説明

移動車両及び非接触電力伝送装置

【課題】大型化及びコスト上昇を招くことなく、大きさやコイルの取り付け位置が異なっていても非接触での電力伝送を効率的に行うことができる移動車両及び非接触電力伝送装置を提供する。
【解決手段】移動車両としての電気自動車2は、移動のための動力を発生するモータ21と、モータ21を駆動する電力を供給する蓄電池24と、外部の給電コイル14から非接触で給電される電力を受電する受電コイル25と、受電コイル25で受電された電力の電力量を示す受電量を求める電力量演算器30と、電力量演算器30で求められた受電量を参照しつつモータ21を制御して受電コイル25に対する給電コイル14の位置を調整する制御部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの動力によって移動可能な移動車両、及び該移動車両に対して電力を非接触で伝送可能な非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会を実現すべく、動力発生源としてエンジンに代えて又はエンジンとともにモータを備える移動車両が多くなっている。エンジンに代えてモータを備える代表的な移動車両としては電気自動車(EV:Electric Vehicle)が挙げられ、エンジンとともにモータを備える移動車両としてはハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)が挙げられる。このような移動車両は、モータを駆動する電力を供給する再充電が可能な蓄電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池)を備えており、外部の電源装置から供給される電力によって蓄電池の充電が可能に構成されている。
【0003】
現在実用化されつつある電気自動車やハイブリッド自動車(正確には、プラグイン・ハイブリッド自動車)において、蓄電池を充電するための電力は、電源装置と移動車両とを接続するケーブルを介して伝送されるのが殆どである。これに対し、近年においては、蓄電池を充電するための電力を非接触で移動車両に伝送する方法が提案されている。電力を非接触で効率的に伝送するには、電源装置に設けられる給電コイル(一次側コイル)と移動車両に設けられる受電コイル(二次側コイル)との相対的な位置関係を適切にする必要がある。
【0004】
以下の特許文献1〜5には、非接触での電力伝送を効率的に行うために、一次側コイルと二次側コイルとの相対的な位置関係を調整する様々な方法が開示されている。具体的に、以下の特許文献1には、地上に敷設された一次側コイルの位置を検出する磁気センサの検出結果に応じて、二次側コイルの位置を調整する技術が開示されている。以下の特許文献2,3には、二次側コイルの位置に応じて一次側コイルの位置を調整する技術が開示されている。
【0005】
また、以下の特許文献4には、駐車スペースに車両を駐車する際に、車両に設けられたカメラで撮像された位置決めマーカの画像を運転室内の表示装置に表示することによって、二次側コイルが設けられた車両を最適位置に誘導する技術が開示されている。更に、以下の特許文献5には、無人搬送車に設けられた被当接部材が、給電装置に設けられた当接部材に当接することによって、一次側コイルと二次側コイルとの位置合わせを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−33112号公報
【特許文献2】特開2006−345588号公報
【特許文献3】特開2011−205829号公報
【特許文献4】特開2010−226945号公報
【特許文献5】特開2010−259136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1〜3に開示された技術では、一次側コイルの位置に応じて二次側コイルの位置を調整し、或いは、二次側コイルの位置に応じて一次側コイルの位置を調整している。このため、一次側コイル又は二次側コイルの位置を調整するためのモータと駆動機構とが必要になり、大型化するとともにコストが上昇してしまうという問題があった。
【0008】
上述した特許文献4に開示された技術では、位置合わせマーカの撮像画像を表示して車両を最適位置に誘導しており、上述した特許文献5に開示された技術では、無人搬送車を給電装置に当接させることによって位置合わせを行っている。このため、これらの技術において、大きさや二次側コイルの取り付け位置が異なる様々な車両や無人搬送車に対応するためには、車両や無人搬送車の種類毎に最適な位置合わせマーカや当接部材を用意しておき、車両や無人搬送車の種類に応じて位置合わせマーカや当接部材を選択する必要があり、現実的ではないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大型化及びコスト上昇を招くことなく、大きさやコイルの取り付け位置が異なっていても非接触での電力伝送を効率的に行うことができる移動車両及び非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の移動車両は、移動のための動力を発生するモータ(21)と、該モータを駆動する電力を供給する蓄電池(24)とを備える移動車両(2)において、外部の一次側コイル(14)から非接触で給電される電力を受電する二次側コイル(25)と、前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部(30)と、前記受電量演算部で求められた受電量を参照しつつ前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部(32)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の移動車両は、前記一次側コイルから給電される電力の電力量を示す給電量が入力される入力部(31)を備えており、前記制御部が、前記受電量演算部で求められた受電量と前記入力部に入力された給電量とを用いて、前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め、該電力伝送効率を参照しつつ前記モータを制御することを特徴としている。
また、本発明の移動車両は、前記制御部が、前記モータを制御して移動車両を前後方向に移動させることにより、前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整することを特徴としている。
また、本発明の移動車両は、前記制御部が前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置調整を行う場合には、前記二次側コイルで受電された電力が前記モータを駆動する電力として用いられることを特徴としている。
また、本発明の移動車両は、前記二次側コイルで受電された電力を用いて前記蓄電池を充電する充電装置(27)と、前記充電装置による前記蓄電池の充電が行われている場合に、前記蓄電池から前記モータを電気的に切り離すスイッチ回路(23)とを備えることを特徴としている。
本発明の非接触電力伝送装置は、外部に対して電力を非接触で伝送可能な非接触電力伝送装置(1)であって、上記の何れかの移動車両が備える前記蓄電池を充電するための電力を、前記一次側コイルから非接触で伝送することを特徴としている。
また、本発明の非接触電力伝送装置は、前記一次側コイルから給電される電力の電力量を示す給電量を求める給電量演算部(17)と、前記給電量演算部で求められた前記給電量を外部に出力する出力部(18)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非接触電力伝送装置から伝送されて二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求め、この受電量を参照しつつモータを制御して外部の一次側コイルに対する二次側コイルの位置を調整するように制御している。このため、大きさや二次側コイルの取り付け位置が異なる移動車両であっても正確に位置を調整することができ、効率的に電力を伝送することができるという効果がある。また、一次側コイルや二次側コイルを単独で移動させる機構等が不要であるため、大型化及びコスト上昇を招くこともないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置の電気的構成を詳細に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置に用いて好適な給電コイルの設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置の要部構成を示すブロック図である。尚、以下では、移動車両が動力発生源としてモータのみを用いる電気自動車である場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図1に示す通り、本実施形態の非接触電力伝送装置1は、地表面に設置されており、地上を走行する移動車両としての電気自動車2が、予め定められた位置関係(後述する電磁気結合回路が形成される位置関係)で停車しているときに、電気自動車2に対して電力(蓄電池24を充電するための電力)を非接触で伝送可能である。この非接触電力伝送装置1は、外部電源11、整流回路12、給電回路13、及び給電コイル14(一次側コイル)等を備える。
【0015】
外部電源11は、電気自動車2に伝送すべき電力を生成するために必要となる電力を供給する電源であり、例えば電圧が200[V]である三相交流電力を供給する電源である。尚、この外部電源11は、三相交流電源に限られることはなく、商用交流電源のような単相交流電力を供給する電源であっても良い。整流回路12は、外部電源11から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する回路である。
【0016】
外部電源11として燃料電池や太陽電池など直流電源を利用することも可能である。この場合、整流回路12は省略可能である。
【0017】
給電回路13は、整流回路12から供給される電力を、給電コイル14と電気自動車2に設けられる受電コイル25とによって形成される電磁気結合回路を介して非接触で電気自動車2に供給する。具体的に、給電回路13は、整流回路12からの直流電力を交流電力に変換して給電コイル14に与えることにより、電気自動車2に対する非接触給電を実現する。
【0018】
給電コイル14は、地表面に設置されており、給電回路13から供給される交流電力を非接触で電気自動車2に給電するためのコイルである。この給電コイル14と電気自動車2に設けられた受電コイル25とが近接した状態に配置されることで、上記の電磁気結合回路が形成される。この電磁気結合回路は、給電コイル14と受電コイル25とが電磁気的に結合して給電コイル14から受電コイル25への非接触の給電が行われる回路を意味し、「電磁誘導方式」で給電を行う回路と、「電磁界共鳴方式」で給電を行う回路との何れの回路であっても良い。
【0019】
図1に示す通り、移動車両としての電気自動車2は、モータ21、インバータ22、コンタクタ23(スイッチ回路)、蓄電池24、受電コイル25(二次側コイル)、受電回路26、及び充電装置27等を備えている。ここで、これらのうちの蓄電池24及び充電装置27は、直流バスB1に接続されており、インバータ22、受電回路26、及び充電装置27は、直流バスB2に接続されている。
【0020】
モータ21は、電気自動車2を移動させるための動力を発生する動力発生源として電気自動車2に搭載されており、インバータ22の駆動に応じた動力を発生する。このモータ21としては、永久磁石型同期モータ、誘導モータ等のモータを用いることができる。インバータ22は、制御部32(図1では図示省略、図2参照)の制御の下で、蓄電池24からコンタクタ23を介して供給される電力を用いてモータ21を駆動する。
【0021】
コンタクタ23は、直流バスB1と直流バスB2との間に設けられ、制御部32の制御の下で、直流バスB1と直流バスB2とを接続状態にするか切断状態にするかを切り替える。具体的に、コンタクタ23は、蓄電池24の電力を放電する場合には、直流バスB1と直流バスB2とを接続状態にするよう制御され、これによって蓄電池24とインバータ22及び受電回路26とが接続される。これに対し、蓄電池24を充電する場合には、直流バスB1と直流バスB2とを切断状態にするよう制御され、これによって蓄電池24とインバータ22及び受電回路26とが切断され、蓄電池24からモータ21が電気的に切り離される。
【0022】
蓄電池24は、電気自動車2に搭載された再充電が可能な電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池)であり、モータ21を駆動するための電力を供給する。受電コイル25は、電気自動車2の底部に設けられており、非接触電力伝送装置1に設けられた給電コイル14から供給される電力(交流電力)を非接触で受電するためのコイルである。この受電コイル25が非接触電力伝送装置1の給電コイル14に近接することによって、前述した電磁気結合回路が形成される。
【0023】
受電回路26は、非接触電力伝送装置1の給電コイル14と受電コイル25とによって形成される電磁気結合回路を介して非接触で供給されてくる電力(交流電力)を受電し、受電した電力を直流電力に変換して直流バスB2に供給する。充電装置27は、受電回路26から直流バスB2を介して供給される電力(直流電力)を用いて蓄電池24の充電を行う装置である。
【0024】
尚、上述した給電回路13、給電コイル14、受電コイル25、及び受電回路26の構成と動作の詳細は、例えば特開2009−225551号公報(「電力伝送システム」)或いは特開2008−236916号公報(「非接触電力伝送装置」)に開示されている。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置の電気的構成を詳細に示す図である。尚、図2において、図1に示す構成と同じ構成については同一の符号を付している。図2に示す通り、上述した非接触電力伝送装置1の整流回路12は、三相全波整流回路(ブリッジ整流回路)で実現されている。また、非接触電力伝送装置1の給電回路13は、スイッチングレッグL1,L2(直列接続された2つのトランジスタと、これら2つのトランジスタにそれぞれ並列接続されたダイオードとからなる回路)が並列接続された回路で実現されている。
【0026】
尚、給電回路13と給電コイル14との間には2つのコンデンサ14aが設けられている。このコンデンサ14aは、給電コイル14とともに直列共振回路を形成する。給電コイル14の一端は、一方のコンデンサ14aを介して給電回路13のスイッチングレッグL1に接続されており、給電コイル14の他端は、他方のコンデンサ14aを介して給電回路13のスイッチングレッグL2に接続されている。
【0027】
非接触電力伝送装置1は、上記の外部電源11〜給電コイル14に加えて、電圧測定器15、電流測定器16、電力量演算器17(給電量演算部)、及び無線通信装置18(出力部)を備える。電圧測定器15及び電流測定器16は、整流回路12と給電回路13との間に設けられており、給電回路13の入力電圧V1(t)及び入力電流I1(t)をそれぞれ測定する。
【0028】
電力量演算器17は、電圧測定器15で測定された入力電圧V1(t)と電流測定器16で測定された入力電流I1(t)とを用いて給電回路13に供給される電力の電力量P1を求める。具体的には、V1(t)とI1(t)を乗じて電力量P1を算出する。尚、給電回路13及び給電コイル14の損失が零であれば、給電回路13に供給される電力の電力量P1は、給電コイル14から給電される電力の電力量(給電量)と等しくなる。
【0029】
無線通信装置18は、電気自動車2に設けられた無線通信装置31と各種情報の無線通信が可能であり、例えば電力量演算器17で求められた電力量P1を示す情報を無線通信装置31に送信する。尚、無線通信装置18は、その設置位置を中心として半径が数メートル程度のエリア内に電気自動車2の無線通信装置31が位置する場合に無線通信装置31との通信が可能である。
【0030】
また、図2に示す通り、電気自動車2の受電回路26は、4つのダイオードからなるブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力端に並列接続されたコンデンサとによって実現されている。尚、受電コイル25と受電回路26との間にはコンデンサ25aが並列接続されており、モータ21にはモータ21の回転角を検出するレゾルバやエンコーダ等の回転角検出器21aが取り付けられている。
【0031】
電気自動車2は、上記のモータ21〜充電装置27に加えて、電圧測定器28、電流測定器29、電力量演算器30(受電量演算部)、無線通信装置31(入力部)、及び制御部32を備える。電圧測定器28及び電流測定器29は、受電回路26と充電装置27との間(図1に示す直流バスB2)に設けられており、受電回路26の出力電圧V2(t)及び出力電流I2(t)をそれぞれ測定する。
【0032】
電力量演算器30は、電圧測定器28で測定された出力電圧V2(t)と電流測定器29で測定された出力電流I2(t)とを用いて受電回路26で受電された電力の電力量P2を求める。具体的には、V2(t)とI2(t)を乗じて電力量P2を算出する。尚、受電コイル25及び受電回路26の損失が零であれば、受電回路26で受電された電力の電力量P2は、受電コイル25で受電される電力の電力量(受電量)と等しくなる。
【0033】
無線通信装置31は、非接触電力伝送装置1に設けられた無線通信装置18と各種情報の無線通信が可能であり、例えば無線通信装置18から送信されてくる電力量P1を示す情報を受信する。尚、無線通信装置31は、自身を中心として半径が数メートル程度のエリア内に非接触電力伝送装置1の無線通信装置18が位置する場合に無線通信装置18との通信が可能である。
【0034】
制御部32は、図1,図2に示す各ブロックを制御することによって、電気自動車2の動作を制御する。例えば、モータ21に取り付けられた回転角検出器21aの検出結果を常時モニタしつつモータ21を駆動するインバータ22を制御することによって、電気自動車2の走行を制御する。また、制御部32は、蓄電池24を充電する場合に、非接触電力伝送装置1から電気自動車2への電力伝送効率εを参照しつつ、非接触電力伝送装置1の設置場所又はその近くに停車された電気自動車2をゆっくり移動(走行)させて、電気自動車2の停車位置を調整する。
【0035】
この制御部32は、上述した蓄電池24を充電するときの停車位置を調整するために、効率計算器32a、指令値生成器32b、及び制御器32cを備える。効率計算器32aは、電力量演算器30で求められた電力量P2と無線通信装置31で受信された電力量P1を示す情報とに基づいて、非接触電力伝送装置1から電気自動車2への電力伝送効率εを算出する。具体的には、電力量P2を電力量P1で除算することによって電力伝送効率εを算出する。
【0036】
指令値生成器32bは、効率計算器32aで算出された電力伝送効率εに応じて、モータ21の回転角指令値を生成する。制御器32cは、指令値生成器32bで生成された回転角指令値に基づいて、回転角検出器21aの検出結果をモニタしつつ、インバータ22に対してトルク指令値を出力する。
【0037】
ここで、モータ21は、減速比が既知の減速機(図示省略)を介して半径が既知のタイヤを回転させるため、モータ21の回転角と電気自動車2の移動量は一定の関係にある。具体的には、タイヤの半径をr、減速機の減速比をnとすると、モータが1回転したときに電気自動車2は距離(2πr/n)だけ移動する。このため、モータ21の回転角を制御することにより、電気自動車2の移動量を制御することができる。
【0038】
次に、上記構成における非接触電力伝送装置1及び電気自動車2の動作について説明する。図3は、本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置の動作を示すフローチャートである。尚、以下では、主に電気自動車2に搭載された蓄電池24を、非接触電力伝送装置1から供給される電力を用いて充電する場合の動作について説明する。
【0039】
まず、ユーザが電気自動車2を運転して、電気自動車2を非接触電力伝送装置1の設置場所又はその近くに移動させて停車させる。すると、非接触電力伝送装置1は車両(電気自動車2)が電力伝送可能エリア内にいるか否かを判断する(ステップS11)。例えば、非接触電力伝送装置1の無線通信装置18が、電気自動車2の無線通信装置31と無線通信が可能であるか否かによって、電気自動車2が電力伝送可能エリア内にいるか否かを判断する。
【0040】
電気自動車2が電力伝送可能エリア内にいないと判断した場合(ステップS11の判断結果が「NO」である場合)には、図3に示す非接触電力伝送装置1の一連の処理は終了する。これに対し、電気自動車2が電力伝送可能エリア内にいると判断した場合(ステップS11の判断結果が「YES」である場合)には、非接触電力伝送装置1は給電回路13を動作させて電力の伝送を開始する(ステップS12)。尚、電気自動車2が電力伝送可能エリア内にいる場合には、非接触電力伝送装置1の給電コイル14と電気自動車2の受電コイル25とによって電磁気結合回路が形成される。
【0041】
電気自動車2を非接触電力伝送装置1の設置場所又はその近くに移動させて停車させた後に、ユーザが電気自動車2に対して充電指示を行うと、まず制御部32は、コンタクタ23を制御して直流バスB1と直流バスB2とを切断状態にし、受電回路26を制御して動作を開始させる一方で充電装置27を制御して動作を停止させる(ステップS21)。次に、制御部は、非接触電力伝送装置1からの電力伝送が開始されたか否かを判断する(ステップS22)。例えば、非接触電力伝送装置1の無線通信装置18から電力伝送開始を示す信号が送信されてきたか否かを判断する。
【0042】
電力伝送が開始されていないと判断した場合(ステップS22の判断結果が「NO」の場合)には、制御部32は、上記の判断を繰り返す。これに対し、電力伝送が開始されたと判断した場合(ステップS22の判断結果が「YES」の場合)には、制御部32は、インバータ22を制御して電気自動車2の前進を開始させる(ステップS23)。このとき、非接触電力伝送装置1から伝送された電力がモータ21を駆動する電力として用いられる。
【0043】
電気自動車2の前進を開始させると、制御部32は、電気自動車2の前進によって効率計算器32aで算出される電力伝送効率εが上昇したか否かを判断する(ステップS24)。電力伝送効率εが上昇したと判断した場合(ステップS24の判断結果が「YES」の場合)には、制御部32はインバータ22を制御して電気自動車2のゆっくりとした前進を継続させる(ステップS25)。そして、制御部32は、電気自動車2の前進によって効率計算器32aで算出される電力伝送効率εが上昇したか否かを再び判断する(ステップS26)。
【0044】
電力伝送効率εが上昇したと判断した場合(ステップS26判断結果が「YES」の場合)には、制御部32はインバータ22を制御して電気自動車2のゆっくりとした前進を継続させる(ステップS25)。これに対し、電力伝送効率εが上昇しないと判断した場合(ステップS26判断結果が「NO」の場合)には、制御部32はインバータ22を制御して電気自動車2を停止させる(ステップS27)。
【0045】
他方、電気自動車2の前進を開始させた直後に、電気自動車2の前進によって効率計算器32aで算出される電力伝送効率εが上昇しないと判断した場合(ステップS24の判断結果が「NO」の場合)には、制御部32は、インバータ22を制御して電気自動車2の後進を開始させる(ステップS28)。そして、制御部32は、電気自動車2のゆっくりとした後進を継続させ(ステップS29)、後進によって効率計算器32aで算出される電力伝送効率εが上昇したか否かを判断する(ステップS30)。
【0046】
電力伝送効率εが上昇したと判断した場合(ステップS30の判断結果が「YES」の場合)には、制御部32はインバータ22を制御して電気自動車2のゆっくりとした後進を継続させる(ステップS29)。これに対し、電力伝送効率εが上昇しないと判断した場合(ステップS30の判断結果が「NO」の場合)には、制御部32はインバータ22を制御して電気自動車2を停止させる(ステップS31)。
【0047】
ステップS27又はステップS31の処理によって電気自動車2を停止させると、制御部32は、充電装置27を制御して動作を開始させる一方でインバータ22を制御して動作を停止させる(ステップS32)。これにより、蓄電池24の充電が行われる(ステップS33)。具体的に、非接触電力伝送装置1からの交流電力は、給電コイル14と受電コイル25とによって形成される電磁気結合回路を介して電気自動車2に非接触で伝送されて受電回路26で受電される。受電回路26で受電された交流電力は直流電力に変換され、この変換された直流電力が充電装置27に供給される。そして、この直流電流を用いた蓄電池24の充電が充電装置27によって行われる。受電装置27による充電によって蓄電池24が満状態になると、制御部32は充電装置27を停止させて蓄電池24の充電を停止させる(ステップS34)。
【0048】
非接触電力伝送装置1は、ステップS12で電力の伝送を開始した後に、電気自動車2に搭載された蓄電池24の充電が完了したか否かを判断する(ステップS13)。例えば、電気自動車2の無線通信装置31から蓄電池24の充電完了を示す信号が送信されてきたか否かを判断する。充電が完了していないと判断した場合(ステップS13の判断結果が「NO」の場合)には、非接触電力伝送装置1は、上記の判断を繰り返す。これに対し、充電が完了したと判断した場合(ステップS13の判断結果が「YES」の場合)には、非接触電力伝送装置1は、給電回路13を停止させて電力伝送を停止する(ステップS14)。
【0049】
以上の通り、本実施形態では、非接触電力伝送装置1から電気自動車2への電力伝送効率εを求め、この電力伝送効率εを参照しつつ電気自動車2を前後に移動させることにより、非接触電力伝送装置1の給電コイル14と電気自動車2の受電コイル25との位置を調整している。このため、大きさや受電コイル25の取り付け位置が異なる電気自動車2であっても正確に位置を調整することができ、効率的に電力を伝送することができる。また、給電コイル14や受電コイル25を単独で移動させる機構等が不要であるため、大型化及びコスト上昇を招くこともない。
【0050】
また、本実施形態では、非接触電力伝送装置1の給電回路13に供給される電力の電力量P1と、電気自動車2の受電回路26で受電された電力の電力量P2とに基づいて、非接触電力伝送装置1から電気自動車2への電力伝送効率εを求めている。この電力伝送効率εは、給電コイル14と受電コイル25との間の電力伝送効率だけではなく、給電回路13と受電回路26とを含めた電力伝送効率であり、実際の電力伝送効率とほぼ同じである。このため、実際の電力伝送効率が最大となるように、非接触電力伝送装置1の給電コイル14と電気自動車2の受電コイル25との位置をより適切な位置に調整することができる。
【0051】
更に、本実施形態では、電気自動車2を前後に移動させて非接触電力伝送装置1の給電コイル14と電気自動車2の受電コイル25との位置調整を行う際に、非接触電力伝送装置1から伝送された電力を、モータ21を駆動する電力として用いている。このため、蓄電池24の残容量が零であっても上記の位置調整を行うことができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態による移動車両及び非接触電力伝送装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、非接触電力伝送装置1から電気自動車2への電力伝送効率εを参照しつつ電気自動車2を前後に移動させて位置調整を行っていたが、電力伝送効率εに代えて電力量演算器30で求められた電力量P2(受電回路26で受電された電力)を参照しつつ電気自動車2を前後に移動させて位置調整を行っても良い。
【0053】
非接触電力伝送装置1及び給電コイル14は、厳密に地表面に一致して設置されていなくてもよい。例えば、非接触電力伝送の効率を著しく低下させない範囲で埋め込んで地表面より低く設置してもよいし、電気自動車2の走行に著しく支障しない範囲で突出させて地表面より高く設置してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、電気自動車2を前後に移動させて位置調整を行う場合を例に挙げて説明したが、左右方向に直線的に移動可能な移動車両であれば、左右方向に移動させて位置調整を行うことができる。ここで、移動車両は、ステアリングを操作しなければ前後にのみ移動可能であり、左右方向に直線的に移動することはできないものが殆どである。このため、左右方向の位置ずれが生じても伝送効率の大幅な低下を招くことのない給電コイルを用いるのが望ましい。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態による非接触電力伝送装置に用いて好適な給電コイルの設置例を示す図である。図4に示す通り、非接触電力伝送装置1の給電コイル14は、平面視形状が長方形状のコイルであって、例えば駐車場Wにおいて、その長手方向が区画線Wに直交し、車止めSTから1メートル程度離間するように区画線Wの間に設置される。このように設置された給電コイル14の電力伝送可能エリアは、区画線Wに直交する方向に長いため、区画線Wの間における電気自動車2の左右方向の多少のずれが生じたとしても伝送効率の大幅な低下を招くことはない。
【0056】
また、上記実施形態では、位置調整を行う際に電気自動車2を連続的に前進或いは後進させていたが、連続移動ではなく微小距離の間欠移動であってもよい。ここで、電気自動車2が微小距離の移動を行っている場合には、受電された電力がモータ21を駆動する電力として用いられるため、出力電流I2(t)が流れて電力伝送効率εを求めることができる。しかしかしながら、停止している場合には出力電流I2(t)が流れないため電力伝送効率εを求めることはできない。
【0057】
このため、微小距離の間欠移動を行う場合には、充電装置27を停止させてモータ21を駆動して微小距離の移動を行い、停止後に充電装置27を動作させて蓄電池24の充電を行うという動作を繰り返す。これにより、停止中は受電された電力が蓄電池24の充電に用いられるため、停止中も電力伝送効率εを求めることが可能になる。尚、電力伝送効率εが上昇しているか下降しているかは、間欠移動を行う前の電力伝送効率εと1回の間欠動作を行った後の電力伝送効率εとを比較して判断すれば良い。
【0058】
また、上記実施形態では、図3中のステップS11において、電気自動車2が電力伝送可能エリア内にいるか否かを、非接触電力伝送装置1の無線通信装置18が電気自動車2の無線通信装置31と無線通信が可能であるか否かによって判断していた。しかしながら、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等によって得られる電気自動車2の位置に基づいて、電気自動車2が電力伝送可能エリア内にいるか否かを判断するようにしても良い。
【0059】
尚、電気自動車2の移動方向が一方向に制限される場所(例えば、前進のみに制限される場所)に非接触電力伝送装置1が設置されている場合には、電気自動車2が電力伝送可能エリアに進入した直後に電気自動車2を停車させれば良い。つまり、受電コイル25が電力伝送可能エリアの外縁の近くに配置されるように電気自動車2を停車させれば良い。これにより、電気自動車2を前進させれば電力伝送効率εが上昇して図3中のステップS24の判断結果が常に「YES」になるため、電気自動車2が後進するのを防止することができる。
【0060】
また、位置調整を行っている最中に電力伝送効率εが著しく低下した場合には、電気自動車2の制御部32は、電気自動車2を停止させる制御を行って、無線通信装置31を介して電力伝送効率εが著しく低下した旨を非接触電力伝送装置1に通知して、電力の伝送を停止させるのが望ましい。これにより、位置調整を行っている最中に生ずる想定外の事故を防止することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、給電対象が蓄電池を搭載した電気自動車である場合を例に挙げて説明したが、本発明はプラグイン・ハイブリッド自動車に適用することもでき、搬送車にも適用することができる。更には、無人式移動車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 非接触電力伝送装置
2 電気自動車
14 給電コイル
17 電力量演算器
18 無線通信装置
21 モータ
23 コンタクタ
24 蓄電池
25 受電コイル
27 充電装置
30 電力量演算器
31 無線通信装置
32 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動のための動力を発生するモータと、該モータを駆動する電力を供給する蓄電池とを備える移動車両において、
外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイルと、
前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部と、
前記受電量演算部で求められた受電量を参照しつつ前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部と
を備えることを特徴とする移動車両。
【請求項2】
前記一次側コイルから給電される電力の電力量を示す給電量が入力される入力部を備えており、
前記制御部は、前記受電量演算部で求められた受電量と前記入力部に入力された給電量とを用いて、前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め、該電力伝送効率を参照しつつ前記モータを制御する
ことを特徴とする請求項1記載の移動車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータを制御して移動車両を前後方向に移動させることにより、前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の移動車両
【請求項4】
前記制御部が前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置調整を行う場合には、前記二次側コイルで受電された電力が前記モータを駆動する電力として用いられることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の移動車両。
【請求項5】
前記二次側コイルで受電された電力を用いて前記蓄電池を充電する充電装置と、
前記充電装置による前記蓄電池の充電が行われている場合に、前記蓄電池から前記モータを電気的に切り離すスイッチ回路と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の移動車両。
【請求項6】
外部に対して電力を非接触で伝送可能な非接触電力伝送装置であって、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の移動車両が備える前記蓄電池を充電するための電力を、前記一次側コイルから非接触で伝送することを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項7】
前記一次側コイルから給電される電力の電力量を示す給電量を求める給電量演算部と、
前記給電量演算部で求められた前記給電量を外部に出力する出力部と
を備えることを特徴とする請求項6記載の非接触電力伝送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−115877(P2013−115877A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257943(P2011−257943)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】