移動装置
【課題】 手元の操作で、キャスター付き被移動体の移動可能状態と移動防止状態との切り換えを容易に行うことができる移動装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る移動装置は、被移動体と、この被移動体に設けられ、被移動体を移動可能なタイヤを有する少なくとも1つのキャスターと、タイヤの回転を停止させる作動部と、被移動体において、キャスターから離間した位置に設けられ、作動部を操作する操作部と、操作部と作動部とを連結するワイヤーと、を備え、作動部は、キャスターに対して接離可能に設けられ、ワイヤーを操作部側から引っ張ることでタイヤに接触するブレーキ部材、を備え、操作部は、押ボタンと、この押ボタンを少なくとも押し込み状態と解除状態とに選択的に保持する保持機構と、押ボタンが押し込み状態に至る過程でワイヤーを引っ張るとともに解除状態においてワイヤーの引っ張り状態を解除するワイヤー引込機構と、を備え、上記押し込み状態において、前記タイヤが回転停止状態となる。
【解決手段】 本発明に係る移動装置は、被移動体と、この被移動体に設けられ、被移動体を移動可能なタイヤを有する少なくとも1つのキャスターと、タイヤの回転を停止させる作動部と、被移動体において、キャスターから離間した位置に設けられ、作動部を操作する操作部と、操作部と作動部とを連結するワイヤーと、を備え、作動部は、キャスターに対して接離可能に設けられ、ワイヤーを操作部側から引っ張ることでタイヤに接触するブレーキ部材、を備え、操作部は、押ボタンと、この押ボタンを少なくとも押し込み状態と解除状態とに選択的に保持する保持機構と、押ボタンが押し込み状態に至る過程でワイヤーを引っ張るとともに解除状態においてワイヤーの引っ張り状態を解除するワイヤー引込機構と、を備え、上記押し込み状態において、前記タイヤが回転停止状態となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスターが設けられた移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部にキャスターが設けられた鞄は、スムーズな移動は可能であるが、一方で鞄を静止しておきたい場合であっても、一度手を離すと、車内などで生じる僅かな振動や傾斜地などで鞄が不用意に移動してしまうという問題があった。これらの問題を解決するために、特許文献1に開示されるような、移動可能状態と移動防止状態の切り換えが可能な、ストッパー装置付きのキャスター付き鞄が開発されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3143133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような装置は、キャスター付近に取り付けられた操作部を、手または足を使って操作する必要がある。このとき、例えば、手で操作を行う場合は、身を屈めて操作部を操作しなければならない。一方、足で操作を行う場合は、身を屈める必要はないが、キャスターの停止方向によっては足を操作部まで延ばすことができず、操作がしづらいという問題があった。このような問題は、鞄だけに限られるものではなく、キャスターが設けられた台車、ショッピングカートなどの移動装置全般に起こりうる問題である。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、手元の操作で、キャスター付き移動装置において、移動可能状態と移動防止状態との切り換えを容易に行うことができる移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動装置は、被移動体と、前記被移動体に設けられ、当該被移動体を移動可能なタイヤを有する少なくとも1つのキャスターと、前記タイヤの回転を停止させる作動部と、前記被移動体において、前記キャスターから離間した位置に設けられ、前記作動部を操作する操作部と、前記操作部と作動部とを連結するワイヤーと、を備え、前記作動部は、前記キャスターに対して接離可能に設けられ、前記ワイヤーを前記操作部側から引っ張ることで前記タイヤに接触するブレーキ部材、を備え、前記操作部は、押ボタンと、当該押ボタンを少なくとも押し込み状態と解除状態とに保持する保持機構と、前記押ボタンが押し込み状態に至る過程で前記ワイヤーを引っ張るとともに前記解除状態においてワイヤーの引っ張り状態を解除するワイヤー引込機構と、を備え、前記押し込み状態において、前記タイヤが回転停止状態となっている。
【0007】
この構成によれば、操作部が作動部から離れた位置、例えば、被移動体の上部の取っ手付近など、操作しやすい位置に設けられているため、足で操作したり、身を屈めて手で操作したりする必要が無く、楽に操作することができる。また、操作部が押ボタンを備えており、ボタンを押すという単純な操作で、移動可能状態と移動防止状態との切り換えを行うため、容易に操作することができる。なお、本発明における移動装置は、鞄、台車、ショッピングカートなどキャスターが設けられた種々の移動装置に適用可能であり、例えば、鞄の場合には、物品を収納する鞄の本体部分が被移動体となり、台車においては、物品を載せる台が被移動体となる。
【0008】
上記移動装置においては、作動部及び操作部の少なくとも一方に、ブレーキ部材がタイヤに接触するまでのワイヤーの引込量又はブレーキ部材の押込量と、押ボタンの押込量との差を吸収する吸収機構を備えることができる。
【0009】
また、上記移動装置においては、吸収機構は、操作部に取り付けられ、保持機構は、押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、押ボタンを上記押し込み状態に保持するようにすることができる。そして、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでのワイヤーの引込量が、所定押込量よりも小さいときは、吸収機構が弾性変形することで、押ボタンが所定押込量まで押し込まれるようにすることができる。
【0010】
さらに、上記移動装置においては、吸収機構は、作動部に取り付けられ、保持機構は、押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、押ボタンを上記押し込み状態に保持するようにすることができる。そして、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでのブレーキ部材の押込量が、所定押込量よりも小さいときは、吸収機構が弾性変形することで、押ボタンが所定押込量まで押し込まれるようにすることができる。
【0011】
この構成により、次の効果を得ることができる。例えば、製造誤差、タイヤ及びブレーキ部材の摩耗、ワイヤーの伸び等によっては、ブレーキ部材がキャスターに接触するまでのワイヤーの引込量又はブレーキ部材の押込量と、押ボタンが押し込み状態に保持されるまでの押込量とが一致しない場合がある。このような場合には、押ボタンが完全に押し込まれてもブレーキ部材がキャスターに接触しないため、ブレーキをかけることができなくなる。或いは、押ボタンが、押し込み状態まで押し込まれる前に、ブレーキがかかってしまう場合もあり、このときには押ボタンを押し込み位置に保持できなくなる。そこで、上記のように構成すると、押ボタンが、押し込み状態になるまでに、ブレーキがかかってしまった場合には、吸収機構が弾性変形することで、押ボタンをさらに押し込むことができる。これにより、押ボタンを押し込み状態まで押し込むことができる。
【0012】
ここで、上記吸収機構は、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでは、押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、回転停止状態となった後は、押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していくように構成することができる。この構成によれば、ブレーキ部材がタイヤに接触するまでは、吸収機構がその形状を維持する。そのため、押ボタンの押込量に対応するように、ワイヤー引込機構により、ワイヤーが引っ張られ(概ね押ボタンが押し込まれた量だけワイヤーが引っ張られる)、かつ、ブレーキ部材がタイヤに向かって押し込まれる。このとき、「形状を維持する」とは、全く弾性変形せずに形状を維持することを意味するのではなく、押ボタンの押し込みによって多少の弾性変形は許容することを意味する。この点については、本明細書を通じて同様の意味である。
【0013】
また、上記移動装置においては、操作部に、解除ボタンをさらに備え、解除ボタンを押し込むことにより、押ボタンを解除状態にすることができる。
【0014】
さらに、上記移動装置において、作動部及び操作部の少なくとも一方に、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまで押ボタンを押し込んだ後、さらに押ボタンを押し込むと、ブレーキ部材がタイヤを加圧する加圧機構をさらに備えることができる。
【0015】
また、上記移動装置において、加圧機構は、操作部又は作動部に取り付けられるとともに、保持機構は、押ボタンが押し込まれたときに、押ボタンを押し込んだ位置で保持するようにすることができる。そして、押ボタンが、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となった後もさらに押し込まれると、加圧機構が弾性変形することにより、その復元力でブレーキ部材がタイヤを加圧するように構成することができる。
【0016】
この構成により、回転停止状態からさらに押ボタンを押し込むことができ、この押し込みによる加圧機構の復元力がタイヤをさらに加圧するように作用する。そして、保持機構は、押ボタンが押し込まれたときに、押ボタンを押し込んだ位置で保持することができるため、押ボタンを任意の位置に保持することができる。これに伴い、加圧機構の押込量も任意に調整することができるため、ブレーキの強度の調節が可能となる。
【0017】
ここで、上記加圧機構は、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでは、押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、回転停止状態となった後は、押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していくように構成することができる。この構成によれば、ブレーキ部材がタイヤに接触するまでは、加圧機構がその形状を維持する。そのため、押ボタンの押込量に対応するように、ワイヤー引込機構により、ワイヤーが引っ張られ(概ね押ボタンが押し込まれた量だけワイヤーが引っ張られる)、かつ、ブレーキ部材がタイヤに向かって押し込まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る移動装置によれば、手元の操作で、移動可能状態と移動防止状態との切り換えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る移動装置をキャスター付きスーツケースに適用した場合の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の作動部の断面正面図である。
【図4】図1の操作部の部分断面正面図である。
【図5】図1の操作部の分解図である。
【図6】ブレーキOFF時の図1の操作部及び作動部の部分断面正面図である。
【図7】ブレーキON時かつワイヤー引込量最小時の図1の操作部及び作動部の部分断面正面図である。
【図8】ブレーキON時かつワイヤー引込量最大時の図1の操作部の部分断面正面図である。
【図9】図1のスーツケースにおける操作部の他の実施形態を示す平面図及び正面図である。
【図10】図1のスーツケースにおける操作部の他の実施形態を示す平面図及び部分断面正面図である。
【図11】図1のスーツケースにおける操作部の他の実施形態を示す正面図である。
【図12】図11の操作部の分解図である。
【図13】ブレーキON時の図11の操作部の正面図である。
【図14】図1のスーツケースにおける連結部材の他の実施形態を示す正面図である。
【図15】図14の連結部材の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る移動装置をスーツケースに適用した場合の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、この鞄の斜視図、図2は、図1の正面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るスーツケースは、箱形の身2と蓋3とが互いに合わさって収容空間を形成するケース本体(被移動体)1を備えている。そして、ケース本体1の上部に取っ手4が設けられるとともに、ケース本体1の底部の四隅にそれぞれキャスター5が設けられている。すなわち、身2に2個のキャスター5が設けられ、蓋3に2個のキャスター5が設けられている。各キャスター5は、タイヤ6と、このタイヤ6を回転可能に支持するフレーム7とを備え、各フレーム7は、台座8を介してケース本体1の底面に固定されている。より詳細には、台座8は、ケース本体1の底面に対し垂直な旋回軸廻りに、フレーム7を旋回可能に取り付けている。
【0022】
図1及び図2に示すように、ケース本体1の底部、すなわちキャスター5の近傍には、タイヤ6に対しブレーキを作動させる作動部10が取り付けられている。一方、ケース本体1の上部、すなわち、取っ手4の付近には、作動部10を操作するための操作部20が取り付けられている。より詳細には、ケース本体1の身2に操作部20が取り付けられており、身2に取り付けられている2個のキャスター5aにそれぞれ作動部10が取り付けられている。そして、操作部20と各作動部10とはワイヤー40でそれぞれ連結されており、操作部20を操作すると、各ワイヤー40を介して各作動部10が同時に操作されるようになっている。
【0023】
次に、作動部10について図3も参照して説明する。図3は、作動部の断面正面図である。同図に示すように、作動部10は、キャスター5の上方でケース本体1の内部に取り付けられ、作動部10を覆う本体カバー11を備えており、この本体カバー11内に、水平軸12aにより枢動可能に取り付けられる連結部材12と、この連結部材12の一端部に係合し、タイヤ6を押圧するブレーキ部材13とが設けられている。
【0024】
ブレーキ部材13は、棒状に形成された作動軸14と、この作動軸14の下端に取り付けられタイヤ6を押圧するブレーキシュー15とから形成されている。そして、このブレーキ部材13は、キャスター5の台座8を突き抜けて、上下動可能となっている。また、作動軸14にはブレーキ解除バネ16が取り付けられており、ブレーキシュー15がタイヤ6から離間するように作動軸14を付勢している。ところで、連結部材12の他端部には、上述したワイヤー40が連結されており、ワイヤー40が引っ張られると、連結部材12が旋回し、ブレーキ部材13が、ブレーキ解除バネ16に抗して下方へ押し込まれるようになっている。一方、ワイヤー40の引っ張りが解除されると、ブレーキ解除バネ16により、作動軸14が付勢され、ブレーキシュー15がタイヤ6から離間するようになっている。
【0025】
次に、操作部20について図4及び図5も参照して説明する。図4は操作部の部分断面正面図であり、図5は操作部の分解図である。
【0026】
図4及び図5に示すように、操作部20は、本体ケース21を有しており、この本体ケース21内に、押ボタン22と、この押ボタン22を作動状態と非作動状態とで切換可能に保持する保持機構と、ワイヤー40を引込むワイヤー引込機構とが収納されている。押ボタン22は、本体ケース21の上部に取り付けられており、後述する保持機構を構成する押上バネ28に支持されている。より詳細には、図5の分解図に示すように、本体ケース21の底面の略中央に押上バネ28が配置され、その上にボタン受け具29が設けられており、この上に押ボタン22が配置されている。
【0027】
ワイヤー引込機構は、本体ケース21の下部で、押上バネ28を挟んで左右に取り付けられている。すなわち、ワイヤー引込機構は、上部にラック23aが形成されるワイヤー引込部材23と、ピニオン24と、下部にラック25aが形成される伝動部材25とで構成されている。そして、ピニオン24を挟んで、外側にワイヤー引込部材23、内側に伝動部材25が、互いに噛合するように配置されている。ワイヤー引込部材23は、下部に凹部23bが形成されており、この凹部23bにワイヤー40が取り付けられている。伝動部材25は、上部にバネ受け具25bが形成されており、バネ受け具25bにワイヤー引込量調整バネ(吸収機構)26が配置される。ボタン受け具29には、2個の凹部29aが形成されており、各伝動部材25は、各凹部29aに伝動部材25のバネ受け具25bの下面が係合して取り付けられる。すなわち、押ボタン22に2個の伝動部材25が取り付けられ、押ボタン22と伝動部材25との間にワイヤー引込量調整バネ26が配置されることとなる。
【0028】
保持機構は、ボタン受け具29の中央に取り付けられるピン27と、本体ケース21にスライド可能に取り付けられ、ピン27と係合するカム30と、本体ケース21の底面の略中央に配置される押上バネ28とで構成される。カム30にはピン27が係合する逆ハート型の溝31が形成されており、ピン27には、ロックバネ32が取り付けられている。ロックバネ32は、ピン27をカム30に押し付ける方向に付勢力を有している。そして、溝31には段が付けられており、ピン27は、ロックバネ32の付勢力により段を上がることができず、逆ハート型の溝31を常に一定の方向に進むように形成されている。この構成により、押ボタン22が押し込まれると、ピン27がカム30の溝31に沿って下降し、所定位置31aで停止する。すなわち、押ボタン22が押し込み状態に保持される。そして、再度押ボタン22を押すと、ピン27は所定位置31aから外れ、押ボタン22は上昇して初期状態に戻る。すなわち、解除状態となる。
【0029】
次に、上記のように構成されたスーツケースの動作について図6から図8も参照しつつ説明する。図6は、ブレーキOFF時、図7は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最小時、図8は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最大時の操作部と作動部を示している。
【0030】
図6は初期状態であり、ブレーキがOFFにされている状態を示す。このとき、押ボタン22は上に上がっており、ブレーキシュー15はタイヤ6に接していない状態である。この状態からブレーキを作動させるには、図7(a)に示すように、押ボタン22を押し込む。このとき、ワイヤー引込量調整バネ26の復元力(反発力)により、ワイヤー引込量調整バネ26はほぼ自然長のまま伝動部材25を押し下げ、これによって、伝動部材25が下降する。その結果、伝動部材25と噛合するピニオン24が回転し、それに伴ってピニオン24と噛合するワイヤー吸込部材23が上昇し、ワイヤー40が引っ張られる。ワイヤー引込部材23がワイヤー40を引っ張ると、図7(b)に示すように、連結部材12が旋回し、作動軸14の上端を押し下げる。これにより、ブレーキシュー15がキャスター5のタイヤ6を押圧し、ブレーキが作動する。すなわち、タイヤ6が回転停止状態となる。
【0031】
同時に、押ボタン22の押し下げに伴って、ボタン受け具29に取り付けられているピン27もカム30の溝31に沿って下降する。このとき、ピン27は、押ボタン22にしたがって垂直に下降するが、カム30は、本体ケース21にスライド可能に取り付けられているため、カム30がスライドし、ピン27は、逆ハート型に形成された溝31に沿ってスムーズに下降することができる。押し下げられた押ボタン22は、押上バネ28の付勢力により上昇しようとするが、このとき、ピン27がカム30の所定位置31aと係合する。その結果、カム30とピン27とにより押ボタン22は押し込まれた状態で保持される。すなわち、上述したようにブレーキが作動した状態が保持され、スーツケースは移動防止状態となる。この状態から、再度押ボタン22を押すと、ピン27がカム30の所定位置31aから外れ、押上バネ28の付勢力により押ボタン22が元の位置に戻る。このとき、ワイヤー40の引っ張りが解除されるため、ブレーキ解除バネ16の付勢力によりブレーキシュー15がタイヤ6から離れる。その結果、スーツケースは移動可能状態となる。
【0032】
次に、ワイヤー引込量調整バネ26の作動について説明する。ワイヤー引込量調整バネ26は、製造誤差、タイヤ及びブレーキシューの摩耗、ワイヤーの伸び等が生じた場合でもタイヤ6に一定の押付力でブレーキシュー15を押し付けることができるように設けられたものである。ブレーキを作動させた状態を保持するためには、ピン27がカム30の所定位置31aに達する必要があり、所定位置31aに達するまでの所定押込量だけ押ボタン22を押し込む必要がある。タイヤの摩耗等の問題が無いときは、図7に示されるように、ブレーキシュー15がタイヤ6に接触して回転停止状態となったところで、それ以上ワイヤー40の引っ張りが行われないが、これでは、押ボタン22の押し込みが所定押込量に達していないため、ピン27がカム30の所定位置31aに達せず、ブレーキを保持できない。そこで、この場合には、押ボタン22の所定押込量の残りをワイヤー引込量調整バネ26で吸収する。すなわち、ブレーキシュー15がタイヤ6に接触して回転停止状態となったところから、さらに押ボタン22を押し込むと、ワイヤー引込量調整バネ26が縮み、所定押込量まで押ボタン22を押し込むことができる。これにより、ブレーキの作動状態を保持することができる。
【0033】
一方、製造誤差やスーツケースの使用によりタイヤの摩耗等の問題が生じると、それに併せるように、ブレーキシュー15がタイヤ6に接触するところまでワイヤー40が引込まれ、ワイヤー引込量調整バネ26が吸収する量が自動的に少なくなっていく。最終的には、図8に示すように、ワイヤー引込量調整バネ26がほぼ収縮することなく、押ボタン22の所定押込量だけワイヤー引込部材23が引き上げられることになる。これにより、製造誤差により、キャスターが設計位置に取り付けられなかったり、タイヤ及びブレーキの摩耗によりタイヤとブレーキとの間が設計距離より開いてしまったり、ワイヤー40の伸びにより所定の引込量では設計したとおりのワイヤー40の引込みができなくなったりしたときにも、ワイヤー引込量調整バネ26の吸収量(収縮量)が減ることで、所定の押付力をタイヤ6に与えることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、操作部20がケース本体1の上部、すなわち手元に設けられているため、足で操作したり、身を屈めて手で操作したりする必要が無く、その結果、楽にブレーキを作動させることができる。また、操作部20が押ボタン22を備えており、押ボタン22を押すという単純な操作で移動可能状態と移動防止状態との切り換えを行うことができるため、容易に操作することができる。さらに、操作部20は、ワイヤー引込量調整バネ26を備えており、ワイヤー引込機構がワイヤー40を引込むワイヤー引込量が、押ボタン22の所定押込量より小さいときに、ワイヤー引込量調整バネ26が操作ボタン22の所定押込量を吸収することができる。その結果、製造誤差、タイヤ及びブレーキの摩耗、ワイヤーの伸び等により、初期設計と誤差が生じた場合でも、初期設計で要求した押付力と同等の押付力を得ることができ、確実に移動防止状態とすることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、操作部20をケース本体1の上部に配置しているが、体を屈ませずに手で操作できる範囲であれば、ケース本体1のいずれの位置に配置することもできる。
【0036】
また、上記実施形態では、ピン27とカム30とにより操作ボタン22を作動状態と非作動状態とに切り換える制御を行ったが、図9に示すように、押ボタン22の横に解除ボタン51を備え、ラチェット機構で制御することができる。より詳細には、ボタン受け具29に、ラック部材52を取り付け、本体ケース21に、ピニオン53aと歯車53bで構成される枢動部材53を枢動可能に取り付ける。解除ボタン51には、歯止め54が取り付けられており、歯止め54は、本体ケース21に枢動可能に取り付けられている。そして、ラック部材52とピニオン53aとが噛合し、歯止め54と歯車53bとが噛合して配置される。このとき、歯止め54と歯車53bとでラチェット機構を構成する。押ボタン22を押し下げると、ラック部材52が下降しピニオン53aが回転する。同時に歯車53bが回転し、歯止め54と噛合する位置が変わっていき、押ボタン22が押された状態で保持される。そして、解除ボタン51を押すと歯止め54と歯車53bとの噛合が解除され、押上バネ28の付勢力により押ボタン22が元の位置に戻る。
【0037】
このような構成にすると、押ボタン22が押された位置で、その状態で押ボタン22が保持されるため、押ボタン22を任意の位置で留めることができる。すなわち、ブレーキ部材13がタイヤ6に接触した状態で押ボタン22を留めることもでき、また、その状態からさらに押ボタン22を押し込んだ状態で押ボタン22を留めることもできる。ブレーキ部材13がタイヤ6に接触した後さらに押し込むと、ワイヤー引込量調整バネ(加圧機構)26が収縮(弾性変形)することにより押し込まれることになるが、このとき、ワイヤー引込量調整バネ26から生じる反力(復元力)がさらにタイヤ6に付加されることとなる。このように、押ボタン22を押し込むほど、ワイヤー引込量調整バネ26の反力が大きくなるため、ブレーキ部材13によりタイヤ6を加圧する力を大きくすることができる。その結果、押ボタン22の押込量に応じて、ブレーキの効き具合を調節することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、各伝動部材25にワイヤー引込量調整バネ26を備え、個々でワイヤー40の引込量を調整しているが、図10に示すように、ワイヤー引込量調整バネ61を1個のみ備え、個々にワイヤー引込量が異なる場合でも、個々に対応してワイヤーの引込量を調整する構成とすることができる。より詳細には、ボタン受け具29のほぼ中央にバネ受け具62を配置し、バネ受け具62にワイヤー引込量調整バネ61を配置する。バネ受け具62に枢動可能に運動伝達量調整部材63が取り付けられ、運動伝達量調整部材63に各伝動部材64が取り付けられる。左右のワイヤー引込量が異なる場合には、運動伝達量調整部材63が枢動し、左右のワイヤー引込量の差を吸収する。
【0039】
さらに、上記実施形態では、ワイヤー引込量調整バネ26にコイルバネを用いたが、図11及び図12に示すように、ワイヤー引込量調整バネ71に板バネを使用することができる。以下では、板バネを用いた操作部20の例を示す。より詳細には、ワイヤー引込量調整バネ71は、正面視U字状に形成され、その両端が外方に屈曲して形成されている。操作部20は、本体ケース21を有しており、この本体ケース21のほぼ中央に調整バネ保持具72が旋回可能に取り付けられている。この調整バネ保持具72に、ワイヤー引込量調整バネ71の屈曲した両端を引っ掛けて取り付ける。また、調整バネ保持具72は、一端にワイヤー引込部材73を取り付ける受け部72aが形成されている。ワイヤー引込部材73は、上端が調整バネ保持具72の受け部72aに係合可能に形成されており、下端がワイヤー40を保持可能に形成されている。さらに、調整バネ保持具72の中央下端には、正面視C字状の押上バネ74が一体的に形成されている。このように取り付けられたとき、ワイヤー引込量調整バネ71の一端は、調整バネ保持具72の旋回軸を挟んで、ワイヤー引込部材73が取り付けられる端部と反対側の端部まで伸びている。また、ワイヤー引込量調整バネ71、調整バネ保持具72、ワイヤー引込部材73及び押上バネ74がもう一組あり、左右反転させた状態で、正面視において、前後に重ねて本体ケース21に取り付けられる。このとき、押上バネ74も、本体ケース21の下端に取り付けられる。押ボタン75は、下部が、中央から下方外側に向かい傾斜して形成されており、かつ、正面視において、前後で逆方向に傾斜して形成されている。この押ボタン75の下端が、ワイヤー引込量調整バネ71の端部に載置されている。なお、押ボタン75にはピン27が取り付けられており、図示していないが、本体ケース21にはカム30が取り付けられている。
【0040】
上記のようなワイヤー引込量調整バネ71の作動について、図13を用いて説明する。図13(a)は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最小時、図13(b)は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最大時の操作部の正面図を示している。押ボタン75を押し込むと、押ボタン75の下端がワイヤー引込量調整バネ71を押し下げるため、調整バネ保持具72が旋回する。これにより、ワイヤー引込部材73が引き上げられ、同時にワイヤー40が引っ張られる。このときの作動部10の動作は、コイルバネを使用したときと同様である。タイヤの摩耗等の問題が無いときは、ワイヤー引込量調整バネ71が収縮する必要がある。この場合には、図13(a)に示されるように、U字の開口部が狭くなり、板バネが収縮した状態となる。一方、製造誤差やスーツケースの使用によりタイヤの摩耗等の問題が生じると、それに併せるように、ワイヤー引込量調整バネ71が吸収する量が自動的に少なくなっていく。最終的には、図13(b)に示すように、ワイヤー引込量調整バネ71がほぼ収縮することなく、押ボタン75の所定押込量だけワイヤー引込部材73が引き上げられることになる。
【0041】
この構成を有することで、製造誤差、タイヤ及びブレーキの摩耗、ワイヤーの伸び等により、初期設定と誤差が生じた場合でも、初期設定で要求した押付力と同等の押付力を得ることができる。加えて、操作部20に使用するパーツを少なくすることができる。これにより、操作部20が軽量になり、全体としてスーツケースを軽量にすることができ、かつ、低コストで製造することが可能になる。
【0042】
また、上記実施形態では、吸収機構として、操作部20にワイヤー引込量調整バネ26を設けて、押ボタン22の押込量とワイヤー40の引込量との差を調整したが、作動部10にブレーキ部材13の押込量と押ボタン22の押込量との差を調整するブレーキ押込量調整バネ(吸収機構)81を設けることもできる。具体的には、作動部10に設けられる連結部材80が、ブレーキ押込量調整バネ81と本体82とからなる。図14及び図15に示すように、ブレーキ移動量調整バネ81は、正面視U字状の板バネとして形成される。ブレーキ移動量調整バネ81は、本体82に上下方向に伸縮可能に取り付けられる。この連結部材80は、上記実施形態と同様に、本体カバー11内に、水平軸12aにより枢動可能に取り付けられる。そして、ブレーキ押込量調整バネ81のU字の開口部側81aにブレーキ部材13が設けられ、他端側82aにワイヤー40が連結されている。ワイヤー40が引っ張られると、連結部材80が旋回し、ブレーキ部材13が、下方に押し込まれる。このように構成されたブレーキ押込量調整バネ81は、タイヤの摩耗等の問題が無いときは、ブレーキ押込量調整バネ81が収縮する必要があり、U字の開口が狭まるように収縮する。一方、製造誤差やスーツケースの使用によりタイヤの摩耗等の問題が生じると、それに併せるように、ブレーキ押込量調整バネ81が吸収する量が自動的に少なくなっていく。最終的には、ブレーキ押込量調整バネ81はほぼ収縮することなく、押ボタン22の所定押込量だけブレーキ部材13が押し込まれることになる。なお、この場合には、操作部20は、ワイヤー引込量調整バネ26を設ける必要がなく、押ボタン22、保持機構及びワイヤー引込機構を備えていればよい。このように、操作部20ではなく作動部10に吸収機構を設けることで、操作部20の構造を単純化でき、かつ、作動部10の吸収機構81も複雑な構造が必要ないため、少ないパーツで製造でき、容易に製造することができる。
【0043】
上記に示した操作部又は作動部に板バネ形状の吸収機構を設ける構成においても、操作部を図9に示すような構成とし、押ボタン75の横に解除ボタン51を備え、ラチェット機構で作動状態と非作動状態とを切り換えて制御することができる。この場合には、板バネ形状の吸収機構が、加圧機構として働き、図9に対して説明したのと同様に、加圧機構が動作する。すなわち、押ボタン75が押された位置で、その状態で押ボタン75が保持されるため、押ボタン75を任意の位置で留めることができる。ブレーキ部材13がタイヤ6に接触した後さらに押ボタン75を押し込むと、ワイヤー引込量調整バネ(加圧機構)71又はブレーキ押込量調整バネ(加圧機構)81が収縮(弾性変形)することにより押し込まれることになる。このとき、加圧機構71,81から生じる反力(復元力)がさらにタイヤ6に付加されることとなる。このように、押ボタン75を押し込むほど、加圧機構71,81の反力が大きくなるため、ブレーキ部材13によりタイヤ6を加圧する力を大きくすることができる。その結果、押ボタン75の押込量に応じて、ブレーキの効き具合を調節することができる。
【0044】
さらに、吸収機構又は加圧機構は、例えば、ワイヤー40とワイヤー引込部材23,73との間に配置される引張バネとすることもできる。この場合には、吸収機構又は加圧機構は、伸長(弾性変形)することにより、押ボタン22の押込量の吸収、又は、押ボタン22の押込量に応じたタイヤ6の加圧を行うことができる。
【0045】
上記実施形態では、図1に示すように、2箇所のキャスターに作動部を設けているが、1箇所のキャスターにのみ設けても良いし、又、3箇所以上のキャスターに設けても良い。このとき、ワイヤー引込機構は、作動部の数だけ備え、押ボタンで全ての作動部を操作するように構成される。また、上記実施形態では、スーツケースの身2に操作部20及び作動部10を設けているが、蓋3に設けることもでき、また、身と蓋との両方にまたがって設けることもできる。また、上記実施形態では、保持機構として、ピン27及びカム30を用いる例を示したが、これに限定されず、押ボタン22の押し込みが所定押込量に達したら、押し込み状態を保持できるものであれば、特には限定されない。さらに、上記実施形態では、ブレーキ構造は、水平軸12aにより枢動可能に取り付けられる連結部材12を用い、ワイヤー40を引っ張るとブレーキ部材13が押され、ブレーキが掛かる構成を示している。しかし、ブレーキ構造は、これに限定されず、所要の力でワイヤーを引っ張ることによりブレーキが掛かるようなブレーキ構造であれば、特には限定されない。
【0046】
さらに、上記実施形態では、本発明の移動装置をスーツケースに適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、トートバックの底部にキャスターを備えたような鞄などにも適用することができる。また、鞄に限定されず、台車、ショッピングカート、シルバーカー、ベビーカーなどのキャスターを有する移動装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース本体(被移動体)
5、5a キャスター
6 タイヤ
10 作動部
12 連結部材
13 ブレーキ部材
20 操作部
22 押ボタン
26 ワイヤー引込量調整バネ(吸収機構、加圧機構)
40 ワイヤー
51 解除ボタン
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスターが設けられた移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部にキャスターが設けられた鞄は、スムーズな移動は可能であるが、一方で鞄を静止しておきたい場合であっても、一度手を離すと、車内などで生じる僅かな振動や傾斜地などで鞄が不用意に移動してしまうという問題があった。これらの問題を解決するために、特許文献1に開示されるような、移動可能状態と移動防止状態の切り換えが可能な、ストッパー装置付きのキャスター付き鞄が開発されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3143133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような装置は、キャスター付近に取り付けられた操作部を、手または足を使って操作する必要がある。このとき、例えば、手で操作を行う場合は、身を屈めて操作部を操作しなければならない。一方、足で操作を行う場合は、身を屈める必要はないが、キャスターの停止方向によっては足を操作部まで延ばすことができず、操作がしづらいという問題があった。このような問題は、鞄だけに限られるものではなく、キャスターが設けられた台車、ショッピングカートなどの移動装置全般に起こりうる問題である。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、手元の操作で、キャスター付き移動装置において、移動可能状態と移動防止状態との切り換えを容易に行うことができる移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動装置は、被移動体と、前記被移動体に設けられ、当該被移動体を移動可能なタイヤを有する少なくとも1つのキャスターと、前記タイヤの回転を停止させる作動部と、前記被移動体において、前記キャスターから離間した位置に設けられ、前記作動部を操作する操作部と、前記操作部と作動部とを連結するワイヤーと、を備え、前記作動部は、前記キャスターに対して接離可能に設けられ、前記ワイヤーを前記操作部側から引っ張ることで前記タイヤに接触するブレーキ部材、を備え、前記操作部は、押ボタンと、当該押ボタンを少なくとも押し込み状態と解除状態とに保持する保持機構と、前記押ボタンが押し込み状態に至る過程で前記ワイヤーを引っ張るとともに前記解除状態においてワイヤーの引っ張り状態を解除するワイヤー引込機構と、を備え、前記押し込み状態において、前記タイヤが回転停止状態となっている。
【0007】
この構成によれば、操作部が作動部から離れた位置、例えば、被移動体の上部の取っ手付近など、操作しやすい位置に設けられているため、足で操作したり、身を屈めて手で操作したりする必要が無く、楽に操作することができる。また、操作部が押ボタンを備えており、ボタンを押すという単純な操作で、移動可能状態と移動防止状態との切り換えを行うため、容易に操作することができる。なお、本発明における移動装置は、鞄、台車、ショッピングカートなどキャスターが設けられた種々の移動装置に適用可能であり、例えば、鞄の場合には、物品を収納する鞄の本体部分が被移動体となり、台車においては、物品を載せる台が被移動体となる。
【0008】
上記移動装置においては、作動部及び操作部の少なくとも一方に、ブレーキ部材がタイヤに接触するまでのワイヤーの引込量又はブレーキ部材の押込量と、押ボタンの押込量との差を吸収する吸収機構を備えることができる。
【0009】
また、上記移動装置においては、吸収機構は、操作部に取り付けられ、保持機構は、押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、押ボタンを上記押し込み状態に保持するようにすることができる。そして、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでのワイヤーの引込量が、所定押込量よりも小さいときは、吸収機構が弾性変形することで、押ボタンが所定押込量まで押し込まれるようにすることができる。
【0010】
さらに、上記移動装置においては、吸収機構は、作動部に取り付けられ、保持機構は、押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、押ボタンを上記押し込み状態に保持するようにすることができる。そして、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでのブレーキ部材の押込量が、所定押込量よりも小さいときは、吸収機構が弾性変形することで、押ボタンが所定押込量まで押し込まれるようにすることができる。
【0011】
この構成により、次の効果を得ることができる。例えば、製造誤差、タイヤ及びブレーキ部材の摩耗、ワイヤーの伸び等によっては、ブレーキ部材がキャスターに接触するまでのワイヤーの引込量又はブレーキ部材の押込量と、押ボタンが押し込み状態に保持されるまでの押込量とが一致しない場合がある。このような場合には、押ボタンが完全に押し込まれてもブレーキ部材がキャスターに接触しないため、ブレーキをかけることができなくなる。或いは、押ボタンが、押し込み状態まで押し込まれる前に、ブレーキがかかってしまう場合もあり、このときには押ボタンを押し込み位置に保持できなくなる。そこで、上記のように構成すると、押ボタンが、押し込み状態になるまでに、ブレーキがかかってしまった場合には、吸収機構が弾性変形することで、押ボタンをさらに押し込むことができる。これにより、押ボタンを押し込み状態まで押し込むことができる。
【0012】
ここで、上記吸収機構は、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでは、押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、回転停止状態となった後は、押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していくように構成することができる。この構成によれば、ブレーキ部材がタイヤに接触するまでは、吸収機構がその形状を維持する。そのため、押ボタンの押込量に対応するように、ワイヤー引込機構により、ワイヤーが引っ張られ(概ね押ボタンが押し込まれた量だけワイヤーが引っ張られる)、かつ、ブレーキ部材がタイヤに向かって押し込まれる。このとき、「形状を維持する」とは、全く弾性変形せずに形状を維持することを意味するのではなく、押ボタンの押し込みによって多少の弾性変形は許容することを意味する。この点については、本明細書を通じて同様の意味である。
【0013】
また、上記移動装置においては、操作部に、解除ボタンをさらに備え、解除ボタンを押し込むことにより、押ボタンを解除状態にすることができる。
【0014】
さらに、上記移動装置において、作動部及び操作部の少なくとも一方に、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまで押ボタンを押し込んだ後、さらに押ボタンを押し込むと、ブレーキ部材がタイヤを加圧する加圧機構をさらに備えることができる。
【0015】
また、上記移動装置において、加圧機構は、操作部又は作動部に取り付けられるとともに、保持機構は、押ボタンが押し込まれたときに、押ボタンを押し込んだ位置で保持するようにすることができる。そして、押ボタンが、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となった後もさらに押し込まれると、加圧機構が弾性変形することにより、その復元力でブレーキ部材がタイヤを加圧するように構成することができる。
【0016】
この構成により、回転停止状態からさらに押ボタンを押し込むことができ、この押し込みによる加圧機構の復元力がタイヤをさらに加圧するように作用する。そして、保持機構は、押ボタンが押し込まれたときに、押ボタンを押し込んだ位置で保持することができるため、押ボタンを任意の位置に保持することができる。これに伴い、加圧機構の押込量も任意に調整することができるため、ブレーキの強度の調節が可能となる。
【0017】
ここで、上記加圧機構は、ブレーキ部材がタイヤに接触して回転停止状態となるまでは、押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、回転停止状態となった後は、押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していくように構成することができる。この構成によれば、ブレーキ部材がタイヤに接触するまでは、加圧機構がその形状を維持する。そのため、押ボタンの押込量に対応するように、ワイヤー引込機構により、ワイヤーが引っ張られ(概ね押ボタンが押し込まれた量だけワイヤーが引っ張られる)、かつ、ブレーキ部材がタイヤに向かって押し込まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る移動装置によれば、手元の操作で、移動可能状態と移動防止状態との切り換えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る移動装置をキャスター付きスーツケースに適用した場合の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の作動部の断面正面図である。
【図4】図1の操作部の部分断面正面図である。
【図5】図1の操作部の分解図である。
【図6】ブレーキOFF時の図1の操作部及び作動部の部分断面正面図である。
【図7】ブレーキON時かつワイヤー引込量最小時の図1の操作部及び作動部の部分断面正面図である。
【図8】ブレーキON時かつワイヤー引込量最大時の図1の操作部の部分断面正面図である。
【図9】図1のスーツケースにおける操作部の他の実施形態を示す平面図及び正面図である。
【図10】図1のスーツケースにおける操作部の他の実施形態を示す平面図及び部分断面正面図である。
【図11】図1のスーツケースにおける操作部の他の実施形態を示す正面図である。
【図12】図11の操作部の分解図である。
【図13】ブレーキON時の図11の操作部の正面図である。
【図14】図1のスーツケースにおける連結部材の他の実施形態を示す正面図である。
【図15】図14の連結部材の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る移動装置をスーツケースに適用した場合の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、この鞄の斜視図、図2は、図1の正面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るスーツケースは、箱形の身2と蓋3とが互いに合わさって収容空間を形成するケース本体(被移動体)1を備えている。そして、ケース本体1の上部に取っ手4が設けられるとともに、ケース本体1の底部の四隅にそれぞれキャスター5が設けられている。すなわち、身2に2個のキャスター5が設けられ、蓋3に2個のキャスター5が設けられている。各キャスター5は、タイヤ6と、このタイヤ6を回転可能に支持するフレーム7とを備え、各フレーム7は、台座8を介してケース本体1の底面に固定されている。より詳細には、台座8は、ケース本体1の底面に対し垂直な旋回軸廻りに、フレーム7を旋回可能に取り付けている。
【0022】
図1及び図2に示すように、ケース本体1の底部、すなわちキャスター5の近傍には、タイヤ6に対しブレーキを作動させる作動部10が取り付けられている。一方、ケース本体1の上部、すなわち、取っ手4の付近には、作動部10を操作するための操作部20が取り付けられている。より詳細には、ケース本体1の身2に操作部20が取り付けられており、身2に取り付けられている2個のキャスター5aにそれぞれ作動部10が取り付けられている。そして、操作部20と各作動部10とはワイヤー40でそれぞれ連結されており、操作部20を操作すると、各ワイヤー40を介して各作動部10が同時に操作されるようになっている。
【0023】
次に、作動部10について図3も参照して説明する。図3は、作動部の断面正面図である。同図に示すように、作動部10は、キャスター5の上方でケース本体1の内部に取り付けられ、作動部10を覆う本体カバー11を備えており、この本体カバー11内に、水平軸12aにより枢動可能に取り付けられる連結部材12と、この連結部材12の一端部に係合し、タイヤ6を押圧するブレーキ部材13とが設けられている。
【0024】
ブレーキ部材13は、棒状に形成された作動軸14と、この作動軸14の下端に取り付けられタイヤ6を押圧するブレーキシュー15とから形成されている。そして、このブレーキ部材13は、キャスター5の台座8を突き抜けて、上下動可能となっている。また、作動軸14にはブレーキ解除バネ16が取り付けられており、ブレーキシュー15がタイヤ6から離間するように作動軸14を付勢している。ところで、連結部材12の他端部には、上述したワイヤー40が連結されており、ワイヤー40が引っ張られると、連結部材12が旋回し、ブレーキ部材13が、ブレーキ解除バネ16に抗して下方へ押し込まれるようになっている。一方、ワイヤー40の引っ張りが解除されると、ブレーキ解除バネ16により、作動軸14が付勢され、ブレーキシュー15がタイヤ6から離間するようになっている。
【0025】
次に、操作部20について図4及び図5も参照して説明する。図4は操作部の部分断面正面図であり、図5は操作部の分解図である。
【0026】
図4及び図5に示すように、操作部20は、本体ケース21を有しており、この本体ケース21内に、押ボタン22と、この押ボタン22を作動状態と非作動状態とで切換可能に保持する保持機構と、ワイヤー40を引込むワイヤー引込機構とが収納されている。押ボタン22は、本体ケース21の上部に取り付けられており、後述する保持機構を構成する押上バネ28に支持されている。より詳細には、図5の分解図に示すように、本体ケース21の底面の略中央に押上バネ28が配置され、その上にボタン受け具29が設けられており、この上に押ボタン22が配置されている。
【0027】
ワイヤー引込機構は、本体ケース21の下部で、押上バネ28を挟んで左右に取り付けられている。すなわち、ワイヤー引込機構は、上部にラック23aが形成されるワイヤー引込部材23と、ピニオン24と、下部にラック25aが形成される伝動部材25とで構成されている。そして、ピニオン24を挟んで、外側にワイヤー引込部材23、内側に伝動部材25が、互いに噛合するように配置されている。ワイヤー引込部材23は、下部に凹部23bが形成されており、この凹部23bにワイヤー40が取り付けられている。伝動部材25は、上部にバネ受け具25bが形成されており、バネ受け具25bにワイヤー引込量調整バネ(吸収機構)26が配置される。ボタン受け具29には、2個の凹部29aが形成されており、各伝動部材25は、各凹部29aに伝動部材25のバネ受け具25bの下面が係合して取り付けられる。すなわち、押ボタン22に2個の伝動部材25が取り付けられ、押ボタン22と伝動部材25との間にワイヤー引込量調整バネ26が配置されることとなる。
【0028】
保持機構は、ボタン受け具29の中央に取り付けられるピン27と、本体ケース21にスライド可能に取り付けられ、ピン27と係合するカム30と、本体ケース21の底面の略中央に配置される押上バネ28とで構成される。カム30にはピン27が係合する逆ハート型の溝31が形成されており、ピン27には、ロックバネ32が取り付けられている。ロックバネ32は、ピン27をカム30に押し付ける方向に付勢力を有している。そして、溝31には段が付けられており、ピン27は、ロックバネ32の付勢力により段を上がることができず、逆ハート型の溝31を常に一定の方向に進むように形成されている。この構成により、押ボタン22が押し込まれると、ピン27がカム30の溝31に沿って下降し、所定位置31aで停止する。すなわち、押ボタン22が押し込み状態に保持される。そして、再度押ボタン22を押すと、ピン27は所定位置31aから外れ、押ボタン22は上昇して初期状態に戻る。すなわち、解除状態となる。
【0029】
次に、上記のように構成されたスーツケースの動作について図6から図8も参照しつつ説明する。図6は、ブレーキOFF時、図7は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最小時、図8は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最大時の操作部と作動部を示している。
【0030】
図6は初期状態であり、ブレーキがOFFにされている状態を示す。このとき、押ボタン22は上に上がっており、ブレーキシュー15はタイヤ6に接していない状態である。この状態からブレーキを作動させるには、図7(a)に示すように、押ボタン22を押し込む。このとき、ワイヤー引込量調整バネ26の復元力(反発力)により、ワイヤー引込量調整バネ26はほぼ自然長のまま伝動部材25を押し下げ、これによって、伝動部材25が下降する。その結果、伝動部材25と噛合するピニオン24が回転し、それに伴ってピニオン24と噛合するワイヤー吸込部材23が上昇し、ワイヤー40が引っ張られる。ワイヤー引込部材23がワイヤー40を引っ張ると、図7(b)に示すように、連結部材12が旋回し、作動軸14の上端を押し下げる。これにより、ブレーキシュー15がキャスター5のタイヤ6を押圧し、ブレーキが作動する。すなわち、タイヤ6が回転停止状態となる。
【0031】
同時に、押ボタン22の押し下げに伴って、ボタン受け具29に取り付けられているピン27もカム30の溝31に沿って下降する。このとき、ピン27は、押ボタン22にしたがって垂直に下降するが、カム30は、本体ケース21にスライド可能に取り付けられているため、カム30がスライドし、ピン27は、逆ハート型に形成された溝31に沿ってスムーズに下降することができる。押し下げられた押ボタン22は、押上バネ28の付勢力により上昇しようとするが、このとき、ピン27がカム30の所定位置31aと係合する。その結果、カム30とピン27とにより押ボタン22は押し込まれた状態で保持される。すなわち、上述したようにブレーキが作動した状態が保持され、スーツケースは移動防止状態となる。この状態から、再度押ボタン22を押すと、ピン27がカム30の所定位置31aから外れ、押上バネ28の付勢力により押ボタン22が元の位置に戻る。このとき、ワイヤー40の引っ張りが解除されるため、ブレーキ解除バネ16の付勢力によりブレーキシュー15がタイヤ6から離れる。その結果、スーツケースは移動可能状態となる。
【0032】
次に、ワイヤー引込量調整バネ26の作動について説明する。ワイヤー引込量調整バネ26は、製造誤差、タイヤ及びブレーキシューの摩耗、ワイヤーの伸び等が生じた場合でもタイヤ6に一定の押付力でブレーキシュー15を押し付けることができるように設けられたものである。ブレーキを作動させた状態を保持するためには、ピン27がカム30の所定位置31aに達する必要があり、所定位置31aに達するまでの所定押込量だけ押ボタン22を押し込む必要がある。タイヤの摩耗等の問題が無いときは、図7に示されるように、ブレーキシュー15がタイヤ6に接触して回転停止状態となったところで、それ以上ワイヤー40の引っ張りが行われないが、これでは、押ボタン22の押し込みが所定押込量に達していないため、ピン27がカム30の所定位置31aに達せず、ブレーキを保持できない。そこで、この場合には、押ボタン22の所定押込量の残りをワイヤー引込量調整バネ26で吸収する。すなわち、ブレーキシュー15がタイヤ6に接触して回転停止状態となったところから、さらに押ボタン22を押し込むと、ワイヤー引込量調整バネ26が縮み、所定押込量まで押ボタン22を押し込むことができる。これにより、ブレーキの作動状態を保持することができる。
【0033】
一方、製造誤差やスーツケースの使用によりタイヤの摩耗等の問題が生じると、それに併せるように、ブレーキシュー15がタイヤ6に接触するところまでワイヤー40が引込まれ、ワイヤー引込量調整バネ26が吸収する量が自動的に少なくなっていく。最終的には、図8に示すように、ワイヤー引込量調整バネ26がほぼ収縮することなく、押ボタン22の所定押込量だけワイヤー引込部材23が引き上げられることになる。これにより、製造誤差により、キャスターが設計位置に取り付けられなかったり、タイヤ及びブレーキの摩耗によりタイヤとブレーキとの間が設計距離より開いてしまったり、ワイヤー40の伸びにより所定の引込量では設計したとおりのワイヤー40の引込みができなくなったりしたときにも、ワイヤー引込量調整バネ26の吸収量(収縮量)が減ることで、所定の押付力をタイヤ6に与えることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、操作部20がケース本体1の上部、すなわち手元に設けられているため、足で操作したり、身を屈めて手で操作したりする必要が無く、その結果、楽にブレーキを作動させることができる。また、操作部20が押ボタン22を備えており、押ボタン22を押すという単純な操作で移動可能状態と移動防止状態との切り換えを行うことができるため、容易に操作することができる。さらに、操作部20は、ワイヤー引込量調整バネ26を備えており、ワイヤー引込機構がワイヤー40を引込むワイヤー引込量が、押ボタン22の所定押込量より小さいときに、ワイヤー引込量調整バネ26が操作ボタン22の所定押込量を吸収することができる。その結果、製造誤差、タイヤ及びブレーキの摩耗、ワイヤーの伸び等により、初期設計と誤差が生じた場合でも、初期設計で要求した押付力と同等の押付力を得ることができ、確実に移動防止状態とすることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、操作部20をケース本体1の上部に配置しているが、体を屈ませずに手で操作できる範囲であれば、ケース本体1のいずれの位置に配置することもできる。
【0036】
また、上記実施形態では、ピン27とカム30とにより操作ボタン22を作動状態と非作動状態とに切り換える制御を行ったが、図9に示すように、押ボタン22の横に解除ボタン51を備え、ラチェット機構で制御することができる。より詳細には、ボタン受け具29に、ラック部材52を取り付け、本体ケース21に、ピニオン53aと歯車53bで構成される枢動部材53を枢動可能に取り付ける。解除ボタン51には、歯止め54が取り付けられており、歯止め54は、本体ケース21に枢動可能に取り付けられている。そして、ラック部材52とピニオン53aとが噛合し、歯止め54と歯車53bとが噛合して配置される。このとき、歯止め54と歯車53bとでラチェット機構を構成する。押ボタン22を押し下げると、ラック部材52が下降しピニオン53aが回転する。同時に歯車53bが回転し、歯止め54と噛合する位置が変わっていき、押ボタン22が押された状態で保持される。そして、解除ボタン51を押すと歯止め54と歯車53bとの噛合が解除され、押上バネ28の付勢力により押ボタン22が元の位置に戻る。
【0037】
このような構成にすると、押ボタン22が押された位置で、その状態で押ボタン22が保持されるため、押ボタン22を任意の位置で留めることができる。すなわち、ブレーキ部材13がタイヤ6に接触した状態で押ボタン22を留めることもでき、また、その状態からさらに押ボタン22を押し込んだ状態で押ボタン22を留めることもできる。ブレーキ部材13がタイヤ6に接触した後さらに押し込むと、ワイヤー引込量調整バネ(加圧機構)26が収縮(弾性変形)することにより押し込まれることになるが、このとき、ワイヤー引込量調整バネ26から生じる反力(復元力)がさらにタイヤ6に付加されることとなる。このように、押ボタン22を押し込むほど、ワイヤー引込量調整バネ26の反力が大きくなるため、ブレーキ部材13によりタイヤ6を加圧する力を大きくすることができる。その結果、押ボタン22の押込量に応じて、ブレーキの効き具合を調節することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、各伝動部材25にワイヤー引込量調整バネ26を備え、個々でワイヤー40の引込量を調整しているが、図10に示すように、ワイヤー引込量調整バネ61を1個のみ備え、個々にワイヤー引込量が異なる場合でも、個々に対応してワイヤーの引込量を調整する構成とすることができる。より詳細には、ボタン受け具29のほぼ中央にバネ受け具62を配置し、バネ受け具62にワイヤー引込量調整バネ61を配置する。バネ受け具62に枢動可能に運動伝達量調整部材63が取り付けられ、運動伝達量調整部材63に各伝動部材64が取り付けられる。左右のワイヤー引込量が異なる場合には、運動伝達量調整部材63が枢動し、左右のワイヤー引込量の差を吸収する。
【0039】
さらに、上記実施形態では、ワイヤー引込量調整バネ26にコイルバネを用いたが、図11及び図12に示すように、ワイヤー引込量調整バネ71に板バネを使用することができる。以下では、板バネを用いた操作部20の例を示す。より詳細には、ワイヤー引込量調整バネ71は、正面視U字状に形成され、その両端が外方に屈曲して形成されている。操作部20は、本体ケース21を有しており、この本体ケース21のほぼ中央に調整バネ保持具72が旋回可能に取り付けられている。この調整バネ保持具72に、ワイヤー引込量調整バネ71の屈曲した両端を引っ掛けて取り付ける。また、調整バネ保持具72は、一端にワイヤー引込部材73を取り付ける受け部72aが形成されている。ワイヤー引込部材73は、上端が調整バネ保持具72の受け部72aに係合可能に形成されており、下端がワイヤー40を保持可能に形成されている。さらに、調整バネ保持具72の中央下端には、正面視C字状の押上バネ74が一体的に形成されている。このように取り付けられたとき、ワイヤー引込量調整バネ71の一端は、調整バネ保持具72の旋回軸を挟んで、ワイヤー引込部材73が取り付けられる端部と反対側の端部まで伸びている。また、ワイヤー引込量調整バネ71、調整バネ保持具72、ワイヤー引込部材73及び押上バネ74がもう一組あり、左右反転させた状態で、正面視において、前後に重ねて本体ケース21に取り付けられる。このとき、押上バネ74も、本体ケース21の下端に取り付けられる。押ボタン75は、下部が、中央から下方外側に向かい傾斜して形成されており、かつ、正面視において、前後で逆方向に傾斜して形成されている。この押ボタン75の下端が、ワイヤー引込量調整バネ71の端部に載置されている。なお、押ボタン75にはピン27が取り付けられており、図示していないが、本体ケース21にはカム30が取り付けられている。
【0040】
上記のようなワイヤー引込量調整バネ71の作動について、図13を用いて説明する。図13(a)は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最小時、図13(b)は、ブレーキON時かつワイヤー引込量最大時の操作部の正面図を示している。押ボタン75を押し込むと、押ボタン75の下端がワイヤー引込量調整バネ71を押し下げるため、調整バネ保持具72が旋回する。これにより、ワイヤー引込部材73が引き上げられ、同時にワイヤー40が引っ張られる。このときの作動部10の動作は、コイルバネを使用したときと同様である。タイヤの摩耗等の問題が無いときは、ワイヤー引込量調整バネ71が収縮する必要がある。この場合には、図13(a)に示されるように、U字の開口部が狭くなり、板バネが収縮した状態となる。一方、製造誤差やスーツケースの使用によりタイヤの摩耗等の問題が生じると、それに併せるように、ワイヤー引込量調整バネ71が吸収する量が自動的に少なくなっていく。最終的には、図13(b)に示すように、ワイヤー引込量調整バネ71がほぼ収縮することなく、押ボタン75の所定押込量だけワイヤー引込部材73が引き上げられることになる。
【0041】
この構成を有することで、製造誤差、タイヤ及びブレーキの摩耗、ワイヤーの伸び等により、初期設定と誤差が生じた場合でも、初期設定で要求した押付力と同等の押付力を得ることができる。加えて、操作部20に使用するパーツを少なくすることができる。これにより、操作部20が軽量になり、全体としてスーツケースを軽量にすることができ、かつ、低コストで製造することが可能になる。
【0042】
また、上記実施形態では、吸収機構として、操作部20にワイヤー引込量調整バネ26を設けて、押ボタン22の押込量とワイヤー40の引込量との差を調整したが、作動部10にブレーキ部材13の押込量と押ボタン22の押込量との差を調整するブレーキ押込量調整バネ(吸収機構)81を設けることもできる。具体的には、作動部10に設けられる連結部材80が、ブレーキ押込量調整バネ81と本体82とからなる。図14及び図15に示すように、ブレーキ移動量調整バネ81は、正面視U字状の板バネとして形成される。ブレーキ移動量調整バネ81は、本体82に上下方向に伸縮可能に取り付けられる。この連結部材80は、上記実施形態と同様に、本体カバー11内に、水平軸12aにより枢動可能に取り付けられる。そして、ブレーキ押込量調整バネ81のU字の開口部側81aにブレーキ部材13が設けられ、他端側82aにワイヤー40が連結されている。ワイヤー40が引っ張られると、連結部材80が旋回し、ブレーキ部材13が、下方に押し込まれる。このように構成されたブレーキ押込量調整バネ81は、タイヤの摩耗等の問題が無いときは、ブレーキ押込量調整バネ81が収縮する必要があり、U字の開口が狭まるように収縮する。一方、製造誤差やスーツケースの使用によりタイヤの摩耗等の問題が生じると、それに併せるように、ブレーキ押込量調整バネ81が吸収する量が自動的に少なくなっていく。最終的には、ブレーキ押込量調整バネ81はほぼ収縮することなく、押ボタン22の所定押込量だけブレーキ部材13が押し込まれることになる。なお、この場合には、操作部20は、ワイヤー引込量調整バネ26を設ける必要がなく、押ボタン22、保持機構及びワイヤー引込機構を備えていればよい。このように、操作部20ではなく作動部10に吸収機構を設けることで、操作部20の構造を単純化でき、かつ、作動部10の吸収機構81も複雑な構造が必要ないため、少ないパーツで製造でき、容易に製造することができる。
【0043】
上記に示した操作部又は作動部に板バネ形状の吸収機構を設ける構成においても、操作部を図9に示すような構成とし、押ボタン75の横に解除ボタン51を備え、ラチェット機構で作動状態と非作動状態とを切り換えて制御することができる。この場合には、板バネ形状の吸収機構が、加圧機構として働き、図9に対して説明したのと同様に、加圧機構が動作する。すなわち、押ボタン75が押された位置で、その状態で押ボタン75が保持されるため、押ボタン75を任意の位置で留めることができる。ブレーキ部材13がタイヤ6に接触した後さらに押ボタン75を押し込むと、ワイヤー引込量調整バネ(加圧機構)71又はブレーキ押込量調整バネ(加圧機構)81が収縮(弾性変形)することにより押し込まれることになる。このとき、加圧機構71,81から生じる反力(復元力)がさらにタイヤ6に付加されることとなる。このように、押ボタン75を押し込むほど、加圧機構71,81の反力が大きくなるため、ブレーキ部材13によりタイヤ6を加圧する力を大きくすることができる。その結果、押ボタン75の押込量に応じて、ブレーキの効き具合を調節することができる。
【0044】
さらに、吸収機構又は加圧機構は、例えば、ワイヤー40とワイヤー引込部材23,73との間に配置される引張バネとすることもできる。この場合には、吸収機構又は加圧機構は、伸長(弾性変形)することにより、押ボタン22の押込量の吸収、又は、押ボタン22の押込量に応じたタイヤ6の加圧を行うことができる。
【0045】
上記実施形態では、図1に示すように、2箇所のキャスターに作動部を設けているが、1箇所のキャスターにのみ設けても良いし、又、3箇所以上のキャスターに設けても良い。このとき、ワイヤー引込機構は、作動部の数だけ備え、押ボタンで全ての作動部を操作するように構成される。また、上記実施形態では、スーツケースの身2に操作部20及び作動部10を設けているが、蓋3に設けることもでき、また、身と蓋との両方にまたがって設けることもできる。また、上記実施形態では、保持機構として、ピン27及びカム30を用いる例を示したが、これに限定されず、押ボタン22の押し込みが所定押込量に達したら、押し込み状態を保持できるものであれば、特には限定されない。さらに、上記実施形態では、ブレーキ構造は、水平軸12aにより枢動可能に取り付けられる連結部材12を用い、ワイヤー40を引っ張るとブレーキ部材13が押され、ブレーキが掛かる構成を示している。しかし、ブレーキ構造は、これに限定されず、所要の力でワイヤーを引っ張ることによりブレーキが掛かるようなブレーキ構造であれば、特には限定されない。
【0046】
さらに、上記実施形態では、本発明の移動装置をスーツケースに適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、トートバックの底部にキャスターを備えたような鞄などにも適用することができる。また、鞄に限定されず、台車、ショッピングカート、シルバーカー、ベビーカーなどのキャスターを有する移動装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース本体(被移動体)
5、5a キャスター
6 タイヤ
10 作動部
12 連結部材
13 ブレーキ部材
20 操作部
22 押ボタン
26 ワイヤー引込量調整バネ(吸収機構、加圧機構)
40 ワイヤー
51 解除ボタン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被移動体と、
前記被移動体に設けられ、当該被移動体を移動可能なタイヤを有する少なくとも1つのキャスターと、
前記タイヤの回転を停止させる作動部と、
前記被移動体において、前記キャスターから離間した位置に設けられ、前記作動部を操作する操作部と、
前記操作部と作動部とを連結するワイヤーと、
を備え、
前記作動部は、前記キャスターに対して接離可能に設けられ、前記ワイヤーを前記操作部側から引っ張ることで前記タイヤに接触するブレーキ部材、を備え、
前記操作部は、押ボタンと、当該押ボタンを少なくとも押し込み状態と解除状態とに保持する保持機構と、前記押ボタンが押し込み状態に至る過程で前記ワイヤーを引っ張るとともに前記解除状態においてワイヤーの引っ張り状態を解除するワイヤー引込機構と、を備え、
前記押し込み状態において、前記タイヤが回転停止状態となっている、移動装置。
【請求項2】
前記作動部及び操作部の少なくとも一方に、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触するまでの前記ワイヤーの引込量又は前記ブレーキ部材の押込量と、前記押ボタンの押込量との差を吸収する吸収機構をさらに備える、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記吸収機構は、前記操作部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、当該押ボタンを前記押し込み状態に保持するように構成されており、
前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となるまでの前記ワイヤーの引込量が、前記所定押込量よりも小さいときは、前記吸収機構が弾性変形することで、前記押ボタンが前記所定押込量まで押し込まれる、請求項2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記吸収機構は、前記作動部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、当該押ボタンを前記押し込み状態に保持するように構成されており、
前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となるまでの前記ブレーキ部材の押込量が、前記所定押込量よりも小さいときは、前記吸収機構が弾性変形することで、前記押ボタンが前記所定押込量まで押し込まれる、請求項2に記載の移動装置。
【請求項5】
前記吸収機構は、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態になるまでは、前記押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、前記回転停止状態となった後は、前記押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していく、請求項2から4のいずれかに記載の移動装置。
【請求項6】
前記操作部は、解除ボタンをさらに備え、
前記解除ボタンを押し込むことにより、前記押ボタンを解除状態にする、請求項1に記載の移動装置。
【請求項7】
前記作動部及び操作部の少なくとも一方に、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となるまで前記押ボタンを押し込んだ後、さらに前記押ボタンを押し込むと、前記ブレーキ部材が前記タイヤを加圧する加圧機構をさらに備える、請求項6に記載の移動装置。
【請求項8】
前記加圧機構は、前記操作部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが押し込まれたときに、前記押ボタンを押し込んだ位置に保持するように構成されており、
前記押ボタンが、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となった後もさらに押し込まれると、前記加圧機構が弾性変形することにより、その復元力で前記ブレーキ部材が前記タイヤを加圧する、請求項7に記載の移動装置。
【請求項9】
前記加圧機構は、前記作動部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが押し込まれたときに、前記押ボタンを押し込んだ位置に保持するように構成されており、
前記押ボタンが、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となった後もさらに押し込まれると、前記加圧機構が弾性変形することにより、その復元力で前記ブレーキ部材が前記タイヤを加圧する、請求項7に記載の移動装置。
【請求項10】
前記加圧機構は、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態になるまでは、前記押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、前記回転停止状態となった後は、前記押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していく、請求項7から9のいずれかに記載の移動装置。
【請求項1】
被移動体と、
前記被移動体に設けられ、当該被移動体を移動可能なタイヤを有する少なくとも1つのキャスターと、
前記タイヤの回転を停止させる作動部と、
前記被移動体において、前記キャスターから離間した位置に設けられ、前記作動部を操作する操作部と、
前記操作部と作動部とを連結するワイヤーと、
を備え、
前記作動部は、前記キャスターに対して接離可能に設けられ、前記ワイヤーを前記操作部側から引っ張ることで前記タイヤに接触するブレーキ部材、を備え、
前記操作部は、押ボタンと、当該押ボタンを少なくとも押し込み状態と解除状態とに保持する保持機構と、前記押ボタンが押し込み状態に至る過程で前記ワイヤーを引っ張るとともに前記解除状態においてワイヤーの引っ張り状態を解除するワイヤー引込機構と、を備え、
前記押し込み状態において、前記タイヤが回転停止状態となっている、移動装置。
【請求項2】
前記作動部及び操作部の少なくとも一方に、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触するまでの前記ワイヤーの引込量又は前記ブレーキ部材の押込量と、前記押ボタンの押込量との差を吸収する吸収機構をさらに備える、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記吸収機構は、前記操作部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、当該押ボタンを前記押し込み状態に保持するように構成されており、
前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となるまでの前記ワイヤーの引込量が、前記所定押込量よりも小さいときは、前記吸収機構が弾性変形することで、前記押ボタンが前記所定押込量まで押し込まれる、請求項2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記吸収機構は、前記作動部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが所定押込量だけ押し込まれたときに、当該押ボタンを前記押し込み状態に保持するように構成されており、
前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となるまでの前記ブレーキ部材の押込量が、前記所定押込量よりも小さいときは、前記吸収機構が弾性変形することで、前記押ボタンが前記所定押込量まで押し込まれる、請求項2に記載の移動装置。
【請求項5】
前記吸収機構は、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態になるまでは、前記押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、前記回転停止状態となった後は、前記押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していく、請求項2から4のいずれかに記載の移動装置。
【請求項6】
前記操作部は、解除ボタンをさらに備え、
前記解除ボタンを押し込むことにより、前記押ボタンを解除状態にする、請求項1に記載の移動装置。
【請求項7】
前記作動部及び操作部の少なくとも一方に、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となるまで前記押ボタンを押し込んだ後、さらに前記押ボタンを押し込むと、前記ブレーキ部材が前記タイヤを加圧する加圧機構をさらに備える、請求項6に記載の移動装置。
【請求項8】
前記加圧機構は、前記操作部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが押し込まれたときに、前記押ボタンを押し込んだ位置に保持するように構成されており、
前記押ボタンが、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となった後もさらに押し込まれると、前記加圧機構が弾性変形することにより、その復元力で前記ブレーキ部材が前記タイヤを加圧する、請求項7に記載の移動装置。
【請求項9】
前記加圧機構は、前記作動部に取り付けられ、
前記保持機構は、前記押ボタンが押し込まれたときに、前記押ボタンを押し込んだ位置に保持するように構成されており、
前記押ボタンが、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態となった後もさらに押し込まれると、前記加圧機構が弾性変形することにより、その復元力で前記ブレーキ部材が前記タイヤを加圧する、請求項7に記載の移動装置。
【請求項10】
前記加圧機構は、前記ブレーキ部材が前記タイヤに接触して回転停止状態になるまでは、前記押ボタンの押し込みに抗してその形状を維持し、前記回転停止状態となった後は、前記押ボタンの押し込みに屈して弾性変形していく、請求項7から9のいずれかに記載の移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−173583(P2011−173583A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289822(P2010−289822)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000102290)エースラゲージ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000102290)エースラゲージ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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