説明

空間フィルタを用いた走行被検物測定装置

【課題】糸などの連続状被検物の走行速度あるいは走行方向の長さを測定するための空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を提供すること。
【解決手段】被検物通過路3を備えたケーシング2を含み、該通過路の一方の側に、被検物の走行方向に等間隔に配置され、入射光を電気信号に変換して出力する複数個の受光素子4でなる受光器5と、該通過路の他方の側に配置され、受光器上に被検物の像を投影する光源6と、光源からの光を通して被検物に当てる光学系レンズ7と、被検物が受光素子の配列間隔に相応する所定のピッチ移動する毎に、周期的に変化する電気信号を出力し、該出力信号を演算処理して走行速度などを測定する演算処理手段8とを搭載し、該演算処理手段が、被検物の真値を予め記憶しておき、測定した値と真値との差から補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含み、検出値を補正値に基づいて補正した値で出力するようにした糸速度センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミシンや丸編機、あるいはワインダー等の紡績機械における走行糸、あるいはこれに類する連続状の被検物について、その走行速度あるいは走行方向の長さを測定するための走行被検物監視装置に関するものであり、特に、空間フィルタを用いた走行被検物測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ワインダーなどの紡績機械において、糸の走行状況を監視して、とりわけ、この糸の走行速度を測定することは、糸の品質ならびに糸長の管理上、極めて重要なことである。このように、糸の走行速度を監視するには、ローラーに糸を巻き付けて行う方法が知られている。この方法は、所謂、接触式であるため、摩擦や滑りなどによる誤差が生じるという大きな問題点を有している。
【0003】
さらに、上記する接触式の糸速測定方法では、糸速度が急激に変化する場合には、回転系における回転部の慣性によって、測定精度が悪くなるといった不具合も発生するものであった。
【0004】
【特許文献1】特開平06−186242号公報
【特許文献2】特公平06−019365号公報
【0005】
従来、糸の走行速度を測定するにあたって、上記する接触式測定方法にみられる問題点並びに不具合を解消する方法として、特許文献1などに開示される非接触式による糸の走行速度測定装置が知られている。
【0006】
この特許文献1に開示される走行糸の速度測定装置は、二つのセンサが固定的な間隔で糸条の移動方向に、該糸条に対して被接触で配置されており、この二つのセンサからの測定値を走行時間相関器により評価し、その結果に基づいて糸条の走行速度を求めるとともに、この求められた速度と巻成時間とをベースに、積分器などを用いて、パッケージの巻成開始時点から、パッケージの巻取り管に巻き上げられる糸長を累算式に検出する装置である。
【0007】
しかしながら、このような二点式の速度測定装置では、二つのセンサ信号から実際の糸条の走行速度を求めるにあたっての演算が極めて複雑であり、演算の遅延の発生を防止する必要上、高速で、且つ高性能な中央演算処理回路(CPU)が必要であるはか、近年の自動ワインダー等の巻取り速度の高速化に対応させようとすると、極めて複雑な演算をより高速で処理するための高価なCPUを必要とし、高コスト化が避けられないという問題を有していた。
【0008】
一方、糸の走行速度を測定するにあたって、上記する問題点を解消する方法として、空間フィルタを用いた非接触式の糸速度センサが開発され提供されてきている。この空間フィルタ式の速度検出方法は、投影光源からの光束を走行糸に照射し、その結像面上に結像する走行糸の光学むらに対応した光像を受光素子列により受光して、その到達光量に対応した電気的出力を発生させるようにしたものである。このように、空間フィルタ式の速度検出方式は、非接触検出であること、目盛りなどを付する必要がないこと、電気的出力の周波数から速度が、その積算値から距離が、それぞれ容易に求められること、などから極めて有利な方式である。
【0009】
しかしながら、従来、この空間フィルタ式速度検出方式に適用される糸速度センサとしては、以下に示すような(1)〜(4)の問題点が指摘されている。
(1)第1の問題点:キャリブレーションの必要性
従来の糸速度センサは、糸速度センサ毎に固有の特性(固有のバラツキ)を有しており、高精度を求められる事例に対しては、そのバラツキ自体が大きな障害になっているというものである。
(2)第2の問題点:オートパワーコントロール(APC)の適応性
空間フィルタは、糸の凹凸や羽毛の移動を電気信号に変換して検出しているので、糸の太さあるいは羽毛の量が変われば、信号量が適切でなくなり、誤差が生じる。また、投受光部の汚れや、投光素子の経年劣化に関しても同様である。そのため、APCの適応性に問題があった。
(3)第3の問題点:速度補正の必要性
糸速度センサにおける受光回路は、周波数特性を持っているため、糸速度が変われば特性が変わり、糸速度により誤差を生じるというものであった。
(4)第4の問題点:筐体構造上の機械的強度の問題
樹脂製の筐体は、金属筐体に比べ安価であり加工性に有利であるが、表面強度が低く、糸が正規の位置から外れて筐体に接触すると、高速で移動している糸により筐体が破損する場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、上記する空間フィルタ式速度検出方式に基づく糸速度センサに指摘される上記(1)〜(4)の問題点を解消するというものであって、
上記(1)に対しては、センサ毎に補正された値を出力するバラツキが極めて少ない空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を提供するものであり、
上記(2)に対しては、糸の太さや光学面の汚れ、LED劣化に影響されず、常に信号量が適切である誤差の少ない空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を提供するものであり、
上記(3)に対しては、走行被検物の速度によるバラツキの少ない空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を提供するものであり、
上記(4)に対しては、金属製筐体に比べて低価格で金属筐体と同等の糸に対する保護を可能とする空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、走行する糸あるいはこれに類する連続状の走行被検物に対し、その走行速度あるいは長さを測定する走行被検物測定装置であり、
前記走行被検物の走行通過を許容する被検物通過路を備えたケーシングを含むものからなり、前記ケーシングに対し、
前記被検物通過路の一方の側に、走行被検物の走行方向に等間隔に配置され、入射した光を電気信号に変換して出力する複数個の受光素子でなる受光器と、
前記被検物通過路の他方の側に配置され、前記走行被検物に光を当て、前記受光器上に被検物の像を投影するための光源と、
前記走行被検物と光源との間に配置され、前記光源からの光を通して走行被検物に当てるための光学系レンズと、
前記受光素子と被検物とが相対的に、該受光素子の配列間隔に相応する所定のピッチ移動する毎に、周期的に変化する電気信号を出力し、該出力信号を演算処理して走行速度あるいは長さを測定する演算処理手段とを搭載してなり、
前記演算処理手段が、一定長でなる被検物の真値を予め記憶しておき、測定した値と真値との差から補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含むものからなり、検出値を補正値に基づいて補正した値で出力するようにしたことを特徴とする空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を構成するものである。
【0012】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空間フィルタを用いた走行被検物測定装置であって、前記演算処理手段が、前記受光素子における受光信号量を常時監視し、該受光信号量が適切な値になるように前記光源に流れる電流を変えて、該受光信号量を制御するようになしたことを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、この発明において、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の空間フィルタを用いた走行被検物測定装置であって、前記演算処理手段が、被検物の走行速度に応じて、予め各走行速度の測定値をもとに補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含むものからなり、前記受光素子において受光する信号の周波数により、そのパルス幅を検出し、前記補正値に基づいて補正した値を出力するようになしたことを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、この発明において、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空間フィルタを用いた走行被検物測定装置であって、前記ケーシングが、樹脂製の筐体からなり、該筐体全面に機械的強度の高いメッキ層を設けてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置によれば、被検物通過路を規定するケーシング内に、複数個の受光素子からなる受光素子列、受光素子列上に被検物の像を投影する光源、走行被検物と光源との間に配した光学系レンズ、および受光素子からの出力信号を演算処理して走行速度あるいは長さを測定する演算処理手段とを搭載した構成であるので、汎用性のある精度の高い糸速度センサを供するものであり、コンパクトで、低定価の糸速度センサを供する点において有効に作用する。
【0016】
さらに、この発明において、演算処理手段を、一定長でなる被検物の真値を予め記憶しておき、測定した値と真値との差から補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含むものからなり、検出値を補正値に基づいて補正した値で出力するようにしたことにより、センサ毎に補正された値を出力するので、センサ毎に固有の特性(固有のバラツキ)を極力低減することができる。
【0017】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明によれば、演算処理手段を、受光素子における受光信号量を常時監視し、該受光信号量が適切な値になるように光源に流れる電流を変えて、該受光信号量を制御するようになしたことにより、糸の太さや光学面の汚れ、LED劣化に影響されずに、常に信号量が適切になり、誤差が少なくなるという作用効果を奏するものである。
【0018】
さらに、この発明において、請求項3に記載の発明によれば、演算処理手段を、被検物の走行速度に応じて、予め各走行速度の測定値をもとに補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含むものからなり、前記受光素子において受光する信号の周波数により、そのパルス幅を検出し、前記補正値に基づいて補正した値を出力するようになしたことにより、走行被検物の走行速度が変わっても、速度変化によるバラツキを低減することができるという作用効果を奏するものである。
【0019】
さらに、この発明において、請求項4に記載の発明によれば、前記ケーシングが、樹脂製の筐体からなり、該筐体全面に機械的強度の高いメッキ層を設けたことにより、金属製筐体に比べて低価格で金属筐体と同等の糸に対する保護を可能とするという作用効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置の基本的な構成例を、演算処理手段のブロック線図と併せて示す概略的な説明図である。図2は、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を糸速度センサに適用した具体例であって、分解して内部の構造を示す概略的な斜視図である。図3は、請求項1に記載の構成例について、これをを説明するための波形図である。
【0021】
まず、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置1は、例えば、ワインダーなどの紡績機械において、ボビンから巻き出される糸Yをパッケージに巻成する際、ボビンからパッケージへ向け矢印Aで示す走行方向に沿って走行する走行糸Yの走行速度ないしは糸長を算出するべく、ボビンとパッケージとの間に介在配置して糸速度センサ1として用いるものである。
【0022】
この走行被検物測定装置1は、空間フィルタ原理を用いた光学式のものであり、走行する糸あるいはこれに類する連続状の走行被検物Y(以下、一実施例として走行糸Yという)に対し、その走行速度ないしは長さを測定するものである。この走行被検物測定装置1は、走行糸Yの走行通過を許容する被検物通過路3を備えたケーシング2を含むものからなっており、当該ケーシング2に対して、前記被検物通過路3の一方の側に、複数個の受光素子4を走行糸Yの走行方向に等間隔に配列してなる受光器5と、前記被検物通過路3の他方の側に配置され、前記受光器5上に走行糸Yの像を投影する光源6と、走行糸Yと光源6との間に配置した光学系レンズ7と、前記受光器5の出力信号を演算処理して走行糸Yの走行速度ないしは糸長を測定する演算処理手段8とを搭載するものからなっている。
【0023】
この発明に適用される空間フィルタの原理は、走行糸Yに対して、光学系レンズ7を介在して光源6により光照射することにより、複数個の受光素子4を走行糸Yの走行方向に等間隔に配列してなる受光器5上に、走行糸Yの像が投影され、無数の毛羽9を有する走行糸Yが走行する際に生じる光電流の変化を演算処理手段8により演算処理して走行糸Yの走行速度ないしは糸長を算出するものである。
【0024】
例えば、図1に示す実施例のように、複数個の受光素子による受光器5で得られた信号eは、前記受光器5の後段に設けた演算処理手段8におけるフィルタを通してノイズ除去された後、波形整形が行われてパルス列に変換され、そのパルス数がカウンタによって計数される。このようにして計数された値が走行糸Yの走行速度ないしは糸長であり、該走行速度ないしは糸長は、制御部で各種操作を行ったのち、出力部に出力される。
【0025】
図1は、この空間フィルタ原理を説明するとともに、演算処理手段8の具体的な構成を示すブロック線図を併記したものである。この実施例になる演算処理手段8は、例えば、LEDあるいは半導体レーザにより構成される光源6を駆動するための光源駆動回路11を含むものからなっている。この光源駆動回路11は、中央演算処理回路(CPU)12から送られてくる発光制御信号e にしたがって光源6を発光させるための電流増幅を行う。光源6から走行糸Yに光が照射されると、等間隔に配列してある複数個の受光素子4によって構成される受光器5に走行糸Yの像が投影される。一例において、前記受光器5は、図2に示すようにピッチpの櫛形光電面13a、13bが補対に配置されているものからなっている。櫛形光電面13a、13bの配列方向は、走行糸Yの移動方向に一致するように固定してある。
【0026】
受光器5における櫛形光電面13a、13b上を糸の陰影が移動速度Vで移動すると、その光電流出力波形は、図1中、波形図e のように、糸の陰影の移動速度Vに比例した周波数の交流成分を含んだ波形となる。櫛形光電面13a、13bからの光電流出力信号e は、差動増幅器14に入力され、図1中、波形図e のように、直流成分および同相成分が除かれた波形の差動出力信号e となる。
【0027】
この差動増幅器14の差動出力信号e は、その平均周波数を検出するための周波数分析回路15に送られる。この周波数分析回路15では、差動出力信号eをリミッター増幅器に通すことにより二値化し、この二値化した信号を中央演算処理回路12へ送る。なお、制御信号eは、前記周波数分析回路15の動作タイミングを制御する信号である。前記中央演算処理回路12により処理された情報は出力部16に出力される。
【0028】
要するに、一般的な空間フィルタ式の速度検出方式は、図1に示すような実質上同一幅wでなる複数個の受光素子4を配列ピッチpをおいて配列してなる受光器5に対し、当該受光器5の受光面上に走行糸Yのパターンないし光学ムラの各部が横切る度に検出される電気的出力の周期的な変化を観測するとともに、特定時間内におけるその繰り返し数をカウントし、これに各受光素子の配列ピッチに相応した所定のピッチを乗じて各受光素子に直交する方向の走行糸Yの移動量や移動速度を求めるものである。ここで、受光器5からの電気的出力は、各受光素子を配列ピッチpに相応した所定のピッチだけ走行糸Yと受光器5が相対的に移動する毎に周期的に変化する。
【0029】
上記する構成になる空間フィルタ式の速度検出方式により糸の速度ないしは糸長を測定する糸速度センサによると、この糸速度センサは、当該糸速度センサ毎に固有の特性(固有のバラツキ)を有しているので、高い精度が要求される場合においては、そのバラツキが大きな障害になっている。
この発明では、上記障害を解決するため、製品検査時において、測定した値と予め記憶されている真値の差から補正値を算出し、センサに記憶する。出力は、検出値を補正値に基づいて補正した値を出力する。例えば、図3に示すように、検出値が1002パルスで、真値が1000パルスである場合、
検出値と真値の差は、1002−1000=2(2パルス多い)
この場合の補正値は、1002/2=501 であり、
図3Aに示す 1002パルスをカウントした場合、501パルスに相当する部分を出力しないように補正する。
このように補正処理することによって、各糸速度センサは、各糸速度センサ毎に補正された値を出力するのでバラツキを低減することができる。
【0030】
次に、この糸速度センサ1によると、空間フィルタは、糸Yの凹凸や糸の毛羽9の移動を電気信号に変換して検出しているので、糸の太さや毛羽9の量が変われば、信号量が適切ではなくなり、誤差を生じることになる。また、投受光部の汚れや光源6の経年劣化に関しても同様である。
この発明では、この問題を解決するため、受光信号量を常に監視し、信号量が適切な値になるように光源6に流れる電流を変えて受光量を制御する。
その結果、糸の太さや光学面の汚れ、光源の経年劣化に影響されず、常に信号量が適切になるので、誤差が少なくなる。
【0031】
さらに、この糸速度センサ1によると、受光回路は、周波数特性を持っているため、走行糸Yの走行速度が変われば特性が変わってしまい、糸速度により誤差が生じるものである。
この発明では、この問題を解決するため、予め各速度の測定値をもとに補正値を算出して、これを糸速度センサに記憶する。受光する信号の周波数により、おおよその速度が判別されるので、パルス幅を検出し、補正値に基づいて補正した値を出力する。
その結果、速度によるバラツキが少なくなる。
【0032】
さらに、この糸速度センサにおけるケーシングは、金属製筐体に比べて安価に入手することができる樹脂製筐体によって構成され、その結果、コストダウンを図ることができる。しかしながら、この樹脂製筐体は、表面強度が低く、糸が正規の位置から外れて筐体に直接接触してしまうと、高速で移動する走行糸Yにより筐体が破損する場合がある。
この発明では、この問題を解決するため、ケーシング自体を樹脂製の筐体により形成し、当該筐体の全面(ケーシング2Aおよび2Bの外面ならびに内面)に対して、機械的強度並びに機械的耐久性の高い、例えば、クロムメッキなどのメッキ層30により表面を硬化処理する。
この結果、金属製筐体に比べて低価格で、金属製筐体と同等の糸に対する保護を可能とするものである。
さらに、このメッキ層30は、ケーシング内に搭載される演算処理手段8を構成する回路素子から発せられる熱、並びに、被検物通過路3から離脱した走行糸の摩擦熱などに対する放熱効果の点においても有効に作用するものといえる。
さらにまた、ケーシング2にメッキ層30を設けることにより、外来ノイズを効果的に遮断することができ、内部に搭載する回路素子群に対する外来ノイズの悪影響を防止するという電気的特性の向上を図る上においても有効に作用するものといえる。
【0033】
以下、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置の具体的適用例になる糸速度センサ1の構造について、図2に示す実施例に基づいて詳細に説明する。この糸速度センサ1は、図2に示す実施例において、例えば、上下に分割される上ケーシング2Aと下ケーシング2Bとの組み合わせによるケーシング2を含むものからなっている。前記ケーシング2は、図2に示すように分割されており、組み合わせることによって後述する各部材を定位置に位置決めして収容する収容空間17を形成し、さらに、被検物である走行糸Yの走行通過を許容する被検物通過路3を形成する。
【0034】
このケーシング2内であって、前記被検物通過路3の一方の側18には、複数個の受光素子4を走行糸Yの走行方向に等間隔をおいて配列してなる受光器5が位置決めされ配置されている。
【0035】
ケーシング2内であって、前記被検物通過路3の他方の側19には、走行糸Yに光を当て、受光器5上に走行糸Yの像を投影する光源6と、この光源6からの光束10を通して走行糸Yに当てる光学系レンズ7と、前記受光器5の出力信号を演算処理して走行糸Yの走行速度ないしは糸長を測定する演算処理手段8が位置決めされて配置されている。
【0036】
より好ましい実施例において、前記受光器5は、受光器設置用プリント基板20に組み立てられており、前記光源6および光学系レンズ7は、光源ホルダ21に組み込まれユニット化されている。前記光源ホルダ21の光学系レンズ7側には、投光ガイド部材22が、投光パッキン23を介在して連結してある。前記投光ガイド部材22の端部22aは透光性壁によって閉鎖されている。
【0037】
前記ケーシング2における被検物通過路3の一方の側壁には、開口24が設けてあり、可視光カットパネル25が組み込まれるようになっている。また、前記ケーシング2における被検物通過路3の他方の側壁にも、開口26が設けてあり、前記投光ガイド部材22の端部22aが組み込まれるようになっている。
【0038】
一方、前記演算処理手段8を構成する演算処理回路部材は、前記ケーシング2内に搭載され、ネジ29などにより位置決めされて固定される主プリント基板27上に組み込まれている。図において、参照符号28は、電源コードを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置の基本的な構成例を、演算処理手段のブロック線図と併せて示す概略的な説明図である。
【図2】図2は、この発明になる空間フィルタを用いた走行被検物測定装置を糸速度センサに適用した具体例であって、分解して内部の構造を示す概略的な斜視図である。
【図3】図3は、請求項1に記載の構成例について、これをを説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0040】
Y 走行糸
A 糸の走行方向
1 走行被検物測定装置(糸速度センサ)
2 ケーシング
2A 上ケーシング
2B 下ケーシング
3 被検物(走行糸)通過路
4 受光素子
5 受光器
6 光源
7 光学系レンズ
8 演算処理手段
9 走行糸の毛羽
10 光束
11 光源駆動回路
12 中央演算処理回路(CPU)
13a、13b 櫛形光電面
14 差動増幅器
15 周波数分析回路
16 出力部
17 収容空間
18 被検物通過路の一方の側
19 被検物通過路の他方の側
20 受光器用プリント基板
21 光源ホルダ
22 投光ガイド部材
23 投光パッキン
24 開口
25 可視光カットパネル
26 開口
27 主プリント基板
28 電源コード
29 組立ネジ
30 メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する糸あるいはこれに類する連続状の走行被検物に対し、その走行速度あるいは長さを測定する走行被検物測定装置であり、
前記走行被検物の走行通過を許容する被検物通過路を備えたケーシングを含むものからなり、前記ケーシングに対し、
前記被検物通過路の一方の側に、走行被検物の走行方向に等間隔に配置され、入射した光を電気信号に変換して出力する複数個の受光素子でなる受光器と、
前記被検物通過路の他方の側に配置され、前記走行被検物に光を当て、前記受光器上に被検物の像を投影するための光源と、
前記走行被検物と光源との間に配置され、前記光源からの光を通して走行被検物に当てるための光学系レンズと、
前記受光素子と被検物とが相対的に、該受光素子の配列間隔に相応する所定のピッチ移動する毎に、周期的に変化する電気信号を出力し、該出力信号を演算処理して走行速度あるいは長さを測定する演算処理手段とを搭載してなり、
前記演算処理手段が、一定長でなる被検物の真値を予め記憶しておき、測定した値と真値との差から補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含むものからなり、検出値を補正値に基づいて補正した値で出力するようにしたことを特徴とする空間フィルタを用いた走行被検物測定装置。
【請求項2】
前記演算処理手段が、前記受光素子における受光信号量を常時監視し、該受光信号量が適切な値になるように前記光源に流れる電流を変えて、該受光信号量を制御するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の空間フィルタを用いた走行被検物測定装置。
【請求項3】
前記演算処理手段が、被検物の走行速度に応じて、予め各走行速度の測定値をもとに補正値を算出して、これを記憶する記憶手段を含むものからなり、前記受光素子において受光する信号の周波数により、そのパルス幅を検出し、前記補正値に基づいて補正した値を出力するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の空間フィルタを用いた走行被検物測定装置。
【請求項4】
前記ケーシングが、樹脂製の筐体からなり、該筐体全面に機械的強度の高いメッキ層を設けてなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空間フィルタを用いた走行被検物測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−112825(P2010−112825A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285451(P2008−285451)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000210425)竹中電子工業株式会社 (11)
【出願人】(000101318)株式会社タケックス研究所 (9)
【Fターム(参考)】