説明

空気清浄化装置

【課題】汚染物質を含む空気から、より効率的に汚染物質を除去することのできる空気清浄化装置を提供することのできる空気清浄化装置を提供する。
【解決手段】空気導入口、及び、空気導入口が空気を導入する方向と略平行な方向に第一の水性薬剤を噴霧する複数の第一のノズルを有し、空気導入口が空気を導入する方向と略垂直な方向に空気を排出する接触チャンバと、接触チャンバに接続され、接触チャンバが排出する空気の方向と略平行な方向に第二の水性薬剤を噴霧する複数の第二のノズル、及び、接触チャンバが排出する空気の方向とは略垂直な方向に空気を排出する排出口を有する濾過チャンバと、を備えた空気清浄化装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料や溶剤に含まれるトルエン、キシレン、酢酸ブチルなどの揮発性有機化合物(以下「VOC」という)は、大気中に放出されると、発癌性が指摘されている浮遊粒子状物質(以下「SPM」という。)や光化学スモッグの原因物質になるといわれている。
【0003】
2003年度の環境省の報告によると、2000年度で国内の施設から150万トンのVOCが排出されており、その中でも工場や屋外作業場からの排ガスに含まれるVOCが大部分を占めている。
【0004】
従来、排ガスに含まれるVOC等の汚染物質を除去する方法としては、いわゆる燃焼法が一般的であった。しかしながら、この燃焼法はエネルギーを浪費する上にランニングコストが高く、また、環境が重視される時代に適合する排ガス処理方式とはいえない。
【0005】
一方、ノズルを有するチャンバを用い、このチャンバに排ガスを導入して空気を清浄化しようとする技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−131836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術であっても、汚染物質排出量の更なる削減のためには改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、汚染物質を含む空気からより効率的に汚染物質を除去することのできる空気清浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を鑑み鋭意検討を行なったところ、ノズルを多段に分け、更にそれらの噴霧方向を異ならせることで、導入された空気に乱流を起こし、より気液接触効率を高めることができる点を発見し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の一観点に係る空気清浄化装置は、(1)空気導入口、及び、空気導入口が空気を導入する方向と略平行な方向に第一の水性薬剤を噴霧する複数の第一のノズルを有し、空気導入口が空気を導入する方向と略垂直な方向に空気を排出する接触チャンバと、(2)接触チャンバに接続され、接触チャンバが排出する空気の方向と略平行な方向に第二の水性薬剤を噴霧する複数の第二のノズル、及び、接触チャンバが排出する空気の方向とは略垂直な方向に空気を排出する排出口を有する濾過チャンバと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明により、汚染物質を含む空気から、より効率的に汚染物質を除去することのできる空気清浄化装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る空気清浄化装置の外観の概略図である。
【図2】実施形態に係る空気清浄化装置の断面の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の記載にのみ限定されるわけではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る空気清浄化装置の概略斜視図であり、図2は、本実施形態に係る空気清浄化装置の概略断面図である。
【0015】
これらの図で示すように、本実施形態に係る空気清浄化装置(以下「本装置」という。)1は、(1)空気導入口21、及び、空気導入口21が空気を導入する方向22と略平行な方向に第一の水性薬剤を噴霧する複数の第一のノズル23を有し、空気導入口21が空気を導入する方向22と略垂直な方向24に空気を排出する接触チャンバ2と、(2)接触チャンバ2に接続され、接触チャンバ2が排出する空気の方向(空気導入口21が空気を導入する方向22と略垂直な方向24)と略平行な方向31に第二の水性薬剤を噴霧する複数の第二のノズル32、及び、接触チャンバ2が排出する空気の方向24とは略垂直な方向34に空気を排出する排出口33を有する濾過チャンバ3と、を備えている。
【0016】
また、本空気清浄化装置は、上記第二のノズル32の前段及び後段に、フィルター兼第一のデミスタ層35及び第二のデミスタ層36を有している。
【0017】
また、本実施形態においては、濾過チャンバ3において、第二のデミスタ層36と壁面37との間に間隙38が設けられており、排出口33はこの間隙38に接続されている。
【0018】
本実施形態に係る接触チャンバ2は、導入される汚染物質を含む空気に対し、最初の汚染物質除去処理を行うことができるものであり、空気導入口21と複数の第一のノズル23を有して構成される。
【0019】
本実施形態において空気導入口21は、接触チャンバ2に汚染物質を含む空気を導入するためのものであり、いわゆる配管で実現することができる。空気導入口21は、途中で曲がっていてもよいが、接触チャンバ2内に空気を導入する部分では直線状であることが好ましく、空気導入口21が、設置される接触チャンバ2の壁面25に対し略垂直な方向で配置されていることが好ましい。ここで「略垂直」とは、完全に垂直である場合を含むことはもちろんであるが、設計上の誤差や多少のずれを含む角度を意味し、具体的には空気導入口21が設置される接触チャンバ2の壁面に対し80°以上100°以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは85°以上95°以下の範囲である。
【0020】
また本実施形態において空気導入口21の位置は、接触チャンバ2に空気を導入することができる限りにおいて限定されるわけではないが、接触チャンバ2と濾過チャンバ3の接続位置から離れて配置されていることが好ましく、接触チャンバ2と濾過チャンバ3の接続部分が面(接続面)26によって接続されている場合、この接続面26と対向する接触チャンバ2の他方の面27側に配置されていることが好ましく、より好ましくは空気導入口21の中心と接続面26の距離が、空気導入口21の中心と他方の面27の距離の2倍より大きく10倍以下、更に好ましくは3倍以上8倍以下の範囲内である。このようにすることで、乱気流を発生させて効率的に気液接触効率を向上させることができる。
【0021】
また本実施形態において接触チャンバ2には水性薬剤を噴霧することのできる複数の第一のノズル23が設けられている。複数の第一のノズル23は、ノズル設置面231に線状又は面状に複数配置されており、水性薬剤を噴霧する方向は、空気導入口21が空気を導入する方向22と略平行な方向であることが好ましい。なお第一のノズル23は、噴出した水性薬剤がノズルから遠ざかるに連れて均等に広がり略円錐形状となるように噴霧するものであり、「噴霧する方向」とは、この形成される略直円錐形状の垂線の方向をいう。
【0022】
また本実施形態の接触チャンバ2において、空気導入口21が空気を導入する方向の長さHは、第一のノズル23の噴霧距離よりも長いことが好ましい。このようにすることで、チャンバ内に噴霧されない領域28が形成され、この位置が存在することで乱気流を発生させることができるようになる。この長さとしては、特に限定されるわけではないが、ノズル設置面231から測定するノズルの噴霧距離Hを1とした場合、空気導入口が設置された面25とその対向する面29の間の距離は1.4以上2.1以下であることが好ましい。
【0023】
また本実施形態において、第一のノズル23から噴出される第一の水性薬剤は、汚染物質を含む空気に噴霧したとき、その汚染物質を吸着または被覆することができるものであり、この限りにおいて限定されるわけではないが、水性溶媒に、荷電がアニオン性、カチオン性及び両性のいずれかであって疎水性基を有する、極限粘度法で求めた平均分子量が5×10以上で、直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミド系共重合体(以下「PAM系共重合体」という。)を含んだものであることが好ましく、これに更に、水溶性無機塩、殺菌剤、界面活性剤、水溶性アクリル系共重合体、及び水溶性両親媒性有機化合物の少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。
【0024】
また本実施形態において、接触チャンバ2は、空気導入口21が空気を導入する方向22と略垂直な方向24に空気を排出することができる。具体的には、本実施形態において空気導入口21により導入された空気は、第一のノズル23が噴出させる水性溶剤の方向と略平行であるため、この方向に沿って勢いをつけられた空気は壁面29に衝突する。一方、この壁面29衝突した空気は接触チャンバ2内に跳ね返り、更に第一のノズル23から噴出され水性薬剤の勢いにより再び壁面29に衝突する。これが繰り返され、空気は乱流となって濾過チャンバ3に排出されることとなる。なお、乱気流であるが、接触チャンバ2から濾過チャンバ3に排出する空気の流れは、全体として、第一のノズル23が噴出させる水性溶剤の方向22と略垂直な方向24となる。ここで「略垂直」とは、完全に垂直な方向を含むことはもちろんであるが、設計上の誤差や多少のずれを含む角度を意味し、具体的には空気導入口21が設置される接触チャンバ2の壁面からの垂線に対し80°以上100°以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは85°以上95°以下の範囲である。
【0025】
また、本実施形態において、濾過チャンバ3は、上記接触チャンバ2により排出された空気を濾過するために設けられるチャンバであって、接触チャンバ2が排出する空気の方向(空気導入口21が空気を導入する方向22と略垂直な方向24)と略平行な方向31に第二の水性薬剤を噴霧する複数の第二のノズル32と、接触チャンバ2が排出する空気の方向24とは略垂直な方向34に空気を排出する排出口33と、を有する。濾過チャンバを設けることで、接触チャンバ内で第一のノズル23によって噴出されるミストと接触しなかった汚染物質を確実に補足、吸着することができ、汚染物質の削減率を挙げることができる。
【0026】
また本実施形態における濾過チャンバ3には、水性薬剤を噴霧することのできる複数の第二のノズル32が設けられている。複数の第二のノズル32は、ノズル設置面321に線状又は面状に複数配置されており、水性薬剤を噴霧する方向は、濾過チャンバ3が空気を導入する方向31と略平行な方向に第二の水性薬剤を噴霧することができる。なお第二のノズル32は、噴出した水性薬剤がノズルから遠ざかるに連れて均等に広がり略円錐形状となるように噴霧するものであり、「噴霧する方向」とは、この形成される略直円錐形状の垂線の方向をいう。また、濾過チャンバ3も、上記接触チャンバ2と同様、ノズル設置面321と第二のデミスタ層36の長さは、第二のノズル32の噴霧距離よりも長いことが好ましい。
【0027】
また本実施形態において、第二のノズル32によって噴出される第二の水性薬剤は、上記第一の水性薬剤と同じものを採用することができる。具体的には、水性溶媒に、荷電がアニオン性、カチオン性及び両性のいずれかであって疎水性基を有する、極限粘度法で求めた平均分子量が5×10以上で、直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミド系共重合体(以下「PAM系共重合体」という。)を含んだものであることが好ましく、これに更に、水溶性無機塩、殺菌剤、界面活性剤、水溶性アクリル系共重合体、及び水溶性両親媒性有機化合物の少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。なお、第一の水性薬剤と第二の水性薬剤は同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
また本実施形態において、濾過チャンバ3は、第二のノズル32の前段に、フィルター兼第一のデミスタ層35を有している。このデミスタ層35を配置することで、噴霧され霧状となった水性薬剤を液滴化し、接触チャンバ2に導入された空気中に含まれる汚染物質を空気から分離し、回収することが可能となる。なお第一のデミスタ層35としては、フィルターとして機能させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば不織布を有して構成されていることは好ましい。
【0029】
また本実施形態において、濾過チャンバ3は、第二のノズル32の後段に、第二のデミスタ層36を有している。このデミスタ層36を配置することで、噴霧され霧状となった水性薬剤を液滴化し、濾過チャンバ2に導入された空気中に残された汚染物質を空気から分離し、回収することが可能となる。これにより、より確実に空気の清浄化を行なうことができる。
【0030】
また本実施形態において、濾過チャンバ3は、空気を導入する方向31と略垂直な方向33に空気を排出する。具体的には、本実施形態において接触チャンバ2から導入された空気は、第二のノズル32が噴出させる水性薬剤の方向と略平行であるため、方向にそって勢いをつけられた空気が壁面37に衝突する。一方、この壁面37に衝突した空気は濾過チャンバ3内に跳ね返り、更に第二のノズル32から噴出され水性薬剤の勢いにより再び壁面37に衝突する。これが繰り返され、濾過チャンバ3の排出口33より排出されることとなる。
【0031】
また本実施形態においては、濾過チャンバ3において、第二のデミスタ層36と壁面37との間に間隙38が設けられており、排出口33はこの間隙38に接続されている。この間隙38を配置することで、接触チャンバ2から導入される乱流を確実に発生させることが可能となり、汚染物質を含む空気から、より効率的に汚染物質を除去することができる。
【0032】
以上、本実施形態の空気清浄化装置は、汚染物質を含む空気から、より効率的に汚染物質を除去することができる。
【実施例】
【0033】
ここで、実際に上記空気清浄化装置を作製し、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0034】
まず、高さ1.5m×幅1.5m×長さ4.7mの容積を有する容器を用意し、その内部を長さ方向で2mと2.7mとに区分けし、2mに区分けした部分の天井面に対し垂直な方向から空気導入口(大きさ60cm×60cm)を接続し、他方の天井面に排出口(大きさ60cm×60cm)を接続した。なお、空気導入口の中心の位置は、端の壁面から40cmの位置に配置した。
【0035】
また本実施例では、16個の第一のノズルを天井面から7.5cm下の位置に配置した。なお第一のノズルは市販の2流体広角ラウンドタイプのものを用い、噴霧距離1m、噴霧ミストの平均径16.2μmになるように、空気圧、水圧を調節した。
【0036】
また本実施例では、内部空間の中心に、フィルター兼第一のデミスタ層を設け、二つの領域を接触チャンバ、濾過チャンバとして明確に区分した。なおここでフィルター兼第一lのデミスタ層としては、不織布フィルターを使用した。
【0037】
また本実施例では、9個の第二のノズルを、側壁面に平行な面状に配置した。なお第一のデミスタ層からは10cm距離をおき配置した。なお、第二のノズルも第一のノズルと同様、市販の2流体広角ラウンドタイプのものを用い、噴霧距離1m、噴霧ミストの平均径16.2μmになるように、空気圧、水圧を調節した。
【0038】
また本実施例では、第二のノズルの噴出方向において、側壁面に平行となるよう第二のデミスタ層を設け、幅70cmの間隙を形成し、この間隙が排出口に接続されるよう作製した。
【0039】
そして、上記作製した空気清浄化装置に対し、VOC削減試験を行い、削減した全VOC(以下T−VOCという)とVOCの含有成分について評価を行なった。VOCの含有成分については下記表1に結果を示す。なお、このT−VOCは、FID−THC法により行い、VOC含有成分測定法はGC−MS法で行った。ここで、排気風量、即ち空気導入口21から導入される空気量は270m/minで、温度は70℃であった。なお、T−VOC削減試験において処理前排ガスは1850ppmCであり、本装置による処理後は240ppmCとなっており、削減率は87%と非常に高性能であった。
【0040】
【表1】

【0041】
この結果、いずれも100%に近い削減率を達成することができており、本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、空気清浄化装置として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気導入口、及び、前記空気導入口が空気を導入する方向と略平行な方向に第一の水性薬剤を噴霧する複数の第一のノズルを有し、前記空気導入口が空気を導入する方向と略垂直な方向に空気を排出する接触チャンバと、
前記接触チャンバに接続され、前記接触チャンバが排出する空気の方向と略平行な方向に第二の水性薬剤を噴霧する複数の第二のノズル、及び、前記接触チャンバが排出する空気の方向とは略垂直な方向に空気を排出する排出口を有する濾過チャンバと、を備えた空気清浄化装置。
【請求項2】
前記第二のノズルの前段及び後段に、フィルター兼第一のデミスタ層及び第二のデミスタ層がそれぞれ設けられている請求項1記載の空気清浄化装置。
【請求項3】
前記濾過チャンバにおいて、前記第二のデミスタ層と壁面との間に間隙が設けられており、前記排出口は前記間隙に接続されている請求項1記載の空気清浄化装置。
【請求項4】
前記接触チャンバにおいて、前記空気導入口が空気を導入する方向の長さは、前記第一のノズルの噴霧距離よりも長い請求項1記載の空気清浄装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96147(P2012−96147A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244863(P2010−244863)
【出願日】平成22年10月30日(2010.10.30)
【出願人】(000102566)エスポ化学株式会社 (7)
【Fターム(参考)】