説明

空調装置、病室コンソール及び病室

【課題】空調エアに温度ムラが発生することを抑制できる病室コンソールを提供する。
【解決手段】病室内の壁に上下方向の延長状態で設置される病室コンソール24のハウジング31に、空調エア供給機からの送風管29を接続するための接続部32を設ける。ハウジング31の前面の上下両端部には、開閉可能な冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34を設ける。各吹出口33,34には、ハウジング31内の送風の温度に応じて吹出口33,34を開閉するための開閉機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調装置、病室コンソール、及びその病室コンソールを設置した病室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病室に設置される病室コンソールとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、コンソール本体が病室の壁面に縦方向に延長状態で配置され、そのコンソール本体には医療用ガスの接続口や電源コンセントが設けられている。コンソール本体の上端部には、病室の天井に配置された空調リターンダクトが接続されている。コンソール本体の下端部には、病室内に開口する空調リターン吸込口が設けられている。そして、病室内のエアが空調リターン吸込口からコンソール本体内に吸い込まれ、コンソール本体内を通して空調リターンダクトから室外に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−144500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成においては、病室内への冷房や暖房のための空調エアの供給構成については設けられていない。このため、コンソール本体内を通して病室内のエアが室外に排出されたとしても、病室内への冷房や暖房の空調エアの供給は、在来構成のように病室の天井面等に設けられた吹出口から行われることになる。よって、空調エアがベッド上の患者の頭部等に直接吹き付けられて、不快な気流感を与えやすい。しかも、例えば、天井面の吹出口から暖房用の温風が吹き出される場合、その温風は部屋内の下部に行き渡りにくく、天井部付近の上部に滞留しやすい。従って、暖房効率が悪いばかりでなく、部屋内の下部は低温のままであって、足許が寒く、快適性に欠けるものであった。これを防止するために、例えば、壁の上部にサーキュレータを設けることがあるが、暖気は下降し難いため、その効果は充分ではない。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、不快な気流感を防止することができるとともに、空調効率を向上できる空調装置、病室コンソール及び病室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、建物内の壁に上下方向の延長状態で設置される供給ダクトの上下両端部に開閉可能な吹出口を設けることを特徴としている。
従って、この発明の空調装置においては、冷房時にはダクトの上端部に設けられた吹出口を開放して冷風を供給するとともに、暖房時にはダクトの下端部に設けられた吹出口を開放して温風を供給することが可能となる。よって、この空調装置を病室の空調用として用いた場合、空調エアがベッド上の患者に直接吹き付けられることを回避して、患者に不快な気流感を与えるおそれを防止することができる。また、冷房時と暖房時とにおいて、空調エアが上下の適切な吹出口から選択的に供給されるため、ベッド周辺で空調エアに温度ムラが発生することを抑制することができる。
【0007】
前記空調装置において、前記ダクト内の送風の温度に応じて前記吹出口を開閉するための開閉機構を設けるとよい。
前記空調装置において、前記開閉機構は温度変化に応じて変形する形状記憶材の動きを利用した構成にするとよい。
【0008】
また、病室コンソールに係る発明では、病室内に設置されるハウジングに空調エア供給機からの供給管を接続するための接続部を設けるとともに、前記ハウジングの上下両端部に開閉可能な吹出口を設けたことを特徴としている。
【0009】
従って、この発明の病室コンソールにおいては、ハウジングを空調エアの供給路として利用することができる。そして、ベッド上の患者に対する空調エアの吹き付けにより、不快な気流感を与えるおそれを防止することができるとともに、ベッド周辺における空調エアの温度ムラの発生を抑制することができる。
【0010】
前記病室コンソールにおいて、前記ハウジングは病室内の壁に上下方向の延長状態で設置するとよい。
前記病室コンソールにおいて、前記各吹出口をハウジングの左右に並設するとよい。
【0011】
前記病室コンソールにおいて、前記ハウジング内の送風の温度に応じて前記吹出口を開閉するための開閉機構を設けるとよい。
前記病室コンソールにおいて、前記開閉機構は温度変化に応じて変形する形状記憶材の動きを利用した構成にするとよい。
【0012】
さらに、病室に係る発明では、前記のような構成の病室コンソールを壁に設置したことを特徴としている。
前記病室において、病室コンソールを並設されるベッド間の位置に設けたとよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、空調エアがベッド上の患者等に直接吹き付けられることを抑制して、不快な気流感を与えるおそれを防止することができるとともに、室内に温度ムラが発生することを抑制できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の空調装置付の病室コンソールを設置した病室を示す平断面図。
【図2】図1の病室コンソールを拡大して示す斜視図。
【図3】図2の3−3線における拡大断面図。
【図4】図2の病室コンソールの吹出口を拡大して示す要部正面図。
【図5】図4の5−5線における断面図。
【図6】図4の6−6線における断面図。
【図7】(a)〜(c)は吹出口における複数の開閉板を示す部分正面図。
【図8】冷房用吹出口及び暖房用吹出口の開閉状況を示すタイムチャート。
【図9】第2実施形態の空調装置付の病室コンソールを設置した病室を示す平断面図。
【図10】図9の病室コンソールを拡大して示す斜視図。
【図11】第3実施形態の空調装置付の病室コンソールを示す斜視図。
【図12】図11の病室コンソールの縦断面図。
【図13】第4実施形態の空調装置付の病室コンソールを設置した病室を示す部分平断面図。
【図14】図14の病室コンソールを拡大して示す斜視図。
【図15】第5実施形態の病室コンソールの吹出口を示す断面図。
【図16】第6実施形態の病室コンソールの吹出口を示す断面図。
【図17】図16の構成においてダンパを動作させる構成を示す断面図。
【図18】第6実施形態の病室コンソールの吹出口を示す断面図。
【図19】(a)〜(c)はダンパの動作態様を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1に示すように、この実施形態において、病院の建物内の病室21には、入口21aと、両側の壁21bと、窓21cとが設けられている。病室21内の入口21aの両側部には、それぞれ2つのベッド22が入口側と奥部側とにおいてベッド頭部側を壁21b側に向けた状態で配置されている。各ベッド22の周囲を巡るようにカーテンレール(図示しない)が架設され、このカーテンレールにカーテン23が開閉可能に吊下されており、カーテン23により壁21b側を除くベッド22の三方の周囲が目隠しされるようになっている。
【0016】
並設された2つのベッド22間において病室21の壁21bには、2つのベッド22で共用の病室コンソール24が上下方向に延長した状態で設置固定されている。各ベッド22の側部における床面上には、テレビ、冷蔵庫等の載置や小物の収納に使用するキャビネット25が設置されている。
【0017】
前記病室21の天井裏には、空調装置26の室内側熱交換ユニットよりなる空調エア供給機27が配置されている。病室21内において窓21cの下部近傍には、空調エア吹出口28が窓21cに沿って延長状態で配置されている。病室21の天井裏において、空調エア供給機27と各病室コンソール24との間、及び空調エア供給機27とエア吹出口28との間には、空調エア供給機27から各病室コンソール24及びエア吹出口28に空調エアを供給するための複数の送風管29が延長されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、前記病室コンソール24の外殻を構成する供給ダクトを構成するハウジング31は、横断面五角筒状の縦長ダクト形状をなしている。ハウジング31の上端を閉鎖する端板31aには、空調エア供給機27からの送風管29を接続するための接続部32が設けられている。ハウジング31の下端は図示しない端板によって閉鎖されている。ハウジング31の両側においてそれぞれベッド22側の領域に対面する一対の傾斜壁31bの上下両端部には、冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34がそれぞれベッド22の足許側の領域を指向するように、各ベッド22に対応して設けられている。
【0019】
ハウジング31の両側における直立壁31cには、複数の医療用ガスの接続口35、電源コンセント36,電灯用等のスイッチ37及びネットワーク接続用のコネクタ40がそれぞれ配置されている。これらの医療用ガスの接続口35、電源コンセント36,電灯用等のスイッチ37及びネットワーク接続用のコネクタ40を利用したり、操作したりすることにより、患者に対する医療ガスの供給を行い得るとともに,患者が各種電気機器に対する使用,電灯の点灯及び消灯,パソコンの接続等を行ない得るようになっている。
【0020】
ハウジング31の内側面には、医療用ガスの接続口35に接続されるガス供給管38と、電線やデータ送信ケーブル等よりなるハーネス39とが延長配置されている。
図4及び図5に示すように、前記冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34の各外枠41は、前後両面を開口した四角枠状に形成されている。図5及び図6に示すように、各外枠41の前面には開口枠42が固定され、その開口枠42内には複数枚の羽板43よりなるルーバー53が取り付けられている。開口枠42の後方において外枠41内には、開閉機構としての開閉機構44が配置されている。すなわち、外枠41の両側壁間には固定開閉板45が架設されており、その固定開閉板45には上下方向に延びる長孔状の透孔45aが複数形成されている。固定開閉板45の前後両面には第1可動開閉板46及び第2可動開閉板47が左右方向へ移動可能に接合配置され、それらの可動開閉板46,47には固定開閉板45の透孔45aと同様な複数の長孔状の透孔46a,47aが形成されている。
【0021】
前記第1可動開閉板46の前面上部には、操作レバー48が前方に向かって突設されている。そして、この操作レバー48により第1可動開閉板46が一方の位置に移動されたときには、第1可動開閉板46の各透孔46aが固定開閉板45の各透孔45aと一致して、外枠41内の空調エアの流路が開放可能な状態になる。これに対して、操作レバー48により第1可動開閉板46が他方の位置に移動されたときには、第1可動開閉板46の各透孔46aが固定開閉板45の各透孔45aと不一致の閉鎖状態になって、外枠41内の空調エアの流路が開放不能な状態になる。従って、この第1可動開閉板46により各吹出口33,34が開閉される。
【0022】
前記第2可動開閉板47の後方において外枠41内には、作動体49が支持板50及びステー(図示しない)を介して左右方向へ移動可能に配置されている。作動体49は連結板51により第2可動開閉板47に連結されている。作動体49の先端部と支持板50との間には、外枠41内,すなわちハウジング31内の温度変化に応じて変形するコイル状の形状記憶材として形状記憶合金52が介装されている。形状記憶合金52の近傍には、その形状記憶合金52にバイアス力を付与するためのスプリング(図示しない)が付設されている。そして、この形状記憶合金52が温度変化に応じて変形することにより、第2可動開閉板47が左右方向に移動される。この移動により、第2可動開閉板47の各透孔47aが固定開閉板45の各透孔45aと一致または不一致となって、冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34における外枠41内の空調エアの流路が選択的に開閉される。
【0023】
そして、冷房用吹出口33側の形状記憶合金52と、暖房用吹出口34側の形状記憶合金52とは変態点が異なるものが用いられるとともに、形状記憶合金52の記憶変形及びバイアスバネの作用による冷房用吹出口33と暖房用吹出口34との開閉態様が逆になるように同合金52が組み込まれている。つまり、図8に示すように、冷房用吹出口33においては、空調エアが冷風の場合に、冷房用吹出口33はバイアスバネの付勢力によって開放状態にあり、空調エアが高温になると、形状記憶合金52が形状記憶側に形状変化して、閉鎖される。従って、冷房用吹出口33は冷風送風時に大きく開放される。また、暖房用吹出口34側においては、空調エアが低温の場合に、暖房用吹出口34はバイアスバネの付勢力によって閉鎖状態にあり、空調エアが温風になると、形状記憶合金52が形状記憶側に形状変化して、開放される。従って、暖房用吹出口34は温風送風時に大きく開放される。
【0024】
次に、この実施形態の作用を説明する。
図1に示すように、病室コンソール24は並設されたベッド22間において病室21の壁21bに設置される。この状態で、空調エア供給機27からハウジング31内に冷風が送出されると、その冷風の温度によって上側の冷房用吹出口33の形状記憶合金52がバイアスバネよって変形して、冷房用吹出口33が大きく開放されるとともに、暖房用吹出口34が閉鎖状態となる。このため、冷風が上側の冷房用吹出口33からベッド22の足許側の領域に向かって供給される。また、空調エア供給機27から温風が送出されると、その温風の温度によって下側の暖房用吹出口34の形状記憶合金52が形状記憶側に変形して、暖房用吹出口34が大きく開放されるとともに、冷房用吹出口33が閉鎖状態となる。このため、温風が下側の暖房用吹出口34からベッド22の足許側の領域に向かって供給される。
【0025】
例えば、ベッド22が空きベッドで、空調エアの供給が不要な場合や、空調エアの供給を避けたい場合は、吹出口33,34を操作レバー48の操作によって閉じればよい。
そして、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0026】
(1) この実施形態においては、病室21内に設置されるハウジング31に空調エア供給機27からの送風管29を接続するための接続部32が設けられている。そして、ハウジング31の上下両端部には、開閉可能な吹出口33,34が設けられている。
【0027】
このため、冷房時にはハウジング31の上端部に設けられた吹出口33を開放して冷風を病室21内に供給するとともに、暖房時にはハウジング31の下端部に設けられた吹出口34を開放して温風を供給することができる。よって、冷房時と暖房時とにおいて、空調エアが上下の吹出口33,34から選択的に供給されるため、温風の滞留等によって室内に温度ムラが発生することを抑制することができる。
【0028】
(2) 冷風がハウジング31の上部から供給されるため、冷風が天井から直下に向かって吹き下ろされるようなことを防止できる。しかも、冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34がベッド22の足許側の領域に向かって空調エアを供給する。このため、患者に不快な気流感を与えるおそれを防止することができる。
【0029】
(3) 病室21内に空調エアを供給するための吹出口をベッド22毎に天井部に設置する必要がなくなる。このため、天井部に吹出口用の開口を穿つことが不要になり、よって、施工性が向上し、工期短縮に寄与する。
【0030】
(4) ハウジング31が空調エアの供給ダクトを兼用するため、室内の湿度を調節して結露を防止すれば、ハウジングから冷房や暖房の輻射熱を放散させることができる。このため、空調効果を向上させることができる。
【0031】
(5) 吹出口33,34が各ベッド22に対応して設けられているため、ベッド22の周囲をカーテン23によって区切れば、ひとつのベッド22周りの個別空調が可能となり、不要な領域の空調を省くことができて、空調費用の節約に貢献できる。
【0032】
(6) ハウジング31が病室21内の壁21bに上下方向の延長状態で設置されている。このため、縦長形状のハウジング31を病室21内の壁21bに沿って邪魔になることなく設置することができる。
【0033】
(7) 前記各吹出口33,34がハウジング31の左右に並設されている。このため、2つのベッド22が並べて配置された複数人用の病室21においては、2つのベッド22間の壁に沿って1つの共用の病室コンソール24を設置することにより、両ベッド22周辺への空調エアの吹き出しを行うことができて、省スペースに貢献できる。
【0034】
(8) 前記各吹出口33,34にハウジング31内の送風の温度に応じて吹出口33,34を開閉するための開閉機構44が設けられている。このため、冷房時と暖房時とにおいて、上下の吹出口33,34の切り換え開閉を送風の温度に応じて自動的に行うことができる。
【0035】
(9) この空調装置付の病室コンソールにおいては、前記開閉機構44が温度変化に応じて変形する形状記憶合金52の動きを利用した構成となっている。従って、開閉機構44のための電気系統の配線等が不要になり、開閉機構44の構造が簡単であるとともに、送風の温度変化に応じて吹出口33,34の切り換え開閉を適切に行うことができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。この第2実施形態以降の各実施形態及び変更例については、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
この第2実施形態においては、図9及び図10に示すように、病室21がその内部に1つのベッド22が配置された個室様式となっている。病室21の隅角部には、病室コンソール24が壁21bに沿って上下方向に延びるように設置されている。この病室コンソール24のハウジング31は、横断面直角三角筒状の縦長ダクト状をなすように構成されている。ハウジング31の前面を構成する斜辺壁31eの上下両端部には前記第1実施形態と同様な冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34が設けられるとともに、前面の中央部には複数の医療用ガスの接続口35,電源コンセント36,電灯用等のスイッチ37及びネットワーク接続コネクタ40が配置されている。
【0038】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(5)及び(7)に記載の効果を除いた効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態を説明する。
【0039】
この第3実施形態においては、図11及び図12に示すように、キャビネット25が空調装置26のダクトを構成する病室コンソールとして、病室21の床面に固定配置されている。キャビネット25のハウジング54は、前面を開口した箱形状に形成されている。ハウジング54内の前部には小物や冷蔵庫等を収納するための複数の収納部55A,55Bが区画形成され、上方収納部55Aの前面には扉56が開閉可能に取り付けられている。ハウジング54内の後部にはダクト部57が区画形成され、そのダクト部57の後面には空調エア供給機27からの送風管29を接続するための接続部32が設けられている。ハウジング54の上面後部にはダクト部57の上端に連通する冷房用吹出口33が上向きに設けられるとともに、ハウジング54の前面下部にはダクト部57の下端に連通する暖房用吹出口34が設けられている。
【0040】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態における(5)〜(7)に記載の効果を除いた効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、この発明を具体化した第4実施形態を説明する。
【0041】
この第4実施形態では、図13及び図14に示すように、病室コンソール24が病室21内のベッド22間における壁21b面に埋設した状態で設置されている。この病室コンソール24のハウジング31は、横断面五角筒状の縦長ダクト状をなすように構成されている。ハウジング31の前面の稜線の両側における傾斜壁31dの上下両端部には冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34がそれぞれ左右に並べて設けられるとともに、前面の中央部には複数の医療用ガスの接続口35,電源コンセント36,電灯用等のスイッチ37及びネットワーク接続コネクタ40がそれぞれ左右に並べて配置されている。
【0042】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1実施形態における効果を得ることができる。そして、この第4実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(10) この空調装置付の病室コンソールにおいては、ハウジング31が病室21内の壁21b面に埋設した状態で設置されている。このため、縦長形状のハウジング31を病室21内の壁21b面に突出することなく設置することができる。よって、病室21内のスペースを広くすることができるとともに、ハウジング31の設置安定性を高めることができる。
【0043】
(第5実施形態)
次にこの発明を具体化した第5実施形態を説明する。
この第5実施形態では、図15に示すように、冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34の外枠41内に、空調エアの温度を検出するための温度センサ58が配置されている。開閉機構44の第2可動開閉板47を開閉移動させるための作動体49には、前記第1実施形態の形状記憶材に代えてソレノイドよりなるアクチュエータ59が接続されている。そして、温度センサ58による空調エアの温度検出に基づいて、アクチュエータ59により第2可動開閉板47が左右方向に移動されて、冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34が選択的に開閉されるようになっている。
【0044】
従って、この第5実施形態においても、前記第1実施形態における(9)に記載の効果を除く効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第6実施形態)
次に、この発明を具体化した第6実施形態を図16及び図17に基づいて説明する。
【0045】
この第6実施形態では、冷房用吹出口33及び暖房用吹出口34の外枠41内にダンパ61が軸62より回動可能に構成されている。そして、このダンパ61は外枠41内の空調エアの流路を閉鎖する位置(実線の位置)と開放する位置(2点鎖線の位置)とに切り替えられる。なお、ダンパ61はストッパ63,64によって前記2位置に規制される。図17に示すように、ハウジング31内における外枠41の外面において前記軸62には小歯車65が固定されている。その小歯車65には大歯車66が噛合されている。この大歯車66には、コイル状の形状記憶合金52とバイアスバネ60とが連結されている。この大歯車66,形状記憶合金52及びバイアスバネ60は、外枠41及びハウジング31のどちらに支持されていてもよい。
【0046】
そして、形状記憶合金52の記憶変形による冷房用吹出口33と暖房用吹出口34との開閉態様が逆になるように同合金52及びバイアスバネ60が組み付けられている。このため、前記第1実施形態と同様に、空調エアが冷風の場合には、バイアスバネの付勢力によって冷房用吹出口33が開放されるとともに、暖房用吹出口34は閉鎖される。また、空調エアが温風になると、形状記憶合金52の形状変化により暖房用吹出口34が開放されるとともに、冷房用吹出口33は閉鎖される。
【0047】
従って、この実施形態においては、前記第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第7実施形態)
次に、この発明の第7実施形態を図18及び図19に基づいて説明する。
【0048】
この第7実施形態では、前記第6実施形態の形状記憶合金52に代えて、温度センサ58からの温度検出信号によって動作されるブレーキ付きサーボモータ71によってダンパ61が回動されるものである。従って、この実施形態では、ブレーキ付きサーボモータ71の作用により、ダンパ61を閉鎖位置と開放位置との間の中間位置に保持することが可能になる。このため、例えば、図19(a)(c)に示す冷房及び暖房の外に、図19(b)に示すように、冷房と暖房との間の中間温度(例えば摂氏23度)で送風を実行する場合には、両ダンパ61を半開きにして、上下の吹出口33,34から同時に空調エアを室内に送ることができる。
【0049】
従って、この実施形態においては、前述の効果に加えて以下の効果がある。
(11) 吹出口33,34を半開状態にして上下双方の位置から送風を行なうことができるとともに、ダンパ61によって送風角度を調節することも可能となる。
【0050】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記第5実施形態において、開閉機構44のアクチュエータ59をモータより構成して、そのモータの回転によりボールネジ等を介して第2可動開閉板47を開閉移動させるように構成すること。
【0051】
・ ルーバー53の羽板43の角度を調節するための装置を設けること。この場合、羽板43により開口枠42を閉鎖できるようにすれば、第1可動開閉板46を省略できる。
・ 形状記憶合金に代えて形状記憶樹脂を設けること。
【0052】
・ この発明を、病院の病室以外に、老人ホームの部屋,一般住宅の部屋,オフィスの部屋等、他の場所において具体化すること。
【符号の説明】
【0053】
21…病室、21b…壁、22…ベッド、24…ダクトを構成する病室コンソール、25…床置き台、26…空調装置、27…空調エア供給機、29…送風管、31…ハウジング、32…接続部、33…冷房用吹出口、34…暖房用吹出口、44…開閉機構、45…固定開閉板、46…第1可動開閉板、47…第2可動開閉板、48…操作レバー、49…作動体、52…形状記憶合金、58…温度センサ、59…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の壁に上下方向の延長状態で設置される供給ダクトの上下両端部に開閉可能な吹出口を設けたことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記供給ダクト内の送風の温度に応じて前記吹出口を開閉するための開閉機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記開閉機構は温度変化に応じて変形する形状記憶材の動きを利用したことを特徴とする請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
病室内に設置されるハウジングに空調エア供給機からの送風管を接続するための接続部を設けるとともに、前記ハウジングの上下両端部に開閉可能な吹出口を設け、ハウジングを空調エアの供給ダクトとしたことを特徴とする病室コンソール。
【請求項5】
前記ハウジングは病室内の壁に上下方向の延長状態で設置されることを特徴とした請求項4に記載の病室コンソール。
【請求項6】
前記各吹出口をハウジングの左右に異なる向きで並設したことを特徴とする請求項4または5に記載の病室コンソール。
【請求項7】
前記ハウジング内の送風の温度に応じて前記吹出口を開閉するための開閉機構を設けたことを特徴とする請求項4〜6のうちのいずれか一項に記載の病室コンソール。
【請求項8】
前記開閉機構は温度変化に応じて変形する形状記憶材の動きを利用したことを特徴とする請求項7に記載の病室コンソール。
【請求項9】
請求項4〜8のうちのいずれか一項に記載の病室コンソールを壁に設置したことを特徴とする病室。
【請求項10】
前記病室コンソールを並設されるベッド間の位置に設けたことを特徴とする請求項9に記載の病室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−113553(P2013−113553A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262410(P2011−262410)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】