説明

空気中の放射性セシウムの除去方法及びその装置

【課題】空気中に浮遊する微細浮遊汚染物となる放射性セシウムを50μm以下の微細粒径を有する水粒子に付着させて回収し、新鮮な空気に入れ換える放射性セシウムの除去方法とその装置を提供する。
【解決手段】放射性セシウムを含む汚染空気中にクラスター水を噴霧し、該クラスター水に放射性セシウムを付着させた汚染微細粒子含有水を空気とともに吸込室5に取り込み、該吸込室5で汚染微細粒子含有水を沈殿させるとともに空気は空気浄化室7へ送出させ、該空気浄化室7内においてクラスター水を噴霧し、空気浄化室7内の空気中に含む残った放射性セシウムと付着させ、それらを汚染微細粒子含有水として沈殿させ、放射性セシウムの除去された除染空気は大気中へ排出し、沈殿した該汚染微細粒子含有水は鉄バクテリアを配設した放射性セシウム除去室9へ排出させ、該鉄バクテリアにより放射性セシウムを吸着固定することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラスター水を空気中に噴霧することにより、空気中に存在する放射性セシウムを該クラスター水に結合させ、その結合水を回収し、該放射性セシウムを鉄バクテリアに吸着固定させ、空気中より該放射性セシウムを除去する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今回の東日本大震災により、福島の原子力発電所に大きな損傷が加わり、風や雨等の影響により広範囲の地域の空気中に大量の放射性セシウム(セシウム134、137)が飛散した。10,000ベクレル/1mの蓄積量を超える地域は13都県に及び日本の国土の8%を超えたと文部科学省より発表があった。その多くは地表に落ちたが、瓦礫の処理、表土の処理時の埃、家外部の洗浄、学校等の室内の壁や床、野菜や果物の倉庫や作業室等において、その処理、清掃、作業等ではその周辺に再度放射性セシウムが浮遊するおそれがあり、また、池や沼地等には多くの放射性セシウムが含まれた状態が続いている。
【0003】
チェルノブイリの原発事故から20年以上経った現在においても、周辺住民に放射性セシウムを原因とした内部被爆が続いていることが報告されている。ベラルーシに住む子供の体内の放射性セシウム量を調べると、平均で約4,500ベクレル、その内約2割の子供は7,000ベクレル以上の内部被爆があったと報告されている。
【0004】
2003年にベラルーシで死亡した成人及び子供の脳や心筋、腎臓、肝臓等を調べた結果、8臓器の全てから放射性セシウムが検出されたと報告されている。特にセシウム137は筋肉や骨に集結し易い性質がある。この内部被爆の原因の一つとして、今においても汚染されている周辺地域の食品等にあるとされている。周辺の子供を3箇月間、汚染のない地域に移住させると、体内の放射性セシウム量はかなり減少したと報告されている。
【0005】
上記事実及びセシウム137の半減期が約30年といわれており、空気中や地表又は池や沼等の液体中にある放射性セシウムの除去回収は、急務であるが、遅々として進展していないのが実状である。
【0006】
下記特許文献は、水溶液中のセシウムを効率よく回収することができる材料及びその回収方法を提案したものであるが、その回収材料は、還元状態の酸化・還元型不溶性鉄シアノ錯塩であり、この材料をセシウムと接触させることによりセシウムを吸着させるものである。そして、水溶液からセシウムを分離し、該酸化・還元型不溶性鉄シアノ錯塩を酸化剤で処理して酸化状態に変換させる水溶液中のセシウムの回収方法である。
【0007】
しかし、上記鉄シアノ錯塩は、人体に吸引されると肺深部に沈着し、取り込まれた水溶性のセシウム137を当該部分で吸着し、肺胞組織にβ線による極めて重篤な内部被爆をもたらすことが知られている。従って、放射性セシウムが存在する環境下での使用は、かえって被害を深刻化させる懸念がある。
【0008】
また、鉄シアノ錯塩の放射性セシウムの吸着性能は低く、該放射性セシウムに対して有効といえる一定レベルの吸着効果を生じさせるためには大量の鉄シアノ錯塩を使用する必要がある。2011年4月に行われた東京工業大学の公開実験では、10ppmのセシウムを含む模擬汚染水100mLに対し、1gもの大量の鉄シアノ錯塩が使用された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−254828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、空気中に浮遊することが考えられる微細浮遊汚染物となる放射性セシウム、例えば粒径0.01μm〜10μm程度のセシウム137等を50μm以下の微細粒径を有する水粒子に付着させて回収し、新鮮な空気に入れ換える放射性セシウムの除去方法とその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、放射性セシウムを含む汚染空気中にクラスター水を噴霧し、該クラスター水に放射性セシウムを付着させた汚染微細粒子含有水を空気とともに吸込室に取り込み、該吸込室で汚染微細粒子含有水を沈殿させるとともに空気は空気浄化室へ送出させ、該空気浄化室内においてクラスター水を噴霧し、空気浄化室内の空気中に含む残った放射性セシウムと付着させ、それらを汚染微細粒子含有水として沈殿させ、放射性セシウムの除去された除染空気は大気中へ排出し、沈殿した該汚染微細粒子含有水は鉄バクテリアを配設した放射性セシウム除去室へ排出させ、該鉄バクテリアにより放射性セシウムを吸着固定し、放射性セシウムの除去された除染水は通常の水として利用されてなる空気中の放射性セシウムを除去する方法を特徴とする。
【0012】
また、上記クラスター水は、50μm以下の微細水粒子とし、水煙状態で噴霧してなる空気中の放射性セシウムを除去する方法を特徴とする。
【0013】
更に、上記鉄バクテリアは、水溶性の二価の鉄イオンFe2+又は二価のマンガンイオンMn2+を酸化し、水酸化第2鉄Fe(OH)又は二酸化マンガンMnOの沈殿物を生成した細菌群とした空気中の放射性セシウムを除去する方法を特徴とする。
【0014】
また、放射性セシウムを含む汚染空気中にクラスター水を噴霧する噴霧室、該クラスター水に放射性セシウムを付着させた汚染微細粒子含有水を空気とともに吸い込むためのファンを設けた吸込室、該吸込室に取り込まれた汚染微細粒子含有水を沈殿させ、且つ取り込んだ空気を浄化するための空気浄化室で取り込んだ空気中に含む放射性セシウムをクラスター水と付着させた汚染微細粒子含有水を沈殿させ、その両者のための沈殿室、該放射性セシウムの除去された浄化空気にクラスター水を付与する噴霧室へ送出すると同時に、上記汚染微細粒子含有水を該沈殿室より外部へ排出する排出口、該排出口より排出された汚染微細粒子含有水を通過させる鉄バクテリアを配設した放射性セシウム除去室、該放射性セシウムが除去された除染水を溜める除染水室とよりなる空気中の放射性セシウムの除去装置を特徴とする。
【0015】
更に、上記吸込室は、上方に吸込ファンを設け、下方に放射性セシウムやその他の微細汚染物を付着した汚染微細粒子含有水をストックするための上方部を開放した沈殿室を設けた空気中の放射性セシウムの除去装置を特徴とする。
【0016】
また、上記空気浄化室は、一方側に吸込室に吸込まれた空気を流通させる空気流通路を設け、他方側に新鮮とされた空気を噴霧室へ流出する空気流通路を設け、この間に仕切壁により仕切られた適数個の個別空気浄化室を形成し、該個別空気浄化室には給水槽と連結された給水管の先端となるノズルを露出させ、該ノズルはポンプ圧により高速流出した微細水粒子を被衝突物質に衝突させることにより水煙とし、該水煙に放射性セシウムを付着させて沈殿させてなる空気中の放射性セシウムの除去装置を特徴とする。
【0017】
更に、上記放射性セシウム除去室は、上方から下方へ向かう折り返す全折階段状の傾斜水路とし、該水路面に配設した鉄バクテリア上を放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水を流出させ、該鉄バクテリアと放射性セシウムとを結合させてなる空気中の放射性セシウムの除去装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気中の放射性セシウムの除去方法及びその装置は、所定空間に50μm以下の微細水粒子を水煙状態で噴霧することにより、該所定空間に浮遊している放射性セシウム等の微細汚染物を捉え、それら微細汚染物を放射性セシウム除去装置へ取り込んで除去し、その放射性セシウムの除去された新鮮な空気は上記微細水粒子を放射性セシウムを除去しようとする所定空間に再度噴霧することで、多くの所定空間を常に新鮮な空気とした空間とし、他方、放射性セシウムは鉄バクテリアと付着し、それらを合理的に捕捉して新鮮な水とすることが可能となった。
【0019】
また、放射性セシウムを含む汚染空気中からの放射性セシウムや他の微細汚染物の除去と新鮮な微細水粒子の噴霧とを循環させて行うことができるので、多くの所定空間において効率的に放射性セシウムを含む空気と新鮮な空気とを入れ換えることができ、身体にとって快適な環境を得ることが可能となった。
【0020】
更に、所定空間に浮遊している上記50μm以下の放射性セシウムは、ほぼ同じ粒径或いは50μm以下のクラスター水状にされた粒径の微細水粒子と付着し易く、効率良くそれら放射性セシウムを除去することが可能となった。
【0021】
また、放射性セシウム除去装置は、現場において簡単に組み立てることができ且つ移動設置することもできるので、所定空間が屋内はもとより屋外のような場所でも放射性セシウムや他の微細浮遊汚染物を除去することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の放射性セシウムを除去する装置の概略図。
【図2】同斜視図。
【図3】吸込室、空気浄化室及び噴霧室を示す断面図。
【図4】空気浄化室における第1ノズル位置の断面図。
【図5】空気浄化室における第2ノズル位置の断面図。
【図6】放射性セシウム除去室の断面図。
【図7】塩化セシウム濃度の経時変化を示すグラフ。
【図8】塩化セシウム溶液の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態について、その実施例に沿って説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の放射性セシウム(134、137)を除去する方法とその装置の概略図を示している。放射性セシウム除去装置1は、汚染空気中の放射性セシウムをクラスター水と付着させるためのクラスター水を噴霧する吹出しファン2を設けた噴霧室3、空気中の放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水を空気とともに吸い込むための吸込ファン4を設けた吸込室5、該吸込室5に吸い込まれた放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水を沈殿させる沈殿室6、取り込んだ空気中に含まれている残存放射性セシウムを除去するための空気浄化室7、該空気浄化室7においてクラスター水と付着させ放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水を沈殿させる上記沈殿室6と連結された沈殿室6、該放射性セシウムの除去された浄化空気を該噴霧室3へ送出し、上記汚染微細粒子含有水を該沈殿室6、6aより外部へ排出する排出口8、該排出口8より排出された放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水を狭い通路を通過させることにより放射性セシウムを鉄バクテリアと結合させる.放射性セシウム除去室9及び放射性セシウムが除去された水を溜める除染水室10とより構成されている。
【0025】
図2は、放射性セシウム除去装置1の斜視図を示している。該吸込室5の下部には沈殿室6が設けられ、該吸込室5と空気浄化室7との間には第1仕切壁11が設けられ、その底板側の両室間には連通する空気流通路12が設けられている。
【0026】
該空気浄化室7は、必要に応じて適数個の室7a、7b、…を設け、各々の室間には上記と同様、第2仕切壁11a、第3仕切壁11b、…が各々空気流通路12a、12b、…を設けて形成されている。
【0027】
上記第1仕切壁11は、天井面に接する位置より垂下して形成し、空気浄化室7の底板側に空気流通路12が形成される間隙を有して形成している。該空気浄化室7内の該底板側の沈殿室6aの貯留水面の位置からは立ち上げた上方を開放して空気流通路12aを形成し、下部を沈殿室6の仕切壁13とした第2仕切壁11aを形成し、更に、下方を開放して空気流通路12bを形成した第3仕切壁11b、…と順次必要に応じて形成し、上記第1仕切壁11、第2仕切壁11a、第3仕切壁11b、…によって上下方向に蛇行する空気流通路12、12a、12b、…を形成している。
【0028】
上記空気浄化室7は、外部の大気中から取り込んだ放射性セシウムを含む微細浮遊汚染物を付着した微細水粒子の内、沈殿室6に貯留しきれなかった空気中に浮遊している残存放射性セシウムを該吸込室5より受け入れて浄化している。該吸込室5と隣接する空間となる該空気浄化室7において、新鮮な水を得るための給水槽と連結された第1給水管14の先端となる第1ノズル15が突出し、該第1ノズル15からポンプ16の圧力により噴出された高圧水を被衝突物体17に衝突させることで微細水粒子となる水煙を発生させ、その水煙によるクラスター水で放射性セシウムを捕捉し、該噴霧室3に至る前に空気中に浮遊している残存放射性セシウムを除去し、下方の沈殿室6aに沈殿させている。
【0029】
所定空間に浮遊している放射性セシウムを含む空気は、噴霧された粒径50μm以下の微細水粒子に粒径0.01μm〜10μm程度の放射性セシウムは吸着され、放射性セシウム除去装置1の上部に形成された空気取込口から該吸込室5内へ取り込まれるが、該空気取込口に設けた吸込ファン4により放射性セシウムを含む微細水粒子とともに汚染空気を強制的に効率良く取り込むことができる。
【0030】
吸込室5の下部に、汚染水をストックする所定の深さを有する沈殿室6が設けられ、少なくとも該沈殿室6に溜まった汚染水の上面と該第1仕切壁11の下端との間には空気流通路12が形成され、天井側は空間を閉鎖するように該第1仕切壁11を側壁より突出形成し、それらにより所定空間と空気の流通路を形成している。
【0031】
第2仕切壁11aは、底板から立ち上がり、下方側を沈殿室6との仕切壁13とし、上方側に空気流通路12aが形成されるように側壁に取着されている。
【0032】
放射性セシウムを含んだ汚染空気は、空気取込口から吸込室5内へ取り込まれ、放射性セシウムを付着した汚染微細粒子含有水は重量が付加されているので下方へ自然降下すると同時に、吸込ファン4からの強制導入により下方への空気の流れが生じており、該沈殿室6の貯留水に吸収されることになる。放射性セシウムは微細水粒子に付着した状態で沈殿室6にストックされることになる。
【0033】
上記のようにして放射性セシウムを含んだ微細水粒子を付着した汚染物が除去された空気は、吸込室5から空気流通路12を通過して側壁と第1仕切壁11及び第2仕切壁11aとによって形成された空気浄化室7へと導かれることになる。該第1仕切壁11と第2仕切壁11aとの中間部上方には側壁より第1給水管14を突出形成し、該第1給水管14はその先端に第1ノズル15を形成している。該第1ノズル15は、第1コ字形金具18の一端に固定している。該第1ノズル15の先端を固定した第1コ字形金具18は、図4に示すように、そのコ字形の開放部を上にして取着形成している。該第1コ字形金具18の他端側には球体状等の被衝突物体17を固定している。
【0034】
第1ノズル15から噴出した高圧水を該被衝突物体17に衝突させることにより微細水粒子を製造し、空気浄化室7内に吸込まれた残存放射性セシウムには、微細水粒子が付着して重量が付加され、その重さにより降下し、下方部の沈殿室6aにストックされるが、放射性セシウムと付着しなかった微細水粒子は、軽いため浮遊状態となり、隣接する空気浄化室7aへ導入されることになる。
【0035】
また、次の空気浄化室7aとなる側壁、第2仕切壁11aと第3仕切壁11bとの空間にも別途、図5に示すように、側壁から突出した第2給水管19と第2ノズル20を形成している。該第2ノズル20も上記同様、その先端を第2コ字形金具21の一端に固定し、他端側には球体状等の被衝突物体22を固定している。該第2コ字形金具21は、そのコ字形の開放部を下にして取着形成している。第2ノズル20から噴出した水も、上記同様、ポンプ16の高圧力により被衝突物体22に衝突させて微細水粒子として噴霧することになる。
【0036】
吸込室5に取り込まれた放射性セシウムを含む汚染空気は、上記した空気浄化室7、7a、…で、放射性セシウムが該噴霧水と吸着して降下沈殿することにより除去され、それら放射性セシウムが除去された空気は、適宜数の仕切壁と空気流通路を順次蛇行状に通過し、その通過過程において放射性セシウムを噴霧水と付着させて重さを付加し、沈殿室6、6a、…へ下降させ、適宜空気浄化室7、7a、…を通過して浄化された空気は軽い微細水粒子として最終段階で噴霧室3より該空気取込口に形成された吹出ファン2の強制力により新鮮な空気とともに所定空間に噴霧されることになる。
【0037】
放射性セシウムを含む汚染空気は、上記空気浄化室7内の空間を蛇行状に移動する過程で浄化されることになるが、第1ノズル15を有する空気浄化室7でそのほとんどが浄化されることになる。該第1ノズル15より噴出された水は、上記のように、球体状等の被衝突物体17に衝突させる。第1ノズル15と連結された第1給水管14は、例えば、約14φmmのもので、その先端の第1ノズル15の噴出口径は約0.2φmm程度とする。この場合、該第1給水管14と連結されたポンプ16の加圧力は1.0MPとし、約80mm前後離隔した該被衝突物体17に対し10KMPの圧力で水を噴出させて衝突させることになる。この衝突によりその多くの水が粒径50μm以下の微細水粒子とし、水煙として噴霧され、浮遊放出されることになる。
【0038】
また、上記第2仕切壁13の上方となる空気流通路12aから入り込んできた空気に対して第2給水管19と連結された上記第1ノズル15と同様の第2ノズル20が、開放部を下方にして固定した第2コ字形金具21に設けた被衝突物体22と対向し、該第2ノズル20よりポンプ16により1.0MPに加圧された水を該被衝突物体22に衝突させ、上記同様、水煙を発生させることになる。
【0039】
上記各々の水煙は、最終的には噴霧室3の吹出ファン2による強制手段により新鮮な空気とともに水煙吹出口より所定空間へ噴霧されることになる。上記噴霧は、噴霧室3において該第1、2ノズル15、20と同様の水煙発生装置を設けることにより行うこともできるし、吹出ファン2により隣室より導入してもよい。噴霧された粒径50μm以下の微細水粒子は、所定空間に浮遊している放射性セシウムの他、塵芥、細菌、煙或いは臭い等の汚染粒子径とほぼ同じかやや大きな粒径となる汚染粒子を捕捉し、付着し、上記と同様、放射性セシウム除去装置1に吸収され、そのことを繰り返すことのできる循環型の装置となる。
【0040】
上記第1給水管14及び第2給水管19から第1ノズル15及び第2ノズル20に供給される水は、放射性セシウム除去装置1と連結した別途給水槽から新鮮な水として提供されることになる。
【0041】
また、吸込室5に取り込まれた放射性セシウムや他の汚染空気中の汚染物は、沈殿室6、6a、…に貯留水としてストックされ、汚水としてオーバーフローした位置に設けた汚水排出口8より外部へ排出されることになる。
【0042】
排出口8より排出された放射性セシウムを含む汚染水は、図6に示す放射性セシウム除去室9へ取り込まれることになる。該放射性セシウム除去室9は、立体形成された箱状体の中に対向する側壁間を折り返す全折階段状の傾斜水路23を形成し、その多数の階段状となる棚24上を放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水が流出する水路23として構成し、その棚24上に鉄バクテリア25を配設する。該棚24上には所定間隔毎に突起26を形成し、該突起26の前方となる水路23の上流側に鉄バクテリア25を配設する。
【0043】
該鉄バクテリア25は、その粉体を該棚24上の突起26の前方に配設することによって行われる。それにより棚24上には1μm〜10μm/個の鉄バクテリア25が2,000〜3,000億個/cmで載置され、約30〜50mgが配設されることになる。この鉄バクテリア25を配設した棚24上を放射性セシウムを含んだ汚染水を通過させることで、鉄バクテリア25と放射性セシウムとがイオン化結合し、放射性セシウムが鉄バクテリア25に吸着固定されることになる。放射性セシウム等が除去された水は、除染水室10へ排出されることになる。該鉄バクテリア25は、該突起26に目の細かい駕籠状又は網状のものを被せるようにして押さえて配設することができる。
【0044】
放射性セシウムは、アルカリ金属の一種で、反応性はアルカリ金属の中で最大である。また、イオン化結合し易い元素で、水とも強力的に反応する。また、水酸化セシウムは水酸化アルカリの中で最もアルカリ性が強く、更に、窒素、炭素、水素と直接反応し、空気中でも常温で直ちに酸化される。
【0045】
他方、鉄バクテリアは、他の金属同様、上記したアルカリ金属の放射性セシウムをエネルギー源として取り込むことが確かめられている。鉄バクテリアは、環境水中に微量含まれる放射性セシウム等の放射性金属の除去にも有効に作用すると考えられ、それら放射性セシウム等を菌体内に蓄積させる。鉄バクテリアは、鞘を持つ糸状のバクテリアのため、比重が大きく、且つスライムを形成するため、表面積の大きい面に接種繁殖させると、大量の水を処理することが可能である。また、沈降速度が高く、水との分離が容易で、放射性セシウム等の回収に特別な装置は必要なく、沈殿した汚染水を回収するだけでよい。鉄バクテリアは、その回収後において自然乾燥させると更に容積は小さくなる。
【0046】
上記放射性セシウムと鉄バクテリアの特性を利用し、放射性セシウムを吸着した汚染水は、上記実施例のように、該放射性セシウム除去室9において、連続的に放射性セシウム等の汚染物が除去され、除染水として除染水室10へ排出され、純水として再利用されることになる。
【実施例2】
【0047】
空気中の放射性セシウムを回収する実験として、密閉空間(縦2.0m×横2.0m×高さ2.0m)を形成した。該密閉空間において、放射性セシウム(134、137)と同等の物質で比較的無害な塩化セシウムを利用し、その塩化セシウム溶液10mg/Lを実施例1で示した放射性セシウム除去装置と同じ装置より微細水クラスターを噴霧した。8mL/分で3時間にわたり噴霧した。計算上は14.4mgの塩化セシウムが空間に放出されたことになる。上記の塩化セシウム溶液は、塩化セシウム標準溶液(1g/L)を希釈して用いた。
【0048】
その後、空気中の塩化セシウムを回収するため、純水の微細クラスターを当該装置又は別の放射性セシウム除去装置より20mL/分噴霧し、先に噴霧してある塩化セシウムと結合させて回収した。回収溶液は、3.6Lであった。その回収された水に含まれたセシウム量は、13mgであったので、この実験での塩化セシウム回収率は、約90%であった。密閉空間中に浮遊する塩化セシウムを効率よく回収できたことが検証された。
【0049】
上記により回収した塩化セシウム水を、実施例1と同様の放射性セシウム除去室に送出した。該放射性セシウム除去室内の鉄バクテリアは、レプトシリックス属細菌(Leptothrix sp.)と同定しているものを用いた。純水100mLに塩化セシウムを最終10mg/Lとなるように添加し、湿重量5gの菌体を加えて、通気しながら25℃で培養を行った。一定時間後に、培養液と菌体内のセシウムを定量して比較した。
【0050】
図7に示したような結果が得られた。当初10mg/Lあった培養液中のセシウム濃度は、急激に低下し、18時間経過後にはほぼ0となった。一方、同量の菌懸濁液を遠心分離したものでは、時間とともに増加していた。このことは、セシウムが菌体内部に取り込まれ、培養液から無くなったことを示している。レプトシリックス属細菌は、鞘を持つことが知られており、該セシウムは鞘に溜められた結果であることを示している。
【0051】
空気中の塩化セシウムは、放射性セシウム除去装置の運転前と運転後では、濃度は0.0012mg/Lから、ほぼ0までに減った。
【0052】
上記実験の結果、放射性セシウム除去装置は、空気中に存在する放射性セシウムもクラスター水に結合させて、水溶液として効率よく回収ができることが示された。また、鉄バクテリアは、他の金属同様、アルカリ金属のセシウムをエネルギー源として取り込むことが確かめられた。鉄バクテリアは、環境水中に微量含まれる放射性セシウム等の放射性金属の除去にも有効に作用すると考えられ、放射性セシウム等は菌体内に蓄積される。鞘を持つ糸状のバクテリアのため、比重が大きく、且つスライムを形成するため、表面積の大きい面に接種繁殖させると、大量の水を処理することが可能である。また、沈降速度が高く、水との分離が容易であるので、放射性セシウム等の回収に特別な装置は必要なく、沈殿したものを回収するだけでよい。バクテリア回収後は、自然乾燥させると更に容積は小さくなる。また、容積を小さくしたものを凝固させて封印してストックさせることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 放射性セシウム除去装置
2 吹出しファン
3 噴霧室
4 吸込ファン
5 吸込室
6 沈殿室
7 空気浄化室
8 排出口
9 放射性セシウム除去室
10 除染水室
11 第1仕切壁
12 空気流通路
13 仕切壁
14 第1給水管
15 第1ノズル
16 ポンプ
17、22 被衝突物体
18、21 コ字形金具
19 第2給水管
20 第2ノズル
23 水路
24 棚
25 鉄バクテリア
26 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウムを含む汚染空気中にクラスター水を噴霧し、該クラスター水に放射性セシウムを付着させた汚染微細粒子含有水を空気とともに吸込室に取り込み、該吸込室で汚染微細粒子含有水を沈殿させるとともに空気は空気浄化室へ送出させ、該空気浄化室内においてクラスター水を噴霧し、空気浄化室内の空気中に含む残った放射性セシウムと付着させ、それらを汚染微細粒子含有水として沈殿させ、放射性セシウムの除去された除染空気は大気中へ排出し、沈殿した該汚染微細粒子含有水は鉄バクテリアを配設した放射性セシウム除去室へ排出させ、該鉄バクテリアにより放射性セシウムを吸着固定し、放射性セシウムの除去された除染水は通常の水として利用されてなることを特徴とする空気中の放射性セシウムを除去する方法。
【請求項2】
クラスター水は、50μm以下の微細水粒子とし、水煙状態で噴霧してなることを特徴とする請求項1又は2記載の空気中の放射性セシウムを除去する方法。
【請求項3】
鉄バクテリアは、水溶性の二価の鉄イオンFe2+又は二価のマンガンイオンMn2+を酸化し、水酸化第2鉄Fe(OH)又は二酸化マンガンMnOの沈殿物を生成した細菌群としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の空気中の放射性セシウムを除去する方法。
【請求項4】
放射性セシウムを含む汚染空気中にクラスター水を噴霧する噴霧室、該クラスター水に放射性セシウムを付着させた汚染微細粒子含有水を空気とともに吸い込むためのファンを設けた吸込室、該吸込室に取り込まれた汚染微細粒子含有水を沈殿させ、且つ取り込んだ空気を浄化するための空気浄化室で取り込んだ空気中に含む放射性セシウムをクラスター水と付着させた汚染微細粒子含有水を沈殿させ、その両者のための沈殿室、該放射性セシウムの除去された浄化空気にクラスター水を付与する噴霧室へ送出すると同時に、上記汚染微細粒子含有水を該沈殿室より外部へ排出する排出口、該排出口より排出された汚染微細粒子含有水を通過させる鉄バクテリアを配設した放射性セシウム除去室、該放射性セシウムが除去された除染水を溜める除染水室とよりなることを特徴とする空気中の放射性セシウムの除去装置。
【請求項5】
吸込室は、上方に吸込ファンを設け、下方に放射性セシウムやその他の微細汚染物を付着した汚染微細粒子含有水をストックするための上方部を開放した沈殿室を設けたことを特徴とする請求項5記載の空気中の放射性セシウムの除去装置。
【請求項6】
空気浄化室は、一方側に吸込室に吸込まれた空気を流通させる空気流通路を設け、他方側に新鮮とされた空気を噴霧室へ流出する空気流通路を設け、この間に仕切壁により仕切られた適数個の個別空気浄化室を形成し、該個別空気浄化室には給水槽と連結された給水管の先端となるノズルを露出させ、該ノズルはポンプ圧により高速流出した微細水粒子を被衝突物質に衝突させることにより水煙とし、該水煙に放射性セシウムを付着させて沈殿させてなることを特徴とする請求項5又は6記載の空気中の放射性セシウムの除去装置。
【請求項7】
放射性セシウム除去室は、上方から下方へ向かう折り返す全折階段状の傾斜水路とし、該水路面に配設した鉄バクテリア上を放射性セシウムを含む汚染微細粒子含有水を流出させ、該鉄バクテリアと放射性セシウムとを結合させてなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか記載の空気中の放射性セシウムの除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113658(P2013−113658A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258779(P2011−258779)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(502257155)ノリ・トレーディング有限会社 (1)
【Fターム(参考)】