説明

空調装置

【課題】PTCヒーターを使用する空調装置において、ヒーターを駆動するスイッチングデバイスの冷却構造を提案する。
【解決手段】送風ユニット1により送風される空気を冷却する冷却ユニット2と、冷却ユニット2の下流に設けられたPTCヒーターを含む加熱ユニット4と、加熱ユニット4を通過して空調吹出口へ流れる空気量と加熱ユニット4を迂回して空調吹出口へ流れる空気量とを調節するエアミックスダンパー3と、を含んで構成され、加熱ユニット4を駆動するスイッチングデバイス6を冷却するためのヒートシンク6bが、冷却ユニット2により冷却された空気の通風経路に設置される、空調装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両用の空調装置に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
現在一般的な車両用の空調装置は、特許文献1の図1に示されるように、ブロワファン等により外気又は内気を導入する送風ユニット(8)と、送風ユニットにより送風される空気を冷却するエバポレーター等の冷却ユニット(9)と、冷却ユニットの下流に設けられた温水式ヒーター等の加熱ユニット(10)と、加熱ユニットを通過して空調吹出口へ流れる空気量と加熱ユニットを迂回して空調吹出口へ流れる空気量とを調節するエアミックスダンパー(11)と、を含んだ構成とされる。
【0003】
このうちの暖房用の加熱ユニットについて、近年普及してきたハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される空調装置にあっては、エンジン冷却水を熱源として使用できないことから、温水式ではなく電気式のヒーター、中でもPTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)ヒーターが採用されている(特許文献1の図2参照)。PTCヒーターは、例えば特許文献2にあるように、スイッチングデバイス(特許文献2では駆動トランジスタ)のPWM制御によって駆動することが可能であり、このようなスイッチングデバイスには、PTCヒーターの消費電力に耐え得るIGBTが一般的に使用される。
【0004】
PTCヒーターを駆動するスイッチングデバイスは大容量で発熱量が多いので、過熱防止策を施しておく必要ある。特許文献2の場合、スイッチングデバイスの温度を検出し、過熱状態であると判定されたときに、PTCヒーターの温度を上昇させて抵抗値を上げることでスイッチングデバイスに流れる電流を抑制し、この結果としてスイッチングデバイスの温度を下げる、という制御手法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−162099号公報
【特許文献2】特開2008−035684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、スイッチングデバイスにより駆動される電気式加熱ユニットをもつ空調装置の場合、そのスイッチングデバイスの過熱を抑制することが重要である。特許文献2の場合は、スイッチングデバイスが過熱状態となってから、過熱を判定したECUによって温度を下げるための制御が実行されるので、スイッチングデバイスを過熱状態へ至らせない、つまりスイッチングデバイス自体を冷却して過熱を抑制する、という視点で改良の余地がある。
この点に鑑みて本発明は、空調装置において、加熱ユニットを駆動するスイッチングデバイスの冷却構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当課題に対して提案する空調装置は、
送風ユニットにより送風される空気を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの下流に設けられた加熱ユニットと、
前記加熱ユニットを通過して空調吹出口へ流れる空気量と前記加熱ユニットを迂回して前記空調吹出口へ流れる空気量とを調節するエアミックスダンパーと、を含んで構成され、
前記加熱ユニットを駆動するスイッチングデバイスを冷却するためのヒートシンクが、前記冷却ユニットにより冷却された空気の通風経路に設置される、空調装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記提案に係る空調装置によれば、スイッチングデバイスのヒートシンクに冷却ユニットによる冷風をあてて空冷することができ、スイッチングデバイスの過熱を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】空調装置の第1の実施形態を示した概略図。
【図2】スイッチングデバイスの斜視図。
【図3】空調装置の第2の実施形態を示した概略図。
【図4】空調装置の第3の実施形態を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
空調装置の第1の実施形態を図1に示す。図示の空調装置は、内部を仕切って通風経路を形成したハウジングH内に、上流から下流へ、送風ユニット1、冷却ユニット2、エアミックスダンパー(又はエアミックスドア)3、加熱ユニット4を組み付けた構成である。
【0011】
送風ユニット1は、外気導入口又は内気導入口から空気を取り入れ、ハウジングH内へ送風する。送風ユニット1から送風された空気は、エバポレーター等の冷却ユニット2で先ず冷却される。冷却ユニット2の下流には、次のようにして、暖房用に冷却後の空気を暖める加熱ユニット4が設けられる。
【0012】
冷却ユニット2の下流に形成される通風経路は、加熱経路Haと迂回経路Hbの2つの経路に仕切られ、その加熱経路Ha内に加熱ユニット4が組み入れられる。これら加熱経路Haと迂回経路Hbの分岐点に、エアミックスダンパー3が揺動可能に設けられ、温度設定に応じてその揺動角度が制御されることで、加熱経路Haと迂回経路Hbとに流れる空気量が調節される。エアミックスダンパー3により、加熱ユニット4を通過して暖められて空調吹出口(DEF,VENT,FOOT)へ流れる空気量と加熱ユニット4を迂回して冷たいまま空調吹出口へ流れる空気量とが調節される結果、例えば暖房時、室内上方に関わる空調吹出口VENTからは比較的冷たい空気が吹き出し且つ室内足元に関わる空調吹出口FOOTからは暖かい空気が吹き出すことになり、頭寒足熱に即した空調が実施される。空調吹出口は、これらVENTとFOOTの他にフロントガラス等曇り取りのためのDEF(デフロスター)があり、弁制御によりそれぞれ風量が適宜制御される。
【0013】
送風ユニット1、冷却ユニット2、エアミックスダンパー3、加熱ユニット4は、制御ユニット5によって、設定温度、外気温、室内温度、日照等に応じて制御される。本実施形態の加熱ユニット4は、前述したような電気式ヒーターであるPTCヒーターを利用したものであり、IGBT等のスイッチングデバイス6によって駆動される。制御ユニット5は、スイッチングデバイス6を単純にオン/オフ制御したり、あるいはPWM制御することにより、加熱ユニット4の発熱制御を実行する。
【0014】
スイッチングデバイス6は、図2に外観を示すように、フランジ付の箱形ケース6aに収容されており、デバイスにロウ付け等で固定されたフィン形のヒートシンク6bがケース6aの上方に突出している。そのケース6aのフランジをハウジングHの外側面に固定することでスイッチングデバイス6がハウジングHの外側に取り付けられ、そして、ハウジングHに設けた開口を通してヒートシンク6bがハウジングH内の通風経路に突出するように設置されて、冷風に露出することになる。
【0015】
図1に示す第1の実施形態において、デバイスを冷却するためのヒートシンク6bは、冷却ユニット2により冷却された空気の通風経路のうち、エアミックスダンパー3と加熱ユニット4との間の加熱経路Haに設置される。これにより、冷却ユニット2で冷却された冷風が直接当たってヒートシンク6bが空冷されるので、スイッチングデバイス6の過熱を抑えることができる。加えて、冷風による強制空冷が実現されるので、ヒートシンク6bの表面積を小さくすることが可能となり、デバイスの小型化、省スペース、コストダウンに貢献する。
【0016】
ヒートシンク6bは、冷却ユニット2による冷風が通る迂回経路Hbに設置することも可能である。しかし、この場合は、ヒートシンク6bの熱が迂回経路Hbを通る空気を暖めてしまうことになるので、ヒートシンク6bは加熱経路Haに設置する方が好ましい。エアミックスダンパー3より下流で且つ加熱ユニット4より上流の加熱経路Haにヒートシンク6bを設置することにより、暖房時、ヒートシンク6bの熱を補助熱として加えることができる。この設置位置では、冷房時にエアミックスダンパー3が加熱経路Haを閉じてしまうと、冷風がヒートシンク6bへ流れなくなるが、冷房時に加熱ユニット4を駆動する必要はなく、このときにはスイッチングデバイス6が動作せず、発熱しないので問題ない。
【0017】
図3に、空調装置の第2の実施形態を示す。第2の実施形態では、エアミックスダンパー3と加熱ユニット4との間の加熱経路Haにおいて、ハウジングHの側壁に、スイッチングデバイス6を取り付けるための膨出部Hcが形成されている。スイッチングデバイス6は、その底面を膨出部Hcの内側面に固定することで、上面のヒートシンク6bがエアミックスダンパー3と加熱ユニット4との間に位置するよう設置される。これ以外は第1の実施形態と同じである。第2の実施形態の場合、スイッチングデバイス6全体が冷風により冷却されることになる。
【0018】
図4は、空調装置の第3の実施形態を示し、当実施形態は、ハウジングHにおいて、送風ユニット1から空調吹出口へ至る空気の通風経路を折り返して形成し、コンパクト化を図った空調装置である。すなわち、冷却ユニット2から先の加熱経路Ha及び迂回経路Hbを、送風ユニット1のある方へ折り返すように形成してあり、第1及び第2実施形態の空調装置に比べて、全長をコンパクト化してある。このように通風経路を折り返してある場合でも、図示のように、エアミックスダンパー3と加熱ユニット4との間にスペースをとってヒートシンク6bを設置することができる。スイッチングデバイス6は、第1の実施形態のようにケース6aを使用して、あるいは、第2の実施形態のように膨出部HcをハウジングHに形成して、取り付けることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 送風ユニット
2 冷却ユニット
3 エアミックスダンパー
4 加熱ユニット
5 制御ユニット
6 スイッチングデバイス
6b ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ユニットにより送風される空気を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの下流に設けられた加熱ユニットと、
前記加熱ユニットを通過して空調吹出口へ流れる空気量と前記加熱ユニットを迂回して前記空調吹出口へ流れる空気量とを調節するエアミックスダンパーと、
を含んで構成され、
前記加熱ユニットを駆動するスイッチングデバイスを冷却するためのヒートシンクが、前記冷却ユニットにより冷却された空気の通風経路に設置される、空調装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記エアミックスダンパーと前記加熱ユニットとの間に設置される、請求項1記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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