説明

筆記具

【課題】使用し続けてもクリップ部の把持力を維持できる筆記具を提供する。
【解決手段】クリップ部70は、軸筒30の外周を前後方向に摺動する摺動部71と、摺動部71に連接された引掛部72とを備える。引掛部72における摺動部71に対向する位置には、摺動部71に向けて突出した突起部73が設けられる。摺動部71には、その先端部分から先端方向に広がった拡張部74が設けられる。軸筒30における拡張部74に対応する位置には、拡張部74が出入可能な開口部55が形成される。軸筒30における開口部55の直後の位置には、開口部55の周縁より高くなっている台部54が設けられる。摺動部71における突起部73に対応する部分を可動部75とし、可動部75が台部54よりも先端側に位置する場合には、摺動部71と突起部73との間に間隙が形成され、可動部75が後端側へ移動して台部54に乗り上げている場合には、摺動部71と突起部73との間隙が狭まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ部を備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具は、携帯して必要時に直ぐに取り出せるように、着衣や鞄のポケット等にクリップを引っ掛ける、または書籍やノート等にクリップを挟むことが可能なものが提供されている。
従来、このようなクリップとしては、弾性変形のバネ力を利用していた。しかし、使用を重ねることによりクリップのバネ力が低下し、把持力が低下することがあった。
そこで、クリップの把持力低下を抑制した筆記具が開示されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3139755号公報
【特許文献2】特開2004−276474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1記載の筆記具では、クリップが物を把持し続けた場合にバネ力が低下して、クリップの把持力が不十分となることがあった。
そこで、本発明は、使用し続けてもクリップの把持力を維持できる筆記具を提供することを第1の課題とする。
また、特許文献2記載の筆記具では、筆記具を着脱する度にクリップの操作レバーを操作しなければならず、この操作が煩わしいという問題があった。
そこで、本発明は、クリップの着脱が容易な筆記具を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(第1の発明)
上記第1の課題に鑑み、第1の発明は、
インクを収容するリフィル(20)を内包する軸筒(30)と、前記軸筒(30)の外周に設けられたクリップ部(70)とを備えた筆記具であって、
前記クリップ部(70)は、前記軸筒(30)における外周側の所定位置を前後方向に摺動する摺動部(71)と、前記摺動部(71)に連接された引掛部(72)とを備え、
前記引掛部(72)の先端部分における前記摺動部(71)に対向する位置には、前記摺動部(71)に向けて突出した突起部(73)が設けられ、
前記摺動部(71)における前記突起部(73)に対応する部分を可動部(75)とし、
前記軸筒(30)において前記可動部(75)が前後に移動する範囲の後端部分が、その先端側の部分より高くなっている台部(54)が形成され、
前記可動部(75)が前記台部(54)よりも先端側に位置する場合には、前記摺動部(71)と前記突起部(73)との間に所定距離の間隙が形成され、前記可動部(75)が後端側へ移動して前記台部(54)に乗り上げている場合には、前記摺動部(71)と前記突起部(73)との間隙が前記所定距離よりも狭まることを特徴とする。
【0006】
(第2の発明)
上記第1及び第2の課題に鑑み、第2の発明は、
インクを収容するリフィル(20)を内包する軸筒(30)と、前記軸筒(30)の外周に設けられたクリップ部(70)とを備えた筆記具であって、
前記クリップ部(70)は、前記軸筒(30)における外周側の所定位置を前後方向に摺動する摺動部(71)と、前記摺動部(71)に連接された引掛部(72)とを備え、
前記リフィル(20)は、前記摺動部(71)の前後方向の摺動に連動して前後方向に移動し、
前記引掛部(72)の先端部分における前記摺動部(71)に対向する位置には、前記摺動部(71)に向けて突出した突起部(73)が設けられ、
前記摺動部(71)には、その先端部分から先端方向に広がった拡張部(74)が設けられ、
前記軸筒(30)における拡張部(74)に対応する位置には、前記拡張部(74)が出入可能な開口部(55)が形成され、
前記軸筒(30)における前記開口部(55)の直後の位置には、前記開口部(55)の後端側の周縁より高くなっている台部(54)が設けられ、
前記摺動部(71)における前記突起部(73)に対応する部分を可動部(75)とし、
前記可動部(75)が前記台部(54)よりも先端側に位置する場合には、前記摺動部(71)と前記突起部(73)との間に所定距離の間隙が形成され、前記可動部(75)が後端側へ移動して前記台部(54)に乗り上げている場合には、前記摺動部(71)と前記突起部(73)との間隙が前記所定距離よりも狭まることを特徴とする。
【0007】
(第3の発明)
第3の発明は、前記第1又は第2の発明の特徴に加え、
前記軸筒(30)は、前記摺動部(71)の摺動する前記軸筒(30)の外周を有する外筒(40)と、前記外筒(40)の内部に収納される内筒(50)とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(第1の発明)
第1の発明は、上述のように構成されているので、以下に記す効果を奏する。
すなわち、第1の発明によると、可動部が台部よりも先端側に位置する場合には、摺動部と突起部との間に所定距離の間隙が形成される。これに対し、可動部が後端側へ移動して台部に乗り上げる場合には、摺動部と突起部との間隙が所定距離よりも狭まる。これにより、使用を重ねて引掛部のバネ力が低下しても、クリップ部の把持力を維持できる。
(第2の発明)
第2の発明は、第1の発明の効果に加え、以下に記す効果を奏する。
【0009】
すなわち、第2の発明によると、筆記状態においては、可動部が台部よりも先端側に位置して、摺動部と突起部との間に所定距離の間隙が形成される。これに対し、非筆記状態においては、可動部が後端側へ移動して台部に乗り上げて、摺動部と突起部との間隙が所定距離よりも狭まる。これにより、使用を重ねて引掛部のバネ力が低下しても、クリップ部の把持力を維持できる。
また、筆記具を筆記状態から非筆記状態にすると、これに伴い摺動部と突起部との間隙が所定距離よりも狭まってクリップ部の把持力が向上する。したがって、着脱のために特にクリップ部を操作する必要がない。
【0010】
また、非筆記状態から筆記状態に至るノック動作において、摺動部が先端側に移動する際に可動部が軸筒の台部に干渉されないので、ノック動作を支障なく行うことができる。
また、非筆記状態から筆記状態に至るノック動作において、拡張部に軸筒の開口部を移動させることにより軸筒の干渉を抑制することができ、ノック動作を支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るボールペンの(A)正面図、(B)側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るボールペンの(A)非筆記状態を示す断面図、(B)筆記状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る外筒の(A)正面図、(B)側面図、(C)(B)の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る内筒の(A)正面図、(B)側面図、(C)(B)の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るノック部材の(A)正面図、(B)側面図、(C)(B)の断面図である。
【図6】後軸筒の変形例を示す(A)正面図、(B)側面図、(C)(B)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、筆記具10としてのボールペン11は、インクを収容するリフィル20(図2参照)と、リフィル20を内蔵する軸筒30と、軸筒30の後端に装着されるノック部材60とを備えている。
軸筒30は、合成樹脂にて筒状に形成されている。軸筒30の先端部分は、その外周が先端方向にかけてテーパー状に縮径されたテーパー部31となっている。軸筒30は、テーパー部31を含む前半部分である先軸筒32と、後半部分である後軸筒33とが組み合わされている。
図2に示すように、先軸筒32の先端には、リフィル20のボールペンチップ21が出没する出入口35が形成されている。先軸筒32の外周における後端側の位置には、後軸筒33に螺合させるための雄ネジが形成されている。先軸筒32の外周における雄ネジよりも先端側の位置には、グリップ34が設けられている。後軸筒33は、軸筒30の外周を成す円筒型の外筒40と、外筒40の内部に収納される内筒50とを備えている。
【0013】
図3(A)に示すように、外筒40には、その後端から前後方向の中程まで切り欠いた形状の露出部41が形成されている。図3(C)に示すように、外筒40における先端側の内周には、先軸筒32の雄ネジに螺合する雌ネジ42が形成されている。
図4に示すように、内筒50は、その後端に位置する円筒形状の第1内筒部51と、外周が第1内筒部51の先端より段状に拡径した円筒形状の第2内筒部52と、外周が第2内筒部52の先端より段状に拡径した円筒形状の第3内筒部53とを備えている。
図4(A)に示すように、第3内筒部53の後端には、段の一部を面取りした形状の台部54が形成されている。台部54は、周方向に連続する外周面よりも緩やかな凸面となっている。また、第3内筒部53における台部54の先端側の位置には、厚さ方向に貫通した開口部55が形成されている。開口部55の先端側の縁は、外筒40と内筒50とが組み合わされた状態において、露出部41の先端側の縁よりも先端側に位置している(図2参照)。
【0014】
上述のように、軸筒30の後端にはノック部材60が設けられており、このノック部材60の移動によりリフィル20が軸筒30の出入口35から突出する。なお、このリフィル20を軸筒30の出入口35から出没させる機構については、従来の技術を用いることとし、詳細な説明を省略する。
図5(B)に示すように、ノック部材60は、後軸筒33の後端に一部を挿入されたノックボタン部61と、後軸筒33の外周に位置するとともにノックボタン部61に連接されたクリップ部70とを備えている。
図5(C)に示すように、ノックボタン部61は、外筒40の後端より挿入されるとともに内筒50の後端に装着される外ボタン部62と、外ボタン部62の内側に位置するとともにリフィル20の後端に装着される内ボタン部63と、外ボタン部62及び内ボタン部63の後端を塞ぐ屋根部64とを備えている。外ボタン部62は、クリップ部70に対向する側が切り欠かれた形状となっている。屋根部64には、先端側に向けて突出して外ボタン部62の切り欠きの一部を塞ぐ連接部65が設けられている。
【0015】
図5(B)及び(C)に示すように、クリップ部70は、連接部65の外周面より先端側に向けて突出した摺動部71を備えている。摺動部71は、外筒40の露出部41に位置するとともに、内筒50の外周における露出部41に対応する位置に当接している。また、クリップ部70は、摺動部71に連接された引掛部72を備えている。引掛部72の先端部分における摺動部71に対向する位置には、摺動部71に向けて突出した突起部73が設けられている。ここで、摺動部71における突起部73に近接する部分を以下「可動部75」とする。
摺動部71の先端部分の内周面、つまり摺動部71の先端部分における内筒50に対向する面には、可動部75の先端側の位置より先端方向に広がった拡張部74が設けられている。この拡張部74と摺動部71とにより外筒40の露出部41を塞いでいる(図2参照)。また、拡張部74は、内筒50の開口部55よりも僅かに小さく形成されて、開口部55に収まることが可能となっている。
【0016】
図2(B)に示すように、ノック部材60が先端方向へ移動すると、リフィル20のボールペンチップ21が出入口35から先軸筒32の外方へ突出する。このとき、可動部75は台部54よりも先端側に位置するとともに、拡張部74は開口部55に収納されてリフィル20には接触していない。また、摺動部71と突起部73との間には間隙が形成されている。
図2(A)に示すように、ノック部材60が先端側の位置から後端方向へ移動すると、リフィル20のボールペンチップ21が出入口35から先軸筒32の内方へ没入する。このとき、可動部75が台部54に乗り上げて、摺動部71が突出部73方向に盛り上がる。これにより、摺動部71と突起部73とが接触した状態となる。なお、ノック部材60の移動により拡張部74も開口部55を後端方向へ移動するものの、台部54やリフィル20には接触しない。
【0017】
以上のように、本実施の形態によると、筆記状態においては、可動部75が台部54よりも先端側に位置して、摺動部71と突起部73との間に所定距離の間隙が形成される。これに対し、非筆記状態においては、可動部75が後端側へ移動して台部54に乗り上げて、摺動部71と突起部73とが当接する。これにより、使用を重ねて引掛部72のバネ力が低下しても、クリップ部70の把持力を維持できる。
また、ボールペン10を筆記状態から非筆記状態にすると、これに伴い摺動部71と突起部73とが当接してクリップ部70の把持力が向上する。したがって、着脱のために特にクリップ部70を操作する必要がない。
【0018】
また、非筆記状態から筆記状態に至るノック部材60のノック動作において、摺動部71が先端側に移動する際に可動部75が後軸筒33の台部54に干渉されないので、ノック動作を支障なく行うことができる。
また、非筆記状態から筆記状態に至るノック部材60のノック動作において、拡張部74に内筒50の開口部55を移動させることにより内筒50の干渉を抑制することができ、ノック動作を支障なく行うことができる。
なお、上述した実施の形態では、後軸筒33は、外筒40と内筒50の別個の部品が組み合わされているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、後軸筒33は、外筒40と内筒50(第1内筒部51から第3内筒部53の台部54まで)とを備えるように一体に形成し、露出部41を拡張部74の出入可能な開口部として機能させてもよい(図6参照)。
【0019】
上述した実施の形態では、軸筒30(内筒50)には、厚さ方向に貫通した開口部55が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、内筒50には、開口部55の代わりにリフィル20方向に窪んだ凹部を形成し、この凹部に拡張部74を出入させてもよい。そして、軸筒30において可動部75が前後に移動する範囲の後端部分は、その先端側の部分(凹部)より高くなっている台部54となる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、ボールペン、シャープペンシル、複式筆記具、万年筆、フェルトペンなどの筆記具への利用に適している。
【符号の説明】
【0021】
10 ボールペン
20 リフィル 21 ボールペンチップ
30 軸筒 31 テーパー部 32 先軸筒
33 後軸筒 34 グリップ 35 出入口
40 外筒 41 露出部 42 雌ネジ
50 内筒 51 第1内筒部 52 第2内筒部
53 第3内筒部 54 台部 55 開口部
60 ノック部材 61 ノックボタン部 62 外ボタン部
63 内ボタン部 64 屋根部 65 連接部
70 クリップ部 71 摺動部 72 引掛部
73 突起部 74 拡張部 75 可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するリフィルを内包する軸筒と、前記軸筒の外周に設けられたクリップ部とを備えた筆記具であって、
前記クリップ部は、前記軸筒における外周側の所定位置を前後方向に摺動する摺動部と、前記摺動部に連接された引掛部とを備え、
前記引掛部の先端部分における前記摺動部に対向する位置には、前記摺動部に向けて突出した突起部が設けられ、
前記摺動部における前記突起部に対応する部分を可動部とし、
前記軸筒において前記可動部が前後に移動する範囲の後端部分が、その先端側の部分より高くなっている台部が形成され、
前記可動部が前記台部よりも先端側に位置する場合には、前記摺動部と前記突起部との間に所定距離の間隙が形成され、前記可動部が後端側へ移動して前記台部に乗り上げている場合には、前記摺動部と前記突起部との間隙が前記所定距離よりも狭まることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
インクを収容するリフィルを内包する軸筒と、前記軸筒の外周に設けられたクリップ部とを備えた筆記具であって、
前記クリップ部は、前記軸筒における外周側の所定位置を前後方向に摺動する摺動部と、前記摺動部に連接された引掛部とを備え、
前記リフィルは、前記摺動部の前後方向の摺動に連動して前後方向に移動し、
前記引掛部の先端部分における前記摺動部に対向する位置には、前記摺動部に向けて突出した突起部が設けられ、
前記摺動部には、その先端部分から先端方向に広がった拡張部が設けられ、
前記軸筒における拡張部に対応する位置には、前記拡張部が出入可能な開口部が形成され、
前記軸筒における前記開口部の直後の位置には、前記開口部の後端側の周縁より高くなっている台部が設けられ、
前記摺動部における前記突起部に対応する部分を可動部とし、
前記可動部が前記台部よりも先端側に位置する場合には、前記摺動部と前記突起部との間に所定距離の間隙が形成され、前記可動部が後端側へ移動して前記台部に乗り上げている場合には、前記摺動部と前記突起部との間隙が前記所定距離よりも狭まることを特徴とする筆記具。
【請求項3】
前記軸筒は、前記摺動部の摺動する前記軸筒の外周を有する外筒と、前記外筒の内部に収納される内筒とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−111840(P2013−111840A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259825(P2011−259825)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】