説明

管球の落下防止機構付きランプ

【課題】管球の封止部やその周辺部にクラックが発生しても、管球の落下を確実に防止する落下防止機構付きランプを提供すること
【解決手段】ネック部(2c)の口径に比較して中央部(2a)の口径が大きい管球(2)と、前記管球の一端に形成された口金(6)と、前記口金から前記管球が離脱して落下するのを防止する落下防止機構(22)とを備えたランプ(10)において、前記落下防止機構(22)は、固定部材(24)と回転部材(26)とを有し、前記固定部材(24)は、マウント(8)の外周部を形成する支持部材(16)に固定され、前記回転部材(26)は、前記ネック部の口径より長い部材から成り、その中央部付近で前記固定部材に対して回転自在に取り付けられ、前記落下防止機構(22)は、前記回転部材がランプ軸線に直交する面で回転を停止する回転停止機能(24a)を備えており、ランプを上下反転して該ランプの口金を上方にしたとき、前記回転部材は回転してランプ軸線に直交する面で回転を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管球の落下防止機構付きランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ及びセラミックメタルハライドランプのような高輝度放電ランプ(以下、「HIDランプ」という。)は、電極間の放電を利用して発光する。HIDランプは、白熱電球と比べて、光束が大きく大規模空間の照明に適し、エネルギー効率が良いため消費電力が少なく、寿命も長く、一般に演色性が高いといった種々の特徴を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-184359号公報「照明用管球」(公開日:2002年06月28日)
【特許文献2】特開2008-66222号公報「高圧放電ランプ」(公開日:2008年03月21日) 図1は、特許文献1に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。但し、本願図面の参照符号との重複を避けるため、図1の参照符号及び以下の説明は、特許文献1の図1及び2の参照符号を100番台に変更している。明細書段落0010〜0011に、「…留め金101は留め金本体101aと留め金心棒101bからなっており、留め金本体101aは…ステンレス鋼板を断面がコの字形になるように折り曲げたもので、留め金心棒101bを軸にして回転する。回転の範囲は支持金具とのなす角度が最大60度程度である。…留め金本体101aは重心軸を外して留め金心棒101bに支持されているので、口金が上になった時、留め金本体は重力によって回転し、支持金具102となす角度が60度まで回転する。…これとは逆に口金が下側になった時は、留め金本体と支持金具102のなす角度は0度になる。」と説明されている。
【0004】
図2は、特許文献2に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。但し、本願図面の参照符号との重複を避けるため、図2の参照符号は、特許文献2の図1の参照符号を200番台に変更している。要約に、「ランプ210では、管球214の上記球体部214a内における内部ステムリード212には、アーム222を有する落下ストッパ220が1つだけ取付けられており、アーム222が、その一端を支点Fとして、他端が第1の位置から第2の位置までの間を弧を描く状態に回転自在に構成されている。第2の位置では、アーム222が管球214の管軸Ax10に対し、70[°]よりも大きく、110[°]以下の角度をなす。」と説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HIDランプは、E形口金を照明装置のソケットへ装着する時、或いは点灯経過時において、希に、ステム管と管球のネック部との封止部やその周辺部にクラック等の割れを生じることがあった。
【0006】
このクラックの原因としては、ガラス製管球とステム管との封止作業時の加熱バーナーによるガラス溶融の不具合が原因で、封止部をモールド成形した際に封止部やその周辺部のガラスの厚みが不均一に成る場合が挙げられる。或いは、管球から導出した外部導入線と口金とを半田等のろう材を用いて接続するスポット的な加熱時に生じる歪を除去する歪除去バーナーの調整不具合が原因で、封止部やその周辺部のガラスに歪みが残留する場合が挙げられる。このようなガラス厚みの不均一、残留歪み等により、管球の封止部やその周辺部に、微小な傷、割れ等が生じたり、加工歪が残留したりする。
【0007】
HIDランプのE形口金をソケットにねじ込む際に封止部やその周辺部に強い捻り力が加わった場合、及び/又はランプ点滅による熱的衝撃或いはランプ点滅による熱的衝撃或いは振動衝撃等が管球の封止部やその周辺部に加わった場合に、クラックや割れが生じるおそれがある。
【0008】
封止部やその周辺部に生じたクラックや割れが管球を一周すると、管球がE型口金から離脱して落下するおそれがある。なお、この問題は、後述するようにHIDランプに限られず、管球を備えた他の白熱ランプにも存在している。
【0009】
特許文献1及び2は、一定の管球の落下防止機構を開示する。ここに開示する移動部材(管球に係止して落下を防止する部材)は、いずれも、ランプ軸線に垂直面で見ると、作動時に半径方向に延在する構成となっている。従って、移動部材は管球に対して一点で係止する。これに対して、以下に説明する管球の落下防止機構では、移動部材は、半径方向に垂直な方向(弦方向)に延在する構成となっている。従って、移動部材は、管球に対して二点で係止することが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点に鑑みて、本発明は、管球の封止部やその周辺部にクラックが発生しても、管球の落下を確実に防止する落下防止機構付きランプを提供することを目的とする。
【0011】
従って、本発明に係る管球の落下防止機構付きランプは、ネック部の口径に比較して中央部の口径が大きい管球と、前記管球の一端に形成された口金と、前記口金から前記管球が離脱して落下するのを防止する落下防止機構とを備えたランプであって、前記落下防止機構は、固定部材と回転部材とを有し、前記固定部材は、マウントの外周部を形成する支持部材に固定され、前記回転部材は、前記管球が落下する際に少なくても一端が該管球内面に係合する長さを有し、その中央部付近で前記固定部材に対して回転自在に取り付けられ、前記落下防止機構は、前記回転部材がランプ軸線に直交する面で回転を停止する回転停止機能を備えており、ランプを上下反転して該ランプの口金を上方にしたとき、前記回転部材は回転してランプ軸線に直交する面で回転を停止する。
【0012】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプにおいて、前記支持部材は、マウントの支柱の一部であってよい。
【0013】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプにおいて、前記回転部材の長さは、前記管球のネック部の口径より長くてもよい。
【0014】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプにおいて、前記落下防止機構には、前記回転部材の回転方向を一方向に制限する逆転防止機能が備わっていてもよい。
【0015】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプにおいて、前記回転停止機能及び前記逆転防止機能は、前記固定部材に形成されたタブ片により発揮されていてもよい。
【0016】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプにおいて、更に、前記固定部材に対して前記回転部材が所定の角度回転したとき、該回転部材を固定する回転部材固定機能を有していてもよい。
【0017】
更に、上記管球の落下防止機構付きランプにおいて、前記落下防止機構を複数個設けていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管球の封止部やその周辺部にクラックが発生しても、管球の落下を確実に防止する落下防止機構付きランプを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、先行技術文献である特許文献1に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。
【図2】図2は、先行技術文献である特許文献2に開示する管球の落下防止機構を説明する図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る、管球の落下防止機構付きHIDランプの全体を説明する図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る、HIDランプのバルブ形状を説明する図である。
【図5】図5は、管球の落下防止機構の詳細を示し、ここで、(1)は落下防止機構の作動前の状況を示し、(2)は作動後の状況を示している。
【図6】図6は、図5の管球の落下防止機構の変形例を示し、ここで、(A)は固定部材に対し、取り付け部品を使って回転部材を取り付ける様子を説明する図であり、(B)は回転前後の固定部材と回転部材の関係を説明する図である。
【図7A】図7Aは、先行技術文献である特許文献1,2の落下防止機構の作動状況を説明する図であり、(1)は図3と同じ方向から見た図であり、(2)は落下防止機構取り付け付近のランプ軸線に垂直な断面図である。
【図7B】図7Bは、本実施形態に係る落下防止機構の作動状況を説明する図であり、(1)は図3と同じ方向から見た図であり、(2)は落下防止機構取り付け付近のランプ軸線に垂直な断面図である。
【図8】図8は、落下防止機構が取り付けられたマウントをランプ管球に取り付ける方法を説明する図である。
【図9】図9は、代替例として、複数個の落下防止機構が取り付けられたランプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る管球の落下防止機構付きランプの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0021】
[管球の落下防止機構付きランプ]
(HIDランプの構造)
図3は、本実施形態に係る管球の落下防止機構付きランプを説明する図である。ランプとして、HIDランプの1つであるセラミックメタルハライドランプ10を例に挙げて説明する。
【0022】
図3に示すように、セラミックメタルハライドランプ10は、管球2の内部に、発光管4を内封した二重構造となっている。管球2の端部には、E形口金6が接合されている。発光管4は、マウント8により所定の位置に支持され給電される。マウント8の一部に管球の落下防止機構22が取り付けられている
これらの各要素について詳述する。
【0023】
発光部となる発光管4は、中央の太管部4a及び両端の細管部4b,4cの形状をもつセラミックス製の透光性容器である。一対のリード線5,7が、これら細管部4b,4cを夫々通して太管部4aの領域まで延びて、一対の主電極(図示せず。)を形成している。発光管4の容器内には、発光及び放電媒体として、所定量の水銀と、所定の複数の発光金属のハロゲン化物と、希ガスとして所定圧力のアルゴン(Ar)ガス等が封入されている。
【0024】
マウント8は、一対の導入線が気密封着されたステム管14と、一方の導入線に接続された、モリブデンMo,ステンレス等の線材や略長四角形状の枠状に成形した丸棒体から成る支柱16と、支柱に固定された抵抗器、バイメタル等の始動回路部20とを主要部品として構成される。
【0025】
落下防止機構22に関しては、後で、図5〜図9を用いて詳述する。
【0026】
管球2は、例えば、ホウケイ酸ガラス等の透光性の硬質ガラスから成る。管球2は、例えば、図3で見て、最大口径の中央部2a、下部側のトップ部2b、及び上部側のネック部2cを有するBT形である。ネック部2cには、ステム管14のフレア部が封止された封止部(図示せず。)が有る。この封止部を覆ってE形の口金6が耐熱性の接着剤を用いて接合され、或いはモールドにより形成された螺旋状のねじ溝に口金6が螺合されて取付けられる。
【0027】
図3に示すセラミックメタルハライドランプ10は、多くの場合、E形口金6が上方に位置する鉛直又は傾斜したベースアップ状態でソケット(図示せず。)に取り付けられ点灯される。
【0028】
(対象となるランプ及びランプ形状)
図3では、セラミックメタルハライドランプ10を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。対象となるランプには、他のHIDランプ、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、セルフバラスト水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ等が含まれる。更に、HIDランプに限られず、管球が剥き出しでカバー無しで使用されている白熱ランプ等も含まれる。
【0029】
図3では、ランプ形状として、BT形ランプ10を例にとって説明をしているが、これに限定されない。図4は、本実施形態に係るランプの管球形状を説明する図である。本実施形態に係るランプは、中央部2aがネック部2cより少しでも大きい口径の全てのランプ形状が対象となる。ランプ形状は、例えば、B型ランプ(A)、BT型ランプ(B)、R型ランプ(C)、G型ランプ(D)及び(E)に示すT型であってよい。
【0030】
(管球の落下防止機構)
図5は、管球の落下防止機構の詳細を示し、ここで、(1)は落下防止機構の作動前の状況を示し、(2)は作動後の状況を示している。落下防止機構22は、支柱16に固定された固定部材24と、固定部材に対して支点28の位置に回転自在に取り付けられた回転部材26とを有する。この回転は、支点28に対して回転部材26の両側の重量が不均衡に成るよう形成し、落下防止機構22(実際には、ランプ10自体)を上下反転して、地球の重力Gを利用して実現される。
【0031】
ここで注意願いたいことは、図5では、落下防止機構22の作動状況を分かり易くするため、作動前の落下防止機構(1)を、作動後の落下防止機構(2)では上下反転せずに、敢えて、(1)及び(2)で落下防止機構が対応するように描かれている。即ち、落下防止機構22自体を反転させた図ではなく、(1)では落下防止機構22に対する重力Gが矢印方向(図面で上方向)にかかり、これを上下反転した(2)では重力Gの矢印方向を反転(図面で下方向)させていることに留意されたい。
【0032】
固定部材24は、金属板等を加工した条片から形成される。固定部材24は、例えば、マウント8を構成する支柱16の一部分に沿って取り付け固定される。好ましくは、支柱16の固定部材取り付け箇所は、概して、ランプ軸線L−L(図3参照)に沿って延在している箇所である。しかし、マウント8の他の構成部材に取り付けてもよい。固定部材24の支柱16に対する固定は、溶接等の方法による。
【0033】
同様に、回転部材26も金属板等を加工した条片から形成される。回転部材26は、固定部材24に対して支点28の周りに回転自在に取り付けられる。本実施形態の場合、好ましくは、回転部材26は、時計方向に角度約90度までの範囲で回転自在である。
【0034】
回転部材26は、支点28に対して両側の重量が不均衡に成るよう形成される。これを実現する方法は、任意の方法であってよい。典型的には、回転部材26の一端に錘26aを取り付ける。或いは、支点28から片側だけを長めにし、その先端部を二重、三重に折り返して錘の代わりにしてもよい。或いは、支点28から片側の条片の板厚を相対的に厚くし、又は同じ厚さでも条片の幅を相対的に広くして、重量不均衡にしてもよい。
【0035】
固定部材24と回転部材26の長さは、回転部材26が所定の長さ(図7Bに関連して説明するように、管球2の一部に係止して落下防止機能を発揮し得る長さ。)を有する限り、同じ長さでも、いずれか一方がより長くてもよい。固定部材24と回転部材26の夫々の幅は、任意であってよい。しかし、あまり広い幅ではランプの光線を遮蔽するので、一般には幅は狭い方が好ましい。
【0036】
支点28の位置で固定部材24に回転部材26を回転自在に取り付ける方法は、任意の方法でよい。例えば、回転部材26に丸い開孔を形成し、頭部大きくしたピンを開孔を通して固定部材24に立ててもよい。或いは、固定部材24及び回転部材26に対応する開孔を形成し、適当なピンで両者を回転自在に留めてもよい。
【0037】
固定部材24に対する回転部材26の回転方向は、時計方向及び反時計方向の任意の一方向に回転自在でもよく、或いは両方向に回転自在でもよい。固定部材24に対する回転部材26の回転範囲は、支柱16に沿った位置から角度約90度まで回転自在であり、それ以上の回転を停止する適当な回転停止機構が必要となる。
【0038】
図5に図示する例では、固定部材24の右側辺の一部を折り曲げてタブ片24aを形成している。このタブ片24aは、支点28より僅かに下側に位置している。タブ片24aは、回転部材26が支点28の周りを時計方向にほぼ角度90度以上回転しないように回転停止機能をもっている。同時に、このタブ片24aは、回転部材26が反時計方向に回転しないように逆転防止機能ももっている。
【0039】
タブ片24aの位置を変えて、固定部材24の右側辺で支点28より僅か上側の位置にすると、回転停止機能と、回転部材26の時計方向回転を阻止する逆転防止機能とをもつ。固定部材24の左側辺で支点28より僅か下側の位置にすると、回転停止機能と、回転部材26の時計方向回転を阻止する逆転防止機能とをもつ。固定部材24の右側辺で支点28より僅か上側の位置にすると、回転停止機能と、回転部材26が反時計方向回転を阻止する逆転防止機能とをもつこととなる。
【0040】
また、好ましくは、回転部材26の支点28から錘26aの有る側の長さを、反対側より長めに形成することにより、管球落下時に錘方向26aの有る側の先端部が先に管球に係止し、回転部材が反転(戻る方向に回転)するのを防止することが出来る。
【0041】
(変形例)
回転部材26を両方向に回転自在にした場合には、逆転防止機能は不要であるが、両方向に回転停止機能を設ける必要がある。図6は、図5の管球の落下防止機構の変形例を示し、ここで、(A)は固定部材に対し、取り付け部品を使って回転部材を取り付ける様子を説明する図であり、(B)は回転前後の固定部材と回転部材の関係を説明する図である。図6の落下防止機構は、図5の落下防止機構と比較して、回転部材26が所定の角度回転したとき、回転部材を固定する回転部材固定機能を有している点で相違する。
【0042】
図6(A)を参照すると、支柱16に固定部材24が固定されている。固定部材24の支点28に対して、回転部材26の開孔26bを位置決めする。この状態で、取り付け部品29を固定部材24の支点28に取り付ける。取り付け部品29は、円盤状部材29aと軸29bから成る。円盤状部材29aは、回転部材26の開孔26bより大きな口径を有する。軸は29bは、断面形状が円形の両側を切り取った形状である(拡大図A−1の斜線部参照)。この断面形状の円周部分は、回転部材26の開孔26bより僅かに小さな口径となっている。取り付け部品29の固定部材24に対する取り付けは、固定部材24の支点28の箇所に所定の雌ねじ孔を形成し、取り付け部品29を一種の雄ネジとして軸29bの周囲に雄ネジを形成して、ネジ留めとしてもよい。或いは、溶接その他の接合技術を利用してもよい。
【0043】
回転部材26の開孔26bは、軸落とし込み部26cが形成されている(なお、軸落とし込み部26cは、開孔26bに2個、図の位置と180度移動した位置に形成してもよい。)。最初、回転部材26は、支柱16及び固定部材24に沿った位置にある。この状態の回転部材26の開孔26bの軸落とし込み部26cは横方向にある(拡大図A−2参照)。回転部材26が回転すると、開孔26bの軸落とし込み部26cは上方向に移動する(拡大図A−3参照)。
【0044】
図6(B)を参照すると、回転部材26の回転により、開孔26bの軸落とし込み部26cと軸29bの位置が整合し、回転部材26が全体にその重量により下方に移動し、軸落とし込み部26cの中に軸29bが組み込まれる。これにより、回転部材26の角度90度以上の回転は阻止され、且つ回転部材は固定される。
【0045】
落下防止機構22は、支柱16の所定箇所(図3参照)に取り付けられる。落下防止機構22は、発光管4からの配光への影響が少ない位置に取り付けることが好ましい。落下防止機構22は、好ましくは、支柱16と同じ材質である、モリブデンMo、ステンレス等の線材から形成されている。落下防止機構22の作動は、高輝度放電ランプ10の上下を反転(従って、内部の落下防止機構22を上下反転)させることにより行われる。
【0046】
この落下防止機構22の特徴の1つは、落下防止機構22の取り付け箇所及び作動範囲が、マウント8の外周部及びその周囲に限定されることにある。このため、マウント8の内側空間は、落下防止機構22に邪魔されることなく、自由に部品配置、配線等に利用することが出来る。
(先行特許文献1,2との比較における本実施形態の利点・効果等)
図7A及び図7Bを参照しながら、先行特許文献1,2との比較において、本実施形態の落下防止機構22の構成、利点、効果等を説明する。
【0047】
(1) 落下防止機構の作動
図7Aは、特許文献1,2の落下防止機構の作動を簡単に説明する図であり、(1)は図3と同じ方向から見た図であり、(2)は落下防止機構取り付け付近のランプ軸線L−Lに垂直な断面図である。外周の実線の円は防止機構取り付け付近の管球20であり、内周の破線円は管球のネック部20cを示す。これに対して、図7Bは、本実施形態に係る落下防止機構の作動状況を説明する図であり、同様に、(1)は図3と同じ方向から見た図であり、(2)は落下防止機構取り付け付近のランプ軸線Lに垂直な断面図である。
【0048】
先行特許文献1,2では、図7Aに示すように、支柱160に取り付けられた落下防止機構222は、作動すると、ランプ軸線Lから半径方向外方(図のX軸方向材)に沿って延びて、その先端部が管球20に係止又は落下時に係止できる位置で停止する。これに対して、本実施形態では、図7Bに示すように、支柱16に取り付けられた落下防止機構22は、作動すると、半径方向に対し垂直方向(図のY軸方向材)に沿って延びる。そして、一方の端部又は両端部が、管球に係止又は落下時に係止できる位置で停止する。
【0049】
従って、両者は、その構成の相違から、落下防止機構が延在する方向が相違する。延在方向が相違することにより、先行特許文献1,2では、落下防止機構は一点でしか管球に係止出来ないのに対して、本実施形態では、落下防止機構は二点で管球に係止することが期待できる。
【0050】
本実施形態の回転部材26の長さについて説明する。図7Bで分かる通り、回転部材26の長さが外球ネック部2cの直径より大きい場合には、回転部材26が外球ネック部2cを通り抜けることが無く、外球2の落下は確実に防止できる。更に、この落下防止機構22の特徴の1つは、落下防止機構22の取り付け箇所及び作動範囲が、マウント8の外周部及びその周囲に限定されることにある。マウント8の内側空間には、取り付けられない。従って、回転部材26の長さが外球ネック部2cの直径より小さい場合であっても、外球が落下する際に回転部材26の少なくても一端が外球内面に係合する長さであればよい。回転部材26の具体的な長さは、回転部材26の取り付け位置、外球形状等により定められる。
【0051】
(2)落下防止の確実性
回転部材26(図7B参照)の長さを、管球のネック部2cの口径より長くした場合には、管球の落下を確実に防止できる。
【0052】
(落下防止機構のランプへの組み込み)
図8は、落下防止機構のランプへの組み込み方法を説明する図である。(A)において、マウント8の一部に落下防止機構22を取り付ける。次に(B)において、外管バルブ2を、ネック部2cを下にして位置決めする。次に、マウント8を、下方からネック部2cに通して外管バルブ2内に挿入する。このとき(C)に示すように、マウント8に取り付けられた落下防止機構22は作動前であり、容易に挿入することができる。挿入終了後の(D)において、ネック部2cの一部をバーナー等で加熱溶融させることでマウント下部のフレアと溶着させ、余ったネック部を落として外管バルブ2とマウント8とを一体化させる。更に、マウント下部の排気管から外管バルブ2内の空気を抜いて真空状態にするか不活性ガスを封入し、排気管をチップオフして、外管バルブ2を気密封じする。その後、口金6を用意し、ネック部2cに取り付ける。次に(E)において、ランプ2を上下反転して、落下防止機構22を作動する。図7Bに示すように、回転部材26がネック部2cより外側の位置まで延在して停止する。
【0053】
これにより、万一、封止部やその周辺部に生じたクラックや割れが管球2を一周しても、管球2が口金6から離脱して下方に落下するのを防止することができる。
【0054】
なお、ランプ10の取り付け方向に関して、口金6を上方にしてソケット(図示せず。)に取り付けると説明してきたが、これに限定されない。この落下防止機構22は、回転部材26が回転できる範囲であれば、ランプ10の軸線L−Lが斜めであってもよい。なお、ランプ10を斜めに取り付けて点灯する場合、予め、微振動を与えてスライド部材24を確実に回転しておくことが好ましい。
【0055】
[他の実施形態に係る管球の落下防止機構付きランプ]
図9は、複数個(図では2個)の管球の落下防止機構22を有する他の実施形態に係るランプを説明する図である。図4に示したように、ランプ10の管球2には種々の形状がある。例えば、ネック部2cから中央部2aにかけて口径が徐々に大きくなるようなバルブ形状の場合、複数個の落下防止機構22,22を設けることが好ましい。落下防止機構22の個数は、個々のランプの管球2の形状、管球2とマウント8の位置関係等によって決定される。
【0056】
[その他]
以上、管球の落下防止機構付きランプの実施形態に関して説明したが、これらは例示であって、本発明はこれに限定されない。当業者が容易になしえる、実施形態に対する追加、削除、変更、改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0057】
10:セラミックメタルハライドランプ,ランプ,BT形ランプ、 2:管球,管球、 2a:中央部、 2b:トップ部、 2c:ネック部、 4:発光管、 4a:太管部、 4b,4c:細管部、 5:リード線、 6:E形口金、 7:リード線、 8:マウント、 12:金属箔、 14:ステム管、 16:支柱、 20:始動回路、 22:落下防止機構、24:固定部材、 24a:タブ、 26:回転部材、 26a:錘、 26b:開孔、 26c:軸落とし込み部、28:支点、 29:取り付け部品、 29a:円盤状部材、 29b:軸、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック部の口径に比較して中央部の口径が大きい管球と、
前記管球の一端に形成された口金と、
前記口金から前記管球が離脱して落下するのを防止する落下防止機構とを備えたランプにおいて、
前記落下防止機構は、固定部材と回転部材とを有し、
前記固定部材は、マウントの外周部を形成する支持部材に固定され、
前記回転部材は、前記管球が落下する際に少なくても一端が該管球内面に係合する長さを有し、その中央部付近で前記固定部材に対して回転自在に取り付けられ、
前記落下防止機構は、前記回転部材がランプ軸線に直交する面で回転を停止する回転停止機能を備えており、ランプを上下反転して該ランプの口金を上方にしたとき、前記回転部材は回転してランプ軸線に直交する面で回転を停止する、管球の落下防止機構付きランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のランプにおいて、
前記支持部材は、マウントの支柱の一部である、ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のランプにおいて、
前記回転部材の長さは、前記管球のネック部の口径より長い、ランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のランプにおいて、
前記落下防止機構には、前記回転部材の回転方向を一方向に制限する逆転防止機能が備わっている、ランプ。
【請求項5】
請求項4に記載のランプにおいて、
前記回転停止機能及び前記逆転防止機能は、前記固定部材に形成されたタブ片により発揮されている、ランプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のランプにおいて、更に、
前記固定部材に対して前記回転部材が所定の角度回転したとき、該回転部材を固定する回転部材固定機能を有する、ランプ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のランプにおいて、
前記落下防止機構を複数個設けている、ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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