説明

箔形導体の連続巻コイルを用いた高周波トランスおよび高周波リアクタ

【目的】 高周波電流の表皮効果による交流抵抗損を抑制する連続巻コイルを簡単な方法で安価に製作する。
【構成】 外鉄形鉄心における中央部の脚部鉄心を上下2つに分割した2次鉄心と、この2次鉄心間に非接触で出し入れできる1次鉄心とによって構成し、それぞれの鉄心に巻回する1次巻線と2次巻線を、交互に反転する同一形状の連続波形に切断形成した箔形導体を1つの波形ごとに交互に折り曲げたうえで重ね合わせて環状の連続巻コイルとし、この環状の連続巻コイルより成る1次巻線と2次巻線とが平面的に相対するようにそれぞれの鉄心に巻回して高周波トランスおよび高周波リアクタを構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電気自動車用の充電装置を構成する高周波トランスに関するものであって、高周波リアクタにも適用できるものである。
【0002】
【従来の技術】図3は従来の電気自動車用充電装置における高周波トランスの構造図であり、図3(a)はその断面図を、図3(b)は平面図を示す。この高周波トランスは外鉄形の鉄心を備えており、上部の継鉄1011 ,下部の継鉄1012 ,左右の脚部鉄心1021 と1022 および3分割された中央部の脚部鉄心1031 ,1032 ,104によって鉄心を構成している。中央部の脚部鉄心1031 と1032 は2次鉄心であって、2次巻線1051 と1052 がそれぞれ分割して巻回してあり、1次鉄心である104には1次巻線106が巻回してある。また、1次巻線106を巻回した1次鉄心104は、2次巻線1051 と1052 をそれぞれ巻回した2次鉄心1031 と1032 の空隙部に非接触で挿入または取り出しできるように構成されている。
【0003】高周波トランスの効率を向上させるためには1次巻線と2次巻線における高周波電流の表皮効果による交流抵抗損を抑制することが肝要である。このために、1次巻線106および2次巻線1051 と1052 を多くの細線を撚って構成したリッツ線を束ねた巻線、あるいは、箔形円形導体を溶接によりつなぎ合わせて形成した連続巻の箔形円形導体を用いていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来方法による高周波トランス用の箔形導体の加工法は、手数のかかる面倒な工法であるばかりでなく、巻線の製作コストが高くならざるを得なかった。この発明は、上述した従来方法による欠点を解消するためになされたものであって、加工法が簡単で製作コストの安い連続巻の箔形導体を備えた高周波トランスと高周波リアクタを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明による箔形導体の連続巻コイルを用いた高周波トランスおよび高周波リアクタは、外鉄形鉄心における中央部の脚部鉄心を上下2つに分割した2次鉄心と2次鉄心間に設けた中央部の鉄心より成る1次鉄心とによって構成し、2次巻線をそれぞれ巻回した2組の2次鉄心間の空隙部に、1次巻線を巻回した1次鉄心を非接触で出し入れできるようにした高周波トランスと高周波リアクタにおいて、交互に反転する同一形状の連続波形に切断形成した箔形導体を1つの波形ごとに反対側に交互に折り曲げたうえで重ね合せて同一形状の箔形導体より成る環状の連続巻コイルを形成させ、この環状の連続巻コイルより成る1次巻線と2組の2次巻線とがそれぞれ平面的に相対するようにそれぞれの鉄心に巻回して構成したものである。
【0006】
【作用】1次巻線と2次巻線を箔形導体としたので高周波電流の表皮効果に起因する交流抵抗損を抑制でき、また、環状の連続巻コイルより成る1次巻線と2次巻線を平面的に相対させて配置したので磁気結合が優れたものとなり交流抵抗の増加を防げる。
【0007】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図3(a)と図3(b)は、従来の外鉄形の高周波トランスにおける断面図と平面図であるが、この発明による高周波トランスと構造的には全く同一である。図3(a)において、2次巻線1051 と1052 は1次巻線106と平面的に相対するようにそれぞれの鉄心に巻回して配設されている。上述した1次巻線と2次巻線は箔形導体より成る同一形状の環状の連続巻コイルであって、それぞれの巻線を平面的に相対するように配置してあるので磁気結合が優れており、高周波電流に起因する交流抵抗損の増加を抑制できるものである。
【0008】次に、この発明による箔形導体より成る連続巻コイルの製作方法を説明する。図1(a)は箔形導体を切断して交互に反転する半円状の連続波形1,2,3,4…とした第1の実施例を示している。半円2を折線C−Dの部分で折り曲げて半円1の下に重ね、次に半円3を折線E−Fの部分で反対側に折り曲げて半円2の下に重ねる。以下同様な加工法を施すと、図1(b)に示すような環状コイルを重ね合わせた連続巻コイルが形成される。以上の説明においては半円状に切断した箔形導体によるものであるが、図2(a)は箔形導体を交互に反転するU字形の連続波形に切断形成した第2の実施例を示している。U字形20を折線C−Dの部分で折り曲げてU字形10の下に重ね、次にU字形30を折線E−Fの部分で反対側に折り曲げてU字形20の下に重ねたものであって、図2(b)に示すように、方形の箔形導体より成る連続巻コイルが形成される。どのような形状の箔形導体とするかは、鉄心の構造等を勘案して選択することができるものであって、上述した2つの実施例に限定されるものではなく、また外鉄形鉄心を備えた高周波トランスのみならず内鉄形鉄心のものにも適用できるものである。
【0009】高周波リアクタの鉄心構造、巻線の巻回法等の細部は高周波トランスと異なるが、高周波トランスにおける箔形導体より成る環状の連続巻コイルはそのまま使用できるものであるから説明は省略する。
【0010】
【発明の効果】以上説明したように、この発明による箔形導体の連続巻コイルを用いた高周波トランスおよび高周波リアクタは、外鉄形鉄心における中央部の脚部鉄心を上下2つに分割した2次鉄心と、2次鉄心間に設けた中央部の鉄心より成る1次鉄心とによって構成し、2次巻線をそれぞれ巻回した2組の2次鉄心間の空隙部に1次巻線を巻回した1次鉄心を非接触で出し入れできるようにした高周波トランスおよび高周波リアクタにおいて、交互に反転する同一形状の連続波形に切断形成した箔形導体を1つの波形ごとに反対側に交互に折り曲げて重ね合わせて同一形状の環状の連続巻コイルを形成し、この環状の連続巻コイルより成る1次巻線と2次巻線を平面的に相対するようにそれぞれの鉄心に巻回させてある。従って、高周波電流の表皮効果に起因する交流抵抗損を抑制できるばかりでなく、1次巻線と2次巻線間の磁気結合が優れたものとなり、交流抵抗の増加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】円形の連続巻コイルの加工法を示す説明図。
【図2】方形の連続巻コイルの加工法を示す説明図。
【図3】外鉄形鉄心を備えた高周波トランスの構造図。
【符号の説明】
1,2,3,4,… 半円状の箔形導体の構成要素
10,20,30,40,… U字形の箔形導体の構成要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外鉄形鉄心における中央部の脚部鉄心を上下2つに分割した2次鉄心と、この2次鉄心間に設けた1次鉄心とによって構成し、2次巻線を分割して巻回した2組の2次鉄心間の空隙部に、1次巻線を巻回した1次鉄心を非接触で挿入または取り出し可能とした高周波トランスおよび高周波リアクタにおいて、交互に反転する同一形状の連続波形に切断して形成した箔形導体を1つの波形ごとに反対側に交互に折り曲げ、折り曲げて形成した半環状の箔形導体を重ね合わせて環状の連続巻コイルを形成させ、この環状の連続巻コイルより成る1次巻線と2組の2次巻線とがそれぞれ平面的に相対するようにそれぞれの鉄心に巻回して配設したことを特徴とする箔形導体の連続巻コイルを用いた高周波トランスおよび高周波リアクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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