説明

箱型高圧カットアウトの接地工具

【課題】型式の異なる箱型高圧カットアウトに使用でき作業者の負担軽減を図ることができる箱型高圧カットアウトの接地工具を提供する。
【解決手段】離間配置された一次側電極と二次側電極との間に過電流を遮断するヒューズ体が着脱可能に取り付けられる箱型高圧カットアウトの接地工具において、一次側電極と二次側電極との何れか一方に接続可能な接触刃43と、一次側電極と二次側電極との何れか他方に接続可能な接触刃42と、これら2つの接触刃42,43が支持されるベース部47と、2つの接触刃42,43の少なくとも何れか一方に電気的に接続される接地線81とを備え、2つの接触刃42,43のうち少なくとも何れか一方の接触刃が、互いに接近および離間する方向にスライド可能に設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、箱型高圧カットアウトの接地工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧配電線路から配電用変圧器などへ引き込まれる一次側のラインには、その途中に過電流を遮断する高圧カットアウトが取り付けられている。この高圧カットアウトとしては主に円筒型のものと箱型のものとがそれぞれ存在し、何れもヒューズ体が着脱可能に格納されて、高圧配電線路側である一次側から受電側である二次側に過電流が流れるとヒューズ体が作動して速やかに電路が開放され過電流が遮断されるようになっている。
ところで、高圧配電線路のメンテナンス時には、高圧配電線路による送電を一時的に停止して、地上変圧器箱等に接地線を接続してから作業を行うため、作業者の負担が増加していた。そこで近年、高圧カットアウトのヒューズ体取付用の2つの電極間に亘って取り付けられたヒューズ体を取り外し、このヒューズ体に替えて取り付けることで当該ヒューズ体取付用の電極を接地させる接地工具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−71640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の接地工具、とりわけ箱型高圧カットアウト用の接地工具にあっては、同一事業者内で多様な型式のものが利用される場合があるため、箱型高圧カットアウトの型式毎に接地工具を用意しなければならず、作業者の負担が増加するという課題がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、型式の異なる箱型高圧カットアウトに使用でき作業者の負担軽減を図ることができる箱型高圧カットアウトの接地工具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、離間配置された一次側電極と二次側電極との間に過電流を遮断するヒューズ体が着脱可能に取り付けられる箱型高圧カットアウトの接地工具において、前記一次側電極と前記二次側電極との何れか一方に接続可能な第1接触部材と、前記一次側電極と前記二次側電極との何れか他方に接続可能な第2接触部材と、前記第1接触部材と前記第2接触部材とが支持される絶縁基材と、前記第1接触部材と前記第2接触部材との少なくとも何れか一方に電気的に接続される接地線とを備え、前記第1接触部材と前記第2接触部材との少なくとも何れか一方の接触部材が、前記第1接触部材と前記第2接触部材とが接近および離間する方向にスライド可能に設けられることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1接触部材と前記第2接触部材との電気的な接続状態および切り離し状態を選択的に切り替える切り替え機構を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、操作棒が着脱可能に固定されるジョイント部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、箱型高圧カットアウトの一次側電極と二次側電極とのピッチが型式に応じて異なる場合であっても、箱型高圧カットアウトの一次側電極に接続される第1接触部材と、箱型カットアウトの二次側電極に接続される第2接触部材との電極ピッチをスライドにより変更することで、型式の異なる箱型高圧カットアウトに対して同一の接地工具を用いることができるため、従来のように箱型高圧カットアウトの型式毎に専用の接地工具を用意する場合と比較して作業者の負担軽減を図ることができる効果がある。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1の効果に加え、切り替え部材によって第1接触部材と第2接触部材との電気的接続を切り離すことができるため、一次側電極と二次側電極との何れか一方の電極に接地線を接続したまま、他方の電極を一方の電極および接地から切り離して絶縁抵抗測定などを行うことができるため、商品性の向上を図ることができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、箱型高圧カットアウトに接地工具を取り付けた後に操作棒をジョイント部から切り離すことができるため、現場での作業スペースを確保して更なる作業者の負担軽減を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における箱型高圧カットアウトの蓋体を開放状態にした斜視図である。
【図2】上記箱型高圧カットアウトの断面図である。
【図3】本発明の実施形態における接地工具の側面図である。
【図4】上記接地工具の正面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図7】上記接地工具の二次側の電極プレートを外側に移動させた場合の図4に相当する正面図である。
【図8】上記接地工具の二次側切り離し金具を切り離した場合の図4に相当する正面図である。
【図9】上記接地工具の電極プレートの斜視図である。
【図10】上記接地工具用の操作棒を示す図である。
【図11】上記接地工具の接地線の端部側を示す図である。
【図12】上記接地工具に操作棒を取り付ける直前の状態を示す図である。
【図13】上記接地工具に操作棒を取り付けた状態を示す図である。
【図14】箱型高圧カットアウトに上記接地工具を取り付ける途中の状態を示す図である。
【図15】箱型高圧カットアウトに上記接地工具を取り付けた状態を示す図である。
【図16】箱型高圧カットアウトに上記接地工具を取り付けて操作棒を取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の実施形態の箱型高圧カットアウトの接地工具について図面を参照しながら説明する。まず始めに、この実施形態における接地工具が取り付けられる箱型高圧カットアウトについて図1、図2を参照しながら説明する。なお、図1、図2中、箱型高圧カットアウトの上下方向および左右方向をそれぞれ矢印で示している。
箱型高圧カットアウト1は、高圧配電線路と受電設備との間の引込み線を介して流入する過電流を遮断する目的で各相の適所に個別に取り付けられるものであり、図1、図2に示すように、磁器等の絶縁材で形成された本体2と蓋体3とを主に備えて構成される。本体2は蓋体3により閉塞可能な開口部4を有した略箱型に形成され、その底壁5には、ブラケット6(図2参照)を介して所定の取付位置に取り付けられる埋め込み式の取付ボルト7が突出して設けられる。
【0014】
本体2の左右の側壁8a,8bのうち左側壁8aには、その上部と下部とに左側壁8aを貫通する上部電線挿入孔(図示略)と下部電線挿入孔9とがそれぞれ形成されている。なお、左側壁8aに上部電線挿入孔および下部電線挿入孔9を設ける場合について説明したが、本体2の右側壁8bに形成するようにしても良い。また、図示都合上、図1、図2において上部電線挿入孔の図示を省略しているが、この上部電線挿入孔は下部電線挿入孔9と上下対称な位置に略同一形状で形成される。
【0015】
本体2の開口部4には、上部消弧室11と下部消弧室12とが配置されている。これら上部消弧室11と下部消弧室12とは、上下方向にそれぞれ離間配置されて開口部4に臨むスリット13を有している。これらスリット13は、その長手方向が本体2の上下方向と一致するように形成され、それぞれ本体2の左右幅方向の略中央に配置される。上部消弧室11の内部には、スリット13に沿う2枚の電極板が互いに近接方向に付勢されてなる一次側電極14aが配置され、同様に、下部消弧室12の内部にはスリットに沿う2枚の電極板が互いに近接方向に付勢されてなる二次側電極14bが配置される。これら、一次側電極14aと二次側電極14bとは、後述するヒューズ体15が取り付けられていない状態では電気的に絶縁されている。
【0016】
本体2の内部には、さらに上部消弧室11の上方と下部消弧室12の下方とのそれぞれに、被覆線の芯線が挿入されて各2つのビス16により固定可能な挿入端子17が配置されている。上部消弧室11の上方の挿入端子17は、上部消弧室11の内部に配置された一次側電極14aに電気的に接続され、下部消弧室12の下方の挿入端子17は、下部消弧室12の内部に配置された二次側電極14bに電気的に接続されている。
【0017】
上部電線挿入孔(図示せず)には、高圧配電線路側からの一次側引込み線(被覆線)が貫通され、下部電線挿入孔9には、変圧器やコンデンサ等の受電設備に接続される二次側引込み線(被覆線)が貫通される。一次側引込み線の芯線は、本体2の内部に配置される一次側電極14aに接続され、二次側引込み線の芯線は、同じく本体2の内部に配置される二次側電極14bに接続される。
【0018】
本体2には、左右方向に延びる回動軸21を有したヒンジ22を介して蓋体3が本体2の下部に開閉自在に軸支されている。この蓋体3の内面側にはヒューズ体15の保持金具23等を有するヒューズホルダ25が設けられている。ヒューズ体15は、略円柱状のヒューズ筒26と、このヒューズ筒26をヒューズホルダ25に取り付けるためのヒューズ取り付けねじ24と、ヒューズ筒26を閉塞するキャップ27と、ヒューズ筒26から径方向外側に向かって延出し、それぞれ長手方向に離間配置され略平行に取り付けられた2つの接触刃28,29とを備えて構成される。接触刃28,29は、上記スリット13の全長よりも若干幅狭で、接触刃28,29の離間ピッチよりも若干短い延出長さの平板帯状に形成される。接触刃28,29の幅寸法がスリット13の全長よりも若干幅狭に形成されることで、接触刃28,29や各消弧室11,12の取り付け時に上下方向に若干の位置ずれが生じたとしても、蓋体3を閉塞するだけでヒューズ体15の接触刃28,29をスリット13にスムーズに挿入できるようになっている。
【0019】
ヒューズ体15は、接触刃28,29のうち一方の接触刃から流入し他方の接触刃へと流出する電流が、予め設定された所定の上限値を超えた場合に溶断して2つの接触刃28,29の間の電路を開放状態にする。
【0020】
ヒューズホルダ25にヒューズ体15が収納された状態で蓋体3を閉塞すると、蓋体3の基部側に配置された接触刃28がスリット13から下部消弧室12に挿入されて二次側電極14bの対向する電極板に挟持されるとともに、蓋体3の端部側に配置された接触刃29がスリット13から上部消弧室11に挿入されて一次側電極14aの対向する電極板に挟持される。つまり、ヒューズ体15が取り付けられた蓋体3が閉塞した状態では、一次側引込み線から上記上限値を超える過電流が流入して、この過電流がヒューズ体15を介して二次側引込み線に流出すると、ヒューズ体15が瞬時に作動して箱型高圧カットアウト1の一次側と二次側との間の電路がヒューズ体15の溶断により開放され、箱型高圧カットアウト1の二次側に流出する過電流が遮断されることとなる。
【0021】
図3、図4は、この実施形態の接地工具を示している。この接地工具41は、上記した蓋体3を開放した状態すなわち、ヒューズ体15の接触刃28,29を一次側電極14aおよび二次側電極14bから切り離して一次側電極14aおよび二次側電極14bの電極間を開放した状態で、ヒューズ体15の替わりに箱型高圧カットアウト1に取り付ける工具である。この接地工具41は、ヒューズ体15と同様の2つの接触刃42,43を有しており、一次側電極14aと二次側電極14bとの少なくとも何れか一方を接地させる機能を有する。接触刃42,43の基部側には、幅方向の一方側の部分と幅方向の他方側の部分とが互いに反対方向に略直角に屈曲されてなる接触刃取付部45,46が形成される(図9参照)。これら接触刃取付部45,46にはそれぞれビス孔44が形成される。
【0022】
接地工具41は、絶縁性のアクリル板材等からなるベース部47を有している。このベース部47の角部はそれぞれ面取りされ、その表面側には、それぞれ電路を形成する第1プレート部48と第2プレート部49とがビス50とナット51からなる締結部材52により固定されている。第1プレート部48は、導電性の金属板により形成され、ベース部47の長手方向の一端側から他端側に延びて長手方向の中央部よりもやや他端側の位置まで至る。一方、第2プレート部49は、第1プレート部48よりも短尺に形成され、ベース部47の長手方向の他端側から一端側に延びて第1プレート部48の下縁から所定距離だけ離間された位置に至る。
【0023】
接地工具41には、第1プレート部48からベース部47まで貫通する接触刃取付用の第1スリット53が形成されるとともに、第2プレート部49からベース部47まで貫通する接触刃取付用の第2スリット54が形成される。これら第1スリット53および第2スリット54は、それぞれ接触刃42,43の厚さよりも若干幅広に形成され、ベース部47の幅方向の中心線上にそれぞれ配置される。第1スリット53は、接触刃43の幅寸法より若干長く形成され、第2スリット54は、第1スリット53よりも長く形成され、接触刃42の幅寸法よりも所定長さ(例えば、10mm程度)だけ長く形成される。なお、接触刃42の幅寸法を、第2スリット54の長さ寸法の70%程度としても良い。
【0024】
第1スリット53には一次側の接触刃43が挿通されて、接触刃43の接触刃取付部45,46が第1プレート部48の表面に接触した状態で、第1スリット53の左右両側に形成されたビス孔(図示せず)を介してビスおよびナットからなる締結部材55により取付られる。
【0025】
一方、第2プレート部49の第2スリット54の左右両側には、二次側の接触刃42の接触刃取付部45,46を固定する締結部材56のビス挿通用の長孔57がそれぞれ形成される。これら長孔57は、それぞれ第2スリット54に沿って形成される。ここで、図5、図6に示すように、長孔57は、第2プレート部49ではビス58の雄ネジ部59が挿通可能な程度の幅に形成される。この長孔57が配置される位置のベース部47には、長孔57と略同じ長さでナット60が回り止めされる程度の幅寸法の長孔61が形成される。さらに、ベース部47の長孔61の裏面側には、ナット60が裏面側から脱落しないように脱落防止用の段差部62が形成されている。
【0026】
つまり、上述した二次側の接触刃42の取り付け構造によれば、まず長孔61にナット60をベース部47の表面側から装着すると、ナット60が回り止めされた状態になるとともに、長孔61の長手方向への変位は許容された状態になる。そして、その上から第2プレート部49を載置して締結部材52により第2プレート部49をベース部47に固定し、第2スリット54に接触刃42を挿通させると、二次側の接触刃42がベース部47の裏面から略垂直方向に突出された状態になる。次いで、接触刃42の位置決めを行い接触刃取付部45,46にビス58を挿通させてナット60に螺合させてビス58を締めこむと、このビス58の締め込みにより、接触刃42の接触刃取付部45,46とベース部47とによって第2プレート部49が挟み込まれた状態となり、接触刃42と第2プレート部49との導通が良好な状態で接触刃42が第2プレート部49に取り付けられることとなる。ここで、上述した接触刃42を取り付けるためのビス58をナット60に軽く螺合させて仮固定した状態では、接触刃42が第2スリット54に沿ってスライド可能となっている(図7参照)。
【0027】
上述した第1プレート部48と第2プレート部49とが取り付けられたベース部47には、その表面側の略中央部にジョイント部70が取り付けられている。このジョイント部70は、操作棒71(図10参照)の端部を着脱可能に固定するものであり、操作棒71の端部の直径よりもやや大径な内径を有する略有底筒状に形成される。このジョイント部70の底壁にはビス72を螺合するためのビス孔73が形成されており、ベース部47の裏面側からビス72により固定される。この際、ジョイント部70とベース部47とにより第1プレート部48が挟み込まれる状態となり、ジョイント部70と第1プレート部48との導通が良好な状態に維持される。ここで、操作棒71は、作業者が接地工具41に直接的に手を触れることなしに安全に箱型高圧カットアウト1への接地工具41の着脱作業を行うためのものであり、絶縁性の棒部材75と、その先端に設けられ径方向外側に突出する突起部76を備えて構成される。
【0028】
ジョイント部70の周壁77には、操作棒71の突起部76を係合するために、軸方向に沿う切り欠き部78と、この切り欠き部78の最奥から周方向に延びる係合溝79とが形成される。例えば、切り欠き部78の位置と操作棒71の突起部76との位置とを合わせた状態で、操作棒71の先端をジョイント部70に挿入して、突起部76が切り欠き部78の底に突き当たる位置で操作棒71を回動させることで、突起部76が係合溝79に係合され、操作棒71の挿抜方向への変位が規制される。
【0029】
ジョイント部70の周壁77には、接地線81の基端部が周壁77の軸線に沿うように取り付けられる。より具体的には、接地線81の基端部は、被覆の上からケーブル押さえ83を介して周壁77に固定されるとともに、芯線がビス82を介して周壁77に固定される。接地線81は、図11に示すように、末端部にクリップ84を備えており、このクリップ84が接地極(図示せず)等に接続されるようになっている。なお、接地線81の末端部側には、作業者が足を引っ掛けたりした場合にクリップ84が外れないようにする外れ防止フック85が紐86を介して取り付けられている。この外れ防止フック85は接地線81の末端部側の途中から分岐された紐86の先端に取り付けられており、この紐86の長さL2が、接地線81から分岐される部分からクリップ84間の接地線81の長さL1よりも短く設定されている。つまり、外れ防止フック85を、クリップ84が接続される箇所の近傍の構造物に引っ掛けることで、クリップ84側の接地線81が常に弛み、仮に紐86が分岐接続される位置よりも末端部側の接地線81に足を引っ掛けたとしても、その力は外れ防止フック85に加わるだけであるため、外れ防止フック85が構造物から外れない限り、クリップ84自体に離脱方向の力が加わらないようになっている。
【0030】
上述した第1プレート部48には、その下部の側方に膨出する一次側接点取付部91が形成される。同様に、第2プレート部49には、上部側方に膨出する二次側接点取付部92が形成される。そして、これら一次側接点取付部91と二次側接点取付部92との間には、これら一次側接点取付部91と二次側接点取付部92とを電気的に接続する接点プレート90が着脱可能に取り付けられている。接点プレート90は、一次側接点取付部91と二次側接点取付部92とに亘って配置された状態でそれぞれ一次側接点取付部91と二次側接点取付部92とにビスで固定される。つまり、上述した第1プレート部48と第2プレート部49とは、接点プレート90を介して電気的な接続および切断が選択可能に構成される。
【0031】
二次側接点取付部92には、一次側接点取付部91とは反対側の位置に追加のビス孔93が形成される。このビス孔93は、第1プレート部48と第2プレート部49との電気的接続を切り離す際に、接点プレート90の一次側を固定するためのものであり、図8に示すように、一次側のビス94をビス孔96から取り外し二次側のビス95を緩めると、二次側のビス95を軸として接点プレート90を揺動可能な状態となる。そして、接点プレート90の一次側を追加のビス孔93の位置まで移動させることで接点プレート90の一次側をビス94により二次側接点取付部92に固定することができる。これにより、確実に第1プレート部48と第2プレート部49とを電気的に切り離すことができ、作業性の向上も図ることができる。また、一次側接点取付部91と二次側接点取付部92とがそれぞれ第1プレート部48と第2プレート部49との側方に配置されることで、一次側の接触刃43と二次側の接触刃42との距離が比較的短く設定されなければならない場合であっても、上述した接触刃42をスライドさせる機構やジョイント部70などに干渉しないように配置できる。なお、上述した接点プレート90、一次側接点取付部91、および、二次側接点取付部92により切り替え機構が構成される。
【0032】
次に、上述した接地工具41を箱型高圧カットアウト1に取り付ける方法について図面を参照しながら説明する。なお、接地線81の末端部は予め接地極に接続されているものとする。
まず、図12に示すように、操作棒71の突起部76をジョイント部70の切り欠き部78の延長線上に配置して操作棒71を軸線方向に変位させてジョイント部70に挿入させる。その後、図13に示すように操作棒71をジョイント部70に対して相対的に回動させて突起部76を係合溝79に係合させる。これにより操作棒71に接地工具41が取り付けられる。なお、一次側の接触刃43と二次側の接触刃42との間隔は装着する箱型高圧カットアウト1の上部消弧室11の一次側電極14aおよび下部消弧室12の二次側電極14bの間隔に合わせてスライド調整しておく。
【0033】
次いで、箱型高圧カットアウト1の蓋体3を開放して、接地工具41の接触刃42,43を各消弧室11,12のスリット13に挿入し(図14参照)、接触刃42,43を各消弧室11,12に完全に押し込む(図15参照)。そして、操作棒71を、装着手順と逆手順でジョイント部70から取り外し(図16参照)、接地工具41の箱型高圧カットアウト1への装着が完了する。
なお、接地工具41を箱型高圧カットアウト1から取り外す手順は、上述した取付手順と逆手順であるため、ここでの詳細説明は省略する。
【0034】
したがって、上述した実施形態の箱型高圧カットアウト1の接地工具41によれば、箱型高圧カットアウト1の一次側電極14aと二次側電極14bとのピッチが箱型高圧カットアウト1の型式に応じて異なる場合であっても、箱型高圧カットアウト1の一次側電極14aに接続される接触刃43と、箱型高圧カットアウト1の二次側電極14bに接続される接触刃42とのピッチをスライドにより変更することで異なる型式の箱型高圧カットアウト1に対して同一の接地工具41を用いることができるため、従来のように箱型高圧カットアウト1の型式毎に専用の接地工具41を用意する場合と比較して作業者の負担軽減を図ることができる。
【0035】
また、接点プレート90によって第1プレート部48と第2プレート部49との電気的接続を選択的に切り離すことができるため、一次側電極14aと二次側電極14bとの何れか一方の電極に接地線81を接続したまま、他方の電極を一方の電極および接地から切り離して絶縁抵抗測定などを行うことができるため、商品性の向上を図ることができる。
さらに、箱型高圧カットアウト1に接地工具41を取り付けた後に操作棒71をジョイント部70から取り外すことができるため、現場での作業スペースを確保して更なる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0036】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、接地工具41の第1プレート部48が一次側電極14aに電気的に接続され、第2プレート部49が二次側電極14bに電気的に接続される場合について説明したが、逆であっても良い。つまり、図4に示す接地工具41の上下を反転して箱型高圧カットアウト1に装着するようにしても良い。この構成により、二次側電極14bを選択的に接地させることが可能になる。
【0037】
さらに、上述した実施形態の一例では接触刃42のみがスライド可能な場合について説明したが、接触刃42,43の両方に同様な機構を設けて、互いに接近および離間する方向へスライドさせるようにしても良い。
また、上述した実施形態では締結部材としてビスおよびナットを用いていたが、締結可能であればこれらビスおよびナットに限られるものではない。
【0038】
さらに、上述した実施形態では、ジョイント部70に接地線81が一本だけ接続される場合について説明したが、例えば、受電用の引込み線が3相である場合など、3つの接地工具41のジョイント部70を接地線81で直列接続する場合に、ジョイント部70に2本以上の接地線81を接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 箱型高圧カットアウト
14a 一次側電極
14b 二次側電極
15 ヒューズ体
41 接地工具
42 接触刃(第1接触部材)
43 接触刃(第2接触部材)
47 ベース部(絶縁基材)
70 ジョイント部
71 操作棒
81 接地線
90 接点プレート(切り替え機構)
91 一次側接点取付部(切り替え機構)
92 二次側接点取付部(切り替え機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間配置された一次側電極と二次側電極との間に過電流を遮断するヒューズ体が着脱可能に取り付けられる箱型高圧カットアウトの接地工具において、
前記一次側電極と前記二次側電極との何れか一方に接続可能な第1接触部材と、
前記一次側電極と前記二次側電極との何れか他方に接続可能な第2接触部材と、
前記第1接触部材と前記第2接触部材とが支持される絶縁基材と、
前記第1接触部材と前記第2接触部材との少なくとも何れか一方に電気的に接続される接地線とを備え、
前記第1接触部材と前記第2接触部材との少なくとも何れか一方の接触部材が、互いに接近および離間する方向にスライド可能に設けられることを特徴とする箱型高圧カットアウトの接地工具。
【請求項2】
前記第1接触部材と前記第2接触部材との電気的な接続状態および切り離し状態を選択的に切り替える切り替え機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の箱型高圧カットアウトの接地工具。
【請求項3】
操作棒が着脱可能に固定されるジョイント部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の箱型高圧カットアウトの接地工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−37994(P2013−37994A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174919(P2011−174919)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(399039719)東日本電気エンジニアリング株式会社 (30)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】