説明

穿孔装置

【課題】穿孔刃の駆動機構を機械的にも制御的にも簡易なものとし、格段にコンパクト化された穿孔装置を提供する。
【解決手段】穿孔方向側で連続する逆巻関係の二筋の螺旋状溝を備えた回転軸体と、穿孔刃に連結して螺旋状溝に係合し回転軸体の回転を回転軸体自体の軸方向移動に変換する誘導体を有し、回転軸体の回転で、誘導体が一方の螺旋状溝を穿孔方向へ移動し穿孔刃を下降し、誘導体が他方の螺旋状溝を復帰方向へ移動し穿孔刃を復帰する穿孔装置。また、復帰方向側で連続する逆巻関係の二筋の螺旋状溝を備えて穿孔刃が穿孔方向端部に連結した回転軸体と、螺旋状溝に係合し回転軸体の回転を回転軸体自体の軸方向移動に変換する誘導体を有し、回転軸体の回転で、回転軸体が穿孔方向へ移動し回転軸体に連結した穿孔刃を下降し、誘導体の螺旋状溝の他方への係合で穿孔刃を復帰方向へ移動する穿孔装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、樹脂フィルム、金属箔、薄板や、これらが積層されたものに対し、穿孔刃を直線的に移動して穿孔する穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、樹脂フィルム、金属箔、薄板や、これらが積層されたもの(以下、まとめて「シート材」という。)に対し、穿孔刃を直線的に移動して穿孔する穿孔装置がある。これら穿孔装置において、具備する穿孔刃を穿孔方向および復帰方向へ直線的に往復移動するための駆動機構は、例えば、ソレノイドによる磁気力を用いて穿孔刃を往復移動するソレノイド式(特許文献1)、穿孔刃の一端に特別に設けたカムによる押下力とこれに抗するバネ力を用いて穿孔刃を往復移動するカム押下式(特許文献2)、ギヤ機構により穿孔刃を軸周りに回転しながら別のギヤ機構を用いて穿孔刃を往復移動するダブルギヤ回転式(特許文献3)、穿孔刃の外周に形成した一筋の螺旋状溝に穿孔刃以外の装置本体に固定した係合ピンを係合させた状態で、クランク機構のリンクによる押下力を用い、穿孔刃を軸周りに回転しながら往復移動するクランク押下回転式(特許文献4)、などの機械的機構が知られている。
【0003】
上述のソレノイド式やカム押下式を適用した穿孔装置では、穿孔方向へ直線的に移動された穿孔刃の刃先がシート材に突き刺さり、シート材を打ち抜くように穿孔することができる。また、上述のダブルギヤ回転式やクランク押下回転式を適用した穿孔装置では、穿孔刃は軸周りの一方回転によって穿孔方向へ直線的に移動し、刃先がシート材に突き刺ささりながらシート材を切り込むようにして穿孔できる。そして、穿孔刃は他方回転によって待機位置へ復帰できる。このように穿孔刃を軸周りに回転しながらの穿孔は、所要穿孔力が低減して駆動源が小型化できるため、穿孔装置の省エネルギー化に有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−301495号公報
【特許文献2】特開2000−141294号公報
【特許文献3】特開2006−943号公報
【特許文献4】特開平5−138599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した穿孔装置では、穿孔刃の駆動機構が、穿孔装置全体の形状寸法を決定付ける支配的要因のひとつである。近年、穿孔装置のコンパクト化が強く所望されているものの、穿孔刃の駆動機構のコンパクト化が容易でなく、穿孔装置のコンパクト化は満足できるものではない。例えば、ソレノイド式ではソレノイド自体の小型化や出力増強、カム押下式やダブルギヤ回転式では部品数の削減や占有空間の縮小、クランク押下回転式では機構動作に要する空間の縮小や、特殊材である穿孔刃に形成する螺旋状溝加工費用の低減、穿孔刃の回転制御の簡素化など、解決を所望されている課題がある。
【0006】
本発明は、上述の解決課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、穿孔刃の駆動機構を機械的にも制御的にも簡易なものとし、格段にコンパクト化された穿孔装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述したクランク押下回転式の穿孔刃に形成された螺旋状溝と係合ピンとの構成関係を詳細に検討し、駆動源に連結する回転軸の外周に二筋の螺旋状溝を形成し、該回転軸の一方回転によって穿孔刃を直線的に往復移動できる機械的構成を見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の穿孔装置の第一形態は、穿孔刃を直線的に移動して被穿孔物に穿孔する穿孔装置であって、穿孔方向側で連続する互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を軸の外周に備え、前記穿孔刃の移動方向に沿って前記軸が延長された回転軸体と、前記穿孔刃に連結し、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を軸方向の移動に変換する誘導体と、を有し、前記回転軸体の回転により、前記誘導体が前記螺旋状溝の一方に沿って穿孔方向へ移動することによって、前記誘導体に連結した前記穿孔刃が穿孔方向へ移動し、前記穿孔刃が前記被穿孔物を穿孔した後、前記誘導体が前記螺旋状溝の他方に沿って復帰方向へ移動することによって、前記誘導体および前記穿孔刃が復帰方向へ移動する、穿孔装置である。
【0009】
本発明の第一形態においては、前記回転軸体の二筋の螺旋状溝が復帰方向側においても連続していることが望ましい。
【0010】
また、本発明の穿孔装置の第二形態は、穿孔刃を回転させながら直線的に移動して被穿孔物に穿孔する穿孔装置であって、復帰方向側で連続する互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を軸の外周に備え、前記穿孔刃の移動方向に沿って前記軸が延長され、かつ、前記軸の穿孔方向端部に前記穿孔刃が連結した回転軸体と、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を前記回転軸体自体の軸方向の移動に変換する誘導体と、を有し、前記回転軸体の回転により、前記回転軸体が穿孔方向へ移動することによって、前記回転軸体に連結した前記穿孔刃が回転しながら穿孔方向へ移動し、前記穿孔刃が前記被穿孔物を穿孔した後、前記誘導体の前記螺旋状溝の他方への係合によって、前記回転軸体および前記穿孔刃が復帰方向へ移動する、穿孔装置である。
【0011】
本発明の第二形態においては、前記回転軸体の二筋の螺旋状溝が穿孔方向側においても連続していることが望ましい。
【0012】
また、本発明の第一形態の穿孔装置を複数用いて多数穿孔用に構成できる。
また、本発明の第二形態の穿孔装置を複数用いて多数穿孔用に構成できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転軸体と該回転軸体との係合関係で移動できる誘導体とでなる簡易かつ新規な機械的機構の適用によって穿孔刃の往復移動が可能となるため、上述した従来方式の穿孔装置に比べ、機構動作に要する空間や機構部品による占有空間が縮小でき、穿孔刃に特別な加工を施す必要もなくなる。また、駆動系の構成部品点数が低減されて機械的効率が向上できるため、消費電力や騒音・振動の低減も可能となる。特に、本発明の第二形態は、特殊材である穿孔刃に複雑な加工を行うことなく、従来のダブルギヤ回転式(特許文献3)やクランク押下回転式(特許文献4)など、穿孔刃を軸周りに回転しながら穿孔する方式の利点を有しつつ上述の効果が発揮でき、好適である。
【0014】
さらに、本発明によれば、回転軸体への簡易な加工の追加により、回転軸体の回転方向を切り替えることなく穿孔刃の往復移動を連続して行うことも可能となる。
したがって、本発明の穿孔装置は、機械的に格段にコンパクトな穿孔装置となり、さらには制御的にも簡易化された穿孔装置にもなる。
【0015】
加えて、本発明の穿孔装置は一つの穿孔刃を一つの駆動機構で往復移動できるため、例えば本発明の穿孔装置を所望の穿孔数分だけ用いて多数穿孔用の穿孔装置として構成することができる。この構成によれば、複数の駆動機構の駆動と非駆動を選択的に連動制御する複雑な制御方式でなく、個々の穿孔刃に対応した個々の駆動機構を個別に制御する簡易な制御方式が適用できるため、多数穿孔用の穿孔装置の低コスト化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の穿孔装置の第一形態を例示した図である。
【図2】図1に示す穿孔装置の詳細構成を示した図である。
【図3】本発明で適用できる回転軸体の二筋の螺旋状溝を例示した図である。
【図4】本発明で適用できる回転軸体の螺旋状溝とこれに係合する誘導体との係合関係を例示した図である。
【図5】本発明の穿孔装置の第二形態を例示した図である。
【図6】図5に示す穿孔装置の詳細構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、穿孔刃を直線的に移動して被穿孔物に穿孔する穿孔装置であって、技術的に重要な特徴は、穿孔刃を駆動するための機械的機構にある。具体的には、穿孔刃駆動機構の要部を、互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を外周に備えた回転軸体と、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を軸方向の移動に変換する誘導体とで、構成したことにある。なお、前記回転軸体の外周に設けられた二筋の螺旋状溝が、上述の第一形態では穿孔方向側で連続し、上述の第二形態では復帰方向側で連続する。
【0018】
上述の二筋の螺旋状溝に関し、連続とは、一方の螺旋状溝と他方の螺旋状溝が繋がって、前記誘導体が、一方の螺旋状溝から他方の螺旋状溝へ、またその逆へ、移動可能に形成されていることを意味する。また、穿孔刃が被穿孔物を穿孔するために移動する方向を穿孔方向、被穿孔物への穿孔後に穿孔刃が元の待機位置へ戻るために移動する方向を復帰方向といい、上述の回転軸体において、穿孔方向側とは軸体の被穿孔物に近い側を、復帰方向側とは軸体の被穿孔物から遠い側を意味する。
【0019】
以下、本発明の穿孔装置につき、本発明者が最適と考える具体例を挙げ、図面を引用して説明する。
(穿孔装置の第一形態)
本発明の穿孔装置の第一形態を図1に例示し、その詳細構成を図2に示す。
図1に示す穿孔装置は、駆動源となるモータ1と、被穿孔物(図示せず)に穿孔する穿孔刃11と、該穿孔刃11を直線的に移動する穿孔刃駆動機構とを含む。そして、穿孔刃駆動機構は、穿孔刃11の移動方向に沿うように軸が配置された回転軸体4と、穿孔刃11を連結する側であって回転軸体4と係合する誘導体5とを有する。
【0020】
回転軸体4は、軸が支持体6に設けられた穿孔方向に沿った貫通孔に連通され、両端側がフレーム7、8によって回転自在に支持されている。回転軸体4の外周には、互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝4aが設けられ、それぞれの螺旋状溝が穿孔方向側で連続に形成されている。また、回転軸体4のフレーム7側の軸端部には歯車3が設けられ、フレーム7に取り付けられたモータ1の回転軸には歯車2が設けられ、歯車2と歯車3とが噛み合っている。
【0021】
誘導体5は、凸部5aを有し、支持体6の前記貫通孔に直行して設けられた孔に、凸部5aが回転軸体4の螺旋状溝に入り込む位置まで挿入されている。そして、誘導体5が後退して螺旋状溝から離脱しないように、板9を用いて飛び出し防止が図られている。これにより、誘導体5は、回転軸体4の螺旋状溝に対して係合し、回転軸体4の回転によって螺旋状溝に沿って回転軸体4の軸方向へ移動可能となる。また、好ましい実施態様においては、凸部5aの先端は力の伝達および部材の耐久性を考慮して板状に構成されており、螺旋状溝の角度の変化に従って誘導体5が支持体6に設けられた前記孔の中で自在に回転できるように構成されている。なお、回転軸体の回転による誘導体の移動については、後段で詳述する。したがって、誘導体5が、穿孔方向に沿って軸が配置された回転軸体4の螺旋状溝を穿孔方向または復帰方向へ移動すると、支持体6もまた誘導体5と同方向に移動される。
【0022】
穿孔刃11は、誘導体5を取り付けた支持体6に対し、ピン10によって取り付けられている。したがって、穿孔刃11は、誘導体5が回転軸体4の回転を軸方向の移動に変換して移動するとき、誘導体5と同方向へ移動する支持体6によって、誘導体5と同方向へ移動される。
よって、上述した構成によれば、回転軸体4の一方回転により、穿孔刃11は、誘導体5が一方の螺旋状溝に沿って穿孔方向へ移動されて穿孔方向へ移動し、被穿孔物となるシート材などを打ち抜き穿孔でき、この後は、誘導体5が他方の螺旋状溝に沿って復帰方向へ移動されて復帰方向へ移動し、待機位置に戻ることができる。
【0023】
(穿孔装置の第二形態)
次に、本発明の穿孔装置の第二形態を図5に例示し、その詳細構成を図6に示す。
図5に示す穿孔装置は、駆動源となるモータ21と、被穿孔物(図示せず)に穿孔する穿孔刃31と、該穿孔刃31を回転しながら直線的に移動する穿孔刃駆動機構とを含む。そして、穿孔刃駆動機構は、穿孔刃31を連結する側であって該穿孔刃31の移動方向に沿うように軸が配置された回転軸体24と、該回転軸体24と係合する誘導体25とを有する。
【0024】
回転軸体24は、軸が支持体26に設けられた穿孔方向に沿った貫通孔に連通され、フレーム27に固定された前記支持体26によって回転自在に支持されている。回転軸体24の外周には、互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝24aが設けられ、それぞれの螺旋状溝が復帰方向側で連続に形成されている。また、回転軸体24の穿孔方向側の軸端部にはピン30を用いて穿孔刃31が取り付けられ、復帰方向側の軸端部には歯車23が取り付けられている。また、歯車23は、フレーム77に取り付けられたモータ21の回転軸に取り付けられた歯車22に対して噛み合っている。なお、歯車23は回転軸体24の軸方向への移動に伴って移動するため、歯車22および歯車23の噛み合いが外れないように、歯車22と歯車23の一方または両方を軸方向に長く構成することが好ましい。
【0025】
誘導体25は、凸部25aを有し、支持体26の前記貫通孔に直行して設けられた孔に、凸部25aが回転軸体24の螺旋状溝に入り込む位置まで挿入されている。そして、誘導体5が後退して螺旋状溝から離脱しないように、板29を用いて飛び出し防止が図られている。このように、回転軸体24外の支持体26に固定された誘導体25が軸方向に移動自在に配置された回転軸体24と係合することで、回転軸体24の回転によって該回転軸体24自体が穿孔方向へ移動されるのである。したがって、回転軸体24の回転により、固定された誘導体25が回転軸体24の案内標点となって、一方または他方の螺旋状溝24aへ誘導体25が係合し、回転軸体24自体が穿孔方向または復帰方向へ移動することとなる。なお、回転軸体の回転による回転軸体自体の軸方向への移動については、後段でも詳述する。
【0026】
穿孔刃31は、回転軸体24の穿孔方向側の軸端部に取り付けられている。したがって、上述のように回転軸体24自体の軸方向への移動を生じた場合、回転軸体24に連結する穿孔刃31もまた回転軸体24と同方向へ移動される。
よって、上述した構成によれば、回転軸体24の一方回転により、誘導体25の一方の螺旋状溝への係合によって回転軸体24自体が穿孔方向へ回転しながら移動されるため、穿孔刃31もまた回転されながら穿孔方向へ移動されることになる。それ故に、被穿孔物となるシート材などを穿孔刃31の回転による引き切り効果を利用しながら打ち抜き穿孔できる。そして、穿孔後、誘導体5の他方の螺旋状溝への係合によって回転軸体24自体が回転しながら復帰方向へ移動されるため、穿孔刃31は、回転されながら復帰方向へ移動され、待機位置に戻ることができる。
【0027】
(回転軸体の二筋の螺旋状溝)
本発明で適用できる二筋の螺旋状溝は、互いに逆巻きの関係で、溝の断面形状が継続されて、第一形態では穿孔方向側で連続するように、第二形態では復帰方向側で連続するように、形成されている。その構成について、図3を用いて説明する。なお、図3に示す螺旋状溝は、その構成をより明確にするために、図2に示す回転軸体4の螺旋溝4aよりも、また図6に示す回転軸体24の螺旋溝24aよりも、螺旋状溝の巻き数を増してある。
【0028】
図3に示す二筋の螺旋状溝は、互いに逆巻きの関係で、穿孔方向側と復帰方向側の両側で連続し、溝に入り込んで係合する誘導体(図示せず)が各矢印で示すように自在に移動可能となるように形成されている。二筋の螺旋状溝が両側で連続する構成の回転軸体は、本発明の第一形態と第二形態の両方に適用できる。なお、二筋の螺旋状溝が穿孔方向側に限り連続する構成の回転軸体は第一形態に、復帰方向側に限り連続する構成の回転軸体は第二形態に、それぞれ適用できる。
【0029】
(回転軸体と誘導体との係合関係)
図4に、図6に示す第二形態の具体例に基づき、回転軸体24と誘導体25の係合関係例を、一部断面を含んで示す。
誘導体25は、図示しないフレーム27に固定された支持体26と、板29とによって、誘導体25の係合による回転軸体24自体の軸方向への移動を妨げないように、凸部25aを回転軸体24の螺旋状溝24aに入り込ませて組み付けている。そして、支持体26に設けた孔に挿入された誘導体25は、該孔において回転および前後微動が自在であるため、凸部25aが螺旋状溝24aの壁面の当接状態に対応して好適な姿勢になることができる。このような誘導体25の凸部25aの螺旋状溝24aへの入り込みによって、回転軸体24と誘導体25との係合関係を保つことができる。なお、螺旋状溝や凸部の形状や材質などは、回転軸体の径や長さ、穿孔刃などの可動部分の質量や機械的構成を考慮し、適宜設計することができる。
【0030】
(回転軸体の回転による誘導体の移動)
図4に示す構成の場合、回転軸体24の回転により、固定された誘導体25は移動できず、回転軸体24は回転しながら自ら軸方向に移動できる。また、図示は略すが、誘導体側を固定せず移動自在とし、回転軸体の軸方向への移動を止めた場合、回転軸体の回転により、回転軸体は移動できず、誘導体側が軸方向に移動できる。
【0031】
さらに詳細に説明すると、図3において、例えば図3の右方を穿孔方向とした場合、回転軸体の一方回転により、一方の螺旋状溝を矢印Aで示すように移動した誘導体(図示せず)は、二筋の螺旋状溝が連続する穿孔方向側の箇所において、矢印Bから矢印Cそして矢印Dで示すように他方の螺旋状溝へと移行されることになる。同様に、回転軸体の同じ一方回転により、一方の螺旋状溝を矢印A’で示すように移動した誘導体(図示せず)は、復帰方向側の箇所において、矢印B’から矢印C’そして矢印D’で示すように他方の螺旋状溝へと移行される。
【0032】
したがって、互いに逆巻きの関係で穿孔方向側で連続する二筋の螺旋状溝に対して誘導体を上述のように係合させる構成により、回転軸体の一方回転により、つまり回転軸体の回転方向を切り替えることなく、回転軸体の穿孔方向側で穿孔方向から復帰方向へと、回転軸体の復帰方向側で復帰方向から穿孔方向へと、誘導体の移動方向を連続的に切り替えることができる。なお、二筋の螺旋状溝が穿孔方向側あるいは復帰方向側のどちらかに限り連続する構成の回転軸体を適用する場合は、1回の穿孔動作を回転軸体の一方回転によって行い、次回の穿孔動作を回転軸体の他方回転によって行うことができる。
【0033】
(回転軸体と誘導体の間の移動)
上述した回転軸体と誘導体の構成において、軸方向への移動を止めた回転軸体を適用した場合、回転軸体の回転により、回転軸体が螺旋状溝を介して誘導体を押して駆動し、螺旋状溝に沿って誘導体を回転軸体の軸方向へ移動できる。また、回転軸体外に固定した誘導体を適用した場合、回転軸体の回転により、回転軸体が螺旋状溝を介して誘導体を押そうとするものの誘導体が固定されているため、誘導体が螺旋状溝を介して回転軸体を押して駆動し、回転する回転軸体を軸方向へ移動できる。したがって、上述した構成関係にあれば、誘導体と回転軸体とは、誘導体が移動するか、回転軸体が移動するか、の相対移動ができる構成となる。
【0034】
以上述べたように、本発明の穿孔装置は、穿孔刃駆動機構の要部に、穿孔方向側で連続する互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を軸の外周に備え、前記穿孔刃の移動方向に沿って前記軸が延長された回転軸体と、前記穿孔刃に連結し、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を軸方向の移動に変換する誘導体と、を有する。あるいは、復帰方向側で連続する互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を軸の外周に備え、前記穿孔刃の移動方向に沿って前記軸が延長され、かつ、前記軸の穿孔方向端部に前記穿孔刃が連結した回転軸体と、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を前記回転軸体自体の軸方向の移動に変換する誘導体と、を有する。すなわち、本発明の穿孔装置は、誘導体と回転軸体との相対移動を、簡易かつ新規な機械的機構で実現して穿孔刃の往復移動を可能としたものである。
【0035】
したがって、穿孔装置において、機構動作に要する空間や機構部品による占有空間が縮小でき、穿孔刃に特別な加工を施す必要もなくなる。また、駆動系の構成部品点数が低減されて機械的効率が向上できるため、消費電力や騒音・振動の低減も可能となる。さらに、二筋の螺旋状溝の両端とも連続させることにより、回転軸体の回転方向を切り替えることなく穿孔刃の往復移動を連続して行うことも可能となる。
よって、本発明の穿孔装置は、機械的に格段にコンパクトな穿孔装置となり、さらには制御的にも簡易化された穿孔装置にもなる。
【0036】
加えて、本発明の穿孔装置は、一つの穿孔刃を一つの駆動機構で往復移動できる。それ故に、本発明の穿孔装置を所望の穿孔数分だけ複数用いて多数穿孔用の穿孔装置として構成することができる。この構成によれば、複数の駆動機構の駆動と非駆動を選択的に連動制御する複雑な制御方式でなく、個々の穿孔刃に対応した個々の駆動機構を個別に制御する簡易な制御方式が適用できるため、多数穿孔用の穿孔装置の低コスト化に寄与できる。
【符号の説明】
【0037】
1.モータ、2.歯車、3.歯車、4.回転軸体、4a.螺旋状溝、5.誘導体、5a.凸部、6.支持体、7.フレーム、8.フレーム、9.板、10.ピン、11.穿孔刃、21.モータ、22.歯車、23.歯車、24.回転軸体、24a.螺旋状溝、25.誘導体、25a.凸部、26.支持体、27.フレーム、29.板、30.ピン、31.穿孔刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔刃を直線的に移動して被穿孔物に穿孔する穿孔装置であって、穿孔方向側で連続する互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を軸の外周に備え、前記穿孔刃の移動方向に沿って前記軸が延長された回転軸体と、前記穿孔刃に連結し、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を軸方向の移動に変換する誘導体と、を有し、前記回転軸体の回転により、前記誘導体が前記螺旋状溝の一方に沿って穿孔方向へ移動することによって、前記誘導体に連結した前記穿孔刃が穿孔方向へ移動し、前記穿孔刃が前記被穿孔物を穿孔した後、前記誘導体が前記螺旋状溝の他方に沿って復帰方向へ移動することによって、前記誘導体および前記穿孔刃が復帰方向へ移動する、ことを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
前記回転軸体の二筋の螺旋状溝が復帰方向側においても連続していることを特徴とする請求項1に記載の穿孔蔵置。
【請求項3】
穿孔刃を回転させながら直線的に移動して被穿孔物に穿孔する穿孔装置であって、復帰方向側で連続する互いに逆巻きの関係の二筋の螺旋状溝を軸の外周に備え、前記穿孔刃の移動方向に沿って前記軸が延長され、かつ、前記軸の穿孔方向端部に前記穿孔刃が連結した回転軸体と、前記螺旋状溝に対して係合し、前記回転軸体の回転を前記回転軸体自体の軸方向の移動に変換する誘導体と、を有し、前記回転軸体の回転により、前記回転軸体が穿孔方向へ移動することによって、前記回転軸体に連結した前記穿孔刃が回転しながら穿孔方向へ移動し、前記穿孔刃が前記被穿孔物を穿孔した後、前記誘導体の前記螺旋状溝の他方への係合によって、前記回転軸体および前記穿孔刃が復帰方向へ移動する、ことを特徴とする穿孔装置。
【請求項4】
前記回転軸体の二筋の螺旋状溝が穿孔方向側においても連続していることを特徴とする請求項3に記載の穿孔蔵置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の穿孔装置を複数用いて多数穿孔用に構成していることを特徴とする穿孔装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の穿孔装置を複数用いて多数穿孔用に構成していることを特徴とする穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71226(P2013−71226A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213695(P2011−213695)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(305022598)株式会社日立メタルプレシジョン (69)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】