空間映像表示装置
【課題】 物体の3次元形状を維持したまま空間に結像することを可能にした空間映像表示装置を提供する。
【解決手段】 物体からの入射光を第1の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第1の反射型面対称結像素子について物体と面対称となるように物体の第1の実像を結像させ、第1の実像からの入射光を第2の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第2の反射型面対称結像素子について第1の実像と面対称となるように物体の第2の実像を結像させる。
【解決手段】 物体からの入射光を第1の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第1の反射型面対称結像素子について物体と面対称となるように物体の第1の実像を結像させ、第1の実像からの入射光を第2の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第2の反射型面対称結像素子について第1の実像と面対称となるように物体の第2の実像を結像させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間中に映像を表示する空間映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には反射型面対称結像素子を用いてその素子の一方側に置かれた被投影物である物体の像を素子の反対側の面対称となる位置に結像させるシステムが示されている。このシステムで用いられている反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に貫通させた複数の穴を備え、各穴の内壁に直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、その穴を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものである。被投影物から発せられた光は反射型面対称結像素子の単位光学素子を通過する際に2つの鏡面要素の一方で反射した後、鏡面で反射して反射光となり、その反射光が更に単位光学素子の2つの鏡面要素の他方で反射して、被投影物を仮想鏡に映した位置に結像することになる。
【0003】
図1に示すように、反射型面対称結像素子1は平板状であり、物体2は反射型面対称結像素子1の一方の面側に配置され、反射型面対称結像素子1には物体2からの光が斜めに入射するようにされている。反射型面対称結像素子1の他方の面側に観察者の目Eが位置し、反射型面対称結像素子1について物体2と面対称となる空間位置に実像3、すなわち空間映像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−158114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術において、図1に示すように、物体2に立体構造物が用いられる場合には、得られる空間映像はその凹凸が物体2の立体構造物とは反転してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記の問題点が一例として挙げられ、物体の3次元形状を維持したまま空間に結像することを可能にした空間映像表示装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の空間映像表示装置は、直交する第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された平板状の構造体からなり、入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射する第1及び第2の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、前記第1の反射型面対称結像素子は物体からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第1の反射型面対称結像素子について前記物体と面対称となるように前記物体の第1の実像を結像させ、前記第2の反射型面対称結像素子は前記第1の実像からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第2の反射型面対称結像素子について前記第1の実像と面対称となるように前記物体の第2の実像を結像させることを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
請求項1に係る発明の空間映像表示装置によれば、物体からの入射光を第1の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第1の反射型面対称結像素子について物体と面対称となるように第1の実像を結像させ、第1の実像からの入射光を第2の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第2の反射型面対称結像素子について第1の実像と面対称となるように第2の実像を結像させることが行われる。これにより、第2の実像は、第1の実像の凹凸を反転した像となるので、物体と同じ凹凸を持った空中映像として表示されることになる。
【0009】
また、従来は実際に見せたい立体像に対して、凹凸の反転した物体を製作する必要があったが、本発明を利用することで、凹凸の情報が復元表示されるので、物体製作のイメージングが極めて容易に行えるようになるばかりか、実際に空間映像に変換したい物体そのものを設置することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図2】本発明の空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図3】図2の装置中の反射型面対称結像素子を示す図である。
【図4】図3の反射型面対称結像素子を構成する直方体材を示す図である。
【図5】図3の反射型面対称結像素子を形成する2つのシート部の組み合わせを示す図である。
【図6】図3の反射型面対称結像素子における表示光の2回反射を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図9】本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図10】ハーフミラーを備える場合の観察者の同一視線上の実像及び背景を示す図である。
【図11】本発明の空間映像表示装置の外観例を示す図である。
【図12】図11の装置の内部構成を示す図である。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図2は本発明の空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置は、2つの反射型面対称結像素子11,12を備えている。反射型面対称結像素子11,12は平板状であり、その平板面が互いにほぼ垂直となるように配置されている。反射型面対称結像素子11の一方の面側に立体構造物の物体13が配置される。物体13からの光は反射型面対称結像素子11の一方の面から入射し、反射型面対称結像素子11内の2つの光反射面の一方で反射し、更に他方の反射面で反射して反射型面対称結像素子11の他方の面から出力される。反射型面対称結像素子11の他方の面側、すなわち物体13と面対称となる空間位置に物体13の実像13Aが結像される。
【0013】
実像13Aは反射型面対称結像素子12の一方の面側に位置している。反射型面対称結像素子12の他方の面側に観察者の目Eが位置される。実像13Aからの光は反射型面対称結像素子12の一方の面から入射し、反射型面対称結像素子12内の2つの光反射面の一方で反射し、更に他方の反射面で反射して反射型面対称結像素子12の他方の面から出力される。反射型面対称結像素子12の他方の面側、すなわち実像13Aと面対称となる空間位置に実像13Bが結像される。
【0014】
図2に矢印で示したよう、物体13から反射型面対称結像素子11に至る光直線と、反射型面対称結像素子11から実像13Aに至る光直線とが反射型面対称結像素子11のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子11は配置されている。
【0015】
同様に、実像13Aから反射型面対称結像素子12に至る光直線と、反射型面対称結像素子12から実像13Bに至る光直線とが反射型面対称結像素子12のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子12は配置されている。
【0016】
反射型面対称結像素子11の2回の反射によって形成される実像13Aは物体13の凹凸が逆になる。反射型面対称結像素子12の2回の反射によって形成される実像13Bは実像13Aの凹凸が逆になる。従って、観察者は物体13と同じ凹凸で実像13Bを観察することができる。
【0017】
反射型面対称結像素子11,12は図3に示すように形成されている。図3の反射型面対称結像素子は符号19で示されている。反射型面対称結像素子19は各々が同数の棒状の直方体材20を並列に密着させることにより形成された2つのシート部(第1集合体及び第2集合体)21,22を有する。図2における反射型面対称結像素子11,12各々の両端部A,Bは図3の反射型面対称結像素子19の対向角A,Bに対応している。
【0018】
直方体材20は、長手部材であり、長手方向に垂直な方向、すなわち短手方向の四角形の断面の一辺が数百μmないし数cm前後の透明なアクリルに代表されるプラスチック又はガラスの棒からなる。長さは投影する画像の大きさによって変化するが、数十mm 〜数m程度である。また、長手方向に伸長した4面のうちの3面は光の透過又は反射に使用する面であるから、滑らかな状態にされている。直方体材20はシート部21,22各々で100本〜20000本程度用いられる。
【0019】
図4に示すように、直方体材20の長手方向に伸長した1面には光反射膜23が形成される。光反射膜23はアルミや銀の蒸着或いはスパッタなどによって形成される。
【0020】
このような複数の直方体材20について、1つの直方体材20の光吸収膜面23を形成した面とは反対側の面24と別の直方体材20の光反射膜面を密着させてシート部21,22が形成される。シート部21,22は、図5に示すように、直方体材20の並列方向が交差するようにいずれか一方を90度回転させた状態で貼り合わせられ、それによって反射型面対称結像素子19が形成される。シート部21の各直方体材20とシート部22の各直方体材20とが交差する部分が微小ミラーユニット(単位光学素子)を構成し、各微小ミラーユニットのシート部21の光反射膜面が第1集合体の第1光反射面であり、シート部22の光反射膜面が第2集合体の第2光反射面である。
【0021】
なお、光反射膜面を形成した面とは反対側の面24には、錫、銀、クロム、アルミ等の金属膜を形成し、各直方体材20同士を半田付け、ロウ付け等の接合技術を用いて平面接合するための下地層を形成しても良い。
【0022】
或いは、光反射膜面を形成した面とは反対側の面24には、反射型面対称結像素子として不用な素子内の迷光を低減することを目的とした光を吸収する膜を形成しても良い。この場合、シート部21,22を形成する際に、1つの直方体材20の光反射膜面を形成した面とは反対側の面24と別の直方体材20の光反射膜面23を密着させるので、光反射膜面を形成した面とは反対側の面24に形成する膜は光反射膜23の上に積層して形成しておいても良い。
【0023】
かかる構成の反射型面対称結像素子19においては、図6に示すように、入射光は矢印Y1の方向でシート部22の光反射膜面23に反射し、その反射光は矢印Y2の方向でシート部21の光反射膜面23に反射し、その反射光は矢印Y3の方向で観察者に向けて進み、このように2回反射させて鏡映像を作り出すことが行われる。
【0024】
反射型面対称結像素子19の法線に対する観察方向の角度をθ、シート部21,22各々に形成された平行ミラー(光反射膜面)の間隔(=直方体材20の短手方向の幅)をW、シート部21,22各々を構成する直方体材20の光学屈折率をnとすると、1シート部当たりの厚み(すなわち直方体材20の長手方向の長さ)をDとすると、厚みDは、
【数1】
の如く表すことができる。Xは反射型面対称結像素子19の中での法線に対する光線軸の傾き角である。
【0025】
図7は本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置においては、2つの平板状の反射型面対称結像素子11,12がほぼ平行に配置されている。このように反射型面対称結像素子11,12を平行に配置した場合においても図2の実施例の場合と同様に、反射型面対称結像素子11は物体13と面対称となる空間位置に実像13Aを結像させ、反射型面対称結像素子12は実像13Aと面対称となる空間位置に実像13Bを結像させる。よって、観察者は物体13と同じ凹凸で実像13Bを観察することができる。
【0026】
物体13から反射型面対称結像素子11に至る光直線と、反射型面対称結像素子11から実像13Aに至る光直線とが反射型面対称結像素子11のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子11は配置されている。
【0027】
同様に、実像13Aから反射型面対称結像素子12に至る光直線と、反射型面対称結像素子12から実像13Bに至る光直線とが反射型面対称結像素子12のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子12は配置されている。
【0028】
図8は更に本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置においては、反射型面対称結像素子11,12に加えてハーフミラー15が備えられている。反射型面対称結像素子11,12は図2に示したようにその平板面が互いにほぼ垂直となるように配置されている。ハーフミラー15は反射型面対称結像素子12からの出力光の一部を通過させ、その残りを反射する。その反射光と透過光とは光強度はハーフミラーの反射率によって設定するが、一般的には3:7や1:1の関係である。ハーフミラー15の透過光により実像13Bが形成されると共に反射光により実像の反射像として実像13Cが形成される。実像13Bと実像13Cとはハーフミラー15について互いに対称となる位置に形成される。観察者は図8に示す目Eの位置から実像13Cを物体13と同じ凹凸で観察すると同時にハーフミラー15を介してその先の風景(背景)を観察することができる。
【0029】
また、図7に示したように反射型面対称結像素子11,12がほぼ平行に配置された装置においても図9に示すようにハーフミラー15を同様に備えることができる。この場合においてもハーフミラー15の反射光により実像13Cが形成されハーフミラー15を介しての背景と同一視線上に観察することができる。
【0030】
図8及び図9のようにハーフミラー15を備える場合には例えば、図10に示すように観察者の目Eからは実像13Cと、ハーフミラー15を介した背景16とを同一視線上に視認することができる。
【0031】
図11は本発明による空間映像表示装置の外観例を示し、図12はその装置の前後方向における内部断面を示している。この空間映像表示装置は反射型面対称結像素子11,12が平行に配置された装置であり、図11及び図12に示すように、ハウジング31は観察者側の光学系収納部31aと、光学系収納部31aの後部に連結した物体収納部31bとからなる。光学系収納部31aは上面に傾斜部32を有する箱形をしている。傾斜部32は底面に対してほぼ45度の角度にされている。傾斜部32の中央に反射型面対称結像素子12が露出して取り付けられている。光学系収納部31a内に反射型面対称結像素子11がほぼ45度の斜めにして取り付けられており、反射型面対称結像素子11と反射型面対称結像素子12とが互いに平行にされている。物体収納部31bは光学系収納部31aの下部に連通した空間を有し、そこには立体構造物の物体13が置き台34上に載置されている。また、物体収納部31b内には照明装置35が備えられている。照明装置35は例えば、LEDからなり、置き台34上の物体13を照らすために備えられている。
【0032】
このような構成により、物体13についての実像13A,13Bが生じるので、観察者は反射型面対称結像素子12の前方の図12に示す観察方向から実像13Bを物体13と同じ凹凸で観察することになる。なお、光学系収納部31aの少なくとも傾斜部32の表面は黒色を含む暗色にされており、観察者に実像が視認し易くされている。
【0033】
なお、上記した各実施例において、反射型面対称結像素子11,12としては図3に示したシート部21,22からなる反射型面対称結像素子19に限らず、特許文献1に示された構成のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0034】
11,12,19 反射型面対称結像素子
13 物体
13A〜13C 実像
15 ハーフミラー
21,22 シート部
31 ハウジング
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間中に映像を表示する空間映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には反射型面対称結像素子を用いてその素子の一方側に置かれた被投影物である物体の像を素子の反対側の面対称となる位置に結像させるシステムが示されている。このシステムで用いられている反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に貫通させた複数の穴を備え、各穴の内壁に直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、その穴を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものである。被投影物から発せられた光は反射型面対称結像素子の単位光学素子を通過する際に2つの鏡面要素の一方で反射した後、鏡面で反射して反射光となり、その反射光が更に単位光学素子の2つの鏡面要素の他方で反射して、被投影物を仮想鏡に映した位置に結像することになる。
【0003】
図1に示すように、反射型面対称結像素子1は平板状であり、物体2は反射型面対称結像素子1の一方の面側に配置され、反射型面対称結像素子1には物体2からの光が斜めに入射するようにされている。反射型面対称結像素子1の他方の面側に観察者の目Eが位置し、反射型面対称結像素子1について物体2と面対称となる空間位置に実像3、すなわち空間映像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−158114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術において、図1に示すように、物体2に立体構造物が用いられる場合には、得られる空間映像はその凹凸が物体2の立体構造物とは反転してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記の問題点が一例として挙げられ、物体の3次元形状を維持したまま空間に結像することを可能にした空間映像表示装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の空間映像表示装置は、直交する第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された平板状の構造体からなり、入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射する第1及び第2の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、前記第1の反射型面対称結像素子は物体からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第1の反射型面対称結像素子について前記物体と面対称となるように前記物体の第1の実像を結像させ、前記第2の反射型面対称結像素子は前記第1の実像からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第2の反射型面対称結像素子について前記第1の実像と面対称となるように前記物体の第2の実像を結像させることを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
請求項1に係る発明の空間映像表示装置によれば、物体からの入射光を第1の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第1の反射型面対称結像素子について物体と面対称となるように第1の実像を結像させ、第1の実像からの入射光を第2の反射型面対称結像素子の第1及び第2光反射面により2回反射して第2の反射型面対称結像素子について第1の実像と面対称となるように第2の実像を結像させることが行われる。これにより、第2の実像は、第1の実像の凹凸を反転した像となるので、物体と同じ凹凸を持った空中映像として表示されることになる。
【0009】
また、従来は実際に見せたい立体像に対して、凹凸の反転した物体を製作する必要があったが、本発明を利用することで、凹凸の情報が復元表示されるので、物体製作のイメージングが極めて容易に行えるようになるばかりか、実際に空間映像に変換したい物体そのものを設置することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図2】本発明の空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図3】図2の装置中の反射型面対称結像素子を示す図である。
【図4】図3の反射型面対称結像素子を構成する直方体材を示す図である。
【図5】図3の反射型面対称結像素子を形成する2つのシート部の組み合わせを示す図である。
【図6】図3の反射型面対称結像素子における表示光の2回反射を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図9】本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示す図である。
【図10】ハーフミラーを備える場合の観察者の同一視線上の実像及び背景を示す図である。
【図11】本発明の空間映像表示装置の外観例を示す図である。
【図12】図11の装置の内部構成を示す図である。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図2は本発明の空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置は、2つの反射型面対称結像素子11,12を備えている。反射型面対称結像素子11,12は平板状であり、その平板面が互いにほぼ垂直となるように配置されている。反射型面対称結像素子11の一方の面側に立体構造物の物体13が配置される。物体13からの光は反射型面対称結像素子11の一方の面から入射し、反射型面対称結像素子11内の2つの光反射面の一方で反射し、更に他方の反射面で反射して反射型面対称結像素子11の他方の面から出力される。反射型面対称結像素子11の他方の面側、すなわち物体13と面対称となる空間位置に物体13の実像13Aが結像される。
【0013】
実像13Aは反射型面対称結像素子12の一方の面側に位置している。反射型面対称結像素子12の他方の面側に観察者の目Eが位置される。実像13Aからの光は反射型面対称結像素子12の一方の面から入射し、反射型面対称結像素子12内の2つの光反射面の一方で反射し、更に他方の反射面で反射して反射型面対称結像素子12の他方の面から出力される。反射型面対称結像素子12の他方の面側、すなわち実像13Aと面対称となる空間位置に実像13Bが結像される。
【0014】
図2に矢印で示したよう、物体13から反射型面対称結像素子11に至る光直線と、反射型面対称結像素子11から実像13Aに至る光直線とが反射型面対称結像素子11のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子11は配置されている。
【0015】
同様に、実像13Aから反射型面対称結像素子12に至る光直線と、反射型面対称結像素子12から実像13Bに至る光直線とが反射型面対称結像素子12のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子12は配置されている。
【0016】
反射型面対称結像素子11の2回の反射によって形成される実像13Aは物体13の凹凸が逆になる。反射型面対称結像素子12の2回の反射によって形成される実像13Bは実像13Aの凹凸が逆になる。従って、観察者は物体13と同じ凹凸で実像13Bを観察することができる。
【0017】
反射型面対称結像素子11,12は図3に示すように形成されている。図3の反射型面対称結像素子は符号19で示されている。反射型面対称結像素子19は各々が同数の棒状の直方体材20を並列に密着させることにより形成された2つのシート部(第1集合体及び第2集合体)21,22を有する。図2における反射型面対称結像素子11,12各々の両端部A,Bは図3の反射型面対称結像素子19の対向角A,Bに対応している。
【0018】
直方体材20は、長手部材であり、長手方向に垂直な方向、すなわち短手方向の四角形の断面の一辺が数百μmないし数cm前後の透明なアクリルに代表されるプラスチック又はガラスの棒からなる。長さは投影する画像の大きさによって変化するが、数十mm 〜数m程度である。また、長手方向に伸長した4面のうちの3面は光の透過又は反射に使用する面であるから、滑らかな状態にされている。直方体材20はシート部21,22各々で100本〜20000本程度用いられる。
【0019】
図4に示すように、直方体材20の長手方向に伸長した1面には光反射膜23が形成される。光反射膜23はアルミや銀の蒸着或いはスパッタなどによって形成される。
【0020】
このような複数の直方体材20について、1つの直方体材20の光吸収膜面23を形成した面とは反対側の面24と別の直方体材20の光反射膜面を密着させてシート部21,22が形成される。シート部21,22は、図5に示すように、直方体材20の並列方向が交差するようにいずれか一方を90度回転させた状態で貼り合わせられ、それによって反射型面対称結像素子19が形成される。シート部21の各直方体材20とシート部22の各直方体材20とが交差する部分が微小ミラーユニット(単位光学素子)を構成し、各微小ミラーユニットのシート部21の光反射膜面が第1集合体の第1光反射面であり、シート部22の光反射膜面が第2集合体の第2光反射面である。
【0021】
なお、光反射膜面を形成した面とは反対側の面24には、錫、銀、クロム、アルミ等の金属膜を形成し、各直方体材20同士を半田付け、ロウ付け等の接合技術を用いて平面接合するための下地層を形成しても良い。
【0022】
或いは、光反射膜面を形成した面とは反対側の面24には、反射型面対称結像素子として不用な素子内の迷光を低減することを目的とした光を吸収する膜を形成しても良い。この場合、シート部21,22を形成する際に、1つの直方体材20の光反射膜面を形成した面とは反対側の面24と別の直方体材20の光反射膜面23を密着させるので、光反射膜面を形成した面とは反対側の面24に形成する膜は光反射膜23の上に積層して形成しておいても良い。
【0023】
かかる構成の反射型面対称結像素子19においては、図6に示すように、入射光は矢印Y1の方向でシート部22の光反射膜面23に反射し、その反射光は矢印Y2の方向でシート部21の光反射膜面23に反射し、その反射光は矢印Y3の方向で観察者に向けて進み、このように2回反射させて鏡映像を作り出すことが行われる。
【0024】
反射型面対称結像素子19の法線に対する観察方向の角度をθ、シート部21,22各々に形成された平行ミラー(光反射膜面)の間隔(=直方体材20の短手方向の幅)をW、シート部21,22各々を構成する直方体材20の光学屈折率をnとすると、1シート部当たりの厚み(すなわち直方体材20の長手方向の長さ)をDとすると、厚みDは、
【数1】
の如く表すことができる。Xは反射型面対称結像素子19の中での法線に対する光線軸の傾き角である。
【0025】
図7は本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置においては、2つの平板状の反射型面対称結像素子11,12がほぼ平行に配置されている。このように反射型面対称結像素子11,12を平行に配置した場合においても図2の実施例の場合と同様に、反射型面対称結像素子11は物体13と面対称となる空間位置に実像13Aを結像させ、反射型面対称結像素子12は実像13Aと面対称となる空間位置に実像13Bを結像させる。よって、観察者は物体13と同じ凹凸で実像13Bを観察することができる。
【0026】
物体13から反射型面対称結像素子11に至る光直線と、反射型面対称結像素子11から実像13Aに至る光直線とが反射型面対称結像素子11のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子11は配置されている。
【0027】
同様に、実像13Aから反射型面対称結像素子12に至る光直線と、反射型面対称結像素子12から実像13Bに至る光直線とが反射型面対称結像素子12のほぼ中央で交わり、その2つの光直線がなす角度を2等分する角度位置に反射型面対称結像素子12は配置されている。
【0028】
図8は更に本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置においては、反射型面対称結像素子11,12に加えてハーフミラー15が備えられている。反射型面対称結像素子11,12は図2に示したようにその平板面が互いにほぼ垂直となるように配置されている。ハーフミラー15は反射型面対称結像素子12からの出力光の一部を通過させ、その残りを反射する。その反射光と透過光とは光強度はハーフミラーの反射率によって設定するが、一般的には3:7や1:1の関係である。ハーフミラー15の透過光により実像13Bが形成されると共に反射光により実像の反射像として実像13Cが形成される。実像13Bと実像13Cとはハーフミラー15について互いに対称となる位置に形成される。観察者は図8に示す目Eの位置から実像13Cを物体13と同じ凹凸で観察すると同時にハーフミラー15を介してその先の風景(背景)を観察することができる。
【0029】
また、図7に示したように反射型面対称結像素子11,12がほぼ平行に配置された装置においても図9に示すようにハーフミラー15を同様に備えることができる。この場合においてもハーフミラー15の反射光により実像13Cが形成されハーフミラー15を介しての背景と同一視線上に観察することができる。
【0030】
図8及び図9のようにハーフミラー15を備える場合には例えば、図10に示すように観察者の目Eからは実像13Cと、ハーフミラー15を介した背景16とを同一視線上に視認することができる。
【0031】
図11は本発明による空間映像表示装置の外観例を示し、図12はその装置の前後方向における内部断面を示している。この空間映像表示装置は反射型面対称結像素子11,12が平行に配置された装置であり、図11及び図12に示すように、ハウジング31は観察者側の光学系収納部31aと、光学系収納部31aの後部に連結した物体収納部31bとからなる。光学系収納部31aは上面に傾斜部32を有する箱形をしている。傾斜部32は底面に対してほぼ45度の角度にされている。傾斜部32の中央に反射型面対称結像素子12が露出して取り付けられている。光学系収納部31a内に反射型面対称結像素子11がほぼ45度の斜めにして取り付けられており、反射型面対称結像素子11と反射型面対称結像素子12とが互いに平行にされている。物体収納部31bは光学系収納部31aの下部に連通した空間を有し、そこには立体構造物の物体13が置き台34上に載置されている。また、物体収納部31b内には照明装置35が備えられている。照明装置35は例えば、LEDからなり、置き台34上の物体13を照らすために備えられている。
【0032】
このような構成により、物体13についての実像13A,13Bが生じるので、観察者は反射型面対称結像素子12の前方の図12に示す観察方向から実像13Bを物体13と同じ凹凸で観察することになる。なお、光学系収納部31aの少なくとも傾斜部32の表面は黒色を含む暗色にされており、観察者に実像が視認し易くされている。
【0033】
なお、上記した各実施例において、反射型面対称結像素子11,12としては図3に示したシート部21,22からなる反射型面対称結像素子19に限らず、特許文献1に示された構成のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0034】
11,12,19 反射型面対称結像素子
13 物体
13A〜13C 実像
15 ハーフミラー
21,22 シート部
31 ハウジング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された平板状の構造体からなり、入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射する第1及び第2の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、
前記第1の反射型面対称結像素子は物体からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第1の反射型面対称結像素子について前記物体と面対称となるように前記物体の第1の実像を結像させ、
前記第2の反射型面対称結像素子は前記第1の実像からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第2の反射型面対称結像素子について前記第1の実像と面対称となるように前記物体の第2の実像を結像させることを特徴とする空間映像表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の反射型面対称結像素子の各々は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、前記第1集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの前記第1光反射面を構成しかつ前記第2集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの前記第2光反射面を構成することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の反射型面対称結像素子は互いにほぼ垂直又は平行に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の空間映像表示装置。
【請求項4】
前記第2の反射型面対称結像素子の反射光を反射して自身について前記第2の実像と面対称となるように前記物体の第3の実像を結像させるハーフミラーを有することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項5】
前記物体を照明する照明装置を有することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項6】
前記第1の反射型面対称結像素子を内部に固定し、前記第2の反射型面対称結像素子を外部に露出して固定するハウジングを有し、
前記ハウジングの前記第2の反射型面対称結像素子の露出部分の面は暗色にされていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項7】
前記物体は立体物であることを特徴とする請求項1又は5記載の空間映像表示装置。
【請求項1】
直交する第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された平板状の構造体からなり、入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射する第1及び第2の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、
前記第1の反射型面対称結像素子は物体からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第1の反射型面対称結像素子について前記物体と面対称となるように前記物体の第1の実像を結像させ、
前記第2の反射型面対称結像素子は前記第1の実像からの入射光を前記第1及び第2光反射面により2回反射して前記第2の反射型面対称結像素子について前記第1の実像と面対称となるように前記物体の第2の実像を結像させることを特徴とする空間映像表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の反射型面対称結像素子の各々は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、前記第1集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの前記第1光反射面を構成しかつ前記第2集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの前記第2光反射面を構成することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の反射型面対称結像素子は互いにほぼ垂直又は平行に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の空間映像表示装置。
【請求項4】
前記第2の反射型面対称結像素子の反射光を反射して自身について前記第2の実像と面対称となるように前記物体の第3の実像を結像させるハーフミラーを有することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項5】
前記物体を照明する照明装置を有することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項6】
前記第1の反射型面対称結像素子を内部に固定し、前記第2の反射型面対称結像素子を外部に露出して固定するハウジングを有し、
前記ハウジングの前記第2の反射型面対称結像素子の露出部分の面は暗色にされていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項7】
前記物体は立体物であることを特徴とする請求項1又は5記載の空間映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−81309(P2011−81309A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235362(P2009−235362)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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