説明

穀物選別装置

【課題】 作動中の選別能力および細塵飛散防止ともに良好な状態を維持できる穀物選別装置を提供する。
【解決手段】 穀物選別装置1は、多孔選別板2で上下に仕切ってその上部を選別室3とし、かつその下部を圧風送風機5による圧風送風室4とした選別閉空間6と、選別室3の上方に連なる排塵のための吸引閉空間7とを備える。吸引閉空間7の上部には負圧調整室8を形成してその内部に多孔筒状フィルタ10を設ける。吸引閉空間7内の空気を負圧調整室8を経て吸引排風機9により吸引排出する。負圧調整室8と圧風送風機5の吸引側とを連通させて選別室3に多孔選別板を透過して送風される圧風の風圧を自動平衡調整するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した穀物に混在する土埃りなどの細塵ならびに土塊、石塊、草木類、小動物の死骸、金属片およびプラスチック片などの粗大夾雑物を選別して除去する穀物選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫した穀物には種々の夾雑物が混在しているので、乾燥後または乾燥前に粗選別して夾雑物を除去する処理を必要とする。従来、そのための選別装置としては、特開平10−52162号公報が紹介するように、多孔選別面上を投入した被選別穀物層にその下方から上方に向け通風して流動層を形成することにより、穀物中から細塵を分離して上方に排出し、流動層選別部に流動層となって整粒とともに残る粗大夾雑物は流動層選別部から整粒と粗大夾雑物に分離して排出するようになっている。
【0003】
なお、粗選機の風選吸塵装置において周面多孔の回転円筒を備えることは特開2004−136233公報に、穀物乾燥機用の集塵機においてドラムフィルタを備えることは特開2000−185211公報に、籾摺機の風選別装置において籾選別用ファンの吐出側からの選別風お吸引側に還元するようにした構成は特開平5−161851号公報にそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特開平10−52162号公報
【特許文献2】特開2004−136233公報
【特許文献3】特開2000−185211公報
【特許文献4】特開平5−161851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特開平10−52162号公報に開示されているように、被選別穀物層にその下方から上方に向け通風して流動層を形成することにより、穀物中から細塵を分離して上方に吹き上げ排出するとともに、残留細塵とともに被選別穀物を流動層選別部から排出するものであるから、流動層選別部に送風される圧風により特に細塵が装置の周辺に飛散浮遊して作業環境を著しく悪くするので、細塵排出のために設けられている吸引ファンの能力強化とそれによる装置の吸引排風状態を適切に保たない限り、細塵飛散浮遊に起因する作業環境悪化の問題を解消することはできず、従来のこの種装置にあっては、現実的にその問題を解決することは不可能であった。
【0005】
すなわち、この種の装置においては、吸引ファンによる吸引能力(負圧状態)が圧風による流動層選別に密接に関わるので、細塵飛散を防止するため吸引ファンの吸引能力を増強すると流動層選別の選別状態を大きく変乱させることが避けられない。また、良好な平衡状態を保持するように初期設定をしても、流動選別される被選別穀物の単位時間当たりの投入量や水分、夾雑物の混在比率あるいはその種類などの性状の変化により、作動中の平衡状態に崩れが生じて、選別能力および細塵飛散防止の両面で良好な状態を保たせることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、選別室の上方に連なる吸引閉空間の一部に負圧調整室を形成して、吸引閉空間内の空気を負圧調整室を経て吸引排風機により吸引排出する構成とすることと、負圧調整室と圧風送風機の吸引側とを連通させて選別室に多孔選別板を透過して送風される圧風の風圧を自動平衡調整する構成としたことにより、選別能力および細塵飛散防止の両面から良好な平衡状態を保持するように初期設定をするのみで、流動選別される被選別穀物の単位時間当たりの投入量や水分、夾雑物の混在比率あるいはその種類などの性状の変化にかかわらず、作動中の選別能力および細塵飛散防止ともに良好な状態を維持できる穀物選別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る穀物選別装置は、被選別穀物に混在する夾雑物を選別して除去する穀物選別装置であって、多孔選別板で上下に仕切ってその上部を選別室とし、かつその下部を圧風送風機による圧風送風室とした選別閉空間と、前記選別室の上方に連なる排塵のための吸引閉空間とを備え、前記吸引閉空間の一部には負圧調整室を形成して、前記吸引閉空間内の空気を前記負圧調整室を経て吸引排風機により吸引排出する構成とし、前記負圧調整室と前記圧風送風機の吸引側とを連通させて前記選別室に多孔選別板を透過して送風される圧風の風圧を自動平衡調整する構成としたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る穀物選別装置は、請求項1の構成において、負圧調整室には、その内部に多孔筒状フィルタを設けてその周囲を吸引風の旋回路とし、多孔筒状フィルタと圧風送風機の吸引側とをダクトにより連通させてあることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項3に係る穀物選別装置は、請求項1または2の構成において、吸引閉空間には、選別室側から負圧調整室に向かう吸引風の風量調整弁を設けてあることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項4に係る穀物選別装置は、請求項1、2または3の構成において、多孔選別板で仕切ってその上部に形成した選別室の前面を開放状として、選別された穀物整粒および粗大夾雑物を選別室の前面から前方に排出する構成とし、選別室の上方に連なる吸引閉空間の前面を開閉蓋により前方に開放可能にしてあることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項5に係る穀物選別装置は、請求項4の構成において、選別室の前面側に、選別室から排出される穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋を形成してあることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項6に係る穀物選別装置は、請求項5の構成において、穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋は、穀物整粒の流下面と粗大夾雑物の流下スノコ面との2段構成としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る穀物選別装置によれば、選別能力および細塵飛散防止の両面から良好な平衡状態を保持するように初期設定をするのみで、流動選別される被選別穀物の単位時間当たりの投入量や水分、夾雑物の混在比率あるいはその種類などの性状の変化にかかわらず、作動中の選別能力および細塵飛散防止ともに良好な状態を維持できる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る穀物選別装置の基本構成を示す断面図、図2は同上作用説明図、図3は同上全体の構成を示す斜視図である。
【0015】
本発明に係る穀物選別装置1は、多孔選別板2で上下に仕切ってその上部を選別室3とし、かつその下部を圧風送風室4として、圧風送風室4には圧風送風機5が接続されており、選別室3および圧風送風室4により選別閉空間6が形成されている。選別室3にはその上方に連なる排塵のための吸引閉空間7が備えられており、この吸引閉空間7の上部には負圧調整室8が形成されていて、吸引閉空間7内の空気が負圧調整室8を経て吸引排風機9により吸引排出されるように構成されている。前記負圧調整室8内には多孔筒状フィルタ10を設けてあってその周囲を吸引風の旋回路11としてあり、旋回路11の下部の塵埃吸出口12と前記吸引排風機9の吸引側は排塵ダクト13によって連通させてある。また、多孔筒状フィルタ10の一端(または両端)と圧風送風機5の吸引側とをダクト14により連通させてあり、選別室3内に多孔選別板2を透過して圧風送風機5により送風される圧風の風圧を自動平衡調整されるように構成してある。
【0016】
多孔選別板2で仕切ってその上部に形成した選別室3は、その前面が開放状と成っていて、その開放された部分には多孔選別板2より少し下がった位置を基端とする穀物整粒の流下樋15が前方に向かって設けられており、さらに流下樋15の上面には、多孔選別板2と同高の位置を基端とする粗大夾雑物の流下スノコ16が2段構成として設けられている。そして、これら流下樋15および流下スノコ16によって選別室3から排出される穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋17が形成されている。18は穀物整粒落とし口である。
【0017】
本発明に係る穀物選別装置1の前側下部には選別閉空間6を形成する選別室3および圧風送風室4が設けられており、圧風送風室4に隣接して後側下部には送風機室19を形成して吸引排風機9を内蔵させるとともに、送風機室19には圧風送風機5も内蔵させてその圧風送風口を圧風送風室4に連通開口させてある。また、選別室3の上方に連なる吸引閉空間7の後方上部には、被選別穀物の投入口20を設けてあり、21は被選別穀物の流し板である。この流し板21は吸引閉空間7の一部壁面を構成している。吸引閉空間7には、選別室3側から負圧調整室8に向かう吸引風の風量調整弁22を設けてある。風量調整弁22は支点23を軸芯として上下方向に変位自在であり、吸引風の風量が略一定となるように吸引風によって角度が自動調整されるものとする。なお、風量調整弁22は手動により調整するものとしてもよい。
【0018】
前記負圧調整室8の前面側には、前方へ略全開可能な開閉蓋24を備えており、開閉蓋24を前方側へ開くことにより多孔筒状フィルタ10がその略全長にわたって露出するので、点検や清掃等の作業を容易に行うことができる。なお、多孔筒状フィルタ10は手回し操作できるように成っていて、開閉蓋24を前方側へ開いて前面からその全周面にわたる清掃が可能である。
【0019】
本発明に係る穀物選別装置1においては、吸引排風機9による吸引能力を装置の周辺に細塵の飛散浮遊が生じない程度に内部の負圧状態が保たれるように調整し、圧風送風機5の圧風送風能力を選別室3における多孔選別板2上での効率のよい被選別穀物の流動層選別が行われるように調整して、その状態を初期設定とする。
【0020】
投入口20から投入した被選別穀物は吸引閉空間7の一部壁面を構成する流し板21上を流下して選別室3の多孔選別板2上に移動し、多孔選別板2上で選別されるが、投入口20から投入された被選別穀物は吸引閉空間7内を落下するので、その過程で細塵や軽い夾雑物は吸引風によって一部が除去される。すなわち、投入口20から投入された被選別穀物は被選別穀物の流し板21上を層状ないしは乱流状となって流下して、選別室3の多孔選別板2上に移行し、多孔選別板2上では圧風送風機5により下方から吹き上げる圧風により流動層を形成し、流動層上には細塵が浮上するともに、穀物の整粒および粗大夾雑物は選別室3の前面の穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋17に順次溢出して、粗大夾雑物は流下スノコ16上を流下して排出され、かつ流下スノコ16を透過した穀物整粒は穀物整粒の流下樋15上を流下して、穀物整粒落とし口18から排出される。多孔選別板2上の流動層上に浮上した細塵は、吸引閉空間7内を負圧調整室8に向かう吸引風に乗って負圧調整室8に入り、負圧調整室8内の旋回路11を多孔筒状フィルタ10の周囲を旋回しながら排塵ダクト13を経て吸引排風機9により排出されるとともに、その一部は圧風送風機5の吸引側にダクト14により連通させてある多孔筒状フィルタ10に吸引される過程で多孔筒状フィルタ10の周面で細塵が除去されたうえ、圧風送風機5に吸引される。このため圧風送風機5の圧風送風能力は多孔筒状フィルタ10内の負圧状態により、選別室3内に多孔選別板2を透過して圧風送風機5により送風される圧風の風圧が自動平衡調整される。
【0021】
このことから、本発明に係る穀物選別装置1においては、選別能力および細塵飛散防止の両面から良好な平衡状態を保持するように初期設定をするのみで、流動選別される被選別穀物の単位時間当たりの投入量や水分、夾雑物の混在比率あるいはその種類などの性状の変化にかかわらず、作動中の選別能力および細塵飛散防止ともに良好な状態を維持できることになる。
【0022】
また、本発明に係る穀物選別装置1においては、被選別穀物の投入口20が吸引閉空間7の後方上部に開口しており、選別室3の前面が選別された穀物整粒および粗大夾雑物の排出のため狭く開口しているが、投入口20は吸引閉空間7に直に開口しているものであり、選別室3の開口部も選別閉空間6を介して吸引閉空間7に連なっているので、これらの開口部分およびその周辺は常に適度の負圧状態に保たれる。このため、特に投入口20および選別室3の開口部付近における細塵の飛散浮遊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る穀物選別装置の基本構成を示す断面図である。
【図2】同上作用説明図である。
【図3】同上全体の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 穀物選別装置
2 多孔選別板
3 選別室
4 圧風送風室
5 圧風送風機
6 選別閉空間
7 吸引閉空間
8 負圧調整室
9 吸引排風機
10 多孔筒状フィルタ
11 吸引風の旋回路
12 塵埃吸出口
13 排塵ダクト
14 ダクト
15 流下樋
16 流下スノコ
17 穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋
18 穀物整粒落とし口
19 送風機室
20 被選別穀物の投入口
21 被選別穀物の流し板
22 風量調整弁
23 支点
24 開閉蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別穀物に混在する夾雑物を選別して除去する穀物選別装置であって、
多孔選別板で上下に仕切ってその上部を選別室とし、かつその下部を圧風送風機による圧風送風室とした選別閉空間と、
前記選別室の上方に連なる排塵のための吸引閉空間とを備え、
前記吸引閉空間の一部には負圧調整室を形成して、
前記吸引閉空間内の空気を前記負圧調整室を経て吸引排風機により吸引排出する構成とし、
前記負圧調整室と前記圧風送風機の吸引側とを連通させて前記選別室に多孔選別板を透過して送風される圧風の風圧を自動平衡調整する構成とした
ことを特徴とする穀物選別装置。
【請求項2】
負圧調整室には、その内部に多孔筒状フィルタを設けてその周囲を吸引風の旋回路とし、多孔筒状フィルタと圧風送風機の吸引側とをダクトにより連通させてあることを特徴とする請求項1記載の穀物選別装置。
【請求項3】
吸引閉空間には、選別室側から負圧調整室に向かう吸引風の風量調整弁を設けてあることを特徴とする請求項1または2記載の穀物選別装置。
【請求項4】
多孔選別板で仕切ってその上部に形成した選別室の前面を開放状として、選別された穀物整粒および粗大夾雑物を選別室の前面から前方に排出する構成とし、選別室の上方に連なる吸引閉空間の前面を開閉蓋により前方に開放可能にしてあることを特徴とする請求項1、2または3記載の穀物選別装置。
【請求項5】
選別室の前面側に、選別室から排出される穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋を形成してあることを特徴とする請求項4記載の穀物選別装置。
【請求項6】
穀物整粒および粗大夾雑物の分離排出樋は、穀物整粒の流下面と粗大夾雑物の流下スノコ面との2段構成としたことを特徴とする請求項5記載の穀物選別装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate