説明

穿孔ビット

【課題】スライムが引き戻し作業に悪影響を与えることなく、スライムの排出性を確保しながらガイド面の周方向の長さを大きく確保して直進性を向上させた、穿孔ビットを提供すること。
【解決手段】穿孔ビットAは、台金1のチップ保持面12に複数の刃体2a〜2cを固着しており、連結面11とチップ保持面12との間に穿孔時に直進性を保つためのガイド面13a2,13a3と、穿孔時に発生するスライムを排出する排出溝13b11,13b31を形成する排出溝面13b1,13b3を有している。そして、ガイド面13a1〜13a3は、チップ保持面12から連結面11まで当該穿孔ビットAの軸線CLに近づくようにテーパー状に傾斜している一方、複数の排出溝面13b1〜13b3は、チップ保持面12に近づくほど当該穿孔ビットAの軸線CLに近づくようにテーパー状に傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウス形や、スパイク形、ボタン形等の各種チップ形状の超硬合金製等の複数のチップが台金に設けられ、回転により複数のチップが当る位置をずらしながら前後方向の振動により穿孔対象物に対し衝撃を与えて穿孔を行う穿孔ビットに関する。
【背景技術】
【0002】
削岩機やロックボルト等の先端に装着されて、回転により前記複数のチップが当る位置をずらしながら前後方向の振動により穿孔対象物に対し衝撃を与えて穿孔を行う穿孔ビットのチップとして、超硬合金製の複数の刃体(両刃状のチップ)を設けたいわゆるハウス形ビット(例えば、特許文献1、2参照。)や、超硬合金製のボタン状チップを設けたボタン形ビット(例えば、特許文献3参照。)がある。
【0003】
かかる超硬合金製チップを採用した穿孔ビットは、例えば、ロックボルトの先端部に装着して使用された場合、例えば、1分間に数百回転しながらその10倍近い回数、穿孔ビットの軸方向に前後方向の進退動作(振動)を行うことにより、岩石等の穿孔対象物に打撃を加えると共に、穿孔ビットに設けたブローホールから圧縮空気を排出し、ブローホールから排出した圧縮空気により自穿孔ロックボルトの後端部方向にスライム(くり粉)を排出しながら、穿孔ビットの最大外径に応じた削孔径の長孔を形成して進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−170035号公報
【特許文献2】特開平8−312280号公報
【特許文献3】特開2004−156222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の特許文献1や特許文献3、さらには特許文献2の図4〜図6に記載された穿孔ビットのように、台金のガイド面に段差等があると、穿孔中のスライムの排出状況などに応じて、ロックボルトや削岩機の先端部に設けられた穿孔ビットを引き戻す際に、その段差に大きなスライムが引っ掛かり易く、引き戻し操作に大きな力が必要であったり、引き戻し操作ができないおそれもあり、穿孔作業に支障が生じる。また、穿孔ビットの後端部である連結面側は、刃体やボタン形チップ等のチップが設けられる先端部であるチップ装着面側と較べると、直接、打撃を行う部分ではないため、チップ装着面側より薄肉状に形成しても問題ない。そのため、かかる穿孔ボルトの引き戻し作業や、打撃等を考慮すると、穿孔ビットのガイド面は、特許文献2の図3に記載された穿孔ビットのように、先端部であるチップ装着面側から後端部である連結面側に行くほど徐々に径が小さくなるテーパー状に形成されていることが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献2の図3に記載された穿孔ビットでは、ブローホールが先端側のチップ装着面にて開口しており、スライムの排出性が劣る、という問題がある。
【0007】
また、スライムの排出性を向上させるためには、一般的に、ガイド面間の排出溝面により形成される排出溝の断面積を大きく確保する必要があり、そのために排出溝面の周方向の幅を広く確保すると、ガイド面の周方向の長さが小さくなり、回転しながら振動により前後方向の動作をする穿孔ビットの直進性が低下する、という問題が生じる。特に、高価な超硬合金製刃体を採用した穿孔ビットでは、超硬合金製の刃体(チップ)数が少ないほどコストが下がり、硬質の岩に対しては打撃力が大きくなるものの、刃体(チップ)数が少ないため、芯ズレ、すなわち回転軸がずれやすくなるため、台金の最外周側面であるガイド面が担う直進性のガイド機能が重要となり、なるべくガイド面の周方向の長さを大きく確保する必要が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、スライムが引き戻し作業に悪影響を与えることなく、スライムの排出性を確保しながらガイド面の周方向の長さを大きく確保して直進性を向上させた、穿孔ビットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の穿孔ビットは、台金に複数のチップが設けられ、回転により前記複数のチップが当る位置をずらしながら前後方向の振動により穿孔対象物に対し衝撃を与えて穿孔を行う穿孔ビットであって、前記台金は、前記削岩機やロックボルト等の先端部が連結される連結面と、複数のチップが配置されるチップ保持面と、前記連結面と前記チップ保持面との間で、穿孔時に直進性を保つための当該穿孔ビットの中心を軸とした周側面を有する複数のガイド面と、前記各ガイド面の間に前記各ガイド面より窪み、穿孔時に発生するスライムを排出する排出溝を形成する複数の排出溝面とからなる外周側面と、を有し、前記複数のガイド面は、それぞれ、前記チップ保持面から前記連結面まで当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜している一方、前記複数の排出溝面における当該穿孔ビットの軸線に最も近づく部分は、それぞれ、前記チップ保持面に近づくほど当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜している、ことを特徴とする穿孔ビットである。
これにより、複数のガイド面は、それぞれ、チップ保持面から連結面まで当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜しているので、削孔中にスライムが支えたとき等に行う引き戻し作業に悪影響を与えることを防止できる一方、複数の排出溝面における当該穿孔ビットの軸線に最も近づく部分は、それぞれ、チップ保持面に近づくほど当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜しているので、チップ保持面に近づくほど、当該穿孔ビットの軸線方向への排出溝の深さが増大し、排出溝の断面積が増加するので、スライムの排出性を確保しながらガイド面の周方向の長さを大きく確保して直進性を向上させることができる。
ここで、前記台金は、さらに、当該穿孔ビットの中心に前記連結面から前記チップ保持面に向かって形成され、前記削岩機やロックボルト等の中空の先端部が連結される連結孔と、前記連結孔から前記複数の排出溝面それぞれに向かって分岐して設けられ、前記複数の排出溝面それぞれにて開口し圧縮空気を排出する複数のブローホールと、を有し、前記複数のブローホールは、それぞれ、各ブローホールが設けられた前記排出溝面における垂線に対し傾斜して設けられている、ようにしても良い。
このようにした場合、ブローホールの横断面が円形の場合、ブローホール開口部の形状は楕円形状になり、ブローホールの内径を大きくしなくても、ブローホール開口部の形状の面積が大きくなり、圧縮空気の噴出範囲が広がるので、ブローホールの内径を大きくすることによる台金の強度を低下させることなく、さらに、スライムの排出性を向上させることができる。
また、前記複数のブローホールのうち、少なくとも一のブローホールは、そのブローホールが設けられた前記排出溝面における垂線に対し前記チップ保持面側に傾斜して設けられている一方、他のブローホールは、そのブローホールが設けられた前記排出溝面における垂線に対し前記連結面側に傾斜して設けられている、ようにしても良い。
このようにした場合、複数のブローホールから排出される圧縮空気の方向が斜め前方と斜め後方とを向くことになるので、穿孔ビットの回転と相まって、さらに、スライムの排出性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の穿孔ビットでは、複数のガイド面は、それぞれ、チップ保持面から連結面まで当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜している一方、複数の排出溝面における当該穿孔ビットの軸線に最も近づく部分は、それぞれ、チップ保持面に近づくほど当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜しているため、スライムが引き戻し作業に悪影響を与えることなく、スライムの排出性を確保しながらガイド面の周方向の長さを大きく確保して直進性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の穿孔ビットの平面図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ、実施形態の穿孔ビットのI−I線断面図、II−II線断面図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ、図1に示す実施形態の穿孔ビットの左側面図、右側面図である。
【図4】実施形態の穿孔ビットにロックボルトを連結し、自穿孔ロックボルトとして穿孔を行っている状態を示す図である。
【図5】実施形態の穿孔ビットの他の例を示す平面図である。
【図6】実施形態の穿孔ビットのさらに他の例を示す平面図である。
【図7】実施形態の穿孔ビットのさらに他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る穿孔ビットの実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態の穿孔ビットの平面図であり、図2(a),(b)は、それぞれ、実施形態の穿孔ビットのI−I線断面図、II−II線断面図、図3(a),(b)は、それぞれ、図1に示す実施形態の穿孔ビットの左側面図、右側面図である。
【0014】
実施形態の穿孔ビットAは、例えば、削岩機やロックボルト等の先端部に装着されるもので、図1〜図3(a),(b)に示すように、台金1にいわゆるハウス形チップと呼ばれる複数(本実施形態では、便宜上、例えば、3つとする)の刃体2a〜2cが設けられ、回転により複数の刃体2a〜2cが当る位置をずらしながら、振動による前後方向の動作により硬質または軟質等各種の岩盤等の穿孔対象物に対し衝撃を与えて穿孔を行う穿孔ビットである。
【0015】
ここで、穿孔ビットAの回転数は、例えば、1分間に200回転程度であり、振動による前後方向の動作による打撃数は、1分間に約1800回程度である。すなわち、回転数の9倍であり、1回の打撃で穿孔ビットAが40度ずつ回転することにより、刃体2a〜2cが当る位置を回転させ、9回の打撃で1回転する。
【0016】
ここで、ハウス形チップである刃体2a〜2cは、例えば、炭化タングステン等の超硬合金から構成されている。そのため、刃体2a〜2cは、高価であり、1回限りの使用を前提とする自穿孔ロックボルト用の穿孔ビットでは、なるべく、刃体2a〜2cの数を減らすことが要求されている。また、刃体2a〜2cは、鋭角に形成された先端を有している。
【0017】
台金1は、削岩機やロックボルト等の先端部(図示せず)が螺合される連結面11と、複数の刃体2a〜2cが配置されるチップ保持面12と、連結面11とチップ保持面12との間に、穿孔(削孔)時に直進性を保つため当該穿孔ビットAの中心Cを軸とした周側面を有する複数のガイド面13a1〜13a3と、そのガイド面13a1〜13a3より窪み、穿孔時に発生するスライムを排出するための複数の排出溝13b11〜13b31を形成する排出溝面13b1〜13b3が設けられた外周側面13と、を有する。
【0018】
ここで、本実施形態の穿孔ビットAでは、複数のガイド面13a1〜13a3は、図2(a),(b)および図3(a),(b)に示すように、全て、先端側であるチップ保持面12から後端側である連結面11まで当該穿孔ビットAの軸線CLに近づき外径が小さくなるようにテーパー状、すなわち直線状で段差なしに傾斜している。
【0019】
そのため、本実施形態の穿孔ビットAによれば、後述する図4に示すように、穿孔ビットAにより破壊したスライムがガイド面の段差等により引っ掛かることを防止でき、スライムが穿孔(削孔)壁と穿孔ビットA等との間に支えてしまった場合に行われる当該穿孔ビットAの引き戻し作業に悪影響を与えることを防止できる。
【0020】
その一方、複数の排出溝面13b1〜13b3における当該穿孔ビットの軸線CLに最も近づく部分、すなわち複数の排出溝面13b1〜13b3における中央部分は、図1および図2(a),(b)に示すように、全て、チップ保持面12に近づくほど当該穿孔ビットAの軸線CLに近づくようにテーパー状、直線状で段差なしに傾斜している。
【0021】
そのため、本実施形態の穿孔ビットAによれば、排出溝面13b1〜13b3がチップ保持面12に近づくほど当該穿孔ビットAの軸線方向CLへの排出溝面13b1〜13b3の深さが増大し、排出溝13b11〜13b31の断面積が増加するので、ガイド面13a1〜13a3の周方向の長さを大きく確保して直進性を向上させても、排出溝面13b1〜13b3と孔壁との間に形成される排出路の断面積を確保することが可能となり、スライムの排出性を確保しながらガイド面13a1〜13a3の周方向の長さを大きく確保して直進性を向上させることができる。なお、連結面11に近づくに従って台金1の外径が小さくなることから、排出溝13b11〜13b31の断面積が減少しても、スライムの排出性に何ら支障はなく、台金1の両端側部分に必要な強度を十分に確保することができる。
【0022】
また、連結面11には、図2(a),(b)に示すように、削岩機やロックボルト等の先端部(図示せず)が螺合されるネジ穴等の連結穴11aが形成されている。そして、連結穴11aの先端には、削岩機やロックボルト等の中空孔(図示せず)を介して送られてくる圧縮空気を各ブローホール13b12〜13b32に分岐するための圧縮空気溜り11a2が設けられている。
【0023】
チップ保持面12は、複数の刃体2a〜2cを、当該穿孔ビットの中心Cに対し120度の角度で複数の刃体2a〜2cの中心側を離して配置し、ロウ付け等により固着するため、当該穿孔ビットの中心Cから120度の角度で刃体2a〜2cの幅で拡がる断面凹形状の刃体保持座部121が形成されている。
【0024】
そして、本実施形態1のチップ保持面12では、複数の刃体2a〜2cを、各刃体2a〜2cの配置位置を基点として、ガイド面13a1〜13a3における当該穿孔ビットAの回転方向αの周方向長が、ガイド面13a1〜13a3における当該穿孔ビットAの反回転方向βの周方向長より長くなるように配置している。つまり、言い方を替えれば、複数の刃体2a〜2cは、それぞれ、チップ保持面12に、ガイド面13a1〜13a3における周方向の中央位置より、当該穿孔ビットの反回転方向β側にずれた位置に、それぞれ、配設されてロウ付けにより固着されている。
【0025】
例えば、刃体2bの場合、図3(b)に示すように、当該刃体2bの最外部の刃先先端から当該穿孔ビットAの軸方向と平行に延長した延長線13a2CLを基準として、ガイド面13a2における当該穿孔ビットAの回転方向αの周方向長13a2L1が、ガイド面13a2における当該穿孔ビットAの反回転方向βの周方向長13a2L2より長くなるように、チップ保持面12に配置されている。なお、他の刃体2a,2cも、前述のような刃体2bと同様な位置にしている。
【0026】
そのため、実施形態1の穿孔ビットAでは、複数の刃体2a〜2cの配置位置を中心として、ガイド面13a1〜13a3における当該穿孔ビットAの回転方向αの周方向長が、ガイド面13a1〜13a3における当該穿孔ビットAの反回転方向βの周方向長より長くなるので、回転に伴って各刃体2a〜2cを反回転方向βに移動するスライム(くり粉)が、近くに存在する排出溝13b11〜13b31内に入りやすくなる。このため、スライムの排出性を確保しつつもガイド面13a1〜13a3の周方向の長さを確保することが可能となり、穿孔ビットAの直進性を向上させることができる。なお、ガイド面13a1〜13a3における当該穿孔ビットAの回転方向αおよび反回転方向βの周方向長を変えることは、本発明では、任意事項であり、当該穿孔ビットAの回転方向αおよび反回転方向βの周方向長を同一にしても勿論よい。
【0027】
また、実施形態の穿孔ビットAでは、刃体保持座部121における当該穿孔ビットAの反回転方向β側の端部121a1〜121c1は、当該穿孔ビットAの反回転方向β側のガイド面13a1〜13a3と排出溝面13b1〜13b3との境界線上に位置させている。
【0028】
そのため、実施形態の穿孔ビットAでは、穿孔ビットAの直進性を確保するためガイド面13a1〜13a3における当該穿孔ビットAの回転方向の周方向長を確保した場合でも、刃体保持座部121における当該穿孔ビットAの反回転方向β側の端部121a1〜121c1から直ぐに排出溝面13b1〜13b3が開始するので、前述した傾斜状に形成された排出溝13b11〜13b31による効果と相俟って、この点から、スライムの排出性を向上させることができる。なお、このことも、本発明では、任意事項である。
【0029】
また、穿孔ビットAの3つのブローホール13b12〜13b32のうち、ブローホール13b32は、図2(a)に示すように、当該穿孔ビットAの斜め後方に傾斜しており、かつ、排出溝面13b3における垂線に対し傾斜している。なお、断面図により示していないが、図3(b)に示すようにブローホール13b22も、ブローホール13b32と同様に、当該穿孔ビットAの後端側、すなわち連結面11側に傾斜しており、かつ、排出溝面13b2における垂線に対し傾斜している。
【0030】
その一方、穿孔ビットAの3つのブローホール13b12〜13b32のうち、ブローホール13b12のみ、図2(b)に示すように、当該穿孔ビットAの斜め前方に傾斜しており、かつ、排出溝面13b1における垂線に対し傾斜している。
【0031】
これにより、実施形態の穿孔ビットAによれば、各ブローホール13b12〜13b32の横断面が円形の場合、各ブローホール13b12〜13b32の開口部の形状は、楕円形状になり、ブローホール13b12〜13b32の内径を大きくしなくても、各ブローホール13b12〜13b32の開口部の面積が大きくなるので、圧縮空気の噴出範囲が広がり、この点でも、スライムの排出性を向上させることができる。特に、斜め後方に向けて開口するブローホール13b22,13b32は、いずれも排出溝面13b2,13b3がチップ保持面12に近づくほど軸心CLに近づくように傾斜しているから、より偏平な楕円形状となる。
【0032】
また、実施形態の穿孔ビットAでは、斜め前方に傾斜して形成されたブローホール13b12と、斜め後方に傾斜して形成されたブローホール13b22,13b32とを有するため、3つのブローホール13b12〜13b32から、斜め前方と斜め後方に圧縮空気が排出されることになり、当該穿孔ビットAの回転と相俟って、この点でも、スライムを効果的に排出することができる。なお、各ブローホール13b12〜13b32の角度は、本発明では、任意である。
【0033】
図4は、実施形態の穿孔ビットAにロックボルトBを連結し、自穿孔ロックボルトとして穿孔を行っている状態を示す図である。
【0034】
図4に示すように、実施形態の穿孔ビットAでは、台金1の外周側面13の形状が先端側であるチップ装着面12側から後端側である連結面11側に向かうほど細くなるようにテーパー状、すなわち穿孔ビットAの軸心CLに向かうように段差無しに直線的に傾斜しているので、台金1の外周側面13の段差等がある場合と比較すると、自穿孔ロックボルトを引き戻そうとした場合には、スライムが削孔壁と穿孔ビットAまたはロックボルトBとの間をスムーズに移動し易くなり、自穿孔ロックボルトの引き戻し操作が円滑になり、操作性(作業性)が向上する。
【0035】
なお、本実施形態の穿孔ビットAでは、図1〜図4に示すように、刃体保持座部121上に、当該穿孔ビットAの中心Cに対し120度の角度で複数の刃体2a〜2cの中心側を離して配置して固着して説明したが、本発明では、これに限らず、図5に示すように、図1(a)に示す複数の刃体2a〜2cより長い複数の刃体2a’〜2c’を使用して、中心Cの位置まで刃体2a’〜2c’が存在するようにしても勿論よい。
【0036】
また、実施形態穿孔ビットAでは、複数の刃体2a〜2cを、120度間隔に配置するように説明したが、本発明では、これに限らず、2個の刃体を例えば180度間隔、すなわち一文字状に配置するようにしても、あるいは4個以上を等間隔に配置するようにしても勿論よい。その結果、複数の刃体の数に応じて、ガイド面、排出溝面、およびブローホール等の数もそれぞれ2つあるいは、4つ以上となる。
【0037】
また、実施形態の穿孔ビットAでは、図2および図3に示すように、排出溝面13b1〜13b3に、斜め前方に傾斜して形成されたブローホール13b12と、斜め後方に傾斜して形成されたブローホール13b22,13b32とを有するものとして説明したが、本発明では、3つのブローホール13b12〜13b32の傾斜角度は任意であり、全て斜め前方に傾斜していても良いし、あるいは全て斜め後方に傾斜していても良いし、さらには、1のブローホールだけ斜め後方に傾斜していても勿論よい。
【0038】
また、以上説明した本実施形態の穿孔ビットAでは、台金1に複数の両刃状の刃体2a〜2c,2a’〜2c’を設けたいわゆるハウス形ビットを一例に説明したが、本発明では、これに限らず、例えば、図6に示す穿孔ビットA’のように、台金1にいわゆる複数のボタン形チップ3を設けたボタン形ビットに適用するようにしても勿論よい。
【0039】
さらに、図7に示す穿孔ビットA”のように、各ガイド面13a1’〜13a3’における当該穿孔ビットBの回転方向α側に、その回転方向αに向かって突出し、先端部が90度以下の鋭角をなす鋭角条部13a11’〜13a31’を設けるようにしても勿論よい。このように、各ガイド面13a1’〜13a3’における当該穿孔ビットBの回転方向α側に、その回転方向αに向かって突出し、先端部が90度以下の鋭角をなす鋭角条部13a11’〜13a31’を設けた場合、穿孔ビットBが回転方向αに回転した際、回転する鋭角条部13a11’〜13a31’により穿孔時のスライムをかき集めることが可能になるので、よりスライムの排出性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
A,A’、A” 穿孔ビット
B ロックボルト
1 台金
11 連結面
11a 連結穴
12 チップ保持面
121 刃体保持座部
13 外周側面
13a1〜13a3,13a1’〜13a3’ ガイド面
13a11’〜13a31’ 鋭角条部
13b1〜13b3,13b1’〜13b3’ 排出溝面
13b11〜13b31 排出溝
13b12〜13b32 ブローホール
2a〜2c,2a’〜2c’ 刃体
3 ボタン形チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金に複数のチップが設けられ、回転により前記複数のチップが当る位置をずらしながら前後方向の振動により穿孔対象物に対し衝撃を与えて穿孔を行う穿孔ビットであって、
前記台金は、
前記削岩機やロックボルト等の先端部が連結される連結面と、
複数のチップが配置されるチップ保持面と、
前記連結面と前記チップ保持面との間で、穿孔時に直進性を保つための当該穿孔ビットの中心を軸とした周側面を有する複数のガイド面と、前記各ガイド面の間に前記各ガイド面より窪み、穿孔時に発生するスライムを排出する排出溝を形成する複数の排出溝面とからなる外周側面と、を有し、
前記複数のガイド面は、それぞれ、
前記チップ保持面から前記連結面まで当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜している一方、
前記複数の排出溝面における当該穿孔ビットの軸線に最も近づく部分は、それぞれ、
前記チップ保持面に近づくほど当該穿孔ビットの軸線に近づくようにテーパー状に傾斜している、
ことを特徴とする穿孔ビット。
【請求項2】
請求項1記載の穿孔ビットにおいて、
前記台金は、さらに、
当該穿孔ビットの中心に前記連結面から前記チップ保持面に向かって形成され、前記削岩機やロックボルト等の中空の先端部が連結される連結孔と、
前記連結孔から前記複数の排出溝面それぞれに向かって分岐して設けられ、前記複数の排出溝面それぞれにて開口し圧縮空気を排出する複数のブローホールと、を有し、
前記複数のブローホールは、それぞれ、
各ブローホールが設けられた前記排出溝面における垂線に対し傾斜して設けられている、
ことを特徴とする穿孔ビット。
【請求項3】
請求項2記載の穿孔ビットにおいて、
前記複数のブローホールのうち、
少なくとも一のブローホールは、
そのブローホールが設けられた前記排出溝面における垂線に対し前記チップ保持面側に傾斜して設けられている一方、
他のブローホールは、
そのブローホールが設けられた前記排出溝面における垂線に対し前記連結面側に傾斜して設けられている、
ことを特徴とする穿孔ビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−237149(P2012−237149A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107257(P2011−107257)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】