説明

筆記具の軸筒

【課題】 同一の中筒2に合成樹脂製の外筒3と金属パイプ製の外筒4をいずれもを被せることが可能であり、かつ外筒の径方向のがたつきが生じない2重筒の軸筒を提供する。
【解決手段】 合成樹脂製外軸3の内周面を成形する円柱状の中子型の抜き勾配に起因する両端部の内径の差のほぼ1/4の高さの円環状の内向き突起31を合成樹脂製外軸の内径が大径側の端部内周面に形成する。両端の外径に差のないストレートな中軸2の外周面にこの内向き突起とほぼ同等の高さの円環状の外向き突起21を形成し、合成樹脂製外軸3を中軸2に被せたときに内向き突起31と外向き突起21の頂部が当接ないし極く接近するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具の軸筒に関し、更には中軸の外周に外軸が被せられた2重筒の軸筒に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具は本来の筆記機能の他に意匠的要素も重要視される商品であり、いろいろな意匠要素に富んだ設計が行われるが、意匠に変化を持たせて興趣を高める手法の一つとして、表面に印刷が施された中軸の外周に透明の樹脂で成形された外軸が被せて軸筒を2重筒とし、中軸表面の印刷が少しぼやけたり立体的に見えるようにすることがある。また、全体が合成樹脂で成形された筆記具の中軸の外周にステンレスなどの金属パイプからなる外筒を被せると、合成樹脂と金属の質感の違いで意匠的に変化に富み、また高級感を醸し出すことができる。
【特許文献1】特許第3942164号公報
【0003】
このように、筆記具の軸筒は、中軸の外周に合成樹脂製の外筒を被せたり、金属パイプからなる外筒を被せて2重筒にすることがあるが、部品の共通化の観点から同一の中筒に合成樹脂製外筒と金属パイプ製外筒のいずれもを被せることができるのが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂製外筒を成形するとき、外周面を成形する金型を割り型にすると両端の外径差がないストレートな筒になるが、内周面を成形する中子型は抜き勾配が必要なために両端の内径に差が生じて緩いテーパー状になる。この外筒を外径差がないストレートな中筒に被せると、外筒の内径が大きな方の端部と中筒とのクリアランスが大きくなり、外筒が径方向にがたつきが生じる。したがって、中筒の外周面を外筒の内周面と同じテーパーになるように成形すればこの問題は解決する。
【0005】
一方、金属パイプ製の外筒の内周面は両端の内径に差がないストレート状であるので、外周面にテーパーを付けた中筒に被せると一方の端部のクリアランスが大きくなって径方向にがたつきが生じたり、外筒が中筒外径の大径部分にひっかかって被せることが不可能になる不具合が生じる。
【0006】
そこで本発明は、同一の中筒に合成樹脂製の外筒と金属パイプ製の外筒をいずれもを被せることが可能であり、かつ外筒の径方向のがたつきが生じない2重筒の軸筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明は、中軸の外周に円筒状の外軸が被せられた2重筒の軸筒において、合成樹脂製外軸と金属パイプ製外軸のいずれもが同一の中軸に被せられる筆記具の軸筒であって、合成樹脂製外軸の内周面を成形する円柱状の中子型の抜き勾配に起因する両端部の内径の差のほぼ1/4の高さの円環状の内向き突起を合成樹脂製外軸の内径が大径側の端部内周面に形成し、両端の外径に差のないストレートな中軸の外周面にこの内向き突起とほぼ同等の高さの円環状の外向き突起を形成し、合成樹脂製外軸を中軸に被せたときに内向き突起と外向き突起の頂部が当接ないし極く接近するようにする。
【発明の効果】
【0008】
合成樹脂製外軸を中軸に被せたときに、外軸の内径の大きな端部の内周面に形成された内向き突起と中軸の外周面に形成された外向き突起の頂部が当接ないし極く接近するので、径方向のがたつきを防止することができる。また、中軸の外周面に形成された外向き突起の高さが合成樹脂製外筒の内向き突起と同等であって小さいものであるので、内径がストレートな金属パイプ製外軸を中軸に被せたときに、この外向き突起に圧接した状態で被せることができ、径方向のがたつきも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面に基づいて本発明の発明を実施するための最良の形態を説明する。図1はノック式ボールペンに本発明の軸筒を適用した例を示すが、ノック式ボールペンに限られるものではない。図1において、軸筒1の中筒2は、合成樹脂にて外周面両端の外径に差がないストレートな筒状に成形されたものであり、その先端には合成樹脂で成形された大先5が着脱自由に螺着されていおり、尾端にはクリップ91が一体になった尾栓9が嵌着されている。軸筒1内にはボールペンレフィール6がノックスプリング69にて尾端側に弾発された状態で移動可能に収容されている。
【0010】
レフィール繰出機構は回転子7を有する周知の回転ノック式であり、これを簡単に説明すると、レフィール6の尾端は回転子7に当接している。回転子7の羽根部は中筒2の縦溝23に沿って前後動するが、尾栓9から突出したノック8を押圧すると回転子7は回転力を付与された状態で前進し、回転子7の羽根部が中筒2の縦溝23を抜け出すと少し回転して縦溝23を構成する縦リブの頂部に係止し、レフィール6のペン体61が大先5の先端開口51から突出して筆記可能になる。この状態から再びノック8を押圧すると回転子7が少し回転して羽根部が縦溝23にはまり込み、ノックスプリング69の弾発力により後退してペン体61が大先5内に没入する。
【0011】
軸筒1は2重筒式であり、図1(A)においては、表面に文字や図柄が印刷された中軸2の外周には透明な合成樹脂で成形された外筒3が被せられている。したがって、中筒2の文字や図柄が少し浮き上がったように見えて興趣に富んでいる。また、中筒2の文字や図柄は外筒3により保護され、長期間使用しても剥げ落ちることがない。合成樹脂製外筒3の内周面は中子型の抜き勾配のために両端で内径に差があるが、内径の小さい端部が尾端側になるように被せられている。そして、外軸3の尾端部には、図2に示すように、突部32が形成され、この突部32が中筒2の凹部22にはまりこんでおり、外筒3が中筒2に対して回転しないようにするとともに、レフィール6交換時に大先5を中筒2から取り外したときに外筒3が中筒2から抜け落ちないようになっている。
【0012】
外筒3の先端側、つまり内径の大きな端部の内面に、図3に示すように、円環状の内向き突起31が形成されている。一方、内向き突起31に対面する部分の中筒2にも円環状の外向き突起21が形成されており、内向き突起31と外向き突起21の頂部が当接するか、もしくは極めて接近しており、外筒3が径方向にがたつきが生じないようになっている。ここで、内向き突起31の高さは中子型の抜き勾配に起因する外筒3の両端部の内径の差のほぼ1/4程度であり、内向き突起31の両側は緩やかな斜面になっている。一方、外向き突起21の高さも内向き突起31と同程度であり、外向き突起21の両側も緩やかな斜面になっている。
【0013】
具体的な数値例を挙げると、外筒3の全長が70mmであり、内周面の両端における内径差は0.3mmであり、つまり半径の差は0.15mmである。そして、内向き突起31と外向き突起21の高さは0.3mmの1/4程度であって0.075mm程度である。このため、内向き突起31と外向き突起21の高さの和は0.15mm程度となり、つまり外筒3の内周面両端の半径の差とほぼ等しくなり、中筒2に外筒3を被せたときに内向き突起31と外向き突起21の頂部が当接するか、もしくは極めて接近する。そして、外筒3を成形するとき、中子型には内向き突起31を形成するための凹部が必要になり、型抜きの際はアンダーカットになるが、この程度のアンダーカットであれば型抜きは可能である。
【0014】
図1(B)においては、図1(A)の中軸2と同一の中軸2の外周に、両端の内径に差のないストレートなステンレスパイプからなる外筒4が被せられている。したがって、合成樹脂と金属の質感の違いで意匠的に変化に富み、また高級感を醸し出すことができる。そして、外軸4の尾端部には、図4に示すように、凹陥部41が形成され、この凹陥部41が中筒2の凹部22にはまりこんでおり、外筒4が中筒2に対して回転しないようにするとともに、レフィール6交換時に大先5を中筒2から取り外したときに外筒4が中筒2から抜け落ちないようになっている。また、外筒4の内周面と中筒2の外周面とのクリアランスは0.05mm程度であるが、外筒4を中筒2に被せるとき、図5に示すように、外筒4は高さが0.075mm程度の外向き突起21を容易に乗り越えて被せることができ、径方向のがたつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】図1(a)部の拡大縦断面図と横断面図である。
【図3】図1(b)部の拡大縦断面図である。
【図4】図1(c)部の拡大縦断面図と横断面図である。
【図5】図1(d)部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 軸筒
2 中軸
21 外向き突起
22 凹部
23 縦溝
3 合成樹脂製外筒
31 内向き突起
32 突部
4 金属パイプ製外筒
41 凹陥部
5 大先
51 先端開口
6 レフィール
61 ペン体
69 ノックスプリング
7 回転子
8 ノック
9 尾栓
91 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中軸の外周に円筒状の外軸が被せられた2重筒の筆記具の軸筒において、
合成樹脂製外軸と金属パイプ製外軸のいずれもが同一の中軸に被せられる軸筒であって、合成樹脂製外軸の内周面を成形する円柱状の中子型の抜き勾配に起因する両端部の内径の差のほぼ1/4の高さの円環状の内向き突起が合成樹脂製外軸の内径が大径側の端部内周面に形成され、両端の外径に差のないストレートな中軸の外周面に該内向き突起と略同等の高さの円環状の外向き突起が形成され、合成樹脂製外軸を中軸に被せたときに該内向き突起と外向き突起の頂部が当接ないし極く接近することを特徴とする筆記具の軸筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−214362(P2009−214362A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58923(P2008−58923)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)