説明

移動標的装置及びその射撃場

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射撃場、特に標的が射撃手に対し前進後退し、射撃手が近距離の標的を射撃した際、その弾丸が射撃手側に跳ね返らないようにした移動標的装置とその移動標的装置を用いた射撃場に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の射撃場は、標的が90°回転する形式のもの、標的が起立、転倒する形式のもの等の大地に固定した標的装置を用いているものが多い。標的が移動する形式のものとして、標的を横方向に走行させる移動標的装置がわずかに用いられているにすぎなかった。
【0003】この標的が横方向に移動する形式の移動標的装置を用いた射撃場の射撃訓練では、射撃手と標的との距離がかなり離れており、そのため発射した弾丸が標的装置等で跳ね返ってきて射撃手に危害を与えることはなく、跳ね返り弾に対し特別に考慮されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら射撃手に対し標的が前進後退する移動標的装置の射撃場において、特に標的が射撃手側に近接した近距離での射撃では、射撃手の発射した弾丸が台車や標的装置等に当たって跳ね返り、射撃手に危害を与える恐れがあり、従来の横方向に走行する移動標的装置を単に前進、後退する台車に搭載して移動させたのでは、弾丸が台車や標的装置等に当たったとき、その弾丸が跳ね返ってきて射撃手に危害を与え、射撃手は安心して訓練することができない。射撃訓練者によれば、数m程度の近距離での射撃になると、その跳ね返り弾が怖くて訓練できないと言われている。
【0005】しかしながら実社会における拳銃の使い方は、例えば凶悪犯が刃物を突きつけて向かって来るときや拳銃を持った凶悪犯が接近してくる場合、このような場合にも凶悪犯の刃物や拳銃を持った手或いは脚を確実に射撃できればよく、凶悪犯の生命まで奪い取る必要性はない場合がある。このように近距離での射撃訓練ができることが強く望まれる。
【0006】射撃手に対し標的が前進後退する標的装置、すなわち移動標的装置を用いた射撃場であって、射撃手の発射した弾丸の跳ね返り弾で射撃手に危害を与える恐れがなく、射撃手は安心して訓練することができる射撃場の実現が望まれ、またその射撃場に適した構造の移動標的装置が望まれる。
【0007】本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、射撃手に対し標的が前進後退する標的装置を用いた射撃場であって、標的の近距離射撃であっても、その発射弾が射撃手側にできるだけ跳ね返ることのない、従って射撃手は安心して訓練することができ、実社会における拳銃の使い方に適応した射撃訓練ができる移動標的装置及びその射撃場を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を解決するために、本発明の移動標的装置は射撃手に対し前進後退する走行自在の台車に標的装置を搭載し、標的装置の標的紙を保持する標的ホルダを防弾部材で構成すると共に、台車の少なくとも射撃手側の先端前面部分に弾丸を吸収する防弾板が設けらていることを特徴としている。
【0009】上記標的装置として、その標的が90°回転する回転型の標的や、起立、転倒する型等の標的が用いられる。また上記防弾板はブロック単位で構成され、当該ブロックが交換可能であり、当該ブロックは弾丸の通過で割れ難くい性質を持ち、かつその繊維が交互に交差するようにして積層された木材が用いられている。
【0010】そして上記の移動標的装置を用いた射撃場にあっては、射撃手に対し前進後退する走行自在の台車に標的装置を搭載し、標的装置の標的紙を保持する標的ホルダが防弾部材で構成されると共に、台車の少なくとも射撃手側の先端前面部分に弾丸を吸収する防弾板が設けられ、台車側と外部の指揮官装置側との間で信号の送受を行う送受信装置を備えた複数個の移動標的装置と、当該移動標的装置の標的を直線状に走行させ、表面には跳ね返り防止部材が敷かれたフィールドとを備えていることを特徴としている。
【0011】上記フィールドは、移動標的装置を直線状に走行させる走行ガイドが埋設され、また標的装置を搭載した各台車毎に、下部には台車を走行させる空洞が形成され、上部には移動標的装置の標的と当該標的を保護するための防弾板とを突出させる間隙がそれぞれ直線状に形成されてなる複数個のプラットフォームで構成されている。
【0012】そして、射撃手に対し前進後退する走行自在の台車に標的装置を搭載し、標的装置の標的紙を保持する標的ホルダ及びその支柱が防弾部材で構成され、台車側と外部の指揮官装置側との間で信号の送受を行う送受信装置を備えた複数個の移動標的装置と、標的装置を搭載した各台車毎に、下部には台車を走行させる空洞が形成され、上部には標的ホルダを支持する防弾部材の支柱を突出させる間隙がそれぞれ直線状に形成され、表面には跳ね返り防止部材が敷かれて構成される複数個のプラットフォームとを備えていることを特徴とする射撃場であってもよい。
【0013】
【作用】近距離での射撃訓練の発射弾が、標的紙を貫通するか防弾部材の標的ホルダ又は防弾板に当たるか、移動標的装置から外れるかであるので、標的ホルダ又は防弾板に当たる場合は、当該弾丸は防弾部材の標的ホルダを貫通し或いは吸収され又は防弾板に吸収され、弾丸の跳ね返りが生じなくなり、近距離での射撃訓練が恐怖感を懐くことなくできるようになる。
【0014】
【実施例】図1は本発明の射撃場に用いられる移動標的装置の前面防弾板を外した一実施例構造説明図、図2はその正面外観図を示している。
【0015】図1において、台車1には、標的2−1が可変制御される標的装置2、台車1を走行させる台車駆動装置3、台車1及び標的装置2をそれぞれ制御する制御装置4及び台車1側と外部の指揮官装置側との間で信号の送受を行う送受信装置5等が搭載され、これらの各装置はカバー18で覆われ、弾丸から保護されるようになっている。
【0016】台車1には、騒音発生を防止するゴム製の走行車輪19が取り付けられており、台車1はコンクリートの床面40に敷かれた跳ね返り防止部材41上を走行ガイド31によってガイドされ、直線状に走行するようになっている。
【0017】そして各装置を弾丸から保護すると共に弾丸の跳ね返りを防止する防弾板6が、台車1に取付けられた固定具21を介して台車1の少なくとも射撃手側の先端前面部分に設けられている。また図1図示の如く、台車1の両側も防弾板6で覆われ或いは台車1の周囲全体が防弾板6で覆われる構成になっていてもよい。
【0018】図3は防弾板の一実施例構造説明図、図4はブロックの内部構造説明図を示している。防弾板6は、図3図示の如くブロック22を単位として構成されており、射撃訓練により弾丸を数多く吸収したブロック22は、その交換が可能な構造となっている。
【0019】防弾板6の部材として弾丸を吸収し易い部材、すなわち割れることなく弾丸を内部で停止させる材質のものが用いられる。これには図4図示のブロック22の如く、木目を縦横にして積層したベニヤ板状の、木目や繊維が交互に交差する層で構成した木材等がよい。その一例として積層ラワン材23が弾丸を停止させるに適していることが実験で確かめられている。つまりラワン材は割れ難く、木目や繊維による抵抗が大きく、かつ弾丸の通過した所が元に戻ろうとする性質を有している。この様な性質を有する木材であれば、ラワン材に限られるものではなく、他の木材で図4図示の積層ラワン材23の如く、その木目を縦横にしたベニヤ板状の積層板であってもよい。
【0020】積層ラワン材23は、弾丸の貫通によって割れ難い材質の例えば、オレフィン系樹脂材24でその前後がモールドされており、弾丸の貫通によって積層ラワン材23の積層板が割れたときにも、バラバラにならないように当該オレフィン系樹脂材24で固定化している。
【0021】この様な構造のブロック22で構成された防弾板6に弾丸が当たったとき、当該弾丸が跳ね返ることなくブロック22内に吸収される。つまり弾丸が防弾板6で跳ね返されることなく、しかもブロック22の表面に突き刺さった状態にて、次に飛来する弾丸が跳ね返されなければ、実質的にはブロック22はどのような材質のものを用いてもよい。例えば重量の点で実用性に難点があるが砂を用いることも可能であり、この場合砂がこぼれない構造にしておくことを要する。更に、上記の性質を備えた軟質ゴムを用いてもよい。また実験結果により、当該オレフィン系樹脂材24だけでブロック22を構成しても、弾丸を当該ブロック22内に停止させることができることを確認している。この事実から弾丸の通過によって割れない合成樹脂材だけでブロック22を製造することも可能である。
【0022】また防弾板6の形状は、図3図示のものに限られるものではなく、少なくとも射撃手側の台車1の先端前面部分が防弾構造となっておればよく、上記説明の如く台車1の周囲全体を防弾板6で囲む構造であってもよい。
【0023】なお、防弾板6の内側には弾丸の貫通を防ぐため鉄板25が用いられ、当該鉄板25が貫通される恐れがないようにしている。また出来るだけ防弾板6の奥深い位置、すなわちブロック22の深部で弾丸が停止するように、積層ラワン材23の厚さやその積層数を調整する。図3の防弾板6は、4積層構造の積層ラワン材23を有するブロック22を2層構造にして、弾丸を深部で停止させるものであり、射撃の最短距離に応じてブロック22の層数を変え、或いはブロック22の積層ラワン材23の層数またはその厚みを変えることにより、臨機応変に対処することになる。
【0024】防弾板6は発射弾の跳ね返りを防止するためのものであるから、防弾板6の高さは図1,図2図示の如く、標的紙2−2を保持する標的ホルダ2−3の下端枠2−4より高く、また防弾板6の幅は台車1又は標的2−1のいずれか広い方の幅を備えている。
【0025】回転制御される標的2−1の標的ホルダ2−3は標的紙2−2を自由に差し替えられるようになっており、当該標的ホルダ2−3にスクリーンも差し入れることができ、図示されていないが映写装置のプロジェクタからこのスクリーンに標的としての固定静止画や動画の標的が投影される。この標的ホルダ2−3は、弾丸を貫通し易い木材で構成されており、或いは図4で説明のブロック22と同じ防弾部材で構成されていてもよい。いずれにしても当該標的ホルダ2−3は、弾丸の跳ね返りを防止する防弾部材が用いられている。
【0026】なお、標的装置2の標的2−1は、制御装置4からの制御信号によって、図2図示の如く90°回転自在に制御されるようになっており、射撃手に当該標的2−1が正面を向くように制御される。標的装置2の標的2−1は、この回転型の標的の他、起立、転倒する型の標的等が用いられる。
【0027】このように構成された移動標的装置20を複数個用いた射撃場は、図1にその一部分が図示されている如く、一面に敷かれた跳ね返り防止部材41の下の床面40に標的装置2を搭載した台車1をガイドする走行ガイド31が埋設されている。この走行ガイド31は移動標的装置20毎に設けられているものであり、跳ね返り防止部材41が一面に敷かれたフィールドに、複数個直線状に延びた間隙が形成されている。この射撃場についての詳しい説明は、後に説明する他の構成の移動標的装置を用いた射撃場の図6で改めて説明する。
【0028】有線、無線を介して後に説明する指揮官装置から発せられた各種の制御信号を受信した図1,図2図示の移動標的装置20は、上記説明の跳ね返り防止部材41が一面に敷かれたフィールドの間隙の下に埋設された走行ガイド31に沿って、射撃手に対し前進後退を自在に移動すると共に、標的2−1が回転制御され、射撃手は近距離の、しかも近づいて来る標的2−1に向かって射撃訓練ができる。この近距離の射撃であっても、発射弾の跳ね返りが生じることはない。
【0029】図5は本発明の射撃場に用いられる移動標的装置の他の実施例構造説明図を示している。同図において、図1と同じものは同一の符号が付されており、7は映写装置、8は照明装置、9はビデオカメラ、10はモータ、14はアンテナ、16は標的回転用モータ、17は制御盤、32はプラットフォーム、33は空洞、34は間隙をそれぞれ表している。
【0030】並列する2つのプラットフォーム32によって、同図図示の如く、下部には直線状の空洞33が形成され、上部には直線状の間隙34がそれぞれ形成されるようになっており、空洞33の底面に台車1を走行させる走行ガイド31が敷設されている。この走行ガイド31は移動標的装置20を直線状の間隙34に沿って走行させるためのものである。並列する2つのプラットフォーム32によって形成される上記空洞33の内を、台車1が自在に走行できるようになっている。
【0031】台車1には、標的2−1が可変制御される標的装置2、台車1を走行させる台車駆動装置3、台車1及び標的装置2をそれぞれ制御する制御装置4及び台車1側と外部の指揮官装置側との間で信号の送受を行う送受信装置が搭載され、そして各装置を弾丸から保護すると共に弾丸の跳ね返りを防止する防弾板6が台車1の射撃手側の先端部分に設けられている。防弾板6の取付け位置やその取付け状態については後ほど説明する。当該防弾板6の部材として、図4で説明したブロック22と同様の部材が用いられる。
【0032】台車1は、騒音発生を防止するゴム製の走行車輪19が取り付けられており、台車駆動装置3に設けられているモータ10によって走行車輪19が駆動され、その前進、後退の制御が自在になされる。台車1は上記走行ガイド31によってガイドされ、走行ガイド31に沿って直線状に走行する。
【0033】この台車駆動装置3には図示されていないが集電装置を備えており、集電装置を介して給電線からモータ10に供給する電力を取り入れるようになっている。なお当該台車1側と外部の指揮官装置側との制御信号などの送受は、アンテナ14を介した無線で行われるが、この無線に替え、ケーブルや上記給電線と集電装置とを用いて行うようになっていてもよい。
【0034】標的装置2の標的2−1は、制御装置4からの制御信号によって90°回転自在に制御されるようになっており、射撃手に当該標的2−1が正面を向くように制御される。標的装置2の標的2−1は、この回転型の標的の他、起立、転倒する型の標的等が用いられる。
【0035】この標的2−1は照明装置8によってその標的面が照らされるようになっており、後に説明する射撃場の天井などからの照明灯による照明ムラや照度のバラツキが生じないように、照明装置8が台車1に搭載されている。
【0036】また台車1は、映写装置7を搭載しており、この映写装置7によって標的2−1に貼付けられたり、当該標的2−1と差し替えたスクリーンに、任意の映像標的が投影できるようになっている。
【0037】映写装置7として、スライドプロジェクタやビデオプロジェクタが用いられ、スライドプロジェクタを用いれば射撃すべき人物、射撃してはいけない人物など任意に映し出せる静止固定画像を所定時間毎に自動コマ送りで投影でき、ビデオプロジェクタを用いれば連続的に変化する遠近感の異なる映像標的を投影できる。
【0038】また台車1には、ビデオカメラ9が搭載されており、当該ビデオカメラ9は標的2−1の画像を撮影する。ビデオカメラ9としてテレビジョンカメラが用いられているとき、テレビジョンカメラで撮影された標的2−1の映像が台車1側から指揮官装置や射撃手の近傍にそれぞれ設置されているモニタ装置に伝送され、その映像が再生される。
【0039】またビデオカメラ9として画像処理用の、例えばCCDイメージセンサカメラが用いられているとき、標的2−1に命中した命中弾痕を検知する命中弾検出装置でその画像処理がなされるようになっている。この命中弾検出装置の画像処理では、例えば標的2−1に命中した命中弾痕の重心位置の座標データだけを抽出するようになっており、この命中弾痕の重心位置の座標データは、送受信装置を介して、或いは制御信号などを無線で送受する場合はアンテナ14を介して、射撃手の近傍や指揮官装置に設置されているモニタ装置側にデータ伝送され、モニタ装置側に予め用意された標的対応の標的画像の対応位置にその命中弾痕が再生される。
【0040】ところで、台車1の走行と共に標的2−1は移動する。すなわち上記説明の各装置によって防弾板6を先頭とする移動標的装置20を構成している。当該台車1にはプラットフォーム32の表面から飛び出ることができる限りないように各装置が搭載されるが、プラットフォーム32の表面から飛び出る標的2−1、及び当該標的2−1との関連においてプラットフォーム32の表面より上側に配設される映写装置7、照明装置8、ビデオカメラ9等の装置に対しては、台車1の射撃手側の先端部分でプラットフォーム32の表面よりわずか上側に設置されている防弾板6で、飛来する弾丸から保護すると共に、当該防弾板6でこれらの装置に当たって弾丸が跳ね返らないような構造にしている。
【0041】そしてまた、標的2−1の支柱は標的ホルダ2−3と一体構造であり、その材質は弾丸を跳ね返し難い部材、例えば木材等が使われ、弾丸が当該標的ホルダ2−3に当たったとき、弾丸が貫通するような材質のものが用いられる。或いは図4で説明したブロック22と同じ防弾部材で、弾丸を吸収するようになっていてもよい。つまり標的ホルダ2−3は弾丸を通過させる型と弾丸を吸収させる型のいずれの型の材質の防弾部材であってもよい。
【0042】また、この防弾板6でプラットフォーム32の表面より突出する標的2−1の支柱に弾丸が当たらないように、防弾板6の高さが設定された構造を採用している。
【0043】要するに、弾丸が標的紙2−2、上記標的ホルダ2−3及び防弾板6以外のものに当たらない構造にしており、標的紙2−2と標的ホルダ2−3以外の防弾板6に弾丸が当たったとき、当該弾丸は上記説明の防弾部材で構成された当該防弾板6によって吸収されるようになっている。また弾丸が標的ホルダ2−3に当たったとき、弾丸は標的ホルダ2−3を貫通し、或いは標的ホルダ2−3の防弾部材で吸収される。
【0044】図5に示されたモータ10、標的回転用モータ16、制御盤17等がカバー18で覆われ、それぞれの装置が保護されるようになっている。またプラットフォーム32の表面は、弾丸の跳ね返り防止が施されている。弾丸が跳ね返り難い部材でプラットフォーム32自体が構成されていてもよい。
【0045】回転制御される標的2−1は、標的ホルダ2−3に標的紙2−2が自由に差し替えられるようになっているので、スクリーンを差し入れることができ、前述の映写装置7のプロジェクタからこのスクリーンに標的としての固定静止画や動画の標的が投影される。このとき照明装置8の投光器は点灯されず、一般の標的紙2−2が標的ホルダ2−3に設定されているとき、照明装置8の投光器を点灯してその標的面を一様に照明するようになっている。
【0046】標的装置2の標的2−1は標的回転用モータ16の駆動によって90°の回転制御がなされるが、この標的回転用モータ16の駆動制御や、上記走行車輪19を駆動する走行用のモータ10の回転制御、その他映写装置7、照明装置8等の各制御は、制御盤17から送られてくる制御信号に基づいてそれぞれの動作がなされるようになっている。
【0047】図6は本発明の移動標的装置が用いられた射撃場の一実施例構成説明図を示している。同図において、天井に弾丸の跳ね返り防止が施された建屋39内には、複数個のプラットフォーム32が配設されている。この隣り合ったプラットフォーム32によって形成される直線状の各間隙34に沿って、図5で説明した構成の複数個の移動標的装置20が走行、すなわち移動可能に配置されている。これらの移動標的装置20は、指揮官室35に設置されている指揮官装置36から、その移動スピード、標的2−1を回転させ正面を向けるタイミング、標的2−1の絵柄等をそれぞれ独立的に指示制御されるようになっている。
【0048】これらの指示制御するための信号は、上述した如く、無線或いは有線で送信される。また標的2−1に命中した命中弾の座標データが移動標的装置20側から無線或いは有線で送信され、射撃手の射撃位置を定める射台37や指揮官室35に設置されているそれぞれのモニタ装置(いずれも図示省略)の表示画面にその命中弾がそれぞれ標的画像と共に表示される。
【0049】防弾壁38の前に実線で描画されている移動標的装置20は、射撃手の射撃位置、すなわち射台37から最も遠い所に位置し、射台37の直前の想像線で描かれた位置まで、移動標的装置20を近距離に接近させることができる。
【0050】従って射撃手は近づいてくる標的2−1に向かって射撃訓練をすることができ、このとき射撃手の発射弾が標的2−1から外れ、防弾板6に当たっても、当該発射弾は防弾板6に吸収され、射撃手側にその弾丸が跳ね返って来ないので、射撃手は安心して近距離での射撃訓練をすることができる。また建屋39の天井やプラットフォーム32の少なくともその表面は、弾丸の跳ね返り防止が施されているので、射撃手は恐怖を懐くことなく射撃訓練ができる。
【0051】なお図1,図2で説明した移動標的装置20を用いた射撃場にあっては、図6のプラットフォーム32が図1の床面40と跳ね返り防止部材41に該当し、図6の間隙34の位置に図1の走行ガイド31が埋設されていると考えればよい。この時の移動標的装置20の防弾板6の形状は、図6図示の移動標的装置20の防弾板6に替え、図3の図示の防弾板6であることは言うまでもない。
【0052】図7は本発明の射撃場に用いられる移動標的装置の他の実施例構造説明図を示している。同図の場合は,図5の移動標的装置20において、プラットフォーム32の表面より上側に配設される映写装置7、照明装置8、ビデオカメラ9がない構成のものであり、従って台車1の射撃手側の先端前面部分にも防弾板6はない。当該防弾板6がないので、標的ホルダ2−3を保持する支柱部分に防弾部材が用いられる。或いは標的ホルダ2−3を保持する支柱部分は、標的ホルダ2−3と一体構造の弾丸を貫通させる防弾部材の木材、或いは弾丸を吸収する図4で説明した材質の部材であってもよい。
【0053】プラットフォーム32の構造は図5図示の場合と同様で、並列する2つのプラットフォーム32によって形成される間隙34から、上記防弾部材の支柱部分及び防弾構造の標的2−1が配置されることになる。
【0054】この移動標的装置20を用いた射撃場は、図6で防弾板6がなく、標的ホルダ2−3を保持する支柱部分が防弾部材のもの、或いは標的ホルダ2−3と一体構造の防弾部材で構成されたものと同様であり、この場合の射撃場では標的ホルダ2−3及びその支柱部分が防弾部材で構成された移動標的装置20が、射撃手に対し自在に前進後退の移動をする。
【0055】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明によれば、移動標的装置にあっては、防弾対策が施されているので、移動標的装置に弾丸が当たるときには、防弾板で弾丸が吸収され、また防弾部材で弾丸が貫通吸収され、弾丸が跳ね返ることはない。
【0056】射撃手に対し標的が前進後退する本発明の移動標的装置を用いた射撃場にあっては、標的の近距離射撃であっても、その発射弾が射撃手側に跳ね返ることがないので、射撃手は安心して近づいてくる標的に対し射撃訓練をすることができる。
【0057】近距離射撃訓練が安全に、かつ射撃手に恐怖を懐かせずに出来るので、実社会における拳銃の使い方に適応した射撃訓練ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射撃場に用いられる移動標的装置の前面防弾板を外した一実施例構造説明図である。
【図2】その正面外観図である。
【図3】防弾板の一実施例構造説明図である。
【図4】ブロックの内部構造説明図である。
【図5】本発明の射撃場に用いられる移動標的装置の他の実施例構造説明図である。
【図6】本発明の移動標的装置が用いられた射撃場の一実施例構成説明図である。
【図7】本発明の射撃場に用いられる移動標的装置の他の実施例構造説明図である。
【符号の説明】
1 台車
2 標的装置
2−1 標的
2−2 標的紙
2−3 標的ホルダ
6 防弾板
20 移動標的装置
22 ブロック
23 積層ラワン材
32 プラットフォーム
33 空洞
34 間隙
40 床面
41 跳ね返り防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 射撃手に対し前進後退する走行自在の台車に標的装置を搭載し、標的装置の標的紙を保持する標的ホルダを防弾部材で構成すると共に、台車の少なくとも射撃手側の先端前面部分に弾丸を吸収する防弾板が設けらていることを特徴とする移動標的装置。
【請求項2】 上記標的装置は、その標的が90°回転することを特徴とする請求項1記載の移動標的装置。
【請求項3】 上記標的装置は、その標的が起立、転倒することを特徴とする請求項1記載の移動標的装置。
【請求項4】 上記防弾板はブロック単位で構成され、当該ブロックが交換可能であることを特徴とする請求項1記載の移動標的装置。
【請求項5】 当該ブロックは弾丸の通過で割れ難くい性質を持ち、かつその繊維が交互に交差するようにして積層された木材が用いられていることを特徴とする請求項4記載の移動標的装置。
【請求項6】 射撃手に対し前進後退する走行自在の台車に標的装置を搭載し、標的装置の標的紙を保持する標的ホルダが防弾部材で構成されると共に、台車の少なくとも射撃手側の先端前面部分に弾丸を吸収する防弾板が設けられ、台車側と外部の指揮官装置側との間で信号の送受を行う送受信装置を備えた複数個の移動標的装置と、当該移動標的装置の標的を直線状に走行させ、表面には跳ね返り防止部材が敷かれたフィールドとを備えていることを特徴とする射撃場。
【請求項7】 上記フィールドは、移動標的装置を直線状に走行させる走行ガイドが埋設されていることを特徴とする請求項6記載の射撃場。
【請求項8】 上記フィールドは、標的装置を搭載した各台車毎に、下部には台車を走行させる空洞が形成され、上部には移動標的装置の標的と当該標的を保護するための防弾板とを突出させる間隙がそれぞれ直線状に形成されてなる複数個のプラットフォームで構成されていることを特徴とする請求項6記載の射撃場。
【請求項9】 射撃手に対し前進後退する走行自在の台車に標的装置を搭載し、標的装置の標的紙を保持する標的ホルダ及びその支柱が防弾部材で構成され、台車側と外部の指揮官装置側との間で信号の送受を行う送受信装置を備えた複数個の移動標的装置と、標的装置を搭載した各台車毎に、下部には台車を走行させる空洞が形成され、上部には標的ホルダを支持する防弾部材の支柱を突出させる間隙がそれぞれ直線状に形成され、表面には跳ね返り防止部材が敷かれて構成される複数個のプラットフォームとを備えていることを特徴とする射撃場。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】第2666922号
【登録日】平成9年(1997)6月27日
【発行日】平成9年(1997)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−36613
【出願日】平成7年(1995)2月24日
【公開番号】特開平8−233498
【公開日】平成8年(1996)9月13日
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)