説明

突き板貼り資材

【課題】 突き板の用途を拡げることを考慮し、食品などの各種の商品の包装資材などとして利用可能な突き板貼り資材の提供。
【解決手段】 絵柄などが印刷又は描かれたシート材12の表面に、極薄の突き板14を接着して、その接着層16を含めて三層構造をなし、折り加工、曲げ加工、抜き加工、押し加工のいずれの加工も可能な突き板貼り資材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き板を用いた資材に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる突き板は、木材を巨大なかんなを掛ける要領で厚さを例えば0.1mm〜3mm程度に薄く切削してスライスした単板をいうが、この単板を合板などの表面に貼ることによって天然木の風合いを生かすことが可能であり、無垢材に比較して廉価に提供できることから、家具や壁材の材料として広く用いられている。
【0003】
従来、突き板の利用方法として、特開2003−1605号公報記載の「突き板貼り化粧合板」に関する発明が公知である。同公報記載の発明は、基材と突き板との間に着色された着色シートを挟み込み、当該着色シートの色彩やデザインを、突き板を通して透過して現れるようにしたことを特徴とするものである。これによって、天然木の質感を保持しつつ、表面仕上げの均一性の高い化粧合板が得られたとされている。
また、特開平3−83601号公報に記載の「カラー単板積層品」の発明では、着色紙、着色不織布または着色樹脂フイルムなどの着色材を、基材の上に接着し、その上に極薄の化粧単板を貼着し、さらに極薄化粧板の表面を透明塗料層で被覆するものである。そして、この着色材には、図柄や絵柄などが形成されていてもよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−1605号公報
【特許文献2】特開平3−83601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1記載の「突き板貼り化粧合板」に関する発明は、着色シートに対し、薄い突き板を貼付するため、天然木の質感を維持できるという点で優れているが、MDFや有機若しくは無機材料の基材をベースにしているので、曲げや折り曲げを想定しておらず、あくまで化粧合板としての用途に止まり、仮に曲げ加工を施した場合には、割れや亀裂の発生が予測される。
また、特許文献2記載の「カラー単板積層品」に関する発明において、着色材を接着する基材は、特に限定されず、板材例えばベニヤ合板でも、シート等の例えば白色コート紙でもよいとされているが、いずれにしても基材を必要としていて、この場合も曲げや折り曲げを想定しての記載はない。
更に、特許文献2記載の発明は、あくまで着色紙等に貼り付けられた単板の木理模様を忠実に浮き立たせることを目的としており、そのために隠蔽剤を配合したスチレンブタジエン系熱硬化性接着剤によって基材の上に着色紙を貼り付け、これによって基材の模様の透過を防止することが実施例として記載されている。しかし、かかる処理を行うのは製造工程の煩雑化を招き、当該発明をパッケージや、クロス等の内装材の素材として使用した場合はコスト高となる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような諸事情に対処するために提案されたものであって、突き板の用途を拡げることを考慮し、製造コストが安価で済む一方、食品などの各種の商品の包装用の材料などとして利用可能な突き板貼り資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、絵柄などが印刷又は描かれたシート材の表面に極薄の突き板を接着して、その接着層を含めて三層構造をなし、折り加工、曲げ加工、抜き加工、押し加工のいずれの加工も可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、上記1項において、前記折り加工は、折り目をつけてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、上記1項又は2項において、前記シート材の裏面の一部又は全面にフイルムを接着したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、上記1項又は2項において、前記シート材の裏面に極薄の突き板を接着して、その接着層を含めて五層構造をなし、折り加工、曲げ加工、抜き加工、押し加工のいずれの加工も可能であることであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、各請求項記載の発明によれば、突き板の利用形態を拡大することが可能であるとともに、突き板を通してシート材に描かれた絵柄を鑑賞することが可能となり、単に直接印刷等をしただけでは得ることのできない上質で、柔らかなグラフィック表現を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る突き板貼り資材の概略構成を示す斜視図である。
【図2】同じく、本発明の第1の実施形態に係る突き板貼り資材の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る突き板貼り資材を使用して作成した包装袋の概略斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る突き板貼り資材の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る突き板貼り資材の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る突き板貼り資材の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る突き板貼り資材の概略構成を示す斜視図、図2は第1の実施形態に係る突き板貼り資材の断面図である。1及び図2に示されるように、本実施形態の突き板貼り資材10は、シート材12と、突き板14と、接着層16とから構成されている。
【0014】
シート材12は、主に紙や不織布、布など、表面又は裏面の突き板14を補強する性質を有し、且つ可撓性を有する材料が用いられる。また、シート材12の表面には、絵柄、文字、マーク、模様、色など視覚に訴えるデザインが印刷若しくはその他の方法によって施されている。図1で示される資材10はストライプ状の絵柄を装飾として施した例である。
図2に示されるように、資材10は、シート材12の装飾された側に接着層16によって極薄の突き板14と一体化され、その接着層16を含めて三層構造をなしている。
突き板14は、その厚みが0.1mm〜0.3mm程度、望ましくは0.1mm〜0.2mmの極薄に切削された単板で、シート材12に印刷又は描かれた絵柄を透過させることのできる薄さに形成されている。
【0015】
接着層16は乾燥後に透明となるので、シート材12に描かれている絵柄等は突き板14を透過して現れるようになる。これによって、突き板14自体に絵柄を別途付加しなくてもシート材12に描かれた絵柄を、突き板14を通して鑑賞することが可能となり、単に直接印刷等をしただけでは得ることのできない上質で柔らかなグラフィック表現を可能とするものである。
なお、接着層16は熱を付与しながらプレスによって形成する。また、接着剤は乾燥後に透明である接着剤とする。本実施形態では酢酸ビニル系の接着剤を用いているが、これに限らず、乾燥後に透明となるゴム系など各種のものを利用することが可能である。
【0016】
また、シート材12は、柔らかな可撓性に富むとともに突き板14を補強する性質を有する。さらに、突き板14は極薄であるために、これも可撓性に冨み、このため、シート材12に極薄突き板14を貼着した本実施形態の突き板貼り資材10は、紙素材と同様に加工することが可能な優れた資材である。
実験の結果、突き板14の割れ・折れ・座屈・反りなどを防止することができるとともに、折り曲げた際に突き板14がシート材12から剥がれるといったこともなく、包装資材、パッケージの素材として利用した場合に一定の耐久性を備えていることが確認された。
【0017】
本発明による突き板貼り資材10は、後述のように、折り加工、曲げ加工、抜き加工、押し加工が可能な汎用性を有している。図3は本実施形態による突き板貼り資材10を用いた食品や小物の商品を収納する包装袋18の例である。本例は折り加工により袋状に成形した例であり、また、加工上も製品の使用上も本資材の可撓性を利用している。このほか、文具や雑貨、壁面の内装材や和室の障子紙、襖紙などとしても使用可能な性質を獲得するに至ったものである。
【0018】
前述の折り加工は、突き板貼り資材10における予定された折り曲げ線の部分を、プレス機並びに金型を利用して加圧することによって、いわゆる折り目を施し、折り目に沿って本資材10を折り曲げる加工である。また、レーザ加工機のレーザ光を折り曲げ線の部分に照射して微少深さの溝を施して折り目とすることもできる。この折り加工によって、前記の包装袋18や、折り箱などに加工することができる。曲げ加工は、本資材10の可撓性を利用して円筒状に曲げる加工であり、わっぱなどへの利用が可能である。抜き加工は、本資材に模様柄などの自由な形状の空間を穴あけする加工であって、適宜の刃物や金型を用いて加工することができる。図3の包装袋18にその例を示した。押し加工は、デザインされた模様・形状の金型を本資材に押圧して、空押しや箔押しを施す加工である。名刺などのマークの刻印など様々な用途に利用できる。
このように、本実施形態の突き板貼り資材10によれば、幅広い加工方法に対応することが可能であり、応用範囲の極めて広い素材を提供することができる。
【0019】
図4は本発明の第2の実施形態に係る突き板貼り資材20の概略構成を示す断面図である。同図に示される突き板貼り資材20は、前述した突き板貼り資材10が三層構造であるのに対し、シート材12の裏面にも突き板14Bを接着した五層構造としている点で相違する。
【0020】
なお、前述した第1の実施形態の突き板貼り資材10と同様な部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。このように構成した場合は、裏面側についても突き板14Bが貼られていることから、表面に加え、裏面にも印刷が施されているシート材12を用いることによって、両面から突き板14A,Bを透過させてシート材12の絵柄を鑑賞可能な突き板貼り資材20を提供することができる。
このように構成した第2の実施形態の突き板貼り資材20によれば、障子紙や建具の素材などとして利用することができる。
【0021】
第3の実施形態に係る突き板貼り資材30の例を説明する。図5は第3の実施形態に係る突き板貼り資材30の概略構成を示す断面図で、同図においても前述した第1、2の実施形態の突き板貼り資材10と同様な部材については同一の符号を付している。
図5に示される突き板貼り資材30は、絵柄が印刷されたシート材12の表面に接着層16Aにより突き板14Aを接着するとともに、シート材12の裏面に接着層16Bを介して一部又は全面にフイルム15を接着してなる五層構造である。フイルム15は防水性を備えたポリエチレン、セルロース製などのフイルムとする。用途として、食品を収納する包装袋などへの対応として内側全面を防水性を考慮したフイルム層とすることが考えられるし、また、部分的には、図3に示した包装袋18のように、抜き加工した空間をフイルム層によって封止する例などが考えられる。
なお、上述の第3の実施形態のおけるフイルム15に代替して挽板を接着することも可能である。
また、表面側の突き板14Aとして通常の加工の施されていない単板の他、絵柄が印刷された印刷突き板を用いることも可能である。
【0022】
上記のように構成した本実施形態の突き板貼り資材10,20、30は、印刷等によってデザインが施されたプリント紙等のシート材12に、突き板14を積層・接着することにより、天然木の持つ風合いを保持しつつ、シート材12のデザインを間接的に透過して鑑賞することができ、突き板の用途の拡大に寄与することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、折り加工・曲げ加工・抜き加工・押し加工など様々な加工が可能な汎用性を備えているので、文具や雑貨、壁面の内装材、和室の障子紙など、幅広い用途に対応することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 突き板貼り資材(第1の実施形態)
12 シート材
14 14A 14B 突き板
15 フイルム
16 16A 16B 接着層
18 包装袋
20 突き板貼り資材(第2の実施形態)
30 突き板貼り資材(第3の実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵柄などが印刷又は描かれたシート材の表面に極薄の突き板を接着して、その接着層を含めて三層構造をなし、折り加工、曲げ加工、抜き加工、押し加工のいずれの加工も可能であることを特徴とする突き板貼り資材。
【請求項2】
前記折り加工は、折り目をつけてなることを特徴とする請求項1に記載の突き板貼り資材。
【請求項3】
前記シート材の裏面の一部又は全面にフイルムを接着したことを特徴とする請求項1又は2に記載の突き板貼り資材。
【請求項4】
前記シート材の裏面に極薄の突き板を接着して、その接着層を含めて五層構造をなし、折り加工、曲げ加工、抜き加工、押し加工のいずれの加工も可能であることであることを特徴とする請求項1又は2に記載の突き板貼り資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153026(P2012−153026A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14406(P2011−14406)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(506226740)有限会社北幸加工 (1)
【Fターム(参考)】