説明

筐体の嵌合構造

【課題】 防水性能を向上できる筐体の嵌合構造を提供する。
【解決手段】 筐体本体2とこれに嵌合する筒状の筐体カバー3とを備えた筐体の嵌合構造であって、筐体本体2が嵌合部20を有し、嵌合部20の前端側部分がその外周に装着されたOリング4を有し、嵌合部20の後端側部分が係合突起22を有している。筐体カバー3が、Oリング4に密着する開口部30を一端に有し、開口部30がその端面の一部から延設された舌状部31を有している。筐体カバー3が筐体本体2の嵌合部20に嵌合する際には、舌状部31がOリング4を乗り越えてから係合突起22に乗り上げたとき、舌状部31が弾性変形して筐体カバー3の開口部30とOリング4との間に隙間cが形成されるとともに、舌状部31が係合突起22を乗り越えたとき、筐体カバー3の開口部30がOリング4に密着するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の嵌合構造に関し、詳細には、防水性能を向上できる嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体の防水構造として、例えば特開2002−111246号公報に示すようなものが提案されている。この防水構造は、筐体本体の嵌合部の外周に形成したパッキン収納溝にパッキンを装着し、筐体カバーを嵌合部に嵌合させるようにしている。
【特許文献1】特開2002−111246号公報(図2および図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構造では、筐体カバーを筐体本体の嵌合部に嵌合させる際に、筐体カバー内部の空気が徐々に圧縮されることにより、筐体カバーの嵌合後には、筐体カバー内部に加圧状態の空気が密封された状態でおかれることになる。このため、使用中、とくに加熱や冷却が繰り返されるような過酷な環境下においては、筐体内部の加圧空気の圧力で筐体カバーが筐体本体の嵌合部のパッキンから外れてしまう恐れがある。このような場合、筐体内部に水その他の液体が浸入してしまうことになり、筐体としての防水性(つまり水密性)を維持できなくなる。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、防水性能を向上できる嵌合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る嵌合構造は、筐体本体とこれに嵌合する筒状の筐体カバーとを備えた筐体の嵌合構造である。筐体本体は嵌合部を有し、嵌合部の前端側部分はその外周に装着されたシール部材を有し、嵌合部の後端側部分は係合突起を有している。筐体カバーは、シール部材に密着する開口部を一端に有し、開口部はその端面の一部から延設された舌状部を有している。筐体カバーが筐体本体の嵌合部に嵌合する際には、舌状部がシール部材を乗り越えてから係合突起に乗り上げたとき、舌状部が弾性変形して舌状部の基部における筐体カバーの開口部とシール部材との間に隙間が形成されるとともに、舌状部が係合突起を乗り越えたとき、筐体カバーの開口部がシール部材に密着するようになっている。
【0006】
請求項1の発明によれば、筐体カバーを筐体本体の嵌合部に徐々に被せていくと、筐体カバーの舌状部がまず嵌合部の前端側部分のシール部材に当接してこれを乗り越え、次に嵌合部の後端側部分の係合突起に乗り上げる。このとき、舌状部が弾性変形して舌状部の基部における筐体カバーの開口部とシール部材との間に隙間が形成される。これにより、筐体カバー内部の空間で圧縮されていた空気がこの隙間を通って筐体外部に排出される。筐体カバーを筐体本体の嵌合部にさらに被せていくと、舌状部が係合突起を乗り越えて、筐体カバーの開口部がシール部材に密着する。このようにして、筐体カバーの筐体本体への嵌合が完了する。
【0007】
この場合には、筐体カバーの開口部が筐体本体の嵌合部のシール部材に密着するに先立って、筐体カバーの開口部端面の舌状部の弾性変形を利用して、筐体カバー内部の圧縮状態の加圧空気を筐体外部に排出するので、筐体カバーの筐体本体への嵌合時に筐体内部に加圧空気が残留していることはなく、これにより、使用中に筐体カバーの開口部が筐体本体の嵌合部のシール部材から外れてしまうのを防止でき、防水性能を向上できる。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1において、舌状部が、幅方向に張り出す張出片をその先端に有し、嵌合部の係合突起が張出片に対応する位置に設けられるとともに、張出片が係合突起を乗り越えたときに、張出片の側縁部と係合突起との係合により、筐体カバーの抜け止めがなされている。
【0009】
この場合には、筐体カバーを筐体本体の嵌合部に嵌合する際に、舌状部先端の張出片が嵌合部の係合突起に乗り上げたとき、舌状部が弾性変形して舌状部の基部における筐体カバーの開口部とシール部材との間に隙間が形成されることになり、筐体カバー内部の加圧空気はこの隙間を通って筐体外部に排出される。さらに、この場合には、張出片が係合突起を乗り越えて係合突起が張出片の側縁部に係合することによって、筐体カバーの抜け止めを行うことができる。
【0010】
請求項3の発明では、請求項1または2において、筐体カバーが筐体本体の嵌合部に嵌合した状態で、筐体カバーの開口部端面とこれが対向する筐体本体の嵌合部との間には、前後方向の隙間が形成されている。
【0011】
この場合には、筐体カバーの開口部端面と筐体本体の嵌合部との間の前後方向の隙間にマイナスドライバーなどの工具を差し込んでこじることにより、筐体カバーの開口部端面が筐体本体の嵌合部から離れる側に移動し、これにより、筐体カバーの嵌合状態を解除でき、筐体カバーを容易に取り外すことができる。
【0012】
請求項4の発明では、請求項3において、筐体本体が、光源を含む電子回路を搭載しており、筐体カバーが透光性の部材である。
【0013】
請求項4の発明においては、光源から射出された光が筐体カバーに照射されることで、筐体カバーの面が発光することになるが、この場合、筐体カバーの取り外し時に工具を差し込んでこじる個所が筐体カバーの開口部端面であり、このため、発光面となる筐体カバーの面を傷付けるのを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る筐体の嵌合構造によれば、筐体カバーの開口部が筐体本体の嵌合部のシール部材に密着するに先立って、筐体カバーの開口部端面の舌状部の弾性変形を利用して、筐体カバー内部の圧縮空気を筐体外部に排出できるので、筐体カバーの筐体本体への嵌合時に筐体内部に加圧空気が残留していることはなく、これにより、使用中に筐体カバーの開口部が筐体本体の嵌合部のシール部材から外れてしまうのを防止でき、防水性能を向上できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1ないし図9は、本発明の一実施例による筐体の嵌合構造を説明するための図であって、図1は本実施例による嵌合構造の筐体を有する発光装置の分解組立図、図2ないし図5は筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための斜視図、図6ないし図8は筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための底面図 および側面図、図9は図5および図8における舌状部の縦断面部分図であって、本実施例の作用効果を説明するための図である。なお、図1は筐体を表面側(発光面側)から見た状態を示し、図2ないし図5の各斜視図ならびに図6ないし図8の各底面図は、筐体を裏面側(発光面の裏側)から見た状態を示している。
【0017】
図1に示すように、この発光装置1は、筐体本体2と、これに嵌合する筒状の透光性筐体カバー3とを備えている。筐体本体2は、嵌合部20を有している。嵌合部20の前端側(同図右端側)部分の外周には、シール部材としてのOリング4を装着するための溝21が形成されている。図2に示すように、筐体本体2の裏面側において嵌合部20の後端側(同図左端側)部分には、一対の係合突起22が設けられている。各係合突起22の側方には、前後方向に延びる一対の溝23が形成されている。また、筐体カバー3の嵌合時に筐体カバー3が当接する嵌合部20の前側端面の一部には、切欠き24が形成されている。
【0018】
嵌合部20には、リード線25が接続されている。筐体本体2の内部には、光源としての発光ダイオード(図示せず)を含む回路基板5と、発光ダイオードから射出された光が照射される透光性の導光板6と、導光板6から出る光を反射するための反射シート7と、導光板6から出る光を拡散するための拡散シート8とが搭載されている。この場合、発光ダイオードから射出された光が反射シート7で反射されるとともに拡散シート8で拡散されることによって、筐体カバー3の上面3A、前端面3B、両側面3Cが発光するようになっている。
【0019】
筐体カバー3は、筐体本体2への嵌合時に嵌合部20のOリング4に密着する開口部30を一端に有している。開口部30は、その端面の中央部から延設された舌状部31を有している。舌状部31の先端には、幅方向に張り出す一対の張出片32が形成されている。各張出片32は、筐体本体2の嵌合部20の各係合突起22に対応する位置に配置されている。また、開口部30の端面において舌状部31の両側方には、スリット35を介して一対の係合片33が設けられている。各係合片33は、筐体本体2の嵌合部20の各溝23に対応する位置に配置されている。
【0020】
次に、上述のように構成された筐体本体2に筐体カバー3を装着する際には、筐体カバー3の舌状部31を筐体本体2の裏面側に配置した状態で、筐体カバー3の開口部30内に筐体本体2を挿入する(すなわち、筐体カバー3を筐体本体2に被せる)。
【0021】
すると、筐体本体2の嵌合部20の溝21に装着されたOリング4に筐体カバー3の舌状部31の張出片32および係合片33の各先端が当接する(図2参照)。この状態から筐体本体2をさらに挿入すると、筐体カバー3の張出片32および係合片33がOリング4を乗り越えて移動して、張出片32が係合突起22の手前まで、また係合片33が溝23の手前まで移動する(図3および図6参照)。
【0022】
筐体本体2を開口部30内にさらに挿入すると、張出片32が係合突起22に乗り上げ(図4および図7参照)、これにより、舌状部31が弾性変形して湾曲する。
【0023】
このときの舌状部31の状態を図9に示す。同図に示すように、張出片32が係合突起22に乗り上げて舌状部31が上方に湾曲することにより、舌状部31の基部における筐体カバー3の開口部30とOリング4との間に隙間cが形成される。すると、筐体本体2の挿入により筐体カバー3の内部空間で圧縮されていた空気がこの隙間cを通って筐体外部に排出される(同図矢印参照)。
【0024】
この状態から、筐体カバー3を筐体本体2の嵌合部20にさらに被せていくと、張出片32が係合突起22を乗り越え、係合突起22がスリット35内に移動してスリット35内において張出片32の側縁部に係合する(図5および図8参照)。これにより、筐体カバー3の抜け止めが行われる。一方、筐体カバー3の係合片33は、筐体本体2の溝23内に挿入される。このとき、筐体カバー3の開口部30は、筐体本体2の嵌合部20のOリング4に密着しており、これにより、開口部30がシールされている。また、筐体カバー3の開口部30の端面は、筐体本体2の嵌合部20の前側端面に当接しており、前側端面において切欠き24が形成された個所では、筐体カバー3の開口部端面との間で前後方向の隙間eが形成されている。このようにして、筐体カバー3の筐体本体2への嵌合が完了する。
【0025】
この場合には、筐体カバー3の開口部30が筐体本体2の嵌合部20のOリング4に密着するに先立って、筐体カバー3の開口部端面の舌状部31の弾性変形を利用して、筐体カバー内部の圧縮状態の加圧空気を筐体外部に排出できるので、筐体カバー3の筐体本体2への嵌合時に筐体内部に加圧空気が残留していることはなく、これにより、使用中に筐体カバー3の開口部30が筐体本体2の嵌合部20のOリング4から外れてしまうのを防止でき、防水性能を向上できる。
【0026】
したがって、本実施例による筐体は、電子機器を屋外で使用したり、また工場内で水等の液体が飛散する環境下で使用したりするのに適しており、とくに加熱と冷却が繰り返されるような過酷な環境下での使用に好適である。
【0027】
次に、筐体カバー3の筐体本体2への嵌合が完了した図5および図8に示す状態において、筐体カバー3を取り外す際には、筐体カバー3の開口部端面と筐体本体2の嵌合部20の前側端面との間の前後方向の隙間eにマイナスドライバー100などの工具の先端を差し込んでこじることにより、筐体カバー3の開口部端面が筐体本体2の嵌合部20の前側端面から離れる側に移動し、これにより、筐体カバー3の嵌合状態を解除でき、筐体カバー3を容易に取り外すことができる。
【0028】
このような嵌合解除のやり方によれば、筐体カバー3の嵌合時に筐体内部が負圧状態になっていた場合でも、筐体カバー3の移動時に張出片32が係合突起22に乗り上げて上方に湾曲した際に、舌状部31の基部において筐体カバー3の開口部30とOリング4との間に隙間cが形成され、この隙間cを通って筐体カバー3の内部空間に筐体外部の空気が流入することで負圧状態が簡単に解除されるので、筐体カバー3の嵌合状態の解除を容易に行える。
【0029】
また、この場合、筐体カバー3の取り外し時に工具を差し込んでこじる個所が筐体カバー3の開口部端面であるため、発光面となる筐体カバー3の側面3Cを傷付けるのを防止できる。
【0030】
なお、前記実施例では、本実施例による嵌合構造を採用する筐体の例として、発光装置を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。その他の種々の電子回路を搭載する筐体にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例による嵌合構造を採用した筐体を有する発光装置の分解組立図である。
【図2】筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための斜視図である。
【図3】筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための斜視図である。
【図4】筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための斜視図である。
【図5】筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための斜視図である。
【図6】(a)は、筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための底面図、(b)はその側面図であって、図3に対応する図である。
【図7】(a)は、筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための底面図、(b)はその側面図であって、図4に対応する図である。
【図8】(a)は、筐体カバーが筐体本体に嵌合する様子を説明するための底面図、(b)はその側面図であって、図5に対応する図である。
【図9】本実施例の作用効果を説明するための図であって、図5および図8における舌状部の縦断面部分図に相当している。
【符号の説明】
【0032】
2: 筐体本体
20: 嵌合部
22: 係合突起

3: 筐体カバー
30: 開口部
31: 舌状部
32: 張出片

4: Oリング

e: 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体本体とこれに嵌合する筒状の筐体カバーとを備えた筐体の嵌合構造であって、
筐体本体が嵌合部を有するとともに、前記嵌合部の前端側部分がその外周に装着されたシール部材を有し、前記嵌合部の後端側部分が係合突起を有しており、
前記筐体カバーが、前記シール部材に密着する開口部を一端に有するとともに、前記開口部がその端面の一部から延設された舌状部を有しており、
前記筐体カバーが前記筐体本体の前記嵌合部に嵌合する際には、前記舌状部が前記シール部材を乗り越えてから前記係合突起に乗り上げたとき、前記舌状部が弾性変形して前記舌状部の基部における前記筐体カバーの前記開口部と前記シール部材との間に隙間が形成されるとともに、前記舌状部が前記係合突起を乗り越えたとき、前記筐体カバーの前記開口部が前記シール部材に密着するようになっている、
ことを特徴とする筐体の嵌合構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記舌状部が、幅方向に張り出す張出片をその先端に有し、前記係合突起が前記張出片に対応する位置に設けられるとともに、前記張出片が前記係合突起を乗り越えたとき、前記張出片の側縁部と前記係合突起との係合により、前記筐体カバーの抜け止めがなされている、
ことを特徴とする筐体の嵌合構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記筐体カバーが前記筐体本体の前記嵌合部に嵌合した状態で、前記筐体カバーの前記開口部端面とこれが対向する前記筐体本体の前記嵌合部との間には、前後方向の隙間が形成されている、
ことを特徴とする筐体の嵌合構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記筐体本体が、光源を含む電子回路を搭載しており、前記筐体カバーが透光性の部材である、
ことを特徴とする筐体の嵌合構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−176817(P2009−176817A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11512(P2008−11512)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】