説明

筆記具の尾冠取付構造

【課題】 先端外周面にキャップ螺着用のねじ溝が形成された合成樹脂製の軸筒の尾端開口に尾冠を簡単、かつ確実に取り付けることが可能な取付構造を提供する。
【解決手段】 キャップ螺着用のねじ溝が形成された合成樹脂製の軸筒の尾端開口内部に先端側の表面が傾斜した内向きの鍔部を形成する。鍔部は1ないし複数個の切欠き部有する。尾冠の先端に軸筒の鍔部内に挿入される筒部を形成し、この筒部に切欠き部を通過可能な突起部を形成する。尾冠の筒部を軸筒の鍔部に挿入し、軸筒と尾冠を相対的に回転させて突起部を鍔部の傾斜に沿って移動させ、尾冠の段部と突起部によって鍔部を挟圧して尾冠を軸筒に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂で成形された筆記具軸筒の尾端開口に尾冠を取り付ける構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具、ことに比較的高級な筆記具の尾端開口には高級感を醸し出すなどのため尾冠が取り付けられることが多い。
【特許文献1】特開2007―144991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軸筒に先口や尾冠を取り付ける場合、軸筒と先口や尾冠の双方にねじ溝を形成して螺着するのが一般的である。そして、軸筒を合成樹脂で成形する場合に、ねじ溝が比較的浅い場合は金型のねじ溝成形部分に潤滑油などを塗ってねじ部のアンダーカットを引き抜いて離型することができるが、ワークである軸筒などに付着した潤滑油を後工程で取り除く必要があり、手間がかかる。
【0004】
一方、高級な万年筆の場合などは深いねじ溝が必要となり、ねじ部のアンダーカットを引き抜くことはできないので、ワークである軸筒などを回転させながら金型から徐々に引き出すようにして離型する。しかし、高級な万年筆の場合などはキャップは軸筒にねじ嵌合することが多く、したがって、軸筒に対して尾冠もねじ嵌合にすると、軸筒の先端と尾端の両方に深いねじ溝を形成する必要があるが、軸筒を回転させながら軸筒の先端も尾端も金型から徐々に引き出すようにして離型するには金型構造が極めて複雑になり、ほとんど不可能ある。
【0005】
そこで本発明は、先端外周面にキャップ螺着用のねじ溝が形成された合成樹脂製の軸筒の尾端開口にねじ溝を形成することなく、尾冠を簡単、かつ確実に取り付けることが可能な取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の尾冠取付構造は、先端外周面にキャップ螺着用のねじ溝が形成された合成樹脂製の軸筒の尾端開口内部に先端側の表面が傾斜した内向きの鍔部を形成し、この鍔部は1ないし複数個の切欠き部を形成し、尾冠の先端に軸筒の鍔部内に挿入される筒部を形成するとともに、この筒部の外周面に切欠き部を通過可能な突起部を形成し、尾冠の筒部を軸筒の鍔部に挿入し、軸筒と尾冠を相対的に回転させて突起部を鍔部先端側の傾斜した面に沿って移動させることにより尾冠の段部と突起部によって軸線方向の巾が大きな部分の鍔部を挟圧して尾冠を軸筒に固定する。
【発明の効果】
【0007】
尾冠の筒部を軸筒の鍔部に挿入し、軸筒と尾冠を相対的に回転させて突起部を鍔部先端側の傾斜した面に沿って移動させることにより尾冠の段部と突起部によって軸線方向の巾が大きな部分の鍔部を挟圧して尾冠を軸筒に固定することができるので、軸筒の尾端開口にねじ溝を形成することなく、簡単、かつ確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面に基づいて発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明を適用した万年筆を示すが、軸筒1の先端にはキャップ3が着脱自在にねじ嵌合され、軸筒1の後端には装飾用の金輪4を介して尾冠2が固定されている。軸筒1は合成樹脂で成形されたものであり、図2に示すように、先端外周面にキャップ3を螺着するためのねじ溝11が形成されている。また、軸筒1の尾端開口1aの内部には内向きの鍔部12が形成されている。そして、鍔部12には、切欠き部13、つまり鍔部12が形成されていない部分がある。図例では切欠き部13の個数は対向する2個であるが、2個に限られるものではない。また、鍔部12の先端側の表面12aは傾斜している。傾斜角度は例えば2°〜5°程度の小さな角度である。つまり、鍔部12の軸線方向の巾は、図2(b)に示すように、一方の切欠き部13から他方の切欠き部13に向けて小さな角度で徐々に大きくなっている。
【0009】
尾冠2も合成樹脂で成形されており、図3に示すように、先端側に2つの段部23、24を介して筒部21が形成されている。筒部21の外径寸法は鍔部12の内径寸法にほぼ等しくて鍔部12内に挿入できるようになっている。また、筒部21の外周面には切欠き部13の数と大きさに対応する突起部22が形成されており、筒部21を鍔部12内に挿入すると突起部22は切欠き部13を通過するようになっている。
【0010】
しかして、図4に示すように、軸筒1の尾端開口1aに金輪4を載せ、軸筒1の切欠き部13と尾冠2の突起部22の位相を合わせて筒部21を鍔部12に挿入する。このとき、尾冠2の段部23から突起部22の表面22aまでの長さは、鍔部12の軸線方向の巾が最も小さい部分の表面12aから金輪4の尾端面までの長さよりもわずかに大きく、かつ巾が最も大きい部分の表面12aから金輪4の尾端面までの長さよりもわずかに小さくなっている。そして、軸筒1と尾冠2を相対的に回転させ、突起部22の表面22aを鍔部12の軸線方向の巾が小さい部分の表面12aから巾が大きい部分の表面12aに沿って移動させると、突起部22の表面22aが鍔部12の表面12aに圧接するので、鍔部12は金輪4を介して尾冠2の段部23と突起部22により挟圧され、簡単に取り付けることができる。また、鍔部12の傾斜角度が小さく、かつ軸筒1と尾冠2がともに合成樹脂で成形されているので、尾冠2を軸筒1に対して強くねじ込んで突起部22の表面22aが鍔部12の表面12aに圧接したときに合成樹脂が幾分変形して突起部22の表面22aが鍔部12の表面12aに食い込み、摩擦抵抗が大きくなって確実に尾冠2を軸筒1に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例を適用した筆記具の正面図である。
【図2】(a)は軸筒の一部断面図、(b)は鍔部の展開説明図、(c)は(a)のA−A線の断面図である。
【図3】(a)は尾冠の断面図、(b)と(c)は位相が90°異なる平面図、(d)は底面図である。
【図4】尾冠の取り付け状態の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1 軸筒
11 ねじ溝
12 鍔部
13 切欠き部
2 尾冠
21 筒部
22 突起部
23 段部
3 キャップ
4 金輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で成形された軸筒の先端外周面にキャップ螺着用のねじ溝が形成され、尾端開口内部に先端側の表面が傾斜した内向きの鍔部が形成され、該鍔部は1ないし複数個の切欠き部を有し、
尾冠の先端に該鍔部内に挿入される筒部が形成されるとともに、該筒部の外周面に該切欠き部を通過可能な突起部が形成され、
尾冠の筒部を軸筒の鍔部に挿入し、軸筒と尾冠を相対的に回転させて突起部を鍔部先端側の傾斜した面に沿って移動させることにより尾冠の段部と突起部によって軸線方向の巾が大きな部分の鍔部が挟圧されて尾冠が軸筒に固定されることを特徴とする筆記具の尾冠取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279801(P2009−279801A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132641(P2008−132641)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)