説明

穀物調製装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、共同穀物調製施設における穀物調製装置に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】荷受時に穀物品位や食味を判定し、所定品位乃至食味毎に仕分けて後処理しようとする形態が公知である(特開平3−201941号公報)。ところが、品位を決める要素のうち例えば胴割れあるいは虫害については乾燥処理の際あるいは貯蔵中に変化し、一方食味においてもこれを決める一因子としての脂肪酸は貯蔵中に増加するもので、荷受時では正確に予想できない場合がある。
【0003】
【課題を解決するための手段】この発明は上記欠点を解消し、調製出荷の穀物品位あるいは食味を揃えるために工夫したもので、次の技術的手段を講じた。すなわち、荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の品位を測定する品位測定装置24、又は食味を測定する食味測定装置27を接続し、この品位測定結果又は食味測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分け排出する構成とする。なお、上記品位測定結果又は食味測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分けて排出すべく構成し、略品位又は食味の揃った穀物を出荷調製すべく調製行程に移送させる構成とする。
【0004】又、上記品位測定結果又は食味測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分けて排出すべく構成し、略品位又は食味の揃った穀物を同じサイロに還元すべく構成するものである。
【0005】
【発明の作用及び効果】サイロ15a〜15d貯蔵の籾の出荷時、品位判定装置24又は食味測定装置27を用いてその品位又は食味が測定され、この測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分け排出される。なお、元来生籾を荷受して一次貯留するための貯留ビン5a〜5dをもって当該品位または食味毎に仕分け分配することができる。この分配された穀物のうち必要なものを出荷調製して市場に供給するものである。
【0006】上記のように乾燥処理後または貯蔵中の穀物に対して出荷前に品位又は食味を判定するから、荷受け時以降の品位や食味への影響を反映させることができる。また、その品位又は食味毎に空いている貯留ビンを用いるから各別のタンクを必要とせず設置機材の有効利用がはかれる。尚、サイロ内穀物を劣化防止する目的でローテーションする場合にも途中で品位又は食味を測定しながら、品位等毎に貯留ビンを利用して分配仕分けできるから、上記の利点を享受しながら日数管理等を効率的に実施できるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】この発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は各農家から持ち込まれた籾を乾燥調製処理する大規模乾燥調製施設のフローを示すもので、荷受ホッパ1からの穀物は荷受昇降機2、荷受計量器3、ビン張込昇降機4を経て複数併設の貯留ビン5a,5b,5c,5dに送られる構成である。即ち貯留ビン5a〜5dの上部には供給用フライトコンベア6を有し、これらの所定個所にはビン数に見合う供給口とシャッタ7a〜7dを有する。又、各貯留ビンの排出口には開閉シャッタ8a〜8dを有する。これらシャッタ8a〜8d下方にのぞむベルトコンベア9終端部はビン排出昇降機10に接続している。この昇降機10の上部側には4方向切替弁11を介して、上記フライトコンベア6,穀物乾燥機12,サイロ張込昇降機13,及び籾摺選別装置14に穀物移送可能に接続している。又、上記ビン張込昇降機4の出口部にも2方向切替弁28を設けて、上記フライトコンベア6乃至穀物乾燥機12へのルートを設定しうる。
【0008】サイロは、容量の大なる主サイロ15a〜15dと、小容量の間隙サイロ16a〜16cとからなり、このうち主サイロへの穀物供給はフライトコンベア17の各排出口部に配設するシャッタ18a〜18dの操作による。一方間隙サイロ16a〜16cへの穀物供給は該コンベア17と平行に設けるフライトコンベア19の設けるシャッタ20a〜20cによるものである。尚、サイロ張込昇降機13の排出部には2方向切替弁21を有して上記フライトコンベア17又は19に穀物供給できる構成である。
【0009】上記主サイロ15a〜15dの排出側には開閉シャッタ22a〜22dを設け、ベルトコンベア形態の排出コンベア23に排出できる構成である。この排出コンベア23の移送終端側は前記ビン張込昇降機4に通じ、主サイロ内穀物を貯留ビンに還元移送できる構成としている。又、この排出コンベア23の終端部側には品位測定装置24を構成している。品位測定装置24は、光学的透過光乃至反射光を検出してその検出信号をコンピュータ25の制御部に取り込み胴割れ・着色の程度・被害の有無等を算出できる形態としている。該コンピュータ25の制御部はこの品位算出結果に応じて、例えば良品位,標準品位,粗悪品位に仕分け、これら仕分け信号に応じて主サイロ内穀物を貯留ビン5a,5b,5cに分配供給すべく2方向切替弁28切替信号及びシャッタ7a,7b,7cいずれかへの開閉信号を出力する構成である。
【0010】前記ビン張込昇降機4の途中部にはサンプル抽出部26を備え、食味測定装置27に接続している。食味測定装置27は近赤外分光分析装置(図示せず)にて、澱粉、蛋白質、脂肪、水分値等を測定してこれらのデータが順次前記の制御部に送られ食味値として算出できる構成としている。前記間隙サイロ16a〜16cの排出口にはシャッタ29a〜29cを配設し、これをベルトコンベア形態の排出コンベア30にのぞませる。排出コンベア30の終端部側は中間昇降機31を介して穀物乾燥機12に連通する。
【0011】穀物乾燥機12の下方排出口には排出コンベア32を設け、昇降機33、2方向切替弁34を経てサイロ張込昇降機13又はビン張込昇降機4に移送しうる構成である。前記籾摺選別装置14からの玄米は粒選別機35を通過するうち屑米が除去され、複数区画の良玄米タンク36a〜36cに貯留される構成である。
【0012】上例の作用について説明する。荷受された籾は荷受計量器3で計量された後、ビン張込昇降機4,フライトコンベア6を経て所定の(空いている)貯留ビン、例えば5aに供給される。貯留ビン5a内では排出コンベア9,排出用昇降機10を経由してビン張込昇降機4,フライトコンベア6より元の貯留ビン5aに戻される、いわゆる通風運転をとることができ高水分籾の蒸れ防止が可能である。
【0013】貯留ビン5a内の籾は一旦穀物乾燥機12を経て間隙サイロ16aに移され、この間隙サイロ16aと穀物乾燥機12との間を往復しながら所定水分値に乾燥仕上げる。乾燥済籾は2方向切替弁21を切替てフライトコンベア17から19へ供給可能に設定され、適宜の主サイロ15a〜15bに移されて貯蔵される。出荷時期になり、主サイロに貯蔵されている籾を取り出すときは希望品種のサイロ排出口のシャッタ22a〜22dのいずれかを操作して排出コンベア23上に排出させる。排出コンベア23は籾をビン張込昇降機4に排出するものである。
【0014】ところで、排出コンベア23終端側には品位測定装置24があって移送中の籾を脱ぷ風選して玄米状となしてから品位測定される。2方向切替弁28は供給用フライトコンベア6側に設定しておく。次いでサンプル籾の品位測定を行ない、予め設定した品位基準と比較し、良品位であるときは例えばシャッタ7aが開いて穀物を貯留ビン5aに収容できる。品位が標準品位又は粗悪品位では同様にシャッタ7b又は7cが開いて貯留ビン5b又は5bに収容できる。
【0015】こうして貯留ビン5a〜5cを利用して品位毎に仕分けられた籾のうち、良品位を出荷調製するものとすると、貯留ビン5a収容籾が対象となり、排出部に設ける開閉シャッタ8aを操作連動させてベルトコンベア9上に落下させる。籾はビン排出昇降機10,4方向切替弁11を経て籾摺選別装置14に至る。ここで脱ぷ、風選、選別処理され、更に粒選別機35を通過して整玄米のみを残して良玄米タンク36a〜36cに回収される。こうして品位の揃った玄米を出荷調製でき高級化・差別化志向の強い商品として市場に供給できることとなる。
【0016】上記の場合は主サイロ内の籾を出荷調製する場合について説明したが、所謂サイロローテーションの際にも同様の処理を行ない、品位毎に貯留タンクに区分けした後、当該品位毎に貯留タンクに貯蔵しあるいはそれぞれ別個に主サイロに戻して貯蔵するとよい。主サイロのみではサイロ本数に不足を来すときは間隙サイロを貯蔵用に用いるとよい。こうして、以後の出荷調製を行なう際の商品価値予測が確実となる。
【0017】以上のように、主サイロに貯蔵中の籾の品位を測定し、空いている貯蔵タンクを利用して品位毎に仕分けし、その後の出荷調製やサイロローテーションを当該品位毎に行なうものであるから、各別にタンクを準備する必要がない。又、食味測定装置27をビン張込昇降機4の途中に設けているから、主サイロから排出コンベア23を経由して該昇降機4に揚上される籾は適宜脱ぷ、粉砕等前処理された後成分分析によって食味値が求められ、この食味値の例えば高・標準・低に応じて貯留タンク5a〜5cに分配供給されるものである。これらの食味値毎に仕分けられた籾は前記品位毎に仕分けられた場合と同様に顧客の要求に見合う食味のものが出荷調製されて市場に供給されるものである。又、食味値毎にサイロローテーションがかけられ、特に内部成分の分析により劣化度指標を知り市場への供給時期等の調整管理も容易である。
【0018】本実施例における品位測定装置24は、排出コンベア23上の籾を対象としたが、脱ぷ処理を要する場合には食味測定装置27のように一部をサンプリングして測定処理するものでもよい。尚、測定に時間を要するときは排出コンベア23による移送を断続させてタイミングをはかりつつ貯留タンクに分配するとよい。食味測定装置27による測定項目のうちの水分値、あるいは別途測定の水分値により水分もどりした高水分値の籾は貯留ビンのいずれかにまとめて収容できることとし、排出昇降機10を経て穀物乾燥機12に供給しながらこの貯留ビンに戻しつつ所定水分値にまで追加乾燥することができる。
【0019】又、上記実施例では、いずれか貯留ビン(仮に5aとする)に収容された生籾を他の貯留ビンに移し替えるローテーションを行なう途中で品位乃至食味を測定し所定に分配することも可能である。即ち、貯留ビン5a内生籾を排出昇降機10経由で一旦通風乾燥状態の乾燥機12を通過させ再び張込昇降機4より貯留ビンに戻す閉回路を構成し、該回路途中に品位判定装置24あるいは食味判定装置27を組み込めば開閉シャッタ7a〜7dを自動制御することによりビンローテーションを利用して任意の品位あるいは食味の籾に統一処理することができる。
【0020】上記の品位乃至食味値はそれぞれコンピュータ25の表示部(図示せず)に表示される構成であるが、上記生籾のビンローテーションの際特に品位測定によって所謂焼米の発生状況を監視することにより以後の出荷日程管理に都合の良いものとなる。即ち、生籾で貯蔵すると焼米が多く発生しこれは食味劣化指標としての脂肪酸度の増加に密接に関係するといわれている。この発生割合を監視することにより食味低下の要因である脂肪酸度割合を予測でき貯蔵日数の目安とすることができる。
【0021】37は籾摺選別装置14の玄米排出部からのサンプル粒を品位判定すべく設ける品位測定装置又は食味を判定する食味測定装置で、この品位乃至食味測定結果に応じて複数設置の良玄米タンク36a,36b,36cに振り分けて排出できる構成とし、最終段階でのチェックを行なうものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】システム概要図である。
【符号の説明】
1…荷受ホッパ、2…荷受昇降機、3…荷受計量器、4…ビン張込昇降機、5a〜5d…貯留ビン、6…供給用フライトコンベア、7a〜7d…シャッタ、8a〜8d…開閉シャッタ、10…ビン排出昇降機、11…4方向切替弁、12…穀物乾燥機、13…サイロ張込昇降機、14…籾摺選別装置、15a〜15d…主サイロ、16a〜16c…間隙サイロ、18a〜18d…シャッタ、23…排出コンベア、24…品位測定装置、25…コンピュータ、26…サンプル抽出部、27…食味測定装置、35…粒選別機、36a〜36c…良玄米タンク、37…食味測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の品位を測定する品位測定装置24を接続し、この品位測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分け排出すべく構成してなる穀物調製装置。
【請求項2】 荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の品位を測定する品位測定装置24を接続し、この品位測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分けて排出すべく構成し、略品位の揃った穀物を出荷調製すべく調製行程に移送させる構成としてなる穀物調製装置。
【請求項3】 荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを相互に移送する移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の品位を測定する品位測定装置24を接続し、この品位測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分けて排出すべく構成し、略品位の揃った穀物を同じサイロに還元すべく構成してなる穀物調製装置。
【請求項4】 荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の食味を測定する食味測定装置27を接続し、この食味測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分け排出すべく構成してなる穀物調製装置。
【請求項5】 荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の食味を測定する食味測定装置27を接続し、この食味測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分けて排出すべく構成し、略食味の揃った穀物を出荷調製すべく調製行程に移送させる構成としてなる穀物調製装置。
【請求項6】 荷受した生穀物を一次貯留する貯留ビン5a〜5dを複数配設し、一方乾燥機12にて乾燥処理した穀物を受けて貯蔵するサイロ15a〜15dを複数配設する共同穀物調製施設において、該サイロと前記貯留ビンとを相互に移送する移送経路によって接続し、当該移送経路途中には移送中の穀物一部を受けて当該穀物の食味を測定する食味測定装置27を接続し、この食味測定結果に基づいて前記貯留ビン5a〜5dに仕分けて排出すべく構成し、略食味の揃った穀物を同じサイロに還元すべく構成してなる穀物調製装置。

【図1】
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【特許番号】特許第3303317号(P3303317)
【登録日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【発行日】平成14年7月22日(2002.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−314641
【出願日】平成3年11月28日(1991.11.28)
【公開番号】特開平5−146691
【公開日】平成5年6月15日(1993.6.15)
【審査請求日】平成10年11月25日(1998.11.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【参考文献】
【文献】特開 平3−201941(JP,A)
【文献】特開 平3−26345(JP,A)