位相を特定する比較部(1533)と、
前記チップごとに、前記第1の出力及び位相を反転させた前記第1の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第1のセレクタ(1534a)と、
前記チップごとに、前記第2の出力及び位相を反転させた前記第2の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第2のセレクタ(1534b)と、
前記チップごとに、前記第3の出力及び位相を反転させた前記第3の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第3のセレクタ(1534c)と、
を備え、
前記第1のセレクタ、前記第2のセレクタ、及び前記第3のセレクタそれぞれからの出力それぞれを個別に前記複数のチップ分加算することを特徴とする請求項4に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項6】
前記受信信号は、所定数のチップで構成される複数のシンボルを含み、
前記受信部は、位相同期処理部(6)を備え、
前記位相同期処理部は、
前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を所定数のシンボル分加算することで第1の信号を算出する第2の加算部(611a)と、
前記第1の逆拡散部から出力された前記第2の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を前記所定数のシンボル分加算することで第2の信号を算出する第3の加算部(611b)と、
前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号のうち、前記所定数のシンボルに含まれる既知のシンボルを加算することで第3の信号を算出するパイロットデータ加算部(612)と、
前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第1の位相特定部(614a)と、
前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第2の位相特定部(614b)と、
前記第1の位相特定部からの出力、及び前記第2の位相特定部からの出力それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い方の出力を第2の補正係数とする位相補正係数特定部(615)と、
前記第2の補正係数に基づき、所定の位相に対する前記受信信号の位相のずれを補正する位相補正部(62)と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項7】
前記第2の加算部及び第3の加算部はそれぞれ、前記所定数のシンボル分の信号それぞれの位相を、前記所定数のシンボル先頭に位置する信号の位相にあわせて加算することを特徴とする請求項6に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項8】
符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとで構成された受信信号を、移動体通信端末から受信する受信部と、前記受信信号を解析する解析部と、を備えた移動体通信端末試験装置を用いた移動体通信端末試験方法であって、
前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するサンプリング段階と、
前記受信信号に含まれる複数のチップについてそれぞれ前記サンプリング段階を行い、当該複数のチップそれぞれの前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号を抽出する抽出段階と、
前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正係数算出段階と、
前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正段階と、
を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験方法。
【請求項1】
符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとを含んで構成された受信信号を、移動体通信端末(U2)から受信する受信部(U11)と、前記受信信号を解析する解析部(U12)と、を備えた移動体通信端末試験装置であって、
前記受信部は、
前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するA/D変換部(11)と、
前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正量算出部(15)と、
前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正部(14)と、
前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号から、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力する第1の逆拡散部(5)と、
を備え、
前記解析部は、前記第1の逆拡散部からの出力に基づいて前記受信信号を解析することを特徴とする移動体通信端末試験装置。
【請求項2】
前記補正量算出部は、
前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力する第2の逆拡散部(152)と、
前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれを個別に、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて複数のチップ分加算する第1の加算部(153)と、
前記第1の加算部で加算された前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの電力値を、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルそれぞれについて算出するパワー算出部(154)と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項3】
前記受信部は、
あらかじめ決められた試験の条件に基づき前記所定のタイミングを生成するタイミング生成部(3)と、
当該所定のタイミングに基づき拡散コードを生成するコード生成部(4)と、
を備え、
前記A/D変換部は、前記タイミング生成部が特定した前記所定のタイミングに基づき前記所定周期を特定し、前記受信信号に含まれる1チップを当該所定周期でサンプリングし、
前記第1の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記タイミング補正部により時間軸に沿ったずれが補正された前記受信信号を逆拡散することで、前記第1の物理チャネルにおける信号及び前記第2の物理チャネルにおける信号を区別して出力し、
前記第2の逆拡散部は、前記拡散コードに基づき、前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号のそれぞれを逆拡散して、前記第1物理チャネル及び前記第2の物理チャネルに分けて、第1の出力、第2の出力、及び第3の出力を出力することを特徴とする請求項2に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項4】
前記第1の加算部は、前記複数のチップ分の前記第1の出力、前記第2の出力、及び前記第3の出力それぞれの位相を、前記複数のチップの先頭に位置する前記第1の出力の位相にあわせて加算することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項5】
前記第1の加算部は、
前記複数のチップのうち先頭に位置するチップに対応する前記第1の出力の電力値を基準電力値として、前記複数のチップのうち2番目以降のチップに対応する前記第1の出力ごとに、当該第1の出力の電力値及び位相を反転させた当該第1の出力の電力値それぞれに前記基準電力値を加算したうえで比較し、電力値の高い方の出力に対応する位相を特定する比較部(1533)と、
前記チップごとに、前記第1の出力及び位相を反転させた前記第1の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第1のセレクタ(1534a)と、
前記チップごとに、前記第2の出力及び位相を反転させた前記第2の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第2のセレクタ(1534b)と、
前記チップごとに、前記第3の出力及び位相を反転させた前記第3の出力のうち、前記特定された位相に対応する方を出力する第3のセレクタ(1534c)と、
を備え、
前記第1のセレクタ、前記第2のセレクタ、及び前記第3のセレクタそれぞれからの出力それぞれを個別に前記複数のチップ分加算することを特徴とする請求項4に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項6】
前記受信信号は、所定数のチップで構成される複数のシンボルを含み、
前記受信部は、位相同期処理部(6)を備え、
前記位相同期処理部は、
前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を所定数のシンボル分加算することで第1の信号を算出する第2の加算部(611a)と、
前記第1の逆拡散部から出力された前記第2の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号を前記所定数のシンボル分加算することで第2の信号を算出する第3の加算部(611b)と、
前記第1の逆拡散部から出力された前記第1の物理チャネルにおける信号を受け、当該信号のうち、前記所定数のシンボルに含まれる既知のシンボルを加算することで第3の信号を算出するパイロットデータ加算部(612)と、
前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第1の信号及び位相を反転させた前記第1の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第1の位相特定部(614a)と、
前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号それぞれに前記第3の信号を加算したうえで、それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い信号の位相を特定し、前記第2の信号及び位相を反転させた前記第2の信号のうち特定した位相に対応する信号を出力する第2の位相特定部(614b)と、
前記第1の位相特定部からの出力、及び前記第2の位相特定部からの出力それぞれの電力値を算出して比較し、電力値の高い方の出力を第2の補正係数とする位相補正係数特定部(615)と、
前記第2の補正係数に基づき、所定の位相に対する前記受信信号の位相のずれを補正する位相補正部(62)と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項7】
前記第2の加算部及び第3の加算部はそれぞれ、前記所定数のシンボル分の信号それぞれの位相を、前記所定数のシンボル先頭に位置する信号の位相にあわせて加算することを特徴とする請求項6に記載の移動体通信端末試験装置。
【請求項8】
符号分割多重通信方式に基づいた複数のチップを含むフレームで構成される第1の物理チャネルと、前記第1の物理チャネルと同一のフレーム構成を有し第1の物理チャネルとは異なる第2の物理チャネルとで構成された受信信号を、移動体通信端末から受信する受信部と、前記受信信号を解析する解析部と、を備えた移動体通信端末試験装置を用いた移動体通信端末試験方法であって、
前記受信信号に含まれる1チップを所定周期でサンプリングし、サンプリングの順にサンプリングされた少なくとも第1のサンプリング信号、第2のサンプリング信号、及び第3のサンプリング信号を出力するサンプリング段階と、
前記受信信号に含まれる複数のチップについてそれぞれ前記サンプリング段階を行い、当該複数のチップそれぞれの前記第1のサンプリング信号、前記第2のサンプリング信号、及び前記第3のサンプリング信号を抽出する抽出段階と、
前記第1の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第1のサンプリング信号の電力値とを加算して第1の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第2のサンプリング信号の電力値とを加算して第2の電力値を求め、前記第1の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値と、前記第2の物理チャネルにおける前記第3のサンプリング信号の電力値とを加算して第3の電力値を求め、前記第1の電力値と前記第2の電力値との差を、前記第1の電力値、前記第2の電力値、及び前記第3の電力値の和で除算することで第1の補正係数を算出する補正係数算出段階と、
前記第1の補正係数に応じて、所定のタイミングに対する前記受信信号の時間軸に沿ったずれを補正するタイミング補正段階と、
を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−142670(P2012−142670A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292065(P2010−292065)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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