説明

積雪防止装置

【課題】簡易な構造によって屋根の雪を排除することを可能とし、雪下ろし作業の労力を緩和し、積雪防止対策として有効に利用することができる積雪防止装置を提供する。
【解決手段】屋根12全体を撥水性、耐水性を備えた積雪防止シート20により覆い、積雪防止シート20上の雪を滑落させることにより屋根の上の積雪を防止する積雪防止装置であって、支持部材14a、14b、14cにより積雪防止シート20を前記屋根12から離間して支持するとともに、積雪防止シート20の端縁部に重し25を取り付けて軒先部12cから吊り下げることにより、前記屋根12の上に積雪防止シート20を張設して構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積雪防止シートを用いた積雪防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪地方、とくに多雪地域における冬期の雪下ろし作業は、きわめて労力がかかるとともに危険をともなうものである。このため、雪下ろし作業をすることなく家屋を安全に護るいろいろな方法がとられている。これらの方法のうち、もっとも確実な方法は、屋根の雪を融かして屋根に雪が積もらないようにする方法である。屋根の融雪装置としては、屋根材にヒータを埋設する方法や、放熱パネルを使用するといった方法(特許文献1参照)等がある。
【0003】
しかしながら、ヒータ等を使用して熱的に融雪する場合は、エネルギー源として電力や灯油を使用するから、何日も雪が降る季節では長時間にわたって屋根を加温しなければならず、維持コストが膨大にかかるという問題がある。
このため、より簡易なコストをかけずに積雪を防止する構造が考えられており、たとえば、可撓性シートとエアバッグとを組み合わせた構造(特許文献2参照)、建築物の上端面にネット体を被せる構造(特許文献3参照)、屋根材に撥水性を付与して屋根への着雪を防止する構造(特許文献4参照)、基材の外面に滑氷雪性を有する被覆層を形成する構造(特許文献5参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開2002−147062号公報
【特許文献2】特開平10−140879号公報
【特許文献3】特開2005−146506号公報
【特許文献4】特開平10−159264号公報
【特許文献5】特開2002−88347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋根の積雪防止方法として、屋根の雪を滑落させるようにして除去する方法は、雪を融かして排除する方法と比較するとはるかにエネルギーコスト的には有利である。しかしながら、従来方法では必ずしも的確に雪を排除することができないという問題があった。
本発明は、きわめて簡易な構造によって屋根の雪を排除することを可能とし、これによって雪下ろし作業の労力を緩和し、積雪防止対策として有効に利用することができる積雪防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、屋根全体を撥水性、耐水性を備えた積雪防止シートにより覆い、積雪防止シート上の雪を滑落させることにより屋根の上の積雪を防止する積雪防止装置であって、支持部材により積雪防止シートを前記屋根から離間して支持するとともに、積雪防止シートの端縁部に重しを取り付けて軒先部から吊り下げることにより、前記屋根の上に積雪防止シートを張設して構成したことを特徴とする。
【0006】
また、前記支持部材が、前記積雪防止シートを揺動支持する弾性材からなることにより、積雪防止シートが容易に揺動(振動)し、積雪防止シートから雪が滑落して積雪を防止する作用がより好適に作用する。
また、前記支持部材が、前記積雪防止シートの裏面に取り付けられた弾性シートを筒体状に丸めて形成され、開口部が積雪防止シートの開口側に開口する配置に設けられていることにより、積雪防止シートと屋根との間を風が通過する作用を妨げず、積雪防止シートを容易に揺動させて積雪防止作用を的確に作用させることができる。
また、前記支持部材は、屋根の頂部側に配置されるものが屋根の軒先部側に配置されるものよりも高さ寸法が高く設定されていることにより、積雪防止シートの傾斜角度を適切に保持することができ積雪防止シートの積雪防止作用を効果的に発揮させることができる。また、前記重しとして、砂袋を用いることにより、簡単な構成で積雪防止シートを屋根上に張設することができる。
また、前記積雪防止シートとして、撥水性、耐水性を備えた高密度織物によって形成されたものがとくに有効に使用できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る積雪防止装置によれば、積雪防止シートを屋根と離間させて支持することにより、屋根と積雪防止シートとの間を通過する風によって積雪防止シートが自然に揺動することによって、積雪防止シートに積もった雪が効果的にシートから剥離して滑落し、積雪防止シートに雪が積もらないようにして屋根の上の積雪を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面にしたがって詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明に係る積雪防止装置は、家屋の屋根全体を積雪防止シートによって覆うことにより、屋根上への着雪を防止する構成としたものである。図1は、家屋10の屋根12の全面を覆うように積雪防止シート20を取り付けて構成した本発明の第1の実施の形態を示す。
本実施形態の積雪防止装置は、屋根12の全体を積雪防止シート20によって覆う際に、屋根12と積雪防止シート20との間に風を通す空間をあけて設置する構成としたことが特徴的である。
【0009】
積雪防止シート20を屋根12との間に空間をあけて設置するため、屋根12の頂部(最上部)12aと、屋根12の中間部12bと、軒先部12cにおいて、屋根12と積雪防止シート20との間に弾性部材14a、14b、14cを介装する。弾性部材14a、14b、14cは、積雪防止シート20と屋根12との離間距離を確保する目的と、積雪防止シート20を揺動可能に支持する目的で設けられる。積雪防止シート20と屋根12との離間距離は10〜30cm程度でよい。
【0010】
本実施形態では、屋根12の頂部12aに設置する弾性部材14aの高さを最も高く、軒先部12cに配置する弾性部材14cの高さを最も低くし、屋根12の中間に配置する弾性部材14bの高さを弾性部材14a、14cの中間の高さに設定した。このように弾性部材14a、14b、14cの高さを変えているのは、屋根12の頂部側において、屋根12と積雪防止シート20とが軒先側よりも広く離間させ、積雪防止シート20の傾斜角度(水平面に対してなす角度θ)を屋根12の傾斜角度よりも大きくして、雪が滑落しやすい傾斜に設定するためである。
【0011】
弾性部材14a、14b、14cには弾性を有する素材であれば適宜素材を使用することができる。本実施形態においては図2(a)に示すように、積雪防止シート20の裏面(撥水性面の裏面)に弾性シート13を取り付け、弾性シート13を丸めて筒体状として弾性部材14を構成した。弾性シート13の端部にジョイント部15を設け、弾性シート13を丸めてジョイント部15により弾性シート13の端部を連結することによって簡単に筒体状の弾性部材14とすることができる。なお、弾性シート13は筒体状に丸めた状態で、筒体の軸線方向が屋根上で風が通過する方向と平行になるように配置するのがよい。
【0012】
図1は、このように筒体状に形成した弾性部材14a、14b、14cを介して積雪防止シート20を屋根上に取り付けた状態を示す。なお、積雪防止シート20を屋根上で張るようにして取り付けるため、積雪防止シート20の軒先側の端縁部に重しとして砂袋25を吊り下げるように取り付ける。砂袋25は3〜5kgのものを使用する。砂袋25は積雪防止シート20の縁部に沿って所定間隔に取り付ける。砂袋25は積雪防止シート20に張力を加えるために用いるものであり、砂のかわりに土を入れたもの、石を入れたもの等が適宜使用できる。
【0013】
積雪防止シート20は、シート上に積もった雪を滑落させる作用を有するもので、撥水性、および持続耐水性を備えた高密度織物が好適に使用される。本実施形態では傘地等にも使用される織物、商標名:ツインバリア(特公開2001-192946号公報)を使用した。このように、撥水性および耐水性を備えた織物は本発明に係る積雪防止装置に利用する積雪防止シート20として好適に使用できる。
【0014】
なお、使用に際しては、横幅130cm、縦幅300cmの生地を単位シートとし、この単位シートを縦横に連結し所要の大きさのシート体として用いる。単位シートの撥水面の裏面に、幅2cmの帆布生地を生地の縁部に沿って縫い合わせ、また裏面に格子状に縫い合わせてシート体を補強する。
積雪防止シート20に取り付ける砂袋25を単位シートを繋ぎ合わせた位置に取り付けることにより、積雪防止シート20を破損しないようにして砂袋25を取り付けることができる。
【0015】
本実施形態の積雪防止装置は、図1に示すように、屋根12から離間させて屋根上に積雪防止シート20を張った状態で取り付けることを特徴とするものであり、このように屋根12から離間させて積雪防止シート20を張ると、積雪防止シート20と屋根12との間を風が通過し、風によって積雪防止シート20が揺動するようになる。本実施形態の積雪防止装置は、積雪防止シート20自体の撥水性および耐水性によって積雪防止シート20上に積もった雪を滑落させる作用と、積雪防止シート20が風によって揺動し、この揺動作用によって積雪防止シート20に積もった雪が振り払われる作用を利用して積雪防止シート20上への着雪を防止し、これによって屋根の上に雪が積もらないようにするものである。
【0016】
積雪防止シート20に積もった雪を滑落させるには、積雪防止シート20の水平面に対する傾斜角(図1のθ)を大きくすることが有効である。本実施形態で使用している積雪防止シート20は、帆布あるいはプラスチックシートと比較すると撥水性、耐水性が格段に優れるており、積雪防止シート20は傾斜角を30度程度とすることで十分な雪の滑落作用が得られる。
積雪防止シート20が風によって揺動すると、積雪防止シート20上の雪は簡単にシートから剥離するから、本実施形態のように、積雪防止シート20が風によって揺動するようにすることは、積雪防止シート20の滑落作用とあわせて積雪防止シート20上の積雪を排除する方法としてきわめて有効である。
【0017】
降雪時には風を伴うことが多いから、積雪防止シート20と屋根との間を風が通り抜ける際に、積雪防止シート20は自然に揺動し、積雪防止シート20に積もった雪が自然に落下して屋根に雪が積もらなくなる。なお、自然条件により、風がない状態になったりして積雪防止シート20に雪が積もったような場合には、砂袋25を手で持って強く引くと弛んでいた積雪防止シート20が張られ、積雪防止シート20に振動が加えられることによって、積雪防止シート20上で雪が滑り、屋根上の積雪を簡単に取り除くことができる。
【0018】
本実施形態の積雪防止装置においては、屋根に積雪防止シート20を設置した状態で屋根の妻方向が開口する。したがって、屋根の両側の開口部間を連通するように風が通過する。図3に示すように、筒体状に形成した弾性部材14の開口方向を風の通過方向とすることにより、弾性部材14によって風の通過が妨げられず、また、弾性部材14が好適なクッション性を備えることとなり、積雪防止シート20と屋根12との間に風を通過させやすくして、積雪防止シート20を容易に揺動(振動)させることが可能となり、雪の滑落作用を好適に得ることができる。
なお、積雪防止シート20のシート材としては撥水性、耐水性、耐久性を備えた適宜素材が使用でき、弾性部材も発泡性プラスチック等の適宜素材が使用できる。
【0019】
(第2の実施形態)
図4は、積雪防止装置の第2の実施の形態を示す。本実施形態においては、屋根12の頂部に脚立状の支持部材30を設置し、屋根12の軒先部12cに弾性部材14を取り付け、支持部材30と弾性部材14との間に積雪防止シート20を掛け渡し、屋根12の全体を積雪防止シート20によって覆うように設けている。積雪防止シート20の端縁部に砂袋25を取り付けて軒先部12cから吊り下げ、積雪防止シート20を両側から張るようにして取り付けることは第1の実施の形態におけると同様である。
【0020】
本実施形態においても、支持部材30と弾性部材14とにより積雪防止シート20を屋根12から離間して支持するから、積雪防止シート20と屋根12との間の空間を風が通過し、積雪防止シート20が揺動(振動)することにより、積雪防止シート20に付着した雪をシートから剥落させることができ、積雪防止シート20に雪が積もらないようにすることができる。
脚立状の支持部材30を使用することにより、積雪防止シート20を屋根12から離間して支持することができ、支持部材30の高さを比較的高く設定することにより、積雪防止シート20の傾斜角度を比較的大きくすることができる。
【0021】
本実施形態では、軒先部12cでは弾性部材14により積雪防止シート20を支持することにより積雪防止シート20を揺動させて支持するようにしている。このように積雪防止シート20は風によって揺動することをできるだけ妨げないようにすることが、積雪防止シート20の上に積雪させないようにするためには有効であるが、積雪防止シート20はそれ自体で十分な可撓性を備えているから、支持部材30のように弾性を有しない支持体によって積雪防止シート20を支持する方法であっても積雪を防止する作用が得られる。
【0022】
なお、上述した各実施形態では、山形の屋根について積雪防止シート20を取り付けた構成を示すが、片側のみの傾斜屋根の場合も同様に、傾斜屋根から離間させるようにして屋根の全面を積雪防止シート20によって覆い、屋根と積雪防止シート20との間に風を通過させるようにすることで、積雪防止シート20を揺動させ、積雪防止シート20上に積雪させないようにすることができる。この場合には、屋根の頂部側で積雪防止シート20の端部を壁面等に固定し、積雪防止シート20の他端縁から砂袋25を吊り下げて積雪防止シート20を張るようにして取り付ければよい。
【0023】
(積雪防止シートの他の適用例)
図5は、前述した素材からなる積雪防止シートを自動車のフロント部を覆うように取り付けて、自動車のフロント部での積雪を防止するように利用する例を示す。この例では、自動車の屋根に支持部材30を設置し、自動車の前部に弾性部材16を取り付けて、支持部材30と弾性部材16との間に積雪防止シート20を掛け渡す。積雪防止シート20の上端縁と下端縁に砂袋25を取り付けて、積雪防止シート20を図のように傾斜した状態で張るように取り付ける。この場合も、積雪防止シート20が風によって揺動することにより、積雪防止シート20上に雪が積もることを防止する。
【0024】
図6は、積雪防止シート20を交通信号機に取り付けた例を示す。図6(b)に示すように、交通信号機のフード部40に弾性支持材42を介してフード部40を覆うように積雪防止シート20を取り付ける。弾性支持材42はフード部40と離間して積雪防止シート20を取り付ける目的と、積雪防止シート20が風によって可動する状態でフード部40に取り付ける目的で用いられる。本例では端面形状が逆V字形となる発泡プラスチック製の弾性支持材42を使用して積雪防止シート20を取り付けている。このように端面形状を逆V字形とすることで、弾性支持材42とフード部40との接触面積を抑え、外気温が下がった場合でも弾性支持材42がフード部40に凍りつくことを防止し、積雪防止シート20が可動性を維持できるようにすることができる。
【0025】
図示例では、積雪防止シート20の端縁とフード部40の端部との間に弾性ゴム44を取り付けて、積雪防止シート20が張られた状態でフード部40に取り付けている。
図6(a)は、各々の信号灯に積雪防止シート20を取り付けた状態を示す。このように、積雪防止シート20を取り付けることによって、信号機の積雪を簡易に防止することができる。なお、図5に示す自動車の積雪防止に積雪防止シート20を使用する場合も、自動車のフロント部で弾性部材16が凍りつくことを防止するために、図6(b)に示すような弾性支持材42を使用することが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】積雪防止装置の第1の実施の形態の構成を示す説明図である。
【図2】弾性部材の構成を示す説明図である。
【図3】積雪防止シートが揺動する様子を示す説明図である。
【図4】積雪防止装置の第2の実施の形態の構成を示す説明図である。
【図5】積雪防止シートの他の適用例を示す説明図である。
【図6】積雪防止シートのさらに他の適用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
10 家屋
12 屋根
12a 頂部
12c 軒先部
13 弾性シート
14、14a、14b、14c、16 弾性部材
20 積雪防止シート
25 砂袋
30 支持部材
40 フード部
42 弾性支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根全体を撥水性、耐水性を備えた積雪防止シートにより覆い、積雪防止シート上の雪を滑落させることにより屋根の上の積雪を防止する積雪防止装置であって、
支持部材により積雪防止シートを前記屋根から離間して支持するとともに、積雪防止シートの端縁部に重しを取り付けて軒先部から吊り下げることにより、前記屋根の上に積雪防止シートを張設して構成したことを特徴とする積雪防止装置。
【請求項2】
前記支持部材が、前記積雪防止シートを揺動支持する弾性材からなることを特徴とする請求項1記載の積雪防止装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記積雪防止シートの裏面に取り付けられた弾性シートを筒体状に丸めて形成され、開口部が積雪防止シートの開口側に開口する配置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の積雪防止装置。
【請求項4】
前記支持部材は、屋根の頂部側に配置されるものが屋根の軒先部側に配置されるものよりも高さ寸法が高く設定されていることを特徴とする請求項1記載の積雪防止装置。
【請求項5】
前記重しとして、砂袋を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の積雪防止装置。
【請求項6】
前記積雪防止シートが、撥水性、耐水性を備えた高密度織物によって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の積雪防止装置。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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