説明

筆記具

【課題】 装飾体が取り付けられたボールチェーンをクリップの尾端部に、工具を必要とせずに容易に取り付けることが可能であり、取り付けた後に簡単には脱落することのない装飾体が付設された筆記具を提供する。
【解決手段】 クリッ2裏面の連結部21よりも尾端側に、軸筒1またはキャップの表面との隙間がボールチェーン3のボール31の径より小さな突部22を形成し、突起の軸線方向の幅は、ボールチェーンの隣接するボールとボールの間の谷間状の空間が通過不可能な厚さとし、突起と軸筒またはキャップの表面との隙間にあらかじめループ状に連結されたボールチェーンを筆記具の軸線方向に圧入するとクリップが弾性変形してボールチェーンが取り付けられるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスコットやキャラクターなどを模した装飾体が取り付けられた紐体がクリップに連結された筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記具の興趣を増すために、小さな人形や動物などのマスコットやキャラクターなどを模した装飾体が付設されることがある。つまり、この装飾体を取り付けたループ状に連結されたチェーンなどの紐体をクリップの尾端側に取り付ける。紐体をクリップに取付つける構造はいろいろな方法が提案され、実用化されているが、いずれにしても部品点数が少なくて工具などが不要であり、簡単な操作で取り付け可能であることが望ましい。また、クリップに取り付けた紐体がクリップなどから簡単には脱落しないようにする必要がある。
【特許文献1】実用新案登録公報第3058134号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小さな中空のボールを短いジョイント棒で首振り可能に連結したボールチェーンは、見た目に重量感や高級感があるので装飾体を取り付ける紐体として好まれる。図5と図6は、ボールチェーンをクリップの尾端側に取り付ける従来例を示すが、図例はノック式ボールペンの軸筒1の尾端部にクリップ2が連結部21を介して一体に成形されており、連結部21には取り付け孔9が設けられている。一方、装飾体(図示せず)が取り付けられたボールチェーン3の一端にジョイント部4が取り付けられている。このジョイント部4は両端が袋状をしており、ボールチェー3の一端のボールを中央の切欠き部から差し込んでから端部の袋状部に引き寄せてかしめることにより固定されている。そして、図6に示すように、ボールチェー3を取り付け孔9に通し、他端のボールをジョイント部4の中央の切欠き部から差し込んでから他端の袋状部に引き寄せて工具でかしめ、ボールチェーン3をループ状にしてクリップ2に取り付ける。
【0004】
ここで、ボールチェーン3の長さは例えば3cm程度と短く、このため、装飾体が取り付けられたこのボールチェーン3を取り付け孔9に通してから他端をジョイント部4でかしめて円環状にするのは操作が困難であって手間を要し、また、かしめるための工具も必要とする。そこで本発明は、ボールチェーンである紐体をクリップの尾端部に、工具を必要とせずに容易に取り付けることが可能であり、取り付けた後に簡単には脱落することのない装飾体が付設された筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明は、合成樹脂製の軸筒またはキャップの表面に連結部を介して一体に成形されたクリップの尾端部に装飾体が取り付けられたループ状の紐体が連結された筆記具において、紐体はボールが短いジョイント棒で首振り可能に連結されたボールチェーンであり、クリップ裏面の連結部よりも尾端側に、軸筒またはキャップの表面との隙間がボールチェーンのボールの径より小さな突部を形成して、この突起、クリップの裏面、軸筒またはキャップの表面、および連結部で抱持空間を画定し、かつ突起の軸線方向の幅は、ボールチェーンの隣接するボールとボールの間の谷間状の空間が通過不可能な厚さとし、突起と軸筒またはキャップの表面との隙間にあらかじめループ状に連結されたボールチェーンを筆記具の軸線方向に圧入するとクリップが弾性変形してボールチェーンが抱持空間に抱持されるようにする。
【発明の効果】
【0006】
このように、クリップの裏面に形成された突起と軸筒またはキャップの表面との隙間に軸線と直交する姿勢であらかじめループ状に連結されたボールチェーンを圧入するとクリップが弾性変形してボールチェーンが抱持空間に抱持されるのでワンタッチで取り付けることができる。また、ボールチェーンは隣接するボールとボールの間に比較的大きな谷間状の空間が存在するが、突起の筆記具の軸線方向の幅は、ボールチェーンのこの谷間状の空間が通過不可能な厚さであるので、ボールチェーンが筆記具の軸線に直交する方向に引っ張られても抜け落ちることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1において、マスコットやキャラクターなどを模した装飾体(図示せず)が取り付けられる紐体は、外径が1mm程度の小さなボール31が短いジョイント棒32で首振り可能に連結されたボールチェーン3であり、あらかじめループ状に連結されている。筆記具は例えばノック式ボールペンであり、合成樹脂製の軸筒1の尾端部表面にクリップ2が連結部21を介して一体に形成されている。この軸筒1はキャップであってもよい。そして、クリップ2裏面の連結部21より尾端側に突起22が形成されている。突起22の表面は尾端側が円弧状であり、先端側がクリップ2の裏面に対してほぼ直角になっている。そして、突起22と軸筒1の表面との隙間はボールチェーン3のボール31の外径よりも少し小さくなっている。このように、突起22、クリップ2の裏面、連結部21、軸筒1の表面でボールチェーン3を抱持するための抱持空間5が画定されている。
【0008】
図1に示す状態から筆記具の軸線に直交する姿勢のボールチェーン3を筆記具の軸線方向に圧入するが、突起22の尾端側の表面が円弧状であるので圧入しやすく、圧入の過程でボール31によってクリップ2が弾性変形して突起22と軸筒1の表面との隙間が拡開し、図2に示すように,ボールチェーン3が突起22を乗り越えてほぼ3個のボール31が抱持空間5に抱持されるので、ワンタッチで極めて簡単にボールチェーン3をクリップ2に取り付けることができる。そして、突起22の先端側がクリップ2の裏面に対してほぼ直角になっているので、ボールチェーン3が一旦抱持空間5に抱持されると、ボールチェーン3に筆記具の尾端側に引っ張る力が作用しても簡単には脱落しない、
【0009】
次に、図3に示すように、ループ状のボールチェーン3に筆記具の軸線に直交する方向引っ張る力が働いたときは、図4に示すように、突起22の軸線方向の幅は、ボールチェー3の隣接するボール31とボール31の間の谷間状の空間が通過不可能な厚さになっているので、突起22とボール31は当接部22aにおいて当接し、簡単には脱落しないようになっている。つまり、ボールチェーン3のいずれの方向に引っ張る力が働いても簡単には脱落しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明実施例のボールチェーン取り付け前の(A)側面図と(B)正面図である。
【図2】本発明実施例のボールチェーン取り付け後の(A)側面図と(B)正面図である。
【図3】ボールチェーンに筆記具の軸線の直交方向に引っ張られた状態の(A)側面図と(B)正面図である。
【図4】図4の要部の説明図である。
【図5】従来例のボールチェーン取り付け前の説明図である。
【図6】従来例のボールチェーン取り付け後の説明図である。
【符号の説明】
【0011】
1 軸筒
2 クリップ
21 連結部
22 突起
22a 当接部
3 ボールチェーン
31 ボール
32 ジョイント棒
4 ジョイント部
5 抱持空間
9 取り付け孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の軸筒またはキャップの表面に連結部を介して一体に成形されたクリップの尾端部に装飾体が取り付けられたループ状の紐体が連結された筆記具において、
前記紐体はボールが短いジョイント棒で首振り可能に連結されたボールチェーンであり、前記クリップ裏面の該連結部よりも尾端側に、軸筒またはキャップの表面との隙間がボールチェーンのボールの径より小さな突部が形成されて、該突起、クリップの裏面、軸筒またはキャップの表面、および該連結部で抱持空間が画定され、かつ前記突起の筆記具の軸線方向の幅は、ボールチェーンの隣接するボールとボールの間の谷間状の空間が通過不可能な厚さであり、
前記突起と軸筒またはキャップの表面との隙間にあらかじめループ状に連結されたボールチェーンを筆記具の軸線方向に圧入するとクリップが弾性変形してボールチェーンが該抱持空間に抱持されることを特徴とする筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−126436(P2008−126436A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311083(P2006−311083)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】