説明

筆記具用クリップ

【課題】 簡単に成形でき、外観形状がシンプルであって意匠上も好ましく、しかも布地などに対する圧接力が十分に大きな金属線材製のクリップを提供する。
【解決手段】 弾性に富んだ金属線材をU字状に屈曲して成形され、先端部が軸筒もしくはキャップの表面に圧接するクリップ本体部11と、このクリップ本体部の尾端からクリップ本体部に接するように先端側に屈曲された折り返し部13と、この押し返し部の先端から略直角方向に伸びる固定部15で構成し、固定部を軸筒もしくはキャップに差し込んで固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具の軸筒もしくはキャップに取り付けられるクリップに関するものであり、更には金属線材で成形されたクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具のクリップは、筆記具を洋服のポケットに入れて携帯する場合などに必要な部品であり、また、意匠的にも重要な部品であるが、普及型の筆記具の場合は、そのクリップは合成樹脂にて軸筒もしくはキャップと一体に成形されることが多い。一方、高級筆記具の場合は、金属板で成形されたクリップが合成樹脂や金属で成形された軸筒もしくはキャップに取り付けられることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
合成樹脂にて軸筒もしくはキャップと一体に成形されたクリップは、低コストで簡単に製造できるが、クリップ自体の弾発力がほとんどないために、筆記具を洋服のポケットなどに入れたときに、被挟圧物である布地などに対する圧接力が弱くて不安定である。また、合成樹脂製のクリップは高級感が出しにくく、意匠的にも問題がある。
【0004】
一方、金属板で成形されたクリップは、合成樹脂製のものに比べて布地などに対する圧接力が強く、高級感も出し易いが、クリップ自体の加工に手間を要する。また、強い圧接力が要求される場合は、弾発部材を介在させてその弾発力で布地などに圧接するが、部品点数が多くなり、組立作業が複雑になる不具合がある。
【0005】
このため、金属線材を屈曲して成形するクリップが一部で実用化されている。かかるクリップは外観形状がシンプルであって意匠上も好ましい。そして、金属製のクリップであるにもかかわらず簡単に成形できる利点を有する。しかし、金属線材をU字状に屈曲して成形されたクリップ本体部の尾端をほぼ直角に折り曲げて固定部とし、この固定部を軸筒やキャップに差し込んで固定するものは、布地などに対する圧接力が必ずしも十分ではなかった。
【特許文献1】特開平11−321184公報
【0006】
そこで本発明は、簡単に成形でき、外観形状がシンプルであって意匠上も好ましく、しかも布地などに対する圧接力が十分に大きな金属線材製のクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の筆記具用クリップは、弾性に富んだ金属線材をU字状に屈曲して成形され、先端部が軸筒もしくはキャップの表面に圧接するクリップ本体部と、このクリップ本体部の尾端からクリップ本体部に接するように先端側に屈曲された折り返し部と、この押し返し部の先端から略直角方向に伸びる固定部で構成し、固定部を軸筒もしくはキャップに差し込んで固定する。また、折り返し部は、クリップ本体部の尾端から円弧状屈曲部を介して折り返かえす。
【発明の効果】
【0008】
金属線材を屈曲して成形するので、簡単に成形できて外観形状がシンプルであって意匠上も好ましいが、洋服のポケットなどに差し込んだときに、クリップ本体部が持ち上がり、クリップ本体部先端部の圧接部が軸筒やキャップの表面から離間するが、このとき、クリップ本体部の弾性変形に加えて、クリップ本体部と折り返し部との屈曲部分および折り返し部と固定部との屈曲部分の2箇所の屈曲部で弾性変形して弾発力が生じるので、布地などに対する圧接力が十分に大きくなる。また、折り返し部をクリップ本体部の尾端から円弧状屈曲部を介して折り返かえすと、円弧状屈曲部の線材は捩れてトーションバーの働きをするのでより強い圧接力を得ることができる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明のクリップをボールペンの軸筒に取り付けた例を示すが、軸筒に限られるものでなくキャップであってもよい。図1において、合成樹脂で成形された前軸21の尾端部に中軸22の先端部が着脱自由に螺着されており、中軸22の尾端に後軸23が嵌着されている。そして、後述するクリップ10の固定部15がクッション部材24を介して中軸22と後軸23により挟圧保持されている。
【0010】
前軸21、中軸22および後軸23で構成される軸筒内には、リターンスプリング32で尾端側に弾発されたボールペンレフィール31が前後動可能に収容されており、また、ボールペンレフィール31のペン体31aを前軸21の先端開口21aから出没させる機構が配置されている。この出没機構は、回転子33を使用する周知のダブルノック式の出没機構である。つまり、ボールペンレフィール31の尾端は回転子33に固定された詰め栓37に差し込まれており、復帰スプリング36で尾端側に弾発されたノックボタン35を押圧するとノック部材34が回転子33に回転力を付与した状態で前進させる。そして、回転子33が中軸22内面に形成された溝22aを抜け出すと回転子33は少し回転して係止段22bに係止し、ペン体31aが先端開口21aから突出して筆記可能になる。ペン体31aを先端開口21aから没入されるときもノックボタン35を押圧すればよく、これにより回転子33は少し回転して係止段22bとの係合が解除され、リターンスプリング32の弾発力により回転子33は溝22aに沿って後退するのでペン体31aは先端開口21aから没入する。
【0011】
クリップ10は、図2、図3に示すように、弾性に富んだ金属線材、例えば外径が1.0〜1.2mmφ程度のステンレス線材で成形されている。クリップ本体部11はこの線材でU字状に成形されており、その先端部は鈍角に折曲され、その頂点が軸筒の表面に圧接する圧接部12、12である。クリップ本体部11の尾端は2本の線材がそれぞれ先端とほぼ同じ曲率半径で円弧状に屈曲されて折り返し部13、13がクリップ本体部11に接するように先端側に折り返されている。この円弧状に屈曲された部分が円弧状屈曲部14である。なお、折り返し部13、13は必ずしも円弧状屈曲部14を介して折り返さなくてもよい。この折り返し部13、13は所定位置でほぼ直角に屈曲されて固定部15、15が続いており、その屈曲部がL字状屈曲部16である。そして、固定部15、15の先端部は円弧状になっている。この固定部15が図1に示すように軸筒に差し込まれ、前述のとおり、固定部15がクッション部材24を介して中軸22と後軸23により挟圧保持されている。
【0012】
このように、このクリップ10は、金属線材を屈曲して成形するので、簡単に成形できて外観形状がシンプルであり、意匠上も好ましい。そして、洋服のポケットなどに差し込んだときに、クリップ本体部11が持ち上がり、圧接部12が軸筒やキャップの表面から離間する。このとき、クリップ本体部11も少し弾性変形して圧接力が生じるが、クリップ本体部11と折り返し部13との屈曲部分である円弧状屈曲部14および折り返し部13と固定部15との屈曲部分であるL字状屈曲部16が弾性変形してそれぞれの部分で弾発力が生じる。ことに円弧状屈曲部14は線材が捩れてトーションバーの働きをするので、布地などに対する圧接力が十分に大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】(a)はクリップの平面図、(b)は側面図、(c)は要部の背面図である。
【図3】クリップの正面図である。
【符号の説明】
【0014】
10 クリップ
11 クリップ本体部
12 圧接部
13 折り返し部
14 円弧状屈曲部
15 固定部
16 L字状屈曲部
21 前軸
22 中軸
23 後軸
31 ボールペンレフィール
33 回転子
34 ノック部材
35 ノックボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性に富んだ金属線材をU字状に屈曲して成形され、先端部が軸筒もしくはキャップの表面に圧接するクリップ本体部と、該クリップ本体部の尾端から該クリップ本体部に接するように先端側に屈曲された折り返し部と、該押し返し部の先端から略直角方向に伸びる固定部からなり、該固定部が軸筒もしくはキャップに差し込まれた状態で固定されることを特徴とする筆記具用クリップ。
【請求項2】
前記折り返し部は、該クリップ本体部の尾端から円弧状屈曲部を介して折り返されたことを特徴とする請求項1記載の筆記具用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−290266(P2007−290266A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121579(P2006−121579)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】