説明

空気レギュレータ

【課題】一次圧力導入口と;二次圧力取出口と;上記一次圧力導入口と二次圧力取出口間を開閉する主弁と;上記二次圧力取出口とパイロット圧室の圧力変動に応じ上記主弁を開閉する浮動ピストンと;を備え、主弁は浮動ピストンに臨む排気弁部を一体に有し、浮動ピストンは該浮動ピストンの位置に応じ該排気弁部と接離する弁座部を一体に有し、該弁座部が排気弁部から離間するとき二次圧力取出口を大気に連通させる空気レギュレータにおいて、排気圧が浮動ピストンに作用し動作が不安定になるのを防止する。
【解決手段】主弁の排気弁部と一体に、該排気弁部と弁座部の隙間を通る排気を受け、該排気が直接浮動ピストンに作用するのを防止する傘状部を設けた空気レギュレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い一次圧力を安定した低い取出二次圧力として取り出す空気レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
空気レギュレータとして従来、一次圧力導入口、二次圧力取出口、一次圧力導入口と二次圧力取出口間を開閉する主弁、及び二次圧力取出口とパイロット圧室の圧力変動に応じて移動し主弁を開閉作動させる浮動ピストンを備えた装置が知られている。
【0003】
この空気レギュレータでは、主弁は浮動ピストンに臨む排気弁部を同軸一体に有しており、浮動ピストンには該浮動ピストンの位置に応じ該排気弁部との距離を変える弁座部が一体に設けられている。主弁は常時は一次圧力導入口と二次圧力取出室の流路を僅かに開いてブリード流量を流しており、二次圧力取出口の圧力が所定値以下では弁座部が排気弁部に着座している。二次圧力取出口の圧力がバランス状態のパイロット圧室より高くなると、浮動ピストンが移動してその弁座部が排気弁部から離れ、二次圧力取出口を大気に連通させて排気する(二次圧力取出口の圧力を下げる)。一方、二次圧力取出口の圧力がバランス状態より下降すると、浮動ピストンが排気弁側に移動して弁座部を介して主弁を開弁方向に移動させるため、一次圧力導入口から二次圧力取出口に流れる流量が増加し、その結果二次圧力取出口の圧力が上昇する。以上の動作が二次圧力取出口の圧力変動に応じて行われる結果、取出二次圧力をほぼ一定に保持することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この空気レギュレータでは、浮動ピストンの弁座部が主弁の排気弁部から離間する排気時において、浮動ピストンが不安定になり、取出圧力が不安定になる現象が生じることが指摘されている。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づき、排気時に浮動ピストンに排気圧力が作用することが少ない(排気圧力の作用を抑制できる)、取出圧力の安定した空気レギュレータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、浮動ピストンの弁座部が主弁の排気弁部から離間する排気時における不安定現象は、浮動ピストンに作用する排気圧力が該浮動ピストンを過剰に変位させるために生じているとの仮説に基づき、この排気圧力を浮動ピストンに作用させないようにすれば、排気時の不安定現象を防止できるという着眼に基づいてなされたものである。
【0007】
本発明は、一次圧力導入口と;二次圧力取出口と;一次圧力導入口と二次圧力取出口間を開閉する主弁と;二次圧力取出口とパイロット圧室の圧力変動に応じ上記主弁を開閉する浮動ピストンと;を備え、主弁は浮動ピストンに臨む排気弁部を一体に有し、浮動ピストンは該浮動ピストンの位置に応じ該排気弁部と接離する弁座部を一体に有し、該弁座部が排気弁部から離間するとき二次圧力取出口を大気に連通させる空気レギュレータにおいて、主弁の排気弁部と一体に、該排気弁部と弁座部の隙間を通る排気を受け、該排気が直接浮動ピストンに作用するのを防止する傘状部を設けたことを特徴としている。
【0008】
傘状部は、例えば排気弁部側の面が平面であるタイプを使用することができ、この他例えば、同排気弁部側の面が凹面であるタイプも使用することができる。
【0009】
この空気レギュレータでは、取出二次圧力を調整するために、さらに、パイロット圧室を大気に連通させるノズル通路と;このノズル通路の開口端に位置する開口隙間制御板と;この開口隙間制御板とノズル通路の開口端との距離を変化させる取出圧力調整手段と;を備えるのが一般的である。さらに具体的には、開口間隔制御板は周縁部が固定された弾性変形可能な円形の板ばねから構成し、取出圧力調整手段は、この円形板ばね上に設けた同心に設けたコイルと、このコイル中心に位置する固定永久磁石とからなる電磁駆動装置とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排気時に浮動ピストンに排気圧力が作用することが少ない(排気圧力の作用を抑制できる)、取出圧力の安定した空気レギュレータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明を適用した電空変換式空気レギュレータ10の全体構造を示している。ハウジング11は、図1の下方から順に、ロアハウジング11a、ミドルハウジング11b、第一アッパハウジング11c、第二アッパハウジング11d及びキャップ体11eを備えている。
【0012】
ロアハウジング11aには、一次圧力導入口12と二次圧力取出口13とが開口している。一次圧力導入口12と二次圧力取出口13の間は、通路14によって連通しており、この通路14が主弁15によって開閉される。主弁15は圧縮ばね16の力によって常時通路14を閉じている。ロアハウジング11a内には、二次圧力取出口13及び通路14に連通する二次圧力取出室17が形成されている。
【0013】
第一アッパハウジング11cとミドルハウジング11bの間、及びミドルハウジング11bとロアハウジング11aの間にはそれぞれ、浮動ピストン20のパイロットダイアフラム21及びコントロールダイアフラム22の周縁部が気密に挟着されている。浮動ピストン20は、パイロットダイアフラム21とコントロールダイアフラム22の間にリリーフ室23を有し、中心部に排気弁ブロック(シート)24を有している。この排気弁ブロック24には、取出室17とリリーフ室23とを連通させる連通穴25が形成されており、リリーフ室23はミドルハウジング11bとロアハウジング11aに形成した大気連通穴26によって大気と連通している。この浮動ピストン20は、ロアハウジング11a内に上述の二次圧力取出室17を画成する。
【0014】
連通穴25は、軸部通路25aと径方向通路25bからなり、軸部通路25aが主弁15と同軸一体に設けた排気弁部(リリーフ弁部)18によって開閉される。すなわち、排気弁部18は主弁15の上方延長端に設けられていて半球状をしており、軸部通路25aと同心の環状弁座部25cに接離することで連通穴25を開閉する。排気弁部18が連通穴25を閉じているときは取出室17内の空気がリリーフ室23に流れることはなく、主弁15(排気弁部18)と浮動ピストン20との相対位置が離隔して排気弁部18が環状弁座部25cから離れると、軸部通路25aが開いて取出室17内の空気は、連通穴25、リリーフ室23、大気連通穴26を介して大気に開放される(リリーフされる)。
【0015】
浮動ピストン20は、第一アッパハウジング11cと浮動ピストン20との間に挿入した圧縮コイルばね27により、図1の下方、つまり排気弁ブロック24の連通穴25(環状弁座部25c)が排気弁部18に当接してリリーフ通路を閉じる方向に移動付勢されている。
【0016】
排気弁部18の頂上部には、硬質ゴムのような弾性材料あるいは金属材料からなる傘状部19が一体に固定されて設けられている。この傘状部19は、主弁15及び排気弁部18と同一の軸線上に延びる軸部19aと、この軸部19aの上端部から径方向に延びる傘部19bとを有し、連通穴25内に位置している。傘部19bは、軸部通路25a(の最小径部)と略同一径を有しており、排気弁部18aと環状弁座部25cの隙間を通って排気される排気が連通穴25の径方向通路25b(浮動ピストン20)が直接作用するのを防止する。傘部19bの裏面(排気弁部18側の面)は、図2に示す実施形態では平面(軸部19aと直交する面)であり、図3に示す実施形態では凹面である。いずれの実施形態でも、傘状部19は、排気弁部18aが環状弁座部25cに着座するのを妨げることがないように設けられている。
【0017】
第一アッパハウジング11cと浮動ピストン20との間には、パイロット圧室30が形成されている。ロアハウジング11a、ミドルハウジング11b及び第一アッパハウジング11cにはそれぞれ、このパイロット圧室30を取出室17に連通させるハウジング内連通路31が形成され、この通路31の一部には、オリフィス31aが形成されている。オリフィス31aは、取出室17内の圧力によりパイロット圧室30に所望の圧力を生じさせる。
【0018】
第一アッパハウジング11cには、軸部に位置させて、上方に突出する円錐状部32が突出形成されており、この円錐状部32に、パイロット圧室30に連通するノズル通路33が貫通形成されている。
【0019】
このノズル通路33の開口端には、該ノズル通路33との距離を変化させる開口隙間制御板としての板ばね41(と一体の固定ピン45)が位置している。円形の板ばね41は、その周縁部が第一、第二のアッパハウジング11cと11dとの間に挟着固定されており、該板ばね41には、平面円形のコイルボビン受け42と、コイル(ムービングコイル)43を巻回したコイルボビン44とが固定ピン45によって同心に固定されている。これらの板ばね41、コイルボビン受け42、コイル43、コイルボビン44及び固定ピン45はフラッパ40を構成している。
【0020】
第二アッパハウジング11dには、その軸部に円柱状の永久磁石アッセンブリ46が支持されている。この永久磁石アッセンブリ46は、上記フラッパ40のコイルボビン44と同軸で隙間をもって対向する永久磁石46aとヨーク46bとを有している。コイル43と永久磁石アッセンブリ46は、板ばね41を弾性変形させる電磁駆動装置(開口隙間制御板41とノズル通路33の開口端との距離を変化させる取出圧力調整手段)を構成する。永久磁石アッセンブリ46とフラッパ40を収納した部屋は大気に連通している。
【0021】
上記構成の本空気レギュレータ10は、常時は主弁15が一次圧力導入口12と二次圧力取出口13の間の流路14を僅かに開いてブリード流量を流している。この状態において、二次圧力取出室17の圧力が上昇し圧縮コイルばね27の力に打ち勝ってバランス状態の浮動ピストン20を押し上げると、環状弁座部25cが排気弁部18から離れて取出室17内の空気を大気にリリーフする。つまり、二次圧力取出室17の空気は、環状弁座部25cと排気弁部18の隙間を通り、連通穴25からリリーフ室23に入って大気連通穴26から排気され、取出室17(二次圧力取出口13)側の圧力が下がる。
【0022】
この排気の際、排気弁部18aと環状弁座部25cの隙間を通って排気される排気は、傘状部19の傘部19b裏面に当接し、排気圧力が直接浮動ピストン20に作用するのを防止する。傘部19bの径は、は、主弁15及び排気弁部18と同一の径を有するのが好ましいが、若干小さくても、浮動ピストン20に排気圧力が作用するのを抑制する効果を得ることができる。傘部19bの裏面が図2のように平面からなる場合と、図3のように凹面からなる場合とでは、図3の凹面の場合の方が、排気を一旦下方に向けることができることから、排気圧力の浮動ピストン20への作用を小さくすることができると考えられるが、いずれでも一定の効果を得ることができる。逆に傘部19bの裏面を凸面としても一定の効果はある。
【0023】
逆に、取出室17の圧力が急に下降し、パイロットダイアフラム21と圧縮コイルばね27による下向きの力がコントロールダイアフラム22による上向きの力よりも大きくなると、浮動ピストン20は下降し環状弁座部25cと排気弁部18が当接して排気を停止し、さらに主弁15を圧縮ばね16の力に抗して押し下げて通路14を開き、一次圧力導入口12から二次圧力取出口13に流れる流量を増加させる。従って、一次圧力導入口12側の一次圧力が二次圧力取出室17(二次圧力取出口13)側に導かれ、該取出室17(二次圧力取出口13)の圧力が上昇する。つまり、浮動ピストン20は、二次圧力取出口13とパイロット圧室30の圧力変動に応じて移動し、主弁15を開閉作動させる。二次圧力取出室17の圧力変動に応じて以上の動作が繰り返される結果、一次圧力導入口12からの一次圧力に拘わらず、二次圧力取出口13に一定の二次圧力を取り出すことができる。
【0024】
また、コイル43に正逆の電流を流すと、永久磁石アッセンブリ46との電磁作用により、フラッパ40(板ばね41)が弾性変形して昇降する。フラッパ40が昇降すると、固定ピン45とノズル通路33の開口端との距離が変化し、その変化量は電流(または電圧)(アナログ電気入力信号)の大きさに比例する。固定ピン45とノズル通路33との距離が大きくなると、パイロット圧室30から逃げる空気の量が多くなり、小さくなると少なくなるから、二次圧力取出口13での取出二次圧力を、コイル43に流す電流の大小によって変化させることができる。
【0025】
以上の実施形態では、開口隙間制御板(板ばね)41とノズル通路33の開口端との距離を変化させる取出圧力調整手段として、電磁駆動装置を示したが、取出圧力調整手段は、本願発明の要旨には直接関係がない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を電空変換式空気レギュレータに適用した一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のレギュレータの排気弁部の拡大断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示す、図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 電空変換式空気レギュレータ
11 ハウジング
11a ロアハウジング
11b ミドルハウジング
11c 第一アッパハウジング
11d 第二アッパハウジング
11e キャップ体
12 一次圧力導入口
13 二次圧力取出口
14 通路
15 主弁
16 圧縮ばね
17 二次圧力取出室
18 排気弁部
19 傘状部
19a 軸部
19b 傘部
20 浮動ピストン
21 パイロットダイアフラム
22 コントロールダイアフラム
23 リリーフ室
24 排気弁ブロック
25 連通穴
25a 軸部通路
25b 径方向通路
25c 環状弁座部
26 大気連通穴
27 圧縮コイルばね
30 パイロット圧室
31 ハウジング内通路
31a オリフィス
33 ノズル通路
40 フラッパ
41 板ばね(開口隙間制御板)
42 コイルボビン受け
43 コイル
44 コイルボビン
45 固定ピン
46 永久磁石アッセンブリ
46a 永久磁石
46b ヨーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧力導入口と;二次圧力取出口と;上記一次圧力導入口と二次圧力取出口間を開閉する主弁と;上記二次圧力取出口とパイロット圧室の圧力変動に応じ上記主弁を開閉する浮動ピストンと;を備え、
上記主弁は浮動ピストンに臨む排気弁部を一体に有し、浮動ピストンは該浮動ピストンの位置に応じ該排気弁部と接離する弁座部を一体に有し、該弁座部が排気弁部から離間するとき二次圧力取出口を大気に連通させる空気レギュレータにおいて、
上記主弁の排気弁部と一体に、該排気弁部と弁座部の隙間を通る排気を受け、該排気が直接浮動ピストンに作用するのを防止する傘状部を設けたことを特徴とする空気レギュレータ。
【請求項2】
請求項1記載の空気レギュレータにおいて、上記傘状部は、排気弁部側の面が平面である空気レギュレータ。
【請求項3】
請求項1記載の空気レギュレータにおいて、上記傘状部は、排気弁部側の面が凹面である空気レギュレータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の空気レギュレータにおいて、さらに、上記パイロット圧室を大気に連通させるノズル通路と;このノズル通路の開口端に位置する開口隙間制御板と;この開口隙間制御板とノズル通路の開口端との距離を変化させる取出圧力調整手段と;を備える空気レギュレータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の空気レギュレータにおいて、開口間隔制御板は周縁部が固定された弾性変形可能な円形の板ばねからなり、取出圧力調整手段は、この円形板ばね上に設けた同心に設けたコイルと、このコイル中心に位置する固定永久磁石とからなる電磁駆動装置である空気レギュレータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−99222(P2006−99222A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281923(P2004−281923)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】