説明

筆記具のクリップ取付構造

【課題】 構造が簡単であって組立作業も容易であり、クリップを軸筒にしっかりと回動可能に取り付けることができる筆記具のクリップ取付構造を提供する。
【解決手段】 クリップ本体11両側縁の折曲片12の尾端側に係止孔14を形成し、クリップ本体の尾端に内向きの第1係止段部15を形成する。軸筒尾端側の取付壁22に回動支軸23を突設し、この取付壁の尾端に第2係止段部24を形成する。クリップの係止孔に軸筒の回動支軸を係合し、取付壁の間の空間に、略U字状のばね部材3を押し込み、ばね部材のいずれかの端部を第1係止段部ないしは第2係止段部に係止してクリップの尾端部が拡開するように弾発する。クリップの係止孔より先端側に内向きのばね材抜け落ち防止壁16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具のクリップ取付構造に関し、更にはクリップの尾端部を押すと大きく拡開する筆記具のクリップ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリップの尾端部を押すとクリップの先端部が軸筒から離間して拡開する筆記具のクリップ取付構造として、例えば、軸筒の隆起部およびクリップの表面に一対の溝を形成し、軸筒の隆起部に形成された円弧状の凹部にクリップに形成された先端円弧状の突部を載せてこれを回動支点とするとともにU字状の線材からなるばねをこれらの溝にはめ込んでクリップを軸筒に支点を中心にして回動可能に取り付けたものが知られている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2006−192724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のクリップ取付構造においては、クリップを軸筒に軸支しないので、その分、構造は簡単であるががたつきが生じやすくてクリップの保持が不安定である。また、クリップと軸筒に溝を形成するのに手間を要し、線材からなるばねをこれらの溝にはめ込む組立作業も手間を要する課題があった。
【0004】
そこで本願発明は、構造が簡単であって組立作業も容易であり、クリップを軸筒にしっかりと回動可能に取り付けることができる筆記具のクリップ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明の筆記具のクリップ取付構造は、クリップ本体の軸線方向の両側縁を内側に折り曲げた一対の折曲片の尾端側にそれぞれ係止孔を形成するとともに、クリップ本体の尾端に内向きの第1係止段部を形成しクリップと、尾端側において軸線方向に立設された一対の取付壁にそれぞれ外向きに回動支軸を突設するとともに、この取付壁の尾端に外向きの第2係止段部を形成した軸筒と、略U字状のばね部材で構成し、クリップの係止孔に軸筒の回動支軸を係合し、取付壁の間の空間に、略U字状のばね部材をその頂部を先端側にして押し込み、少なくともこのばね部材のいずれかの端部を第1係止段部ないしは第2係止段部に係止してクリップの尾端部が拡開するように弾発し、クリップ先端部の玉部が軸筒の表面に圧接するようにする。また、クリップの係止孔より先端側に内向きのばね材抜け落ち防止壁を形成するのがよい。
【発明の効果】
【0006】
このように、クリップの係止孔に軸筒の回動支軸を係合するので、クリップががたつくことなくしっかりと軸筒に回動可能に取り付けることができ、また、ばね部材を取付壁の間の空間に押し込み、ばね部材のいずれかの先端を第1係止段部ないしは第2係止段部に係止することで組み立てることができるので、組立作業が容易である。そして、クリップの係止孔より先端側に内向きのばね材抜け落ち防止壁を形成すると、ばね部材に不用意な力が作用して先端側にずれてもばね部材の脱落を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に図面に基づいて発明を実施するための最良の形態を説明する。図1において、合成樹脂で成形されたクリップ1は、そのクリップ本体11の軸線方向の両端部が内側に折り曲げられて一対の折曲片12が形成されている。折曲片12の先端は円弧状に成形されて玉部13が形成されており、折曲片12の尾端部には係止孔14が穿設されている。また、クリップ本体11の尾端は内側に小さく折り曲げられて第1係止段部15が形成されており、係止孔14より少し先端側に内向きのばね部材抜け落ち防止壁16が形成されている。
【0008】
軸筒2尾端の大径部21には、軸線方向の一対の取付壁22が形成されている。そして、取付壁22には回転支軸23が突設されており、取付壁22の尾端部の大径部21には小さな第2係止段部24が外向きに形成されている。ここで、一対の取付壁22の外面間の寸法はクリップ1の一対の折曲片12の内面間の寸法にほぼ等しく、係止孔14の内径は回転支軸23の外径にほぼ等しくなっている。なお、軸筒2が筆記具のキャップであってもよく、本願における軸筒はキャップも含む広義のものである。
【0009】
ねじりコイルばねのばね部材3は、図2に示すように、コイル部31の両端から作用部32,33がV字状に伸び出しており、作用部32,33の角度を小さくすることにより弾発力が発生する。作用部32,33の先端32a、33aはコイル部31と平行に折り曲げられている。ばね部材3はねじりコイルばねに限られるものでなく、略U字状の板ばねのように作用部がV字状に伸び出し、一対の作用部間の角度を小さくすることにより弾発力が生じるものであればよい。
【0010】
しかして、クリップ1尾端の折曲部12を軸筒2の取付壁22に合わせて押し込み、図3に示すように、回動支軸23を係合孔14に嵌め込んでクリップ1を軸筒2に対して回動可能にする。したがって、クリップ1は軸筒2にがたつくことなくしっかりと取り付けることができる。ここで、回動支軸23の上側に傾斜部23aが形成されるとともに折曲部12の先端内側にも傾斜部12aが形成されており、容易に回動支軸23を係合孔14に嵌め込めるようになっている。次に、取付壁22間の空間25にばね部材3を押し込む。つまり、コイル部31を先頭にし、指先などで作用部32,33の角度を少し小さくして押し込む。そして、先端32a、33aが第1係止段部15および第2係止段部24を通過すると指を離す。これにより作用部32,33の角度が拡大してクリップ1の尾端部が弾発されて拡開し、先端の玉部13が軸筒2の表面に圧接する。
【0011】
ばね部材3を空間25に嵌め込むと、クリップ1が回動して尾端側が拡開するのクリップ1は軸筒2に対して尾端側が広がった状態で傾斜する。このため、ばね部材3は尾端側にずれるように力が働くが、第1係止段部15および第2係止段部24が形成されているので、ばね部材3の先端32a、33aのいずれかが第1係止段部15ないし第2係止段部24に係止し、尾端側に抜け落ちることがない。もっとも、ばね部材3の先端32a、33aが同時に第1係止段部15および第2係止段部24に係止するようにしてもよい。また、ばね部材3の左右は取付壁22で囲われているので左右方向に抜け落ちることがない。また、落下時の衝撃などによりばね部材3が先端側にずれる可能性があるが、ばね部材抜け落ち防止壁16を設けておくと、ばね部材3が先端側に抜け落ちることがない。そして、クリップ1の尾端部を押すと、図5に示すように、クリップ1の先端側が大きく拡開するパネルなどの厚い紙にも差し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)はクリップの横断面図、(B)はクリップの縦断面図、(C)は軸筒の横断面図、(D)は軸筒の正面図である。
【図2】(A)はねじりコイルばねの正面図、(B)は平面図である。
【図3】クリップを軸筒に組み付けた状態の断面図である。
【図4】本発明実施例の一部を切り欠いた正面図である。
【図5】クリップを拡開した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1 クリップ
11 クリップ本体
12 折曲片
13 玉部
14 係止孔
15 第1係止段部
16 ばね部材抜け落ち防止壁
2 軸筒
21 大径部
22 取付壁
23 回動支軸
24 第2係止段部
3 はね部材
31 コイル部
32 作用部
33 作用部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ本体の軸線方向の両側縁を内側に折り曲げた一対の折曲片の尾端側にそれぞれ係止孔が形成されるとともに、クリップ本体の尾端に内向きの第1係止段部が形成されたクリップと、尾端側において軸線方向に立設された一対の取付壁にそれぞれ外向きに回動支軸が突設されるとともに、該取付壁の尾端に外向きの第2係止段部が形成された軸筒と、略U字状のばね部材からなり、
前記クリップの係止孔に該軸筒の回動支軸を係合し、該取付壁の間の空間に、略U字状のばね部材をその頂部を先端側にして押し込み、少なくとも略U字状のばね部材のいずれかの端部を該第1係止段部ないし第2係止段部に係止してクリップの尾端部が拡開するように弾発し、クリップ先端部の玉部が軸筒の表面に圧接するようにしたことを特徴とする筆記具のクリップ取付構造。
【請求項2】
前記クリップの係止孔より先端側に内向きのばね材抜け落ち防止壁を形成したことを特徴とする請求項1記載の筆記具のクリップ取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−230085(P2008−230085A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74039(P2007−74039)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】