説明

端子付きボビンおよびモータ

【課題】導線が巻回される巻回部と端子との距離が短くても、導線の巻回時に導線が端子に引っ掛かるのを防止することが可能な端子付きボビンを提供する。
【解決手段】端子付きボビン16は、導線が外周側に巻回される筒状の巻回部16aと、巻回部16aの軸方向の一端側に形成される端子台16bと、端子台16bから巻回部16aの軸方向に略直交する方向へ突出する複数の端子16cとを備えている。端子16cの先端には、巻回部16aの軸方向に対して傾斜する傾斜面16gが形成され、傾斜面16gは、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに使用される端子付きボビン、および、この端子付きボビンを備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸に固定される駆動用磁石と、駆動用磁石の外周面に対向する極歯と、極歯の外周側に配置される駆動用コイルとを備えるステッピングモータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のステッピングモータでは、絶縁材料からなるボビンに導線が巻回されることで駆動用コイルが形成されている。このステッピングモータで使用されるボビンは、図6に示すボビン101のように、鍔付きの円筒状に形成された円筒部101aと、扁平な直方体状に形成される端子台101bと、四角柱状に形成される2個の端子101cとを備えている。
【0003】
端子台101bは、円筒部101aの軸方向の一端を構成する鍔部101dの外周端から軸方向に直交する方向(図6の上方向)へ立ち上るように形成されている。また、端子台101bは、鍔部101dよりも軸方向の外側(図6の紙面奥側)へ突出するように形成されている。図6における端子台101bの上面を端子台101bの上面とすると、端子101cは、端子台101bの上面から円筒部101aの軸方向に直交する方向へ立ち上るように形成されている。
【0004】
ボビン101には、一般に、以下の手順で導線102が巻回される。すなわち、まず、一方の端子101cに、導線102の一端側が巻き付けられて固定される。その後、導線102が円筒部101aの外周面に巻回される。その後、他方の端子101cに、導線102の他端側が巻き付けられて固定され、固定された先の導線102が切断される。以上の手順によって、ボビン101に導線102が巻回される。また、一般に、ボビン101への導線102の巻回作業は、巻線機を用いて自動で行われる。なお、図6では、端子101cに巻き付けられて固定される導線102の両端側の図示を省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−263691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、小型のステッピングモータの市場では、ステッピングモータの更なる小型化の要求が高まっている。ステッピングモータを小型化するために、図7に示すように、軸方向における円筒部101aと端子101cとの距離L10を短くすることが有効である。しかしながら、軸方向における円筒部101aと端子101cとの距離L10が短くなると、ボビン101に導線102を巻回する際に、導線102が端子101cに引っ掛かる不具合が生じるおそれがある。具体的には、図6を用いて説明すると、円筒部101aに導線102を巻回する際に、導線102が、たとえば、一方の端子101cの先端面(図6の上端面)に引っ掛かるといった不具合が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、導線が巻回される巻回部と端子との距離が短くても、導線の巻回時に導線が端子に引っ掛かるのを防止することが可能な端子付きボビンを提供することにある。また、本発明の課題は、かかる端子付きボビンを備えるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の端子付きボビンは、導線が外周側に巻回される筒状の巻回部と、巻回部の軸方向の一端側に形成される端子台と、端子台から巻回部の軸方向に略直交する方向へ突出する複数の端子とを備え、端子の先端には、巻回部の軸方向に対して傾斜する傾斜面が形成され、傾斜面は、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に接触した導線が巻回部に向かってのみ滑り落ちるように傾斜していることを特徴とする。
【0009】
本発明の端子付きボビンでは、端子の先端に巻回部の軸方向に対して傾斜する傾斜面が形成され、この傾斜面は、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に接触した導線が巻回部に向かってのみ滑り落ちるように傾斜している。すなわち、本発明では、端子の先端に、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に接触した導線が巻回部に向かって滑り落ちるように傾斜する傾斜面は形成されているが、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に接触した導線が巻回部の反対側へ滑り落ちるように傾斜する傾斜面は形成されていない。そのため、端子と巻回部との距離が短くなり、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に導線が接触しても、導線は巻回部に向かって滑り落ちやすくなる。したがって、本発明では、巻回部と端子との距離が短くても、導線の巻回時に導線が端子に引っ掛かるのを防止することが可能になる。
【0010】
なお、本発明における「傾斜面」には、端子が樹脂成形によって形成される場合に樹脂成形用の金型加工上、端子の先端のエッジに必然的に形成される微細な凸曲面(たとえば、曲率半径が0.05mm〜0.1mm程度の凸曲面)は、含まれないものとする。すなわち、端子が樹脂成形によって形成される場合に金型加工上、端子の先端のエッジに必然的に形成される微細な凸曲面が端子の先端に形成されており、巻回部への導線の巻回時にこの凸曲面に接触した導線が巻回部の反対側へ滑り落ちるようにこの凸曲面が傾斜しているものも、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0011】
本発明において、傾斜面は、たとえば、巻回部の軸方向の他端側に向かうにしたがって巻回部へ近づくように傾斜している。また、本発明において、端子の先端は、傾斜面のみによって構成されていることが好ましい。このように構成すると、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に導線が接触すると、導線は必ず傾斜面に接触する。したがって、巻回部への導線の巻回時に端子の先端に導線が接触しても、導線は傾斜面に沿って巻回部へより滑り落ちやすくなる。したがって、導線の巻回時に導線が端子に引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、傾斜面は、たとえば、平面状に形成されている。また、本発明において、傾斜面は、曲面状に形成されていても良い。これらの場合には、巻回部への導線の巻回時に傾斜面に接触した導線は、傾斜面に沿って滑りやすくなり、その結果、傾斜面に接触した導線は、巻回部へより滑り落ちやすくなる。なお、傾斜面が曲面状に形成されている場合と比較して、傾斜面が平面状に形成されている場合には、傾斜面を容易に形成することが可能になる。
【0013】
本発明において、端子は、樹脂で形成されていることが好ましい。このように構成すると、一般に樹脂で形成される巻回部および端子台と一体で端子を形成することが可能になる。したがって、端子の形成が容易になる。
【0014】
本発明において、端子台には、巻回部への導線の巻回時に端子台に接触した導線が巻回部に向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面が形成されていることが好ましい。このように構成すると、巻回部への導線の巻回時に端子台に導線が接触しても、導線は、巻回部に向かって滑り落ちやすくなる。したがって、導線の巻回時に導線が端子台に引っ掛かるのを防止することが可能になる。
【0015】
本発明において、端子台は、巻回部側に配置される第1の側面と、端子の基端が配置される第2の側面とを有し、端子台側傾斜面は、第1の側面と第2の側面との境界に形成され、巻回部の軸方向の他端側に向かうにしたがって巻回部へ近づくように巻回部の軸方向に対して傾斜していることが好ましい。巻回部への導線の巻回時には、導線は、第1の側面と第2の側面との境界に最も接触しやすい。したがって、このように構成すると、導線の巻回時に導線が端子台に引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。
【0016】
本発明において、端子台は、巻回部側に配置される第1の側面と、端子の基端が配置される第2の側面とを有し、第2の側面は、端子台側傾斜面によって構成され、巻回部の軸方向の他端側に向かうにしたがって巻回部へ近づくように巻回部の軸方向に対して傾斜していることが好ましい。このように構成すると、導線の巻回時に導線が第2の側面に接触すると、導線は必ず端子台側傾斜面に接触する。したがって、導線の巻回時に導線が第2の側面に接触しても、端子台側傾斜面である第2の側面に沿って導線が巻回部へより滑り落ちやすくなる。したがって、導線の巻回時に導線が端子台に引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。
【0017】
本発明において、端子台は、巻回部側に配置される平面状の第1の側面を有し、端子は、巻回部側に配置される平面状の第3の側面を有し、第1の側面と第3の側面とが同一平面状に配置されていることが好ましい。このように構成すると、第3の側面が、第1の側面よりも巻回部の反対側へずれている場合と比較して、軸方向で端子付きボビンを小型化することが可能になる。また、このように構成すると、導線の巻回時に導線が端子台に引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。
【0018】
本発明の端子付きボビンは、巻回部に導線が巻回されて形成される駆動用コイルと、端子付きボビンの内周側に配置される駆動用磁石とを備えるモータに用いることができる。このモータでは、巻回部と端子との距離が短くても、導線の巻回時に端子に導線が引っ掛かるのを防止することが可能になる。したがって、導線の巻回時に端子に導線が引っ掛かるのを防止しつつ、モータを軸方向で小型化することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、導線が巻回される巻回部と端子との距離が短くても、導線の巻回時に導線が端子に引っ掛かるのを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかるモータの部分断面図である。
【図2】図1に示すボビンを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかる端子の形状を説明するための側面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態にかかる端子の形状を説明するための図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかる端子台の形状を説明するための斜視図である。
【図6】従来技術にかかるボビンの構成およびその問題点を説明するための図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図である。
【図7】従来技術にかかるボビンの構成およびその問題点を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(モータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の部分断面図である。
【0023】
本形態のモータ1は、いわゆるPM型のステッピングモータである。このモータ1は、回転軸2と駆動用磁石3とを有するロータ4と、駆動用磁石3の径方向の外側に対向配置される極歯5を有するステータ6と、回転軸2の出力側でステータ6に取り付けられたフレーム7とを備えている。また、モータ1は、回転軸2の出力側の端部を支持する軸受8と、回転軸2の反出力側の端部を支持する軸受9と、回転軸2を出力側へ付勢する付勢部材としての板バネ10とを備えている。
【0024】
回転軸2は、回転軸2の出力側部分をなすリードスクリュー2aと、回転軸2の反出力側部分をなす細長い円柱状の軸部2bとによって構成されている。リードスクリュー2aの外周面には、オネジが形成されており、リードスクリュー2aには、ナット部材11が係合している。駆動用磁石3は、永久磁石であり、略円筒状に形成されている。この駆動用磁石3は、ステータ6の内部に配置される回転軸2の軸部2bの外周面に固定されている。駆動用磁石3の外周面には、N極とS極とが周方向に沿って交互に着磁されている。
【0025】
ステータ6は、軸方向で重なるように配置される第1のステータ部組12と第2のステータ部組13とを備えている。第1のステータ部組12は、外ステータコア14と、駆動用コイル15が巻回される端子付きボビンとしてのボビン16と、ボビン16を外ステータコア14との間に挟む内ステータコア17と、ケース18とを備えている。第2のステータ部組13は、第1のステータ部組12と同様に、外ステータコア14と、駆動用コイル15が巻回された端子付きボビンとしてのボビン16と、内ステータコア17と、ケース18とを備えている。
【0026】
ボビン16は、全体として略鍔付きの円筒状に形成されている。ボビン16の外周面には、導線が巻回されており、ボビン16の外周面に導線が略円筒状に巻回されることで駆動用コイル15が形成されている。ボビン16の内周側には、外ステータコア14および内ステータコア17のそれぞれに形成された複数の極歯5が周方向に隣接するように配置され、極歯5の内周側には、駆動用磁石3が配置されている。ボビン16の詳細な構成については後述する。
【0027】
ケース18は、外ステータコア14、駆動用コイル15、ボビン16および内ステータコア17の外周側を覆っている。このケース18は、たとえば、外ステータコア14の外周縁に繋がるように外ステータコア14と一体で形成されている。軸受8は、金属の薄板によって形成されたフレーム7の側面部7aに固定されている。軸受9は、ステータ6の反出力側に固定されている。板バネ10は、ステータ6の反出力側に取り付けられている。板バネ10の中心部には、回転軸2の反出力端に当接して、回転軸2を出力側へ付勢するバネ部10aが形成されている。
【0028】
(ボビンの構成)
図2は、図1に示すボビン16を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【0029】
ボビン16は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。また、ボビン16は、駆動用コイル15を構成する導線がその外周側に巻回される巻回部16aと、巻回部16aの中心軸CLの方向(軸方向)における巻回部16aの一端側に形成される端子台16bと、端子台16bから突出する2個の端子16cとを備えている。巻回部16aと端子台16bと端子16cとは一体で形成されており、巻回部16a、端子台16bおよび端子16cはいずれも樹脂で形成されている。また、本形態のボビン16は、金型を用いた樹脂成形によって形成されている。
【0030】
なお、以下の説明では、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を「前後方向」、Y方向を「左右方向」、Z方向を「上下方向」とする。また、X1方向側を「前」側、X2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。さらに、X方向とY方向とから形成される平面をXY平面、Y方向とZ方向とから形成される平面をYZ平面、Z方向とX方向とから形成される平面をZX平面とする。本形態では、巻回部16aの中心軸CLの方向(軸方向)と前後方向とが一致している。
【0031】
巻回部16aは、前後方向の両端に円環状の鍔部16d、16eを有する鍔付きの円筒状に形成されている。端子台16bは、前後方向に扁平な直方体状に形成されている。また、端子台16bの左右方向の幅は、上下方向の幅よりも広くなっている。この端子台16bは、巻回部16aの後端部を構成する鍔部16eの上端側から上方向へ立ち上るように形成されている。また、端子台16bは、巻回部16aの後端面(すなわち、鍔部16eの後面)よりも後ろ側へ突出するように形成されている。端子台16bの前後の両側面は、YZ平面と略平行になっており、端子台16bの左右の両側面は、ZX平面と略平行になっており、端子台16bの上下の両側面は、XY平面と略平行になっている。
【0032】
端子16cは、略四角柱状に形成されている。また、2個の端子16cは、左右方向に所定の間隔をあけた状態で、端子台16bの上側面16fから上側へ立ち上るように形成されており、端子16cの下端(基端)は、端子台16bの上側面16fに繋がっている。すなわち、2個の端子16cは、互いに略平行に配置されるとともに、上側面16fから上方向へ突出している。端子16cの前後の両側面は、YZ平面と略平行になっており、端子16cの左右の両側面は、ZX平面と略平行になっている。
【0033】
一方、端子16cの先端を構成する上側面は、前後方向(すなわち、巻回部16aの軸方向)に対して傾斜する傾斜面16gとなっている。すなわち、端子16cの先端には、前後方向に対して傾斜する1個の傾斜面16gが形成されており、端子16cの先端は、傾斜面16gのみによって構成されている。すなわち、端子16cの先端には、端子16cの後側面16iから端子16cの前側面16hに向けて、傾斜面16gが形成されている。傾斜面16gは、平面状に形成されている。また、傾斜面16gは、前側に向かうにしたがって下方向へ傾斜している。すなわち、傾斜面16gは、前側へ向かうにしたがって巻回部16aに近づくように傾斜している。前後方向に対する傾斜面16gの傾斜角度θは、45°以下となっている。たとえば、傾斜角度θは、30°程度となっている。
【0034】
端子16cの前側面16hは、端子台16bの前側面16jよりも後ろ側に配置されている。また、端子16cの後側面16iは、端子台16bの後側面16lよりも前側に配置され、左右方向における端子16cの外側面は、端子台16bの左右の側面よりも左右方向の内側に配置されている。また、端子台16bの前側面16jは、鍔部16eの前面と同一平面状に配置されている。
【0035】
2個の端子16cのうちの一方の端子16cには、駆動用コイル15を構成する導線の一端側が巻き付けられており、他方の端子16cには、導線の他端側が巻き付けられている。導線の両端側は、端子16cの下端側に巻き付けられている。たとえば、導線の両端側は、端子16cの下端から上下方向中間位置にかけて巻き付けられている。導線の中間部分は、巻回部16aの鍔部16dと鍔部16eとの間に巻回されている。
【0036】
上述のように、本形態のボビン16は、金型を用いた樹脂成形によって形成されており、傾斜面16gと前側面16hとの境界、および、左右方向における端子16cの外側面と傾斜面16gとの境界には、樹脂成形用の金型加工上、必然的に形成される微細な凸曲面(たとえば、曲率半径が0.05mm〜0.1mm程度の凸曲面)が形成されている。一方、傾斜面16gと後側面16iとの境界は、金型の分割面上に配置されており、傾斜面16gと後側面16iとの境界には、樹脂成形用の金型加工上、必然的に形成される微細な凸曲面は形成されていない。
【0037】
なお、モータ1では、図1に示すように、端子台16bに、駆動用コイル15に電流を供給するためのフレキシブルプリント基板等の基板21が固定されている。端子16cは、基板21に形成される貫通孔に挿通されている。端子16cの下端側に巻き付けられた導線の両端側のそれぞれと、基板21に形成される給電用のパターンとは、半田22によって電気的に接続されている。
【0038】
(導線の巻回手順)
以上のように構成されたモータ1では、ボビン16が巻線機の回転軸に固定された状態でボビン16に導線が巻回される。具体的には、まず、ボビン16が固定されている巻線機の回転軸が停止した状態で、一方の端子16cに導線の一端側が巻き付けられて固定される。その後、巻線機の回転軸が回転し、ボビン16が回転して、巻回部16aの鍔部16dと鍔部16eとの間に導線が巻回される。その後、他方の端子16cに、導線の他端側が巻き付けられて固定され、固定された先の導線が切断されて、ボビン16への導線の巻回作業が終了する。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、端子16cの先端に、端子16の後ろ側(後側面16i)から前側(前側面16h)に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面16gが形成されており、端子16cの先端は、この傾斜面16gのみによって構成されている。すなわち、本形態では、端子16cの先端に、前側に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面16gは形成されているが、後ろ側に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面は形成されていない。
【0040】
そのため、ボビン16が前後方向で薄型化されて、前後方向における巻回部16aと端子16cとの距離(より具体的には、巻回部16aの導線が巻回される部分と端子16cとの前後方向における距離)L(図2(B)参照)が短くなり、その結果、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に導線が接触しても、導線は、傾斜面16gに沿って滑り、巻回部16aに向かって滑り落ちやすくなる。したがって、本形態では、ボビン16を薄型化しても、導線の巻回時に導線が端子16cに引っ掛かるのを防止することが可能になる。
【0041】
(端子の変形例)
図3は、本発明の他の実施の形態にかかる端子16cの形状を説明するための側面図である。図4は、本発明の他の実施の形態にかかる端子16cの形状を説明するための図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図である。
【0042】
上述した形態では、傾斜面16gは、平面状に形成されている。この他にもたとえば、図3(A)に示すように、傾斜面16gは、曲面状に形成されても良い。具体的には、傾斜面16gは、凸曲面状に形成されても良い。傾斜面16gが曲面状に形成される場合であっても、傾斜面16gは、前側に向かうにしたがって下方向へ傾斜している。なお、傾斜面16gが曲面状に形成されている場合と比較して、傾斜面16gが平面状に形成されている場合には、傾斜面16gを容易に形成することが可能になる。
【0043】
上述した形態では、端子16cの先端は、前後方向に対して傾斜する傾斜面16gのみによって構成されている。この他にもたとえば、図3(B)に示すように、端子16cの先端は、XY平面に略平行な平行面16kと前後方向に対して傾斜する傾斜面16gとによって構成されても良い。この場合には、傾斜面16gが端子16cの先端を構成する上側面の前側部分を構成し、平行面16kが端子16cの上側面の後ろ側部分を構成する。
【0044】
なお、端子16cの先端が傾斜面16gのみによって構成されている場合には、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に導線が接触すると、導線は必ず傾斜面16gに接触する。したがって、端子16cの先端が傾斜面16gのみによって構成されている場合には、端子16cの先端が平行面16kと傾斜面16gとによって構成されている場合と比較して、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に導線が接触しても、導線が傾斜面16gに沿って巻回部16aへより滑り落ちやすくなる。
【0045】
また、傾斜面16gは、傾斜角度の異なる複数の傾斜面によって構成されても良い。たとえば、図3(C)に示すように、前側に向かうにしたがって下方向へ傾斜するとともに互いに傾斜角度が異なる2個の第1傾斜面16mと第2傾斜面16nとによって傾斜面16gが構成されても良い。この場合には、第1傾斜面16mは、平面状に形成されても良いし、曲面状に形成されても良い。また、第2傾斜面16nは、平面状に形成されても良いし、曲面状に形成されても良い。
【0046】
また、傾斜面16gは、図4に示すように、上述した形態の傾斜面16gと同様に形成される傾斜面の左右の両端側を面取りすることで形成された3個の傾斜面16p、16qによって構成されても良い。この場合には、上側から見たときの形状が二等辺三角形状となる平面状の傾斜面16pの左右両側のそれぞれに傾斜面16qが配置される。傾斜面16pは、前側に向かうにしたがって下方向へ傾斜し、傾斜面16qは、左右の外側に向かうにしたがって下方向へ傾斜している。この場合であっても、端子16cの先端に、後ろ側に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面が形成されていないため、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に導線が接触しても、導線は、巻回部16aに向かって滑り落ちやすくなる。
【0047】
なお、図4に示す例では、上述した形態の傾斜面16gと同様に形成される傾斜面の後端側の左右の両端側を面取りすることで形成された3個の傾斜面16p、16qによって傾斜面16gが構成されているが、上述した形態の傾斜面16gと同様に形成される傾斜面の前端側の左右の両端側を面取りすることで形成された3個の傾斜面によって傾斜面16gが構成されても良い。
【0048】
図2〜図4に示すように、傾斜面16gが、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜していれば、ボビン16を薄型化しても、導線の巻回時に導線が端子16cに引っ掛かるのを防止することが可能になるといった効果を得ることができる。
【0049】
(端子台の変形例)
図5は、本発明の他の実施の形態にかかる端子台16bの形状を説明するための斜視図である。
【0050】
上述した形態では、端子台16bの上側面16fと前側面16jとは互いに直交するように繋がっている。この他にもたとえば、図5(A)に示すように、端子台16bの上側面16fと前側面16jとの境界に前方向に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面16rが形成されても良い。巻回部16aへの導線の巻回時に、導線は、上側面16fと前側面16jとの境界に最も接触しやすいため、このように構成すると、導線の巻回時に導線が端子台16bに引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。また、巻回部16aへの導線の巻回時に、端子16cの傾斜面16gに接触し傾斜面16gに沿って滑り落ちた導線が端子台16bに引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。
【0051】
なお、この場合には、前側面16jは、巻回部16a側に配置される第1の側面であり、上側面16fは、端子16cの基端が配置される第2の側面である。また、傾斜面16rは、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面である。
【0052】
また、図5(B)に示すように、端子台16bの上側面16f自体が、前方向に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面となっていても良い。このように構成すると、導線の巻回時に導線が端子台16bの上側面16fに接触しても、導線は、傾斜している上側面16fに沿って滑り、巻回部16aへ滑り落ちやすくなる。したがって、導線の巻回時に導線が端子台16bに引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。なお、この場合には、前側面16jは、巻回部16a側に配置される第1の側面である。また、上側面16fは、端子16cの基端が配置される第2の側面であり、かつ、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面である。
【0053】
また、図5(C)に示すように、端子台16bの上側面16fと端子台16bの左右の両側面のそれぞれとの境界に、左右の外方向に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面16sが形成されても良い。また、図5(D)に示すように、端子台16bの前側面16jと端子台16bの左右の両側面のそれぞれとの境界に、左右の外方向に向かうにしたがって後ろ方向へ傾斜する傾斜面16tが形成されても良い。これらの場合であっても、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに導線が接触すると、接触した導線が傾斜面16sや傾斜面16tに沿って滑り、巻回部16aに向かって滑り落ちやすくなる。したがって、導線の巻回時に導線が端子台16bに引っ掛かるのを防止することが可能になる。
【0054】
なお、図5(C)に示す例では、傾斜面16sは、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面である。また、図5(D)に示す例では、傾斜面16tは、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面である。
【0055】
上述した形態では、端子16cの前側面16hは、端子台16bの前側面16jよりも後ろ側に配置されている。この他にもたとえば、図5(E)に示すように、端子16cの前側面16hと端子台16bの前側面16jとが同一平面上に形成されても良い。このように構成すると、前側面16hが前側面16jよりも後ろ側に配置されている場合と比較して、前後方向でボビン16を小型化することが可能になる。また、巻回部16aへの導線の巻回時に導線が端子台16bに引っ掛かるのを効果的に防止することが可能になる。なお、この場合には、前側面16jは、巻回部16a側に配置される第1の側面であり、前側面16hは、巻回部16a側に配置される第3の側面である。
【0056】
また、前側面16hと前側面16jとが同一平面上に形成される場合には、図5(F)に示すように、上側面16fと前側面16jとの境界であって、かつ、左右方向における端子台16bの外側に、前方向に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面16uが形成されても良い。この場合には、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに導線が接触すると、接触した導線が傾斜面16uに沿って滑り、巻回部16aに向かって滑り落ちやすくなる。なお、この場合には、傾斜面16uは、巻回部16aへの導線の巻回時に端子台16bに接触した導線が巻回部16aに向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面である。
【0057】
上述した形態では、端子台16bの上側面16fおよび前側面16jは、平面状に形成されている。この他にもたとえば、上側面16fおよび/または前側面16jは、曲面状に形成されても良いし、波面状に形成されても良い。
【0058】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0059】
上述した形態では、端子16cは、巻回部16aおよび端子台16bと一体で形成されている。この他にもたとえば、端子16cは、巻回部16aおよび端子台16bと別体で形成され、端子台16bに固定されても良い。また、この場合には、端子16cは、樹脂によって形成されても良いし、金属によって形成されても良い。なお、端子16cが巻回部16aおよび端子台16bと一体で形成されている場合には、端子16cが巻回部16aおよび端子台16bと別体で形成されている場合と比較して、端子16cの形成が容易になる。また、たとえば、端子16cが金属で形成されるとともに、切削加工等によって形成されている場合には、傾斜面16gにバリが発生して、巻回部16aへの導線の巻回時に端子16cの先端に接触した導線が滑りにくくなるおそれがある。これに対して、端子16cが樹脂成形によって形成されている場合には、傾斜面16gでのバリの発生を抑制して、かかる問題を解消することが可能になる。また、端子16cが樹脂成形によって形成されている場合には、傾斜面16gに沿って導線が滑りやすくなるため、導線の損傷や断線を防止することが可能になる。
【0060】
上述した形態では、ボビン16に2個の端子16cが形成されているが、ボビン16に3個以上の端子16cが形成されても良い。また、上述した形態では、2個の端子16cは、互いに略平行となっているが、2個の端子16cは、平行になっていなくても良い。
【0061】
上述した形態では、巻回部16aは、円環状の鍔部16d、16eを有する鍔付きの円筒状に形成されている。この他にもたとえば、巻回部16aは、鍔付きの四角筒状や六角筒状等の多角筒状に形成されても良い。また、鍔部16d、16eは、四角環状や六角環状等の多角環状に形成されても良い。
【0062】
上述した形態では、端子台16bは、扁平な直方体状に形成されているが、端子台16bは、扁平な直方体状以外の形状に形成されても良い。たとえば、端子台16bは、特開2004−147426号公報に開示されている端子台のように、前後方向および左右方向に凹凸を有するように形成されても良い。
【0063】
上述した形態では、傾斜面16gと後側面16iとの境界に、樹脂成形用の金型加工上、必然的に形成される微細な凸曲面は形成されていない。この他にもたとえば、傾斜面16gと後側面16iとの境界に樹脂成形用の金型加工上、必然的に形成される微細な凸曲面が形成されても良い。この場合の凸曲面は、巻回部16aへの導線の巻回時にこの凸曲面に接触した導線が後ろ側(すなわち、巻回部16aの反対側)へ滑り落ちるように形成されているが、この凸曲面は、本発明における「傾斜面」には、含まれない。すなわち、傾斜面16gと後側面16iとの境界に樹脂成形用の金型加工上、必然的に形成される微細な凸曲面は形成されているものも、本発明の範囲に含まれる。
【0064】
上述した形態では、ロータ4は、1個の駆動用磁石3を備えているが、ロータ4が備える駆動用磁石3の数は、2個以上でも良い。また、上述した形態では、ステータ6は、第1のステータ部組12と第2のステータ部組13とによって構成されているが、ステータ6は、1個のステータ部組によって構成されても良いし、3個以上のステータ部組によって構成されても良い。また、上述した形態では、モータ1は、ステッピングモータであるが、本発明の端子付きボビンは、ステッピングモータ以外のモータにも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 モータ
3 駆動用磁石
15 駆動用コイル
16 ボビン(端子付きボビン)
16a 巻回部
16b 端子台
16c 端子
16g 傾斜面
16f 上側面(第2の側面、端子台側傾斜面)
16h 前側面(第3の側面)
16j 前側面(第1の側面)
16r、16s、16t、16u 傾斜面(端子台側傾斜面)
X 巻回部の軸方向
X1 巻回部の軸方向の他端側
X2 巻回部の軸方向の一端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線が外周側に巻回される筒状の巻回部と、前記巻回部の軸方向の一端側に形成される端子台と、前記端子台から前記巻回部の軸方向に略直交する方向へ突出する複数の端子とを備え、
前記端子の先端には、前記巻回部の軸方向に対して傾斜する傾斜面が形成され、
前記傾斜面は、前記巻回部への前記導線の巻回時に前記端子の先端に接触した前記導線が前記巻回部に向かってのみ滑り落ちるように傾斜していることを特徴とする端子付きボビン。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記巻回部の軸方向の他端側に向かうにしたがって前記巻回部へ近づくように傾斜していることを特徴とする請求項1記載の端子付きボビン。
【請求項3】
前記端子の先端は、前記傾斜面のみによって構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の端子付きボビン。
【請求項4】
前記傾斜面は、平面状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の端子付きボビン。
【請求項5】
前記傾斜面は、曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の端子付きボビン。
【請求項6】
前記端子は、樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の端子付きボビン。
【請求項7】
前記端子台には、前記巻回部への前記導線の巻回時に前記端子台に接触した前記導線が前記巻回部に向かってのみ滑り落ちるように傾斜する端子台側傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の端子付きボビン。
【請求項8】
前記端子台は、前記巻回部側に配置される第1の側面と、前記端子の基端が配置される第2の側面とを有し、
前記端子台側傾斜面は、前記第1の側面と前記第2の側面との境界に形成され、前記巻回部の軸方向の他端側に向かうにしたがって前記巻回部へ近づくように前記巻回部の軸方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項7記載の端子付きボビン。
【請求項9】
前記端子台は、前記巻回部側に配置される第1の側面と、前記端子の基端が配置される第2の側面とを有し、
前記第2の側面は、前記端子台側傾斜面によって構成され、前記巻回部の軸方向の他端側に向かうにしたがって前記巻回部へ近づくように前記巻回部の軸方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項7記載の端子付きボビン。
【請求項10】
前記端子台は、前記巻回部側に配置される平面状の第1の側面を有し、
前記端子は、前記巻回部側に配置される平面状の第3の側面を有し、
前記第1の側面と前記第3の側面とが同一平面状に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の端子付きボビン。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の端子付きボビンと、前記巻回部に前記導線が巻回されて形成される駆動用コイルと、前記端子付きボビンの内周側に配置される駆動用磁石とを備えることを特徴とするモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−93939(P2013−93939A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233504(P2011−233504)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)