説明

端子台装置

【課題】端子金具の製造性を向上でき、端子金具の挟持板部の変形、破損等を防止できる端子台装置を提供する。
【解決手段】端子台装置1は、合成樹脂製の端子台本体2を備え、この端子台本体2には端子金具3を嵌合して取り付ける。端子金具3は、挟持板部22と、この挟持板部22の中央に形成した挿通用孔部26とを有する。端子金具3は、挟持板部22の両側端部に設けた対をなす対向板部23,24と、この両対向板部23,24の各対向面に突設した凸部25とを有する。ナット体4を両対向板部23,24間に嵌入して凸部25で支持する。ナット体4のねじ孔部42にねじ5のねじ軸部51をねじ込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具の製造性を向上できるとともに、端子金具の挟持板部の変形、破損等を防止できる端子台装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば端子台本体と、この端子台本体に取り付けられ挟持板部およびこの挟持板部にバーリングタップ加工により形成されたねじ孔部を有する端子金具と、ねじ孔部に螺合されたねじ軸部およびこのねじ軸部の端部に設けられ座金を介して挟持板部との間で電線を挟持するねじとを備えた端子台装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】意匠登録第1057081号公報(B−B拡大断面図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の端子台装置では、バーリングタップ加工によって端子金具の挟持板部にねじ孔部を形成するため、端子金具の製造に手間がかかり、また、ねじの大きさによっては端子金具の挟持板部が締付けトルクに耐えられず、変形、破損等するおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、端子金具の製造性を向上できるとともに、端子金具の挟持板部の変形、破損等を防止できる端子台装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の端子台装置は、端子台本体と、この端子台本体に取り付けられ、挟持板部およびこの挟持板部に形成された挿通用孔部を有する端子金具と、ねじ孔部を有するナット体と、前記挿通用孔部に挿通されかつ前記ねじ孔部に螺合されたねじ軸部および前記挟持板部との間で電線を挟持する頭部を有するねじとを備えるものである。
【0006】
請求項2記載の端子台装置は、請求項1記載の端子台装置において、端子金具は、挟持板部の両側端部に設けられた対をなす対向板部と、この両対向板部の各対向面にそれぞれ突設された凸部とを有し、ナット体は、前記両対向板部間に嵌入され、前記凸部にて支持されているものである。
【0007】
請求項3記載の端子台装置は、請求項2記載の端子台装置において、端子台本体は、互いに離間対向する対をなすナット受面を有し、ナット体は、前記両ナット受面間に嵌入されているものである。
【0008】
請求項4記載の端子台装置は、請求項3記載の端子台装置において、ナット体は、四角形状の板部材にて構成され、この板部材の中央部にねじ孔部が形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バーリングタップ加工によって端子金具の挟持板部にねじ孔部を形成する必要がないため、端子金具の製造性を向上でき、また、端子金具とは別体のナット体を利用することにより、端子金具の挟持板部の変形、破損等を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の端子台装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし図4において、1は端子台装置で、この端子台装置1は、例えば産業用ロボット等に取り付けられ4本の電線(図示せず)が接続される4P型の中継用端子台である。なお、図1に示す矢印の方向を前後方向および左右方向として説明する。
【0012】
端子台装置1は、絶縁性を有する合成樹脂製の1つのボディ等の端子台本体2を備え、この端子台本体2には、導電性を有する金属製で、例えば銅材からなる複数、例えば4つの端子金具3が嵌合により取り付けられている。
【0013】
また、端子台装置1は、各々が導電性を有する金属製のナット体4およびねじ5をそれぞれ4つずつ備え、各ねじ5にはばね座6および平座金7が取り付けられている。
【0014】
端子台本体2は、左右方向長手状の本体部11を有し、本体部11の上面から複数、例えば5つの突出板部12が上方に向って突出し、これら5つの突出板部12は等間隔をおいて左右方向に並んている。本体部11には、上方および下方に向って開口する複数、例えば4つの開口部13が形成され、各開口部13は本体部11の上面における互いに隣り合う突出板部12間の位置に配設されている。
【0015】
本体部11は、前後に互いに離間対向する左右方向長手状の一対の対向板14,15と、両対向板14,15の上端部を連結する連結板である上板16とを有している。また、図3に示されるように、両対向板14,15の長手方向両端部および長手方向中間部が、等間隔をおいて左右方向に並んだ複数、例えば5つの連結板17にて連結されている。前後の両対向板14,15の各対向面には上下方向長手状の突板18がそれぞれ突設され、突板18は連結板17の前後端部と離間対向している。
【0016】
なお、本体部11の上板16における開口部13の上側部分13aに臨んだ前後方向の対向面が、その開口部13の上側部分13aを介して互いに離間対向する対をなすナット受面19,20となっている。
【0017】
端子金具3は、全体として上下方向長手状をなすもので、長手方向一端部である上端部に断面略コ字状の嵌合部21を有し、この嵌合部21が端子台本体2の本体部11の開口部13にこの開口部13の下方から挿入されて嵌合保持されている。端子金具3の下端部は、図示しないプリント回路基板や銅バー等に固着される。
【0018】
そして、嵌合部21は、図5および図6にも示すように、端子台本体2の本体部11の上板16に略沿って位置する四角形状、例えば略矩形状の挟持板部22と、この挟持板部22の左右両側端部に下方に向って突設され左右に互いに離間対向する略矩形状の一対の対向板部23,24と、この両対向板部23,24の各対向面にそれぞれ突設された略円形状の複数、例えば2つの円ボス等のナット支持用の凸部25とを有している。
【0019】
挟持板部22の中央には、略円形状の挿通用孔部26が上下に貫通して形成されている。対向板部23,24の前後方向長さ寸法は挟持板部22の前後方向長さ寸法より長く、対向板部23,24の前後端部に嵌合突部23a,24aが形成されている。そして、対向板部23,24の嵌合突部23a,24aは、端子台本体2の本体部11の突板18と連結板17の前後端部との間に嵌合されている。また、対向板部23,24の前後面には複数の段部27が切欠き形成されている。
【0020】
また、一方の対向板部23である左側の対向板部24の下端から上下方向長手状の本体板部28が下方に向って延設され、この本体板部28の下端側が右側方に向けて折り曲げられ、この折り曲げられた部分29にねじ孔部30が例えばM5のバーリングタップ加工により形成されている。本体板部28の幅方向中央部には膨出部32が本体板部28の略全長にわたって形成されている。なお、右端の端子金具3には、ねじ孔部30の代わりに、ねじ溝を有しない孔部31が形成されている。
【0021】
ナット体4は、例えば端子金具3より強度が大きい真鍮や鉄等からなるM6の板ナットで、端子金具3の挟持板部22と略同じ大きさの四角形状、すなわち例えば前後方向長さ寸法が左右方向長さ寸法に比べて少し長い略矩形状の板部材41にて構成され、この板部材41の中央部にねじ孔部42が形成されている。
【0022】
そして、ナット体4は、図5および図6に示すように、端子金具3の左右両対向板部23,24間に嵌入され、4つの凸部25にて下方から支持され、かつ、端子台本体2の前後両ナット受面19,20間に嵌入されている。すなわち、ナット体4の左右方向の両端面全体が端子金具3の対向板部23,24の対向面にて支持され、ナット体4の前後方向の両端面全体が端子台本体2のナット受面19,20にて支持され、ナット体4の下面の一部が端子金具3の凸部25にて下方から支持されている。
【0023】
なお、ナット体4の前後方向長さ寸法は、挟持板部22の前後方向長さ寸法と同じである。また、ナット体4の前後方向長さ寸法は、互いに離間対向する両ナット受面19,20間の距離と同じである。さらに、ナット体4の厚さ寸法は、挟持板部22と凸部25との間の距離と同じである。また、挟持板部22の挿通用孔部26は、ナット体4のねじ孔部42より大きい寸法に形成されている。
【0024】
ねじ5は、例えばM6のナベビスで、端子金具3の挿通用孔部26に挿通されかつナット体4のねじ孔部42に螺合されたねじ軸部51を有している。ねじ軸部51の外周面にはねじ溝52が形成され、ねじ軸部51のねじ溝52が形成されていない部分の外周に、M6用のばね座6および平座金7がそれぞれ取着されている。また、ねじ軸部51の軸方向端部である上端には、ばね座6および平座金7を介して端子金具3の挟持板部22との間で電線(図示せず)を挟持する頭部53が一体に設けられている。頭部53には、ドライバー等の工具の先端部が挿入される被挿入凹部54が形成されている。
【0025】
次に、上記端子台装置1の作用等を説明する。
【0026】
端子台装置1を組み立てる場合は、まず、ナット体4を端子金具3に向けて移動させ、凸部25の上方位置において端子金具3の両対向板部23,24間に嵌入する。ナット体4が両対向板部23,24間に嵌入されると、ナット体4は、凸部25にて下方から支持されるため、落下しない状態となる。
【0027】
次いで、そのナット体4を組み込んだ端子金具3の嵌合部21を端子台本体2の本体部11の開口部13に下方から嵌め込む。端子金具3の嵌合部21が開口部13に嵌め込まれると、ナット体4は、左右の両対向板部23,24間に嵌入されかつ前後の両ナット受面19,20間に嵌入され、回転止めされた状態となる。また、端子金具3の挟持板部22の上部が、端子台本体2の本体部11の開口部13から上方に突出して露出した状態となる。
【0028】
そして、ばね座6および平座金7が付いたねじ5のねじ軸部51をナット体4のねじ孔部42にねじ込んで、組み立てが完了する。
【0029】
電線を接続する場合は、ねじ5を緩め、端子金具3の挟持板部22と平座金7との間に電線の先端部を位置させた後、ねじ5をナット体4に対して締め付け、その電線の先端部をばね座6および平座金7を介して端子金具3の挟持板部22とねじ5の頭部53とで挟持する。
【0030】
そして、この端子台装置1によれば、従来とは異なりバーリングタップ加工によって端子金具3の挟持板部22にねじ孔部を形成する必要がないため、端子金具3の製造性を向上でき、製造コストを低減できる。
【0031】
また、端子金具3とは別体のナット体4を利用することにより、端子金具3の挟持板部22の変形、破損等を防止でき、例えば端子金具3を真鍮等に比べて導電率の高い銅材で形成しても、M6のねじ5の最大締付けトルク、例えば5[N・m]にも耐えることができる。
【0032】
さらに、ナット体4が、端子金具3の左右両対向板部23,24間に嵌入されるとともに4つの凸部25にて下方から支持され、かつ端子台本体2の前後両ナット受面19,20間に嵌入されているため、ねじ6の締付けの際におけるナット体4の回転を端子金具3と端子台本体2との両方で確実に防止できる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、4本の電線を接続する4P型について説明したが、例えば3本の電線を接続する3P型、5本の電線を接続する5P型、或いは1本の電線を接続する1P型等でもよい。
【0034】
また、ナット体4を落下しないよう支持する凸部25の形状は、円形状には限定されず、例えば前後方向に長手方向を有する凸条等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る端子台装置の分解斜視図である。
【図2】同上端子台装置の上方からみた斜視図である。
【図3】同上端子台装置の下方からみた斜視図である。
【図4】同上端子台装置の断面図である。
【図5】同上端子台装置の正面視断面図である。
【図6】同上端子台装置の側面視断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 端子台装置
2 端子台本体
3 端子金具
4 ナット体
5 ねじ
19,20 ナット受面
22 挟持板部
23,24 対向板部
25 凸部
26 挿通用孔部
41 板部材
42 ねじ孔部
51 ねじ軸部
53 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子台本体と、
この端子台本体に取り付けられ、挟持板部およびこの挟持板部に形成された挿通用孔部を有する端子金具と、
ねじ孔部を有するナット体と、
前記挿通用孔部に挿通されかつ前記ねじ孔部に螺合されたねじ軸部および前記挟持板部との間で電線を挟持する頭部を有するねじと
を備えることを特徴とする端子台装置。
【請求項2】
端子金具は、挟持板部の両側端部に設けられた対をなす対向板部と、この両対向板部の各対向面にそれぞれ突設された凸部とを有し、
ナット体は、前記両対向板部間に嵌入され、前記凸部にて支持されている
ことを特徴とする請求項1記載の端子台装置。
【請求項3】
端子台本体は、互いに離間対向する対をなすナット受面を有し、
ナット体は、前記両ナット受面間に嵌入されている
ことを特徴とする請求項2記載の端子台装置。
【請求項4】
ナット体は、四角形状の板部材にて構成され、この板部材の中央部にねじ孔部が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の端子台装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−226633(P2008−226633A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62921(P2007−62921)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000103194)エムデン無線工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】