説明

空間映像表示装置

【課題】被投影物から出射された光を効率よく利用するとともに周囲からの外来光の反射を軽減し、空間映像のコントラストをより向上させることができる。
【解決手段】空間映像表示装置に用いられる反射型面対称結像素子4は、長手方向に伸長した4つの面を有する透光の直方体材20を、4つの面のうちの1面の光反射面23が同一方向となるように、複数並べて形成したミラーシート41及びミラーシート42を備え、ミラーシート41とミラーシート42の光反射面23が直交するようにミラーシート41とミラーシート42を重ね合わせ、物体1からの光を、ミラーシート41及びミラーシート42の光反射面23にそれぞれ1回ずつ反射させて実像を結像させるように構成されており、直方体材40は、光反射面23における2つの長手の角部が、長手方向に沿って、光反射面23に対して所定の角度で削られた空隙26を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間中に映像を表示する空間映像表示装置に関し、特に、反射型面対称結像素子を用いて、その素子の一方側に置かれた被投影物の像を素子の反対側の面対称となる位置に結像させる空間映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リアルな3次元空中映像を実現するために、様々な光学素子が開発されている。例えば、特許文献1には、反射型面対称結像素子を用いてその素子の一方側に置かれた被投影物である物体の像を素子の反対側の面対称となる位置に結像させる空間映像表示装置が開示されている。この空間映像表示装置で用いられる反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に貫通させた複数の穴を備え、各穴の内壁に直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、その穴を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものである。被投影物から発せられた光は反射型面対称結像素子の単位光学素子を通過する際に2つの鏡面要素の一方で反射した後、鏡面で反射して反射光となり、その反射光が更に単位光学素子の2つの鏡面要素の他方で反射して、被投影物を仮想鏡に映した位置に結像することになる。
【0003】
しかしながら、上記の光学素子には非常に微細な加工技術が要求されるため、このような光学素子を用いた空間映像表示装置では製造コストがかかるという問題がある。そこで、本出願人は、製造コストがかからない反射型面対称結像素子を特許文献2において提案している。
【0004】
図1〜図3は、特許文献2で提案された反射型面対称結像素子の構成を示す図である。図1は反射型面対称結像素子の外観図、図2は反射型面対称結像素子を構成する直方体材の外観図、図3は反射型面対称結像素子を形成する2つのミラーシートの組合せを示す外観図である。
【0005】
反射型面対称結像素子2は、図1及び図3に示すように、各々が多数の棒状の直方体材20を並列に密着させることにより形成された2つのミラーシート21、22を有する。
【0006】
直方体材20は、図2に示すように、長手部材であり、長手方向に垂直な方向、すなわち、短手方向の四角形の断面の一辺が数百μmないし数cm前後の透明なアクリルに代表されるプラスチックまたはガラスの棒からなる。長さは投影する画像の大きさによって変化するが、数十mm〜数m程度である。なお、長手方向に伸長した4面のうちの3面は光の透過または反射に使用する面であるため、滑らかな状態とする。直方体材20はミラーシート21、22各々で100本〜20000本程度用いられる。
【0007】
図2に示すように、直方体材20の長手方向に伸長した1面には光反射膜23が形成され、それにより光反射面23となっている。光反射膜23はアルミや銀の蒸着あるいはスパッタなどによって形成される。
【0008】
このような複数の直方体材20について、1つの直方体材20の光反射膜23を形成した面とは反対側の対向面24と別の直方体材20の光反射面23を密着させてミラーシート21、22が形成される。ミラーシート21、22は、図3に示すように、直方体材20の並列方向が交差するようにいずれか一方を90度回転させた状態で貼り合わせられ、それによって、反射型面対称結像素子2が形成される。ミラーシート21の各直方体材20とミラーシート22の各直方体材20とが交差する部分が微小ミラーユニット(単位光学素子)を構成し、各微小ミラーユニットのミラーシート21の光反射面23が第1光反射面となり、ミラーシート22の光反射面23が第2光反射面となる。
【0009】
かかる反射型面対称結像素子2を用いた空間映像表示装置においては、図4に示すように、物体(例えば、ディスプレイ装置の画面上に表示された映像などの被投影物でもよい)1が反射型面対称結像素子2の一方の面側に配置され、反射型面対称結像素子2には物体1からの光が斜めに入射するようになっている。反射型面対称結像素子2の他方の面側には観察者の目Eが位置し、反射型面対称結像素子2について物体1と面対称となる空間位置に実像3、すなわち空間映像3が形成される。なお、図4における反射型面対称結像素子2の両端部である下端A、上端A’は、図1の反射型面対称結像素子2の対向角A、A’に対応している。より詳しくは、図5に示すように、物体1からの光は矢印Y1の方向でミラーシート22の光反射面23(第2光反射面)に反射し、その反射光は矢印Y2の方向でミラーシート21の光反射面23(第1光反射面)に反射し、その反射光は矢印Y3の方向で観察者に向けて進むので、反射型面対称結像素子2の各光反射面23でそれぞれ1回、つまり2回反射して鏡映像を作り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−158114号公報
【特許文献2】国際公開第WO2009/136578号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に示した空間映像表示装置においては、物体1から射出された光線の一部(図5に示す矢印Y4)がミラーシート22の光反射面23(第2光反射面)の端面E1に当たって反射し観察者側に届かなくなる、あるいは、周囲の環境から飛来する外来光(図5に示す矢印Y5)がミラーシート21の光反射面23(第1光反射面)の端面E2に当たって反射し、観察者が不要な光を観察することとなり、投影された空間映像3が不鮮明であったり、立体感が失われたりすることがあった。
【0012】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、その課題の一例としては、被投影物から出射された光を効率よく利用するとともに周囲からの外来光の反射を軽減し、空間映像のコントラストをより向上させることができる空間映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するため、本発明の請求項1に係る空間映像表示装置は、物体からの光を観察者に向けて反射する平板状の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、前記反射型面対称結像素子は、長手方向に伸長した4つの面を有する透光の直方体からなり、前記4つの面のうちの1面を所定の厚みを有する光反射面とする長手部材を、前記反射面が同一方向となるように、複数並べて形成した第1ミラーシート及び第2ミラーシートを備え、前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートにおいて、1つの前記直方体の前記光反射面と、隣接する前記直方体の前記光反射面と対向する面が当接するように前記直方体は配列され、前記第1ミラーシートの第1の前記光反射面と前記第2ミラーシートの第2の前記光反射面は直交するように、前記第1ミラーシートと前記第2ミラーシートを、前記光反射面に平行な方向に重ね合わせ、前記物体からの光を、前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートの前記光反射面にそれぞれ1回ずつ反射させて実像を結像させるように構成されており、前記長手部材は、前記所定の厚みを有する前記光反射面における2つの長手の角部が、長手方向に沿って、前記光反射面に対して所定の角度で削られていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】反射型面対称結像素子の外観図である。
【図2】図1の反射型面対称結像素子を構成する直方体材の外観図である。
【図3】図1の反射型面対称結像素子を形成する2つのミラーシートの組合せを示す図である。
【図4】図1の反射型面対称結像素子を用いた空間映像表示装置の光学系の概略図である。
【図5】図1の反射型面対称結像素子において光が2回反射する様子を示す概要図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る反射型面対称結像素子を構成する直方体材の外観図である。
【図7】図6に示す直方体材を並べることにより形成されるミラーシートの外観図である。
【図8】図7に示すミラーシートの空隙に樹脂等を充填して形成されたミラーシートの外観図である。
【図9】図8に示すミラーシートの組合せを示す外観図である。
【図10】図7に示すミラーシートの正面図である。
【図11】図8に示すミラーシートの正面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る反射型面対称結像素子の外観図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る反射型面対称結像素子を構成するミラーシートの作用を示す概要図である。
【図14】従来の反射型面対称結像素子を構成するミラーシートの作用を示す概要図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る反射型面対称結像素子を構成するミラーシートの変形例の作用を示す概要図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る反射型面対称結像素子を構成するミラーシートの変形例の作用を示す概要図である。
【図17】他の構成の反射型面対称結像素子の外観図である。
【図18】図17に示す反射型面対称結像素子の鏡面要素を示す外観図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る反射型面対称結像素子の鏡面要素を示す外観図である。
【図20】図19に示す反射型面対称結像素子の作用を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
まず、図6〜図12を用いて、本実施の形態に係る反射型面対称結像素子4の製造方法及び構成について説明する。図6は、反射型面対称結像素子4を構成する直方体材20の外観図、図7は、図6に示す直方体材20を並べることにより形成されるミラーシート21、22の外観図、図8は、図7に示すミラーシート21、22の空隙に樹脂等を充填して形成されたミラーシート41、42の外観図、図9は、図8に示すミラーシート41、42の組合せを示す外観図である。また、図10は、ミラーシート21、22を図7の正面方向(図7に示すA方向)から見た図(正面断面図ともいう)、図11は、ミラーシート41、42を図8の正面方向(図8に示すA方向)から見た図(正面断面図ともいう)、図12は、反射型面対称結像素子4の外観図である。
【0017】
本実施の形態に係る直方体材20は、図2に示した直方体材20から光反射面23の面取りを行ったものである。詳しくは、本実施の形態に係る直方体材20は、図6に示すように、光反射面23における長手方向の上下両端の2辺を、長手方向に沿って、光反射面23に対して傾斜した所定角度α(αは鋭角な角度が望ましく、例えば、15〜45度など)で面取りして、作成される。
【0018】
なお、本実施の形態の光反射面23は、アルミや銀の蒸着あるいはスパッタなどによって形成され、膜厚を0.1〜10μmとする光反射膜である。本実施の形態では、この光反射膜の上下端面が、面取り加工(切削・研磨)されているが、本明細書では、説明上、面取り部分を大きく誇張して図面上に表している。
【0019】
次に、面取りされた直方体材20それぞれを、図7に示すように、一の直方体材20の光反射面23と隣接する他の直方体材20の対向面24を密着させて平板状のミラーシート21、22を形成する。この結果、平板状のミラーシート21、22の上下表面(光反射面23に垂直な平板面)には、図7及び図10に示すように、断面がクサビ形の空隙26が複数形成される。
【0020】
次に、図8に示すように、ミラーシート21、22の上下表面のうち、一方の面の空隙26には、光を吸収する黒色の樹脂または接着剤(以下、樹脂等25aという)、他方の面の空隙26には、母材(直方体材20)と略同一の屈折率(n=1.4〜1.6)を有する透明な樹脂または接着剤(以下、樹脂等25bという。また、樹脂等25aと25bを合わせて樹脂等25と称する)を充填して、ミラーシート21、22を固定する。以下、空隙26に樹脂等25を充填したミラーシート21、22をそれぞれ、ミラーシート41、42と称する。この結果、図8及び図11に示すように、断面がクサビ形の空隙26は樹脂等25に充填されるので、上下表面は平らとなり平板状のミラーシート41、42が形成される。
【0021】
次に、樹脂等25a及び25bを充填されたミラーシート41、42を、図9に示すように、直方体材40の並列方向が交差するようにいずれか一方を90度回転させた状態で貼り合わせられ、それによって、反射型面対称結像素子4が形成される。図12に示すように、ミラーシート41の各直方体材40とミラーシート42の各直方体材40とが交差する部分が微小ミラーユニット(単位光学素子)を構成し、各微小ミラーユニットのミラーシート41の光反射面23が第1光反射面となり、ミラーシート42の光反射面23が第2光反射面となる。
【0022】
なお、図9及び図12に示すように、ミラーシート41と42を光反射面23の方向に重ね合わせる場合、樹脂等25aは、観察者の目Eが位置する側の表面、樹脂等25bは物体1が位置する側の表面となるように、ミラーシート41、42は重ね合される。
【0023】
次に、図13及び図14を用いて、本実施の形態に係る反射型面対称結像素子4の作用について説明する。図13は、反射型面対称結像素子4を構成するミラーシート41、42の正面断面図であり、ミラーシート41、42に入射する光の進路を示す図、図14は、面取りをしていない直方体材20を用いて製造された従来の反射型面対称結像素子2を構成するミラーシート21、22の正面断面図であり、ミラーシート21、22に入射する光の進路を示す図である。
【0024】
なお、図13及び図14においては、ミラーシートの上方に観察者の目Eは配置され、ミラーシートの下方に物体1が配置されているものとする。また、反射型面対称結像素子4を構成するミラーシート41、42、反射型面対称結像素子2を構成するミラーシート21、22は、同一の作用を示すため、図13及び図14においては、一つのミラーシートの作用だけを表記している。
【0025】
本実施の形態に係る反射型面対称結像素子4では、図13に示すように、物体(被投影物)1から射出された光は、ミラーシート41、42の光反射面23の端面E1に当たっても樹脂等25bが介在するため反射されることなく、ミラーシート41、42内を透過し、観察者の目に届くようになっている。また、外来光OLがミラーシート41の光反射面23の端面E2に当たっても樹脂等25aに吸収されるため、外来光OLが反射して観察者の目に届くことはない。
【0026】
一方、従来の反射型面対称結像素子2では、図14に示すように、物体(被投影物)1から射出された光は、ミラーシート41、42の光反射面23の端面E1に当たって反射し観察者側に届かなくなる、また、外来光OLがミラーシート21の光反射面23の端面E2に当たって反射し、観察者が不要な光を観察することとなり、投影された空間映像3が不鮮明であったり、立体感が失われたりすることが生じる。
【0027】
本実施の形態の係る反射型面対称結像素子4は、このような不具合を解消したものであり、物体1から出射された光を効率よく利用するとともに周囲からの外来光の反射を軽減し、空間映像のコントラストをより向上させることができるようになっている。
【0028】
<その他の実施形態>
図15は、ミラーシート21、22の物体1側及び観察者側のいずれの空隙26にも樹脂等25bを充填したミラーシート41A、42Aの正面断面図である(変形例1)。この場合には、周辺環境から飛来する外来光OLがミラーシート41の光反射面23の端面E2に当たったとしても、外来光は観察者の視線方向とは反対側に反射するので、外来光OLが観察者の目に届くことはない。また、物体1から射出された光は、ミラーシート41、42の光反射面23の端面E1に当たっても反射されることなく、ミラーシート41、42内を透過し、観察者の目に届くので、光の利用効率を向上させることができる。
【0029】
図16は、ミラーシート21、22の物体1側及び観察者側のいずれの空隙26にも樹脂等25aを充填したミラーシート41B、42Bの正面断面図である(変形例2)。この場合には、周辺環境から飛来する外来光OLがミラーシート41の光反射面23の端面E2に当たったとしても、樹脂等25aに吸収されるため、外来光OLが反射して観察者の目に届くことはない。また、上記実施の形態及び上記変形例1と比べて、光の利用効率は若干減少するが、物体1から射出された光は、ミラーシート41、42の光反射面23の端面E1に当たっても樹脂等25aに吸収されるため、周囲からの外来光OLの反射を軽減し、空間映像のコントラストを向上させることができる。
【0030】
なお、上記変形例1及び2においては、2つのミラーシートにはそれぞれ同一の樹脂を充填させるため、製造作業がより容易となり、製造コストを低減することができる。
【0031】
また、上記変形例1及び2においては、2つのミラーシートにはそれぞれ同一の樹脂を充填させて反射型面対称結像素子を構成したが、2つのミラーシートに充填する樹脂を異なるようにしてもよい。例えば、一方の表面の空隙26に樹脂等25a、他方の表面の空隙26に樹脂等25bを充填したミラーシート41Cと、双方の表面の空隙26に樹脂等25bを充填したミラーシート42Cと、を備えた反射型面対称結像素子4Cでもよい。この場合、ミラーシート41Cの樹脂等25bが充填された表面と、ミラーシート42Cの樹脂等25bが充填された表面を密着させて重ね合わせるのが好適である。ミラーシート41Cの樹脂等25aが充填された表面が観察者側、ミラーシート42Cの樹脂等25bが充填された表面が物体側に位置付けられるので、物体1から出射された光を最も効率よく利用できるとともに周囲からの外来光の反射を軽減できるからである。
【0032】
また、上記実施の形態及び変形例では、ミラーシート21、22に形成された空隙26に樹脂等25を充填する場合について説明したが、より簡単な構成としては、ミラーシート21、22の空隙に樹脂等25を充填しなくてもよい。クサビ形の空隙26が存在することにより、物体1からの光の利用効率を向上させるとともに周囲からの外来光の反射を軽減できるためである。
【0033】
また、反射型面対称結像素子の構成は、図1〜図16に示した長手部材である直方体材を用いて2つのミラーシートを形成する構成に限定されるものではなく、物体1からの光を反射型面対称結像素子に対して面対称な位置に実像として結像させる光学素子であれば、いずれの構成でもよい。例えば、特許文献1に示した反射型面対称結像素子の構成でもよい。図17は、このような反射型面対称結像素子5の外観斜視図であり、図18は、反射型面対称結像素子5の鏡面要素を示した図である。より詳しくは、反射型面対称結像素子5は、所定の基盤51を厚み方向に貫通させた複数の穴52を備え、各穴52の内壁に直交する2つの鏡面要素54a及び54bから構成される単位光学素子53を形成したものであって、その穴を通じて基盤51の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素54a及び54bでそれぞれ1回ずつ反射させるようにしてもよい。
【0034】
なお、反射型面対称結像素子5を用いる場合には、アルミやニッケル等の金属で基盤51を形成した場合、鏡面要素54a及び54bは、金型の面粗さが十分小さければ、それによって自然と鏡面となるので、基盤51全体を鏡面要素とすることができる。
【0035】
このような反射型面対称結像素子5を用いた場合には、図19に示すように、鏡面要素54a及び54bの上下端面を、鏡面要素54a及び54bに対して傾斜した所定角度で面取り加工(切削・研磨)した反射型面対称結像素子5Aが好適である。図20は、反射型面対称結像素子5Aを図19の右側面方向(図19のB方向)から見た図である。なお、面取りされた傾斜面は、外来光OLを観察者の目Eの方向とは反対側に反射させるため、観察者の目Eの方向とは反対側の方向に配置される。
【0036】
したがって、反射型面対称結像素子5Aは、物体1からの光の利用効率を向上させるとともに外来光の反射を軽減できるので、空間映像のコントラストをより向上させることが可能である。
【0037】
以上に述べた実施の形態によれば、物体1からの光を観察者に向けて反射する平板状の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、この反射型面対称結像素子は、長手方向に伸長した4つの面を有する透光の直方体からなり、4つの面のうちの1面を所定の厚みを有する光反射面23とする直方体材20を、反射面23が同一方向となるように、複数並べて形成したミラーシート21及びミラーシート22を備え、ミラーシート21及びミラーシート22において、1つの直方体材20の光反射面23と、隣接する直方体材20の対向面24が当接するように配列され、ミラーシート21の光反射面23とミラーシート22の光反射面23は直交するように、ミラーシート21とミラーシート22を、光反射面23に平行な方向に重ね合わせ、物体1からの光を、ミラーシート21及びミラーシート22の光反射面23にそれぞれ1回ずつ反射させて実像3を結像させるように構成されており、各直方体材20は、所定の厚みを有する光反射面23における2つの長手の角部が、長手方向に沿って、光反射面23に対して所定の角度で削られている空隙26を備えている。
【0038】
この構成の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置によれば、物体から出射された光を効率よく利用するとともに周囲からの外来光の反射を軽減し、空間映像のコントラストをより向上させることができる。
【0039】
また、上記構成に、以下の構成を施してもよい。
【0040】
一例としては、ミラーシート21及びミラーシート22を、それぞれ、直方体材20の空隙26に対して、直方体材20と略同一の屈折率を有する透明な樹脂または接着剤である樹脂等25bが充填されているミラーシート41A及びミラーシート42Aとしてもよい。
【0041】
別の一例としては、ミラーシート21を、空隙26の一方の平板側に対しては、黒色の樹脂または接着剤である樹脂等25aが充填され、空隙26の他方の平板側に対しては、直方体材20と略同一の屈折率を有する透明な樹脂または接着剤である樹脂等25bが充填されたミラーシート41C、ミラーシート22を、空隙26に対して樹脂等25bが充填されたミラーシート42Cとし、ミラーシート41Cとミラーシート42Cは、ミラーシート41Cの樹脂等25bが充填された平板側と、ミラーシート42Cの樹脂等25bが充填された平板側とが当接するように重ね合わせてもよい。
【0042】
また、別の一例としては、ミラーシート21及びミラーシート22を、それぞれ、空隙26の一方の平板側に対しては、黒色の樹脂または接着剤である樹脂等25aが充填されたミラーシート41、空隙26の他方の平板側に対しては、直方体材20と略同一の屈折率を有する透明な樹脂または接着剤である樹脂等25bが充填されたミラーシート42とし、ミラーシート41とミラーシート42は、ミラーシート41の樹脂等25aが充填された平板側と、ミラーシート42の樹脂等25aが充填された平板側とが当接するように重ねわせられていてもよい。
【0043】
また、別の一例としては、ミラーシート21及びミラーシート22を、それぞれ、空隙26に対して、黒色の樹脂または接着剤である第2の樹脂等が充填されたミラーシート41B及びミラーシート42Bとしてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施の形態に対して種々の変形や変更を施すことができ、そのような変形や変更を伴うものもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 ディスプレイ部
2,4,5,5A, 反射型面対称結像素子
3 空間映像(実像)
20 直方体材
21,22,41,42,41A,41B,41C,42,42A,42B,42C ミラーシート
23 光反射面
25a,25b,25 樹脂等
26 空隙
54a,54b 鏡面要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体からの光を観察者に向けて反射する平板状の反射型面対称結像素子を備えた空間映像表示装置であって、
前記反射型面対称結像素子は、
長手方向に伸長した4つの面を有する透光の直方体からなり、前記4つの面のうちの1面を所定の厚みを有する光反射面とする長手部材を、前記反射面が同一方向となるように、複数並べて形成した第1ミラーシート及び第2ミラーシートを備え、
前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートにおいて、1つの前記直方体の前記光反射面と、隣接する前記直方体の前記光反射面と対向する面が当接するように前記直方体は配列され、
前記第1ミラーシートの第1の前記光反射面と前記第2ミラーシートの第2の前記光反射面は直交するように、前記第1ミラーシートと前記第2ミラーシートを、前記光反射面に平行な方向に重ね合わせ、
前記物体からの光を、前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートの前記光反射面にそれぞれ1回ずつ反射させて実像を結像させるように構成されており、
前記長手部材は、
前記所定の厚みを有する前記光反射面における2つの長手の角部が、長手方向に沿って、前記光反射面に対して所定の角度で削られていることを特徴とする空間映像表示装置。
【請求項2】
前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートは、それぞれ、
前記長手部材の削られた空隙部に対して、前記長手部材と略同一の屈折率を有する透明な樹脂または接着剤である第1の樹脂等が充填されていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項3】
前記第1ミラーシートは、
前記長手部材の削られた空隙部の一方の平板側に対しては、黒色の樹脂または接着剤である第2の樹脂等が充填され、前記長手部材の削られた空隙部の他方の平板側に対しては、前記長手部材と略同一の屈折率を有する透明な樹脂または接着剤である第1の樹脂等が充填され、
前記第2ミラーシートは、
前記長手部材の削られた空隙部に対して、前記第1の樹脂等が充填され、
前記第1ミラーシートと前記第2ミラーシートは、
前記第1ミラーシートの前記第1の樹脂等が充填された平板側と、前記第2ミラーシートの前記第1の樹脂等が充填された平板側とが当接するように重ね合わせられていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項4】
前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートは、それぞれ、
前記長手部材の削られた空隙部の一方の平板側に対しては、黒色の樹脂または接着剤である第2の樹脂等が充填され、前記長手部材の削られた空隙部の他方の平板側に対しては、前記長手部材と略同一の屈折率を有する透明な樹脂または接着剤である第1の樹脂等が充填され、が充填され、
前記第1ミラーシートと前記第2ミラーシートは、
前記第1ミラーシートの前記第2の樹脂等が充填された平板側と、前記第2ミラーシートの前記第1の樹脂等が充填された平板側とが当接するように重ねわせられていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項5】
前記第1ミラーシート及び前記第2ミラーシートは、それぞれ、
前記長手部材の削られた空隙部に対して、黒色の樹脂または接着剤である第2の樹脂等が充填されていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−109211(P2013−109211A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255046(P2011−255046)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】