説明

竜田揚げの製造方法

【課題】
外観上、自然な粉吹き感、花咲感を有し、且つ噛み切りやすい食感を有しながらも、使用原料を極力抑え、工業的に安定生産できる竜田揚げを製造する方法を提供すること
【解決手段】
油:水が50:30〜60:20であり、且つ固形分を5%〜15%配合したバッター液を肉表面に塗布し、次いでその表面に馬鈴薯でん粉と油脂を20:1〜20:3の割合で混合した混合物を付着させ油ちょうすることにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竜田揚げ特有の花咲感、粉吹き感を有する外観と、喫食時に噛み切りやすい食感を有する衣を有する竜田揚げを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭の手作りにおける竜田揚げの調理に当たっては、鶏肉等の具材を調味液に漬け込み、その具材表面にでん粉等を付着させ揚げる方法が、一般的に採用されている。また、工業的には、でん粉、食用油脂、乳化剤および/または起泡剤を配合したバッターのみで、白い粉を吹いた竜田揚げの外観を有する唐揚げを簡易的に生産する技術(特許文献1)や、エーテル化架橋馬鈴薯でん粉とリン酸架橋でん粉を含有させたミックス粉を水で溶いて、具材表面に付着させて揚げることで、簡易的に竜田揚げのような外観、食感を得る事ができる唐揚げ用のミックス粉を用いる技術(特許文献2)がある。
【0003】
しかしながら、家庭の手作りにおいては、粉吹き感はあるものの、見栄えのよい花咲き感を演出することができない。また、具材表面に直接でん粉等を付着させているだけであるため、加熱により肉の水分が飛びやすく、肉が硬くなってしまう。特許文献1においては、バッターのみで生産できるため、簡易的ではあるが、バッターのみで竜田揚げの外観を演出しようとするがゆえ、経時安定性が低い起泡剤等を使用せねばならない。また、粉吹き感を十分に演出することができない。特許文献2においては、特許文献1同様、エーテル化架橋馬鈴薯でん粉、リン酸架橋でん粉、起泡剤等、一般家庭で使用しない原料を含み、水に溶いて使用するが故、自然な粉吹き感、花咲き感を演出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4365670号公報
【特許文献2】特許第4648932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明が解決しようとしている課題は、外観上、自然な粉吹き感、花咲感を有し、且つ噛み切りやすい食感を有しながらも、使用原料を極力抑え、工業的に安定生産できる竜田揚げを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するべく、従来の唐揚げの製法に多く用いられている小麦粉、水を主成分とするバッターの配合ではなく、油:水が50:30〜60:20であり、且つ固形分を5%〜15%配合したバッター液を肉表面に塗布し、次いでその表面に馬鈴薯でん粉と油脂を20:1〜20:3の割合で混合した混合物を付着させ油ちょうすることを特徴とする竜田揚げの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の竜田揚げの製造方法により、竜田揚げ特有の花咲感、粉吹き感を有する外観と、喫食時に噛み切りやすい食感を有する衣を有する竜田揚げを製造することができた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明でいう竜田揚げとは、調味液で味付けした具材にバッターを塗布し、次いで、でん粉を付着させ油で揚げたフライ製品をいう。
【0009】
本発明で用いるバッターの組成は、油:水が50:30〜60:20であり、且つ固形分を5%〜15%配合したものを用いる。固形分が5%未満では、粘度がなくさらさらとした状態になり、固形分が15%より高くなると粘着力が強すぎて液体原料との混合や、打粉との付着がうまくできない。固形分としては、例えば、でん粉を4.8%〜14.8%、卵白粉を0.2%〜4%、等を配合することができる。
【0010】
油としては、通常用いる大豆油、菜種油、とうもろこし油などの液体油を使用することができ、油と水の混合割合は、50:30〜60:20である。水の割合が、これより低いとでん粉や卵白粉等の粉体原料が混合できず、バッター液を作製できなくなり、これより高いと衣の食感が硬くなり噛み切りにくくなる。上記、油と水の混合割合により、バッター液の比重が0.9以下になり、噛み切りやすさ(サク感)の良好な竜田揚げを製造することができるようになった。
【0011】
このような組成の食品素材を混合したバッター液を肉表面に塗布する。肉としては、鶏肉、豚肉、あい鴨、鯖、鰯、鯨、鮭、鯉などがあげられ、下味を付けた肉表面にバッター液をバッター付け設備、または人手による混合にて塗布する。
【0012】
次いで、このバッター液を塗布された肉表面に馬鈴薯でん粉と油脂を20:1〜20:3の割合で混合した混合物を付着させる。でん粉としては、馬鈴薯でん粉、コーンスターチなどを、油脂としては、前記の液体油を用いることができ、油脂含量が20:1より少ないと衣の花咲感が弱くなり、20:3より多いとフライ時の加熱歩留が低くなり何れも好ましくない。
【0013】
付着させるでん粉(打粉)としては、馬鈴薯でん粉、コーンスターチ、小麦粉、米粉等が挙げられるが、衣のさくさく感および粉吹き感で馬鈴薯でん粉が特に好ましい。
【0014】
でん粉と油脂混合物を付着させた後、フライする。フライ温度は、160℃〜180℃で、1分〜3分が好ましい。
【実施例】
【0015】
[実施例1〜2、比較例1〜3]
調味液で味付けした鶏肉を20gに表1のバッター2gを混合し、馬鈴薯でん粉を打粉として6gを付着させた後、180℃で2分間油ちょうして、竜田揚げを得た。噛み切りやすい食感を有するか下記基準で評価した。結果を表1に示す。
【0016】
○:良好 △:普通 ×:不可
【0017】
【表1】

【0018】
表1の結果から、目的の噛み切りやすい食感を演出させるには、油:水が50:30〜60:20であれば良好であることが見出された。
【0019】
[実施例3、比較例4〜6]
調味液で味付けした鶏肉とバッターを混合した後、表2の穀物由来原料を打粉としてまぶして、竜田揚げ特有の外観、及び噛み切りやすい食感を有するのか評価した。結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
竜田揚げ特有の自然な粉吹き感、及び噛み切りやすい食感を演出させるためには、馬鈴薯でん粉が特に有効であることが見出された。
【0022】
[実施例4〜6、比較例7〜9]
自然な粉吹き感に加えて、花咲感を演出するために、馬鈴薯でん粉に植物油脂または水を添加することを検討した。結果を表3に示す。
【0023】
【表3】

【0024】
外観の好ましさ(花咲き感の強さ)は比較例8>実施例6〜4>比較例7の順であったが、油ちょう時の状況を観察すると、比較例8は、打粉がフライヤー内へ多く落下し、油ちょう歩留も悪化した。以上の結果より、馬鈴薯でん粉に油脂を20:1〜20:3混合することが有効であることがわかった。また、馬鈴薯でん粉:油脂が20:2であればより好ましいことが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油:水が50:30〜60:20であり、且つ固形分を5%〜15%配合したバッター液を肉表面に塗布し、次いで該肉表面に馬鈴薯でん粉と油脂を20:1〜20:3の割合で混合した混合物を付着させ、油ちょうすることを特徴とする竜田揚げの製造方法。

【公開番号】特開2013−98(P2013−98A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137433(P2011−137433)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】