積層体の製造方法
【課題】 積層体の一面側に形成された半導体素子搭載用のパッドを備え、薄型かつ長期間安定して電子部品を搭載できるプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】 金属箔を支持部材に超音波で固定する工程;前記金属箔上に樹脂絶縁層を形成する工程;前記樹脂絶縁層にビア導体用の開口部を形成する工程;前記樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程;前記開口部に、ビア導体を形成する工程;及び支持部材と金属箔とを分離する工程;を含む、プリント配線板の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法によれば、接続信頼性に優れた薄型のプリント配線板を歩留まりよく製造することができる。
【解決手段】 金属箔を支持部材に超音波で固定する工程;前記金属箔上に樹脂絶縁層を形成する工程;前記樹脂絶縁層にビア導体用の開口部を形成する工程;前記樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程;前記開口部に、ビア導体を形成する工程;及び支持部材と金属箔とを分離する工程;を含む、プリント配線板の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法によれば、接続信頼性に優れた薄型のプリント配線板を歩留まりよく製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。より詳細には、導体回路と絶縁層とが交互に積層されたプリント配線板であって、その一面側にIC等の電子部品搭載用のパッドを備える積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は高機能化が進む一方で小型化、薄型化が要請されている。これに伴って、ICチップやLSI等の電子部品では高密度集積化が急速に進み、これらの電子部品を搭載するパッケージ基板においても、さらに配線密度を上げるとともに、端子数を増加するという要請が大きくなっている。
【0003】
こうした要請に応えるために、高分子材料で構成された誘電体層と導体層とが交互積層され、上記のようなパッドを備えるプリント配線基板の製造方法として、(a)2つの金属箔が密着してなる金属箔密着体を用意し、その一方の表面に誘電体層と導体層を交互に積層して積層シート体を形成する工程と、(b)積層シート体の周囲部を除去し、片方の金属箔が積層シート体に付着した状態で前記金属箔密着体を剥離する工程と、(c)金属箔の表面をマスク材で覆い、金属端子パッドを形成する領域が開口するようにパターン形成する工程と、(d)電解メッキ処理を行い、金属端子パッドに電解メッキ表面層を形成する工程と、(e)マスク材を除去した後に、電解メッキ表面層をエッチングレジストとして金属箔のエッチング処理を行う工程と、を備えるプリント配線板の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ICチップを実装するプリント配線板として、ガラスエポキシなどの基板の両面に層間樹脂絶縁層と導体層を交互に積層するプリント配線板が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−19591
【特許文献2】特開平10−41610
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2006−19591の方法(以下、「従来例1」という。)で製造されるプリント配線板においては、金属箔の上に電解メッキによって電解メッキ層を形成し、この電解メッキ層をエッチングレジストとして使用して、エッチングによって導体回路を形成する。そして、この導体回路を、半導体素子搭載用のパッドとして使用する。
【0007】
この製造方法では、パッド上に形成されている電解メッキ層が電解メッキで形成されている。電解メッキは、パターンの粗密やパッドが形成されている位置(基板の中央と端)等により電解メッキ膜の厚みが異なるので、電解メッキ層の厚みは各パッド上で異なることとなる。電解メッキ層の厚みが各パッドで異なると、各パッドにおいて、電子部品の電極とパッド上に形成されている電解メッキ層との間の距離が異なることとなる。
【0008】
電子部品とプリント配線板は、熱膨張係数が異なるため、その差に起因する応力が発生する。その応力は、通常、電子部品を実装する半田バンプで緩和される。しかしながら、電子部品とパッド間の距離が、各パッド間で異なると、特定の半田バンプに応力が集中しやすくなるので、その半田バンプは疲労劣化しやすくなる。その結果、電子部品の実装歩留まりや実装信頼性が低下することとなる。
【0009】
従来例1の方法では、電解メッキ層941、942をエッチングレジストとして、パッド921、922を形成しているので、電解メッキ層の一部94A1、94B1がパッドから突出することとなる(図11参照)。突出した電解メッキ層94A1及び94B1は、下地となる導体回路921に固定されていないので、その部分が比較的自由に動くことにより、疲労破壊が起こりやすくなる。そして、ここで生じた疲労破壊を起点として、パッド上に形成されたバンプにクラックが発生しやすくなるという問題がある。
【0010】
また、電解メッキ層941上に半田バンプを形成すると、パッド921から突出した電解メッキ層94A1及び94B1上にも、半田バンプは形成されることとなる。その部分に形成された半田バンプは、電解メッキ層と同様にパッドに固定されていないため、半田バンプが動きやすくなる。そのため、半田バンプ自体やアンダーフィルにクラックが入り、IC等の電子部品が破壊されやすくなるという問題も生じる。
【0011】
また、従来例1の方法の場合、金属箔密着体としては、例えば、2つの銅箔を、金属メッキ層(例えば、Crメッキ層)を介して密着させたものが用いられている。しかしながら、金属メッキ層を介して密着させただけでは、2つの金属箔間の接合強度が弱い。このため、プリント配線板の製造工程における熱処理などで、両者間で剥がれが発生することがある。そして、その剥がれが基点となって、金属箔と支持部材間で剥がれが発生して、メッキ液などがプリント配線板内に浸み込んだりする。また、2つの金属箔間の接合強度が弱いため、金属箔密着体上にビルドアップ配線層を形成すると、プリント配線板側の金属箔が折れたり、破れたりすることがある。
【0012】
特開平10−41610(以下、「従来例2」という。)のプリント配線板は、基板を有するため、プリント配線板の厚みが厚くなってしまうという問題がある。このため、厚みが薄く、長期に安定してIC等の電子部品を搭載できるプリント配線板が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、金属箔を支持部材に超音波で固定する工程;前記金属箔上に樹脂絶縁層を形成する工程;前記樹脂絶縁層にビア導体用の開口部を形成する工程;前記樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程;前記開口部に、ビア導体を形成する工程;及び支持部材と金属箔とを分離する工程;を含む積層体の製造方法である。
【0014】
ここで、前記導体回路の形成と前記ビア導体の形成とは同時に行われていることが好ましく、前記金属箔と前記支持部材との固定は、前記金属箔の外周部を前記支持部材に接合することによって行われることが好ましい。
本発明のプリント配線板の製造方法においては、さらに、前記樹脂絶縁層上及び前記導体回路上に、上層の樹脂絶縁層を形成する工程;前記上層樹脂絶縁層に上層のビア導体形成用の開口部を形成する工程;前記上層樹脂絶縁層上に上層の導体回路を形成する工程;及び前記上層の開口部に、前記導体回路と前記上層の導体回路とを電気的に接続する上層のビア導体を形成する工程;を含むことが好ましい。また、前記上層の導体回路の形成と前記ビア導体の形成は同時に行われていることが好ましい。
【0015】
前記支持部材は、金属板であるか、又は支持母材と前記支持母材の表面を被覆する金属とからなる板状部材であることが好ましい。ここで、「支持母材」とは、その表面を金属で被覆することによって支持部材を形成する部材をいい、具体的には、ガラス−エポキシ樹脂板その他の樹脂製の板状部材を意味する。ここで、前記金属が金属箔であることが好ましく、また、前記支持部材は銅張積層板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層体の製造方法によれば、接続信頼性に優れた薄型のプリント配線板を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の積層体の製造方法により製造されたプリント配線板の一例の構造を示す図である。
【図2】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その1)である。
【図3】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その2)である。
【図4】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その3)である。
【図5】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その4)である。
【図6A】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その5)である。
【図6B】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その6)である。
【図7】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その7)である。
【図8】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その8)である。
【図9】図1のプリント配線板の最外層に設けられたパッドとパッド間の配線を模式的に示す図(その1)である。
【図10】図1のプリント配線板の最外層に設けられたパッド形成領域、上記パッド形成領域に形成されたパッド及びパッド間の配線を模式的に示す図(その2)である。
【図11】従来の方法で形成されたプリント配線板及びパッドの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の積層体の製造方法により製造されるプリント配線板の一例を、図1〜10を参照しつつ、一実施形態として詳細に説明する。また、図1〜8までは、後述するビア導体を2列で形成した場合を例に説明を行っている。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係るプリント配線板100は、図1(A)に示すように、(a)樹脂絶縁層10Li(j=1〜N)と導体回路(導体パターン)19Liを備える導体層とが交互に積層され、異なる導体層に形成されている導体回路間を接続する層間接続用のビア導体(後述する第1のパッド15Lk(k=1〜M)に対応して設けられたビア導体14L1,1〜14LN,Mを含む)とからなる積層体18Lと、(b)積層体18Lの+Z方向側表面(最上層の樹脂絶縁層10L1の第1面)に形成された第1のパッド(第1の外部接続端子)15Lkと、(c)前記パッド15Lk上に形成された半田部材(半田バンプ)30Lkとを備えている。また、プリント配線板100は、(d)積層体18Lの−Z方向側表面(最下層の樹脂絶縁層の第2面)に形成されたソルダレジスト20Lを備えている。
【0020】
なお、プリント配線板100では、半田部材30Lkが形成されている第1のパッド15Lkは、図1(B)に示すように、最上層の樹脂絶縁層10L1の第1面上に2次元的に配置され、パッド群を形成している。
【0021】
また、ソルダレジストは複数の開口部を有している。その開口部は、最下層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている導体回路19LNの表面もしくはビア導体の表面を部分的に開口している。ソルダレジストに形成されている開口部は、ビア導体の表面とそのビア導体に接続している導体回路の一部(ビアランド)を部分的に開口している場合もある。開口部により露出している導体回路(最下層の導体回路)やビア導体の部分が第2のパッド(第2の外部接続端子)となる。ここで、各樹脂絶縁層の第1面は、第1のパッドが形成されている側の面である。各樹脂絶縁層の第2面は、第1面とは反対側の面であって、第2のパッドが形成されている側の面である。
【0022】
積層体18Lは、図2(A)に示すような支持部材(以下、「支持板」ということがある。)SM上に、アディティブ法もしくはサブトラクティブ法によって形成される。最外層にソルダレジスト20L又は20Uを形成した後(図6B参照)、所定の位置で積層体を切断し、支持部材SMから剥離させる。
【0023】
この剥離によって、ソルダレジスト20U又は20Lが形成されているのとは反対側の最外層の樹脂絶縁層が、最上層の樹脂絶縁層10U1又10L1となる。最上層の樹脂絶縁の第1面(支持部材SMと対向する面、プリント配線板100の外部に露出する側の面)に形成されている金属箔から部品搭載用パッド(第1の外部接続端子)15L1〜15LMが形成される(図1(A)及び図1(B)参照)。
【0024】
部品搭載用パッドは錐台形となっていることが好ましく、そのX−Z断面は、図1(A)に示すように、最上層の樹脂絶縁層10L1と接触している底面の面積が、前記電子部品を搭載する側の上面の面積よりも大きくなっている。
【0025】
保護膜は、パッド形成後に、部品搭載用パッド上に無電解メッキ膜等により形成する。このため、保護膜の周辺部94A1及び94B1が第1のパッドから突出すことはなくなる(図11参照)。
【0026】
前記半田部材は、上記のような錐台形となっているパッドの上に形成され、前記第1のパッドの上面と側面上を覆うようになっている(図1(A)参照)。
【0027】
次に、上記の構成を有する電子部品の製造について、各要素の素材に言及しつつ、説明する。
まず、支持部材SMを用意する(図2(A)参照)。この支持部材SMは、絶縁部材Sの両面に導体層FU及びFLが積層されたものである。上記の支持部材SMを構成する導体層FL及びFUは、約数μmから数十μm程度の厚みの金属箔である。このように、支持部材の表面には、金属層が形成されていることが好ましい。厚みの均一性から、金属層は金属箔であることがより好ましい。
【0028】
上記の支持部材SMとしては、絶縁部材Sの表面に上記の厚みの導体層を接着剤等で固定したものを使用することができる。
【0029】
前記絶縁部材Sとしては、例えば、ガラス基材ビスマレイミドトリアジン樹脂含浸積層板、ガラス基材ポリフェニレンエーテル樹脂含浸積層板、ガラス基材ポリイミド樹脂含浸積層板等を挙げることができ、これらの両面に、銅箔その他の金属箔を周知の方法で固定してもよい。
【0030】
また、市販されている両面銅張積層板や片面5銅張積層板を使用することもできる。こうした市販品としては、例えば、MCL−E679 FGR(東京都新宿区所在、日立化成工業株式会社製)等を挙げることができる。具体的には、板厚0.2〜0.6mmのガラスエポキシ積層板11の両面に厚み3〜20μmの銅箔12が張られている基板を使用することができる。また、支持部材SMとして金属板を使用することもできる。
【0031】
ついで、図2(B)に示すように、金属箔11U又は11Lの第1面が導体層FU又はFLと対向するように、これらを導体層FU又はFLの上に重ねる。金属箔としては、例えば、所望の厚みの銅箔、ニッケル箔、チタン箔等を用いることができる。こうした金属箔の第2面(第1面と反対側)は、マット面であることが好ましい。例えば、金属箔11U又は11Lとして銅箔を使用する場合、約3μm〜約35μm厚みのものを使用することが好ましい。
【0032】
次いで、図2(C)及び図2(D)に示すように、導体層FU又はFLと上記の金属箔とは、支持部材SMの周辺部(ADの部分)で互いに接合することにより固定されることが好ましい。本実施形態における導体層と金属箔との固定部分は、金属箔の端部からその中心部に向かって、約10〜約30mm内側の位置であることが好ましく、約20mm内側の位置であることがさらに好ましい。また、両者の固定幅は、約1〜約5mmの幅とすることが好ましく、約2mmの幅とすることがさらに好ましい。
【0033】
導体層(支持板)と金属箔との固定(接合)は、超音波を用いて行う。超音波による固定が密着強度や簡便性の点で優れる。超音波を用いて固定するに際して、超音波接合装置を使用する場合には、支持部材SMの端部から、上述したような所望の位置に、所望の幅を持った所望の形状で固定することができる。後述する剥離工程において、導体層と金属箔との剥離に支障をきたさない限り、長方形(図2(D)参照)や格子状等(図示せず)に固定することができる。
【0034】
導体層と金属箔とを固定すると、後述する層間における樹脂絶縁層の形成や導体層の形成の際に、以下のような問題の発生を抑えることができる。樹脂絶縁層形成時には、加熱、放冷が繰り返されるため、樹脂絶縁層は伸張と収縮を繰り返すことになる。そして、樹脂絶縁層は金属箔上に形成されていることから、金属箔は樹脂絶縁層に追従して伸張・収縮を繰り返すことになる。その結果、金属箔に歪や撓みが生じやすくなる。また、甚だしい歪や撓みは折れや曲がりを引き起こし、金属箔が破損する場合もある。一方、導体層と金属箔とを固定しておくことにより、こうした問題が生じることを防止することが可能となる。
【0035】
また、メッキ処理を用いて導体層の形成を行う場合に、以下のような問題の発生を抑制することもできる。メッキ処理を行う場合には、メッキ液などの液中に基板を浸漬する必要がある。このときに導体層と金属箔とを固定しておかないと、両者の間にメッキ液が染み込み、両者の間で剥がれが発生する可能性がある。これに対し、導体層と金属箔とを固定しておくことにより、こうした問題が生じることを防止することが可能となる。
【0036】
次に、図3(A)及び図3(B)に示すように、接合部ADにかかるように、エッチング用レジスト12U及び12Lを形成する。図3(B)は、エッチングレジスト12Uを形成した後の積層板の平面図である。エッチングレジスト12Uは、超音波溶接部分ADに一部重なるように形成されている。こうしたレジストの形成には、市販のドライフィルムレジスト又は液体レジストを使用することができる。
【0037】
ついで、支持部材の端部に存在している導体層FU及び金属箔11U、FL及び11Lの外周部分をそれぞれ、周知の方法を用いたエッチング等を行って除去する。その後、常法に従ってエッチングレジストを除去する(図3(C)参照)。
【0038】
2つの金属箔11U及び11Lのそれぞれの第2面は、平滑面ではなくマット面であることが好ましく、所望により粗化することもできる。金属箔の第2面が平滑面の場合には、後述する樹脂絶縁層との密着性を向上させるために粗化することが好ましい。こうした粗化は、アルカリを使用する黒化処理や適当なエッチング液を使用するエッチング等によって行うことができる。エッチング液としては、マイクロエッチング剤「CZシリーズ」(兵庫県尼崎市所在、メック株式会社製)等を使用することができる。
以上のようにして、母材BSを形成する(図3(C)参照)。
【0039】
次に、この母材BSに重ねた各金属箔11U及び11Lの第2面(マット面)に、樹脂絶縁層を形成するため、樹脂絶縁層10U1及び10L1の第1面をそれぞれ貼り付ける(図4(A)参照)。樹脂絶縁層としては、層間絶縁用フィルムやプリプレグその他の半硬化樹脂シートを使用することができる。こうした半硬化樹脂シートを使用する以外に、未硬化の液体樹脂を上述した金属箔上にスクリーン印刷することによって樹脂絶縁層を形成してもよい。いずれを使用した場合でも、熱硬化により層間樹脂絶縁層(最上層の樹脂絶縁層10L1又は10U1)が形成される(図4(A)参照)。
【0040】
こうした層間樹脂絶縁用フィルムとしては、例えば、ビルドアップ配線板用層間フィルム「ABFシリーズ」(神奈川県川崎市所在、味の素ファインテクノ株式会社製)等を例示することができる。プリプレグとしては、日立化成工業社製の各種製品を使用することができる。
【0041】
樹脂絶縁層の厚みは、約30μm〜約100μmであることが好ましい。樹脂絶縁層は、少なくとも1層が充填材(ガラスクロス及びガラス長繊維を除く)を含む樹脂で形成されることが好ましい。特に、プリント配線板100が5層以上の樹脂絶縁層を有する場合には、全ての樹脂絶縁層が、充填材(ガラスクロス及びガラス長繊維を除く)を含むものであることが好ましい。充填剤としては無機フィラーが好ましく、ガラス繊維の場合には短繊維のものであることが好ましい。
【0042】
プリント配線板100が4層以下の樹脂絶縁層を有する場合には、全樹脂絶縁層の内、1層又は2層がガラスクロスやガラス長繊維などの心材と樹脂とを含む樹脂絶縁層であり、残りの樹脂絶縁層が、ガラスクロスやガラス長繊維を除く充填材と樹脂とを含む樹脂絶縁層であることが好ましい。
【0043】
次に、図4(A)に示すように、樹脂絶縁層10U1及び10L1に、ビアホール用の開口部を、レーザを用いて形成する。開口部の形成に使用できるレーザとしては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、UVレーザ等を挙げることができる。なお、レーザで開口部を形成する場合には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の保護フィルムを使用してもよい。
【0044】
次に、導体層との密着性を高めるために、樹脂絶縁層の表面を粗化することが好ましい。樹脂絶縁層の表面の粗化は、例えば、過マンガン酸水溶液に浸漬することによって行うことができる。
次に、樹脂絶縁層の表面に触媒核を形成する。
【0045】
次いで、図4(B)に示すように、市販のメッキ浴を用いて、数μm程度の薄い無電解メッキ膜PU1及びPL1を形成する。ここで形成する無電解メッキ膜としては、無電解銅メッキ膜が好ましい。
【0046】
次に、図5(A)に示すように、無電解メッキ膜上にメッキレジストパターンRU1及びRL1を形成する。メッキレジストパターンRU1及びRL1は、後述するビア導体形成部分及び導体回路形成部分以外の部分に形成するが、例えば、メッキレジスト用のドライフィルムをラミネートし、露光・現像することにより、形成することができる。
【0047】
次に、電解メッキを行い、メッキレジストを形成していない部分に、約5〜約20μm厚の電解メッキ膜を形成する。これによって、導体回路とビア導体を形成する。ここで形成するビア導体は、所謂フィルドビア、すなわち、樹脂絶縁層に形成された開口部を充填しており、また、ビア導体の上面は、同一の樹脂絶縁層上に形成されている導体パターンの上面と同一平面上に位置しているビアであることが好ましい。
【0048】
次いで、メッキレジストを除去する。次に、図5(B)に示すように、上記のレジストパターンの除去によって露出した無電解メッキ膜を除去して、導体回路19U,19Lとビア導体14U,14Lとを形成する。ここで、無電解メッキ膜の除去は、無電解メッキ膜が薄いため、エッチングレジストを用いないエッチング(以下、「クイックエッチング」ということがある。)によって除去することもできる。
【0049】
こうしたクイックエッチングは、例えば、過酸化水素/硫酸系のエッチング液を用いて行うことができる。
【0050】
以上の手順により、第一層目の樹脂絶縁層(最上層の樹脂絶縁層)と1層目の導体層、ビア導体が形成される(図5(B)参照)。ここで、1層目の導体回路は、最上層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている。なお、導体パターン(導体回路)とビア導体の表面とは、いずれも粗化することが好ましい。
【0051】
次に、2層目になる樹脂絶縁層を形成するために、上述した半硬化樹脂シートの第1面を最上層の樹脂絶縁層の第2面と第1の導体層上とに貼り付ける。続いて、図4(A)から図5(B)に示す工程を繰り返し、2層目の樹脂絶縁層と2層目の導体層、並びにビア導体を形成する。このように、樹脂絶縁層の形成からビア導体及び導体パターンの形成までの手順を繰り返し、所望の層数の樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層された積層体17U及び17Lを形成する(図6A参照)。
【0052】
引き続き、各積層体17U及び17Lの最外の樹脂絶縁層10UN及び10LN(最下層の樹脂絶縁層)及び最下層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている導体回路19UN、19LN、及びビア導体14UN,M/2+1、14UN,M/2、14LN,1、14LN,Mの上に、ソルダレジスト20L及び20Uを形成する。このとき、最下層の樹脂絶縁層表面と最下層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている導体回路表面とは、いずれも粗化されていることが好ましい。
【0053】
ここで、樹脂絶縁層表面の粗化と、導体回路表面の粗化とは、別個に行うことが好ましい。例えば、上記の樹脂絶縁層表面の粗化は、上記のように形成した積層体を過マンガン酸水溶液に浸漬して行う。また、上記の導体回路の粗化は、上述したマイクロエッチング剤「CZシリーズ」を用いて行うことができる。
【0054】
次に、ソルダレジストに露光・現像処理を行って、導体回路19UN、19LN、ビア導体14UN,M/2+1、14UN,M/2、14LN,M/2+1、14LN,M/2の表面を露出させる開口部を設ける(図6A参照)。ソルダレジストの開口部により露出した導体回路の表面及びビア導体の表面は、第2のパッド(第2の外部接続端子)となる。そして、第2の外部接続端子(第2のパッド)上に、半田部材(半田バンプ)やピンが形成され、これらを介して、他の基板と電気的に接続されることになる。
【0055】
なお、ソルダレジストに設けられる開口部は、ビア導体の表面とそのビア導体と接続している導体回路(ビアランド)の一部を露出するように形成してもよい。この場合にも、ソルダレジストの開口部により露出された導体の部分が第2のパッドを構成することになる。
【0056】
次に、金属箔11Uと、複数の樹脂絶縁層10U1〜10UNと、複数の導体層19U1〜19UN、14U1,1〜14UN,M/2+1、14U1,2〜14UN,M/2と、ソルダレジスト20Uと、からなる積層体17Uと、金属箔11Lと、複数の樹脂絶縁層10L1〜10LNと、複数の導体層19L1〜19LN、14L1,1〜14LN,M/2+1、14L1,2〜14LN,M/2と、ソルダレジスト20Lと、からなる積層体17Lとを、それぞれ支持部材SMから分離するために、超音波で接合した部分ADよりも内側に設定した切断線A1及びA2に沿って切断する(図6B参照)。これによって、上記2つの積層体を支持部材SMから分離する。
【0057】
この結果、図7(A)に示す中間基板18Lと、図7(B)に示す中間基板18Uとが得られる。このようにして、支持部材SMの両面に同時に形成した中間基板18U及び中間基板18Lを、同時に得ることができる。
【0058】
以下、中間基板18Lからプリント配線板100を製造する工程について説明する。
支持部材SMから分離された中間基板18Lでは、ソルダレジスト20Lが形成されている面と反対側の面(最上層の樹脂絶縁層の第1面)は、金属箔11Lで覆われている(図7(A)参照)。
【0059】
この金属箔11L上に、エッチング用のドライフィルムレジストをラミネートし、適当なマスクを使用して露光・現像することにより、レジストパターンPRL1〜PRLMを形成する(図8(A)参照)。
【0060】
次に、図8(B)に示すように、塩化第二銅もしくは塩化第二鉄を含むエッチング液(エッチャント)を用いて、レジストパターンを形成した以外の部分の金属箔を除去し、最上層の樹脂絶縁層の第1面上に第1のパッド15Lk(k=1〜M)を形成する。部品搭載用パッド(第1のパッド)を金属箔11Lから形成することにより、各パッドの厚みを均一にしやすくなる。また、レジストをエッチングマスクとして、第1のパッドを形成しているので、従来例とは異なり、パッド上面において、電解メッキ層をパッドから突出しないようにすることができる。
【0061】
このとき、第2の外部接続端子をエッチャントから保護するために、ソルダレジストの表面と開口部とを、上述したレジストで覆っておくことが好ましい。
【0062】
このようにして形成された第1のパッド15Lkの表面上(第1のパッドの側面を含む)に、1層以上の無電解メッキ膜からなる保護膜を形成する。保護膜を1層で形成する場合には、パッド上に、例えば、無電解Auメッキ膜又は無電解Pdメッキ膜を形成する。保護膜を2層で形成する場合には、例えば、パッド上に、無電解ニッケルメッキ膜、次に無電解金メッキ膜の順で形成する。保護膜を3層で形成する場合には、上記の無電解ニッケルメッキ膜と無電解金メッキ膜との間に無電解Pdメッキ膜を形成する。
【0063】
第1パッド上に保護膜を形成する前に、ソルダレジスト上のレジストを除去して、第2の外部接続端子上に保護膜を形成してもよい。
【0064】
第1のパッド(第1の外部接続端子)15Lk及び第2のパッド(第2の外部接続端子)の表面には、無電解メッキ膜からなる保護膜に代えて、水溶性のOSP膜(Organic Solderability Preservative)を形成することができる。保護膜やOSP膜を形成することにより、防錆及び半田付きを向上させることができる。
【0065】
また、OSP膜をパッド上に形成した場合には、OSP膜は非常に薄い単分子膜であるため、部品搭載パッド(第1のパッド)と保護膜とからなる部品実装用パッドの厚みは、実質的に上記部品搭載パッドの厚みに等しくなる。また、上記の部品搭載パッドを形成した後に、そのパッド表面に保護膜を形成することにより、パッド上面に形成された保護膜がパッドから突出することはなくなる。
【0066】
次に、第1のパッド15Lk上に、例えば、スクリーン印刷により、半田ペーストを印刷する。上記の部品搭載パッド(第1のパッド)は、上述した通りの錐台形であるため、パッドの全表面(上面と側壁)に保護膜が形成されている。このため、半田部材(半田バンプ)は、第1のパッドの上面と側壁にぬれ広がる。そして、上記第1のパッド上に形成されている半田バンプを介して、例えば、ICチップなどの電子部品が搭載される。
【0067】
次に、図8(C)に示すように、リフロー処理することで、ICチップ等を搭載するための半田バンプ30Lkを形成する。
【0068】
第2のパッド上にも上記と同様にして半田バンプを形成し、例えば、マザーボート等の他の基板と接続する。以上のようにして、本発明のプリント配線板が製造される。
なお、上述した本発明の一実施形態に係るプリント配線板において、最上層の樹脂絶縁層と第1パッドとの上には、第1パッドが露出するように開口部を設けたソルダレジストを形成してもよい。
【0069】
また、第1のパッドを、最上層の樹脂絶縁層10L1上に、図9に示す配置となるように形成し、これらを内部導体回路44Ln+1でつなぐこともできる。このように第1のパッドを形成する場合には、図10に示すPALがパッド形成領域(部品搭載用パッド形成領域)となる。このように形成したパッドは、例えば、30Lnを信号用、32Ln+1をグランド用、31Ln+1を電源用等として使用することができる。ここで、部品搭載用パッド形成領域は、全パッドを含み、面積が最小となる矩形(正方形及び長方形の双方を含む)又は円形(真円及び楕円の双方を含む)の領域である。
【0070】
図9に示すように、部品搭載用パッドは、電源用の部品搭載用パッドとグランド用の部品搭載用パッドとを有し、部品搭載用パッド形成領域内には、電源用の部品搭載用パッド同士を電気的に接続する電源用の内部導体回路41Ln、および、グランド用の部品搭載用パッド同士を電気的に接続するグランド用の内部導体回路41Ln+1の少なくとも一方が形成されていることが好ましい。
【0071】
図10は最上層の樹脂絶縁層を上から見た図であるが、この図に示すように、本発明の一実施形態に係るプリント配線板においては、最上層の樹脂絶縁層上には、パッドから基板外周方向へ引き出される導体回路が形成されていないことが好ましい。最上層の樹脂絶縁層上に配置された部品搭載用パッドはパッド形成領域に形成され、パッド形成領域以外の領域では、最上層の樹脂絶縁層の表面が露出していることが好ましい。
【0072】
上述した本願発明の一実施形態に係るプリント配線板は、従来例が有しているコア基板を備えていない。一般的には、コア基板を備えていないと、プリント配線板の剛性が低くなったり、熱膨張係数が大きくなったりする。その結果、電子部品とプリント配線板とを接続する半田バンプに大きな応力がかかり、接続信頼性に問題が生じることがある。
【0073】
しかしながら、上述した本発明の一実施形態に係るプリント配線板では、半田バンプが第1のパッドの上面と側壁上とに形成されているため、半田部材と部品搭載用のパッドとの間の結合力が高くなる。この結果、半田部材が上記部品搭載用パッドから剥がれ難くなるので、コア基板を有していなくても、ICチップとの接続信頼性には問題は生じない。なお、少なくとも第1のパッド(部品搭載用パッド)の側面は粗化されていると、パッドと半田バンプの密着強度がさらに向上する。
【0074】
また、断面形状が矩形のパッドの場合には、パッドの側面まで半田バンプが形成されてしまうと、半田バンプ間の距離が短くなる。しかし、上記の部品搭載用パッドの断面形状(最上層の樹脂絶縁層表面に垂直な方向)は、図8(B)に示すように錐台形であるので、半田バンプが第1のパッド側壁に形成されても、隣接する半田バンプ同士の間の距離を広く保つことができる。
【0075】
また、最上層の樹脂絶縁層の表面は、上述した通り凹凸面であるので、アンダーフィルの濡れ性がよくなり、アンダーフィルの充填性が向上する。また、これに伴って、アンダーフィルと最上層の樹脂絶縁層との密着強度を向上させることもできる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持部材SMと金属箔(11U,11L)とを接合することで、最初の工程から中間基板の分離工程まで、支持部材SMと金属箔(11U,11L)間の密着性を確保することができるプリント配線板を製造することができる。そのため、絶縁層の硬化・収縮と共に金属箔(11U,11L)が変形したり(例えば、歪み、撓み、折れ、曲がり等)、破損したりすることを防止できる。その結果、金属箔からなるパッド(C4パッド)とビア導体間の接続信頼性に優れるプリント配線板を製造することができる。また、金属箔からなるパッドの断線や位置精度に優れるプリント配線板を製造することもできる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)積層体及びプリント配線板の製造
(1)母材BSの製造
支持部材SMとして、厚み0.4mmのガラスエポキシ板の両面に、厚み18μmの銅箔FU及びFLが張られている両面銅張積層板SM(商品番号:MCL−E679 FGR 日立化成株式会社製)を使用した(図2(A)参照)。
【0079】
次に、図2(A)に示すように、両面銅張積層板SMの両面に、厚さ18μmの銅箔11U及び11Lの第1面を銅張積層板上に重ねた。銅箔11U及び11Lの一方の面はマット面(凹凸のある面)であり、第2面をマット面(凹凸のある面)とした。
次に、銅箔と両面銅張積層板とが各端部から20mm内側の位置で接合されるように、超音波接合装置のホーンをセットした。その後、以下の条件で、ホーンを四辺に沿って移動させることにより、銅張積層板と銅箔を超音波により接合した(図2(C)及び図2(D)参照)。
【0080】
ホーンの振幅:約12μm
ホーンの振動数:f=28kHz
ホーンの銅箔に対する圧力:p=約0〜12kgf
ホーンの銅箔に対する送り速度:v=約10mm/sec
図2(B)と図2(C)に、両面銅張積層板と金属箔の固定部分を示す。固定部分は、金属箔の端部からその中心部に向かって20mm内側の位置である。また、両者の固定幅は、2mmの幅である。
【0081】
次いで、銅箔上に市販品を用いて、エッチングレジストを形成した。その後、露光・現像処理を施して、図3(A)及び図3(B)に示すように、接合部分(AD)にかかるように、エッチングレジストをパターニングした。
【0082】
次いで、塩化第二銅等を含むエッチング液を用いたテンティングプロセスにより、エッチングレジストを形成していない部分の銅箔FU及び11U、並びに、FLと11Lとを除去した。その後、常法に従ってエッチングレジストを剥離し、母材BSを製造した。
【0083】
(2)ビルドアッププロセスによる積層体の形成
以上のようにして製造した母材BSの両面(金属箔の第2面)に、ビルドアップ配線用層間フィルム(ABFシリーズ、味の素ファインテクノ株式会社製)を貼り付け、約170℃で180分間熱硬化し、樹脂絶縁層(最上層の樹脂絶縁層)10U及び10Lを形成した。
次いで、図4(A)に示すように、ビアホール用の開口部を、炭酸ガスレーザを用いて形成した。
【0084】
次に、50g/Lの過マンガン酸溶液を用いて、50〜80℃で、1〜5分間、樹脂絶縁層の表面を粗化した。引き続き、市販のメッキ浴を用いて無電解銅メッキを行い、図4(B)に示すように、厚み約0.3〜1μmの無電解銅メッキ膜(化学銅メッキ膜、PU1及びPL1)を形成した。
【0085】
次いで、市販のメッキレジスト用のドライフィルムをラミネートした。その後、図5(A)に示すように、写真法により、メッキレジストをパターニングした。
【0086】
樹脂絶縁層上に形成した無電解銅メッキ膜を電極として電解銅メッキを行い、メッキレジストを形成していない部分の無電解銅メッキ膜上に、厚さ5〜20μmの電解銅メッキ膜を形成した。その後、メッキレジストを除去した。
【0087】
次に、図5(B)に示すように、電解銅メッキ膜間に存在している無電解銅メッキ膜を除去して、導体回路19U及び19Lとビア導体14U及び14Lを形成した。ここで形成したビア導体は、樹脂絶縁層に形成された開口部を充填し、その上面は、同一の樹脂絶縁層上に形成されている導体パターンの上面と同一平面上に位置するようにした。
【0088】
この工程を8回繰り返し、8層の樹脂絶縁層と8層の導体層とからなる積層体17U及び17Lを構成した(図6A参照)。
【0089】
(3)第2の外部接続端子(第2のパッド)の形成
8層からなる積層体17U及び17Lの最下層の樹脂絶縁層10UN、10LN(支持部材とは反対側に形成された樹脂絶縁層)の表面と、この樹脂絶縁層上に形成されている導体パターンの表面を粗化した。上記の樹脂絶縁層表面の粗化は、ここで形成した積層体17U及び17Lを過マンガン酸水溶液に浸漬して行った。また、上記の導体回路の粗化は、上述したCZシリーズを用いて行った。
【0090】
次いで、最下層の層間樹脂絶縁層と最下層の層間樹脂絶縁層上に形成されている導体回路上に、市販品を用いてソルダレジスト20U及び20Lを形成した。次に、これらのソルダレジスト上にマスクを重ね、フォトリソグラフィによって、ソルダレジスト20U及び20Lに開口部を形成した。この開口部によって露出されたビア導体の表面及び導体パターンの表面を、第2の外部接続端子とした(図6A参照)。
【0091】
(4)支持部材SMからのはく離と第1の外部接続端子(第1のパッド)形成
接合部位のすぐ内側になるように切断部位を設定し(図6BのA1及びA2参照)、その部位で切断した。次いで支持部材SMから、積層体17U及び17Lをそれぞれ剥離し、中間基板18U及び18Lとした(図7(A)及び図7(B)参照)。
【0092】
支持部材SMから剥離され、露出した積層体18Lの銅箔11L上に、市販のエッチングレジスト用ドライフィルムをラミネートした。次いで、写真法により、エッチングレジストをパターニングした(図8(A)参照)。
【0093】
上述したようにしてソルダレジスト20Lに形成された第2のパッドをエッチャントから保護するために、上述したのと同様のエッチングレジストをソルダレジスト20Lの全面及び開口部を覆うようにラミネートした。
【0094】
次に、塩化第二銅を主成分とするエッチング液を使用し、0.3〜0.8MPaの噴霧圧力下でエッチングを行い、エッチングレジストを形成していない部分の銅箔を除去して第1のパッドを形成した。第1パッド15Lk(k=1〜M)の形状は、図8(B)に示すように、最上層の層間樹脂絶縁層10L1の第1面の表面と接触している底面の面積が、電子部品を搭載する側の上面の面積よりも大きな錐台形となった。
【0095】
また、上述したとおり、最上層の樹脂絶縁層は銅箔の凹凸を有する面上に形成した。このため、銅箔をエッチングで除去することにより、最上層の樹脂絶縁層の第1面の表面には、銅箔の凹凸面から転写された凹凸が形成された。
【0096】
次に図8(B)に示すように、エッチングレジストを除去し、複数の部品搭載パッド(第1のパッド)からなるパッド群を形成した。銅箔11Lから部品搭載パッド(第1のパッド)を形成したため、各パッドの厚みがほぼ均一となった。また、レジストをエッチングマスクとして、第1のパッドを形成しているので、パッド上面において、パッドから突出した電解メッキ層は形成されなかった。
【0097】
(5)パッドの表面処理
第1のパッド形成後、各第1及び各第2のパッドの表面を、OSP(Organic Solderbility Preservative)で処理し、保護膜を形成した。これによって、パッド上に非常に薄い単分子膜の保護膜が形成され、上記部品搭載用パッド(第1のパッド)と保護膜とからなる部品実装用パッドの厚みは、実質的に第1パッドの厚みに等しいものとなった。また、上記第1のパッドの形成後、その表面に保護膜を形成したため、パッド上面で、パッドから突出する保護膜は形成されなかった。
【0098】
(6)半田バンプの形成
次に、図8(C)に示すように、スクリーン印刷法により、上記第1と第2のパッド上に半田ペーストを印刷し、リフローすることで、上記第1と第2のパッド上に半田バンプを形成した(第2のパッド上の半田バンプは、図8(C)では省略した)。上記第1のパッドの全表面(上面と側壁)に保護膜が形成されているので、半田バンプが、第1のパッドの上面と側壁にぬれ広がり、この部分に形成された。
【0099】
本願の第1実施例はコア基板を有していないが、半田バンプが上記第1のパッドの上面と側壁上とに形成されたため、半田バンプと第1のパッドとの間の結合力が高くなった。この結果、半田バンプが第1のパッドから剥がれ難くなった。
また、第1のパッドの断面形状が錐台形であるため、隣接する半田バンプ間の距離はパッドの距離とほぼ同じであり、広く保たれた。
【0100】
また、実施例1では、最上層の樹脂絶縁層と第1パッドとの上に、上記第1パッドを露出させる開口部を有するソルダレジストを形成しなかった。このため、ソルダレジストを有しているプリント配線板と比較すると、最上層の樹脂絶縁層表面とICチップとの間の距離が大きくなった。この結果、ICチップとプリント配線板間とを封止するアンダーフィルの充填性が良好となった。
【0101】
また、最上層の樹脂絶縁層の表面が上述した通り凹凸面であるので、アンダーフィルの濡れ性がよくなり、アンダーフィルの充填性が向上した。また、これに伴って、アンダーフィルと最上層の樹脂絶縁層との密着強度も向上した。
【0102】
(実施例2)
実施例1で第1及び第2のパッド双方の上に保護膜として形成したOSP膜に代えて、第1及び第2のパッド双方の表面上に、無電解ニッケルメッキ膜、無電解金メッキ膜の順でメッキ膜を形成し、保護膜とした。上記第1のパッドの上面と側壁とに、この保護膜を形成した。
【0103】
それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。本実施例では、各第1のパッドに形成された保護膜の厚みを均一にするために、保護膜の形成を、電解メッキではなく無電解メッキにより行った。また、電子部品実装用パッドは、電子部品搭載用パッドと無電解メッキ膜からなる保護膜とで形成した。この結果、電子部品の電極と電子部品実装用パッド間の距離が均一となった。
【0104】
(実施例3)
実施例1において、第1のパッドの形成に使用した銅箔11U及び11Lに代えて、第1面が平滑で第2面がマット面となっている銅箔を使用した。また、第1パッド形成後であって、エッチングレジストの剥膜前に第1パッドの側面を粗化した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。その結果、実施例4の第1のパッドは、上面が平滑な面で、側壁が凹凸を有する面となった。
【0105】
(実施例4)
実施例1において形成した保護膜を、第1及び第2のパッドのいずれの上にも形成しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
第1パッドは銅箔のみで形成したため、第1の各パッドの厚みは、均一になった。その結果、ICなどの電子部品の各電極と各第1パッド間の距離を一定に保つことができるとともに、半田バンプの形成に使用する半田の量を少量にすることが可能となった。この結果、プリント配線板と電子部品間の接続抵抗を小さくすることができた。
【0106】
(実施例5)
実施例5において、半田バンプと第1のパッド間の接合強度を向上させるため、CZ処理を行い、第1パッドの表面を粗化して、第1のパッドの上面と側壁に凹凸面を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
【0107】
(実施例6)
実施例5において、第1及び第2のパッドの双方の上に、無電解金メッキ膜からなる保護膜を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
【0108】
(実施例7)
実施例5において、第1及び第2のパッドの双方の上に、OSPを用いて保護膜を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明に係る積層体の製造方法は、接続信頼性に優れた薄型のプリント配線板を歩留まりよく製造するのに適している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。より詳細には、導体回路と絶縁層とが交互に積層されたプリント配線板であって、その一面側にIC等の電子部品搭載用のパッドを備える積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は高機能化が進む一方で小型化、薄型化が要請されている。これに伴って、ICチップやLSI等の電子部品では高密度集積化が急速に進み、これらの電子部品を搭載するパッケージ基板においても、さらに配線密度を上げるとともに、端子数を増加するという要請が大きくなっている。
【0003】
こうした要請に応えるために、高分子材料で構成された誘電体層と導体層とが交互積層され、上記のようなパッドを備えるプリント配線基板の製造方法として、(a)2つの金属箔が密着してなる金属箔密着体を用意し、その一方の表面に誘電体層と導体層を交互に積層して積層シート体を形成する工程と、(b)積層シート体の周囲部を除去し、片方の金属箔が積層シート体に付着した状態で前記金属箔密着体を剥離する工程と、(c)金属箔の表面をマスク材で覆い、金属端子パッドを形成する領域が開口するようにパターン形成する工程と、(d)電解メッキ処理を行い、金属端子パッドに電解メッキ表面層を形成する工程と、(e)マスク材を除去した後に、電解メッキ表面層をエッチングレジストとして金属箔のエッチング処理を行う工程と、を備えるプリント配線板の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ICチップを実装するプリント配線板として、ガラスエポキシなどの基板の両面に層間樹脂絶縁層と導体層を交互に積層するプリント配線板が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−19591
【特許文献2】特開平10−41610
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2006−19591の方法(以下、「従来例1」という。)で製造されるプリント配線板においては、金属箔の上に電解メッキによって電解メッキ層を形成し、この電解メッキ層をエッチングレジストとして使用して、エッチングによって導体回路を形成する。そして、この導体回路を、半導体素子搭載用のパッドとして使用する。
【0007】
この製造方法では、パッド上に形成されている電解メッキ層が電解メッキで形成されている。電解メッキは、パターンの粗密やパッドが形成されている位置(基板の中央と端)等により電解メッキ膜の厚みが異なるので、電解メッキ層の厚みは各パッド上で異なることとなる。電解メッキ層の厚みが各パッドで異なると、各パッドにおいて、電子部品の電極とパッド上に形成されている電解メッキ層との間の距離が異なることとなる。
【0008】
電子部品とプリント配線板は、熱膨張係数が異なるため、その差に起因する応力が発生する。その応力は、通常、電子部品を実装する半田バンプで緩和される。しかしながら、電子部品とパッド間の距離が、各パッド間で異なると、特定の半田バンプに応力が集中しやすくなるので、その半田バンプは疲労劣化しやすくなる。その結果、電子部品の実装歩留まりや実装信頼性が低下することとなる。
【0009】
従来例1の方法では、電解メッキ層941、942をエッチングレジストとして、パッド921、922を形成しているので、電解メッキ層の一部94A1、94B1がパッドから突出することとなる(図11参照)。突出した電解メッキ層94A1及び94B1は、下地となる導体回路921に固定されていないので、その部分が比較的自由に動くことにより、疲労破壊が起こりやすくなる。そして、ここで生じた疲労破壊を起点として、パッド上に形成されたバンプにクラックが発生しやすくなるという問題がある。
【0010】
また、電解メッキ層941上に半田バンプを形成すると、パッド921から突出した電解メッキ層94A1及び94B1上にも、半田バンプは形成されることとなる。その部分に形成された半田バンプは、電解メッキ層と同様にパッドに固定されていないため、半田バンプが動きやすくなる。そのため、半田バンプ自体やアンダーフィルにクラックが入り、IC等の電子部品が破壊されやすくなるという問題も生じる。
【0011】
また、従来例1の方法の場合、金属箔密着体としては、例えば、2つの銅箔を、金属メッキ層(例えば、Crメッキ層)を介して密着させたものが用いられている。しかしながら、金属メッキ層を介して密着させただけでは、2つの金属箔間の接合強度が弱い。このため、プリント配線板の製造工程における熱処理などで、両者間で剥がれが発生することがある。そして、その剥がれが基点となって、金属箔と支持部材間で剥がれが発生して、メッキ液などがプリント配線板内に浸み込んだりする。また、2つの金属箔間の接合強度が弱いため、金属箔密着体上にビルドアップ配線層を形成すると、プリント配線板側の金属箔が折れたり、破れたりすることがある。
【0012】
特開平10−41610(以下、「従来例2」という。)のプリント配線板は、基板を有するため、プリント配線板の厚みが厚くなってしまうという問題がある。このため、厚みが薄く、長期に安定してIC等の電子部品を搭載できるプリント配線板が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、金属箔を支持部材に超音波で固定する工程;前記金属箔上に樹脂絶縁層を形成する工程;前記樹脂絶縁層にビア導体用の開口部を形成する工程;前記樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程;前記開口部に、ビア導体を形成する工程;及び支持部材と金属箔とを分離する工程;を含む積層体の製造方法である。
【0014】
ここで、前記導体回路の形成と前記ビア導体の形成とは同時に行われていることが好ましく、前記金属箔と前記支持部材との固定は、前記金属箔の外周部を前記支持部材に接合することによって行われることが好ましい。
本発明のプリント配線板の製造方法においては、さらに、前記樹脂絶縁層上及び前記導体回路上に、上層の樹脂絶縁層を形成する工程;前記上層樹脂絶縁層に上層のビア導体形成用の開口部を形成する工程;前記上層樹脂絶縁層上に上層の導体回路を形成する工程;及び前記上層の開口部に、前記導体回路と前記上層の導体回路とを電気的に接続する上層のビア導体を形成する工程;を含むことが好ましい。また、前記上層の導体回路の形成と前記ビア導体の形成は同時に行われていることが好ましい。
【0015】
前記支持部材は、金属板であるか、又は支持母材と前記支持母材の表面を被覆する金属とからなる板状部材であることが好ましい。ここで、「支持母材」とは、その表面を金属で被覆することによって支持部材を形成する部材をいい、具体的には、ガラス−エポキシ樹脂板その他の樹脂製の板状部材を意味する。ここで、前記金属が金属箔であることが好ましく、また、前記支持部材は銅張積層板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層体の製造方法によれば、接続信頼性に優れた薄型のプリント配線板を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の積層体の製造方法により製造されたプリント配線板の一例の構造を示す図である。
【図2】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その1)である。
【図3】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その2)である。
【図4】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その3)である。
【図5】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その4)である。
【図6A】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その5)である。
【図6B】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その6)である。
【図7】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その7)である。
【図8】図1の積層体の製造工程を示す工程図(その8)である。
【図9】図1のプリント配線板の最外層に設けられたパッドとパッド間の配線を模式的に示す図(その1)である。
【図10】図1のプリント配線板の最外層に設けられたパッド形成領域、上記パッド形成領域に形成されたパッド及びパッド間の配線を模式的に示す図(その2)である。
【図11】従来の方法で形成されたプリント配線板及びパッドの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の積層体の製造方法により製造されるプリント配線板の一例を、図1〜10を参照しつつ、一実施形態として詳細に説明する。また、図1〜8までは、後述するビア導体を2列で形成した場合を例に説明を行っている。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係るプリント配線板100は、図1(A)に示すように、(a)樹脂絶縁層10Li(j=1〜N)と導体回路(導体パターン)19Liを備える導体層とが交互に積層され、異なる導体層に形成されている導体回路間を接続する層間接続用のビア導体(後述する第1のパッド15Lk(k=1〜M)に対応して設けられたビア導体14L1,1〜14LN,Mを含む)とからなる積層体18Lと、(b)積層体18Lの+Z方向側表面(最上層の樹脂絶縁層10L1の第1面)に形成された第1のパッド(第1の外部接続端子)15Lkと、(c)前記パッド15Lk上に形成された半田部材(半田バンプ)30Lkとを備えている。また、プリント配線板100は、(d)積層体18Lの−Z方向側表面(最下層の樹脂絶縁層の第2面)に形成されたソルダレジスト20Lを備えている。
【0020】
なお、プリント配線板100では、半田部材30Lkが形成されている第1のパッド15Lkは、図1(B)に示すように、最上層の樹脂絶縁層10L1の第1面上に2次元的に配置され、パッド群を形成している。
【0021】
また、ソルダレジストは複数の開口部を有している。その開口部は、最下層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている導体回路19LNの表面もしくはビア導体の表面を部分的に開口している。ソルダレジストに形成されている開口部は、ビア導体の表面とそのビア導体に接続している導体回路の一部(ビアランド)を部分的に開口している場合もある。開口部により露出している導体回路(最下層の導体回路)やビア導体の部分が第2のパッド(第2の外部接続端子)となる。ここで、各樹脂絶縁層の第1面は、第1のパッドが形成されている側の面である。各樹脂絶縁層の第2面は、第1面とは反対側の面であって、第2のパッドが形成されている側の面である。
【0022】
積層体18Lは、図2(A)に示すような支持部材(以下、「支持板」ということがある。)SM上に、アディティブ法もしくはサブトラクティブ法によって形成される。最外層にソルダレジスト20L又は20Uを形成した後(図6B参照)、所定の位置で積層体を切断し、支持部材SMから剥離させる。
【0023】
この剥離によって、ソルダレジスト20U又は20Lが形成されているのとは反対側の最外層の樹脂絶縁層が、最上層の樹脂絶縁層10U1又10L1となる。最上層の樹脂絶縁の第1面(支持部材SMと対向する面、プリント配線板100の外部に露出する側の面)に形成されている金属箔から部品搭載用パッド(第1の外部接続端子)15L1〜15LMが形成される(図1(A)及び図1(B)参照)。
【0024】
部品搭載用パッドは錐台形となっていることが好ましく、そのX−Z断面は、図1(A)に示すように、最上層の樹脂絶縁層10L1と接触している底面の面積が、前記電子部品を搭載する側の上面の面積よりも大きくなっている。
【0025】
保護膜は、パッド形成後に、部品搭載用パッド上に無電解メッキ膜等により形成する。このため、保護膜の周辺部94A1及び94B1が第1のパッドから突出すことはなくなる(図11参照)。
【0026】
前記半田部材は、上記のような錐台形となっているパッドの上に形成され、前記第1のパッドの上面と側面上を覆うようになっている(図1(A)参照)。
【0027】
次に、上記の構成を有する電子部品の製造について、各要素の素材に言及しつつ、説明する。
まず、支持部材SMを用意する(図2(A)参照)。この支持部材SMは、絶縁部材Sの両面に導体層FU及びFLが積層されたものである。上記の支持部材SMを構成する導体層FL及びFUは、約数μmから数十μm程度の厚みの金属箔である。このように、支持部材の表面には、金属層が形成されていることが好ましい。厚みの均一性から、金属層は金属箔であることがより好ましい。
【0028】
上記の支持部材SMとしては、絶縁部材Sの表面に上記の厚みの導体層を接着剤等で固定したものを使用することができる。
【0029】
前記絶縁部材Sとしては、例えば、ガラス基材ビスマレイミドトリアジン樹脂含浸積層板、ガラス基材ポリフェニレンエーテル樹脂含浸積層板、ガラス基材ポリイミド樹脂含浸積層板等を挙げることができ、これらの両面に、銅箔その他の金属箔を周知の方法で固定してもよい。
【0030】
また、市販されている両面銅張積層板や片面5銅張積層板を使用することもできる。こうした市販品としては、例えば、MCL−E679 FGR(東京都新宿区所在、日立化成工業株式会社製)等を挙げることができる。具体的には、板厚0.2〜0.6mmのガラスエポキシ積層板11の両面に厚み3〜20μmの銅箔12が張られている基板を使用することができる。また、支持部材SMとして金属板を使用することもできる。
【0031】
ついで、図2(B)に示すように、金属箔11U又は11Lの第1面が導体層FU又はFLと対向するように、これらを導体層FU又はFLの上に重ねる。金属箔としては、例えば、所望の厚みの銅箔、ニッケル箔、チタン箔等を用いることができる。こうした金属箔の第2面(第1面と反対側)は、マット面であることが好ましい。例えば、金属箔11U又は11Lとして銅箔を使用する場合、約3μm〜約35μm厚みのものを使用することが好ましい。
【0032】
次いで、図2(C)及び図2(D)に示すように、導体層FU又はFLと上記の金属箔とは、支持部材SMの周辺部(ADの部分)で互いに接合することにより固定されることが好ましい。本実施形態における導体層と金属箔との固定部分は、金属箔の端部からその中心部に向かって、約10〜約30mm内側の位置であることが好ましく、約20mm内側の位置であることがさらに好ましい。また、両者の固定幅は、約1〜約5mmの幅とすることが好ましく、約2mmの幅とすることがさらに好ましい。
【0033】
導体層(支持板)と金属箔との固定(接合)は、超音波を用いて行う。超音波による固定が密着強度や簡便性の点で優れる。超音波を用いて固定するに際して、超音波接合装置を使用する場合には、支持部材SMの端部から、上述したような所望の位置に、所望の幅を持った所望の形状で固定することができる。後述する剥離工程において、導体層と金属箔との剥離に支障をきたさない限り、長方形(図2(D)参照)や格子状等(図示せず)に固定することができる。
【0034】
導体層と金属箔とを固定すると、後述する層間における樹脂絶縁層の形成や導体層の形成の際に、以下のような問題の発生を抑えることができる。樹脂絶縁層形成時には、加熱、放冷が繰り返されるため、樹脂絶縁層は伸張と収縮を繰り返すことになる。そして、樹脂絶縁層は金属箔上に形成されていることから、金属箔は樹脂絶縁層に追従して伸張・収縮を繰り返すことになる。その結果、金属箔に歪や撓みが生じやすくなる。また、甚だしい歪や撓みは折れや曲がりを引き起こし、金属箔が破損する場合もある。一方、導体層と金属箔とを固定しておくことにより、こうした問題が生じることを防止することが可能となる。
【0035】
また、メッキ処理を用いて導体層の形成を行う場合に、以下のような問題の発生を抑制することもできる。メッキ処理を行う場合には、メッキ液などの液中に基板を浸漬する必要がある。このときに導体層と金属箔とを固定しておかないと、両者の間にメッキ液が染み込み、両者の間で剥がれが発生する可能性がある。これに対し、導体層と金属箔とを固定しておくことにより、こうした問題が生じることを防止することが可能となる。
【0036】
次に、図3(A)及び図3(B)に示すように、接合部ADにかかるように、エッチング用レジスト12U及び12Lを形成する。図3(B)は、エッチングレジスト12Uを形成した後の積層板の平面図である。エッチングレジスト12Uは、超音波溶接部分ADに一部重なるように形成されている。こうしたレジストの形成には、市販のドライフィルムレジスト又は液体レジストを使用することができる。
【0037】
ついで、支持部材の端部に存在している導体層FU及び金属箔11U、FL及び11Lの外周部分をそれぞれ、周知の方法を用いたエッチング等を行って除去する。その後、常法に従ってエッチングレジストを除去する(図3(C)参照)。
【0038】
2つの金属箔11U及び11Lのそれぞれの第2面は、平滑面ではなくマット面であることが好ましく、所望により粗化することもできる。金属箔の第2面が平滑面の場合には、後述する樹脂絶縁層との密着性を向上させるために粗化することが好ましい。こうした粗化は、アルカリを使用する黒化処理や適当なエッチング液を使用するエッチング等によって行うことができる。エッチング液としては、マイクロエッチング剤「CZシリーズ」(兵庫県尼崎市所在、メック株式会社製)等を使用することができる。
以上のようにして、母材BSを形成する(図3(C)参照)。
【0039】
次に、この母材BSに重ねた各金属箔11U及び11Lの第2面(マット面)に、樹脂絶縁層を形成するため、樹脂絶縁層10U1及び10L1の第1面をそれぞれ貼り付ける(図4(A)参照)。樹脂絶縁層としては、層間絶縁用フィルムやプリプレグその他の半硬化樹脂シートを使用することができる。こうした半硬化樹脂シートを使用する以外に、未硬化の液体樹脂を上述した金属箔上にスクリーン印刷することによって樹脂絶縁層を形成してもよい。いずれを使用した場合でも、熱硬化により層間樹脂絶縁層(最上層の樹脂絶縁層10L1又は10U1)が形成される(図4(A)参照)。
【0040】
こうした層間樹脂絶縁用フィルムとしては、例えば、ビルドアップ配線板用層間フィルム「ABFシリーズ」(神奈川県川崎市所在、味の素ファインテクノ株式会社製)等を例示することができる。プリプレグとしては、日立化成工業社製の各種製品を使用することができる。
【0041】
樹脂絶縁層の厚みは、約30μm〜約100μmであることが好ましい。樹脂絶縁層は、少なくとも1層が充填材(ガラスクロス及びガラス長繊維を除く)を含む樹脂で形成されることが好ましい。特に、プリント配線板100が5層以上の樹脂絶縁層を有する場合には、全ての樹脂絶縁層が、充填材(ガラスクロス及びガラス長繊維を除く)を含むものであることが好ましい。充填剤としては無機フィラーが好ましく、ガラス繊維の場合には短繊維のものであることが好ましい。
【0042】
プリント配線板100が4層以下の樹脂絶縁層を有する場合には、全樹脂絶縁層の内、1層又は2層がガラスクロスやガラス長繊維などの心材と樹脂とを含む樹脂絶縁層であり、残りの樹脂絶縁層が、ガラスクロスやガラス長繊維を除く充填材と樹脂とを含む樹脂絶縁層であることが好ましい。
【0043】
次に、図4(A)に示すように、樹脂絶縁層10U1及び10L1に、ビアホール用の開口部を、レーザを用いて形成する。開口部の形成に使用できるレーザとしては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、UVレーザ等を挙げることができる。なお、レーザで開口部を形成する場合には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の保護フィルムを使用してもよい。
【0044】
次に、導体層との密着性を高めるために、樹脂絶縁層の表面を粗化することが好ましい。樹脂絶縁層の表面の粗化は、例えば、過マンガン酸水溶液に浸漬することによって行うことができる。
次に、樹脂絶縁層の表面に触媒核を形成する。
【0045】
次いで、図4(B)に示すように、市販のメッキ浴を用いて、数μm程度の薄い無電解メッキ膜PU1及びPL1を形成する。ここで形成する無電解メッキ膜としては、無電解銅メッキ膜が好ましい。
【0046】
次に、図5(A)に示すように、無電解メッキ膜上にメッキレジストパターンRU1及びRL1を形成する。メッキレジストパターンRU1及びRL1は、後述するビア導体形成部分及び導体回路形成部分以外の部分に形成するが、例えば、メッキレジスト用のドライフィルムをラミネートし、露光・現像することにより、形成することができる。
【0047】
次に、電解メッキを行い、メッキレジストを形成していない部分に、約5〜約20μm厚の電解メッキ膜を形成する。これによって、導体回路とビア導体を形成する。ここで形成するビア導体は、所謂フィルドビア、すなわち、樹脂絶縁層に形成された開口部を充填しており、また、ビア導体の上面は、同一の樹脂絶縁層上に形成されている導体パターンの上面と同一平面上に位置しているビアであることが好ましい。
【0048】
次いで、メッキレジストを除去する。次に、図5(B)に示すように、上記のレジストパターンの除去によって露出した無電解メッキ膜を除去して、導体回路19U,19Lとビア導体14U,14Lとを形成する。ここで、無電解メッキ膜の除去は、無電解メッキ膜が薄いため、エッチングレジストを用いないエッチング(以下、「クイックエッチング」ということがある。)によって除去することもできる。
【0049】
こうしたクイックエッチングは、例えば、過酸化水素/硫酸系のエッチング液を用いて行うことができる。
【0050】
以上の手順により、第一層目の樹脂絶縁層(最上層の樹脂絶縁層)と1層目の導体層、ビア導体が形成される(図5(B)参照)。ここで、1層目の導体回路は、最上層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている。なお、導体パターン(導体回路)とビア導体の表面とは、いずれも粗化することが好ましい。
【0051】
次に、2層目になる樹脂絶縁層を形成するために、上述した半硬化樹脂シートの第1面を最上層の樹脂絶縁層の第2面と第1の導体層上とに貼り付ける。続いて、図4(A)から図5(B)に示す工程を繰り返し、2層目の樹脂絶縁層と2層目の導体層、並びにビア導体を形成する。このように、樹脂絶縁層の形成からビア導体及び導体パターンの形成までの手順を繰り返し、所望の層数の樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層された積層体17U及び17Lを形成する(図6A参照)。
【0052】
引き続き、各積層体17U及び17Lの最外の樹脂絶縁層10UN及び10LN(最下層の樹脂絶縁層)及び最下層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている導体回路19UN、19LN、及びビア導体14UN,M/2+1、14UN,M/2、14LN,1、14LN,Mの上に、ソルダレジスト20L及び20Uを形成する。このとき、最下層の樹脂絶縁層表面と最下層の樹脂絶縁層の第2面上に形成されている導体回路表面とは、いずれも粗化されていることが好ましい。
【0053】
ここで、樹脂絶縁層表面の粗化と、導体回路表面の粗化とは、別個に行うことが好ましい。例えば、上記の樹脂絶縁層表面の粗化は、上記のように形成した積層体を過マンガン酸水溶液に浸漬して行う。また、上記の導体回路の粗化は、上述したマイクロエッチング剤「CZシリーズ」を用いて行うことができる。
【0054】
次に、ソルダレジストに露光・現像処理を行って、導体回路19UN、19LN、ビア導体14UN,M/2+1、14UN,M/2、14LN,M/2+1、14LN,M/2の表面を露出させる開口部を設ける(図6A参照)。ソルダレジストの開口部により露出した導体回路の表面及びビア導体の表面は、第2のパッド(第2の外部接続端子)となる。そして、第2の外部接続端子(第2のパッド)上に、半田部材(半田バンプ)やピンが形成され、これらを介して、他の基板と電気的に接続されることになる。
【0055】
なお、ソルダレジストに設けられる開口部は、ビア導体の表面とそのビア導体と接続している導体回路(ビアランド)の一部を露出するように形成してもよい。この場合にも、ソルダレジストの開口部により露出された導体の部分が第2のパッドを構成することになる。
【0056】
次に、金属箔11Uと、複数の樹脂絶縁層10U1〜10UNと、複数の導体層19U1〜19UN、14U1,1〜14UN,M/2+1、14U1,2〜14UN,M/2と、ソルダレジスト20Uと、からなる積層体17Uと、金属箔11Lと、複数の樹脂絶縁層10L1〜10LNと、複数の導体層19L1〜19LN、14L1,1〜14LN,M/2+1、14L1,2〜14LN,M/2と、ソルダレジスト20Lと、からなる積層体17Lとを、それぞれ支持部材SMから分離するために、超音波で接合した部分ADよりも内側に設定した切断線A1及びA2に沿って切断する(図6B参照)。これによって、上記2つの積層体を支持部材SMから分離する。
【0057】
この結果、図7(A)に示す中間基板18Lと、図7(B)に示す中間基板18Uとが得られる。このようにして、支持部材SMの両面に同時に形成した中間基板18U及び中間基板18Lを、同時に得ることができる。
【0058】
以下、中間基板18Lからプリント配線板100を製造する工程について説明する。
支持部材SMから分離された中間基板18Lでは、ソルダレジスト20Lが形成されている面と反対側の面(最上層の樹脂絶縁層の第1面)は、金属箔11Lで覆われている(図7(A)参照)。
【0059】
この金属箔11L上に、エッチング用のドライフィルムレジストをラミネートし、適当なマスクを使用して露光・現像することにより、レジストパターンPRL1〜PRLMを形成する(図8(A)参照)。
【0060】
次に、図8(B)に示すように、塩化第二銅もしくは塩化第二鉄を含むエッチング液(エッチャント)を用いて、レジストパターンを形成した以外の部分の金属箔を除去し、最上層の樹脂絶縁層の第1面上に第1のパッド15Lk(k=1〜M)を形成する。部品搭載用パッド(第1のパッド)を金属箔11Lから形成することにより、各パッドの厚みを均一にしやすくなる。また、レジストをエッチングマスクとして、第1のパッドを形成しているので、従来例とは異なり、パッド上面において、電解メッキ層をパッドから突出しないようにすることができる。
【0061】
このとき、第2の外部接続端子をエッチャントから保護するために、ソルダレジストの表面と開口部とを、上述したレジストで覆っておくことが好ましい。
【0062】
このようにして形成された第1のパッド15Lkの表面上(第1のパッドの側面を含む)に、1層以上の無電解メッキ膜からなる保護膜を形成する。保護膜を1層で形成する場合には、パッド上に、例えば、無電解Auメッキ膜又は無電解Pdメッキ膜を形成する。保護膜を2層で形成する場合には、例えば、パッド上に、無電解ニッケルメッキ膜、次に無電解金メッキ膜の順で形成する。保護膜を3層で形成する場合には、上記の無電解ニッケルメッキ膜と無電解金メッキ膜との間に無電解Pdメッキ膜を形成する。
【0063】
第1パッド上に保護膜を形成する前に、ソルダレジスト上のレジストを除去して、第2の外部接続端子上に保護膜を形成してもよい。
【0064】
第1のパッド(第1の外部接続端子)15Lk及び第2のパッド(第2の外部接続端子)の表面には、無電解メッキ膜からなる保護膜に代えて、水溶性のOSP膜(Organic Solderability Preservative)を形成することができる。保護膜やOSP膜を形成することにより、防錆及び半田付きを向上させることができる。
【0065】
また、OSP膜をパッド上に形成した場合には、OSP膜は非常に薄い単分子膜であるため、部品搭載パッド(第1のパッド)と保護膜とからなる部品実装用パッドの厚みは、実質的に上記部品搭載パッドの厚みに等しくなる。また、上記の部品搭載パッドを形成した後に、そのパッド表面に保護膜を形成することにより、パッド上面に形成された保護膜がパッドから突出することはなくなる。
【0066】
次に、第1のパッド15Lk上に、例えば、スクリーン印刷により、半田ペーストを印刷する。上記の部品搭載パッド(第1のパッド)は、上述した通りの錐台形であるため、パッドの全表面(上面と側壁)に保護膜が形成されている。このため、半田部材(半田バンプ)は、第1のパッドの上面と側壁にぬれ広がる。そして、上記第1のパッド上に形成されている半田バンプを介して、例えば、ICチップなどの電子部品が搭載される。
【0067】
次に、図8(C)に示すように、リフロー処理することで、ICチップ等を搭載するための半田バンプ30Lkを形成する。
【0068】
第2のパッド上にも上記と同様にして半田バンプを形成し、例えば、マザーボート等の他の基板と接続する。以上のようにして、本発明のプリント配線板が製造される。
なお、上述した本発明の一実施形態に係るプリント配線板において、最上層の樹脂絶縁層と第1パッドとの上には、第1パッドが露出するように開口部を設けたソルダレジストを形成してもよい。
【0069】
また、第1のパッドを、最上層の樹脂絶縁層10L1上に、図9に示す配置となるように形成し、これらを内部導体回路44Ln+1でつなぐこともできる。このように第1のパッドを形成する場合には、図10に示すPALがパッド形成領域(部品搭載用パッド形成領域)となる。このように形成したパッドは、例えば、30Lnを信号用、32Ln+1をグランド用、31Ln+1を電源用等として使用することができる。ここで、部品搭載用パッド形成領域は、全パッドを含み、面積が最小となる矩形(正方形及び長方形の双方を含む)又は円形(真円及び楕円の双方を含む)の領域である。
【0070】
図9に示すように、部品搭載用パッドは、電源用の部品搭載用パッドとグランド用の部品搭載用パッドとを有し、部品搭載用パッド形成領域内には、電源用の部品搭載用パッド同士を電気的に接続する電源用の内部導体回路41Ln、および、グランド用の部品搭載用パッド同士を電気的に接続するグランド用の内部導体回路41Ln+1の少なくとも一方が形成されていることが好ましい。
【0071】
図10は最上層の樹脂絶縁層を上から見た図であるが、この図に示すように、本発明の一実施形態に係るプリント配線板においては、最上層の樹脂絶縁層上には、パッドから基板外周方向へ引き出される導体回路が形成されていないことが好ましい。最上層の樹脂絶縁層上に配置された部品搭載用パッドはパッド形成領域に形成され、パッド形成領域以外の領域では、最上層の樹脂絶縁層の表面が露出していることが好ましい。
【0072】
上述した本願発明の一実施形態に係るプリント配線板は、従来例が有しているコア基板を備えていない。一般的には、コア基板を備えていないと、プリント配線板の剛性が低くなったり、熱膨張係数が大きくなったりする。その結果、電子部品とプリント配線板とを接続する半田バンプに大きな応力がかかり、接続信頼性に問題が生じることがある。
【0073】
しかしながら、上述した本発明の一実施形態に係るプリント配線板では、半田バンプが第1のパッドの上面と側壁上とに形成されているため、半田部材と部品搭載用のパッドとの間の結合力が高くなる。この結果、半田部材が上記部品搭載用パッドから剥がれ難くなるので、コア基板を有していなくても、ICチップとの接続信頼性には問題は生じない。なお、少なくとも第1のパッド(部品搭載用パッド)の側面は粗化されていると、パッドと半田バンプの密着強度がさらに向上する。
【0074】
また、断面形状が矩形のパッドの場合には、パッドの側面まで半田バンプが形成されてしまうと、半田バンプ間の距離が短くなる。しかし、上記の部品搭載用パッドの断面形状(最上層の樹脂絶縁層表面に垂直な方向)は、図8(B)に示すように錐台形であるので、半田バンプが第1のパッド側壁に形成されても、隣接する半田バンプ同士の間の距離を広く保つことができる。
【0075】
また、最上層の樹脂絶縁層の表面は、上述した通り凹凸面であるので、アンダーフィルの濡れ性がよくなり、アンダーフィルの充填性が向上する。また、これに伴って、アンダーフィルと最上層の樹脂絶縁層との密着強度を向上させることもできる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持部材SMと金属箔(11U,11L)とを接合することで、最初の工程から中間基板の分離工程まで、支持部材SMと金属箔(11U,11L)間の密着性を確保することができるプリント配線板を製造することができる。そのため、絶縁層の硬化・収縮と共に金属箔(11U,11L)が変形したり(例えば、歪み、撓み、折れ、曲がり等)、破損したりすることを防止できる。その結果、金属箔からなるパッド(C4パッド)とビア導体間の接続信頼性に優れるプリント配線板を製造することができる。また、金属箔からなるパッドの断線や位置精度に優れるプリント配線板を製造することもできる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)積層体及びプリント配線板の製造
(1)母材BSの製造
支持部材SMとして、厚み0.4mmのガラスエポキシ板の両面に、厚み18μmの銅箔FU及びFLが張られている両面銅張積層板SM(商品番号:MCL−E679 FGR 日立化成株式会社製)を使用した(図2(A)参照)。
【0079】
次に、図2(A)に示すように、両面銅張積層板SMの両面に、厚さ18μmの銅箔11U及び11Lの第1面を銅張積層板上に重ねた。銅箔11U及び11Lの一方の面はマット面(凹凸のある面)であり、第2面をマット面(凹凸のある面)とした。
次に、銅箔と両面銅張積層板とが各端部から20mm内側の位置で接合されるように、超音波接合装置のホーンをセットした。その後、以下の条件で、ホーンを四辺に沿って移動させることにより、銅張積層板と銅箔を超音波により接合した(図2(C)及び図2(D)参照)。
【0080】
ホーンの振幅:約12μm
ホーンの振動数:f=28kHz
ホーンの銅箔に対する圧力:p=約0〜12kgf
ホーンの銅箔に対する送り速度:v=約10mm/sec
図2(B)と図2(C)に、両面銅張積層板と金属箔の固定部分を示す。固定部分は、金属箔の端部からその中心部に向かって20mm内側の位置である。また、両者の固定幅は、2mmの幅である。
【0081】
次いで、銅箔上に市販品を用いて、エッチングレジストを形成した。その後、露光・現像処理を施して、図3(A)及び図3(B)に示すように、接合部分(AD)にかかるように、エッチングレジストをパターニングした。
【0082】
次いで、塩化第二銅等を含むエッチング液を用いたテンティングプロセスにより、エッチングレジストを形成していない部分の銅箔FU及び11U、並びに、FLと11Lとを除去した。その後、常法に従ってエッチングレジストを剥離し、母材BSを製造した。
【0083】
(2)ビルドアッププロセスによる積層体の形成
以上のようにして製造した母材BSの両面(金属箔の第2面)に、ビルドアップ配線用層間フィルム(ABFシリーズ、味の素ファインテクノ株式会社製)を貼り付け、約170℃で180分間熱硬化し、樹脂絶縁層(最上層の樹脂絶縁層)10U及び10Lを形成した。
次いで、図4(A)に示すように、ビアホール用の開口部を、炭酸ガスレーザを用いて形成した。
【0084】
次に、50g/Lの過マンガン酸溶液を用いて、50〜80℃で、1〜5分間、樹脂絶縁層の表面を粗化した。引き続き、市販のメッキ浴を用いて無電解銅メッキを行い、図4(B)に示すように、厚み約0.3〜1μmの無電解銅メッキ膜(化学銅メッキ膜、PU1及びPL1)を形成した。
【0085】
次いで、市販のメッキレジスト用のドライフィルムをラミネートした。その後、図5(A)に示すように、写真法により、メッキレジストをパターニングした。
【0086】
樹脂絶縁層上に形成した無電解銅メッキ膜を電極として電解銅メッキを行い、メッキレジストを形成していない部分の無電解銅メッキ膜上に、厚さ5〜20μmの電解銅メッキ膜を形成した。その後、メッキレジストを除去した。
【0087】
次に、図5(B)に示すように、電解銅メッキ膜間に存在している無電解銅メッキ膜を除去して、導体回路19U及び19Lとビア導体14U及び14Lを形成した。ここで形成したビア導体は、樹脂絶縁層に形成された開口部を充填し、その上面は、同一の樹脂絶縁層上に形成されている導体パターンの上面と同一平面上に位置するようにした。
【0088】
この工程を8回繰り返し、8層の樹脂絶縁層と8層の導体層とからなる積層体17U及び17Lを構成した(図6A参照)。
【0089】
(3)第2の外部接続端子(第2のパッド)の形成
8層からなる積層体17U及び17Lの最下層の樹脂絶縁層10UN、10LN(支持部材とは反対側に形成された樹脂絶縁層)の表面と、この樹脂絶縁層上に形成されている導体パターンの表面を粗化した。上記の樹脂絶縁層表面の粗化は、ここで形成した積層体17U及び17Lを過マンガン酸水溶液に浸漬して行った。また、上記の導体回路の粗化は、上述したCZシリーズを用いて行った。
【0090】
次いで、最下層の層間樹脂絶縁層と最下層の層間樹脂絶縁層上に形成されている導体回路上に、市販品を用いてソルダレジスト20U及び20Lを形成した。次に、これらのソルダレジスト上にマスクを重ね、フォトリソグラフィによって、ソルダレジスト20U及び20Lに開口部を形成した。この開口部によって露出されたビア導体の表面及び導体パターンの表面を、第2の外部接続端子とした(図6A参照)。
【0091】
(4)支持部材SMからのはく離と第1の外部接続端子(第1のパッド)形成
接合部位のすぐ内側になるように切断部位を設定し(図6BのA1及びA2参照)、その部位で切断した。次いで支持部材SMから、積層体17U及び17Lをそれぞれ剥離し、中間基板18U及び18Lとした(図7(A)及び図7(B)参照)。
【0092】
支持部材SMから剥離され、露出した積層体18Lの銅箔11L上に、市販のエッチングレジスト用ドライフィルムをラミネートした。次いで、写真法により、エッチングレジストをパターニングした(図8(A)参照)。
【0093】
上述したようにしてソルダレジスト20Lに形成された第2のパッドをエッチャントから保護するために、上述したのと同様のエッチングレジストをソルダレジスト20Lの全面及び開口部を覆うようにラミネートした。
【0094】
次に、塩化第二銅を主成分とするエッチング液を使用し、0.3〜0.8MPaの噴霧圧力下でエッチングを行い、エッチングレジストを形成していない部分の銅箔を除去して第1のパッドを形成した。第1パッド15Lk(k=1〜M)の形状は、図8(B)に示すように、最上層の層間樹脂絶縁層10L1の第1面の表面と接触している底面の面積が、電子部品を搭載する側の上面の面積よりも大きな錐台形となった。
【0095】
また、上述したとおり、最上層の樹脂絶縁層は銅箔の凹凸を有する面上に形成した。このため、銅箔をエッチングで除去することにより、最上層の樹脂絶縁層の第1面の表面には、銅箔の凹凸面から転写された凹凸が形成された。
【0096】
次に図8(B)に示すように、エッチングレジストを除去し、複数の部品搭載パッド(第1のパッド)からなるパッド群を形成した。銅箔11Lから部品搭載パッド(第1のパッド)を形成したため、各パッドの厚みがほぼ均一となった。また、レジストをエッチングマスクとして、第1のパッドを形成しているので、パッド上面において、パッドから突出した電解メッキ層は形成されなかった。
【0097】
(5)パッドの表面処理
第1のパッド形成後、各第1及び各第2のパッドの表面を、OSP(Organic Solderbility Preservative)で処理し、保護膜を形成した。これによって、パッド上に非常に薄い単分子膜の保護膜が形成され、上記部品搭載用パッド(第1のパッド)と保護膜とからなる部品実装用パッドの厚みは、実質的に第1パッドの厚みに等しいものとなった。また、上記第1のパッドの形成後、その表面に保護膜を形成したため、パッド上面で、パッドから突出する保護膜は形成されなかった。
【0098】
(6)半田バンプの形成
次に、図8(C)に示すように、スクリーン印刷法により、上記第1と第2のパッド上に半田ペーストを印刷し、リフローすることで、上記第1と第2のパッド上に半田バンプを形成した(第2のパッド上の半田バンプは、図8(C)では省略した)。上記第1のパッドの全表面(上面と側壁)に保護膜が形成されているので、半田バンプが、第1のパッドの上面と側壁にぬれ広がり、この部分に形成された。
【0099】
本願の第1実施例はコア基板を有していないが、半田バンプが上記第1のパッドの上面と側壁上とに形成されたため、半田バンプと第1のパッドとの間の結合力が高くなった。この結果、半田バンプが第1のパッドから剥がれ難くなった。
また、第1のパッドの断面形状が錐台形であるため、隣接する半田バンプ間の距離はパッドの距離とほぼ同じであり、広く保たれた。
【0100】
また、実施例1では、最上層の樹脂絶縁層と第1パッドとの上に、上記第1パッドを露出させる開口部を有するソルダレジストを形成しなかった。このため、ソルダレジストを有しているプリント配線板と比較すると、最上層の樹脂絶縁層表面とICチップとの間の距離が大きくなった。この結果、ICチップとプリント配線板間とを封止するアンダーフィルの充填性が良好となった。
【0101】
また、最上層の樹脂絶縁層の表面が上述した通り凹凸面であるので、アンダーフィルの濡れ性がよくなり、アンダーフィルの充填性が向上した。また、これに伴って、アンダーフィルと最上層の樹脂絶縁層との密着強度も向上した。
【0102】
(実施例2)
実施例1で第1及び第2のパッド双方の上に保護膜として形成したOSP膜に代えて、第1及び第2のパッド双方の表面上に、無電解ニッケルメッキ膜、無電解金メッキ膜の順でメッキ膜を形成し、保護膜とした。上記第1のパッドの上面と側壁とに、この保護膜を形成した。
【0103】
それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。本実施例では、各第1のパッドに形成された保護膜の厚みを均一にするために、保護膜の形成を、電解メッキではなく無電解メッキにより行った。また、電子部品実装用パッドは、電子部品搭載用パッドと無電解メッキ膜からなる保護膜とで形成した。この結果、電子部品の電極と電子部品実装用パッド間の距離が均一となった。
【0104】
(実施例3)
実施例1において、第1のパッドの形成に使用した銅箔11U及び11Lに代えて、第1面が平滑で第2面がマット面となっている銅箔を使用した。また、第1パッド形成後であって、エッチングレジストの剥膜前に第1パッドの側面を粗化した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。その結果、実施例4の第1のパッドは、上面が平滑な面で、側壁が凹凸を有する面となった。
【0105】
(実施例4)
実施例1において形成した保護膜を、第1及び第2のパッドのいずれの上にも形成しなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
第1パッドは銅箔のみで形成したため、第1の各パッドの厚みは、均一になった。その結果、ICなどの電子部品の各電極と各第1パッド間の距離を一定に保つことができるとともに、半田バンプの形成に使用する半田の量を少量にすることが可能となった。この結果、プリント配線板と電子部品間の接続抵抗を小さくすることができた。
【0106】
(実施例5)
実施例5において、半田バンプと第1のパッド間の接合強度を向上させるため、CZ処理を行い、第1パッドの表面を粗化して、第1のパッドの上面と側壁に凹凸面を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
【0107】
(実施例6)
実施例5において、第1及び第2のパッドの双方の上に、無電解金メッキ膜からなる保護膜を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
【0108】
(実施例7)
実施例5において、第1及び第2のパッドの双方の上に、OSPを用いて保護膜を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、積層体及びプリント配線板を形成した。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明に係る積層体の製造方法は、接続信頼性に優れた薄型のプリント配線板を歩留まりよく製造するのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔を支持部材に超音波で固定する工程;
前記金属箔上に樹脂絶縁層を形成する工程;
前記樹脂絶縁層にビア導体用の開口部を形成する工程;
前記樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程;
前記開口部に、ビア導体を形成する工程;及び
支持部材と金属箔とを分離する工程;を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記導体回路の形成と前記ビア導体の形成とは同時に行われているプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記金属箔と前記支持部材との固定は、前記金属箔の外周部を前記支持部材に接合することによって行われるプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、さらに、
前記樹脂絶縁層上及び前記導体回路上に、上層の樹脂絶縁層を形成する工程;
前記上層樹脂絶縁層に上層のビア導体形成用の開口部を形成する工程;
前記上層樹脂絶縁層上に上層の導体回路を形成する工程;及び
前記上層の開口部に、前記導体回路と前記上層の導体回路とを電気的に接続する上層のビア導体を形成する工程;を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記上層の導体回路の形成と前記ビア導体の形成は同時に行われているプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記支持部材は、金属板であるか、又は支持母材と前記支持母材の表面を被覆する金属とからなる板状部材である、プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記金属が金属箔であるプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項6において、前記支持部材は銅張積層板であるプリント配線板の製造方法。
【請求項1】
金属箔を支持部材に超音波で固定する工程;
前記金属箔上に樹脂絶縁層を形成する工程;
前記樹脂絶縁層にビア導体用の開口部を形成する工程;
前記樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程;
前記開口部に、ビア導体を形成する工程;及び
支持部材と金属箔とを分離する工程;を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記導体回路の形成と前記ビア導体の形成とは同時に行われているプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記金属箔と前記支持部材との固定は、前記金属箔の外周部を前記支持部材に接合することによって行われるプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、さらに、
前記樹脂絶縁層上及び前記導体回路上に、上層の樹脂絶縁層を形成する工程;
前記上層樹脂絶縁層に上層のビア導体形成用の開口部を形成する工程;
前記上層樹脂絶縁層上に上層の導体回路を形成する工程;及び
前記上層の開口部に、前記導体回路と前記上層の導体回路とを電気的に接続する上層のビア導体を形成する工程;を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記上層の導体回路の形成と前記ビア導体の形成は同時に行われているプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記支持部材は、金属板であるか、又は支持母材と前記支持母材の表面を被覆する金属とからなる板状部材である、プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記金属が金属箔であるプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項6において、前記支持部材は銅張積層板であるプリント配線板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−195614(P2012−195614A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154064(P2012−154064)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2009−508028(P2009−508028)の分割
【原出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2009−508028(P2009−508028)の分割
【原出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
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