説明

端子固定構造

【課題】 第2の端子を第1の端子に固定する際に、ネジをきわめて確実にに第1の端子のネジ挿入口に挿入できる端子固定構造を提供すること。
【解決手段】 端子固定構造1は、第2の端子3を固定するためのネジ4と、第2の端子3が挿入される端子挿入口7、およびネジ4が挿入され螺合される第1のネジ挿入口9が規定され、端子挿入口7から挿入された第2の端子3がネジ4によって固定されることにより、第2の端子3と電気的に接続される第1の端子2と、中空部11が規定され、中空部11内をネジ4が移動することにより、ネジ4がネジ挿入口9に出入りするガイド部5とを備える。ガイド部5は、ネジ4と第1の端子2との螺合が外れた状態において、ネジ4を狭持するテーパ形状の構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第2の端子を第1の端子内に挿入し、ネジを螺合することにより第2の端子を固定する端子固定構造に関し、詳細には、ネジの第1の端子への挿入を容易にする端子固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6Aおよび図6Bは、従来の端子固定構造601を示す断面図である。第1の端子2は、プリント基板6に電気的に接続されており、非導電部10によって覆われている。第2の端子3を第1の端子2に固定する場合、図6Aに示すとおり、第2の端子3が第1の端子2の端子挿入口7を介して第1の中空部8内に配置される。この状態で、図6Bに示すとおり、ネジ4をネジ溝9Aに螺合させ、ネジ4を第1のネジ挿入口9を介して第1の中空部8内に挿入する。ネジ4と第1の端子2とで第2の端子3を挟み込むことにより、第2の端子3が第1の端子2に固定される。一方、第2の端子3を第1の端子2から取り外す場合、ネジ4をネジ溝9Aとの螺合が外れる方向に移動させ、図6Aに示すとおり、ネジ4を第2の端子3から離した後、第2の端子3を第1の端子2から取り外す。
【0003】
端子固定構造601は、第2の中空部11が規定されることにより筒状に形成されたガイド部605をさらに備える。すなわち、ガイド部5は、ネジ4が第1の中空部8から退出するための第2の中空部11を規定するものである。ガイド部605の第2の中空部11内に工具挿入口13からドライバ、六角レンチ等の工具を挿入し、当該工具を使いネジ4を操作することにより、ネジ4をネジ溝9Aに螺合し、または、ネジ4とネジ溝9Aとの螺合を外す。図6Aに示すとおり、ネジ4は、第2のネジ挿入口12を介して第2の中空部11内に移動することにより、第1の中空部8から退出することができる。これにより、第2の端子3を第1の中空部8内に固定することができる。
【0004】
しかし、従来の端子固定構造601は、ネジ4と第1の端子2との螺合が外れた場合に、ネジ4が第2の中空部11を介して工具挿入口13から外部に脱落してしまうという問題を有している。
【0005】
さらに、従来の端子固定構造601は、ネジ4を第1のネジ挿入口9に挿入する際の位置決めが容易でないという問題を有する。すなわち、ガイド部605の第2の中空部11は、ネジ4が容易に移動可能なように、その直径がネジ4の直径よりも大きく形成されている。また、第2の端子3を第1の中空部8内に配置するために、ネジ4を螺合が外れる方向に、少なくとも第2の端子3の直径(厚み)以上の距離移動させる必要がある。第2の端子3の直径が大きい場合、ネジ4とネジ溝9Aとの螺合が外れる。ここで、第2の中空部11の直径がネジ4の直径よりも大きく形成されているので、ネジ4は直径方向に移動したり、傾いたりする。そのため、工具を使ってネジ4を操作する際に、ネジ4が直径方向に移動したり、傾いたりするので、ネジ4の中心と第1のネジ挿入口9の中心とが同一直線上に位置しなくなり、ネジ4を第1のネジ挿入口9に挿入することが困難になる。さらに、ネジ4が傾くと、ネジ4の頂部に規定された孔に工具を挿入することが困難になる。その結果、第2の端子3を第1の端子2に固定する作業が非常に困難になる。
【特許文献1】特開平7−211390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ネジがガイド部から脱落しない端子固定構造を提供することである。本発明の別の目的は、第2の端子を第1の端子に固定する際に、ネジをきわめて容易にに第1の端子のネジ挿入口に挿入できる端子固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態による端子固定構造は、第2の端子を第1の端子に固定するネジと、該第2の端子が挿入される端子挿入口、および該ネジが挿入される第1のネジ挿入口が規定され、該端子挿入口から挿入された該第2の端子が該ネジによって固定されることにより、該第2の端子と電気的に接続する第1の端子と、中空部が規定され、該中空部内を該ネジが移動することにより、該ネジが該第1のネジ挿入口に出入りするためのガイド部と、該中空部内において、該ネジが所定位置よりも移動しないように規制する規制手段とを備える。
【0008】
ネジを第1の端子からガイド部の中空部内へ移動させた後、第2の端子を第1の端子内に挿入する。ネジを第1の端子に螺合させることにより、第2の端子はネジによって第1の端子に固定される。ネジがガイド部の中空部内を移動する際に、ネジが所定位置よりも移動しないように規制手段によって規制される。その結果、ネジは、ガイド部の中空部内で所定位置よりも移動しないので、ガイド部から外部に脱落することが防止される。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記規制手段は、該ネジと該第1の端子との螺合が外れた状態において、該ガイド部が該ネジを狭持する構造である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記中空部を規定する前記ガイド部の内壁はテーパ形状を有する。
【0011】
ネジと第1の端子との螺合が外れた状態において、ネジはガイド部によって狭持される。より具体的には、ガイド部の内壁がテーパ形状を有することにより、ネジがガイド部の第2の中空部内を移動すると、ネジの外径直径よりやや直径が小さくなる所定位置で、ネジがガイド部の内壁に狭持される。この状態では、ネジの中心は、第1のネジ挿入口の中心と同一直線上に位置する。これは、ガイド部が、ガイド部の中空部の中心線と第1のネジ挿入口の中心とが同一直線上に位置するように、第1の端子に取り付けられているからである。従って、ネジの中心と第1のネジ挿入口の中心とが同一直線上に位置した状態で、ネジを第1のネジ挿入口に挿入し、螺合することができる。そのため、きわめて容易に、ネジを第1のネジ挿入口に挿入し、第1の端子に螺合させることができる。さらに、ネジがガイド部によって狭持されるので、ネジがガイド部の中空部から外部に脱落することを防止できる。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記ガイド部は、該ネジが該中空部内に出入りする第2のネジ挿入口を規定し、該第2のネジ挿入口から少なくとも所定位置まで、該中空部の直径が該ネジの外径直径以下に連続的に減少する。
【0013】
ネジと第1の端子との螺合が外れた状態で、ネジは第2のネジ挿入口を介してガイド部の中空部内に移動する。ネジが中空部内を移動すると、中空部の直径がネジの外径直径よりも小さくなる所定位置において、ネジがガイド部によって狭持される。従って、ネジの中心と第1のネジ挿入口の中心とが同一直線上に位置した状態で、ネジを第1のネジ挿入口に挿入することができる。さらに、中空部の直径が連続的に減少するので、ネジの中空部内における移動が非常に滑らかになる。ネジのガイド部への押圧力が第2の中空部に入るにつれて連続的に増加するので、ネジに加わる反作用力が連続的に増加するからである。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記ネジの上記第2の端子に密接する底部がテーパ面を有している。上記中空部の直径Pが該ネジの直径Qと該テーパ面の径Rとの和(Q+R)と等しくなる位置Zと前記第1のネジ挿入口との距離が該ネジの長さNより小さくなるように、上記中空部の直径が連続的に減少する傾斜角αおよび前記第2のネジ挿入口の直径が決定されている。
【0015】
位置Zにおける中空部の直径とネジの外径直径Qとの差が、ネジの底部のテーパ面の径Rと等しく、かつ、位置Zと第1のネジ挿入口との距離がネジの長さNより小さいことにより、ネジの直径方向への移動が許容される(ネジの底部のテーパ面によってネジが第1のネジ挿入口に滑らかに挿入できる)ときに、ネジの少なくとも底部が第1のネジ挿入口に挿入された状態になる。従って、ガイド部は第2のネジ挿入口に向かうにつれて第2の中空部の直径が大きくなっていくが、ネジの直径方向への移動によってネジが第1のネジ挿入口に挿入できないということを防止できる。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記規制手段は、上記ガイド部に設けられた、上記ネジが当接する当接部であり、該ネジが前記第1の端子に螺合した状態で、該ネジが該当接部に当接する。
【0017】
ネジがガイド部の中空部内を移動する際に、所定位置において当接部に当接するので、ネジは所定位置を越えて移動することが規制される。そのため、ネジがガイド部から外部に脱落することを防止できる。また、ネジがネジ溝に螺合している状態でネジが当接部に当接するので、ネジはネジ溝との螺合が外れることがない。そのため、ネジをネジ溝に螺合させる際に、操作者がネジの中心と第1のネジ挿入口の中心とを同一直線上に配置する必要がないので、きわめて容易にネジをネジ溝に螺合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の端子固定構造は、規制手段を備えるので、ネジがガイド部から外部に脱落することを防止できる。さらに、本発明の端子固定構造は、ネジと第1の端子との螺合が外れた状態で、ネジがガイド部に狭持されるので、ネジと第1のネジ挿入口との中心が同一直線上に位置した状態で、ネジを第1のネジ挿入口に挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1A〜図1Cは、本発明の好ましい実施形態による端子固定構造1を説明する断面図である。図1Aはネジ4が第1の端子2に螺合し、かつ、第1の端子2に第2の端子3が固定されていない状態を、図1Bはネジ4と第1の端子2との螺合が外れ、ネジ4がガイド部5によって狭持された状態を、図1Cはネジ4が第1の端子2に螺合し、かつ、第2の端子3が第1の端子2に固定された状態をそれぞれ示す。図2は図1Aに示す端子固定構造1をA方向から見た場合の平面図を、図3は図1Aに示す端子固定構造1をB方向から見た場合の平面図をそれぞれ示す。図4は、ガイド部5の詳細を説明する拡大断面図である。
【0020】
端子固定構造1は、第1の端子2、第2の端子3、ネジ4、およびガイド部5を備える。端子固定構造1は、図1Cに示す通り、第2の端子3を第1の端子2内に挿入し、ネジ4によって第2の端子3を固定することにより、第2の端子3と第1の端子2とを電気的に接続するものである。また、端子固定構造1は、ネジ4がガイド部5(第2の中空部11)内において、所定位置X(図4参照)よりも工具挿入口13側に移動しないように規制する規制手段をさらに備える。規制手段によって、ネジ4が工具挿入口13から外部に脱落することを防止できる。本例では、規制手段は、ネジ4と第1の端子2との螺合が外れた状態において、ネジ4がガイド部5によって狭持される構造である。第1の端子2は例えばアンプ装置等に設けられる端子(例えば、電源端子、スピーカー端子、オーディオ信号の入出力端子等)であり、第2の端子3は例えばバッテリ装置、スピーカー、再生装置(例えばCDプレーヤ)等の端子に接続されたケーブル30の一端である。
【0021】
第1の端子2は、アエンダイカストなどの導電性部材から形成されており、プリント基板6上に配置された電気・電子回路(例えば、電源回路、増幅回路等)に電気的に接続されている。第1の端子2には、第2の端子3が挿入される端子挿入口7、および第2の端子3が配置される第1の中空部8が規定されている。端子挿入口7および第1の中空部8は、図1および図3に示す通り、略円筒形状に規定されている。第1の端子2には、ネジ4が第1の中空部8内に出入りするための第1のネジ挿入口9がさらに規定されている。第1のネジ挿入口9は、ネジ4の形状に対応した形状を有し、代表的にはネジ4が略円筒形状であるので、図1および図2に示すとおり、第1のネジ挿入口9も略円筒形状を有している。第1のネジ挿入口9を規定する内壁にはネジ溝9Aが形成されており、ネジ溝9Aにネジ4が螺合することにより、ネジ4が第1の中空部8内に進入する。
【0022】
第1の端子2は、外部への漏電および他の端子との短絡を防止するために、樹脂等の非導電性部材によって形成された非導電部10によって覆われている。非導電部10には、第1のネジ挿入口9に対応する位置に、第1のネジ挿入口9に比べて直径がやや大きい挿入口10Aが規定されている。さらに、非導電部10には、端子挿入口7に対応する位置に、端子挿入口7に比べて直径がやや大きい挿入口10Bが規定されている。なお、非導電部10は第1の端子2の一部としてみなしてもよく、この場合、非導電部10の挿入口10Aにネジ溝が形成されていてもよい。また、非導電部10はガイド部5と一体成形されていてもよい。
【0023】
第2の端子3は、上記の通り、第1の端子2が設けられたアンプ装置と、アンプ装置に接続される他装置とを接続するケーブル30の一端であり、例えば、導電性のプラグまたはケーブル30自体である。ケーブル30の第2の端子3以外の部分は、他の端子との短絡を防止するために非導電性部材によって覆われている。第2の端子3は、端子挿入口7を介して第1の中空部8内に挿入される。
【0024】
ネジ4は、ネジ溝9Aに螺合することにより、第1の中空部8内へと移動し、第2の端子3を固定する。すなわち、第2の端子3が第1の中空部8に配置された状態でネジ4をネジ溝9Aに螺合させ、ネジ4の底部4Aと第1の端子2との間に第2の端子3を挟み込み、固定する。ネジ4は、六角穴付止めねじ、バインド小ねじ、皿小ねじ、丸皿小ねじ、丸小ねじ、なべ小ねじ等の任意の適切なネジが採用され得るが、本例では、六角穴付止めねじが採用されている。ネジ4の底部4Aおよび頂部4B(図1A参照)には、テーパ面が形成されており(ネジ溝が形成されておらず)、第1のネジ挿入口9および第2のネジ挿入口12に挿入し易くなっている。ネジ4のネジ部4C(図1参照)には第1の端子2のネジ溝9Aに螺合するようにネジ溝が形成されている。ネジ4は略円筒形状に形成されており、頂部4B側には、図2に示す通り、ドライバ、六角レンチ等の工具を挿入するための孔31が規定されている。
【0025】
ガイド部5は、第2の中空部11内をネジ4が移動することにより、ネジ4が第1の中空部8を出入りするためのものである。ガイド部5は、図1Bに示す通り、ネジ4とネジ溝9Aとの螺合が外れた状態において、ネジ4を狭持する。ネジ4を狭持するとは、ネジ4の一部がガイド部5の内壁に密接して、直径方向に移動できない状態にすることをいう。これにより、ガイド部5は、ネジ4の中心を位置決めする。ガイド部5は、第2の中空部11が規定されることにより、略円筒形状に形成されている。ガイド部5は、ネジ4が第2の中空部11内に進入および退出するための第2のネジ挿入口12、ならびに工具が挿入される工具挿入口13がさらに規定されている。ガイド部5は、プリント基板6を介して非導電部10に取り付けられている。あるいは、ガイド部5は、非導電部10に直接取り付けられてもよい。
【0026】
第2のネジ挿入口12は、ネジ4の形状に対応した形状を有し、代表的には略円形である。第2のネジ挿入口12は、ネジ4が挿入可能なようにネジ4の外径直径よりも大きい直径を有している。工具挿入口13は、図2に示す通り、代表的には略円形であり、工具が挿入可能な直径を有している。本例では、工具挿入口13の直径は、ネジ4の外径直径よりも小さい。第2の中空部11は、第2の端子3を第1の中空部8に配置するために、ネジ4を第1の中空部8から退出させるための空間として機能する。
【0027】
図4に示す通り、第2の中空部11は、第2のネジ挿入口12から少なくとも所定位置Xまで(本例では、工具挿入口13まで)、工具挿入口13側に向かうに従って連続的に直径Pが小さくなるよう規定されている。すなわち、第2の中空部11を規定するガイド部5の内壁Dはテーパ形状を有しており、工具挿入口13に向かうにつれて第2に中空部11が狭くなっている。本例では、所定位置Xは、第2の中空部11の直径Pがネジ4の外径直径Qよりやや小さくなる位置である。すなわち、第2の中空部11の直径Pは、少なくとも所定位置Xまで、ネジ4の外径直径Q以下に連続的に減少する。これにより、ネジ4は所定位置Xにおいてガイド部5の内壁Dを押圧する状態になり、内壁Dからの反作用力によりネジ4がガイド部5によって狭持され、固定される。ネジ4がガイド部5によって狭持されることにより、ネジ4が工具挿入口13から外部に脱落することを防止し、かつ、ネジ4の中心を位置決めすることができる(詳細後述)。具体的には、所定位置Xは、所定位置Xから第1のネジ挿入口9までの距離Mがネジ4の長さNより大きくなる位置である。この位置を所定位置Xとすることにより、ネジ4は第1の中空部8から十分に退出することができる。例えば、第2のネジ挿入口12から所定位置Xまでの距離は、ネジ4の長さNの約60〜80%である。
【0028】
好ましくは、第2の中空部11の直径Pは、所定位置Xまで直線的に減少する(つまり、均等な割合で第2の中空部11が狭くなっていく)。これにより、ネジ4が第2の中空部11を移動する際に、ガイド部5の内壁Dからの反作用力が急激に大きく(または小さく)ならないので、ネジ4は第2の中空部11内をより滑らかに移動することができる。
【0029】
第2の中空部11は、傾斜角α(ガイド部5の内壁Dと、ガイド部5の外壁に平行な線Eとの間の角度)が、第2の中空部11の周全体にわたって均一である。つまり、第2の中空部11は、工具挿入口13に向かうにつれて周全体にわたり均一に狭くなっていく。さらに言い換えると、第2の中空部11を通る中心線Yが第2のネジ挿入口12を直交する。その結果、ネジ4が第2の中空部11内を移動してガイド部5に狭持される際に、ネジ4はその中心(具体的には、底部4Aの中心Lおよび頂部4Bの中心K)が第2の中空部11の中心線Y上に位置する。これは、ガイド部が上記の通り周にわたり均一な構造を有することと、ネジ4がガイド部5に狭持されたときに、ガイド部5の内壁Dから周全体にわたり均一な反作用力を受けることにより、ネジ4の中心が第2の中空部11の中心線Y上に位置するように、ネジ4が自動的に位置決めされるからである。さらに、ネジ溝が形成されていない頂部4Bが最初にガイド部5の内壁に接するので、ネジ4が傾くことはない。
【0030】
ガイド部5は、第1のネジ挿入口9の中心と第2のネジ挿入口12の中心とが同一直線上(第2の中空部11の中心線Y上)に位置するように、非導電部10に取り付けられている。例えば、プリント基板6およびガイド部5は、図示しないアンプ装置の筐体に取り付けられるので、第1のネジ挿入口9の中心と第2のネジ挿入口12の中心とを同一直線上に位置するように筐体に、プリント基板6およびガイド部5の取付孔を規定している。そのため、ネジ4がガイド部5によって狭持された状態では、ネジ4の中心と第1のネジ挿入口9の中心とを同一直線(Y)上に位置することができる。ネジ4を第1の挿入口9に挿入する際に、ネジ4の中心が第1のネジ挿入口9の中心と同一直線Y上に位置するので、きわめて容易にネジ4を第1のネジ挿入口9に挿入することができる。すなわち、ガイド部5によってネジ4が狭持されることにより、ネジ4が直径方向(第2の中空部11の中心線Yに垂直な方向)に移動することがなく、かつ、ネジ4が傾くことがないので、ネジ4の中心と第1のネジ挿入口9の中心とを同一直線上に位置した状態を保持したまま、ネジ4を第1のネジ挿入口9に挿入できる。さらに、ネジ4の直径方向への移動(または傾き)が防止されることにより、工具をネジ4の孔31に挿入することがきわめて容易になる。
【0031】
次に、各部の具体的な寸法の好ましい決定方法について説明する。まず、所定位置Xは、上記の通り、ネジ4の長さN、および、第1のネジ挿入口9との距離に基づいて、ネジ4が第1の中空部8から十分に退出できるように決定されている。傾斜角αおよび第2のネジ挿入口12の直径は、ネジ4の外径直径Q、長さNおよび底部4Aのテーパ面の径R(径Rは、外径直径Qのうちテーパ面が形成された部分を指す)、ならびに第1のネジ挿入口9と第2のネジ挿入口12との距離Sに基づいて決定される。これらの値は、次のことを考慮して決定される。ネジ4をガイド部5から第1のネジ挿入口9に移動させる際に、第2の中空部11の直径Pは第2のネジ挿入口12に向かうほどネジ4の外径直径Qとの差が大きくなる。そのため、ネジ4が直径方向に移動して(または傾いて)しまい、ネジ4の中心と第1のネジ挿入口9の中心とが同一直線上に位置しなくなり、ネジ4の第1のネジ挿入口9への挿入が困難になる可能性が生じる。これを解決するために、ネジ4の直径方向への移動(または傾き)がネジ4の第1のネジ挿入口9への挿入に対して弊害になる前(つまり、ネジ4の底部4Aのテーパ面によって容易に第1のネジ挿入口9に挿入できるうち)に、ネジ4の少なくとも底部4Aが第1のネジ挿入口9に挿入されるように、傾斜角α、および第2のネジ挿入口11の直径が決定される。
【0032】
具体的には、ネジ4の直径方向の移動が許容される範囲はネジ部4の底部4Aのテーパ面の径Rの半分R/2である。ネジ4の直径方向の移動が許容される第2の中空部11の限界位置をZ(ネジ4の頂部4Bが位置Zに位置する際に、ネジ4の直径方向への移動が許容される)とすると、Zは第2の中空部11の直径Pとネジ4の外径直径Qとの差P−Qがテーパ面の径Rと等しく(つまり、P=Q+Rに)なる位置である。そして、位置Zは、位置Zと第1のネジ挿入口9との距離がネジ4の長さNよりも小さくなる位置に決定される。例えば、ネジ4の直径方向の移動が許容される範囲は、ネジ4の底部4Aのテーパ面の径Rであり、3mmである。これを考慮すると、ネジ4の外径直径Qが7mmであれば、位置Zにおける第2の中空部11の直径はP=Q+R=10mmである。そして、ネジ4の長さが10mm、第1のネジ挿入口9と第2のネジ挿入口12との距離が5mmである場合には、傾斜角αが3度、第2のネジ挿入口の直径が7.6mmである。これにより、ネジ4と第1のネジ挿入口9との中心をさらに確実に同一直線上に位置させることができ、さらに容易にネジ4を第1のネジ挿入口9に挿入できる。
【0033】
以上の構成を有する端子固定構造1について、第2の端子3を第1の端子2に固定する方法について説明する。まず、図1Aに示す通り、ネジ4が第1の端子2に螺合されている状態において、工具挿入口13から工具を挿入して、ネジ4を工具で操作することにより、ネジ4を螺合が外れる方向に移動させる。つまり、ネジ4を第2のネジ挿入口12を介して第2の中空部11内に移動させる。ここで、第2の端子3を第1の中空部8内に配置できるように、ネジ4を第2の端子3の直径以上の距離、螺合が外れる方向に移動させる必要がある。直径の小さいの第2の端子3を第1の中空部8内に配置して固定する場合、ネジ4をネジ溝9Aとの螺合が外れない程度しか移動させなくても、第2の端子3を第1の中空部8内に配置できる。しかし、直径の大きい第2の端子3を第1の中空部8内に配置する場合、第2の端子3を配置できるようにネジ4を移動させると、ネジ4と第1の端子2との螺合が外れる。
【0034】
そこで、図1Bに示すとおり、ネジ4を第2の中空部11内の工具挿入口13側にさらに移動させると、ネジ4がガイド部5の内壁を押圧するようになり、ネジ4が所定位置Xでガイド部5からの反作用力によって狭持される。なお、ネジ4の頂部4Bはテーパ面が形成されネジ溝が形成されていないので、ネジ4が所定位置Xでガイド部5と接する際に、ネジ4が傾くことはない。ネジ4の頂部4Bおよびネジ部の一部がガイド部5の内壁に密接する。これにより、ネジ4の中心が第1のネジ挿入口9の中心と同一直線上になる位置に、ネジ4が配置される。この状態で、端子挿入口7を介して第1の中空部8に第2の端子3を配置する。
【0035】
その後、工具を使ってネジ4を第1の端子2側に移動させることにより、ネジ4の中心が第1のネジ挿入口9の中心と同一直線上に位置した状態で、頂部4Aを第1のネジ挿入口9に挿入できる。ネジ4の頂部4Aが第1のネジ挿入口9に挿入された後、工具を使ってネジ4をネジ溝9Aに螺合させ、図1Cに示すとおり、ネジ4を第2の端子3に当接する位置まで移動させる。第2の端子3はネジ4および第1の端子2との間に挟み込まれることにより、第1の端子2に固定される。
【0036】
以上のように、端子固定構造1によると、ネジ4と第1の端子2との螺合が外れた状態で、ネジ4がガイド部5によって狭持されるので、ネジ4の中心と第1のネジ挿入口9の中心とを同一直線上に位置させることができる。その結果、第2の端子3を第1の端子2内に挿入した後、ネジ4を第1の端子2に螺合させる際に中心を確実に一致させることができ、きわめて容易にネジ4をネジ挿入口9に挿入することができる。
【0037】
次に本発明の別の好ましい実施形態について、図5Aおよび図5Bを参照して説明する。図5Aおよび図5Bは、本実施形態の端子固定構造501を示す断面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。本例では、規制手段は、ガイド部505に設けられネジ4が第2の中空部11内を移動する際に当接する当接部(段差部)20を含む。当接部20は、第2の中空部11の直径をネジ4の直径より小さく規定するものであり、ネジ4と当接することによりネジ4が工具挿入口13側に移動することを規制する。
【0038】
本例における所定位置とは、当接部20が設けられた位置である。当接部20(所定位置)はガイド部5の任意の適切な位置に設けることができるが、好ましくは、ネジ4が当接部20に当接する状態で、第1の端子2のネジ溝9Aに螺合する位置に設けられている。具体的には、当接部20とネジ溝9Aとの距離がネジ4の長さより短い。これにより、図5Aに示す通り、ネジ4が第2の中空部11内を移動する際に、ネジ4がネジ溝9Aに螺合した状態で当接部20に当接する。その結果、ネジ4は、ネジ溝9との螺合が外れることはない。従って、第2の端子3を第1の中空部8内に配置した後ネジ4をネジ溝9Aに螺合させる際に、ネジ4は常にネジ溝9Aとの螺合が外れていないので、きわめて容易にネジ4をネジ溝9Aに螺合できる。
【0039】
つまり、ガイド部5の第2のネジ挿入口12から当接部20(所定位置)までは、ネジ4が容易に移動可能なように、その直径がネジ4の直径よりも大きく形成されている。従って、ネジ4が当接部20に当接する状態でネジ溝9Aとの螺合が外れてしまうと、ネジ4が直径方向に移動したり、傾いたりする。そのため、ネジ4が直径方向に移動し(または傾き)、ネジ4の中心と第1のネジ挿入口9の中心とが同一直線上に位置しなくなるので、ネジ4を第1のネジ挿入口9に挿入することが困難になる。本例では、ネジ4が当接部20に当接する際に、ネジ4がネジ溝9Aに螺合しているので、きわめて容易にネジ4をネジ溝9Aに螺合することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、図1〜図4の実施形態において、ガイド部5は、ネジ4が狭持される所定位置Xまで連続的に直径が小さくなり、ネジ4が狭持される所定位置Xより工具挿入口13側は直径が変化しなくてもよい。また、所定位置Xより工具挿入口13側に向かうにつれて、直径が大きくなってもよい。すなわち、ネジ4が狭持される所定位置Xより工具挿入口13側は少なくとも工具が挿入可能であればよい。さらに、第2の中空部8は、第2のネジ挿入口12付近では急激に狭くなり、所定位置Xに近づくにつれて狭くなる量が減少してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、オーディオ装置(CD/DVD/MDプレイヤー/レコーダーまたはAVレシーバー等)を代表とする各種電子機器の端子固定構造に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】本発明の好ましい実施形態による端子固定構造を示す断面図である。
【図1B】本発明の好ましい実施形態による端子固定構造を示す断面図である。
【図1C】本発明の好ましい実施形態による端子固定構造を示す断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による端子固定構造を示す平面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による端子固定構造を示す平面図である。
【図4】ガイド部を示す拡大断面図である。
【図5A】本発明の別の好ましい実施形態による端子固定構造を示す断面図である。
【図5B】本発明の別の好ましい実施形態による端子固定構造を示す断面図である。
【図6A】従来の端子固定構造を示す断面図である。
【図6B】従来の端子固定構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 端子固定構造
2 第1の端子
3 第2の端子
4 ネジ
5 ガイド部
7 端子挿入口
9 第1のネジ挿入口
11 第2の中空部
12 第2のネジ挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の端子を第1の端子に固定するネジと、
該第2の端子が挿入される端子挿入口、および該ネジが挿入される第1のネジ挿入口が規定され、該端子挿入口から挿入された該第2の端子が該ネジによって固定されることにより、該第2の端子と電気的に接続する第1の端子と、
中空部が規定され、該中空部内を該ネジが移動することにより、該ネジが該第1のネジ挿入口に出入りするためのガイド部と、
該中空部内において、該ネジが所定位置よりも移動しないように規制する規制手段とを備える、端子固定構造。
【請求項2】
前記規制手段が、該ネジと該第1の端子との螺合が外れた状態において、該ガイド部が該ネジを狭持する構造である、請求項1に記載の端子固定構造。
【請求項3】
前記中空部を規定する前記ガイド部の内壁がテーパ形状を有する、請求項2に記載の端子固定構造。
【請求項4】
前記ガイド部が、該ネジが該中空部内に出入りする第2のネジ挿入口を規定し、該第2のネジ挿入口から少なくとも所定位置まで、該中空部の直径が該ネジの外径直径以下に連続的に減少する、請求項2に記載の端子固定構造。
【請求項5】
前記ネジの前記第2の端子に密接する底部がテーパ面を有しており、
前記中空部の直径Pが該ネジの直径Qと該テーパ面の径Rとの和(Q+R)と等しくなる位置Zと前記第1のネジ挿入口との距離が該ネジの長さNより小さくなるように、前記中空部の直径が連続的に減少する傾斜角αおよび前記第2のネジ挿入口の直径が決定されている、請求項4に記載の端子固定構造。
【請求項6】
前記規制手段が、前記ガイド部に設けられた、前記ネジが当接する当接部であり、該ネジが前記第1の端子に螺合した状態で、該ネジが該当接部に当接する、請求項1に記載の端子固定構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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