筆記具
【課題】ローコストにして体裁を整えることができ、かつ人目を引くような加飾手段を備えた筆記具を提供すること。
【解決手段】先軸1に形成された鍔部1aを基準にして加飾シール16が、先軸1の表面に巻き付けられるようにして貼着され、貼着された加飾シール16を覆うようにして、透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リング15が装着される。さらに先軸1に貼着された前記加飾シール16の軸方向の前端部を覆うようにして、グリップ部材14が装着される。加飾シール16はグリップ部材14にオーバーラップされることで、透明リング15を介して特定な印刷がなされた加飾シール16を全面にわたって視認することができ、これにより体裁の整った加飾手段を提供することができる。
【解決手段】先軸1に形成された鍔部1aを基準にして加飾シール16が、先軸1の表面に巻き付けられるようにして貼着され、貼着された加飾シール16を覆うようにして、透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リング15が装着される。さらに先軸1に貼着された前記加飾シール16の軸方向の前端部を覆うようにして、グリップ部材14が装着される。加飾シール16はグリップ部材14にオーバーラップされることで、透明リング15を介して特定な印刷がなされた加飾シール16を全面にわたって視認することができ、これにより体裁の整った加飾手段を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は筆記具の軸筒に施される加飾手段の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具は意匠的な要素が重要視される商品であり、軸筒もしくはキャップの外周面に飾りリングなどを取り付けて高級感を強調することがしばしば行われる。この飾りリングとしては、ステンレスや真ちゅうなどの金属素材を成形したものが利用され、この飾りリングの表面にさらに特定な被覆層を被覆するなどして、樹脂素材により成形された軸筒やキャップに対して質感を際立たせる工夫がなされている(例えば特許文献1参照)。
加えて、飾りリングの表面に模様などを刻印するなどして、さらに印象を強調させるなどの手段も採用されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
一方、販売個数の多い主力商品となる筆記具は、比較的低価格帯の製品であり、この低価格帯の筆記具においては前記した飾りリングやこれに刻印を施したものを用いることはコストの面で困難となる。
しかしながら、高級感を醸し出すようなデザイン、もしくは人目を引くような加飾手段を施すことで、これが店頭などにおいて利用者が製品を選択する上で大きなウエイトを占めることになり、ローコストで前記工夫がなされることは重要な課題となる。
【0004】
ところで、本件出願人は筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を除々に一方向に回転させることができる回転駆動機構を備えたシャープペンシルについて先に提案しており、このシャープペンシルにおいて筆記動作に伴い、回転駆動機構が回転する様子を視認することができる表示手段を形成した構成についても提案している(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−96898号公報
【特許文献2】特開2003−300394号公報
【特許文献3】特開2011−56965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記特許文献3に開示されたように、筆記動作に伴い回転駆動機構が回転する様子を表示することができる表示手段にも好適に応用が可能であり、ローコストにして体裁を整えることができ、かつ人目を引くような加飾手段を備えた筆記具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる筆記具は、軸筒の表面に巻き付けるようにして貼着され、表面が加飾面なされた加飾シールと、前記加飾シールの軸方向の一端部を覆うようにして、前記軸筒の表面に装着された円筒状に形成された不透明部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合、透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リングが、前記不透明部材に対して軸方向に接して装着され、前記透明リングによって前記加飾シールを覆った構成にされていることが望ましい。
【0009】
そして、好ましい実施の形態においては、透明リングにおける前記不透明部材に接する位置には、透明リングの外径よりも小径に成形された同軸状の小径部が一体に備えられ、前記不透明部材における前記透明リングに接する内側面には、前記透明リングに成形された同軸状の小径部を収容する内径を大きくした収容空間が形成され、前記透明リングに成形された同軸状の小径部が、前記不透明部材の内側における前記収容空間内に埋設された構成になされる。
【0010】
また好ましくは、円筒状に形成された前記不透明部材が、弾性素材により成形されたグリップ部材によって構成される。
【0011】
一方この発明は、筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を一方向に回転させることができる回転駆動機構を備えた筆記具に好適に採用することができ、前記加飾シールに形成された透明部分もしくは加飾シールに施された抜き孔を介して、前記回転駆動機構による回転状態が視認できるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
前記したこの発明にかかる筆記具によると、表面が加飾面なされた加飾シールが軸筒の表面に巻き付けられるようにして貼着され、この加飾シールの軸方向の一端部を覆うようにして、例えばグリップ部材を構成する円筒状に形成された不透明部材が装着された構成にされる。この場合、前記加飾シールの軸方向の幅を、軸筒の外周面に施される加飾手段の幅よりも若干大きなサイズに予め選定しておくことで、貼着された加飾シールの端部をグリップ部材の端部によって確実に覆うことができる。
これにより、軸筒への加飾シールの貼着作業の作業性を改善することができ、体裁を整えることができる。
【0013】
加えて、グリップ部材に接するようにして加飾シールを覆う透明リングを軸筒に装着した構成を採用することで、不透明なグリップ部材に隣接して透明なリングを透過して加飾シールを立体的に視ることができるなど、高級感に富んだ軸筒の加飾手段を提供することができる。
【0014】
さらに、筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を回転させることができる回転駆動機構を備えた筆記具に採用し、前記した加飾シールに透明部分もしくは加飾シールに抜き孔を施した構成にすることで、前記加飾シールを介して前記回転駆動機構の回転状態を、例えば色の変化などにより視認することができるなど、独自の加飾効果を備えた筆記具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明をシャープペンシルに採用した例について、その外観構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示すシャープペンシルの前半部を示した断面図である。
【図3】同じく後半部を示した断面図である。
【図4】軸筒に加飾シールを貼着した状態を示す部分断面図および斜視図である。
【図5】加飾シールを覆うように透明リングを装着した状態を示す部分断面図および斜視図である。
【図6】さらにグリップ部材を装着して組み立てられた状態を示す部分断面図および斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明にかかる加飾手段を備えた筆記具の一例について、これをシャープペンシルに採用した例を先に説明し、この加飾手段の詳細な構成について後で説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0017】
先ず、図1〜図3はシャープペンシルの全体構成を説明するものであり、軸筒を構成する先軸1の先端部には、口金2が螺合されることで、先軸1に対して着脱可能に取り付けられている。そして、前記先軸1および後述する後軸の軸芯に沿って筒状の芯ケース3が収容されており、この芯ケース3の先端部には短軸の芯ケース継手4が取り付けられ、前記芯ケース継手4を介して真ちゅう製のチャック5が連結されている。
【0018】
前記チャック5内には、その軸芯に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、また先端部が複数に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具6内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具6は前記チャック5の周囲を覆うようにして配置された中継パイプ7の先端部内面に装着されている。
なお、この中継パイプ7の後端部は筆記圧を利用して筆記芯(替え芯)を回転させる後述する回転駆動機構に接続されている。
【0019】
前記中継パイプ7の前端部には、前記した口金2内に収容されてその前端部が口金2より突出される円筒状のスライダー8が中継パイプ7に対して嵌合されることで着脱可能に取り付けられ、さらにスライダー8の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ9がパイプ保持具10を介して取り付けられている。
また、前記スライダー8の内周面におけるパイプ保持具10の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が収容されている。
【0020】
前記した構成により、芯ケース3に続くチャック5内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ9に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。そして、前記した中継パイプ7と芯ケース継手4との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0021】
すなわち、前記チャックスプリング13は、その前端部が中継パイプ7の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手4の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の作用により、前記チャック5は中継パイプ7内を後退してその先端部がリング状の締め具6内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0022】
軸筒を構成する前記した先軸2には例えばゴムなどの弾性素材により成形されたグリップ部材14が先軸2を取り巻くようにして装着されている。このグリップ部材14を先軸2に装着するにあたっては、先に飾りリングとして機能する透明な樹脂素材により形成された透明リング15が先軸2の先端部側から装着される。
この透明リング15は、先軸に一体に成形された環状の鍔部1aによって位置決めされ、続いて前記グリップ部材14が同方向から先軸2を取り巻くようにして装着される。その後に、前記した口金2が先軸1の前端部に螺合されることで、前記透明リング15およびグリップ部材14が軸方向に抜け出ることなく、前記先軸1に取り付けられる。
【0023】
前記した飾りリングとして機能する透明リング15は、予め先軸1に巻回されるようにして貼り付けられている加飾シール16を覆い、このシール16の周面が視認できるように構成されている。
この加飾シール16には、金もしくは銀色などの光沢のある印刷が施され、その適宜の位置には印刷が施されない透明部分が形成されている。そして、この透明部分および透明な樹脂素材により成形された前記先軸1を透視して、内部の中継パイプ7の一部が視認できるように構成されている。これにより、後述する回転駆動機構によって中継パイプ7が回転駆動される様子を、透明リング15を介して確認することができる。
なお、前記透明リング15および加飾シール16等により形成される加飾手段の詳細な構成については、後で説明する。
【0024】
前記した先軸1の後端部には、軸筒を構成する後軸18の前端部内面が嵌合されて取り付けられており、この後軸18の前半部分には図3に示されているように、ユニット化された回転駆動機構21が収容されている。
この回転駆動機構21には前記したとおり中継パイプ7の後端部が接続されており、この中継パイプ7は筆記動作に基づく筆記芯の後退および前進動作(クッション動作)を前記チャック5を介して受けて、回転駆動機構21に伝達させると共に、クッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21による回転運動を、前記中継パイプ7を介して前記チャック5に伝達させるように作用する。
これにより、チャック5に把持された図示せぬ筆記芯は、筆記動作に伴い前記回転駆動機構21による回転運動を受けることになる。
【0025】
なお、前記回転駆動機構21は、その前端部において前記先軸1との間に介在された軸スプリング22によって後方に付勢されている。また回転駆動機構21の後端部は前記後軸18内の縮径により形成された段部18aに、前記軸スプリング22の付勢力により当接している。
すなわち、この実施の形態においては、ユニット化された前記回転駆動機構21は後軸18内の段部18aに当接することによる摩擦により回動が規制され、前記したクッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21による回転運動を、前記チャック5側に伝達させるように作用する。
【0026】
前記回転駆動機構21には円筒状に形成された回転子24が具備されており、前記した中継パイプ7は、回転駆動機構21の前端部において、前記回転子24の内周面に嵌合することで結合されている。
【0027】
前記回転子24は、その前端部付近が若干径を太くした太径部になされ、その太径部の一端面(後端面)には第1のカム面24aが形成されており、太径部の他端面(前端面)には第2のカム面24bが形成されている。一方、前記回転子24の後端部側を覆うようにして円筒状の上カム形成部材25が、前記回転子24を回動可能に支持するように配置されており、前記上カム形成部材25の前端部外周には、円筒状の下カム形成部材26が、上カム形成部材25に嵌合されて取り付けられている。
【0028】
そして、前記回転子24における第1のカム面24aに対峙する上カム形成部材25の前端面に、第1の固定カム面25aが形成されている。また、前記回転子24における第2のカム面24bに対峙する下カム形成部材26の前端部内面に、第2の固定カム面26aが形成されている。
【0029】
前記した上カム形成部材25の後端部側には、シリンダー部材27が上カム形成部材25に対して嵌め込まれており、このシリンダー部材27内には円筒状に形成され軸方向に移動可能なトルクキャンセラー28が配置され、当該トルクキャンセラー28の内周面前端部と前記シリンダー部材27の内周面後端部との間にはコイル状のクッションスプリング29が装着されている。
前記クッションスプリング29は、トルクキャンセラー28を前方に付勢するように作用し、この付勢力を受けた前記トルクキャンセラー28に押されて前記回転子24は前方に向かうように作用する。
【0030】
以上のとおり前記した回転駆動機構21は、その中央部が前記芯ケース3を通す空間部になされて芯ケース3とは隔離されており、回転駆動機構21は前記した符号25〜29で示す各部材によりユニット化されている。
【0031】
前記した後軸18の後半部分、すなわち回転駆動機構21の後部側にはノック棒31が軸方向に摺動可能に装着されている。このノック棒31の前端部は環状の楔形突出部31aになされており、この楔形突出部31aが後軸18内に形成された環状突起18bを乗り越えて取り付けられている。
そして、環状突起18bとノック棒31との間にはコイル状のノック棒スプリング32が配置され、このスプリング32によって、前記ノック棒31を後軸18の後端部側に向けて付勢するように構成されている。
【0032】
また、ノック棒31の中央よりも若干後端部寄りには、筆記芯の補給孔31cを備えた当接部31bが形成されており、さらにこのノック棒31の後端部には、消しゴム33が着脱可能に装着されると共に、前記消しゴム33を覆うノックカバー34がノック棒31の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
なお、前記ノック棒31の当接部31bと、前記した芯ケース3の後端部とは所定の間隔をもって対峙した構成にされている。この構成によると、筆記による前記したクッション動作によりチャック5および芯ケース3が若干後退しても、芯ケース3の後端部が前記ノック棒31の当接部31bに衝突することはなく、前記回転駆動機構21による回転動作に障害を与えるのを防止することができる。
【0034】
前記ノック棒31に対して着脱可能に取り付けられた前記ノックカバー34には、このノックカバー34の側壁面に円盤状の突起部34aが一体に形成されている。そして、円盤状突起部34aの円盤面には、円形状にして中央部が若干凸面状になされ前記ノックカバー34とは異色の樹脂盛りシール35が装着されている。なお、前記後軸18の後端部における周方向の一部には、軸方向に切欠き溝18cが形成されており、前記円盤状突起部34aが前記切欠き溝18cに沿って配置されることで、前記ノックカバー34のノック操作が可能となるように構成されている。
前記ノックカバー34に形成された円盤状突起部34aは、前記樹脂盛りシール35により飾りの機能を果たすと共に、シャープペンシルの転がり止めとしての機能も果たすものとなる。
【0035】
以上のように構成されたシャープペンシルにおける前記した回転駆動機構21によると、チャック5が筆記芯を把持した状態で、前記回転子24は中継パイプ7を介してチャック5と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記クッションスプリング29の作用により、前記トルクキャンセラー28を介して回転子24は前方に付勢されている。
【0036】
一方、シャープペンシルを使用した場合、すなわち先端パイプ9から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック5は前記クッションスプリング29の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転子24も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転子24に形成された第1のカム面24aは前記第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされる。
【0037】
前記第1のカム面24aは周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第1の固定カム面25aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、対峙した状態の第1カム面24aと固定カム面25aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように第1のカム面24aが第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされることによって、回転子24は第1カム面24aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0038】
一方、前記第2のカム面24bも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第2の固定カム面26aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、前記したように第1のカム面24aが第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の第2カム面24bと第2の固定カム面26aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0039】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッションスプリング29の作用により回転子24は軸方向に僅かに前進し、回転子24に形成された第2カム面24bが、第2の固定カム面26aに噛み合う。これにより回転子24は第2カム面24bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0040】
以上のとおり、前記したシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転子24の軸方向への往復運動に伴って、回転子24は第1カム面24aおよび第2カム面24bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記した中継パイプ7およびチャック5を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0041】
なお、前記した回転駆動機構21においては、回転子24とクッションスプリング29との間に、トルクキャンセラー28が介在されている。このトルクキャンセラー28は前記回転子24の後端部との間ですべりを発生させて、回転子26の回転運動がクッションスプリング29側に伝達されるのを阻止するように作用する。これにより、スプリング29の捩じれ戻り(バネトルク)が発生することで、回転子24の回転動作に障害を与えるという問題を解消させることができる。
【0042】
また、この構成によるシャープペンシルにおいては、ノックカバー34をノック操作することで、ノック棒の当接部31bが芯ケース3を前方に押し出し、中継パイプ7に取り付けられたスライダー8の一部が口金2内に当接して、その前進が阻まれる。このため、チャック5の先端部が締め具6から相対的に突出してチャック5による筆記芯の把持状態が解除される。そして、前記ノック操作の解除により、チャックスプリング13の作用により芯ケース3およびチャック5は軸筒内において後退する。
【0043】
この時、筆記芯は保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により保持されており、この状態でチャック5が後退してその先端部が前記締め具6内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。すなわち、ノックカバー34のノック操作の繰り返しによりチャック5が前後動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック5から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0044】
図4〜図6は、前記した先軸1に加飾シール16を貼着すると共に、貼着された加飾シール16を覆うように透明リング15を装着してなる加飾手段の構成を説明するものである。なお、図4〜図6における各(A)は、軸筒(先軸1)に加飾シール16を貼着し、透明リング15およびグリップ部材14を装着する順序を部分断面図で示したものであり、図4〜図6における各(B)は、それぞれの状態におけるシャープペンシルの前半部を、斜視図により示したものである。
【0045】
図4に示すように透明な樹脂素材により成形された先軸1には、前記したとおり環状の鍔部1aが一体に成形されている。この鍔部1aには、軸方向の前側に若干突出するようにして、鍔部1aよりも外径を細くする環状の段部1bが形成されている。
そして、環状の段部1bを基線として予め短冊状に形成された加飾シール16が、先軸1の表面に巻き付けられるようにして貼着される。
この加飾シール16は、透明な樹脂シートにおける表面となる加飾面に例えば金色もしくは銀色などの光沢のある印刷が施されている。なお、この実施の形態においては、前記したとおり適宜の位置に印刷が施されない透明部分が形成されている。
【0046】
次に図5に示すように、前記加飾シール16を覆うようにして、透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リング15が装着され、前記透明リング15によって前記加飾シール16を覆うようになされる。
この場合、前記透明リング15における前記環状の段部1bに対向する部分には、内径を大きくした嵌合部15bが形成されており、透明リング15における嵌合部15bが環状の段部1bに嵌め合わされることで、透明リング15は先軸1に対して同軸状に取り付けることができる。
【0047】
続いて図6に示すように、先軸1に貼着された前記した加飾シール16の軸方向の前端部を覆うようにして、不透明部材としてのグリップ部材14が装着される。
この場合、前記した透明リング15における前記グリップ部材14に接する位置には、透明リング15の外径よりも小径に成形された同軸状の小径部15aが一体に形成されている。一方、前記グリップ部材14における前記透明リング15に接する内側面には、前記透明リング15の小径部15aを収容する内径を大きくした収容空間14aが形成されている。
【0048】
この構成により、前記した透明リング15に成形された同軸状の小径部15aが、前記不透明なグリップ部材14の内側に形成された収容空間14a内に埋設される。
そして、グリップ部材14が装着された後に、前記したとおり口金2を先軸1の前端部に螺合することで、前記透明リング15およびグリップ部材14は軸方向に抜け出ることなく、前記先軸1に取り付けられる。
【0049】
図6に示されているように、先軸1に貼着された前記加飾シール16の軸方向の前端部は、不透明なグリップ部材14の端部によって覆うことができるように、前記加飾シール16のサイズが予め定められている。すなわち、加飾シール16はグリップ部材14とオーバーラップするように、そのサイズが選定されている。
これにより、軸筒への加飾シールの貼着作業の作業性を改善することができ、また透明リング15を介して特定な印刷がなされた加飾シール16を全面にわたって視認することができるなど、体裁の整った加飾手段を提供することができる。
【0050】
加えて、この実施の形態においては前記したとおり、加飾シール16の適宜の位置に印刷が施されない透明部分が形成されているので、前記先軸1を透視して、内部の中継パイプ7の一部を視ることができる。したがって、中継パイプ7に例えば周方向に色変わりするシートなどを貼り付けておくことで、前記した回転駆動機構21の回転状態を、色の変化などにより視認することができるなど、独自の加飾効果を備えた筆記具を提供することが可能となる。
この場合、加飾シール16に印刷が施されない透明部分を形成させる構成に代えて、加飾シール16の適宜の位置に抜き孔を形成した構成にしても、同様な作用効果を得ることができる。
【0051】
なお、前記した実施の形態においては、先軸1に貼着された加飾シール16の軸方向の前端部側を、グリップ部材14によってオーバーラップするようにして覆った構成にされている。しかし、加飾手段の配置箇所に応じて、前記グリップ部材14に代えて不透明部材を用い、加飾シール16の軸方向の前端部側をオーバーラップするようにして覆った構成にしても、同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
また以上は、筆記芯の回転駆動機構を備えたシャープペンシルに対してこの発明にかかる加飾手段を施した例を示したが、この発明にかかる前記した加飾手段は、他の筆記具に対しても同様に適用することができ、同様の作用効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 先軸(軸筒)
2 口金
7 中継パイプ
8 スライダー
9 先端パイプ
14 グリップ部材(不透明部材)
14a 収容空間
15 透明リング
15a 小径部
15b 嵌合部
16 加飾シール
17 中継パイプ
18 後軸(軸筒)
21 回転駆動機構
31 ノック棒
32 ノック棒スプリング
34 ノックカバー
35 樹脂盛りシール
【技術分野】
【0001】
この発明は筆記具の軸筒に施される加飾手段の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具は意匠的な要素が重要視される商品であり、軸筒もしくはキャップの外周面に飾りリングなどを取り付けて高級感を強調することがしばしば行われる。この飾りリングとしては、ステンレスや真ちゅうなどの金属素材を成形したものが利用され、この飾りリングの表面にさらに特定な被覆層を被覆するなどして、樹脂素材により成形された軸筒やキャップに対して質感を際立たせる工夫がなされている(例えば特許文献1参照)。
加えて、飾りリングの表面に模様などを刻印するなどして、さらに印象を強調させるなどの手段も採用されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
一方、販売個数の多い主力商品となる筆記具は、比較的低価格帯の製品であり、この低価格帯の筆記具においては前記した飾りリングやこれに刻印を施したものを用いることはコストの面で困難となる。
しかしながら、高級感を醸し出すようなデザイン、もしくは人目を引くような加飾手段を施すことで、これが店頭などにおいて利用者が製品を選択する上で大きなウエイトを占めることになり、ローコストで前記工夫がなされることは重要な課題となる。
【0004】
ところで、本件出願人は筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を除々に一方向に回転させることができる回転駆動機構を備えたシャープペンシルについて先に提案しており、このシャープペンシルにおいて筆記動作に伴い、回転駆動機構が回転する様子を視認することができる表示手段を形成した構成についても提案している(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−96898号公報
【特許文献2】特開2003−300394号公報
【特許文献3】特開2011−56965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記特許文献3に開示されたように、筆記動作に伴い回転駆動機構が回転する様子を表示することができる表示手段にも好適に応用が可能であり、ローコストにして体裁を整えることができ、かつ人目を引くような加飾手段を備えた筆記具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる筆記具は、軸筒の表面に巻き付けるようにして貼着され、表面が加飾面なされた加飾シールと、前記加飾シールの軸方向の一端部を覆うようにして、前記軸筒の表面に装着された円筒状に形成された不透明部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合、透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リングが、前記不透明部材に対して軸方向に接して装着され、前記透明リングによって前記加飾シールを覆った構成にされていることが望ましい。
【0009】
そして、好ましい実施の形態においては、透明リングにおける前記不透明部材に接する位置には、透明リングの外径よりも小径に成形された同軸状の小径部が一体に備えられ、前記不透明部材における前記透明リングに接する内側面には、前記透明リングに成形された同軸状の小径部を収容する内径を大きくした収容空間が形成され、前記透明リングに成形された同軸状の小径部が、前記不透明部材の内側における前記収容空間内に埋設された構成になされる。
【0010】
また好ましくは、円筒状に形成された前記不透明部材が、弾性素材により成形されたグリップ部材によって構成される。
【0011】
一方この発明は、筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を一方向に回転させることができる回転駆動機構を備えた筆記具に好適に採用することができ、前記加飾シールに形成された透明部分もしくは加飾シールに施された抜き孔を介して、前記回転駆動機構による回転状態が視認できるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
前記したこの発明にかかる筆記具によると、表面が加飾面なされた加飾シールが軸筒の表面に巻き付けられるようにして貼着され、この加飾シールの軸方向の一端部を覆うようにして、例えばグリップ部材を構成する円筒状に形成された不透明部材が装着された構成にされる。この場合、前記加飾シールの軸方向の幅を、軸筒の外周面に施される加飾手段の幅よりも若干大きなサイズに予め選定しておくことで、貼着された加飾シールの端部をグリップ部材の端部によって確実に覆うことができる。
これにより、軸筒への加飾シールの貼着作業の作業性を改善することができ、体裁を整えることができる。
【0013】
加えて、グリップ部材に接するようにして加飾シールを覆う透明リングを軸筒に装着した構成を採用することで、不透明なグリップ部材に隣接して透明なリングを透過して加飾シールを立体的に視ることができるなど、高級感に富んだ軸筒の加飾手段を提供することができる。
【0014】
さらに、筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を回転させることができる回転駆動機構を備えた筆記具に採用し、前記した加飾シールに透明部分もしくは加飾シールに抜き孔を施した構成にすることで、前記加飾シールを介して前記回転駆動機構の回転状態を、例えば色の変化などにより視認することができるなど、独自の加飾効果を備えた筆記具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明をシャープペンシルに採用した例について、その外観構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示すシャープペンシルの前半部を示した断面図である。
【図3】同じく後半部を示した断面図である。
【図4】軸筒に加飾シールを貼着した状態を示す部分断面図および斜視図である。
【図5】加飾シールを覆うように透明リングを装着した状態を示す部分断面図および斜視図である。
【図6】さらにグリップ部材を装着して組み立てられた状態を示す部分断面図および斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明にかかる加飾手段を備えた筆記具の一例について、これをシャープペンシルに採用した例を先に説明し、この加飾手段の詳細な構成について後で説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0017】
先ず、図1〜図3はシャープペンシルの全体構成を説明するものであり、軸筒を構成する先軸1の先端部には、口金2が螺合されることで、先軸1に対して着脱可能に取り付けられている。そして、前記先軸1および後述する後軸の軸芯に沿って筒状の芯ケース3が収容されており、この芯ケース3の先端部には短軸の芯ケース継手4が取り付けられ、前記芯ケース継手4を介して真ちゅう製のチャック5が連結されている。
【0018】
前記チャック5内には、その軸芯に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、また先端部が複数に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具6内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具6は前記チャック5の周囲を覆うようにして配置された中継パイプ7の先端部内面に装着されている。
なお、この中継パイプ7の後端部は筆記圧を利用して筆記芯(替え芯)を回転させる後述する回転駆動機構に接続されている。
【0019】
前記中継パイプ7の前端部には、前記した口金2内に収容されてその前端部が口金2より突出される円筒状のスライダー8が中継パイプ7に対して嵌合されることで着脱可能に取り付けられ、さらにスライダー8の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ9がパイプ保持具10を介して取り付けられている。
また、前記スライダー8の内周面におけるパイプ保持具10の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が収容されている。
【0020】
前記した構成により、芯ケース3に続くチャック5内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ9に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。そして、前記した中継パイプ7と芯ケース継手4との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0021】
すなわち、前記チャックスプリング13は、その前端部が中継パイプ7の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手4の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の作用により、前記チャック5は中継パイプ7内を後退してその先端部がリング状の締め具6内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0022】
軸筒を構成する前記した先軸2には例えばゴムなどの弾性素材により成形されたグリップ部材14が先軸2を取り巻くようにして装着されている。このグリップ部材14を先軸2に装着するにあたっては、先に飾りリングとして機能する透明な樹脂素材により形成された透明リング15が先軸2の先端部側から装着される。
この透明リング15は、先軸に一体に成形された環状の鍔部1aによって位置決めされ、続いて前記グリップ部材14が同方向から先軸2を取り巻くようにして装着される。その後に、前記した口金2が先軸1の前端部に螺合されることで、前記透明リング15およびグリップ部材14が軸方向に抜け出ることなく、前記先軸1に取り付けられる。
【0023】
前記した飾りリングとして機能する透明リング15は、予め先軸1に巻回されるようにして貼り付けられている加飾シール16を覆い、このシール16の周面が視認できるように構成されている。
この加飾シール16には、金もしくは銀色などの光沢のある印刷が施され、その適宜の位置には印刷が施されない透明部分が形成されている。そして、この透明部分および透明な樹脂素材により成形された前記先軸1を透視して、内部の中継パイプ7の一部が視認できるように構成されている。これにより、後述する回転駆動機構によって中継パイプ7が回転駆動される様子を、透明リング15を介して確認することができる。
なお、前記透明リング15および加飾シール16等により形成される加飾手段の詳細な構成については、後で説明する。
【0024】
前記した先軸1の後端部には、軸筒を構成する後軸18の前端部内面が嵌合されて取り付けられており、この後軸18の前半部分には図3に示されているように、ユニット化された回転駆動機構21が収容されている。
この回転駆動機構21には前記したとおり中継パイプ7の後端部が接続されており、この中継パイプ7は筆記動作に基づく筆記芯の後退および前進動作(クッション動作)を前記チャック5を介して受けて、回転駆動機構21に伝達させると共に、クッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21による回転運動を、前記中継パイプ7を介して前記チャック5に伝達させるように作用する。
これにより、チャック5に把持された図示せぬ筆記芯は、筆記動作に伴い前記回転駆動機構21による回転運動を受けることになる。
【0025】
なお、前記回転駆動機構21は、その前端部において前記先軸1との間に介在された軸スプリング22によって後方に付勢されている。また回転駆動機構21の後端部は前記後軸18内の縮径により形成された段部18aに、前記軸スプリング22の付勢力により当接している。
すなわち、この実施の形態においては、ユニット化された前記回転駆動機構21は後軸18内の段部18aに当接することによる摩擦により回動が規制され、前記したクッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21による回転運動を、前記チャック5側に伝達させるように作用する。
【0026】
前記回転駆動機構21には円筒状に形成された回転子24が具備されており、前記した中継パイプ7は、回転駆動機構21の前端部において、前記回転子24の内周面に嵌合することで結合されている。
【0027】
前記回転子24は、その前端部付近が若干径を太くした太径部になされ、その太径部の一端面(後端面)には第1のカム面24aが形成されており、太径部の他端面(前端面)には第2のカム面24bが形成されている。一方、前記回転子24の後端部側を覆うようにして円筒状の上カム形成部材25が、前記回転子24を回動可能に支持するように配置されており、前記上カム形成部材25の前端部外周には、円筒状の下カム形成部材26が、上カム形成部材25に嵌合されて取り付けられている。
【0028】
そして、前記回転子24における第1のカム面24aに対峙する上カム形成部材25の前端面に、第1の固定カム面25aが形成されている。また、前記回転子24における第2のカム面24bに対峙する下カム形成部材26の前端部内面に、第2の固定カム面26aが形成されている。
【0029】
前記した上カム形成部材25の後端部側には、シリンダー部材27が上カム形成部材25に対して嵌め込まれており、このシリンダー部材27内には円筒状に形成され軸方向に移動可能なトルクキャンセラー28が配置され、当該トルクキャンセラー28の内周面前端部と前記シリンダー部材27の内周面後端部との間にはコイル状のクッションスプリング29が装着されている。
前記クッションスプリング29は、トルクキャンセラー28を前方に付勢するように作用し、この付勢力を受けた前記トルクキャンセラー28に押されて前記回転子24は前方に向かうように作用する。
【0030】
以上のとおり前記した回転駆動機構21は、その中央部が前記芯ケース3を通す空間部になされて芯ケース3とは隔離されており、回転駆動機構21は前記した符号25〜29で示す各部材によりユニット化されている。
【0031】
前記した後軸18の後半部分、すなわち回転駆動機構21の後部側にはノック棒31が軸方向に摺動可能に装着されている。このノック棒31の前端部は環状の楔形突出部31aになされており、この楔形突出部31aが後軸18内に形成された環状突起18bを乗り越えて取り付けられている。
そして、環状突起18bとノック棒31との間にはコイル状のノック棒スプリング32が配置され、このスプリング32によって、前記ノック棒31を後軸18の後端部側に向けて付勢するように構成されている。
【0032】
また、ノック棒31の中央よりも若干後端部寄りには、筆記芯の補給孔31cを備えた当接部31bが形成されており、さらにこのノック棒31の後端部には、消しゴム33が着脱可能に装着されると共に、前記消しゴム33を覆うノックカバー34がノック棒31の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
なお、前記ノック棒31の当接部31bと、前記した芯ケース3の後端部とは所定の間隔をもって対峙した構成にされている。この構成によると、筆記による前記したクッション動作によりチャック5および芯ケース3が若干後退しても、芯ケース3の後端部が前記ノック棒31の当接部31bに衝突することはなく、前記回転駆動機構21による回転動作に障害を与えるのを防止することができる。
【0034】
前記ノック棒31に対して着脱可能に取り付けられた前記ノックカバー34には、このノックカバー34の側壁面に円盤状の突起部34aが一体に形成されている。そして、円盤状突起部34aの円盤面には、円形状にして中央部が若干凸面状になされ前記ノックカバー34とは異色の樹脂盛りシール35が装着されている。なお、前記後軸18の後端部における周方向の一部には、軸方向に切欠き溝18cが形成されており、前記円盤状突起部34aが前記切欠き溝18cに沿って配置されることで、前記ノックカバー34のノック操作が可能となるように構成されている。
前記ノックカバー34に形成された円盤状突起部34aは、前記樹脂盛りシール35により飾りの機能を果たすと共に、シャープペンシルの転がり止めとしての機能も果たすものとなる。
【0035】
以上のように構成されたシャープペンシルにおける前記した回転駆動機構21によると、チャック5が筆記芯を把持した状態で、前記回転子24は中継パイプ7を介してチャック5と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記クッションスプリング29の作用により、前記トルクキャンセラー28を介して回転子24は前方に付勢されている。
【0036】
一方、シャープペンシルを使用した場合、すなわち先端パイプ9から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック5は前記クッションスプリング29の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転子24も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転子24に形成された第1のカム面24aは前記第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされる。
【0037】
前記第1のカム面24aは周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第1の固定カム面25aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、対峙した状態の第1カム面24aと固定カム面25aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように第1のカム面24aが第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされることによって、回転子24は第1カム面24aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0038】
一方、前記第2のカム面24bも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第2の固定カム面26aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、前記したように第1のカム面24aが第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の第2カム面24bと第2の固定カム面26aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0039】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッションスプリング29の作用により回転子24は軸方向に僅かに前進し、回転子24に形成された第2カム面24bが、第2の固定カム面26aに噛み合う。これにより回転子24は第2カム面24bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0040】
以上のとおり、前記したシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転子24の軸方向への往復運動に伴って、回転子24は第1カム面24aおよび第2カム面24bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記した中継パイプ7およびチャック5を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0041】
なお、前記した回転駆動機構21においては、回転子24とクッションスプリング29との間に、トルクキャンセラー28が介在されている。このトルクキャンセラー28は前記回転子24の後端部との間ですべりを発生させて、回転子26の回転運動がクッションスプリング29側に伝達されるのを阻止するように作用する。これにより、スプリング29の捩じれ戻り(バネトルク)が発生することで、回転子24の回転動作に障害を与えるという問題を解消させることができる。
【0042】
また、この構成によるシャープペンシルにおいては、ノックカバー34をノック操作することで、ノック棒の当接部31bが芯ケース3を前方に押し出し、中継パイプ7に取り付けられたスライダー8の一部が口金2内に当接して、その前進が阻まれる。このため、チャック5の先端部が締め具6から相対的に突出してチャック5による筆記芯の把持状態が解除される。そして、前記ノック操作の解除により、チャックスプリング13の作用により芯ケース3およびチャック5は軸筒内において後退する。
【0043】
この時、筆記芯は保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により保持されており、この状態でチャック5が後退してその先端部が前記締め具6内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。すなわち、ノックカバー34のノック操作の繰り返しによりチャック5が前後動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック5から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0044】
図4〜図6は、前記した先軸1に加飾シール16を貼着すると共に、貼着された加飾シール16を覆うように透明リング15を装着してなる加飾手段の構成を説明するものである。なお、図4〜図6における各(A)は、軸筒(先軸1)に加飾シール16を貼着し、透明リング15およびグリップ部材14を装着する順序を部分断面図で示したものであり、図4〜図6における各(B)は、それぞれの状態におけるシャープペンシルの前半部を、斜視図により示したものである。
【0045】
図4に示すように透明な樹脂素材により成形された先軸1には、前記したとおり環状の鍔部1aが一体に成形されている。この鍔部1aには、軸方向の前側に若干突出するようにして、鍔部1aよりも外径を細くする環状の段部1bが形成されている。
そして、環状の段部1bを基線として予め短冊状に形成された加飾シール16が、先軸1の表面に巻き付けられるようにして貼着される。
この加飾シール16は、透明な樹脂シートにおける表面となる加飾面に例えば金色もしくは銀色などの光沢のある印刷が施されている。なお、この実施の形態においては、前記したとおり適宜の位置に印刷が施されない透明部分が形成されている。
【0046】
次に図5に示すように、前記加飾シール16を覆うようにして、透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リング15が装着され、前記透明リング15によって前記加飾シール16を覆うようになされる。
この場合、前記透明リング15における前記環状の段部1bに対向する部分には、内径を大きくした嵌合部15bが形成されており、透明リング15における嵌合部15bが環状の段部1bに嵌め合わされることで、透明リング15は先軸1に対して同軸状に取り付けることができる。
【0047】
続いて図6に示すように、先軸1に貼着された前記した加飾シール16の軸方向の前端部を覆うようにして、不透明部材としてのグリップ部材14が装着される。
この場合、前記した透明リング15における前記グリップ部材14に接する位置には、透明リング15の外径よりも小径に成形された同軸状の小径部15aが一体に形成されている。一方、前記グリップ部材14における前記透明リング15に接する内側面には、前記透明リング15の小径部15aを収容する内径を大きくした収容空間14aが形成されている。
【0048】
この構成により、前記した透明リング15に成形された同軸状の小径部15aが、前記不透明なグリップ部材14の内側に形成された収容空間14a内に埋設される。
そして、グリップ部材14が装着された後に、前記したとおり口金2を先軸1の前端部に螺合することで、前記透明リング15およびグリップ部材14は軸方向に抜け出ることなく、前記先軸1に取り付けられる。
【0049】
図6に示されているように、先軸1に貼着された前記加飾シール16の軸方向の前端部は、不透明なグリップ部材14の端部によって覆うことができるように、前記加飾シール16のサイズが予め定められている。すなわち、加飾シール16はグリップ部材14とオーバーラップするように、そのサイズが選定されている。
これにより、軸筒への加飾シールの貼着作業の作業性を改善することができ、また透明リング15を介して特定な印刷がなされた加飾シール16を全面にわたって視認することができるなど、体裁の整った加飾手段を提供することができる。
【0050】
加えて、この実施の形態においては前記したとおり、加飾シール16の適宜の位置に印刷が施されない透明部分が形成されているので、前記先軸1を透視して、内部の中継パイプ7の一部を視ることができる。したがって、中継パイプ7に例えば周方向に色変わりするシートなどを貼り付けておくことで、前記した回転駆動機構21の回転状態を、色の変化などにより視認することができるなど、独自の加飾効果を備えた筆記具を提供することが可能となる。
この場合、加飾シール16に印刷が施されない透明部分を形成させる構成に代えて、加飾シール16の適宜の位置に抜き孔を形成した構成にしても、同様な作用効果を得ることができる。
【0051】
なお、前記した実施の形態においては、先軸1に貼着された加飾シール16の軸方向の前端部側を、グリップ部材14によってオーバーラップするようにして覆った構成にされている。しかし、加飾手段の配置箇所に応じて、前記グリップ部材14に代えて不透明部材を用い、加飾シール16の軸方向の前端部側をオーバーラップするようにして覆った構成にしても、同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
また以上は、筆記芯の回転駆動機構を備えたシャープペンシルに対してこの発明にかかる加飾手段を施した例を示したが、この発明にかかる前記した加飾手段は、他の筆記具に対しても同様に適用することができ、同様の作用効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 先軸(軸筒)
2 口金
7 中継パイプ
8 スライダー
9 先端パイプ
14 グリップ部材(不透明部材)
14a 収容空間
15 透明リング
15a 小径部
15b 嵌合部
16 加飾シール
17 中継パイプ
18 後軸(軸筒)
21 回転駆動機構
31 ノック棒
32 ノック棒スプリング
34 ノックカバー
35 樹脂盛りシール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の表面に巻き付けるようにして貼着され、表面が加飾面なされた加飾シールと、前記加飾シールの軸方向の一端部を覆うようにして、前記軸筒の表面に装着された円筒状に形成された不透明部材とを備えたことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リングが、前記不透明部材に対して軸方向に接して装着され、前記透明リングによって前記加飾シールを覆った構成にされていることを特徴とする請求項1に記載された筆記具。
【請求項3】
前記透明リングにおける前記不透明部材に接する位置には、透明リングの外径よりも小径に成形された同軸状の小径部が一体に備えられ、前記不透明部材における前記透明リングに接する内側面には、前記透明リングに成形された同軸状の小径部を収容する内径を大きくした収容空間が形成され、
前記透明リングに成形された同軸状の小径部が、前記不透明部材の内側における前記収容空間内に埋設されていることを特徴とする請求項2に記載された筆記具。
【請求項4】
前記円筒状に形成された不透明部材が、弾性素材により成形されたグリップ部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された筆記具。
【請求項5】
筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を一方向に回転させることができる回転駆動機構を備えた筆記具であって、
前記加飾シールに形成された透明部分もしくは加飾シールに施された抜き孔を介して、前記回転駆動機構による回転状態が視認できるように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された筆記具。
【請求項1】
軸筒の表面に巻き付けるようにして貼着され、表面が加飾面なされた加飾シールと、前記加飾シールの軸方向の一端部を覆うようにして、前記軸筒の表面に装着された円筒状に形成された不透明部材とを備えたことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
透明な樹脂素材によりリング状に形成された透明リングが、前記不透明部材に対して軸方向に接して装着され、前記透明リングによって前記加飾シールを覆った構成にされていることを特徴とする請求項1に記載された筆記具。
【請求項3】
前記透明リングにおける前記不透明部材に接する位置には、透明リングの外径よりも小径に成形された同軸状の小径部が一体に備えられ、前記不透明部材における前記透明リングに接する内側面には、前記透明リングに成形された同軸状の小径部を収容する内径を大きくした収容空間が形成され、
前記透明リングに成形された同軸状の小径部が、前記不透明部材の内側における前記収容空間内に埋設されていることを特徴とする請求項2に記載された筆記具。
【請求項4】
前記円筒状に形成された不透明部材が、弾性素材により成形されたグリップ部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された筆記具。
【請求項5】
筆記芯に加わる筆記圧を利用して、筆記芯を一方向に回転させることができる回転駆動機構を備えた筆記具であって、
前記加飾シールに形成された透明部分もしくは加飾シールに施された抜き孔を介して、前記回転駆動機構による回転状態が視認できるように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された筆記具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−107264(P2013−107264A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253698(P2011−253698)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】
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